Their Finest Hour -歴史・ミリタリー・ウォーゲーム/歴史ゲーム -

歴史、ミリタリー、ウォーゲーム/歴史ゲーム/ボードゲーム

「REBEL FURY」(GMT Games)を対戦する(2/2)

「REBEL FURY」(GMT Games)は、南北戦争の複数の会戦を扱った作戦級ゲームです。ユニークなシステムのため、最初のとっつきにくさは否めませんが、プレイアビリティも高く、取り組みがいがある作品です。

 

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歴史的背景

フレデリックスバーグの戦いは1862年12月11日から15日にかけてバージニア州フレデリックスバーグで戦われた南北戦争の初期の戦いであり、南軍の最大の勝利の 1 つと評価されています。
アンブローズ・バーンサイド少将率いるポトマック軍(北軍)(106,000人)は、フレデリックバーグ郊外のメアリーズ高地に設けられたロバート・E・リー将軍率いる北バージニア軍(南軍)(72,500人)の塹壕線に対し攻撃を実施しました。
バーンサイドは南軍陣地に対して次々と無謀な正面攻撃を実施したことで北軍は膨大な損害を受けます。最終的に北軍の死傷者は南軍の2倍に達し敗走しました。作戦後、責任をとりバーンサイドは司令官を解任されました。

 

フレデリックスバーグの戦いにおけるハンフリー師団の勇敢な突撃 :Alfred Waud(米国議会図書館所蔵)
ポトマック軍のアンドリュー・ハンフリーズ将軍が率いた師団は、それまでの攻撃で負傷した兵士たちをかきわけ、最後の攻撃をサンケンロードに対して行うが、精鋭の南軍兵士によって激しく攻撃された。

 

フレデリックスバーグの戦い:Currier & Ives 1862(アメリカ議会図書館所蔵)

連合軍の兵士たちがメアリーズ高地に向かって行進する様子を描いています。タイトルの下のキャプションには次のように書かれています。「この戦いで、ポトマック軍の獅子のような心を持つ兵士たちは敵に立ち向かう不屈の勇気を示しました。11日、ラパハノック川の渡河を強行し、潜んだ反逆者たちからの殺人的な銃火を浴びながらも12日にはフレデリックスバーグを占領しました。13日の朝、兵士たちは敵の塹壕に対して必死の勇気をもって突撃します。数千の兵たちが戦死するか傷つき、恐るべき戦闘は夜が訪れるまで続きました。塹壕に隠れた敵によって押し返されたとしても、北軍の兵士たちは、彼らが最も誇り高い勝利を収めた日々と同じように、南軍の裏切り者たちに立ち向かう準備ができています。」(一部意訳)

 

フレデリックスバーグの戦いで使用されたラパハノック川にかかる舟橋(撮影は1863年

 

 

プレイ

シナリオはフレデリックスバーグの西側に南北に延びるメアリーズ高地の稜線沿いに陣地を構築していた南軍に対して実施された北軍の攻撃を扱っています。
12月12日午後から13日にかけて、シナリオターン数は3ターンです。

南軍を担当することになりました。

 

初期配置

初期配置の状況。マップは上方が北を指しています。
写真右上に展開している水色ユニットが北軍フレデリックスバーグの西側に南北に延びるメアリーズ高地沿いに展開している青灰色のユニットが南軍です。
南軍は高地の稜線沿いに塹壕を設置しています(ユニットに隠れている分もありますが、濃い目の茶色のラインが塹壕を表します)。
メアリーズ高地の左上側に並んだ薄赤色でマーキングしたヘックス(南軍の塹壕になっている)を占拠することで北軍は勝利します。北側の塹壕ヘックスが対象で、南側の塹壕は勝敗には関係しないことになります。

ラパハノック川の東岸から位置する北軍ユニットは、川に設置されたいくつかの舟橋(ポントゥーン)を経由して渡河することになります。

 

第1ターン移動フェイズ

移動フェイズでは1ユニットずつ交互にユニットを移動させます。
ユニットが司令部ユニットの指揮範囲内にいる限りは敵ZOCにはいって移動できなくなるか、パスを宣言するまで、何度でもユニットを活性化できます。

南軍としては塹壕線の防衛に穴が空かないようにすること、また塹壕線が切れている南軍右翼の翼端から回り込まれないように移動を塞ぐことを目指します。
一方の北軍は東岸にいる部隊を全て渡河させ、戦闘位置につけることを目指しています。総攻撃は次のターンを想定しているようです。

北軍による塹壕線に対する攻撃は13日に実施されていますので、第2ターンが総攻撃開始というのは史実にそった展開です。

移動途中もスタック制限の制約が課せられるため、移動順には注意を払う必要があります。特にルートが限定される浮舟橋を渡す必要がある北軍は特にそうです。

 

第2ターン 移動フェイズ

第2ターンの移動フェイズ終了時の状況です。

北軍は、勝利条件ヘックスにあたる西翼(写真左側)から中央部にかけて南軍が守る塹壕戦に戦闘を挑むため前進しますが、東翼は後退します。東翼では逆に、南軍が塹壕を出て、北軍に向かって前進しました。

 

第2ターン 戦闘フェイズ

戦闘フェイズ終了時の状況。

敵ユニットが配置された塹壕ヘックスに隣接したユニットはマストアタックになります。それ以外の地形に位置する敵ユニットに対する攻撃は任意です。

戦闘も移動と同様に1ユニットずつ解決されます。ユニークなのは、同じユニットが何度でも攻撃を行うことができ、防御側も何度も攻撃を受けることがありえることです。

北軍塹壕線に隣接させたユニットにより攻撃を実施しますが、塹壕の地形効果が厳しくほとんど損害を与えられません。いくつかのヘックスでは防御側ユニットの後退に成功しますが、両隣のヘックスにいる南軍師団の攻撃によりすぐに奪還されることが続きます。

後でわかったのですが、ここで何点かルールを間違えていました。
塹壕の中にいる防御ユニットは、地形効果で損害を受けにくい反面、損害が出た場合は、後退ではなく除去などに変わる

1. 防御側ユニットが塹壕内にいる場合、「Attack Result Table」の結果の適用に
   あたって、特別対応となります。

  • 「攻撃側後退」の場合、追加で赤ダイスを振りその結果により、「攻撃側潰走(Blown)」または「攻撃側後退」となる
  • 「防御側後退」の場合、防御側ユニットは除去
  • 「防御側潰走(Blown)」の場合、防御側ユニットは除去

2. 塹壕ヘックスにいるユニットは、隣接する塹壕ヘックスの塹壕内に
   敵ユニットが存在する場合は、塹壕の中にはいることはできません
   (塹壕の地形効果を得ることができない)。

 

第3ターン 移動フェイズ

北軍は南軍陣地に対する再度の攻撃位置につきます。

上記のとおり防御側に”後退”を示す損害が出た場合の対応については誤りがあったのですが、そもそものところで陣地にこもった南軍に対していずれかの損害を与えるのがなかなか難しいのです。
勝利条件ヘックスを全て占拠するという、北軍の勝利条件はそもそも達成できないのではないか?という話が起きました。

 

第3ターン 戦闘フェイズ

戦闘フェイズ終了時の状況。

 

感想戦

塹壕内ユニットに対する損害反映を正確にしたとすると防御側ユニットはもう少し除去されることになったのではないかと考えられます。
ただそれらが反映されたとしても、シナリオとしては北軍が勝利条件を満たすことは難しいのではないかという印象です。史実通りだとするとそのとおりですが、その場合は勝利条件をどうにかしたほうがよかったかもしれません。

 

ゲーム全体としては冒頭に書いた通りです。
ユニークなシステムのため、最初のとっつきにくさは否めませんが、プレイアビリティも高く、取り組みがいがある作品です。

今回は戦闘領域が限定された戦いだったため、次回はより作戦範囲が広いシナリオで試してみたいとものです。「移動回数制限無し」というシステムが作戦範囲が広い戦いの場合にどのようになるのか検証したいと考えます。

 

無駄な移動の実施回数の制限について

本シナリオでのユニット数は両軍で大きな差はありません。
一方で南軍は初期配置状態ですでに塹壕ヘックスに配置されていたユニットも少なくなかったことから、必要な移動は北軍より先に終わります。ここで単純にパスを宣言するとそれ以降の移動はできなくなることから、北軍がその後どのような移動を行った場合も対応できなくなります。
そうすると、自軍が必要な移動は終了していたとしても、相手もパスを実施するまで、自軍もパスを宣言せずに、例えば予備で後方に待機させている騎兵旅団ユニットなどを使って本来は必要がない移動を何度も繰り返すことになりかねません。
前記事でも紹介したとおり、そのような”無駄”な移動は連続して実施する回数制限が設けられています。
この点は本作のゲームシステム(冒頭に書いたとおり、全体としてはユニークで素晴らしいシステムなのですが)の一番の疑問点、スマートではないと感じられたポイントですね。みなさんのご意見も聞きたいところです。

 

備忘:南北戦争時代の砲兵運用について

ナポレオン時代の大砲は射程距離が短く、また通信手段がなかったことから後世の砲兵部隊のように戦線の後方から長距離で射撃を行うのではなく、大砲自体を最前線に並べて敵に対して直接射撃を行っていたことは、ナポレオン時代の戦術級ゲーム(例: Welington's Victory、Ney VS Welington など)をプレイしてみれば理解できます。

本ゲームの砲兵戦力の反映は2種類あり、ひとつはマップ上のどこで発生した戦闘でも適用できる「砲撃支援」と、決められた範囲でのみ適用できる「重砲支援」とがあります。いずれも「Battle Rating(戦闘評価値)」への修正を行うという内容です。

調べてみると、南北戦争時代も大砲の射撃は直接射撃がメインで、ごく一部気球などによる観測により間接射撃が実験的に行われたということです。
ゲーム内の前者は師団に所属した師団砲兵による射撃で、後者は軍・軍団単位で保有していた重砲による射撃で、いずれも直接射撃を表しているのだと推測します。

 

(おわり)

 

 

 

「OPERATION TYPHOON」(SPI/IED(国際通信社))を対戦する【2/3】背景・1日目

IED(国際通信社)より再販されたビッグゲーム「OPERATION TYPHOON」を2日間・4人で対戦しました*1
1日目はルール確認+練習プレイ、2日目に向けての準備を実施し、2日目に対戦本番という段取りです。

 

 

 

 

 

ゲームの背景

ゲームタイトルになっている「タイフーン作戦」は、モスクワ攻略を目指し、1941年9月末にドイツ軍が発動した攻勢作戦です。破竹の勢いで侵攻したドイツ軍もこの頃にはかつての勢いはなくなっています。戦力の減少と補給の不足により、11月初頭で攻勢限界に達し、いったん進攻が停止します。
その時点で第2装甲軍グデーリアンはモスクワ攻略の好機はすでに去った、と判断しますが、11月15日に再び攻勢が再開されました。

本ゲームはこの11月15日に再開された攻勢を扱っています。

キャンペーンシナリオは11月15日から11月30日の16ターン(1ターン=1日)ですが、さらに15ターンの拡張キャンペーンシナリオが用意されています。
キャンペーンシナリオはドイツ軍の前進が再び止まった時期までを扱い、拡張キャンペーンではその後始まったソ連軍の反撃をカバーしています。

ドイツ軍の動員数が百数十万万人(資料によって異なる)、ソ連軍も同数以上を動員していたあります。

 

 

1日目

担当は希望があった1名を決め、残りをくじびきで決めます。

■ ドイツ軍: yagi会長、大久保氏

ソ連軍: 提督氏、当方

ドイツ軍は、会長が南側の第2装甲軍と第4軍、大久保氏が第3・4装甲軍を担当します。

ソ連軍は南側を提督氏、北側を当方が担当します。南北の分担ラインはモスクワ南側あたりに設定していたのですが、その後の展開により調整しつつ進行させています。

 

初期配置

初期配置は史実配置を採用(写真参照)。
ソ連軍の全てのユニットと、ドイツ軍の司令部以外のユニットの配置が決まっています。ドイツ軍の司令部ユニットは、前線の部隊ユニットへの補給線の起点となり、その設定長に制限があるため、攻勢を行う地点の近くに配置する必要があります。

写真の奥側に並んだ灰色のユニットがドイツ軍*2、手前の赤色のユニットがソ連軍です。ドイツ軍は師団単位・軍団単位で固まり、またスタックしているのですが、前線のソ連軍はほとんどが1ヘックス空け、1ユニットずつスタックなしの状態で並んでいます。
モスクワの外周部や後背地にソ連軍ユニットの赤色ユニットによるスタックがいくつか並んでいますが、戦略予備のユニットになります。毎ターンのダイス判定の結果に基づき少しずつ戦線へ投入されます。ソ連軍プレイヤーの心の支えです。

ドイツ軍は、補給状況がよくないことを反映して、前記事で紹介したルールに基づき、各軍に割り振る補給ポイント、さらにその中で補給状態にできる軍団数が限定されます。

初期配置(史実配置)
以降、マップ左手が南、右手が北になります。

 

今回のマップを南北(縦に長いほう)のヘックス数を数えると116ヘックス*3、1ヘックス=4.2キロのスケールで計算すると487キロとなります。
東京から直線距離で487キロというと姫路を超えて、相生市あたりまでにあたります。モスクワを巡る戦いだけで、日本本土の本州を横切るどころか、1/3を縦走する規模の戦線での戦闘とサイズ感に頭がバグりますね*4

マップに話を戻すと、都市は勝利ポイント獲得の対象となります。中でも史実でも争奪の鍵となったトゥーラは10VPとされ、残りの都市は5VPです。史実でクリンは陥落しますが、トゥーラはドイツ軍に包囲されますが陥落には至っていません。

 

天候の話

各ターンの最初に「天候チェック」「地表の状態チェック」と2回ダイスを振ります。

ドイツ軍にとっての最良の組み合わせは、天候が「晴天」、地表が「凍結」の組み合わせです。
凍結した大地は地上部隊の必要移動力が下がり機動力を増すことになります。晴天では航空支援がフル出動できるという訳です。

ロシア軍にとっての最良の状況は「積雪」がはじまることです。「積雪」状態では、「耐寒性」が「不良」の部隊の移動力と戦闘力が半分になります。ドイツ軍の全てのユニット、ソ連軍の一部のユニットは「耐寒性」が「不良」なので、ドイツ軍の進撃はとたんにストップがかかることになるでしょう。
ただ「積雪」状態になるのは天候が「降雪」で、地表の状態が「凍結」になるパターンとなり、発生確率は1/12と小さいです。結局、今回のプレイ2日間を通して、「降雪」が出たのは1-2回で、「積雪」に至ったことはありませんでした。

また他のゲームで地表の状態が「泥濘」の場合のペナルティが大きくドイツ軍の行動を妨げるなど影響が大きかったことから、ソ連軍担当としては、本作についても「泥濘」状態になった際の悪影響を期待したのですが、本ゲームでの「泥濘」は地表状態が「普通」のものと差異はほとんどなく、ドイツ軍のストッパーになりえませんでした。

 

第1ターン

天候は「曇天」。曇天下での航空支援は「晴天」時の半分になります。

特別ルールでドイツ軍の補給状態の制約があります。
特に最南翼を担う第2装甲軍グデーリアン)は第3ターンまで補給切れ状態として扱われることから*5、4ターン毎に割り振る補給の配分は、北翼の2つの装甲軍(第3装甲軍(ラインハルト)と第4装甲軍(ヘフナー))を中心に割り振られました。

 

写真は第1ターン終了時。
ドイツ軍の移動‐戦闘後、後攻のソ連軍が戦線を引き直した後の状態です。

 

写真右手(北翼)の第3装甲軍・第4装甲軍の戦線が前進しているのがわかります*6。移動の容易性、補給線の確保の点から、ドイツ軍の攻撃は道路沿いに実施されます。
特にクリンやモスクワにつながる道路を中心に第4装甲軍の有力な装甲師団・自動車化歩兵師団などが集中しています。

前記事で紹介したとおり戦闘システムはクラシカルなマストアタックシステムです。自然、戦い方はオーソドックスなテクニックを使ったものになります。
戦闘結果により防御側ユニットを後退させ、戦闘後前進を実施、隣接する隣の防御側ユニットの退路を塞ぎ、その戦闘結果により防御側後退の結果を出し、除去するという、いわゆる「囲んでポン」です。第2移動や突破移動のような、特別な移動・戦闘はありませんので、囲む技は戦闘結果による戦闘後前進に頼ることになります。
このあたりは、作戦級の鬼と呼ばれる大久保氏の見事なさばきで第4装甲軍の主力前面を中心にソ連軍のユニットが続々と除去されていき、ぽっかりと戦線に穴が空きました。結果のでこぼこは、アントライドにより引いたチットにより、予想外の戦力値を引いた部隊もあれば、逆に戦力1という最低戦力値しか出せなかった部隊もあるためです。チットの内訳としては、後者のほうが確率は高いです。

ソ連軍は、戦闘で後退となるのはやむを得ないため、後退したとしても隣のユニットが囲まれないように前線を引くことが鉄則です。ただ、今回の1戦目ではそれが徹底されていませんでした。
開けられた穴を塞ぐため、ソ連軍は周囲の部隊を集め、安全に前線を設定できる程度にまで前線を下げます。

 

第2ターン

天候は「降雪」。航空支援は両軍とも使えなくなります。地表は「通常」だったため「積雪」には至りません。

ドイツ軍は道路沿いに主力の装甲師団を突進させ攻撃します。同一師団効果、戦車効果(相手に戦車がいない場合)、航空支援(天候が晴天または曇天の場合のみ)と積み上げ、戦闘力比率をシフトさせて攻撃します。

南翼では第2装甲軍が、トゥーラは放置し、先頭の装甲師団は補給切れの状態ながらソ連軍の南翼を回り込もうと機動します(補給切れの場合、移動力は半分)。

 

第2ターン終了時。ソ連軍が戦線を後退させた状態です。

第3ターン

翌日の準備のためこの日はこのターンが最終ターンとなりました。

クリンは陥落には至っていませんが、包囲されようとしており、その周辺のユニットがことごとく除去されていることから、大きく戦線に穴が開いた状態になっています。
ドイツ軍の侵攻の速さに対して、うまく後退ができなかったと判断されます。

写真にはでていませんが、南翼の第2装甲軍についても、ソ連軍の南翼を迂回して回り込もうといするところまできていました。

 

第3ターン終了時
クリン周辺に赤いユニットがいなくなっています。西への道路の途中にかろうじてソ連軍ユニットがいますので、次のターンでの突破はないでしょうが、急ぎ戦線を引かなければ破綻するでしょう。

 

感想戦

マップが広大なのですが、ユニット数はそこまで多くはありません*7。プレイヤーが2対2というのも、手が空く人がでないという意味でちょうど良い感じでした。

ルールがクラシカルなマストアタックのシステムですのでいまさらながら、ある種なつかしいプレイ感です。第2移動、リアクション移動、機甲移動やオーバーランなどの派手な仕掛けはないため、その分、戦闘のテクニックはオーソドックスな作戦級ゲームのテクを地道にこなしていくことになります。対抗する防御側についても、戦線の張り方など同じですね。
今回はそうした基本を忘れたところでプレイしてしまいました。ソ連軍は後退が遅くドイツ軍の攻撃に絡め取られて多くの除去ユニットを出してしまいました。もっと大胆に後退し、メリハリの効いた戦線を引くことにしようと考えました。

(つづく) 次回は2日目のプレイを書く予定です。

 

 

 

 

タイフーン作戦【完全版】

 

 

 

 

*1:前の記事で、「800個のユニット」と書きましたが、そのうち部隊を表すものは400個弱になります。残り400個は主に「アントライド」システムの戦力値の判定に用いるマーカーになります

*2:数ユニットの登場ですが、武装親衛隊は黒色になっています。

*3:目視で数えましたが、間違えていたらごめんなさい。

*4:クリンとトゥーラの直線距離でもGoogle Mapで調べると250キロほどになります

*5:それ以外の軍についても全軍または一部の主力が第1ターン補給切れとされています

*6:赤色の破線が初期状態での前線、橙色のラインがドイツ軍の進出線です

*7:一部のOCSゲームのように戦線に沿いびっちりとスタックとユニットが並ぶようなことにはなりません

「REBEL FURY」(GMT Games)を対戦する(1/2)

南北戦争での複数の戦闘を扱った作戦級ゲーム「REBEL FURY」を対戦しました。ゲームはチカマウガ、チャタヌーガ、ウィルダネス、スポットシルバニア、チャンセラーズビル、フレデリックスバーグという6種類のシナリオ(あわせて複数のマップ)が含まれています。
BGGでの説明では難易度は高くないと記載されていますが、作戦級としてはけっこう特徴的なシステムになっています。

 

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ゲームシステムの紹介

スケール

1ターン=12時間

1ヘックス=0.8キロ

ユニットは師団が基本。
指揮官レベルのユニット(名前入り)がHQユニットとして登場します。
兵種は歩兵と騎兵の2種類。砲兵は砲撃支援や重砲支援として表現されています。
変わったところで、分遣隊(Detachment)という師団から分離されるユニットが登場します(この扱いも変わっています)。

 

ZOCとZOI

 司令部ユニット、師団ユニットには機動モードと戦闘モードがあります。

師団ユニットはユニットが存在するヘックスの周囲6ヘックスに影響を及ぼす「ZOC:Zone of Control(支配地域)」のさらにもう1ヘックス外側をZOCを取り巻くように、「ZOI:Zone of Influence(影響地域)」というエリアが設定されています*1

敵ZOIにはいった師団ユニットは強制停止+戦闘モードへ変換、移動は可能ですが戦闘モードなので移動力は1になり、戦闘モードから機動モードへの変換は次ターンまで不可能なため、フェイズの残りは移動力1で活動することになります*2
敵ZOCにはいった師団ユニットは強制停止+移動不可となります。

戦闘は基本的にはMay Attack(攻撃は任意)ですが、要塞や塹壕などの一部の地形に隣接している場合、Must Attack(攻撃は必須)となります。

ユニットは兵士の隊列を真上から見たアングルで描かれユニットの正面や側面などが関係しそうなデザインになっているのですが、ユニットに向きはありません。

スタックは禁止です。移動途中・戦闘結果による退却時など活動の途中であっても禁止です(師団の移動や戦闘にあたって、けっこうな制約になります)。

 

ゲームの手順

各ターンは次のフェイズに分かれています。

  1. コマンドフェイズ (共通)
  2. 組織フェイズ   (共通)
  3. 移動フェイズ   (師団毎に交互に活性化)
  4. 戦闘フェイズ   (師団毎に交互に活性化)
  5. 終了フェイズ   (共通)

コマンド、組織、終了の各フェイズは両軍共通です。

移動フェイズと戦闘フェイズは両プレイヤーが師団単位に交互に活性化させることで実施します。

移動させるユニットがないプレイヤーはパスを宣言します。パスはハードパスですので一度パスを実施するとフェイズの終了まで再開はできません。
パスが宣言された時点で、パスを行った側ではないプレイヤーはダイスを振り、移動フェイズの残りで移動アクションを実施できる回数を決め、その回数の中で移動を実施します。

 戦闘フェイズでは、戦闘を1個師団ずつ交互に実施していくことになります。どちらかがパスをするまで続け、パスが宣言された時点でダイスによりそのターン中に実施できる戦闘の回数が決められます。

 

移動ルール

移動フェイズでは両方の軍が1個師団ずつ活性化することを説明しましたが、本作がユニークなのは次の点です。

師団ユニットはひとつのターンの間に何度でも移動を実施することができます。同じ師団ユニットが連続的に移動を実施しても構いません。

移動力は、機動モード時に歩兵4、騎兵6です。戦闘モード時はいずれも移動力1となります。延長行軍(Extended March)を使うことにより移動力は2倍になります。

回数としては無制限に移動を実施できますが、司令部ユニットの指揮範囲から離れることはできない、という制約があるため移動可能な範囲には制約があります*3。また敵ZOCにはいったユニットは活性化できなくなるため、それ以上移動を実施することはできなくなります*4

 

戦闘ルール

戦闘も移動と同様に、同じフェイズの中で、師団ユニットは何度でも攻撃を実施することができます。攻撃を行う対象のユニットが同一であっても、連続的に実施することも許容されています。

 オーバーラン、騎兵突撃のような特殊な攻撃は用意されていません。
面白いのは騎兵師団は歩兵師団に攻撃できないとしている点です。騎兵師団は、敵の騎兵師団か司令部ユニットを攻撃できるだけになっています。歩兵が持つ火力の増強により、ナポレオン時代にはまだ見られたような騎兵突撃は意味を失ったことを表しているのでしょう。

基本はMay Attackですが敵ユニットが存在する一部の地形に隣接している場合はMust Attackとして扱われます。

戦闘の場合、戦闘の結果として、敵ユニットを除去や退却させたことにより、隣接する敵ユニットがいなくなる(または隣接する敵ユニットを攻撃できなくなる)といった理由が攻撃の実施回数無制限とするルールの決着がついたということでしょう。

戦闘解決手順は特徴的です。

  1. 攻撃を行うユニット、防御するユニットそれぞれについて「Battle Rating(戦闘評価値)」を決めます(最小値1、最大値10)
  2. 攻撃側・防御側はそれぞれの「Battle Rating」を元に10面ダイス1個をふり、判定表に基づいて攻撃側・防御側それぞれについて「Tactical Position (戦術的ポジション)」を決めます。結果は、悪い結果からSD/D/S/SA の4種類
  3. 攻撃側・防御側の「Tactical Position」が横軸・縦軸に配置された、「Attack Result Table」を見て、両方の結果から交差したマス目にある結果が戦闘結果になります

1.の「Battle Rating(戦闘評価値)」は、攻撃側・防御側双方いずれの師団ユニットでもいずれも「1」が基本値となり、次のような修正を施していき、加減算の結果が「Battle Rating」になります。

  • 砲兵支援(攻撃側・防御側双方)
  • 地形修正(防御側のみ)
  • 司令部の指揮修正(攻撃側・防御側双方)
  • 部隊士気値(攻撃側・防御側双方)
  • 攻撃支援(攻撃にあたって隣接する部隊がいた場合)(攻撃側のみ)
  • 同一軍団/師団効果(攻撃側・防御側双方)

2.の「Tactical Position (戦術的ポジション)」の結果は攻撃側・防御側それぞれについて戦闘結果の評価を行う内容になっています。

  • SA:Significant Advantage(著しく有利)
  • A:Advantage(有利)
  • D:Disadvantage(不利)
  • SD:Significant Disadvantage(著しく不利)

3.により判定される戦闘結果には次のものがあります。

  • 反撃:Counterattack
  • 後退
  • 潰走:Blown
  • 突破:Breakthrough
  • 災害的な損害:Disaster

中でも珍しいところでは潰走と訳している「Blown」と、災害的な損害と訳している「Disaster」でしょうか。

「Blown」となった場合、部隊ユニットはいったん除去されますが、2ターン後に戻ってきます。さながら兵士が混乱潰走しその収拾に1昼夜要するといったところでしょうか。なお「Blown」による除去とは別に部隊がプレイに戻ってくることがない「Eliminate」(完全除去)という処理があります。

「Disaster」は攻撃側だけに発生する戦闘結果で、攻撃したユニットは除去(Eliminate)され、その攻撃を支援したユニットは潰走(Blown)扱いになります。同様に「Breakthrough」は防御側だけに発生する結果で、「Disaster」と対になったような損害が防御側に発生します。

 

ルールが面白いので長々と紹介しましたが、他にも司令部の扱いや、冒頭のほうに登場した「分遣部隊(Detachment)」の扱いなどユニークなルールが点在しています。
英文自体はクリアなのですが、大事なことがちょろっと書いてあったりするので、できれば読み込むか日本語訳を用意したいところです。
実際のゲームにあたっては慣れるとスムーズにすすむ印象です。

今回はルール紹介だけでいっぱいになってしまいましたのでプレイの紹介以降は次回にします。

 

 

(つづく)

 

 

 

 

 

 

*1:ZOIは尖兵が展開しているエリアという説明

*2:戦闘モードから機動モードへの変更は次のターンの組織フェイズかつ敵のZOI/ZOC以外のヘックスにいる場合、可能です

*3:移動開始時に司令部ユニットの指揮範囲外にいるユニットについては、司令部ユニットに近づくような方向にしか移動できないという制約があります

*4:パスを一度宣言すると移動フェイズの残りで何もできなくなるため、すでに移動する必要がなくなったプレイヤーも移動が可能なユニットを使って、わざと無意味な移動を繰り返すことは十分に考えられます。こうした行いについて回数の制限(19回!まで)が設けられています。ただこのあたりの整理はルールとしてスマートではないように感じられました。なおこの移動回数制限ルールは解釈違いの可能性もあります

「OPERATION TYPHOON」(SPI/IED(国際通信社))を対戦する【1/3】新版の紹介+システムの紹介

 

IED(国際通信社)より再販されたビッグゲーム「OPERATION TYPHOON」を2日間・4人で対戦しました。

独ソ戦」開戦以来はじめて迎える冬が近づく1941年11月、モスクワを目指したドイツ軍による最後の攻勢作戦の作戦名を冠した本作は、ユニット総数800個・フルサイズマップ3枚というボリュームのビッグゲームです。

本作がSPI社から発売されたのが1978年で、1988年に日本語ライセンス版がホビージャパン社から発売されました。

当時から「プレイ可能なビッグゲーム」として人気を博していましたが、発売から数十年が経過し、絶版名作ゲームとしてオークションで高値取引されるようになって長い間経っていました。

その本作が昨年(2023年)、IED(国際通信社)より再販されるというニュースには大変驚きました。ホビージャパン版は保有していましたが、製品のアップデート半分、記念半分の理由でIED再販版も予約購入したものです。

 

 

 

 IED(国際通信社)版の紹介

ユニットサイズが12.5ミリから15ミリ、マップサイズがA1版からA0版に変更されています。
ユニットのサイズアップにより扱いやすく、視認性が格段に向上しているのですが、マップサイズが大きくなった分、プレイには広いスペースを必要とするようになりました。

他に、ユニットの初期配置に便利なチャートが整備されたことはプレイアビリティの向上に寄与しています。SPI/HJ版ではルールブックにある文字だけの配置リストをみながら並べる必要がありました。ユニット数が多いビッグゲームですからこういう地道なエイドの充実は助かります。

 

IED版とSPI版のボックス。新版のボックスアートはSPI版を意識したものになっています。

 

新旧マップサイズ比較。経年劣化か日焼け気味の小さいマップが旧作(SPI版)のマップの1枚です。旧版のマップが小さいといってもこのサイズのマップ1枚から2枚を使うのが標準的な作品ですので、本作新版のマップサイズがかなり大きいということになります。

ユニットはノンコーディングのSPIオリジナル仕様ではありません。SPIオリジナル仕様は独特の風貌があって好ましいのですが、耐久性・防汚性などを考慮するとコーディングが施されたのはやむなしというところでしょう。

 

マップ3枚を並べると、会議机6台を占有することになりました。
サイズはSPI/HJ版から変更になっていますが、森林ヘックスの美しい緑色が映えるカラーリングやマップデザインはオリジナルを踏襲したものになっています。

 

本作について、日本では今回のIED版含め2回、装いも新たに発売されているのですが、本国では1982年にSPI社が倒産した後、再販されたという話は聞きません。アメリカ本国で本作を入手しようとすると、SPI版をオークションなどで入手するしかないということでしょうかね。
アバロンヒル社がかつて販売していた作品群の権利が退蔵されているのと同様に、SPI社の作品群の権利も退蔵されたままなのかもしれません。

今回のIEDによる日本語版の再販について、Board Game Geek (BGG)の本作のフォーラムで次のような投書を見かけました。

日本人はかなりラッキーだよね。

コマンドマガジンが英語版を出したら、きっと売れると思うけど…

 

ゲームシステムの紹介

ゲームシステムは「Victory in the West Series System」と呼ばれるシステムを採用しています。同じシステムを採用した作品として、本作の他には同じSPI社よりオリジナルが発売され、ホビージャパン社より日本語ライセンス版が発売された次の3作などがあります。

  • Patton's 3rd ArmyThe Lorraine Campaign(1980) コマンドマガジン#81収録
  • SicilyThe Race for Messina(1981) 
  • Operation Grenade: The Battle for the Rhineland(1981) コマンドマガジン#133収録

 

基本的なスケール

1ターン: 1日

1ヘックス: 4.2キロ

1ユニット: ドイツ軍 連隊 (装甲部隊などは大隊)
       ソ連軍 師団 (戦車部隊などは旅団)

 

シーケンスと基本的なゲームシステム

補給判定ー移動ー戦闘と、シーケンスはシンプルです。ドイツ軍先攻で、ソ連軍と交互に手順を繰り返すIGoYouGo方式になっています。

シーケンスの中に第2移動や機械化移動、またはオーバーランなどの付加的な移動形態は組み込まれていません。
戦闘後前進の際に機械化部隊は特別な前進が可能です。また戦闘結果によって、「突破」の結果が出た場合は、防御側の後退位置まで決めることができます。

 

支配地域:ZOC

ZOC(支配地域)の縛りは弱い、「弱ZOC」にあたります。

敵ZOCからの脱出は、移動力半分を消費することで可能です。
戦闘結果による敵ZOCへの後退はペナルティ(スタック毎に追加1ステップロス)はあるものの可能です。

ZOC to ZOCの移動は不可能です。また敵ZOCから離脱したユニットは同じターンの移動の中で、敵ZOCに再び入ることはできないという縛りがあります。

 

戦闘ルール

マストアタック(隣接した敵ユニットに対して戦闘が強制される)です。
戦闘結果表は戦闘力比。結果は攻撃側か防御側の後退とステップロスとなります。ダイスは2D6。

特徴的なのは、ひとつのスタックから攻撃に参加することができる部隊数に制約がある点があります。

 

スタック制限

スタックから攻撃に参加する
ことができる部隊の制限

ドイツ軍

3個ユニット

1個連隊+2個大隊 または3個大隊

ソ連

2個ユニット

1個師団+1個旅団(または連隊)
または 2個旅団

 

同一師団効果、諸兵連合効果、航空支援によって戦闘力比率はシフトされます。
後述するようにドイツ軍ユニットの額面の戦闘力は、ソ連軍のユニットと比べた場合、決して大きくありません。むしろユニット毎の規模がドイツ軍の連隊単位に対して、ソ連軍の師団単位ということを受けてか、劣っていることも珍しくありません。

ところが同一師団効果や諸兵連合効果を組み合わせることにより、額面での戦闘比率が1対1や2対1といった低い比率であっても、各種効果を組み合わせることにより、大きくシフトさせることができます。

ドイツ軍はこうした特性のため、これらの効果が最大限活かすことができるような部隊運用を行うことになります。

 

本作の特徴的なルール

ここまで基本的なゲームシステムを紹介しましたが、タイフーン作戦を描き出すにあたっての本作の特徴的なルールを紹介します。
3種類の不確定要素が用意されており、プレイヤーは不確実な状況での判断を迫られることになります。

 

不確実な戦力(アントライド:UNTRYED)

本ゲームを特徴づける有名なルールです。

本作に登場するほとんどの陸上部隊については実際に戦闘に参加するまで、正確な戦闘力が不明な、アントライド(Untryed)というシステムを採用しています。

ゲームの中ではじめて戦闘に参加するユニットは、ユニット面に記載がある「規模」(A~C)と「士気値」(3~1)によって、チットを引きチットに記載がある数値をその戦力とします。

例えば、ソ連軍の最大兵力Aで、士気が高い3という組み合わせの場合、チットに記載がある戦力は10から20まであり、平均値は16程度になります。
最低兵力C、士気が低い1の組み合わせでは戦力値の分布は1から4平均は1と2の間くらいといった感じになります。

ドイツ軍は1ユニットの規模がソ連軍の師団規模に対して連隊規模と小さいため、1ユニット毎の戦力は小さいのですが、有力な部隊が多いです。ソ連軍はほとんどはかなり戦力値が小さいのですが、時々、驚くような数値の部隊が登場するという印象です。もちろんどのチットがドローされるのかは、プレイヤーにもわからないため、戦闘をしてはじめて判明するということになります。

 

不確実な天候

天候と地表の状況をそれぞれ毎ターン毎にダイスを振って決めます。

天候は晴天・曇天・降雪の3種類で、これにより航空支援の出動可能ユニット数が変わってきます。
地表の状況のチェックでは、泥濘・通常・凍結状態があり、凍結状態はさらに河川の凍結状況によって分かれます。凍結すると却って機械化部隊の機動力があがります。河川凍結となると、渡河にあたっての追加移動力が不要となります。

天候が降雪、地表の状況が凍結となると、積雪がはじまります。一度積雪になると、地表の状況により残り続けることになります。

登場するユニットには耐寒性という性能があり、ドイツ軍の全てのユニットとソ連軍のごく一部のユニットは耐寒性がありません。耐寒性がないユニットについては、積雪がある状態では移動力・攻撃力が半分になるというペナルティがでてきます。

 

不確実な補給

補給の制約が大きいのはドイツ軍で、ドイツ軍については4ターン毎に、登場する4つの「軍」に対しての補給の配分割合を決める必要があります。

 

ドイツ軍を構成する4つの軍

 

配分割合を決めると次にダイスを振り、軍ごとに補給下に置くことができる「軍団」の数を決めます。補給下に置かれた「軍団」は通常通りの攻撃力・移動力を使うことができるのですが、補給下とならなかった「軍団」は攻撃力が半減されます。

悩ましいのは、配分比率が低い場合実際に補給を配分したとしてもダイスを振った結果、ゼロに終わる可能性がある点です。こうなると配分は中途半端に平等にしてそれぞれの「軍」の配分割合が小さくなるよりは、一部の「軍」へは集中して渡す、それ以外は自立させるといった話もできなくはないでしょう。

 

またドイツ軍は補給線を「軍団」ごとに設けられた「司令部」から設定する必要があるため、「軍団司令部」から距離を置いた行動をとることが難しくなっています。この司令部からの距離は、積雪がはじまるとさらに短くなるため一層に戦線の展開の制約となってくるでしょう。

一方のソ連軍も補給源・補給線の制約はあるのですが、ドイツ軍ほど制約が厳しいものではありません。補給ポイントの配布といったことも考慮する必要がないなど、補給について言えば、ソ連軍はドイツ軍ほどの悩みどころは抱えていないことになります。

 

 

(つづく)

「モンスターメーカー5 ソフィア聖騎士団」(翔企画/銀河企画)をプレイする

 

モンスターメーカー5 ソフィア聖騎士団」(翔企画/銀河企画)は、1988年に発売された「モンスターメーカー」シリーズの作品です。2005年に銀河企画よりリバイズドとして再販されました(写真は再販版)。

 

 

 

ゲームシステム

ゲームシステムは難しくはないのですが、若干ややこしいです。
プレイ人数は2~8!人

プレイヤーは7つある「宝石」カードをより多く獲得することを目的とします(4つ以上、保有したプレイヤーが勝者)。

プレイヤーは「光」勢力か「闇」勢力の軍団を組成して、戦闘を通して「宝石」を奪い合います。軍団同士の戦闘は集団戦となり、魔法が飛び交い、キャラクターが次々と除去されていく派手なものになります。

ゲームの進行はシンプルです。
山札から順番に1枚ずつドローし、手札とします。
カードには「宝石カード」や、冒険者やモンスター(闇の軍団)などを表す「キャラクターカード」、戦闘の際に用いる「魔法カード」などがあります。

 

ゲームは、7人の「聖騎士」と7つの「宝石」カードが全て場に出た時点から2巡するか、山札が全てなくなるかしたタイミングで終了します。

 

「光の仲間たち」と「闇の軍団」

ゲームに登場するキャラクターは「光」と「闇」の2つ勢力からなる合計3グループに分類されています。

  • 光の仲間たち  聖騎士、冒険者
  • 闇の軍団

冒険者」グループの中には、「モンスターメーカー」からおなじみの「冒険者」キャラクターが多く含まれています。

 

カードの例。右手前の「戦士ディアーネ」などはシリーズ1作目からの常連メンバー

 

全部で7枚登場する「聖騎士」。
「聖騎士」は「闇の軍団」や「冒険者」たちと異なり、戦闘に負けても除去はされずに、「闇の地下牢」に閉じ込められます。地下牢から救出することによって、再登場させ自分の軍団に加えることができます。その際も「闇」勢力に属するキャラクターとの混在はできません。

 

闇の軍団。上のほうに置かれたカードは、首領級や幹部級のキャラクターとなっており、戦闘では下っ端(ゴブリンとか・・異型のモンスターとか)のキャラクターが倒されて初めて登場するというルールになっています。これにより戦闘の後半に行くに従って登場するキャラクターが強力になっていく、という盛り上がり演出になっているのです。

 

 

プレイヤーが「光」と「闇」のどちらの勢力になのかは固定されていません。

プレイヤーは手札からキャラクターカードを自分の軍団として場に出すのですが、「光の仲間たち」から構成されたカードを出している場合は「光」勢力となり、「闇の軍団」が出されている場合は「闇」勢力となります。

プレイヤーは場札の中で、「光の仲間たち」と「闇の軍団」のキャラクターを混在させることはできません。

ゲームの進行上、「光」から「闇」、またはその逆に変更したい場合は、その時点での場札を全て捨てて新たに場に軍団を作っていく、場に出ている軍団のカードを総取っ替えすることで変更することが可能となります。これぞ俗称「闇落ち」または「光落ち?」と言います。

 

基本的なゲームの進行

プレイヤーは、順番に山札からカードを1枚ずつドローします。

  • ドローしたカードが「宝石」カードの場合、手札には残さず、場札に出す
  • ドローしたカードが「聖騎士」カードの場合、手札には残さず場札に出すか、場札に出さない(出せない)場合は「闇の地下牢」に送る
  • ドローしたカードが「闇の軍団」「冒険者」、またその他のカードの場合は、手札に残すことができる。「キャラクターカード」の場合は、場札に出すことで「軍団」とすることができ、その他のカードは内容により使用することができる。
  • 他のプレイヤーを攻撃することができる

手番の終了時に手札5枚以下にしておく必要があります。
5枚を超えていた場合はいずれかのカードを使用することで5枚以下にします。

 

戦闘ルール

プレイヤーが攻撃を宣言すると軍団同士の戦闘がはじまります。軍団に参加することができるキャラクターカード枚数に制限はありません。

キャラクターには、物理攻撃力物理防御力魔法攻撃力魔法防御力の4つのパラーメーターがあります。攻撃力は振るダイスの数と修正値(例:3D+1 など)が記載されていますので、ダイスを振りその結果が相手の防御力を超えていれば、攻撃されたキャラクターカードを除去します。

戦闘にあたって「魔法カード」などにより全体魔法が発動される場合もあります。

 

闇の地下牢

倒されたキャラクターは通常、除去されるのですが、「聖騎士」の場合は除去される代わりに「闇の地下牢」に送られます。

 

「聖騎士」が「闇の地下牢」に送られるケース

  • 「聖騎士」が戦闘に敗北した場合
  • 「聖騎士」をドローしたが、場札に出さない場合
  • 場札に出ている「聖騎士」を取り除き「闇の軍団」に場札を変える場合

 

「闇の地下牢」に置かれた「聖騎士」はどのプレイヤーのものでもありません。

地下牢に幽閉された「聖騎士」は、いずれかのプレイヤーが「冒険者」からなる救出隊を派遣し、地下牢での戦闘に勝利することで、解放されます。解放された「聖騎士」は救出を実施したプレイヤーの軍団に加わることになります。

 

プレイ

「宝石」がない序盤戦

3人で対戦しました。

序盤、めぐり合わせでなかなか「宝石」カードがドローされません。「宝石」カードを持っていない相手に戦闘を行っても意味はないため、プレイヤー間で戦闘も起きません。

当方は、最初に「聖騎士」カード2枚を獲得したことから「光」勢力の軍団を作ったのは良いものの、場札に「光」勢力の軍団が配置されている間、手札の「闇の軍団」カードを場札に出すことができなくなります。

プレイヤーは場札の中で、「光の仲間たち」と「闇の軍団」のキャラクターを混在させることはできません。

自分の手番の終わりの時点で手札は5枚になるように、手札を使う必要があります。
手札を捨てるという行為は認められていません。

後から考えると、この時点で「聖騎士」2枚からなる軍団を他プレイヤーとの戦闘に出し、相手の勢力を弱めるか、または「聖騎士」カードを減らすようにすることができました。

この時は、手札制限を超えるタイミングで、場に出ている「聖騎士」2枚を「闇の地下牢」送りにし、手札に溜まった「闇の軍団」を場に出すことで手札制限の抵触状態を回避します。「光」勢力から「闇」勢力への鞍替え、いわゆる「闇落ち」です。

 

その後も「宝石」カードはドローされず、かといって「聖騎士」も登場しない。3人とも「闇の軍団」のキャラクターばかりが積み上がったため、3人とも場に並んだのは「闇の勢力」になります。

 

3人とも場に出ているのは「闇の軍団」です。
左側に写っている2枚の「聖騎士」カードは「闇の地下牢」に幽閉されたままです。

 

「宝石」カードは登場しないまま、3人とも巨大な「闇の軍団」を抱える状態になり、「闇の軍団」同士の戦闘がはじまります。

軍団に属するキャラクターカードの枚数に制限はありませんが、手札枚数の制約が戦闘開始の契機になる可能性はあります。

強力と思われた我が軍団は、戦闘の相手から最初に出された「魔法」カードによって発動された全体魔法により、半数のキャラクターが何もしないまま除去されるという、甚大な損害を被ります。

「光」勢力の軍団同士は互いに戦闘することはできませんが、「闇」勢力の軍団同士は戦闘を行うことができます。

 

三つ巴の争いの中、強力な「全体魔法」や「闇の軍団」の中でも強力な幹部クラスの活躍などもあり死屍累々と損害が積み上がっていきます。

 

聖騎士の救出と「光」軍団の組成

中盤にいたりようやく各陣営に「宝石」カードが登場しだす中、地下牢に5人の「聖騎士」が幽閉されていることに気づきます。

 

「闇の軍団」同士のつぶしあいの戦闘が相次ぐ中、いつの間にか増えていた幽閉中の「聖騎士」たちです(足しか見えていませんが)

 

手元にある「冒険者」キャラクターを集めることで救出隊が組成できるではないか!ということで救出行に出発! 
冒険者」キャラクター3人のうち2人を失うという犠牲を払いながらもかろうじて救出。5人の「聖騎士」を連れ出すことにことに成功するのです。

こうして「光」勢力への返り咲き、「闇」勢力から「光」勢力への転換です。

 

精鋭揃いの「聖騎士」を5人も揃えた軍団。「聖騎士」はキャラクターカードの中でも戦闘力では中位~上位に属するため、かなり強力。他プレイヤーから見れば脅威だったでしょう。

「光」勢力同士のすくみ状態とシーフの意外な活躍

このタイミングでその時点で最強の「闇」勢力を揃えていたMさんが、「聖騎士」カードをドローしたタイミングで、場に出ていた「闇の勢力」カードを一掃し、「光」勢力に展開しました。これで、「光」勢力同士は戦闘をできないことから、Mさんの「宝石」カードを奪いに行くことができなくなります。

その後、もう一人の闇勢力であったOさんから戦闘を宣言されます。冒頭からの「全体魔法」連発に怯みかけますが、最後は力押しで闇勢力を蹴散らします。というところでこちらも「光」勢力の軍団が登場しました。

こうして3人とも「光」勢力となったことから、互いに戦闘は不可能になります。

この3プレイヤーのすくみ状態の中で陽の目を見たのが、「シーフ」です。
「シーフ」カードは、他プレイヤーが保有する「宝石」カードを盗むことができるという効果があります。これには「光」も「闇」も関係ありません。ただこの分捕り合戦も「シーフ」カードが尽きたところで収束します。

 

最後の決戦

この時点で当方が「宝石」の5個を保有する状態となっています。ここでMさんが乾坤一擲の「闇落ち」を行います・・・。

このまま「光」勢力のままでいると戦闘も起こすことができず、状況が動かない!と、「聖騎士」を中心とした「光」勢力による軍団を捨て、再び「闇の軍団」を集め、戦闘に挑んできたのです。

Oさんとの戦闘において「聖騎士」の一人を失っていたものの残る4人の「聖騎士」を中心とする軍団対「闇の軍団」です。

「闇の軍団」の首領級の魔法使いによる魔法攻撃に苦戦するものの、押し切りました。

 

最終決戦後の状況。
「聖騎士」4人(左から4枚)を中心とした軍団に、7枚の「宝石」カードが集まりました。

感想戦

「光」と「闇」がころころ変わるという仕掛けで、それにつれ手持ちの軍団ががらりと変わるのには驚きました。またゲーム終盤につれて強力なカードが残っていくため、終盤にかけての決勝戦感の演出は素晴らしいものがあります。

基本はシンプルなので考えなくても進行できるのですが、考えるべきところはもあるという非常に楽しい、他では類をみない作品になっています。

さすがの鈴木銀一郎というべき作品でした。

 

MitsuさんによるAAR

 

 

 

再販版はまだAmazonで入手できます。発売されてかなりたつので急いだほうがよいかも!

シリーズ第1作のリメイク版です。
本作に比べるとかなりシンプルなゲームになっています。

 

 

「Triomphe a Marengo」(マレンゴの勝利)(Histogames)を対戦する

細長い積木駒と、戦場地図を模したデザインのマップという印象的なコンポーネント「Triomphe a Marengo」(マレンゴの勝利)(Histogames)を対戦しました。

題材となったのは1800年6月14日にオーストリアとフランスとの間で戦われた「マレンゴの戦い」です。1798年に結成された第二次対仏大同盟の一角をなすオーストリアを打ち破ろうとフランス軍が対抗。両軍が進出した先の北イタリアで発生した遭遇戦になります。

 

 

 

 

「Triomphe a Marengo」の一場面。
細長い木の棒/積木/ブロックが部隊を表します(歩兵の場合は1個=2000人なので1個連隊くらいの規模かな?)。青はフランス軍、赤はオーストリア軍です。

駒は、適当に置いているように見えますが、場所や向きなど意味があります。

 

特異なゲームシステムのためなかなか勘所がわからなかったというのが正直なところです。どこがわかりづらかったのか、本作の魅力にもつながる部分ですので整理していきましょう。

 

ゲームシステム

当方の理解のために書いています。詳細内容は省略している部分があります。
また理解に間違いがあればご指摘いただければありがたいです。

 

指揮ポイントとアクション

1ターンのスケールは1時間です。
プレイヤーは交替でアクションを実施するIGoYouGo方式です。
プレイヤーはひとつのターンに3指揮ポイントを使用することができ、指揮ポイントを使うことでアクションを発動できます。各アクションでは通常、3つの部隊駒を操作することができます。

指揮ポイントの消費が不要なアクションがある、付随的に発生・実施できるアクションがある、さらに次に書いている「リザーブ」と「アプローチ」という考え方によりアクションの実施条件や内容が変わってくるなど、マニュアルのページ数に比べるとややこしいものになっています。

 

通常実施できるアクション

  • 通常行軍
  • 道路行軍(条件下で指揮ポイント不要)
  • 急襲(Manuvure Attack)
  • 砲撃(指揮ポイント不要)
  • 突撃(Assault)
  • 再編成

 

リザーブとアプローチ(部隊が配置される場所)

エリアマップですが各エリアの中で部隊を配置する場所として、「リザーブ」と「アプローチ」の2種類があります。

「アプローチ」はエリア同士が隣接した部分が該当します。例えば、四方を4つのエリアに隣接したエリアの場合は、「アプローチ」として4箇所、それ以外に「リザーブ」が1箇所存在することになります。部隊を表す駒はエリアの中で、これら合計5箇所のいずれかに存在することになります。
マップの中では、エリアはきれいに正接しているだけではなく、隣のエリアにはずれながら隣接したり、エリアの形状が三角形のものから最大7箇所のアプローチを持つエリアまでありますので、エリアによって「アプローチ」の数は変わってきます。

 

「Triomphe a Marengo」Rules of Play より抜粋
「アプローチ」と「リザーブ」の例
Blockingと示された駒が「アプローチ」の位置になります。

 

エリアの中で部隊駒が、「リザーブ」にいるのか、「アプローチ」にいるのかによってその後の移動や戦闘方法が異なってきます。ひいては、本ゲームの戦術(テクニック)や作戦を考える上で避けては通れない要素となっています。

 

 「通常行軍」は、「リザーブ」と「アプローチ」間、または隣接するエリアの「リザーブ」に移動するものです。

「道路行軍」も通常行軍と同様に敵がいないエリアを通って、道路を使うことによって最大3エリア移動可能になります(交通量・移動方向による制約あり)。
「舗装道路」*1を使う分には、指揮ポイントが不要という点も注目です。指揮ポイントが不要のため、進撃の主軸は「舗装道路」に沿ったものになります。

「急襲(Manuvure Attack)」は英語のほうが感覚的には理解しやすいかなと思います。「急襲」で相手に詰め寄って、相手が自分のエリア側の「アプローチ」に部隊を移動できなければ、そのままそのエリアを奪う。相手が「アプローチ」に部隊を移動できれば、「急襲」は終わりですが、次のターンに「突撃(Assault)」により、「アプローチ」から相手の「アプローチ」に対する攻撃を行うということになります。

「急襲」が相手の弱いエリアやその「アプローチ」に対して突っかかっていく(まさに機動的な攻撃)のに対し、「突撃」は相手と向き合った「アプローチ」同士でガチに戦闘を行うアクションになります。

 

「急襲」や「突撃」による戦闘の結果、防御側が敗北するとエリアから「退却」することになりますが、「歩兵」「砲兵」部隊の場合は「退却」時に損害をこうむるのですが、「騎兵」の場合は損害を受けることなく「退却」できます。

このゲームにおいて士気も重要な要素であり、戦闘の勝敗によって士気があがったり下がったりします。「退却」を重ねすぎると士気ポイントを失い、士気崩壊に至る懸念もあります。

勝利条件はどちらかの軍隊の士気が崩壊すると決定的勝利、それ以外はマップ途中に設けられた勝敗決定のラインを一定部隊数を突破させるとオーストリア、阻止するとフランス軍の勝利となります。

なお、ナポレオンなどのキャラクター駒はありません。

 

プレイ


マップ全景。
左端の大きな河川の左側からオーストリア軍が登場します。
フランス軍はいくつかの部隊がマップ左側に点在、残りはマップ右端から増援として逐次投入されてきます。

 

一戦目

フランス軍を担当します。

初期配置の状況(上の全体マップと左右逆なことに注意)
集結したオーストリア軍はマップ右端に固まっています。
フランス軍は初期状態では写真に見えている部隊しかありません。残りは逐次投入により複数回にわたり援軍としてマップの左端(写真には写っていない)から登場します。

赤色のオーストリア軍はマップ右端の大きな河を渡ってくるため、進軍路は黄色の矢印で示した箇所からになります。
青色のフランス軍について、配置場所は決まっているものの、どの部隊が配置されるかはランダムになっています(10個ユニットのうち3個が騎兵、残りは歩兵)。またゲームスタート時にはオーストリア軍による奇襲だったことをうけて、すべての部隊は混乱状態から始まるため、まず「再編成」アクションを実施しなければ他のアクションを実施できません。

つまりオーストリア軍は初期状態では渡河のため少しずつ(1ターンに最大4部隊)の登場となること。一方のフランス軍は「再編成」アクションにより活性化(1ターンに2~3部隊程度)しなければならないことと、スタート当初は両軍とも制約を受けています。

地形を見ると、オレンジのラインが「舗装道路」にあたります。箇所ごとに通過できる部隊数の制約はあるものの、「道路行軍」によって「指揮ポイント」の消費なしに活動できるため、部隊展開は「舗装道路」または「小道」(破線で表現)を中心にしたものになります。
特に写真下側に走る「舗装道路」にはフランス軍部隊が配置されていませんので、フランス軍はなんらかの対処を行わなければ、オーストリア軍に”突破”される懸念があるでしょう。

写真に記入した水色の太線は河川と湿地によって地形効果が高い防衛線になります。薄赤色の丸印は村落/集落を表し、ここも地形効果が高くなっています。

 

河川の地形効果に気づいたのは後からでして、一戦目では易易と中央部を渡してしまっています。その後も「退却」を重ねたことから、士気を失い、投了です。

二戦目

再びフランス軍を担当します。

一戦目の教訓として「騎兵」の重要性です。

「騎兵」は「歩兵」に比べ、次の特色があります。
特に退却を重ねる必要があるフランス軍にとって3番目の特色は重要です。

  • 「継続移動」により「歩兵」より一手番少なく「アプローチ」に移動できる
  • 「道路行軍」の途中に「急襲」ができる(これは今回のフランス軍で試す機会はありませんでしたが)
  • 「退却」時に損害を負うことがない

「歩兵」を配置して「退却」させるのではなく、殿は「騎兵」に任せるのです。

 

第二戦の第1ターンです。
騎兵をうまくつかって後退戦を戦うというのはわかったのですが、フランス軍はランダム配置+混乱状態のため、騎兵ユニットの位置を確かめ、さらにどこから活性化していくかを考える必要があります(写真のフランス軍ユニット脇に置いたカラーマーカーは「混乱」状態であることを表しています)

 

第6ターン(ぐらい)
オーストリア軍がすべて姿を表し、フランス軍の援軍がマップの左のほうに姿を表している状態です(史実ではこのタイミングで現れる援軍の中にナポレオンはいました)。

フランス軍としては河川や村落といった防御拠点を利用した戦線を張っていますが、各正面戦力ではオーストリア軍に部隊数で劣っています。この後、オーストリア軍による騎兵を活用した「道路行軍」+「急襲」により部隊を置いているエリアに対して複数の「アプローチ」が襲われ、フランス軍はその対応に追われることになります。

 

第10ターン(ぐらい)
今回の終盤。
フランス軍の右翼は援軍が到着したことにより厚くなっていますが、左翼はオーストリア軍の延翼運動についていけなくなり、薄くなった左翼中央部を「突撃」で攻撃されています。今回の攻撃には耐えられても、オーストリア軍の「リザーブ」に残っている部隊を考慮すると、戦闘に負けて「退却」されるのは必至でしょう、というところで投了です。

 

感想戦

マニュアルは決して厚くはないのですが、ゲームシステムと兵種毎の機能のメリハリの付け方が独特で理解までに時間がかかったことは投稿した通りです。ついには本記事に付したような表をつくって理解に努めた次第です。

システムで描こうとする内容は理解できますし、方向性は面白いものがあります。

フランス軍が実施すべきは、オーストリア軍の攻撃を真正面から受けたり、延翼運動につきあうのではなく、戦力の希薄化を避けるため戦線を広げないように注意深く後退戦を行うというところでしょうか。増援の到着まで士気も戦力も維持していくことが必要です。
「騎兵」の機能(特に「退却」時のノーペナルティ)を有効利用するというのはわかるのですが、ゲーム上、どのように扱っていくのかは研究が必要です。

オーストリア軍は第2戦目であったように、優勢な部隊数と「騎兵」の能力を活かしつつ、フランス軍が抵抗するエリアではひとつの「アプローチ」からだけではなく、複数の「アプローチ」から接触し、フランス軍の戦力を分散、さらに拘束を行いつつ、局所的な戦力の優越を利用して戦闘に勝利していくことで、フランス軍の士気崩壊を目指すというところでしょうか。

初期状態で、フランス軍は騎兵の配置位置が未確定のため、プレイの度に対処が変わることになるでしょう。それに応じてオーストリア軍側も侵攻路が変わっていくのかもしれません。

兵力や兵種が隠匿配置になるため、ソロプレイには適していないのは残念ですが、戦術(テクニック)や作戦を研究したくなる好作です。

(終わり)

 

コマンドマガジンで収録された「マレンゴの戦い」は、SPIの「NAPOLEON AT WAR」(略称:NAW)の中の1作。NAWのリリースは1975年なので実に半世紀前にデザインされたゲームです。こうして日本語化され収録されるなど、いまだに人気作であることがわかります。まだ在庫があるようなので、欲しい人は急げ!
「Triomphe a Marengo」とは、ユニットはともかくマップの印象がかなり違うので、同じ戦場とはわかりにくいです。

 

細長い積み木駒で美しいマップという組み合わせは本作を思い起こさせます。コンポーネントが美しいゲームはプレイしていて気持ち良いですよね。

 

 

 

 

 

 

*1:他に「小道」がある

「モンスターメーカー(新版)」(アークライト)をプレイする

 

懐かしいカードゲーム「モンスターメーカー」をプレイしました。今回プレイしたのは、アークライトからリメイク再販された新版で、翔企画によるオリジナルからはプレイアビリティを高めるように若干ルールが変わっているようです。*1

オリジナルは1988年、ちょうどD&DなどのTRPGが流行り始めた頃に発売されました。”「イラスト入りRPG 風カードゲーム・ブーム」の嚆矢となり 、日本におけるカードゲームブームの火付け役になった”、とウィキペディアにも記述されています。

デザイナーは数々の名作ウォーゲームをデザインした鈴木銀一郎氏。
本作はシリーズ化され、さらにはキャラクター・世界設定を同じくするボードゲームコンシューマゲーム・コミック・小説などのメディアミックス展開されました。

鈴木銀一郎氏が2021年に逝去された際にアークライト社にて企画された「メモリアルボックス」には「モンスターメーカーメモリアル」という特別版が収録されると発表されていましたが、残念ながらクラウドファンディング自体が成立しなかったため、話は流れてしまったようです(どこかで復活しないものかしら?)

・・今回の「モンスターメーカーメモリアル」は、アークライト・リメイク版のルールを元に、モンスターメーカーファンには嬉しいアイテムやモンスター・キャラクター達が組み込まれたものを予定。キャライラストの殆どを九月姫が描く特別版となります。  鈴木銀一郎メモリアルボックス特設ページ より

 

 

ゲームの目的

プレイヤーはダンジョンを探索し宝物庫から宝物を持ち出し、帰還することを目的とします。得点は持ち出した宝物の価値によって得ることになります。宝物庫から宝物を持ち出せても、ゲームの終了までに地上に帰還できなければ、得点は得られません。

 

ゲームシステム

マップはありません。
ゲームの最初にメンバーを選んで、パーティを組成するといった手順もありません。*2山札から5枚の手札をドローするだけです。

基本的には自分の手番には、手札が5枚になるように整え、その後、1枚ずつ場にカードを出していくことになります。

ドローするカードには大きく次の種類があります。

 

迷宮カード 

迷宮カードには数字が書いてあります。迷宮カードに書かれた数字は自分のパーティが進んだ距離を表します。場に出した迷宮カードに記載された距離の合計が100に達するとダンジョンの奥にある宝物庫に到着したことになります。
宝物を持ち出した後、今度は同じく距離を100進むことができると地上に戻れたことになります。
他のプレイヤーはこれを見ながら相手の進み具合を確認することになります。

 

モンスターカード 

ダンジョンの中で遭遇する様々なモンスターが描かれています。プレイヤーは他のプレイヤーの前にモンスターカードを出すことで、そのパーティの移動を止めることができます。モンスターカードを出されたパーティはモンスターカードを取り除くか、迂回しない限り、前進することができなくなります。

モンスターのイラストはリニューアルされて旧作の面影はあまり感じませんでした。好みから言うと旧作のほうがよかった?

 

キャラクターカード

他のプレイヤーにモンスターカードを出されて進路を塞がれた場合、場に出すことができます。パーティに属する冒険者ということになります。
カードに書かれた個数のダイス(例: 4D+3、3Dなどと書いてある)を振って、モンスターカードのモンスターの強さを越えることができるとモンスターを倒したことになります。
冒険者カードは複数枚同時に出すことも可能です。複数の冒険者カードに書かれたダイスの個数分を振ることになります。強い冒険者を登場させると、それだけでたくさんのダイスを振ることになりますね。

出したダイスの目の合計がモンスターの強さ以下の場合は倒せなかったことになり、モンスターはそのまま残り、冒険者カードは捨札になります。
同様にモンスターに勝った場合も冒険者カードは捨札になります。つまり冒険者カードは使い捨てなのです。

旧版に登場していたキャラもいますが新顔も混じっているようです。

 

その他のカード

1枚を残して強制的に手札を捨てなければならない「トラップ」、「トラップ」を回避できる「シーフ」、進路を妨害するモンスターとの戦闘を回避できる「回り道」、追加で宝物を得ることができる「隠し部屋」などなどイベント系のカードが用意されています。

宝物庫から持ち出した宝物(宝物カード)の中には、重すぎて持ち運びに時間を要するもの(地上に帰りつくまでの距離が延びる)や、キャラクターが戦闘に使うことができる武具・魔法具などのアイテム系のものもあり、バラエティがあります。

 

感想戦

それこそ数十年ぶりのプレイでしたが、ファンタジーRPGの世界から色々削ぎ落とした構成の妙を感じたのとあわせ、シンプルすぎるくらいの構成にいまさらながら驚きました。
モンスターカードを出すことで他プレイヤーの邪魔は可能ですが、それぞれ別のダンジョンを探索しているという設定だからか、PvP(プレイヤー対プレイヤー)戦闘は起こりませんし、ダンジョンと言いながらも道に迷うことはない一本道で進行します。

あまり考える点もなく、基本的にはカードの引きとダイスの目にかかっているといってよいでしょう。

道を塞ぐモンスターに、キャラクターカードで戦闘を挑むも少しの差で敗北が続く、迷宮カードをドローできずに進みたくても進めない、迷宮カードはドローしてもキャラクターカードをドローできずにモンスターを倒せない、などなどシンプルな中にもドラマが生まれるのは良いですね。

プレイ時間も短いため、空き時間の有効利用に良いのではないでしょうか。

(終わり)

 

*1:旧版は手元にないためルール変更点の比較はできませんでした。

*2:マップはないし、プレイの最初にパーティを組む訳でもない、といった構成は当時は斬新だったように思います。

「CAROLINGIAN TWILIGHT: Decline of an Empire AD814」(S&T)を対戦する

S&T誌342号 2023年9月‐10月号の付録の表題ゲームを対戦した。
カロリング朝の黄昏: AD814 帝国の衰退」は、814年のカール大帝の逝去後の大帝国の継承を巡る9世紀から10世紀の争いを10のシナリオで扱っている。

 

 

歴史的背景

フランク王国最盛期の王、カール大帝は東はエルベ川から西はピレネー山脈、北は北海、南は地中海に及ぶ大帝国を樹立した。

カール大帝は自分の帝国をフランク族の慣習に従い、3人の息子に分割することと定めていた。大帝が当時の平均寿命の2倍にあたる72歳まで生きる間に、長男カール、次男ピピンが先に死去したことにより帝国全土は三男のルイが単独で継承することとなった(シナリオ1: 長男・次男が早逝しなかったら、という仮想シナリオ 806年)

 

三兄弟のうちひとり残り、帝国を継いだ「敬虔王ルイ1世/ルードヴィヒ1世」は、彼の三人の息子に領土を分割相続させることにしていたが、新しい妻との間にできた4人目の息子シャルルが登場したことで混乱が生じた。
相続領地が減ることに不満を募らせた3人の兄たちは反乱により皇帝を廃したが(830年)、三人の中での取引が決裂したことから、皇帝が復権した。その後も長兄ロタールによる再度の反乱(833年)と 皇帝の再々登場など勢力争いが続いた。
840年、三男ルートヴィヒが起こした反乱鎮圧にむけた出兵途中で、皇帝が逝去すると兄弟間の抗争は武力衝突に発展した。

 

843年、ヴェルダン条約により、帝国は長男ロタール、三男ルートヴィヒ、末子シャルルによって三分割され、それぞれ西フランク王国中フランク王国東フランク王国となったた(シナリオ2:843年)。*1

以後も同様の争いが続くが、長いので割愛する。

 

ゲームの紹介

プレイヤーは、フランク帝国を継承する王国の継承者の勢力となる。
1ターンは1年に相当。

 

今回プレイしたシナリオ1のスタート時の状況。長兄シャルル(青色)を担当。次兄ピピン(黄色)、三男ルイ(赤色)の初期状態での領地と保有する兵力は決まっている。
他に非プレイヤーの大勢力として、ムスリム(薄緑)、ビザンティン(紫)、スラブ(海老茶)、ブルガリ(グレー)の4勢力が登場。他の点在する明灰色のスタックは中小勢力となる。

 

 

ゲームの特徴

難易度は高くはないが、特徴的な要素もある。

  1. 非プレイヤーの大勢力は、ビッドで決めたプレイヤーが操作する
    シナリオに登場する、非プレイヤーの大勢力(シナリオ1の場合は、ビザンティン帝国ムスリム、スラブ族、ブルガリ族が対象)は、勢力毎・ターン毎にビッドを行い、競り落としたプレイヤーが操作することができる

  2. プレイ順はビッドで決める
    プレイヤー勢力・非プレイヤー勢力含め、各ターンのプレイ順はビッドによって決まる(シナリオ1の場合、プレイヤー3勢力、非プレイヤーの4つの大勢力の計7勢力にてプレイ順を決める)

  3. ヴァイキングによる襲撃
    ヴァイキングは上記の非プレイヤー勢力とは異なる勢力として専用ルールに従い、毎ターン登場する。北海エリアからはじまり、ランダムに選ばれた海岸エリアに上陸・襲撃する。ダイスの目次第では確率は低いとは言え地中海岸にまで現れることもありえる。実際今回のゲーム中では地中海にまで出没した(上陸までは至らなかった)。
    その地の軍勢を全滅させると、エリアは略奪されたことになり、「荒廃」する。一度荒廃したエリアからは、「税収ポイント」を投下して回復するまで、「税収ポイント」「外交ポイント」といった収入を得ることができなくなる。

  4. 都市を多く抱える勢力は外交や政治力に優れる
    マップ上には、エリアと都市があり、エリアからは「税収ポイント(Levy Point)」、都市からは「外交ポイント(Deplopatic Point)」を得ることができる。「税収ポイント」は、徴兵・兵力維持・カードの購入等に用いる。「外交ポイント」は、非プレイヤー勢力の操作やプレイ順のビッド等に用いる。「税収ポイント」はターン毎に使い切り、「外交ポイント」は次のターンに持ち越し可能。

  5. キャラクターの扱いは軽い
    王位継承者は、キャラクターユニットとして登場する。キャラクターユニットがいるスタックは活動ポイントが+1されるが、それ以外にはキャラクタースキルやキャラクターによるアドバンテージはない。キャラクター周りはあっさりとしている。

  6. 移動‐戦闘はスタック毎に行う。活動を行うスタック毎に1D6により出た目がそのスタックの活動ポイントとなるため、ダイスによってかなり差が出る。なおスタックに含まれる兵力の制限はない。

  7. 戦闘はブラッディー、いろいろ仕掛けは凝っているが・・
    陸上兵力はコストが安い順に、民兵・戦士・遊牧民Nomad)・野戦軍の4種類がある。他に艦隊ユニットがあり、それぞれ購入・維持にコストを要する。
    戦闘解決表は、参加する兵力の構成によって3種類の表を使い分ける。
    戦闘力比率ではなく、戦闘力によるファイアパワー方式のため、防御側の兵力の質によらず、攻撃側の火力の大小だけによった戦闘結果となる。
    より強力な兵力で構成された軍勢ほど相手にダメージを与えやすくなっている。
    最も一般的な戦闘解決パターンの場合、「防御側の反撃」という結果が一定割合(火力が大きくても最低1/3の確率で、防御側の反撃という結果を生む)で含まれる。戦闘結果として、相手側が一方的に除去される結果も多いため、ランダム性が強く、派手にユニットが除去されていくというブラッディーな印象。

プレイ

第1ターン

ドイツを中心に勢力を持つ長兄シャルル(青色)を担当。

シャルルは勢力圏内に最も多くの都市を持っているため、他の2勢力よりも最初からDP(外交ポイント)で有利だ。DPが有利ということは、プレイ順番や、非プレイヤー勢力を操作する権利のビッドの際の原資が多いということになる。

第1ターン、順番を決めるビッドは、初回よりプレイ順にこだわる理由付けがわかっていないので、3人とも二の足を踏む。戦闘システムが先手番有利な仕組みなので、ゲームが錯綜し始めるとより早い手番を獲得するのは意味が出てくるのだろうがこの時点では、他のプレイヤーのプレイを見て進めることができる後手番を選ぶのが得策?

 

続けて、非プレイヤー大勢力の操作を取るビッドを行う。
非プレイヤー勢力の操作にあたっては、あからさまに勢力が占拠しているエリアを空にするといった行為は禁止されているが、恣意的な操作は許されている。例えば、競合する他プレイヤーのエリアを攻撃し、相手を弱体化させる、エリアを占拠することなどは問題ない。自勢力の軍勢と混在させることはできないが、隷下の同盟軍のような使い方はできる。

東方から欧州を侵略してくる「スラブ族」を操作する権利を獲得した。仮にスラブ族が他のプレイヤーに操作された場合、侵略の向かう先として距離が近いこともあり、シャルルの領土が狙われる可能性が高いことを考慮すると、スラブ族を操作する権利を得ることは、防衛行為でもある。

 

4種類の非プレイヤー大勢力も含めてプレイ順が決まると、もう一つの非プレイヤー勢力であるヴァイキングの襲撃判定となる。この年、北海を出航したヴァイキングアイルランドを襲った。アイルランドには中小勢力しかなく、根絶やしにされたため同エリアは「荒廃」状態になった。

 

操作する権利を得た「スラブ族」を使いピピンの領土(黄色)に圧迫を加えさせた。
シャルル本人(青色)は、ピピンが領する南ドイツにあたるSWABIA(スワビア)に出陣するものの、戦闘結果が思わしくなく占拠に至らない。その隙に、ルイの軍勢によって、都市ジュネーブが位置するBURUGUNDY(バーガンディ/ブルゴーニュ)エリアを占拠されてしまう。

 

第1ターン終了時。プレイヤー勢力の勢力圏には大きな変動はなかった。
アイルランドヴァイキングに襲撃され「荒廃」状態(赤いマーカー)に陥った。ダルマチア地方でコンスタンティノープルを出撃したビザンティン帝国の精鋭の野戦軍2個ユニットが、あっさりとピピンの軍(黄色)に敗北し、ダルマチアピピンが占拠した。シャルルはジュネーブを含むブルゴーニュエリアをルイに奪われた。

 

第2ターン

スペインを北上したムスリム(非プレイヤー大勢力のひとつ;緑色)に反撃を与える形でルイ(赤色)の勢力がリベリア半島北部に伸びている。ムスリムは今度は、北アフリカより艦隊を擁して、ローマ教皇領のローマに上陸、ローマ一帯を占拠する。後に、教皇軍(中小勢力)を支援することになったピピンの軍が、ローマを奪回することになる。

東ではスラブ族(茶色)が、ウィーンがあるエリアやレーゲンスブルグがあるババリア地方といったピピン領の中欧に侵攻する。

 

戦闘は運の要素が多分にあり、参加した片方の軍勢が全滅するリスクを抱えていることから、なかなかプレイヤー勢力の軍勢同士の戦闘は起きにくい(勇気がいる)。大軍で挑んでも、ダイスの目次第であっという間に兵力を減らしてしまうこともある。
シャルルも勇んでブルターニュ半島に3倍の兵力を抱えて進軍したものの、現地の中小勢力(ブルターニュ族)の軍勢に蹴散らされてしまった。

少しでも運の要素を減らそうとすると、購入コスト・維持コストが高価な「野戦軍」を揃えるしかないのだが、これも決して圧倒的な差がある訳ではないため、ユニット除去となることを考慮するとコスパはよくないように思える。

 

第3ターン

黒死病が大陸を襲い、ダイス判定に失敗した都市は全滅(DPを得られない。駐留している兵力が全滅)することになる。シャルルの版図の中ではマインツが該当、他にもコンスタンティノープルシラクサ、レオン(イベリア半島の都市)など複数都市が失われた。(紙のマーカーではなく、ガラス玉を置いている都市が疫病となった箇所)
こうした折にもヴァイキングがシャルルの版図である北ドイツのSaxony地方を襲い、都市ハンブルクも含め「荒廃」してしまう。
バルカン半島を北上し、中欧まで勢力圏を伸ばしてきたビザンティン帝国に押されていたスラブ族に対して、ピピンの軍がアルプス山脈を越え、スラブ族の支配下にあったババリア地方やウィーンを奪回しようと攻め寄せた。
シャルルは懸案のブルターニュ半島をようやく占領する。

 

第4ターン

ヴァイキングはこの年も猛威を奮い、またもやシャルルの版図であるフランダース地方(オランダあたり)を襲う。駐留軍はまたたく間にけちらされ、Quentovic(カントヴィク)の都市ともども荒廃させられた。
黒死病と度重なるヴァイキングの襲来にシャルルの国庫は逼迫した。

スラブ族支配下にあるウィーンではピピン直卒の軍勢による包囲戦が行われようと両軍の軍勢が集結する。シャルルも漁夫の利にあずかろうと近くのエリアまで進出するが、戦闘の不確実性を考慮し、ピピン領への侵攻には二の足を踏んだ。

 

第5ターン

ピピン軍との決戦のため手薄になったスラブ族の本拠地方面へ、シャルルの遠征軍が進出する。スラブ族のエリアには都市はなくまた税収ポイントも小さいのだが、ないよりましというところ。
ルイはイベリア半島にあった中小勢力の領土を併呑した。

ここで時間切れ終了とした。

 

勝敗は、領土+都市のポイント+DPの残ポイントの合計数の大小で決まる。
領土・都市については、シャルルが大きかったが、DPの残余によりルイが1位となった。

 

感想戦

後の欧州諸国の分割の元となった領土紛争を扱っているだけに歴史的な興味はつきなかった。これらの争いの結果次第で、後の世のフランスやイタリアやドイツの国境が変わっていたかと思うと興味深いものがある。

 

非プレイヤー勢力をビッドして操作するのは楽しい

ゲームシステムとしては、非プレイヤー勢力をビッドで操作する権利を得て操作するという点が面白かった。今回はそれぞれがメインに操作する勢力が固まったが(例えば、シャルルはスラブ族を主に操作した)、ここぞいう場面では、ビッドが荒れて、操作する勢力が変わることで、その勢力の侵攻の矛先が変わることも十分に考えられる。

 

戦闘のギャンブル性が高く、大勝負に乗り出しにくい

戦闘システムは後にも書いているがギャンブル性が高いため、なかなかプレイヤー勢力同士の大戦争にはなりにくい印象だった。
戦闘にあたっての必勝手段や手法がないため、ドラスティックにプレイヤー勢力の版図が変わるという場面もなく、押し合いへし合い、それも非プレイヤー勢力を使った代理戦争のような手段による小競り合いが続いた印象だ。
もしかするとカードの中には、戦闘において決定的な打撃を与える類のものがあったのかもしれないが、登場しなかった。

 

雑誌ゲームらしく色々足りないーユニットが足りない

兵力ユニットはプレイヤー勢力、非プレイヤー勢力とも共有。スタックの一番上に所有している勢力のマーカーを置いて区別する。ここまではよいのだが、兵力ユニットが共有していくには絶対的に足りなかった。
今回3人プレイでぎりぎり綱渡り状態だったが、兵力を追加する毎に、かなり頻繁に、ユニットを探し回ることになった。
雑誌付録のためコンポーネントの制約があったことは想像できるが、プレイアビリティを阻害していた点は否めない。

 

雑誌ゲームらしく色々足りないー戦闘ルールはディベロップ中?

陸上兵力の兵種は、下から民兵・戦士・野戦軍遊牧民ノマド)の4種類も登場するが、購入コスト・維持コストと、ブラッディで次々とユニットが除去されていく戦闘時の効果を比べるとコスパ的には「民兵」が最強で、あえて「戦士」や「野戦軍」を揃える理由が弱いのではないかという議論になった。

野戦軍」が兵力の50%以上参加する戦闘の場合、「野戦軍」からの攻撃については、結果がやや確実性が高い戦闘結果表を使用することができるのだが、防御時のアドバンテージがないため、「民兵」などの兵力にコロリと除去されてしまい、投下コストに見合わない印象を受けた(ゲーム中も、ビザンティン帝国野戦軍2個があっけなく、ピピンの軍勢に除去されていた)。
戦闘に参加する兵力の50%以上が「野戦軍」でなければ有利な戦闘結果表を使えないことを考慮すれば、ゲーム内でも、戦闘に参加する兵力が大きくなるにつれ、それだけの「野戦軍」兵力を維持するだけの経済規模にはならないのではないか。

民兵」の弱点として異教徒との戦闘において転向しやすいといった性質はあるのだが、そもそものところで、フランク王国の系譜を持った勢力間で争う中では宗教を越えた争いになる可能性は少ない。

まぁ言ってみれば戦闘ルールを凝っている割には使う機会はあまりなく、戦力と「野戦軍」どころか「戦士」ユニットを揃えるだけのメリットも少ない。結果的に「民兵」最強なのでは?という結論になったわけだ。

用意されたルールと実際のゲーム内容がちぐはぐになっている印象で、このあたりも雑誌付録ゆえのディベロップ不足といったところだろうか。

(終わり)

 

 

 

 

 

*1:4人の兄弟のうち、次男ピピンについては、彼が838年に逝去すると、ピピンの息子(ピピン2世)らの相続権は取り消された。ピピンが他の2兄弟とともに起こした皇帝ルードヴィヒへの反乱時に相続権は取り消されていたという理由だった。
不満のピピン2世は勢力の回復のためにヴァイキングを味方に引き入れようとしたが、逆にヴァイキングによって本拠地のボルドーを占拠され支持を失った。その後、捕らえられ修道院に入れられるが脱出後、ヴァイキングに自ら身を投じた。結局は再び捕らえられ、最期は獄中死したと伝わっている。