Their Finest Hour -歴史・ミリタリー・ウォーゲーム/歴史ゲーム -

歴史、ミリタリー、ウォーゲーム/歴史ゲーム/ボードゲーム

「スパイ!」(SPI/TSR)を対戦する

1933年から1939年、第二次世界大戦前夜の欧州を舞台にドイツ、イタリア、ソ連、フランス、イギリスによる諜報と防諜活動を扱った本作を対戦した。本来は5人プレイだが今回4人での対戦となった。

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ゲームシステム

プレイヤーの役割

最大5人。プレイヤーはドイツ、イタリア、ソ連、フランス、イギリスの諜報機関の元締めの役割を担う。配下には4~5ユニットのスパイを抱える(1個のスパイユニットが、スパイ個人なのかチームなのかは不明)。他に国内防諜を担う警察組織を表すユニットが自国国内に展開する。

スパイと警察は国によって枚数が異なり、それぞれ5~7ユニットずつある。能力値として1~5の数値が書いてあり、逮捕や暗殺といった場面で能力値となる。*1

自国内には一定数の「秘密チット(Secret Chit)」が裏返して配置される。中立国にも一部の「秘密チット」が置かれる。これらマップ上に配置された「秘密チット」がスパイ達が獲得を狙う秘密情報ということになる。

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秘密チット:マップ上には一律「SECRET」という面を表にして配置される。裏面はアクションチットのひとつである「発見(Discovery)」を用いなければ見ることができない。
「機動戦術」「神経ガス」「爆撃技術」といったそれっぽいことが書いてあるが、プレイに関係するのは獲得ポイントを表す数値だけである。ただし「Counter Spy」だけは注意が必要で、これを引き当てた場合、情報が得られないばかりか、返り討ちにあってスパイが殉職してしまうことがある。

 

マップ

マップ上には欧州大陸全土、北は北欧、南は北アフリカ、中東、までカバーしている。地図内には主要都市や軍事上の重要拠点が点在し、それぞれ陸路・空路また海路にて接続されている。スパイ天国と呼ばれているジュネーブ、タンジール、イスタンブールといったエリアから、スカパフロー、タラント、ブレスト、オデッサ、ジブラルタといった軍事拠点も揃っている。第二次世界大戦前夜、1930年代のプラハ、ウィーン、ダンチヒストックホルムリスボン、ダブリンと聞いただけでなんとも妖しげな雰囲気があるというものだ。

TSR (SPI) Spies Map

各国首都間は空路で結ばれていて、一見離れている様に見えても近いルートがあったりする。海路も意外と便利。
一方でソ連邦の奥地や中欧付近に行くとルートが限られたり、絶対的な距離が遠いなど移動だけでも大変なことになることもあり注意が必要。
獲得した「秘密チット」は自国の首都に持ち帰ることでポイントにすることができるため、情報を獲得したスパイはすぐに本国に移動しなければならない。敵国内にとどまっているとあっという間にその国の防諜警察に踏み込まれてしまうので、スパイには素早い移動が求められる。

ターン

1ターンは1年で、1933年にはじまり1939年までの全7ターン*2

勝利条件

活動(後述)によって得られたポイントの合計で勝者が決まる。
面白いのは各ターン毎に倍率が定められており、同じ活動結果(例えば、敵国情報の奪取)を得た場合も1933年の場合は倍率2~4倍なのに対し最終ターンの1939年では8~10倍となる*3。戦争により近いタイミングで得られた情報のほうが評価が高いということだ。代わりにターンが進むにつれ得られる情報も少なくなりプレイヤー間の競争も激しくなるのも事実。

ゲームの進め方

各ターン、国ごとの順番は決まっていて、ドイツ・イタリア・ソ連・フランス・イギリスという順番になる。
各ターンでの手順はおおまかに次のような内容になる。

  1. イベントカードの使用*4
  2. 警察の移動・捜査
  3. スパイの移動・アクション
イベントカード

イベントカードは各国それぞれのイベントと共通イベントがプレイ開始時に配られている。毎ターン、各国はイベントを発動するか、または1枚捨札にする必要がある。
イベントには大戦前に発生した事件等が書かれており、その内容によって関係する都市にいるスパイを抱えるプレイヤーに、アクションチット(後述)が配布されたり、若干の資金が配られる。

フィンランドとドイツが相互防衛条約を検討している」
ソ連で新たな粛清が発生」
ハンガリールーマニアを通して枢軸側に接近している」
「フランス艦隊が大西洋で演習」

などなどだ。
ここでのポイントは、イベントとして書かれた内容ではなくカードに記載されている特典部分、特に「アクションチット」を得ることができる点だ。
またイベントカードに記載された都市にスパイユニットが存在しないとその特典を得ることができないし、また他国のスパイがいた場合、その他国スパイも特典を得ることができる。このため各プレイヤーはイベントカードを使う前に、特典を得ることができるエリアに自国スパイを進出させたがる。そう、他国のスパイの移動状況を確認することで、他国が発動するイベントの恩恵に預かることができたりするのだ。

警察

警察は他国スパイに対抗する役割を担っており、自国内では自由に配置・再配置ができ、通常は「秘密チット」がおかれたエリアに配置することになるだろう。また先程書いたとおり自国内に侵入した他国のスパイがまごまごと国内にとどまっているようであれば、捜査に出向くことも可能である。

スパイのアクション

最後のスパイの移動/アクションがこのゲームの要点ということになろう。
アクションは1ターンに10アクション実施できる。

イベントカードを使う、アクションチットを使う、また移動をすると1アクションずつ消費する。移動の場合は線で結ばれた1エリア移動する毎に1アクションとなりひとつのスパイユニットは一度に最大5エリア(=5アクション)移動することができる。

アクションチット

アクションチットはまさにスパイの活動そのものだ。プレイヤーは最大8枚のチットを保持することができ、自分のアクションの途中や敵国プレイヤーのアクションの途中で使用を宣言できる。逆にアクションチットがなければ行動ができなくなる。目の前にかっこうの情報や敵国スパイがあったとしても手を出せなくなるのだ。

アクションチットには複数の種類があり、さらに対抗手段も用意されているなど関係性が複雑。アクションチットの発動にはアクションポイントの消費とあわせ、定められた資金が必要。例えば、次のようなアクションがある。

  • 発見(Discovery):最もお世話になるチット。マップ上の「秘密チット」があるエリアに移動することで中身を見る(獲得)することができる。「秘密チット」を獲得したスパイはそのまま自国の首都に移動することで情報を持ち帰ったことになりポイントを獲得できる。
  • カバー(Cover):他国スパイによる情報獲得を妨害する
  • 暗殺(Sanction):他国スパイを暗殺する
  • 偽造文書(Paper):警察の捜査を無条件に逃れることができる
  • ダブルクロス(Double Cross):「暗殺」へ逆襲する

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プレイ

いずれのメンバーも実質初プレイということで最初の数ターンはお試し状態。当方はフランスを担当。後から評価するとフランスは当然のことながらドイツ・イタリアと隣接しており、両国から比較的情報を得やすい地理的位置にあることになる。ソ連に対しては北欧や北海経由で移動、中欧へはジュネーブ経由で移動し浸透することになる。

「秘密チット」を本国首都に持ち帰った際のボーナスが大きい(資金20,000£、アクションチット2枚)ことがわかると、序盤、警察が存在しないため邪魔するものがいな中立国にある「秘密チット」が次々と狙われていく。

前述した通り、初期のターンで獲得するよりは後年のターンで獲得したほうが倍率が段違いなのは確かだが、獲得するべき「秘密チット」を他国に獲得されるよりは、と、中立国内に配置された「秘密チット」はすぐに姿を消した。

そのうち、他国内で警察ユニットでがっちり守られた「秘密チット」については、「偽造文書(Paper)」アクションチットを使うことで警察の捜査を逃れることが判明すると、国内へも遠慮なく侵入していくようになる。もちろん中には引いた「秘密チット」が「カウンタスパイ」であったため情報としての価値がないばかりか、逆襲されたりも発生。

ターンが進むにつれ対警察への対抗手段の他、他国スパイへの対抗手段なども理解されはじめると、「暗殺」を試みたりも発生。

中立国で各国のスパイが移動する毎に、イベントカード(チット)による報酬があるかか、と東奔西走することになった。

我がフランスはアクションチットで、「秘密チット」を得るための最重要なチットといえる「発見(Discover)」を中盤切らしてしまったことで思う様に活動ができなかった。
「アクションチット」の獲得のためには「イベントカード(チット)」でイベントをお越し、関係都市にスパイを配置することで恩恵を得ることで「アクションチット」を獲得することになるが、その手順を確立できた頃には終盤に至っていた。

ドイツが出したイベントカードにより第二次世界大戦の開戦が1年前倒しになり、1938年が最終ターンとなりゲームは終了した。
最終盤になると各国が自国内にある「秘密チット」もあらかた獲得され尽くしてしまい、「暗殺」によってスパイ同士の殺し合いがあちこちで発生するなど凄惨な状況となった。

ゲームはコンスタントに情報を獲得していたソ連が勝利した。

 

感想戦

雰囲気は嫌いではない。第二次世界大戦前の欧州を舞台にしたゲームというだけでワクワクするところはある。
ルールは日本語版が出版された割には日本語訳はいまいちということでプレイにあたってもオリジナルの英語マニュアルを適宜参照しながらのプレイとなった。

「アクションチット」の関係性が若干複雑なので、チット毎にできることできないこと、効果や対抗手段などがうまくまとめたプレイエイドが必要と感じた。

「イベントカード」にはそれっぽいイベントが記載されているのだが、結局、見るのはそれから来る恩恵の部分だけになってしまうこと。「秘密チット」も同様に情報の中身とはいいつつ、プレイの最中はチット内に記載された数値(情報の価値)だけが取り沙汰されてしまうことになり、ゲームが機械的にながされてしまう嫌いがある。
シチュエーションを楽しむためにはせっかく設定された諸々の情報を楽しむべきではあった。

手探り状態ではじまったプレイで、ルールの適用ミスもいくつかありプレイ途中で修正された。

「アクションチット」をいかに揃えるかが一つのポイントだと思われるため、初期ターンのうちは「イベントカード」の有効活用、後半、獲得ポイントの倍率があがったところでの対応など、ゲーム全体を見通したプレイの組み立てが必要なのだろうと思う。

 

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開始直後の状態。各国また中立国に「秘密チット」(SECRETと表記)が配置されている。陸路・空路のコネクションにより移動がしやすい場所・しにくい場所があるため、初期配置の段階でしっかり位置を決めておくべきであった。

 

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各国スパイは一種の安全地帯となっている中欧・北欧・スペインなどに集まっている。

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終了時(1938年)の状態

 

 

(終わり)

 

 

 

 

*1:スパイについての能力値毎の枚数は各国同じのようだが、警察ユニットについては、有名なゲシュタポやNKVDの存在を反映してか一部の国では能力値が高いユニットの割合が高い模様だ。

*2:イベントカードの中には史実よりも早く第二次世界大戦が勃発するというものもあり、このイベントが発動した場合は1938年が最終ターンとなる

*3:倍率は各国によるバランス調整にもなっている

*4:今回使用したTSR/SPI版はイベント”チット”だが、ホビージャパンの日本語版ではカードとなっている

「The World Undone: 1914 Galicia」(Comflict Simulations)を対戦する

1914年8月、第一次世界大戦の最初期、ハンガリー=オーストリア帝国ガリツィア(ガリシア)地方におけるロシアとオーストリア=ハンガリー帝国との戦いをあつかった表題ゲームを対戦した。

The World Undone 1914 – Galicia - cover (from publisher)

第1次世界大戦を扱ったシリーズの2作目にあたり、いずれも1914年という年数と地名からなるサブタイトルがつけられている。東プロシア戦線、ガルツィア戦線(本作)と発売され、この後、セルビア戦線、さらに西部戦線と予定されている模様。1作目・2作目とも発表年は昨年なのでまだ新しいシリーズである。

ゲームシステムは1970年代にSPI社から発売されていたマルヌの会戦を扱った「the Marne」にインスパイアされたシステムを採用している、とある。

1、2作目まで次のスケールで統一されている。
特別ルールを除き基本ルールも同一の模様だ。

  • ユニット:師団単位
  • ターン:1日、全20ターン
  • ヘックス:7.2キロ

メーカーのサイトの製品紹介を見ると、シンプルなルールのためキャンペーンでも2~3時間以下でプレイ可能とある。

結果から言ってしまうとルールの取り違えが生じたためプレイは正常にはできなかった。とはいえWWⅠならでは戦闘の片鱗は味わえることはできたと思う。

 

背景

WWⅠ緒戦においてオーストリア帝国ロシア帝国に敗北した戦闘というだけの記憶はあったものの、具体的にどのあたりの戦場かなど土地勘なく、またマップ上の都市名を見てもピンと来ないという状態であった。ガリツィアという地域名称からしても現実の地名というより、ファンタジー世界のような雰囲気すらあるそんな舞台である。

Wikipediaより
ガリツィア地方はポーランド南部とハンガリー=オーストリア帝国との国境あたりを指す模様。現在のポーランドからハンガリーあたりだろうか。
第一次世界大戦開戦時にロシア軍は大きく2つの軍として展開しており、ひとつは東プロイセン周辺でドイツ軍に対峙した軍。後に大敗し、ロシア崩壊の端緒となった軍だ。

もうひとつが今回の舞台となった、当時ロシア領であったポーランドハンガリーを版図にいれていたハンガリー=オーストリア帝国とが対峙していたガリツィア方面ということのようだ。

ガリツィア地方を舞台にした1914年8月23日から9月11日までの一連の戦闘を総称して、ガリツィアの戦いと呼ぶ。戦線は数百キロに及び両軍とも長大な戦線を構築して戦った。

オーストリア帝国軍は敵軍の規模や配置を十分に認識しないまま、ハンガリーから北上し国境を超えロシア領ポーランドに侵入した。ポーランドでの戦いにおいて数回、オーストリア軍はロシア軍に勝利した。ポーランドのロシア軍を追い詰めることに執着したオーストリア軍は、東部からガリツィア地方に侵入しようとしていたロシア軍に十分な注意を払おうとはしていなかった。ロシア軍はオーストリア軍が予想していたよりも早く動員を行い、前線に兵力を配置していた。

ガリツィア地方東部でオーストリア軍とロシア軍は衝突するが、オーストリア軍は予想以上に頑強なロシア軍に大損害を出し後退した。
ポーランドに侵入していたオーストリア軍は東方から侵攻するロシア軍に包囲されることを恐れ、後退を命ずるが、これを機にオーストリア軍の戦線は崩壊してしまう。

WWⅠにおけるロシア軍というとドイツ軍とのタンネンベルクの戦いにおける大敗北の影に隠れているが、全く同時期に中欧にて行われていた本作戦においては、オーストリア=ハンガリー帝国に対して勝利を収めていたという訳だ。この戦いの結果、オーストリア帝国は訓練された多くの将校を失い、継戦能力を大きく損なうこととなったという。

約1ヶ月に及ぶ複数の戦闘後の両軍の参加兵力と損害。

ロシア軍

参加兵力:120万人

損害:20万人~30万人、捕虜4万人

オーストリア

参加兵力:95万人

損害:324千人~420千人(戦死:10万人、戦傷:22万人、捕虜:10万~13万人)

 

ゲームシステム

基本スペック

ユニット:師団単位。兵種は歩兵・騎兵・砲兵
ステップロスはなく、いずれのユニットも1ステップで除去となる

1ターン:1日

1ヘックス:7.2キロ

 

ゲームシークエンスと移動ルール

第1移動ー第1戦闘ー第2移動ー第2戦闘、というフェイズを連続して実施するとプレイヤーターンが終わり、攻守を交代する。
第1戦闘フェイズに戦闘を行ったユニットは「活動後」となり第2移動、第2戦闘を行うことはできない。
よって、各軍は次のように活動を行うことができることになる。

  • 第1移動 - 第1戦闘 (終了)
  • 第1移動 - 第2移動 - 第2戦闘 (終了)

特殊な移動として「リザーブ移動」「鉄道輸送」がある。
リザーブ移動」は両軍とも1ターンに1スタックずつ発動できる。第1移動フェイズで移動力の一部または全量を残しておくことで、第2移動フェイズでもとの移動力に加算して移動することができる。
「鉄道輸送」は鉄道を利用した戦略移動扱いだ。ただし1ターンに利用できるユニット数に制約がある。

 

戦闘ルール

攻撃を行いたいところだけ行うメイアタック。
ただ攻撃を発動するユニットに隣接するすべての敵ユニットは攻撃をされなけれなばならないので、配置によっては不利な比率での戦闘を余儀なくされる場合がでてくる。

特異なのは戦闘結果表。戦闘力比率よりダイス(1d6)で結果を求めるオーソドックスな結果表だが、戦闘結果がかなり防御側有利になっている。戦闘力比率が4対1や5対1の場合も1/6~2/6の確率で、攻撃側撤退の結果となっている。

さらに戦闘結果に除去(Eliminate)の結果は極めて少なく、そのほとんどは後退処理となる。

後退が多い戦闘結果というのであればZOCで包囲し、後退の戦闘結果により除去をす」る、といういわゆる「挟んでポン!」を狙う訳だが、これも問題がある。

敵ZOCのヘックスでも味方ユニットが存在するヘックスはZOCが及ばないというルールにより、後退ができてしまうのだ。

まとめると、どうやって敵を減少させていくのか?という印象。

  • 防御側有利な戦闘結果表(4対1、5対1のオッズでも攻撃側後退がありえる)
  • 戦闘結果も後退が主のため、戦闘結果による直接のユニット除去が難しい
  • 弱ZOCのため「挟んでポン」が効きにくい(逃げられる)

 

確かにユニットが師団単位で、1ターン=1日というスケールから、ステップロスもなしに師団が大量に除去されるのもおかしいだろうという点も理解できる。

 

勝利条件

拠点となる町・村の占拠によるポイント(場所によって異なる)と、相手ユニットの除去に依るポイントを比較する。

マップ上、オーストリア国内側に縦横数ヘックスの範囲に及ぶ大要塞地帯がある(プシェムィシル要塞)。

 

プレイ

初期配置

両軍のヒストリカルな配置に基づき、軍単位に指定されてエリア内に配置する。
ロシア軍は第2ターン、第3ターンにそれぞれ1個軍(10個前後のユニットが存在する)が増援として登場する。

問題は両軍とも部隊の移動力がかなり小さいのだ。両軍とももっとも数がある歩兵ユニットの移動力は2(一部例外あり)、騎兵部隊は3となっている。
第1移動フェイズと第2移動フェイズを両方移動したとしても移動距離は限定されていまう。すでにマップ上に展開した部隊しかり、盤端から現れる増援部隊もそうだ。すぐには接敵状態にできない。

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初期配置は両軍とも軍ごとにアバウトにこの辺り、という配置場所が緩く書いてある。
赤色ユニットはロシア軍。青色ユニットはオーストリア軍だ。
森林ヘックス(緑色)も平地と同じ1移動力だが、湿地は2移動力、河川超えの移動は追加1移動力とオーソドックスな設定になっている。

何よりも問題は各ユニットの移動力の小ささにあり、歩兵は2移動力、騎兵は3移動力にすぎない。第1戦闘フェイズで戦闘を行わなければ1ターンあたり2回移動できるのだが、敵に接敵するように移動するだけでも結構な苦労を伴う。

 

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第5ターンあたり。結局お互いに接敵するように移動して包囲を狙い翼を伸ばしているうちにそれっぽい前線になっていった。
防御側がかなり有利な戦闘結果表のため両軍とも積極的攻勢に出れないでいる。苦労して包囲に持ち込み局地戦が発生しても、味方ユニットがいるヘックスは敵ZOCが及ばないため、まんまと退却されてしまうことが多数発生。

ただ史実と同様にロシア軍左翼に大部隊が増援として登場し、オーストリア軍の薄い右翼に接近しているが、移動力がないためあまり大包囲ができるように感じない。
この後、15ターン使ったとしても、押し合いへしあいのやり取りが続きそうで、なかなか決め手になる前進はできるような気がしない。

 

感想戦

ルールの解釈ミスのため実際はもう少し両軍は動きのある戦線が構築される可能性はある。ただ書いているように戦闘結果表の構成や、弱いZOCもあるため、なかなか決め手になるような動きができないのではないかとも思う(大突破や片翼包囲といったところを夢想するのはWWⅡ脳なのかもしれない)。
相手ユニットの除去に至らない戦闘が何度も繰り返される。
攻撃側にしても防御側にしても相手に与える戦闘結果は後退がメインのため、結局のところ両軍の間で戦線が進んだり後退したりが続く。
そうした戦闘を続けているうちに戦線のどこかにほころびができ、穴が空いたときまで待つのか?ということか?

またリザーブ移動が1ターンに1スタックだけという変な制約/ルールも印象がよくない。全部隊中、1スタックしか行うことができないアクションってなにぞ?ということだ。東プロイセン戦線を扱った第1作目のドイツ軍はこのリザーブ移動は5スタック行うことができるとある。軍の機動力や迅速な反応といったところを表したルールということだろう。

機会があれば正しいルールでプレイしたいところ。

(終わり)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ORP Orzeł」(Instytut Pamieci Narodowej)を対戦する

1939年9月、ポーランド海軍潜水艦「オジェウ(Orzet)」号のバルト海からの脱出行を扱った表題ゲームを、Dragoonさんと対戦した。
戦争を題材にしているためウォーゲームとは言えるが、潜水艦戦のシミュレーションではなく、テイストはボードゲームだ。

 

ORP Orzeł front cover

ゲームの背景

1939年9月1日、ドイツとの戦争の勃発によりバルト海に出撃したポーランド海軍潜水艦「オジェウ」号は機雷敷設や待ち伏せなどの活動を行うが、船長の病気と機器の故障のため中立状態にあったエストニアのタリンに寄港する。船長を下船させたところでエストニアが「オジェウ」号の武装解除を要請してきたため、副長に率いられた「オジェウ」号は夜陰に紛れタリンを脱出、デンマーク海峡を超えて北海を目指した・・。

展開として宮崎駿が好きそうなシチュエーションにも見えますね。

 

ゲーム内容

「オジェウ」号を操作するプレイヤーと脱出行を阻むドイツ軍の2プレイヤー。
マップはバルト海を表し、出発地となるタリンは右下の赤い縁取りのあるヘックス箇所、ゴールとなるデンマーク海峡は、左上の赤い斜線部分が該当する。

Game board (English side)

両プレイヤーとも毎ターン4つのアクションを実施できるが、実施できるアクションはそれぞれの専用ダイスで出た目によって決まる。ダイスは4回まで振り直しができるので、ある程度は実施したいアクションを選定できる。

最初に「オジェウ」号プレイヤーが4つのアクションをダイスの結果によって決め、その後、ドイツ軍プレイヤーが同様に専用ダイスで4つのアクションを決める。
両方のアクションが決済したところで「オジェウ」号プレイヤーが4つのアクションを好きな順番で実施し、その後、ドイツ軍プレイヤーが同様に4つのアクションを好きな順番で実施する。
双方のアクションが実施されたところで「オジェウ」号の航路が確定し、「オジェウ」号の3Dユニットの位置を変えると1ターン終了となる。

ターン数に制限はなく、「オジェウ」号がデンマーク海峡に達すれば「オジェウ」号プレイヤーの勝ち、後述する「航路マーカー(本物)」すべて(6枚)が除去された状態になるとドイツ軍プレイヤーの勝ちとなる。

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「オジェウ」号の3Dユニットと、アクションを決定するための専用ダイス。赤色は「オジェウ」号プレイヤーが用いるもの。これとは別にドイツ軍プレイヤー用の白色ダイスが4個ある。いずれも品が良く、コンポーネントとして好感がもてるつくり。

 

「オジェウ」号が実施できるアクションは3種類

  • 航路の設定
    航路マーカーを設定する(航路マーカーは下記写真の「A」と記された丸いマーカー)。航路マーカーには本物6枚とダミー6枚がある。「A」と記された面を表にして配置されるが、ドイツ軍側の「探索」によりめくられる。
    本物の航路マーカーには潜水艦が描いてある。
    本物の潜水艦マーカーは本物の機雷マーカーと同じ場所に配置された場合と、ドイツ軍から「攻撃」を受けた場合に永久に除去される。
  • ブレイクコンタクト
    ドイツ軍の哨戒艇マーカーを1つ取り除く(探索を振り払うということらしい)。
  • 浮上する
    ドイツ軍から取り除かれた航路マーカーダミーを1個取り戻す。

 

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「オジェウ」号の3Dユニットの位置から連続して「航路マーカー」が配置された状態(「オジェウ」号プレイヤーの手番が終わった状態)。航路の先はドイツ軍の「哨戒艇マーカー」と「機雷マーカー」で塞がれている。
この写真はプレイをはじめて初期の頃に撮られたものなので、あまり良い展開ではありません。

 

ドイツ軍がとり得るアクションは4種類

  • 機雷敷設
    機雷マーカー(上記写真で六角形で赤い斜線がはいったマーカー)を2個設置する。機雷マーカーには本物4個、ダミー4個がある。機雷はいったん設置すると設置場所の変更はできない。
    機雷マーカーが設置しているヘックスに対して、「航路マーカー」の設置をすると、すぐにその機雷が本物かダミーかが明かされる。本物の機雷で、航路マーカー側も本物のマーカーであればその航路マーカー(潜水艦が描いてある)は永久に除去される。
  • 哨戒艇の出撃
    哨戒艇2隻を出撃できる。または除去された(「オジェウ」号のブレイクコンタクトによって)哨戒艇1隻を出撃できる状態に戻す。
  • サーチ(探索)
    マップ上に設置された「航路マーカー」1枚をめくることができる。めくった「航路マーカー」がダミーだった場合、直ぐに除去される(除去されたダミーの航路マーカーは「オジェウ」号の「浮上」アクションで取り戻すことができる)。
  • デストロイ(攻撃)
    「サーチ(探索)」によってめくられた「航路マーカー」が本物であった場合、攻撃を行うことできる。「航路マーカー(本物)」は永久に取り除かれる。
  • 濃霧
    これはアクションではないが、ドイツ軍のダイスにはこれがあり、1アクション分、行動を行えなくなる可能性がある。

 

「オジェウ」号が配置する「航路マーカー」は連続した並びになっておく必要があり、また並びの途中が「探索」によってダミーとばれた場合、「攻撃」によって「航路マーカー(本物)」が取り除かれ、連続性が失われると、そのさきの航路マーカーの並びは破棄される。
逆に「航路マーカー」の並びがターン終了時まで生き残った場合、その「航路マーカー」が仮にダミーであったとしても、その並びの先まで「オジェウ」号は到達したとみなされ、「オジェウ」号の3Dユニットの位置を海峡側にすすめることができる。

 

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両プレイヤー用のプレイヤースクリーン。お互いダミーマーカーを駆使することになるため手元を隠すためのもの

 

「航路マーカー」の列は1本である場合、出発点に近い場所を「探索」されてしまい、ダミーであったとしても本物であったとしても狙い撃ちされてしまう。連続性が失われたとしてその先の並びを除去されてしまう可能性もある。
このため「航路マーカー」の設置は複数本行うことになる。

相手が選んだアクションを見て実際のアクションを実施できるため、例えば「オジェウ」号プレイヤーはドイツ軍のアクションに「攻撃」アクションがなかった場合、そのターン、本物の「航路マーカー」が発見されても除去される懸念がないことになる。堂々と、本物「航路マーカー」で航路を形成できる。

「オジェウ」プレイヤーが、本物/ダミー取り混ぜて複数を航路を形成し、それに対してドイツ軍は、「機雷」と「哨戒艇」で航路の設定を妨害しつつ、「探索」で「航路マーカー」をめくり、ダミーであれば除去、本物であれば「攻撃」を行うことになる。

「機雷」は航路を塞ぐ手段だが、いったん設置すると移動できない。除去するには「オジェウ」プレイヤーが「航路マーカー」をその上に配置する必要がある。
哨戒艇」は「ブレイクコンタクト」で除去できる。

 

感想戦

都合2回プレイ。1回のプレイ時間は馴れるが30分以下になるだろう(ボックスには20分とある)。両プレイヤーのアクションと相互作用について会得するとかなりスムーズにプレイできるようになる。
相手のアクションがお互いに筒抜けという、本来の潜水艦戦とは本質的なところでの相違している点は気にならないではないが、潜水艦戦に材をとったゲームとして良いと思う。コンポーネントが全体に良い点も評価。

2回とも「オジェウ」号側が勝利したので、ドイツ軍の勝ち方は研究の余地ありかも。

(終わり)

 

 

「STORM OVER DIEN BIEN PHU」(MMP)を対戦する(第2戦)(2/2)

ディエンビエンフーの戦いを扱った「STORM OVER DIEN BIEN PHU」(MultiManPub)を対戦した。今回はその後半戦です。

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5ターン(4月10日~4月16日)・・・飛行場の陥落と奪還

このターンの焦点は引き続き、飛行場北側(エリア16)と、ドミニク陣地(エリア17)だった。

エリア16に対して北ベトナム軍はカチューシャロケットを含む砲撃を3枚(イベントカード)に渡って続け、守備側ユニットをすべてステップロスさせた上、満を持して前線部隊により「強襲」させた。飛行場の一角が占拠される(エリア16陥落)。

フランス軍はそのターンのうちに「COUNTER ATTACK:反撃」(イベントカード)を用い、周囲の部隊を集結させて反撃を実施、奪還した。
残り3ターンになり、北ベトナム軍はフランス軍の南方陣地エリアに取り付けていない。
このターン、フランス軍は「補給チェック」に失敗。すかさず北ベトナム軍はエリア16を補給切れエリアに指定した。これにより、エリア16を奪還したフランス軍ユニット群はステップロス状態を回復できないまま次のターンに突入することとなった。

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5ターン終了時。
飛行場北側(エリア16)はいったんは北ベトナム軍に占拠されるが、続くインパルスにフランス軍はカードも用いた反撃を実施し撃退、奪還した。
エリア16、エリア17はここまで幾度となく北ベトナム軍を退けたのだが、完全に消耗戦になっていた。同じ消耗戦ならば部隊数が少ないフランス軍はいつか競り負けてしまうのは必至。そろそろ見極め時だったかもしれない。

 

6ターン(4月17日~4月23日)・・・ついにエリア16、17の陥落

手元に保持できるカードは各々の軍についてターン毎に保有可能枚数の上限が決まっている。毎ターンはじめのカードドローのタイミングで上限枚数に満たない場合、カードのドローが可能な訳だが、この頃になるとカード保有可能枚数は完全に北ベトナム軍のほうが多い状態になっていた。
カードが多いとそれだけ使うことができるカードプレイのバリエーションが増える、手数が多いということになる。

飛行場北側(エリア16)へはまたもや砲撃が実施される。続く「強襲」により、ついにエリアを明け渡すこととなった。
エリア17は前ターンの「補給チェック」で無補給状態にさせられたため、ステップロス状態のユニット群が回復できないまま、「強襲」を受ける。後方から部隊の投入をするものの攻撃を押し止めることはできず、このターン、2回目の「強襲」により陥落した。

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6ターン終了時。
前ターンからの「補給切れ」によりステップロス状態を回復できないまま、手数が多い(カード枚数が多い)北ベトナム軍の度重なる砲撃、「強襲」によりついにエリア16、17の両方のエリアは失陥した。
長らく戦線が動かなかったため、北ベトナム軍は一度作った「塹壕」から何度も出撃することができた。度重なる戦闘に部隊数が少ないフランス軍がついに押し切られた格好となった。

 

7ターン(4月24日~4月30日)・・・出血の果て

少々、飛行場とエリア17でがんばりすぎた。後方の予備隊を次々と前線に投入した結果、フランス軍全体がすでに甚大な損害を受けている状態。残ったエリアの防御部隊ユニット数は非常に心もとない状態になっていた。
一方で北ベトナム軍の立場になると残り2ターンで3エリアを奪取できるかという状態になっていた。
また前線が動いたことにより顕著になったのが、北ベトナム軍歩兵の足の遅さ。移動力が2しかないため(また移動するとそのターンは活動済になってしまう)、前進した前線に到達できない部隊が散見されたのだ。

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7ターン終了時(北ベトナム軍は補給前なのでステップロス状態にあるが回復予定)
前のターンに一挙に前線が動いたため北ベトナム軍は急ぎ塹壕を設置し、南方エリアへの「強襲」を実施。フランス軍の予備は払底しており各エリアは薄く守備されているのみになっている。北ベトナム軍は最後の攻撃に向けて部隊を集めようとするが、移動力が小さく(移動力2)、前線に追いつけない。
あと1ターンで3エリアを奪取できるか?

 

8ターン(5月1日~5月7日)・・・北ベトナム軍最後の突撃

このターン、北ベトナム軍は「強襲」を実施できるエリアのすべてにおいて、投入できる全部隊を突入させた。フランス軍ももはや十分な兵力はないため「強襲」を受けて持ちこたえるだけの部隊ユニットを備えたエリアは存在しなかった。
北ベトナム軍はこのターン、勝利条件エリア2エリアを奪取し、合計5エリアを確保するものの、2エリア足りないという結果になった。

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8ターン
北ベトナム軍ははじめて南端エリアに増援を集め、防御が薄くなったフランス軍の陣地の南端エリアを攻撃する。フランス軍守備隊は後退し、1エリアを失った。
もうひとつ、攻撃を集中したエリアが陥落。

 

感想戦

北ベトナム軍の作戦・・・分散か集中か

前回当方が北ベトナム軍を担当した際は主攻軸とは別にフランス軍を包囲するように、南方の陣地深くまで部隊を展開させた。これによりフランス軍は全方位からの攻撃に耐ええるように部隊を分散させる必要がでてくるのではないかと考えたのだ。
ところがこの作戦は、当初豊富な部隊数を誇った北ベトナム軍も終盤に兵力をへらす中で、個々の攻撃拠点での兵力が減りすぎ、十分な衝力を持った攻撃ができなくなったことで、息切れ寸前となった印象がある。

今回、Dさんの作戦は北ベトナム軍をむやみに分散させるのではなく、集中した3~4個の主攻軸を作りそこにフルスタック9個を常に配置することで一定の攻撃衝力を最後まで維持したことである。
フランス軍側の後退が遅れ消耗戦に陥ってしまったというミスもあいまってこの作戦は有効に機能したように思う。

 

また分散方式ではいくつもの箇所で塹壕設置の作業を行ったり、塹壕設置等のカードリソースを使ってしまう一方、主攻軸が集中できれいればこうしたカードリソースの利用も集中化でき、効率的に攻撃をすすめることができるとも言える。

 

フランス軍の作戦・・・遅滞行動、いつ後退するか、戦線への固執は避けるべき

最初フランス軍は遅滞行動を取ると言っておきながら、途中、消耗戦に陥ってしまったのは最大の失敗であった。戦線が動かないため、北ベトナム軍は新たに「塹壕」を構築する必要もなくなり数ターンに渡って「強襲」を連続して実施することができた。消耗戦に陥ってしまい、ユニット数に劣るフランス軍は有効な部隊数を維持できなくなってしまった。せっかくの緒戦のリード部分を食いつぶしてしまい、最終的にはギリギリのところでかろうじて勝利条件を収めたといったところだ。

教訓はフランス軍はたとえ戦況が悪くなくても、段階的に後退を行うことで、北ベトナム軍に絶えず前線を動かさせ、「塹壕」設置の手間をかけさせる必要があった。

結論

エリアインパルス方式ということもあり、ゲーム的な様相を示すというのも事実なのだが、プレイは白熱する。両軍とも選択できる作戦種類が複数あるなど、また機会があれば挑戦してみたい。

 

(終わり)

 

「STORM OVER DIEN BIEN PHU」(MMP)を対戦する(第2戦)(1/2)

ディエンビエンフーの戦いを扱った「STORM OVER DIEN BIEN PHU」(MultiManPub)を対戦した。対戦としては2戦目。
1戦目では北ベトナム軍を担当したが終盤、寄せの甘さから包囲網の不備を突かれて投了することとなった。今回の対戦はDさん。当方はフランス軍を担当した。

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ディエンビエンフーの戦いは、第一次インドシナ戦争の終盤、フランス軍北ベトナム人民解放軍との激戦で知られる。歴史・戦史に与えたインパクト、戦いの様相も特徴的なためウォーゲーム作品も少なくない。

エリアインパルスシステム+カード、マップ1枚、1ユニット=中隊~大隊規模、1ターン=1週間、全8ターンでこの戦いを扱った。
プレイ時間は1日弱(4時間程度)と手頃、ルール難易度も高くはなくプレイアビリティが高いゲームになっている。対照的な両軍のいずれを担当しても白熱したプレイになる。

 

ルール紹介と前回対戦時のAAR記事。

前回は北ベトナム軍を担当した。
翼を伸ばすようにフランス軍を包囲していったが、手練のフランス軍はマップ南方の丘陵地帯にある陣地に計画的に後退を重ねていった。北ベトナム軍は、包囲の輪を縮めていく途中、痛恨のミスにより包囲網の一箇所が破られ、フランス軍に勝利条件エリアを奪還されたことから再奪還は無理と投了した。

 

 

初期配置と勝利条件

初期配置は両軍とも決まっている。
赤色ユニットが北朝鮮軍、水色がフランス軍だ。
飛行場エリアを中心に広くマップ上に展開するフランス軍に対し、北ベトナム軍の主力は北(右方向)や東(下方向)に位置する。その後、毎ターンのようにかなりの数の増援が登場するが、マップ端のどの周囲からも登場できる。フランス軍は全周からの攻撃に備えなければならない。
マップ中央部、斜めに流れる川の少し上にある灰色の細い長方形部分が飛行場が位置しているが、その確保はフランス軍の補給状態を左右する。飛行場周辺のエリアを失うと、フランス軍は毎ターン終了時に実施する「補給チェック」のダイス修正が施され、さらに毎ターン手元に保有できるカード枚数が減少することになる。

マップで赤い枠線で黄色の楕円のマークをいれたエリアが勝利条件エリア。北ベトナム軍は、第8ターン終了時に9箇所にあるこのエリアのうち6エリアを占拠しなければならない。
飛行場は補給確保のためその確保は不可欠だが防御効果は低い(各エリアの地形防御値は丸数字1~3として記されている)。
史実のフランス軍は飛行場喪失後、空中補給に頼りながら勝利条件エリアになっている丘陵地の陣地に依って戦うことになった。

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1ターン(1954年3月13日~3月19日)・・・全軍突撃!

北ベトナム軍は第1ターンのみ、全てのエリアにおいて無条件で「強襲」を発動できる。

北ベトナム軍の攻撃手法として「強襲」と「射撃」のだが、「射撃」では敵ユニットの除去・後退を促すだけである一方、「強襲」を用いることで必ず1ユニットを失う代わりに敵ユニットの除去または後退後、戦闘後前進ができる。確実に占拠地域を広げたい北ベトナム軍にとって戦闘後前進は必須だ。
「強襲」を行うためには通常、攻撃発動前、攻撃を行うユニットが位置するエリアに第3レベルの「塹壕」を設置する必要がある。「強襲」を行うには「塹壕」が必要、これがこのゲームの肝となるルールだ。

エリアに塹壕を設置するには2つの方法がある。

  1. ユニットに「塹壕」設置のアクションを行わせる。
    「強襲」の発動に必要な第3レベルの「塹壕」設置のためには2ユニットずつ延べ6ユニットが「塹壕」設置のアクションを行う必要がある。つまり「強襲」の準備のため、ユニットのアクションの実施が必要となり時間を要することになる
  2. カードに記載の「塹壕」値を使って塹壕設置を行う。
    毎ターンドローするカードには砲撃などの様々なイベントが記載されているが、イベントを起こす代わりに「塹壕」設置に用いることもできる。第3レベルに達するまでに数枚のカードが必要なこと、またせっかくのカードをイベントではなく、「塹壕」設置だけのために使うかは悩ましい。

カードを用いたイベントの中に、塹壕の準備なく「強襲」を行うことができるイベントが複数あるが(「SURPRISE ASSAULT:奇襲による強襲」など)、数は多くはない。
北ベトナム軍は「塹壕」設置の方法やタイミングを考慮しながらゲームをすすめる必要がある。
ちなみにフランス軍は砲撃カードを用いることで、北ベトナム軍が設置した塹壕マーカーを除去できる。今回のゲームの中でも、「塹壕」設置を行う北ベトナム軍と、それをふっとばし除去するフランス軍というやりとりが随所で発生した。

 

ベトナム軍の初手はガブリエル陣地(エリア6)への砲兵攻撃のカード。
突撃前に準備砲撃で守備側ユニットのいくらかをステップロス状態に陥らせるのは定石だ。
続くベトナム兵の突撃に対してフランス軍はカードプレイで対抗する。出したカードは「MINES:地雷」。序盤で使うにはやや重めのカードだが、このゲームではカードドロー時で持っている枚数に制限があるため、良いカードだからといって手元に残しておくのは得策ではない。どんどん使ってどんどんカードを回しておくほうが良いのではないかということだ。
いくばくかのベトナム兵を撃退するものの、強襲を受けたガブリエル陣地はベトナム兵に占拠され、生き残ったフランス兵は隣接するエリアに後退していった。

 

ベトナム軍の次の攻撃目標は、アンヌマリー陣地(エリア9)。当時フランス軍は各陣地には女性名をつけていた。
アンヌマリー陣地を守備していたのはタイ人傭兵の複数ユニットであったが、北ベトナム軍が出したカードにより、2個ユニットが士気阻喪して除去される。タイ人部隊にだけに効果があるイベントだ(PROPAGANDA:プロパガンダ)。

このタイ人部隊の離反を促すカードは1度使うと2度と登場しないため、フランス軍としては、他にも存在するタイ人部隊の離反のリスクがこれ以降、取り除かれることになる。

フランス軍はアンヌマリー陣地に続き、ベアトリス陣地(エリア14)を失陥した。

いずれも想定内の展開であったが、想定外であったのはターン終了時に行うフランス軍の補給チェックにいきなり失敗したことだ。まだ飛行場にもベトミンを接近させた訳でもないのに、幸先が良くない。北ベトナム軍が選んだ1エリアが非補給となり、指定されたエリア内のフランス軍ユニットは、通常状態への復帰ができなくなった。

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第1ターン終了時。
このターンの攻撃目標となった3陣地を獲得すると北ベトナム軍はカード所持枚数の制限が1枚増加する(1枚多くドローできるようになる)。史実でも最初に落ちた陣地だ。
ベアトリス陣地の真上に位置する広めのエリアがエリア17だが、フランス軍が「補給チェック」に失敗したことにより、北ベトナム軍はエリア17を補給切れエリアとして指定した。エリア17の活性化済だったフランス軍ユニットはこのターン回復できないことになり、結果、第2ターン活動できないことになった。

 

2ターン(3月20日~3月26日)・・・激戦地ドミニク陣地(エリア17)

「強襲」にあたっての「塹壕」設置が免除されていた第1ターンとは異なり第2ターン以降は「強襲」を行うには「塹壕」が必要となる。それでもカードによる塹壕値を使ったり、イベントカードを用いたりと「強襲」は継続された。

第1ターンで”補給切れ”状態に指定され回復できないままにされていたドミニク陣地(エリア17)への突撃は「MINE:地雷」カードによって応酬され、さらに「NIGHT ASSAULT:夜襲」に対しては「FLARES:照明弾」により撃退された。フランス兵の抵抗が厳しいままベトナム軍部隊は元の陣地に帰っていった。

ユゲッテ陣地(エリア13)に対する「強襲」も同様に「DEBOUCHEZ A ZERO:ゼロ距離射撃」カードを用い撃退する。
とはいえフランス軍も無傷ではなく、少なくない数の部隊が除去されていく。
増援が続々と到着し、また除去済ユニットを再編成して再投入が可能なベトナム軍と異なり、フランス軍は再編成はなく増援も限定的なため、ベトナム軍と同じペースで出血していくといずれ死に至ってしまう。より多くの損害を与え続けていく必要がある。

このターン、フランス軍は全補給状態となり、補給切れエリアであったエリア17のユニットも通常状態に戻ることができた。

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第2ターン終了時。
塹壕設置が必要なため「強襲」攻撃は限定的となった。実線矢印は「強襲」、点線矢印は「射撃」を表す。

 

3ターン(3月27日~4月2日)・・・飛行場に迫るベトナム

北ベトナム軍の前線が動いていないため、前のターンに設置した「塹壕」はそのまま使い続けることができる。このターン北ベトナム軍の攻撃はエリア10に集中した。
3回に渡って「強襲」攻撃を受けたエリア10は奪取され、これにより北ベトナム軍は飛行場北側(エリア16)に隣接することとなった。

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第3ターン終了時。
多くのエリアに隣接しているエリア10が集中的に攻撃を受ける。他のエリアでも戦闘が発生した。

 

4ターン(4月3日~4月9日)・・・ドミニク陣地(エリア17)の戦いが続く

前のターンのエリア10と同様の執拗な攻撃がドミニク陣地(エリア17)に対して繰り返された。「DETONATE MINE SHAFT:坑道爆破」(カードイベント)、「GIAP DEMANDS SUCCESS:グエン将軍の命令」(カードイベント)、通常の「強襲」とエリア17のフランス軍北ベトナム軍による「強襲」を3度に渡って退ける。その都度、後方から部隊が補充されていく。

飛行場北側(エリア16)に対しても「強襲」が行われたがフランス軍守備隊はこれを退けた。だがフランス軍の損害も酷く、後方の部隊を前線に投入し守備力の減少を埋めた。

エリア13、エリア5、エリア11といった前線のエリアが相次いで陥落。確実に北ベトナム軍のユニットを道連れにはしているものの、部隊ユニットの貴重さからすると同じ1ユニットが除去されたとしても、フランス軍が不利だ。

だんだんと飛行場周辺エリアが北ベトナム支配下に置かれるにつれ、ターン終了時の「補給チェック」の目が怪しくなっていく・・。

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第4ターン終了時。
前のターンにエリア10を占拠し飛行場があるエリアへの攻撃のとっかかりを得た北ベトナム軍はさっそく、飛行場北エリア(エリア16)への「強襲」を開始した(当然、「強襲」にあたってはエリア10にレベル3の「塹壕」を設置した)。
またエリア17への攻撃が繰り返されるが、フランス軍は損害を出しつつそれらを退けた。

 

 

(つづく)

 

 

 

 

二度目のアフリカ行~「HEART OF DARKNESS(闇の奥)」(LEGION WARGAMES)を対戦する

 19世紀アフリカ、アフリカ探検を扱った「HEART OF DARKNESS(闇の奥)」(Legion Wargames)を3人プレイで対戦した。

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ゲーム紹介と、前回対戦時のAARは次の記事。

 

 

 

準備

出発地は座席から近かったモザンビークを選ぶ。マダガスカル島の対岸にあたるエリアだ。

パトロンは「大学」。パトロンによって探検の目的となる委嘱内容が異なり、「大学」の場合は、新しい植物相や村々での珍しい文化を発見することが使命となる。このゲームにおける勝利ポイントであるドラマポイントの他、ボーナスポイントを得ることができる。
ちなみにカミさんは「投資家」を選んだ。委嘱内容は鉱山の発見だ。
Wilandorさんは「王立地理学会」。新しい山・川(水源)・湖を発見することでポイントを得る。

とはいえこうした地形や発見物との遭遇は完全にランダムのため、パトロンによる有利不利はあまりないように思う。

探検の成否を左右するのはむしろ探検隊の組成とアイテムや食料などの物資の選定ではないか。
探検隊は冒険家本人の他は、荷担ぎ人夫(ポーター)と護衛兵(アスカリ)から成る。人数を増やせば多くの荷を運ぶことができ、危険に対するリスク軽減になるというところだが、食料消費が多くなる。
食料は途上、野生生物を狩猟するか、河川沿いに移動している場合は釣りにより得る、村々や王国立ち寄り時に友好度をあげて譲ってもらうことは可能だが、釣りをのぞきこれもまた偶然に左右される。                          

贈り物は村や王国に遭遇した際の友好度チェックの際に有効。村や王国との友好度チェックも結構シビアなので、贈り物は欠かせない。もちろんライフルを送れば無条件に友好状態になるのだが、狩猟や敵意を見せる原住民への対抗上、ライフルを手放す訳にはいかない。もちろんライフルユニットを2個以上持っていくということも可能だが、持ち物ワクを贈答用のライフルで潰したくない。

アイテムは20数種類ある中から選ぶが、これが様々遭遇するイベント・事象への対応に欠かせない。すべて種類を持ち込むにもいかないので取捨選択が必要になるのだ。
さきほど登場したライフルの重要度は言うまでもない。釣りで食料を補うことができる釣り道具も地味に有効。薬品は体力の回復、マリファナは正気度の回復または贈り物としても使うことができる。
カヌーは水系沿いに探検するには不可欠。友好度がとても高くなった村でもらうことも可能だが確率は非常に低いだろう。カヌーがあると敵意を見せる原住民から逃げる際にも有効だったりする。
ガイドは探索マップ上での活動時間が伸びるのでこれも不可欠ではないか。

などなどひとつひとつのアイテムには役割・効果が定められている。何度も書くようにすべての種類を持ち歩くこともできないため、一部は諦めざるを得ない。汎用的使うことができるアイテムもあれば、特定のイベント/ハプニング発生時のみ効果を発生するものもある。何を諦めるんのか?さらには複数保有しておいたほうがよいアイテムはなにか?などなど所有するアイテムの選択には少々時間を要する。

前回の教訓を活かしつつ、荷担ぎ人夫を1人多くし(その分、食料が多く減る)、アイテムとしては、薬品を2個、予備弾薬等を意識して取った。また食料や贈り物を標準よりも多めにした。

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自分の探検隊の状況と探索マップ(戦術マップのようなもの)が記載されたプレイヤーシート。左上のほうに縦に並んだ丸いマーカーが今回持ち込んだアイテム類を表す。
プレイヤーシートには、探検隊を構成する人夫や兵士の人数、持ち運んでいる贈り物や食料の量、さらに自分の健康度(ドクロマーカー)と正気度を表す欄がある。

 

探検

最初のエリアでいきなり「噂」の情報を得る。「噂」が本物である場合、特別イベントが発生するのだが、その多くはバッドイベントであることが多い。もちろんドラマポイントを得ることもできるのだが、得られるポイントに比べるとデメリットのほうが多いように思う。だが遭遇確率が低い「噂」イベントだけに、最後まで見届けずにはおけまい、ということで「噂」を追っていく。
立ち寄った村は幸い友好度が高く、「噂」の本当の場所を知ることになった。通常の探索を諦め、「噂」の場所へ向かう。

村から聞いた場所を訪れた探検隊が出くわしたのは、「食人族の村」。弾薬消費をしなければ人夫や兵を失ってしまう・・。やはりバッドイベンドだった。序盤から貴重な人夫や兵を失う訳にはいかないということで、保有する弾薬の半分近くを消費して食人族を退けた。

1つ目のエリア(第1ターンにあたる)では食人族によるポイント以外にほとんどポイントを稼ぐことができず終わった。

2つ目のエリア、3つ目のエリアでは打って変わって様々な発見が相次いだ。失われた王国、王国。自分のパトロンからボーナスポイントを得ることができる、珍しい植物相、文化を発見する。

4つ目のエリアにはいったところでカミさんがサドンデスレベルの50ポイントを獲得したため終了とした(ルールとしてはひとりのプレイヤーが50ポイントを超えたターンの終了時に終了)。

2つ目のエリアを訪れた辺りから何度か「渇き」のイベントに出くわす。水系を行くことを決めていたためアイテムのひとつである「水筒」を持ち込まなかったのだ。「渇き」イベントを回避できるダイスチェックに半分以上失敗してしまう。チェックに失敗する毎に「渇き」により体力と正気度を失っていくことに陥った(次回は必ず、「水筒」を持ち込もう)。

主に「渇き」イベントを中心に体力や正気度をへらすイベントに引っかかることが多く、「薬品」「マリファナ」により助けられた。「薬品」は2個持ち込んでおいてよかった。ポーターの損害を少なくなく、終盤は運搬能力の低下から荷物を自主的に放棄するといったことも発生した。

最後カミさんを追っかけ最終的には数ポイント差まで追いつくが、後少し及ばなかった。

なお今回のゲームを通して「噂」は、冒頭に発見した「食人族の村」の他、Wilandorさんが「ソロモン王の洞窟」を発見していた。

 

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最終盤のマップ。発見した各種事象がマーカーで表されている。
スタート地点として選んだモザンビーク(右下のエリア)から左上の方向に進んでいったことがわかる。

 

感想戦

ルールは難しくないがややこしく、整理されたプレイエイドがほしい

2回目とあったゲームに対する見通し良くプレイできた。

ルールは難しくはないのだがややこしい。個々の処理、アイテム・地形・イベント等々の処理はいちいち複数枚あるプレイエイドのあちこちを見ながらのプレイになり非効率この上ない。記載箇所がまとめてあればよいのだが、結局のところルールブックを見なければならない場合が多い。ルールブックの索引性も悪いので、発生した事象によっては3人でそれぞれルールブックを最初から精査することも度々あるなど一にもニにもスムーズなプレイができない印象。ルールやプレイエイドの整理が足りないというところ。

作戦がたてづらいゲームシステム

イベントや各種事象への遭遇自体が完全にランダムのため戦略や作戦というものがたてずらい。あるのは遭遇した各事象に対してどうこなしていくのか、という対処方法の巧拙というレベルの話となる。

出発前の探検隊の組成に気を使うべし。後々のリカバリーが効かない事項が少なくない。

アイテム、荷担ぎ人夫や護衛兵などは探検途中の補充が難しく、使用頻度が高いアイテムなどを忘れた場合など探検は非常に難しいものになりそう印象だ。

直接的な競争要素はほとんどない

平和なゲームとも言える。ドラマポイントが水準を超えたプレイヤーが勝者ということだが、ゲーム途中で他プレイヤーを邪魔するといった行為はほとんどない。唯一、他プレイヤーがパトロンから委嘱されている探索の目標を、先に見つけたときに、その相手にペナルティがかかるくらいだ。何度も言うとおり発見や事故・イベントの発生は全くのランダムのため、この要素さえ意図的に邪魔をするというよりも偶発的にそういう状況に陥るということでしか起こり得ない。

殺伐としたウォーゲームのゲーム会よりも通常のボードゲームのゲーム会で遊ばれるべきなのかもしれない。とは言っても、その割にはプレイ時間が長く、盛り上がりポイントが見つけにくいのは少々難点?

 

当日のカミさんの記事は次

 

(おわり)

 

 

 

「S.F.3.D Original」(Hobby Japan)を試す(2)プレイ感想

 

模型雑誌「Hobby Japan」のストーリー付きジオラマ連載で描かれた原作を、戦術級ゲームとして扱った本作、シナリオをいくつかプレイしてみた。

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感想戦

市街戦シナリオ(シナリオ1,2)をソロプレイしてみた。
リプレイ内容自体は平板なものになるので、まずはゲームの感想を、ゲーム設定(兵器設定など)とゲームデザインの2つの観点で書いてみたい。

 

ゲーム設定(兵器設定など)

ガンダムに代表されるロボットアニメ題材のゲームと同様、本作も雑誌連載記事を原作にしたキャラクターゲームのようなものだ。

原作付きの空想テーマの作品の場合、作品や作品世界、またはそれらの設定を愛し、どこまで作品世界に没入できるか、にかかっているように思う。

連載当時の記事を熱心に見ていた訳ではないため断定はできないが、最初は大型の宇宙服のようなパワードスーツの兵士たちを扱うことで始まった設定が、連載が進むにつれて次々と兵器が追加されていった印象がある。
登場する兵器の種類が増え作品世界が拡大していった過程は、背景ストーリーは用意されていたものの*1、兵器進化や兵器体系の必然性よりも、模型・ジオラマとしての見栄えなどが優先されたような内容であった。
トップダウンな発想から兵器体系が考案された訳ではなく、模型やジオラマとして作りたいところから、ボトムアップ的に拡大してきた兵器体系なのでどうしても後付けの理屈が目立ち、また兵器体系としての網羅性やバランス、必然性に欠いている。
本作ゲーム内ではそうした設定間の“ちぐはぐさ”が目立たないように調整がはかられているのだろうが、それでもどうなの?と思わざるを得ない点が散見された。

愛があるファンであれば突っ込んだりせずに受け入れる範囲なのかもしれないが、ニワカな当方が、ゲーム中、気になった兵器設定についてファンの人たちのクレームは気にせずに書くと・・

  • シュトラール軍が最初に投入したパワードスーツ“PKA”の主要武装パンツァーファウスト2基だけ。WWⅡ時代末期のドイツ軍の国民擲弾兵もかくやという貧弱かつ継戦能力が弱い装備だ。当然2本のパンツァーファウストを発射して使ってしまうと、補給集積所(Depot:シナリオ中、マップ内の複数箇所に設置できることが多い)や飛行機体(PK41など)のところに行って補充しなければならない。ゲーム内の運用上もルール上も煩雑。特に防御側は防御射撃でひとつのターンの中で何度も射撃ができることを考えると、2回射撃すると新たに補給してもらわなければならないなんて悪夢のような条件に見える。
    そもそも人力以上のパワーを持ち重装備が可能であろうパワードスーツの兵の装備がパンツァーファウスト2基だけ、というのはどうなの?だ。なお傭兵軍のパワードスーツ”AFS””スーパーAFS”、またシュトラール軍の後期の主力となる”Gustav"はレーザー兵器を装備している。
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  • シュトラール軍の主力であるパワードスーツ“PKA”や“Gustav”は、“PK41ホルニッセ”という飛行兵器と一体化して空中機動ができる。パワードスーツ1体が1機の機体と合体して空中移動し、着陸して分離、分離後、“ホルニッセ”はそのまま制空任務や対地支援ができるという・・。
    この飛行機体の存在がよくわからない。初代ガンダムに登場したザクやグフを載せていた、“ドダイ”のような存在か、はたまたマジンガーZの“ジェットスクランダー“か?といったところか。
    歩兵を空中機動させるとすると現代のヘリコプターに近いかもしれないが、1機でパワードスーツ1体しか運搬できず、その一方で、単体で対地支援ばかりか制空戦闘もできるというのはなにぞ?、といったところ。
    ちなみに傭兵軍側には同種のパワードスーツを輸送できる飛行機体はなく、通常の制空戦闘と対地支援を行うことができる”Faike”という航空機が登場する。

    <追記>
    PK41のモデル写真を見ると、パワードスーツを着用した兵士1名が機首部分に搭乗したようなサイズと形状をしている。機体自体も非常に簡素な形状で(模型的には組み立てるのが楽しそうだが)、航空機というよりも空中機動を行う一人乗り軽飛行装置といった趣がある。
    問題はパワードスーツの兵士が降りた後、PK41は飛べるのか、という点だ。形状などからは他に搭乗員もなさそうで、自動で自律的に飛行して戦闘を行えるようには見えない。
    ルールには搭乗兵が分離した後、PK41が移動や攻撃ができるともできないとも明記はされていない。どのように処理するのが妥当なのだろうか?

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  • 両軍に浮揚して移動する機構を備えたいわゆるホバータンクが登場(シュトラール軍の“ナッツロッカー”、傭兵軍の“サンド・ストーカー”など)するのだが、この活用方法がよくわからない。確かに無限軌道タイプや歩行タイプの兵器よりも移動力はあるのだが、軽武装で装甲は薄い。偵察用途という考え方はあるが、このゲームは隠匿・隠蔽ルールはほとんど用意されていないため(選択ルールで隠蔽配置ができるものもある)、使い途があまりないように感じた。もちろんこれまでプレイしたのは市街戦シナリオだけなので野戦シナリオではまた様相が異なるのかもしれない。*2

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  • ホバータンク以上に使い途がわからないのが、歩行タイプの大型兵器だ。シュトラール軍には2本足の“クレーテ”(ちょうど、マクロスに登場するゼントラーディ軍装備の“リガード”のような形状)、傭兵軍には4本足の“シェンケル”という大型兵器が登場する(こちらは攻殻機動隊パトレイバーに登場する多足歩行の戦車のサイズを大きくしたようなもの)。これらも戦闘力は弱く、歩行タイプなのでパワードスーツ部隊と同程度かそれ以下の移動力しか持たない。戦術幅が限られたゲーム内で有効な用途が見つからなかった。
    なお”シェンケル”についてはストーリー上の設定でも、実戦では役に立たなかったと明記されている(前記事参照)ので使い途がない事自体が設定ともいえる。

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  • ホバータンクにしろ、パワードスーツ以外の歩行兵器にしろ、どうしてそのような形状や動作機構を採用したのか、という必然性が弱いことが弱点になっている。または隠蔽・隠匿、偵察といった行為、またヒットアンドアウェイのような戦法をゲーム内で再現しにくいことからでてきているのかもしれない。このあたりも模型的には見栄えはするが、兵器としてはどうなの?だ。

 

ゲームシステム

入門用ゲームとしてルールが簡素になっている点は異論はないが、ルール上、説明が足りていないのではないの?という点が散見される。プレイ時には適宜、プレイヤー同士が取り決めをして進めていく必要があるだろう。特にLOSの処理は注意。防御射撃の回数もわかりにくかった。

戦闘解決では2個の6面ダイスを使うが、2個のダイスの目の合算の数字を用いるのではなく、掛け合わせた数字を使う点は前記事にも書いた。実際にプレイの中で使ってみると、このダイスの目の処理は事前に想像していたのに比べるとそれほど奇妙ではなかった。ただし時々、混同してしまったのも事実。若干神経を使う。

システムが簡単で良かったと書いたばかりでなんだが、簡素化したばかりに、対戦車戦闘、対空戦闘、航空機による対地攻撃などなど戦闘解決がすべて同じように処理される。兵器間の関係性に得意な相手/不得意な相手といった相性もなく、同じような戦闘解決になっている。
例えば、この世界で歩兵にあたる、”SAFS”や”Gustav”といったパワードスーツユニットは装備したレーザー兵器で、”ドールハウス”のような装甲車両を破壊できるし、航空機相手に対空戦闘も行うことができる。攻撃力や射程の強弱はあるものの、みな等しく万能兵器なのだ。
正直、戦術級ゲームの醍醐味のひとつでる多種類の兵器を扱い、それらの運用を楽しむという快感に欠ける。

その他

ユニットのデザイン上、表面には移動力と移動形態のみが表記されており、攻撃力・防御力・射程・耐久性能といったスペックは裏面に記載されている。戦闘の毎にひっくり返して裏面のスペックを参照することになる(エポック社「装甲擲弾兵」と同じだ)。地味に煩雑だった。

 

まとめ

ゲームバランス上、仕方なかったのかもしれないが、同種類の兵器間での性能差がそれほどなく、性能差も数を投入すれば解決してしまうような印象がある。

また兵器種類間の差、地形や運用によってその強弱が変わったりといった性質の違いもあまり演出されていないため、多少形状やイラストが異なっても単なる数字上の差でしかなく(その数値差もそれほど大きくない)、兵種・兵器運用の楽しみが薄い。
ひとつのシナリオに登場するユニット数が多いこともあって、せっかく様々な兵器を登場させた割には同じ様な戦闘が延々と展開することになるなど、戦闘全体が大味な印象を受けた。
この感覚で思い出したのは、往年の「激戦!ア・バオア・クー」(ツクダホビー)か・・。

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要はキャラクターゲームの一種なのだから細かいところに突っ込むな、ということなのかもしれない。

とここまで書いて本作はデザイナーが最も大変だっただろうと思い至る。材料は断片的にしかない。ストーリーから兵器間の性能差などを想定していく・・。バランス調整を繰り返すうちに登場する兵器群の性能差が丸まっていったのも仕方なかったのかな。

 

*1:そもそものところで架空の未来世界の兵器にWWⅡ時代のような雰囲気の戦場の、名もない兵士たちによる泥臭い戦いのストーリーがつけられたジオラマシリーズという点にもともとの「S.F.3.D」世界の他にはない無二の魅力があった訳なので、ストーリーや設定の穴を指摘すること自体、あまり建設的なことではない。

*2:ホバータンクの実現性を考慮すると浮揚する必要性から軽量でなければならず、一方で浮揚のための動力を考慮すると大型化が予想される。とすると、戦力としての実用性はともかく、”ナッツ・ロッカー”や”サンド・ストーカー”のようなサイズ感・形状になるというのは説得力がある。

「Ney vs. Wellington: The Battle of Qatre Bras 」(SPI)をVASSAL対戦する(3/5)AAR - 序盤戦

 

ワーテルローの戦いの2日前に争われた前哨戦のひとつであるカトル・ブラの戦いを描いた「Ney vs. Wellington: The Battle of Qatre Bras 」をVASSAL対戦することになった。

希望によりDさんがフランス軍、当方は連合軍を担当することになった。

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カトル・ブラにてイギリス軍の方陣に突撃を行うフランス軍騎兵

 

 

 

 

 

前記事で紹介した通り、かなり細かいレベルまでルール化されたゲームだ。ルールが精緻になればなるほど、実際の戦術・作戦に近い運用を行っていく必要がでてくる。
もとより土地勘がないナポレオン時代のため、何をどのように適用させていけばよいのかわかりにくい。かろうじてルールから類推して、部隊の運用方法に気づくことが多い。騎兵の運用、独特の砲兵の運用、歩兵の行軍と隊形の選択などだ。
手探り状態でプレイは始まった。こうした事情から、プレイ内では、それはないだろう、といった用兵・戦術の間違いやルールの取り違えが頻発していることはご理解いただきたい。

 

初期配置

ネイ将軍はカトル・ブラの交差点の奪取を目指し、シャルルロアよりブリュッセル街道を北上した。カトル・ブラ付近にはすでにオラニエ公ウィレム*1麾下のオランダ軍が南西の森を中心に展開しており、さらにブリュッセルより南下してきたウェリントン公率いるイギリス軍が行軍隊形のままカトル・ブラに差し掛かろうとしていた。

ネイは騎兵斥候の報を受けると、連合軍の兵力は大きくないと判断、軍を展開させ、進撃を始めたところからゲームがはじまる。

 

カトル・ブラ南方に展開したオランダ軍の砲兵陣地(行軍隊形ではなく展開状態にある)のさらに1キロほど南に街道から散開しつつあるフランス軍が姿を表す。

フランス軍が登場したブリュッセル街道(南北に通った街道)沿いのマップ南端から、カトル・ブラの交差点までちょうど30ヘックス。1ヘックス=91メートルなので3キロ弱。当時の軍装状態での行軍速度はわからないが30分~1時間弱で到着できる距離だ。

初期配置は両軍とも決まっている。ブリュッセル街道の南、フランス軍勢力の少し上あたりに位置するオランダ軍砲兵隊2個だけが横隊状態、いわば砲兵陣地を敷いていたが、残りは縦隊のまま配置される。

 

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初期配置
マップは北が上側。上下(南北)に走るブリュッセル街道と東西に走った街道が交わった箇所がカトル・ブラ。マップ中央部に点在しているオレンジ地で黄色ラインのユニットはオランダ軍、ブリュッセル街道を数珠つなぎ状態で北側から進入してきつつある軍がイギリス軍(赤色)。南から展開した状態で迫っているのがフランス軍(青色)となる。

 

事前の作戦

フランス軍はカトル・ブラを奪取すること、さらには北端より突破することで勝利を確実にできる。連合軍はフランス軍の目論見の阻止が勝利条件となる。

改めてルールを読みながらフランス軍の侵攻路を考えた。
マップ西側(左手)にある森林地帯は妨害地形ヘックス(Obstructed Terrein Hex)となり、進入するだけでユニットは「混乱状態」(Disordered)になる。さらに妨害地形ヘックスにいる間、「混乱状態」からの回復はできないため通過はしても居残るような地形ではない。迂回部隊が登場したとしても主力が通るルートとは考えにくい。
マップ東側には池があるが、池のさらに東側を通るルートについては湿地帯があったり(砲兵や騎兵の通行に障害がある)、それを超えてもカトル・ブラへ向かうルート途中に森林ヘックスがあったりする。西側の”大森林地帯”に比べると規模は小さく、また平地だけで抜け出ることができるルートは設定できるが、こちらもやはり主力の侵攻路にはなりえない(ただし助攻部隊であればこのルートを目指す可能性は想定された)。
結果としてフランス軍の侵攻路は街道を中心とし、西の森林地帯と東の池の間を通った中央突破になると想定した。

中央部で連合軍が防衛線を引く場所となると、フランス軍の白兵戦や騎兵突撃を防ぐ意味で、西の森林地帯から東の池に向かって東西に流れている川(Gemioncourt)が、地形的には最初の防衛線になることであろう。
この川まで連合軍はなんとしてでも河畔をとって、フランス軍の渡河を妨害すること。

ルールを読みながら・・・

手元に本作「Ney vs. Wellington」と、同じシステムを採用していると言われる「Wellington's Victory」(どちらかというとこちらが元祖)の両方の日本語訳ルールブックがあった。読みやすいのは後者のほうだったので後者を先に読んでいたのだが、微妙にルールに違いがあることが判明し、あわてて「Ney vs. Wellington」のルールを読み始めた。どうしても不整合な部分が判明したため、さらに英文ルールを参照するハメになった。「Ney vs. Wellington」のほうが日本語訳の精度がよろしくなかったため、この後も随所で英文ルールを確認することとなった。

 

第1~3ターン(14時30分~15時)

6月16日、午後14時30分。

フランス軍は街道東側の東翼を突出するように移動する。先頭は猛将で知られたネイ将軍が直率する歩兵連隊だ。さらに数個大隊規模の部隊を池の東側を大きく迂回するように移動させる。

連合軍はもっともフランス軍に近い位置に陣地を展開していたオランダ軍砲兵部隊を撤収させ、北上させる。西側(左手)の林内にいたオランダ軍も、Gemioncourt川に敷こうとしている防衛線へ参加するべく街道に近い位置まで移動を開始する。
イギリス軍の先鋒としてカトル・ブラの南東部に位置した軽歩兵(6個中隊)がフランス軍の足止めをするべく急ぎ南下した。

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第3ターン(15時)終了時
池の西側で足止めとして展開していた複数のイギリス軍散兵ユニット(100人規模、中隊規模のユニット)とネイ将軍直率の部隊とが接敵した。
ブリュッセル街道沿いでは最前線から撤収してきたオランダ軍砲兵部隊が展開し射撃準備にはいった。

 

フランス軍騎兵部隊が騎兵突撃の準備をはじめる。騎兵突撃が宣言されると騎兵ユニット前方に一辺が6ヘックス(=540メートル)の突撃ゾーンが設定される。ゾーン内にいるユニットは士気チェックが強制される。騎兵が突撃準備をはじめるだけでびびりあがってしまうようだ。騎兵突撃を宣言されてからあわてて防御のために方陣を組むといったことは難しいということだろう。もちろん練度や士気が高い部隊は士気チェックに成功しやすいので、方陣への隊列変更も容易ということになる。

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猛将ネイはイギリス軍本隊が到着する前に川を渡ってしまえとばかりに最前線の部隊を直率して前進してきた。かろうじてイギリス軍の先鋒を担っていた「散兵」中隊が川沿いに展開し、フランス軍を迎え撃った。まぁしょせん中隊規模の部隊なので鎧袖一触となるだろうことは必定。

フランス軍はそこで騎兵部隊に突撃を宣言させる。
突撃エリア内の連合軍は士気チェックを余儀なくされた。
街道沿いでは南下してきたイギリス軍先鋒と後退または移動してきたオランダ軍が団子状態になっている。とりわけ前線から急ぎ後退したオランダ軍砲兵が味方の中に位置していて、仮に砲展開状態に隊形変更した場合もうまく射界とれるかわからない状態になっている。

ここで早速、突撃ゾーンの適用範囲や士気チェック時の修正などでルールと首っ引きになる。しかも「Wellington's Victory」では小川は渡河不可能であり、小川を超えて突撃ゾーンは広がらないということなのだが、「Ney vs. ‥」のほうはそうした制約がないというルールの相違もあってプレイヤーが”混乱”してしまった。

川の側にあるGemioncourt(下写真)の扱いについても、初期配置段階でここにはオランダ軍歩兵大隊が配置されているのだが、ルールの適用間違いで早々に士気チェックを行い、士気が低いオランダ軍のため「混乱」状態に陥ってしまっている。実際は初期配置段階で建物ヘックスに存在する部隊の士気チェックは不要で、また建物内の部隊の士気チェックには相応のプラス修正が適用されるところでああった。
推測だが、Gemioncourt沿いの防衛戦の拠点として活動できる場所であったのだと思う。

作戦面でも最前線に展開中であったオランダ軍砲兵を早々と撤収させてしまったが、第二次世界大戦での用兵とは大きく異なり、砲兵は最前線に配置しなければ有効に砲撃できないという性能を考えると、オランダ軍砲兵は”半ば捨て駒”的に、移動させずにネイ軍の出鼻をくじく。その際、イギリス軍の「散兵」6個中隊も、ネイ軍の足止めのためにそこまで前進させる・・と行った作戦もあったかと後で気づいた。

 

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Gemioncourtで検索するとカトル・ブラの戦闘云々という説明とともに写真がでてきた。当時の建物が残っているかは定かではないが、ワーテルローにおけるウーグモント邸と同じ様に現存しているのかもしれない。
マップ上でもこの建物は登場しており、ブリュッセル街道がGemioncourt川と交錯したすぐ南、上記のマップ図ではオランダ軍歩兵大隊が籠もっているヘックスがそれにあたる。

 

(つづく)

*1:後のオランダ王。オラニエ公の綴は”Orange"となるのでユニットカラーがオレンジ色なのか?