Their Finest Hour -歴史・ミリタリー・ウォーゲーム/歴史ゲーム -

歴史、ミリタリー、ウォーゲーム/歴史ゲーム/ボードゲーム

「アップフロント(UP FRONT)」(アバロンヒル)をインスト対戦する

シミュレーションゲームの名門ブランドであったアバロンヒルハズブロ社に買われ、かつての多くのアバロンヒルのIPが日の目を見ることなく退蔵されていることは有名な話だが、中でもぜひ再版・復刊してほしいIPベスト5に必ず入ると言われる作品が「アップフロント」だ。*1

アップフロントアバロンヒルを代表する戦術級ゲーム「スコードリーダー」を元にカードゲーム化したという、発売された当時では斬新なコンセプトの作品であったように記憶している。個人的には、当時すでに「スコードリーダー」をプレイしていたこともあり、なかなか購入には至らなかった(当時のボックス価格は6,800円でアバロンヒル製品の中でもやや高い部類の製品であったこともある)。

月日は流れてついぞプレイすることがないまま今に至る。今回、幻となっている本製品をプレイする機会があったため、インスト兼ねて対戦をしてもらった。

 

 

ゲームの特徴

第二次世界大戦の歩兵戦闘を扱うカードゲーム。カード1枚は歩兵1人を表し、通常のプレイでは各プレイヤーは1個分隊規模(おおよそ10名程度)を操ることになるようだ。シナリオが進むにつれ、ステップ方式で対象は拡張され、最終的には装甲車両も登場する。

プレイヤーは率いる1個分隊規模約10名の兵士を率いるのだが、分隊は班・チーム規模に分割されて操られる。
アメリカ軍であればチームを3個程度(1チームは3~5人程度となるイメージ)、ドイツ軍はじめ他の軍隊の場合は2個チーム程度が適正規模のようだ(理由は後で記す)。

なおシリーズ第一作の「アップフロント」はアメリカ・ソ連・ドイツの3カ国が登場。シリーズの後の作品で、日本軍、イギリス軍などが登場する。各国軍は装備している兵器が異なるのと、プレイのルールでも国籍の違いを特色づけられている。このあたりの加減は「スコードリーダー」にも似ているように感じた。

 

カードは分隊を構成する兵士カード(分隊長なども含む)の他、アクションを行う一連のカードがある。ゲームはこのアクションカードを扱うことで進んでいく。

兵士カードは1人カード1枚になっているため、名前が書かれ、モラル、KIAなど、個々人によって異なる数値が描かれている。また装備する兵器(Kar98小銃、M34かM42軽機関銃、MP40など)が記載されている。

アクションカードには「移動」「戦闘」「回復」といったチームがとるアクションが記載されたものの他、各種の地形が記載された地形カード、それ以外にも、ヒーロー*2、狙撃兵、地雷、煙幕といったカードや、シナリオがステップアップしていくにつれて追加される各種要素を含んだカード(例:盤外砲撃)も登場する。
アクションカードは各種判定の際の判定にも用いられ、判定用の数値なども記載されている。ひとつのカードがゲーム内において復数の利用がされる点は、最近のゲームにも通じるところがある。

Reverse of action cards (high scan resolution)

アップフロントのアクションカードの裏面。

Brush and Gully cards

地形カードの例(写真は英語版のカード)。地形の名称とその下に地形修正値が記載されている。右肩の数値はダイスの代わりに判定に用いる数値を表す(赤字はマイナス数値)。

Fire and Minefield cards

射撃カードと地雷原カード。射撃カードの丸数字が、そのカードを発動するのに必要となる火力値。

Movement and Rally cards

「移動」カードと「回復」カード。写真に出ている「回復」カードは、アメリカとドイツは回復カードとして使えるが、ソ連は別の内容になる。また、右端の「RADIO(無線機)」は盤外射撃を行う際に有用な文言らしいが詳細不明。このように一つのカードが何役も兼ねていたり、国籍によって異なる意味合いになっているものもある模様。

 

プレイの手順

各プレイヤーはチーム毎にアクションカードにより活動内容を指示する。

「移動」をしてチームを前進させると相手との相対的な距離は縮めることができる(もちろん移動により相手から距離をとるように移動することも可能)。「移動」に伴い地形カードを示すことでその地形にはいることも可能。もちろん多くの地形では地形防御効果を得ることできるようになる。
「移動」を行っているチームは敵から身を晒している状態になるため、射撃を受けた際に、損害を受けやすい。

「移動」にあわせて「地形」カードを出すことでその地形にはいったことを表す。「建物」は最も防御効果が高い地形で、地形効果は「森」、「繁み」と続く。「丘」は見晴らしが良いなどこのあたりは「スコードリーダー」の地形の感覚そのものだ。

「射撃」カードには「射撃3」「射撃5」などと射撃の強さがあわせて記載されている。闇雲に射撃ができる訳ではなく、射撃を行うチームの各メンバーの火力の合計値が、「射撃」カードのなかに記載している射撃を可能とする数値以上でなければ発動できない。「射撃5」のような強力な射撃カードはそれだけ発動するのが難しくなる。
各メンバーの火力は目標との相対距離によって減衰する火力表によって決まる。距離が遠くなると火力は減衰し、近くなると大きくなる。

自分のチームの火力が許すのであれば、複数の「射撃」カードを同時に出すことも可能。「射撃1」といった弱い威力のカードだとどうしても地形効果を覆すことが難しくなるため、複数カードをあわせて出すことで威力を高めたほうがよい。

「射撃」の解決は、「射撃」カードの威力の合計値から地形効果や他の効果により修正をプラス・マイナスを行う。その後の数値がモラルチェック時の修正値となり、目標となったチームの兵士毎に、1枚ずつカードをめくりカード右肩の数値によりモラルチェックを行う。修正後の数値がKIAの数値以上になると兵士は戦死、モラル値以上の場合は「萎縮」となる。

 

通常状態の兵士カード。
それぞれ兵装とその下に距離に応じた火力が記載されている。
距離(Range)=5の状態が最も近い状態。ライフルの火力から推測するとRange=1あたり100メートルといったあたりだろうか。右から2番目の軽機関銃MG34)の数値がやはり大きく、こうした歩兵戦闘では頼りになる存在であったことが表されている。右端の下士官が持つサブマシンガンは近距離では火力は大きいが、中距離以上では役にたたない。
カードの最下層に、射撃を受けた際に萎縮状態になる「モラル」値、またその右端に戦死状態になる「KIA」値が記載されている。

 

「回復」カードは対象となるチームの中で「萎縮」状態になっている兵士を、効力値の数値分通常状態に回復させることができる。

あとは様々なバリエーションが用意され、シナリオ毎に組み込まれていく模様。
「地雷原」「鉄条網」「隠蔽」「煙幕」「狙撃兵」「ヒーロー」などなど・・。

 

こうしたアクションは分隊を分割したチーム毎に実施していく。
チームを2つに分けるか3つに分けるかは、射撃カードの必要火力値に依る。アメリカ軍は比較的個々人の火力の装備の火力が大きいが、ドイツ他の軍隊の場合は人数を増やして、火力値を高めるということが必要になるだろう。

 

全てのチームがアクションを行うか、パスをすると、手札から不要カードを捨て札し、手札枚数の制限までドローして自分のターンは終わる。
なお、ひとつのターンに可能な捨て札枚数は、ドイツ1、アメリカ2、ソ連全てらしい。また各国の手札制限枚数は、アメリカ6、ドイツ5、ソ連4となっている。

 

プレイ概観

もっとも基本的なシナリオを対戦。両方とも1個分隊規模の部隊による遭遇戦。ドイツ軍を担当。アメリカ軍は部隊を3チーム、ドイツ軍は2チームに編成(まぁ、このあたり考えがあった訳ではなく、お試しなので適当な判断で)。

軽機関銃を持った側を支援チームとし5人を配置、残り5人を突入チームとする。
突入チームをアメリカ軍に向かった「移動」。距離を詰める。まずは進めだ。アメリカ軍も前進。

序盤、カードの引きとして、「移動」は来るが、「射撃」カードがなかなか現れない。やむなく軽機関銃チームも前進。
「移動」のままだと地形修正で不利に働くので地形カードをひいたところで「枯れ谷」に進む。「枯れ谷」は周囲からは窪んでいるため、射撃されにくい地形だ。こうした地形による効果は「スコードリーダー」をやっていると直感的にわかりやすいが、そうでないと、わかりにくいかも、と思う。

アメリカ軍の中央のチームは「丘」に登る。「丘」からは「枯れ谷」の中は見えてしまうらしい。射撃を食らい兵士一人ずつの判定で一人「萎縮」してしまう。

「萎縮」状態のチームは「移動」ができなくなるので、すかさず「回復」を行う。「回復」カードに書かれた数値分の人数の回復が可能だ。「回復」の処理は、「スコードリーダー」よりも軽い。「スコードリーダー」であれば、指揮官が回復させないといけない訳だが、1個ユニットが分隊単位の「スコードリーダー」と、1ユニットが兵士1名の本ゲームとのスケールの差というところだろう。
「回復」カードもけっこうな枚数で登場するし、本ゲームは「回復」がしやすい。

突入チームがさらに「移動」し、前進したところで「河川」カードがアメリカ軍から配置される。「河川」カードは自分側の地形としてよりも相手側に配置することで移動を妨害することに使う。「河川」カードがおかれると「移動」カードの中でも「渡河」という但し書きがあるカードがなければクリアできない、などと制約がある。

同種の妨害カードとしては「鉄条網」がある。

 

相対距離が3といったあたりで相互に射撃戦が発生する。
書き忘れたが、勝利条件は4名が相対距離5まで進ませた側が勝利というところ。
ドイツ軍の接近にアメリカ軍が猛射を加えてきた・・。

状況としては、アメリカ軍が左からAチーム・Bチーム・Cチームと配置。
我が方はアメリカ軍のBチームに相対するように突入チーム、Cチームに対し軽機チームが相対している。

アメリカ軍のBチームは「丘」、Cチームは「建物」に位置し、ドイツ軍は軽機チームが「建物」内に位置。

ドイツ軍の突入チームが地形に依らず突出しすぎたらしく、Aチーム・Bチームの射撃を受け、次々とKIA(戦死)を出してしまう。

「スコードリーダー」の原則から言っても、地形に依らない不用意な移動はアウトだ。容易に損害を重ねてしまう。
一方で軽機チームは有利な「建物」地形にいるものの、相対するアメリカ軍cチームも同様に「建物」内に位置するため、お互いに有利な地形効果により相手に損害を与えることができないでいる。

途中、「狙撃兵」などによる射撃も発生するが、「回復」がしやすいためなかなか損害に繋げられない。畳み掛けるように「射撃」を行う必要であることはわかるものの、うまく「射撃」カードが回ってこないため、連撃ができないでいる。

軽機チームも相手に損害を与えるためには、もっと前進して火力を高める必要はあるのだが、これもまた有利な地形を離れて移動するだけの、カードもタイミングも回ってこない・・。このあたり、お互い軽機関銃までしか装備していない歩兵分隊同士の射撃戦の限界といったところか。
重機関銃や軽迫撃砲(日本軍であれば擲弾筒)がほしいところ。

といったところ時間切れ終了。

損害はドイツ軍が4名戦死、アメリカ軍が1名戦死。

 

中断終了直前の状況。ドイツ軍の左側のチーム(突入チーム)は、相対距離3まで接近するが、地形に依らない移動を行ってしまったところをアメリカ軍の猛射を受け後退するものの、うまいこと「地形」カードを引けず、最終的には4名を失うことになった。

右側の軽機チームは地形効果-3という「建物」内に射撃位置を構えるも、相手に効果的な射撃を加えるにはいま一歩近づくべきであった。

アメリカ軍はBARの射手を「狙撃兵」の射撃により失ったことから、隣の兵が、放棄されたBARを拾い上げ射撃を続けた・・(このあたりも「スコードリーダー」っぽい処理)

 

感想戦 想像力をたくましくしてプレイする

手札がドイツ軍の場合は5枚しかないため、タイミングよく「移動」「射撃」「回復」カードが来る訳ではない。移動したくてもできない、射撃したくてもできないという場面が、何度も訪れる。このため毎ターン、いらないカードは捨て札をする必要があるが、これもまたドイツ軍の場合は毎ターンの捨て札枚数が1枚という制限がある。

カードがないために、敵が目の前にいるのに射撃ができない、明らかに不利な地形にいるのに移動できないというのはいかにも理不尽に感じられるが、ここはカードがないからできないのではなく、なんらかの理由があってできない状況を表しているのだろうということだろう。状況ひとつひとつの説明は省略し、戦場での行動をカードの中に落とし込んだというゲームデザインだ。抽象化ということだ、と理解した。

「スコードリーダー」のような戦術級ゲームのプレイヤーだと、カードによって描かれる状況はこういう状況だから、とその後の行動を思い浮かべるのは難しくないだろうが、本ゲームからはいったプレイヤーはどうなのだろう。逆にこうした想像力で補完しながら、すすめることができ、本ゲームは十分に楽しかった。このあたり本ゲームが傑作と言われる所以であろうと理解した。一方で、こうした補完がないまま本ゲームを純粋カードゲームとしてすすめるのは省略された要素からもハードルが高くないかしら、とも感じた。
「スコードリーダー」はそれなりにルールのボリュームがあるため、それらを理解するよりは本ゲームのルールのほうが軽いのも事実。
今回はもっとも初歩のシナリオをやったのみなので、今後、ステップアップしたシナリオにも挑戦していきたい。

 

次のゲームは、ベトナム戦争を舞台にしたカードドリブンの戦術級ゲーム。各アクションは「アップフロント」と同様に手札内にあるカードを用いて行うことになるが、「アップフロント」と異なり、ヘックスタイプのマップは使うため、地形や彼我の距離などは抽象化されている訳ではない。マップが登場したため、戦術級ゲームにつきものの「LOS:Line of Sight (視線)」ルールが登場する。ただし本ゲームの場合、高度を捨象することによりLOSルールの複雑さを多少簡便化している。・・・と書いて、「アップフロント」は「地形」をカード化することにより、戦術級のルールの複雑化の元凶である「LOS」に関するルールを排除したのだと理解した。なるほどね!

 

(了)

 

 

 

*1:ポリコレが非常にうるさいこともあり、ハズブロのような万人受けを目指す玩具メーカーは本作のような作品をリリースすることはないのだろうな、とも思う。ボックスアートを改めて見ると武装親衛隊だし・・。BGGを見ると、実に多くのハンドメイドと称した本作の写真が紹介されている。

*2:スコードリーダーでいうところの「狂暴兵」「ヒーロー

「BOOTS&SADDLES」(GDW)を対戦する(2/2)-シナリオ1「威力偵察」-

現代戦を戦術級クラスで扱った「ASSAULT」シリーズの第2作目「BOOTS & SADDLES」(GDW)を対戦した。練習シナリオでゲームシステムを復習しつつ、ヘリコプターの扱いを体感できたところで、通常シナリオに挑戦してみることにした。

 

 

 

 

シナリオ設定が秀逸

選んだシナリオはシナリオ1「威力偵察」。

「BOOTS & SADDLES」にはシナリオは3種類しか付属していないのだが、各シナリオでの両軍の兵力パターンはそれぞれ6種類設定されている。プレイヤーは開始前に7から12まで書かれたチットを引いてシナリオに登場する戦力を決める。

勝利条件やターンの長さなどシチュエーションは同一だが、シナリオ毎に両軍の兵力はそれぞれ6パターン用意されているので、彼我の戦力の組み合わせとしては36パターンということになる。しかも、(ここが重要)相手がどのチットをひいたのかはゲームが終了するまで明かされない。

相手側がどのような戦力なのかわからないままゲームは始まり、シナリオ開始後、敵情不明の敵戦力と衝突することになるのだ。

第1作「ASSAULT」にも同じシナリオ名称のシナリオ3種類が付属しており、こちらもまた各シナリオ毎に両軍とも6パターンの戦力が設定されている。
「ASSAULT」と本作は連結することができ、ひとつのシナリオについて、「ASSAULT」での兵力が基幹となるパターン1~6、本作の兵力が基幹となるパターン7~12の合計12種類の戦力からチットを引いて決めることも可能となっている。

融合するとその組み合わせはひとつのシナリオ毎に実に144パターンとなる!

今回は「ASSAULT」と本作をあわせた12パターンではなく、本作のパターン7~12のほうから選ぶことになった。

 

兵力を決める

シナリオは前回と同様にシナリオ1「威力偵察」を選択。

ソ連軍の諸兵科連合部隊がアメリカ軍の前線に接触し、突破をはかるというものだ。勝利条件は敵ユニットの除去によるポイントと、突破(マップ反対側からの脱出)の成否によるボーナスポイントによって決まる。全18ターン(実時間にして1時間30分)。

 

運命のチット引きの結果は「12」。
陸上兵力は練習シナリオCと同様に、機甲騎兵大隊編成。M1 2.5個小隊、M3 2個小隊、歩兵2個小隊、M106(迫撃砲装備)1個小隊というもの。特異なのは、シナリオ後半、大量のヘリボーン部隊が登場することだ。UH-60 通称”ブラックホーク”が11個小隊、歩兵4個小隊に対戦車ミサイルTOW装備の対戦車ミサイル 4個小隊が、第8ターンから11ターンにかけて断続的に登場する。
ソ連軍攻撃開始という連絡を受けた緊急展開部隊がヘリで登場したといったシチュエーションだろうか。

 

はたと困った。

ソ連軍の戦車を止めることができる装備が、M-1 2.5個小隊(0.5は中隊本部)しかないのだ。M-3の主砲は対戦車戦闘ではほぼ役にたたない。頼れるのは弾数制限があるTOWミサイルのみ。
練習シナリオでは攻撃ヘリが少しばかり登場したのでヘリによる対戦車戦力を期待できたが、それもない。TOWミサイル小隊が後半に登場するが、機動力がない歩兵であるため待ち伏せ攻撃が主体となるしかない・・。
途中で登場するヘリは全て輸送ヘリUH-60で、武装ベトナム戦争映画でよく描かれる機体横のデッキに備えられた機関銃しかなく、対歩兵戦闘にさえ十分には使えないくらいの戦力だ。

さらに深刻なのが対空兵装だ。一部の歩兵が装備するスティンガー対空ミサイルだけである。後続の歩兵小隊が装備している分を加えても、スティンガー装備の歩兵は3個小隊にすぎない・・。うち初期配置ユニットの中ではユニット1個だけである。
ソ連軍に戦闘ヘリがあった場合はほぼ対抗できないのではないか・・?

 

戦力は薄い。本来ならば、前線部隊の後退を含めた二重三重の防衛戦を設定したいところであるが、戦線を一重に引くのが精一杯という戦力にすぎない。
無理に前進防御は行わずに、塹壕(初期配置で3個)*1と、移動フェイズの間、移動を行わなかったユニットが得ることができる「遮蔽物(Cover)」下にはいることによって「視認」確率を下げるしかないだろう。

 

侵攻開始

ソ連軍はマップ左端から右端に突破をはかる。幹線道路沿った予想侵攻ルートが緑色の矢印で表した。実際は丘陵地にはいったところで道路を外れ、点線矢印を進んだ。

赤印はアメリカ軍の配備(水色はダミー)。初期配置位置からほぼ動かないままとする。
アメリカ軍は、前線のM-1ユニット2個小隊が主力。M-1の近くに歩兵を配置しているのは、戦車から視認するよりも、歩兵からのほうが視認の成功率が高いためだ。

 

ソ連軍の前衛が登場。ヘリコプターも陸上ユニットも隠蔽状態では同じような矢印マークなので、区別がつかない。ソ連軍が進む丘陵地は開けているに見えるが、細かく見ると林があったり建物があったりでアメリカ軍前線からは見えていない。

 

ソ連軍は陸続と後続が盤上に姿を表している。写真の盤面上側(アメリカ軍右翼)正面に装甲車を「視認」。すぐさまM-1が射撃を行い、全滅させた。
続けて、左翼側(画面下側)の正面でもソ連軍装甲車が「視認」されたため、同様にM-1により撃破した。
それ以降、ソ連軍は慎重になり、本隊はなかなか姿を現さない・・。ヘリコプターの突出はない・・。

 

増援のソ連軍ユニットが前線にとどまったまま、その後、突出することもなく慎重に場所取りをしている。一部、「視認」をし合う場面もあったが上手く視認できないまま進行した。

アメリカ軍にもUH-60が多数飛来し、前線各所に歩兵とTOWミサイル小隊をばらまき配置した。

UH-60 1個小隊を突出させ、アメリカ軍右翼前方の市街地に歩兵を降下させたが、その直後、丘陵地にいたソ連軍の対空自走砲ZSU-30により攻撃を受け、UH-60は撃破された。

2008 Moscow Victory Day Parade - 9K22 Tunguska.jpg

ゲーム中ではZSU-30として登場するが、現在は「2K22ツングースカ」と呼ばれている模様。ゲーム内の兵器紹介でも、ZSU-23シルカの後継して紹介されているため、同一と思われる。ゲームでの兵装は小口径徹甲弾(砲塔横の30ミリ砲)はあるものの、地対空ミサイル搭載という整理にはなっていない。ゲームがデザインされた当時は正確な兵装は不明だったのだろう。

 

最終盤(第14ターンあたり)。
ソ連軍の先頭は丘陵地の林の中から出てこないまま。アメリカ軍はUH-60と歩兵の到着によりようやく2重の戦線を張ることができたくらい。歩兵を下ろした後のUH-60は何に使おう・・といったところ。

 

結局のところ、ソ連軍が大量のユニットを前線までもってきたものの、それ以上、進出ができないまま、時間切れゲーム終了となった。
アメリカ軍の丘陵地に配置されたユニットはダミーだったので、ソ連軍はダミーを恐れて慎重に位置取りをしてしまったらしい。

ゲーム中の両軍の損害は、ソ連軍がBRDM装甲車 2個ユニット、アメリカ軍がUH-60 1個ユニットとなった。ソ連軍の突破を阻止したことによるボーナスがはいるため、勝利ポイントはアメリカ軍有利というところ。

後で聞いたところによると、前回対戦時に、M-1 1個小隊によって、1個大隊規模のT-80などの主力戦車が全滅したことから過度に慎重になったらしい。

なおソ連軍にはヘリコプターはひとつも配属にならなかった模様だ。
結局のところ、ヘリコプターを想定してプレイしたものの、両軍とも攻撃を行うヘリは装備されなかったということになる。

 

感想戦

敵情不明、敵戦力不明という状態で開始されるゲームはやはり良かった。今回は両軍とも戦力として、”スカ”をひいてしまったようでなんとも冴えない展開で終始してしまった。

答え合わせにはなるが、後でソ連軍の戦闘序列を見ると、序盤で軽装の装甲車が登場し、砲兵の観測班が進出。その後、本隊として歩兵を搭乗させたBMPが多数(まさに多数!)登場するという内容であった。戦車についてはBMPの登場と同時、または少し早く先駆けとして、T-72T-64が4.5個小隊登場していたようだ。
確かに主力戦車がこの規模の場合、M-1複数小隊を相手にするのは決断がいるだろう。おそらくT-72T-64全てを損耗して、M-1 1個小隊と刺し違えるといったくらいの覚悟が必要な戦力比のイメージだ。

 

攻撃ヘリコプターの登場は、攻撃側・防御側とも打ち手のバリエーションが増えるという意味で有効であったように思う。そのゲーム中での描き方は若干違和感はないではなかったが、地上戦主体ということで良いかとも思う。

今回やや不完全燃焼気味(特にヘリ関係が登場しなかった)だったので、次回はゲーム内での最大規模の戦力が、両軍とも登場するシナリオ2「遭遇戦」をすることとした。

(終わり)

 

*1:ASSAULTシリーズではプレイ途中での塹壕掘りなどはできない。歩兵は掩蔽できるが車両はできない。ただしシリーズ3作目で工兵部隊ユニットが登場すると車両の掩蔽もできるようになるとか・・。なおシリーズ第3作は日本語化されなかった

「BOOTS&SADDLES」(GDW)を対戦する(1/2)ー まずは練習シナリオをやってみたー

T-72T-64といった旧世代兵器がニュースの中に登場したり、榴弾砲がゲームチェンジャーになり得るいった話が普通にニュースに流れる今日このごろですが、かつて起こり得たかもしれない第三次世界大戦におけるアメリカ対ソ連の地上戦を戦術級で扱った「ASSAULT」シリーズの、第二弾、「BOOTS&SADDLES」を対戦した。T-80と並んでT-72T-64も登場するので、ウクライナ戦も十分再現可能じゃないか?*1

 

 

第1作では戦車・装甲車・歩兵・火器といった地上兵器だけが扱われていたが、本作では各種ヘリコプターとそれらに対抗するための地上の対空兵器が追加されている。本作単体で遊ぶこともできるが、可能であれば第1作目と連結してプレイするとシナリオのバリエーションも増えて良いと思う。

 

練習シナリオCをやってみた

ゲームシステムについて段階的に習得してもらおうということで、練習シナリオが3本付属している。

本作から追加されたヘリコプターの使い勝手、例えば、一連のゲームの手順の中での使い方や戦闘結果の感触などを得るために段階的に適用ルールを拡張していく「練習シナリオ」をプレイしてみた。練習シナリオC、ヘリコプターが登場するものだ。

 

希望によりMさんがソ連軍、当方はアメリカ軍を担当した。

  攻撃ヘリ、輸送ヘリ部隊を擁したソ連軍の戦車・歩兵・砲兵の諸兵科連合部隊だ。ちょうどウクライナでも有名になった大隊戦術群に近いかもしれない(今の大隊戦術群の起源はアフガニスタン侵攻時のソ連と言われているので、時代的には近い)。

迎え撃つのは、アメリカ軍の機甲騎兵大隊という編成のグループ。M1エイブラムス 2個小隊(1個小隊は車両4両)、M3騎兵戦車2個小隊、搭乗の歩兵2個小隊付き、M106迫撃砲搭載装甲車(M113の改造タイプ)。こちらもいわゆる機甲歩兵砲兵の諸陛下連合編成、さらにヘリコプター AH-1 2個小隊、OH-58 3個小隊、が随伴するというもの。
数としてはソ連軍の半分以下のようだが、その分、兵器性能が良いということだろう。

 

練習シナリオの特別ルールとしてすべてのユニットは「視認」された状態ではじまるとされる。「ASSAULT」シリーズのシナリオはいずれも、相手方の戦力がわからない。盤上に登場した際も隠蔽状態でユニットが裏返された状態で登場すること。攻撃を行うためには、相手を「視認」しなければならないという基本原則がある。
このルールにより、通常の多くの戦術級ゲームに比べて、偵察ユニットの重要度が高くなるというところなのだが、練習シナリオにおいてはこれをオミットするということだ。

勝利条件は相手を全滅させること。なかなかに過激なシナリオだ。

 

装備の選択

アメリカ軍のヘリコプターについては、機体下部や左右にとりつけたパイロンに搭載する兵器を決めておく必要がある。
ここでは、対戦車ミサイルを搭載するべきなのか、空対空ミサイルを搭載するべきなのかというところで迷ってしまった。
何分にもこのシナリオのアメリカ軍には有力な対空兵装がないのだ。歩兵ユニットの一部(中隊に1個小隊の割合)が保有しているスティンガー携帯対空ミサイルくらいだ。

登場することが必至なソ連軍の攻撃ヘリMi-24を押し留めるには何をすればよいのか?

 

よくあることだが、中途半端な決断をすることになる。

AH-1のうち1個小隊、OH-58 2個小隊は対空ミサイルを搭載させ、残り(AH-1 1個小隊、OH-58 1個小隊)には、対戦車ミサイルやロケット砲などの対地攻撃用の武装をさせた。
やっかいなのはこの空対空ミサイル、パイロンひとつを専有し、しかも再装填はできないので、これを装備すると使用するとそれでそのパイロンはそれ以上役にたたなくなる。パイロンを複数保有しているAH-1はともかく、パイロンを1個しか装備していないOH-58にとってはミサイル1発撃った後はやることがなくなってしまう。*2ミサイル射出後の、パブリク突撃艇状態になってしまうのだ。

 

練習シナリオであるためマップは1枚のみ。
マップ奥側から続く2本の一級道路(赤い線)を通り、ソ連軍の梯団が姿を現す。
アメリカ軍(緑色)はマップ手前にある丘陵地帯にM1 2個小隊を展開、支援するようにスティンガー装備の歩兵を配置。M3はTOW対戦車ミサイルしか頼りにならず、弾数制約があることを考えると、気休め程度。

アスタリスク(*)印のマーカーが載っているのは、M-1 1個小隊。稜線上から2キロ先の道路を疾走してくるソ連軍のBMPを射撃、瞬く間に1個半小隊(6両)を屠るも、距離が近かったため、BMPから対戦車ミサイル(サガ-)を撃ち込まれ*3、4両中1両を失った。

 

  ソ連側の主力へりMi24ハインドが中央の稜線あたりから中央にかけて前進してくるので、右翼から回り込ませるように空対空ミサイルを搭載した、OH58 2個小隊とAH1 1個小隊を前進する。

ソ連軍のヘリの前進速度が遅いと思ったら、ソ連製ヘリは「戦闘隊形」では極端に移動力が落ちるようなスペックだった。*4
アメリカ群のOH58なんか、偵察ヘリという身上から身軽なので、「移動隊形」と「戦闘隊形」では同じように移動できるのに対し、ハインドなどのソ連製ヘリは「戦闘隊形」では移動力が1/4に減少するため、ほとんど地上の車両と同じ様な速度でしか移動できなくなる。

 

ソ連軍の進撃速度が遅いので、こちらからチョッカイをかける。
空対空ミサイルを搭載したOH58とAH1を前進させ、密集するハインドの編隊にミサイル1発を発射した。

赤外線誘導ミサイルは、ハインドの断熱性能が高くない排気口めがけて飛ぶが外れる(命中率60%であった)。これでミサイルを発射したOH58は装備を使い果たしたことになる・・・*5。AH1からも空対空ミサイルを射撃しようと接近したが、一旦見送り。よく見ると、ハインドは対地攻撃用の武装はできても、対空用の武装は装備できないようだ。

そうこうするうちに、BMP1.5個ユニットを除去するものの、M1にも損害がでたところで(上記写真の説明書き参照)シナリオは中止とした。

やっぱり「視認」ルールがあってこその「ASSAULT」シリーズだと再認識したのだ。

(つづく)

 

 

 

 

 

 

 

*1:さすがに155ミリクラスの大型野砲は盤外射撃という形での登場となる。

*2:本来、OH-58は偵察ヘリの役割も担っているため、そのまま偵察任務に就くということは考えられるが、今回のシナリオの場合、全ての敵ユニットは「視認」済状態であるため、わざわざ偵察ヘリを飛ばす必要性はほぼない。

*3:本作では射撃解決は同時になる。通常は射撃の前に「視認」チェックがあるため完全に同時解決にならないことが多いのだが、今回はお互い「視認」状態であったため、アメリカ軍側も損害でてしまった。

*4:ユニットの3番目の数値が移動力だが、移動力数値の右肩にある小さな数値が操縦値となる。ヘリは「移動隊形」の場合は移動力そのままを使って移動するが、「戦闘隊形」では1ヘックス進む毎に操縦値分の移動力を要する。ハインドの操縦値は「4」なので、「戦闘隊形」のハインドは1ヘックスあたり4移動力が必要となり、1つの移動フェイズに5ヘックス分しか移動できなくなる。
もっともヘリはひとつのターンの間に、移動を実施できるのが都合3回あるため通すとかなり移動できる点は変わりない。

*5:書いていて気づいたが1個小隊分あったため、命中判定はもう1回できたはず・・

「MADNESS HOUR マッドネスアワー」(やのまん)を対戦する

 

多くのクトゥルフ神話もののストーリーが展開してきた1920年代のアメリカ東北部が舞台になります。怪しげな館を探索するマルチプレイヤーによる協力型ダンジョンクローラー型の作品です。

 

 

 

 

 

ゲームの概要

プレイヤーの役割

プレイヤーは2人から5人です。プレイヤーのうち1人は館で出会う謎の少女、残りのプレイヤーは探索者の役割になります。
少女を担当するプレイヤーは、少女キャラを扱うのと同時に、ゲーム内ではTRPGのマスターのような役回りを担当します。探索者たちに館の部屋カードを配り、探索者たちがイベントカードとして扱う探索カードの順番を操作します。
探索者として7人のキャラクターが用意されていますが、それぞれ異なる職業にスキル、基本的な能力が設定されています。

少女の正体

少女が人間なのか、邪神なのかはゲーム開始時に少女プレイヤーが密かに引いたカードによって決まります。少女の正体は、探索者に対しては館を脱出するタイミングで挟まれるクライマックスフェイズまで明かされません。
探索中、少女が人間であれば、自分の勝利条件の達成のために、少女は人間側の探索者たちの探索を助け、正気を失い闇落ちした探索者に対しては妨害することになるでしょう。
正体が邪神であれば逆の行動を取ります。

クトゥルフといえば正気度

探索者はゲームスタート時には正気を持った人間ですが、探索の途中で手に入れたアイテムやイベントにより正気を失っていきます。 正気度がマイナスになった時点で闇落ちし、邪神側として行動することを促されます。探索者プレイヤーは、自分が操る探索者が正気なのか、正気を失い邪神側に闇落ちしたのかを周囲に直接明かすことはできません。行動の中で示す必要があります。

衝撃的なクライマックスフェイズ!

館を探索し、参加したプレイヤー人数に応じて設定された部屋の探索やアイテムの取得、古の支配者に従うおぞましい眷属たちの討伐といった達成条件を達成すると、クライマックスフェイズに進みます。
クライマックスフェイズは、館を脱出する際館を脱出するタイミングを表しており、少女を生かすのか殺すのかをプレイヤー間で決定します。 これはかなり衝撃的でおぞましい行為であると言えます。ケースによっては人間の少女を殺すという判断がくだされる場合があります。 満場一致以外、つまり意見対立がある場合は、探索者同士の戦闘で、少女の生死を決めることになります。探索者同士の戦闘で負けた探索者は死亡します。

プレイヤーが目指すもの:勝利条件

探索者側の勝利条件は、正気を保っていようと闇落ちしていようと、最後まで生き残ることが第一条件です。
探索者自身が最終時点で正気を保っている場合、少女が人間であれば生存させ連れて帰り、邪神側であれば少女を殺す必要があります。 探索者が既に正気を失っている、闇落ちした場合はその逆が求められます。 少女が人間であれば殺し、邪神であれば生かすことで勝利を得ます。
少女の勝利条件は、人間であれ邪神であれ、生き残ることです。

基本操作

館はタイル形式で部屋を表します。探索者が移動し部屋に入ると探索が始まり、探索者は探索カードを引きます。探索カードを引いた結果として、武器などを表す通常アイテムや、この世のものではない神秘アイテムを得たり、この世のものではない眷属と遭遇することになります。
神秘アイテムを引く毎に正気度が1減ります。眷属と遭遇した場合は戦闘が発生します。

少女は自ら移動することはありません。探索者が移動するのに同行します。
一度館内に登場した闇の眷属は各ターンの終了時に、少女がいる部屋タイルに近づくように移動します。 少女が部屋タイルに単独でいる際に眷属が部屋に入るとサドンデスで終了となり、全プレイヤーが敗北します。このため、探索者は少女を単独で残さず、連れてまわるなどして、護衛する必要があります。

戦闘自体は各キャラクターの性能値(筋力、知力など)にアイテムによるボーナス効果を足した数が、各眷属に設定された条件をクリアすると討伐されたことになります。眷属との戦闘によって、探索者が死ぬことはありません。探索者が死ぬのは、前述のクライマックスフェイズで少女の生死が満場一致にならずに戦闘になり、その人間同士の戦闘に負けた場合のみです。
クトゥルフ作品の多くでは眷属に人間が敗北し命を失うことがよくあるのですが、眷属ではなく人間に殺されるという本作の顛末は印象的です。

少女の役割

少女は自ら移動することはできず、探索者たちにつれていってもらうだけです。戦闘には参加しません。
その代わりに、「部屋タイル」を探索者に配る役割と、「探索カード」の順番を入れ替える役割が与えられています。部屋には特殊な効果やイベントが発生するものがあります。探索カードには正気度を落とすアイテムや眷属が含まれていますが、登場順を操作することで、正気度を落としにくい探索者が引きやすい順番にする(またはその逆)といった操作を行い、少女が属する人間サイド/闇落ちサイドに有利なように取り計らうのです。

 

対戦してみた

2人から対戦可能ですが、2人ではなく複数いたほうが楽しいでしょう。

眷属たちの中には特定のアイテムでしか倒せない種族もおり、探索者が一人や少人数だと所有できるアイテム数に制約があるため、詰みやすいです。協力型の名前の通り複数プレイヤーで、アイテムを共有し、探索を重ねるというのが良いでしょう。
また最後のクライマックスフェイズでの、誰が正気で誰が闇落ちしたのか、少女の正体はどちらなのかという疑心暗鬼状態を楽しむためには、やはり3人以上の複数人は必要です。

少女の役割はなかなか難しいですね。
部屋タイルを探索者たちに配り、探索者たちがドローする探索カードの出現順を並び替えることができます。TRPGのマスターに近いのですが、TRPGのマスターが基本公平中立の立場であるのに対し、この少女は自分が属する側が有利になるように取り計らっていくことになります。プレイヤー数が多くなるにつれ、特定の探索者だけを反対サイドに仕向けるなどの戦略が必要です。少女プレイヤーの難易度は高いでしょう。もちろん、公平に配って判定するスタイルもありますが、自分の勝利条件への執着心を無視してゲームに臨むスタイルも一考の余地があります。

探索者としてキャラクターが7人用意されていますが、一番人気は犬の「ジョン」でした!

 

 

少し似ている、謎の屋敷を探索するダンジョンクローラー型ゲーム

(終わり)

 

「BOOTS & SADDLES」(GDW/Hobby Japan)を試す

1980年代に起こり得た第三次世界大戦、欧州で激突した可能性があったアメリカ軍・ソビエト軍の戦いを戦術級クラスとして描いた、「ASSAULT」シリーズ。そのシリーズ第2弾にあたる「BOOTS & SADDLES -Air Cavalry in the 80's-」を対戦することになった。

 

 

 

ゲームの紹介

 「ASSAULT」は当時、ホビージャパンが日本語版をライセンス販売していた作品シリーズだ。資料によるとシリーズ作品は全5作。うち日本語版が発売されたのは第2作にあたる本作までだった。

  1. ASSAULT       アメリカ軍・ソビエト連邦軍
  2. BOOTS & SADDLES   ヘリコプターの登場
  3. REINFORCEMENTS   ポイントシステムの導入? 未導入ユニットの追加
  4. BUNDESWEHR    ドイツ軍、工兵ユニットの登場
  5. CHIEFTAIN      イギリス軍・オランダ軍

その後、GDW社自体がなくなってしまったためシリーズは打ち止めになったが、非商業レベルの有志によって1990年版、21世紀版(ASSAULT2000)、朝鮮戦争(第二次朝鮮戦争?)、中東戦争版、第二次世界大戦版などが作成されている模様だ。

http://www.myassaultpage.com/home.html

 

1ヘックス=250メートル、1ユニット=1個小隊(半個小隊規模のものもあり)と往年の、「Panzer Blitzs」「Panzer Leader」(以降、PB/PL)と同スケール、また1ターン=5分になる。

シリーズ1作目は純粋に地上ユニット、戦車・装甲車・兵員輸送車・歩兵・司令部などがユニット化されていた。本作はこれに攻撃ヘリ・汎用ヘリ、偵察ヘリ等の空中機動ユニットが登場する。空中機動ユニットの登場に伴い、地上部隊として対空装備の各種ユニットも追加された。
第二次世界大戦までとは異なり地上戦を描くにあたって、ヘリコプターの存在は抜きにして語れないということだろう。

シリーズ基本ルールは1作目を扱った記事にて紹介しているので参照してほしい。

 


ヘリコプターのルール

 ヘリコプターは基本、空を飛ぶAFVという扱いになる。

シーケンスの変更

プレイのシーケンスが変わる。もともと地上ユニットは両軍とも各ターン毎に2回移動する機会があったのだが、これに空中機動(今回のヘリコプターの他、続編で追加された航空支援ユニット)が移動できるフェイズが1回ずつリアクション移動として追加された。

  • ソ連軍移動

  • アメリカ軍空中機動リアクション

  • 射撃(両軍とも可/同時解決)

  •  ソ連軍第2移動

  • アメリカ軍移動

  • ソ連軍空中機動リアクション

  • 射撃(両軍とも可/同時解決)

  • アメリカ軍第2移動

敵方の地上ユニットの移動に対応したリアクションを行うということのようだ。これによりヘリコプターは、1ターンに都合3回移動することができ、その移動力は前掲の「AH-64アパッチ」が22、「Mi-24」が21。シナリオ1「強行偵察」の舞台となるマップは次の通りでマップ半分の左側がアメリカ軍、右側にソ連軍が配置される。この左右のマップ幅は約60ヘックスになるため、1ターン分、合計3回の移動タイミングでフルに移動すると通過できてしまうことになる。

AH-64の速度は毎時300キロなので1分あたり5キロ。1ターンあれば25キロ(=100ヘックス)は飛ぶことになるので、60ヘックス(=15キロ)など1ターンで優に過ぎてしまうということだろう。

ヘリコプターの追加によりいくつかルールが追加されている。
過去のタクテクスの記事をあさっていると本作ヘリコプタールールの良い記事があったので、抜粋したい(タクテクス 1985年7月 No.22  P.4 進め!空中騎兵)。

移動

移動には「行軍隊形」と「戦闘隊形」がある。
「行軍隊形」では、1ヘックス=1移動力で移動可能(方向転換時は別)。
「戦闘隊形」では、1ヘックス=操縦性能値の数値分を消費。操縦性能値とは、ヘリコプターユニットの移動力(ユニット内の3番目の数字)の右肩に小さく書いてある数値だ。前出のAH-64アパッチの操縦性能値は「2」だが、Mi-24ハインドは「4」。
「行軍隊形」時は、アパッチもハインドもほぼ同じ移動力を持っているのだが、「戦闘隊形」になったとたんにハインドの移動力はアパッチの半分になることになる。概してソビエトの機体は操縦性能値が低い。

「行軍隊形」と「戦闘隊形」ではそれぞれ制約や実施可能な事が異なる。また「戦闘隊形」はさらにいくつかのステータスに分類されている。まとめたものが次の内容だ。

 

行軍隊形

行軍隊形移動

1ヘックス=1移動力

臨機射撃:✗

臨機射撃を受けにくい ※1

戦闘隊形

戦闘隊形移動

1ヘックス=操縦性能値の数値分

臨機射撃:◯

遮蔽物下

臨機射撃:◯

静止状態とみなされる ※2

視認・射撃されにくい

視認目的急上昇

盲目射撃によるレーザー誘導ミサイルのみ射撃可能

射撃目的急上昇

静止状態とみなされる ※2

 

自軍第1移動フェイズに移動したヘリコプター部隊は、その直後の敵軍空中機動リアクション・フェイズにMsl弾を用いた臨機射撃は不可

※1 臨機射撃に必要となる視認後の移動距離が地上部隊の2倍となる

※2 静止状態とみなされたヘリコプターは、直接射撃を実施できる全ての火器の射撃対象となる

 

着陸や離陸、下車と搭載、急上昇(視認目的と戦闘目的)、対空ミサイル、レーダー、レーダー誘導ミサイル、赤外線誘導ミサイル・・といったヘリコプターの機動、また対空戦闘に関するルールが追加された。

 

ユニット

 ユニットとしては、アメリカ軍にヘリコプター、OH-58 、AH-1コブラ、AH-64アパッチ、UH-60 ブラックホーク。陸上ユニットとしてM-60A3*1、M-988 サージェントヨーク*2
ソ連軍には、Mi-2、Mi-8、Mi-24ハインド、Mi-26、T-72、ZSU30、SA-9など。

 

シナリオ

「戦場の霧」を体現した「ASSAULT」のシナリオ

前作「ASSAULT」のシナリオ設定は特異で、それぞれ「威力偵察」「遭遇戦」「反撃」と名付けられたシナリオではまず設定や両軍の勝利条件が定められている。両軍戦力はそれぞれのシナリオ毎に6パターン用意され、チットを引いて決めるが、シナリオの最後までその内容は相手に知らされない。
大軍なのか、寡兵なのか、どのような編成か、尖兵である偵察部隊編成なのか、戦車大隊の主力なのか?実際戦ってみなければ相手の軍容がわからないことになる。

多くのウォーゲームが「戦場の霧」を謳っている割には、敵の戦力や配置、増援などまでゲームスタート時にわかってしまっているものは少なくない。敵情が不明で、偵察や接敵によって情報を得るしかないという状況は、実際プレイしてみるとこれほど興奮するシチュエーションはない。

本作は「ASSAULT」のシナリオの拡張版という構成

本作のシナリオも「ASSAULT」のシナリオを踏襲している。
「ASSAULT」では両軍の編成を選定するチットが6種類であったのに対し、今回これに6種類が追加され合計12種類になっている。つまり自軍の編成が12パターンに敵軍の編成が12パターンとなったということだ。

追加された7~12のチットによる戦力には地上兵力にヘリコプター兵力がくみあわされれた編成になっているようだが、ASSAULT側の1~6のチットで選ばれる戦力は、「ASSAULT」の編成が踏襲されるため基本的に地上ユニットだけの編成だ。つまり組み合わせによっては、いずれかの軍のみが航空戦力(=ヘリコプター)を持っていることになる可能性があることになる。

さすがに1~6のチットによる戦力には、本作から追加されたような対空ユニットがないため、1~6チット分については対空部隊が追加された。

プレイ前からワクワクしてしまうような状況だ。
「ASSAULT」では地上兵力のみに注意を振り向けていればよかったところを、突如、登場する攻撃ヘリや、汎用ヘリによって輸送されるヘリボーンなどもありえる。対空兵力をどのように展開するのか、複雑化・立体化したシチュエーションがどのような展開を見せるのか・・

 

ご参考

ベトナム戦争を扱った戦術級ゲームにもヘリコプターは登場していることがある。例えば、「FRONT TOWARD ENEMY」(MMP)がそうだ。
詳しく分析したかったが、時間がないため省略。

 

(つづく)

 

 

 

 

*1:「ASSAULT」に収録されていた当時の(今もだが)最新戦車M-1が強すぎたのかM-60の最終型が追加された。

*2:WikiではM247とされているので、こちらが正式名称?。当時から高価すぎると言われていて、早々に退役してしまった。ウクライナ戦争で機甲師団直衛の現代対空戦車の元祖というべきドイツ軍のゲパルト戦車の名前が取り沙汰されて改めて何に役にたつの?という話があがったのが記憶に新しい。

「太平洋戦争:血戦!!連合艦隊」(BANZAIマガジン)をインストプレイする

BANZAIマガジン12号の付録ゲーム、太平記システムで太平洋戦争を描いたという「太平洋戦争:血戦!!連合艦隊」を対戦した。

インスト込みの1戦だけのプレイのためゲームへの理解は全く不十分であることをご了承いただきたい。

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マップ

マップは西はインド洋、北はアリューシャン列島、南はオーストラリア、西はハワイを含んだ太平洋・インド洋がいくつかのエリアに分割されている。インストをしてもらったDさんの話では、絶妙のエリア分けとのこと。

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美しいマップデザイン。インド洋・北太平洋・オーストラリア沿海などは遠隔地で補給等の問題があるということからかエリア境界がオレンジ色になっており、行き来できるユニット数に制約がある。

 

ユニット

ユニット数は多くない。
日本と連合軍の海軍の提督がユニット化された提督ユニットと、戦力ユニットがある。戦力ユニットは艦船・空母・航空機それぞれのシルエットが描き分けられているのだが、シルエットによる違いはなく、意味があるのは大きく書かれた数値=戦力値のみである。ただし潜水艦だけは戦闘やエリアの支配において専用ルールが用意されている。

提督ユニットは裏表で別の人物が記載されており、日本軍が20人程度、連合軍が20数人程度登場している。山本五十六南雲忠一、近藤信竹、井上成美などなど、連合軍側はキンメル、ニミッツ、ハルゼー、スプルーアンスなどなど(連合軍側の提督は半分くらいしかわからなかった)。中にはマッカーサーが混じっているなど選定基準はよくわからない。
提督の中でも機動部隊を指揮できる提督は別扱いとなっている。南雲忠一、角田覚治、ハルゼー、スプルーアンスフレッチャーあたりが該当する。

提督ユニットは、階級、戦術値(戦闘解決時のダイス修正)、指揮値(戦闘解決時のダイスの数)、支配値(エリア支配の成否の値)を持っている。

第二次世界大戦もののゲームで将軍・提督がユニット化されているゲームはよくあるのだが、本ゲームの違いは、提督ユニット自体も戦力を持っているとして扱われることだ。このため提督ユニットだけでエリアにずんずん進撃していく、という状態がありえることになる。最初、このあたりの感覚は奇異に感じられた。

また中には将帥・提督の名前の代わりに部隊名がはいったユニットもあって、例えば、日本軍の第11航空艦隊(開戦時、台湾あたりに展開していた基地航空隊)、海上護衛隊。また太平洋戦争ならではの特殊なユニットとしてカミカゼなども登場する(模様)。

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連合軍を担当したので連合軍の提督と戦力ユニット。黒の太いワクがある提督(写真ではフレッチャー)は機動部隊を指揮できる提督

 

手順

各ターンの手順はオーソドックス。アクションを交互に実施する。同一エリアに両軍の戦力が存在すると戦闘が発生する、というもの。

  1. 主導権決定・アクション数決定
  2. アクション実施
  3. 戦闘解決
  4. 支配決定
  5. 増援処理

第1ターンは1941年となっているが、南雲機動艦隊による真珠湾強襲は実施済、近藤提督麾下のマレー攻略や、フィリピン攻略は未実施という時点から開始する。
全8ターンで1945年まで。

 

戦闘

基本は”6出ろ”システム。定められた数のダイスを振り、6が出た数分が相手に与えた損害になる。ただしこの時、両軍を指揮する提督の戦術値を見て、差があればその数はダイス修正となる。
例えば、連合軍の提督の戦術値が2で、日本軍が3の場合、差分の1はダイス修正になり、連合軍は6が出たダイス数が相手に与える損害になる一方で、日本軍は5、6が出たダイスの数を数えることができる。

ただこの時、注意が必要なのはそのエリアの中にいる提督の中で最も階級が高い(ユニットにある星の数)提督が指揮をとることになること。

振ることができるダイスの数は、戦力(そのエリアの戦力ユニットの戦力+提督ユニットの数)と、指揮を採る提督の指揮値のいずれか小さいほうの数値分となる。

提督(太平記でいうところの武将)の裏切りや中立する提督の調略といったことはないが、太平記システムそのものの戦闘解決になっている。

 

勝利条件

基本は占拠したエリアのVPの合計によるが、サドンデス条件がある。

 

ゲームの状況

連合軍を担当した。

緒戦、連合軍は提督の数はそこそこいるものの、戦力がほとんどない。ほぼ提督ユニット(提督ユニット単体でも戦力であるのは書いたとおり)だけという状態。
マレー・シンガポールエリアにフィリプス、ドールマン。フィリピンエリアのマッカーサー。残り数人がハワイに展開する。フィリプスはプリンス・オブ・ウェールズに座乗していたイギリス東洋艦隊の司令官で、ドールマンは蘭印に展開していたABDA艦隊の司令官でよかったかな?

第1ターン、何もできないまま日本軍の侵攻を受ける。
フィリピンで早速マッカーサが戦死(マッカーサーは本来は陸軍の将帥だが登場している)。シンガポールでもフィリプスがインド洋に後退。ダイスの目による影響が大きい。

南西太平洋に一部艦隊を進出させるも、どの程度の戦力を差し向けるべきかよくわからない・・。

北太平洋上で日米機動部隊の海戦が発生し・・、といった状況。
その後、早々に連合軍はサドンデス負けを喫してしまった・・。

連合軍側の提督・将帥のみなさん。偉い人(星の数)ほど指揮できる部隊数が多くなったりするが、能力値が高い訳ではないので(例えば、キンメルなど)、優秀な部下(ハルゼーとか)を使いたい場合は、むやみにスタックさせないほうがよかったりするかもしれない。中にはゲーム途中で昇進する人もいて、昇進すると指揮順位などがよくなったりする(ようだ)。

 

感想戦(暫定)

感想を言えるほどやりこんだ訳ではないのでインストを受け、さわりのプレイした第一印象というところで、書く。
周囲では評価が高い。たしかにプレイ時間は短く、システムはシンプルだ。ただ(かなり)クセはある。ゲームの中でヒストリカルな状況を再現することを目指したというよりは、太平洋戦争に材をとり、将帥のユニットを登場させてはいるものの、あくまでゲームとしてのフレーバーにすぎない。
先日記事にした「CONQUEST & CONSEQUENCE」(GMT)もかなりゲーム的なデザインと抽象化がほどこされた太平洋戦争であったが、それでもなお、本ゲームと比べるとまだ、日本がおかれたジレンマを感じることはできた。

提督・将帥中心に描いたというところにも魅力をかんじなかった。太平記システムを持ってきたという事前情報もあまりよくなかったからかもしれない。変な印象がついてしまった。武将ユニットがたくさん登場するというとどうしても「戦国大名」のような武将ユニット集めを連想してしまう。

言ってみればゲームとして自分の趣向として思い入れができる部分がなかったということだろう。

本ゲームが分類される戦略級ゲームは、戦闘そのものをデザインした作戦級ゲームとは異なり、ゲームデザインにかなりバリエーションがある。最近はユーロゲームっぽいデザイン要素が含まれたゲームも少なくない。どうしてもゲームシステムのデザインや抽象化の内容が合う合わないということがでてくるのは仕方ない。

(終わり)

 

「CONQUEST & CONSEQUENCE」(GMT)を対戦する

第二次世界大戦における太平洋戦域・東アジア戦域を扱ったキャンペーンゲーム「CONQUEST & CONSEQUENCE」(GMT)を対戦しました。
評価が高いトラトラこと「Triumph & Tragedy: European Balance of Power 1936-1945」の太平洋戦域版です。1作目のトラトラと同じくプレイヤーは3人になります。太平洋戦域で3人プレイかっ!? と思ったのですが、次の3勢力になります。

 

Conquest and Consequence final box cover art

 

 

ゲーム概説

ゲームのスタートは日中戦争が発生した1936年。1年1ターンですが、1年の間、春フェイズ・夏フェイズ・秋フェイズと3回移動や戦闘を行うタイミングがあります。

 

Conquest and Consequence Map by Charles Kibler

マップは太平洋全域が収められています。日本とアメリカ大陸が近く見えますが、太平洋の中でも色が濃い海域は所要移動力が通常の海域の倍になっていますので見た目ほど近い訳ではありません。
エリアの中でも人口が多い、資源があるといったエリアを獲得することにより、人口ポイントや資源ポイントが増加し、国力増強に繋がります。

 

積み木ユニットです。積み木は手に持った感触がいいですね(いつも言っている)。日本軍:黄色、アメリカ軍:カーキ色、イギリス軍:青、ソ連軍:赤、国民党軍:緑色、共産党軍:紫色です。
相手方からは戦力面は見えませんので、相手が陸上部隊なのか艦隊なのか航空部隊なのかは戦闘にはいるまでわかりません。

 

ユニットと戦闘ルール

ユニットは歩兵(軍団~軍レベル)、戦車(師団?)、海兵隊・陸戦隊(師団レベル?)、航空部隊、艦隊、機動部隊、潜水艦、パルチザンなどに分かれています。海兵隊・陸戦隊は強くはないのですが、補給が切れても自活できるため、島嶼防衛には最適です。また通常の陸上部隊にはできない、敵前上陸が可能です。*1

敵味方のユニットが同一エリアに存在した場合に戦闘が発生しますが、兵種により戦闘解決の順番と相手との相性による修正が定められており、兵種による特徴を表しています。

戦闘解決自体は攻撃を行うユニットの数分のダイスを一斉に振って、決められた目が何個出たかによって相手に与える損害がわかるというものです。豪快なダイス振りが行われることになります。

 

カードプレイ

各ターンの冒頭にはカードプレイがあり、各勢力毎に定められた手札制限枚数になるまで「外交カード」か「技術カード」をドローします。

外交カード」には中立エリアのエリア名が書いてあり、同じカードを3枚集めるとそのエリアを外交的に支配下においたことになります。中国国内の各エリアや、東南アジアの国々などがこうした外交的な争奪の対象となるでしょう。もちろん他プレイヤーの行動を邪魔するようにカードを処理することも可能です。
ゲーム開始時、蘭印は資源に恵まれているにもかかわらず中立エリアに指定されていますので、開戦に先立って外交的に押さえにかかるという作戦があるようです。当然、敵勢力から邪魔はされるでしょう。

「技術カード」では、自国の生産力向上(工場の増設)をはかることもできますし、また同じ種類の技術カードを集めることにより軍事技術の開発を行うことができます。「レーダー」「ソナー」「対空兵器」「爆撃精度」といった技術を開発することにより戦闘解決時に有利になります。
例えば日本軍は素の状態で艦隊戦を行った場合、命中率が連合軍より有利なのですが、「レーダー」を開発されると逆に連合軍のほうが有利になります。
技術開発のひとつとして「核兵器」も登場します。

 

第1戦ーソ連軍を担当

トラトラ初プレイだったのもあってソ連軍を希望しました。
本ゲームにおけるソ連軍は満州の北側にマップ端に張り付くようにテリトリーを持っています。それ以外に中国共産党を操作しますが、共産党軍は1936年時点では中国北西部の西安に拠点を持つだけの弱小勢力に過ぎません。
共産党軍の他国にはない特徴としてパルチザン八路軍?)を 発生させることができます。パルチザンは日本軍の占領地に発生するため、日本軍は中国国内の占領エリアについていくらかの守備隊を張り付かせておかなければならないことになります。

開始直後の様子。中国大陸は揚子江以南に国民党軍(緑色)の大軍、満州付近から朝鮮に日本軍(黄色) が駐留。共産党軍(紫色)は西安に細々と軍を張る。

 

日本軍は共産党軍の本拠地を襲い、ほとんどを駆逐している。共産党軍は華中にパルチザンを湧かせているが(Pマークがはいった紙マーカー)、占拠するエリアをもたないためジリ貧状態になった。
この後、日本軍は中国奥地からこのゲームにおけるソ連軍の本拠地であるノヴォシビルスクを襲ったが、これはさすがに退けた。代わりにウラジオストックを占拠するという北進策をとった。

 

第2戦ー日本軍を担当

日中戦争開戦

日本軍はゲームバランスとしては良くないのですが、3勢力の中では最も楽しい、と聞き及び、担当することにしました。

スタート直後、日本軍の主力は本土と満州、小規模な軍隊が台湾・いくらかの南洋の信託統治領にいるだけです。国民党軍とは開戦した状態にあります。

ゲームスタートとともに関東軍主力は揚子江を超えました。
上海事変か盧溝橋事変を受けた日中戦争の開始といったところでしょう。優勢な航空隊、また海上に展開した機動部隊や戦艦を擁した艦隊の支援を受け、日本軍は国民党軍を退けます。*2
中国大陸では人口ポイントは獲得できるのですが、資源ポイントの獲得は難しいです。史実と同様、いずれかのタイミングで日本軍は南進策を取らざるをえないのです。ただ大陸の部隊はがっぷりと中国軍と四つに組んでいる状態。なかなか戦力を割くのは難しいのもまた事実です。
もうひとつのポイントはいつ米英と開戦するか、になります。最初の攻撃のみは真珠湾攻撃を受けた奇襲ルールはあるのですが、いざ開戦となると戦線が一挙に広がる訳ですから、それなりの覚悟が必要でしょう。
日本軍はこうして史実と同じようなジレンマを抱えることになります。

日米開戦、即艦隊決戦!

緊張状態のまま1941年秋を迎えますが開戦には至りません。日本軍は支那派遣軍の一部の抽出し、南方派遣のため台湾に集結させています。本当はもっと兵力を集めたかったのですが、叶いませんでした。アメリカ軍の大艦隊が日本近海、硫黄島の内側まで接近しようしていたため、艦隊の整備が急務となったのです。

ゲーム開始当初時点で、日本軍は優秀な見張員を抱えているということで艦隊戦においてアメリカ海軍とくらべて有利な修正を得ることができます。ところがアメリカ軍がレーダー開発に成功するとこの日本軍のアドバンテージは失われることは既述したとおりです。
目の前に現れたアメリカ海軍はレーダー開発済でした。日本軍はカードドローを技術カードに集中しレーダー開発を試みます。技術開発は同じカードを2枚獲得することで開発を宣言できるというものです。日本軍はすでに1枚のレーダー技術カードを保有していたため、もう1枚のカードが必要という状態でした。仮に日本軍がレーダー開発に成功した場合、ふたたび日本艦隊はアメリカ艦隊に比べてアドバンテージを得ることができます。

日本軍によるレーダー技術開発とアメリカからの宣戦布告は同時でした。アメリカ海軍は日本本土に展開する日本の連合艦隊に艦隊戦を挑みます。艦艇(艦隊・機動部隊)の数はほぼ同数、日本は本土から出撃する基地航空隊の分アドバンテージがありました。そこへレーダー開発の成功です。日本軍は有利なダイス修正もあり、ほとんど損害を受けることなくアメリカ太平洋艦隊の侵攻軍を全滅させます。

本ゲームのゲームシステムはユニットの数分、ダイスを振り、一定の数字以上の数字がでると相手ユニットのステップをへらすことができるというシステムです。こうしたシステムの特徴として最初は同数で戦闘を始めた軍隊の場合も一度どちらかに形勢が傾き始めると劣った側は急速に勢いを失うのです。

南方作戦!

開戦とともに台湾・沖縄・本土にいた部隊はフィリピン、蘭印、マレーシア、シンガポールに攻め込みます。小笠原沖の海戦へ艦隊ユニットが供出させられていたため、南房侵攻を行う日本軍の輸送艦隊は丸裸同然の姿で東シナ海を南下します。幸い、アメリカ・イギリス軍側も艦隊を集結していたことから、妨害を受けることなく、日本軍の陸上部隊が上陸していきます。日本軍の数は少ないのですが、米英軍の数はさらに少ないため、空白地帯に等しいエリアの占拠に成功していきます。このあたり、くしくも史実と同じような状態です。
マレーシア、シンガポールにてイギリス軍を退け、小規模なイギリス東洋艦隊も全滅させます。
蘭印には敵軍はなく難なく資源エリアを確保します。フィリピンにはアメリカ軍の反撃部隊が上陸してきたのですが、日本の南遣艦隊によって海域封鎖により補給切れ陥落します。

再び現れるアメリカ太平洋艦隊

その頃になると日本の生産力がアメリカと拮抗するようになりました。ところがアメリカ軍はその前に2セット目の大艦隊を組織し、再び日本近海に押し寄せたのです。日本海軍は前回の艦隊決戦時の損害をようやく回復しようとしたところ。アメリカ軍の回復の早さに舌を巻いたのでした・・。いざ第二次小笠原沖海戦か!

というところで、それまで高みの見物を決め込んでいたソ連が「平和の恩恵*3」によるポイントを積み重ねることによってサドンデス勝利を宣言したのでした。

 

第2戦終盤。
日本軍は中国大陸を離れ東南アジアの主な資源エリアを確保。アメリカ海軍の大艦隊を太平洋上に迎え撃ち、1回目はワンサイドに近い大勝利を収め、新たに艦隊が送り込まれたところ。
この時点で日本軍の生産力はアメリカ軍を上回っていたため、この艦隊決戦の結果次第では大きくゲームが傾くところであった。
が、勝者は日米が戦闘を続けているうちに中国大陸奥地を南北に縦走、さらに「外交」によりベトナムを占拠したソ連だった。

 

感想戦

ゲーム性、プレイアビリティの点で素晴らしいゲームだと思います。1~2度経験したくらいでは味わいつくせない深みと作戦研究の余地があると思います。他にプレイするゲームがなければじっくりと取り組みたいと思わせるそういうゲームです。

ヒストリカル性重視であれば、いろいろ気になる点はあるかもしれません。第一、3勢力による対立構造というのはけっこう歪んでいるように感じます。歪められて遠近感が壊されるようなマップもあります。もっとも、日本にとってやはり重要地域は中国で、南西太平洋なんかに攻め込む必要性はなかったのではないかと気づかせてくれる点は(ありがちですが)、良いですね。なにしろソロモンやニューギニアには資源や人口ポイントを得られるようなエリアはないため、攻め込む理由はないのです。それでも史実の日本軍がそこに勢力圏を広げたということからその理由を探ることで、逆に太平洋戦争の本質に迫ることができるかもしれません。
また機会があれば取り組みたいゲームですが、すぐに、というまではないかな。

 

(おわり)

 

*1:日本の特別陸戦隊が強くないのは当然なのですが、強くないアメリ海兵隊というのは新鮮でした。

*2:このあたりまだ戦闘システムに慣れていないこともあり、効率がよい部隊運用や、戦闘処理ができていない。

*3:戦争状態にはいることなくターンを過ごした勢力は「平和の恩恵」ということでポイントを得ることができます。

「SMOLENSK」(MMP)を対戦する(2/2)

MMP社の作戦級ゲーム「OCS」(OPERATIONAL COMBAT SERIES)の中の一作で、独ソ戦初期の中央軍集団における戦いを扱った表題ゲームを4人対戦しました。

 

 

 

作戦計画

ソ連軍の北部戦線を担当。
エリアは、モスクワ街道を含む北側となりました。

勝敗は勝利ポイントの対象の都市・町の確保数によって決まりますが、シナリオ5では独ソとも確保中の町に加え追加1箇所の争奪によって決まるというシビアなものになることが予想されました。

担当する北部戦線でドイツ占領状態の勝利ポイントの対象の町というと、スモレンスクかドゥホフンチーナしかありません。スモレンスクにはドイツ軍の強力な航空基地と守備隊が配置されていますので、現実的な目標は後者ということになるでしょう。
そのいっぽう担当エリア内でドイツの攻略対象となりえるソ連軍確保下の勝利ポイント対象の町となると少なくありません。モスクワ街道沿いのヤールツェヴォ、サフォノヴァ、街道北側のジャルコフスキー、ベールイも対象です。むしろ町の奪取よりも奪取されないように防御を考慮すべき状態であることがわかります。

シナリオ5の初期配置状態と作戦想定。ソ連軍(黄土色)、NKVD(赤)、ドイツ軍(明灰色)、武装親衛隊(黒)。
史実では、このシナリオ期間中にソ連軍が南部戦線のエリニャの町を奪取したことを考慮すると、モスクワ街道沿いのヤールツェヴォを持久しつつ、エリニャ攻略を支援するために一定のドイツ軍を誘引するため北部戦線での攻勢を実施。目標はドゥホフンチーナというところでしょう。

 

ジャルコフスキーからドゥホフンチーナ付近まで鉄道が敷設されている点はポイントです。OCSのでは補給ルートとして鉄道は道路よりも高く評価されています。補給エリアは司令部を中心に展開することができるため、鉄道沿いに司令部ユニットを前進させることで補給エリアは前進し、前線の押し上げにつながります。

掛け声だけは威勢良かったソ連軍北部戦線の将軍氏ですが、よくよくマップを見てみると、ジャルコフスキーからドゥホフンチーナの途中にはドイツ軍の精鋭装甲師団1個が位置しています。ベールイからドゥホフンチーナへのルートは一見開いているように見えますが、ドゥホフンチーナに厚いドイツ軍スタックが置かれています(マップ写真ではスタックが高すぎるので4つに分けられて置かれている)。さらにドゥホフンチーナ後方には「予備(Reserve)」マーカーが置かれた、これまたドイツ軍の装甲師団1個が控えているのです。予備に指定されたスタックは、ソ連軍が動くとするとすぐさま前線に駆けつけることができるでしょう。

ジャルコフスキーからより西方の町/村であるデミドフやヴェリジへ迂回するという策はドイツ軍の守備も薄いため良策に見えますが(上記、マップの赤点線のルート)、ソ連軍の補給能力からジャルコフスキーから進出すると、ちょうどデミドフやヴェリジのところまで補給線を伸ばすのがせいぜいで、それ以上の延伸ができないのです。このためこの迂回ルートは助攻にはなっても主攻にはなりえません。

なによりもソ連軍の最大の問題は、主力である歩兵師団の多く、また戦車師団/連隊のほとんどのAR値が0や1、良くて2、ごくたまに3がいる状態なのです。このためいかに兵力を集中させたとしても、AR値が4や5であるドイツ軍に攻撃を仕掛けた場合、OCS特有の「奇襲効果」がかなりの高確率で発動し、大きく戦力比を悪化させた形での攻撃、自滅的な攻撃を強いられる懸念が高いのです。

ポイント:奇襲ルール

OCSの陸上戦闘は戦力比による戦闘解決表で解決するのですが、直前に必ず奇襲チェックを行います。
奇襲チェックでは、攻撃側と防御側のAR値が修正値となり2D6により判定を行います。攻撃側奇襲だけではなく、結果によっては防御側奇襲と判定される場合があり、奇襲に成功すると、1D6の結果の数分、戦力比による戦闘解決表のコラムが攻撃側有利、または防御側有利な方向にシフトされます。
攻撃側のソ連軍スタック内のユニットの最高AR値が1、防御側のドイツ軍スタックのAR値が5であった場合、奇襲チェックの修正値は1ー5=△4。
この状態で奇襲チェックを行うと、ソ連軍の奇襲成功率=0%、ドイツ軍の奇襲成功率=83%(2D6で9以下)。奇襲成功の奇跡を信じるよりも、逆襲に遭うリスクを心配するに余りあるような悪い確率です。

防御側の奇襲が成功(=逆襲される)すると、1D6分、戦闘解決表のレートが悪い方にシフトされ、さらにはさきほどのAR値の差額が地形修正などとともに適用されるのです。

ソ連軍が考慮するべきもうひとつの要素は、ソ連軍の主力である歩兵師団の足の遅さでしょう。戦闘力を犠牲にして移動モードに変換することでであれば幾分は解消されるとはいえ、戦闘モードの際の移動力は1~3といった数値です。さきほどベールイからドゥホフンチーナへのルートは開いていると書きましたが、ソ連軍の歩兵師団の移動力では、柔軟な機動は難しいでしょう。

 

1941年8月8日~同年8月18日

先攻はシナリオの指定によりソ連軍。

モスクワ街道沿いのヤールツェヴォはモスクワ街道沿いでスモレンスクの正面にあたる町。ドイツ軍の攻撃が集中することは必定であるため、守備を固めます。ただしOCSの常としてひとつのヘックスのスタック値を高めるように動くのは避けたほうがよいです。砲撃や爆撃といった攻撃では、スタック値によってダイス修正が適用されるため、高スタック状態のヘックスは簡単に損害を受けることになります。今までプレイしたOCSでも高スタック値のヘックスへの砲爆撃に何度泣いたことでしょう。

ポイント:砲爆撃

高スタック値のヘックスは砲爆撃の目標になりやすい。高スタックのソ連軍ヘックスはマップ全体の空を徘徊する強力なルフトヴァッフェの目標になるぞ!

北部戦線ではソ連軍はドイツ軍前線に近いところで展開するものの攻勢はとても行える状態ではありません。

歩兵師団や戦車師団といった正面戦力は数は揃っていても内実が寂しいソ連軍ですが、砲兵旅団の数はドイツ軍の砲兵部隊の数を上回る勢いで存在します。
さらには不思議とソ連軍の補給ポイントは積極的に砲撃を実施できるほどには潤沢なので後々の攻勢作戦のために補給ポイントを残したとしてもまだ砲撃に充当できるだけのポイントが供給されます。これは撃つしかない!

砲兵部隊による砲撃によって相手ユニットに損害を与えることは難しいのですが、「DG(混乱)」状態にさせることは難しいことではありません。特に、攻撃を実施しようとしている相手ユニットに対して「リアクションフェイズ」に砲撃を行い、「DG」状態に陥らせ、攻撃の出鼻をくじくのは常套手段になるでしょう。

ただし「DG」マーカーは相手プレイヤーターンの終了時に除去されてしまうため、砲撃を行うタイミングは考えたほうがよいです。せっかく補給ポイントを使ってまで砲撃を実施したにもかかわらず、一時的に「DG」状態にするだけで、すぐに回復されてしまうようではポイントの使い損になってしまいます。

ポイント:砲兵ユニット

相手の移動や攻撃準備に対応して砲撃を行うことができるようにするために砲兵ユニットを「リザーブ」状態にしておくのは定石。ただし射程内に敵スタックがいるから、とむやみに砲撃をしてもすぐに回復されてしまうことが少なくないので砲撃のタイミングは要注意。
攻撃態勢にはいったスタックに対して砲撃を行うのがベストタイミング。

 

第2ターンあたりの状況。
包囲されるヤールツェヴォのソ連軍と、ドゥホフンチーナ周辺の強力なドイツ装甲師団の状況。
後からの振り返りとして、ドイツ軍が前面戦力を強制的にキエフ攻略中の南方軍集団に転用するために除去される前のこのタイミングまでに、損害を顧みずにモスクワ街道北側の平原を装甲師団を中核とした部隊で強引に突破するべきだったのではないかという意見が出ていました(たとえば点線矢印部分)。南側は地形が複雑で森林などもあるため、突破戦闘を行うのはココではないかということですね。

それを考えると、ソ連軍も点で守るのではなく、スタックは崩して面で守るべしということでしょう。ソ連軍の戦車師団の姿もありますが、残念ながらAR=0の急遽錬成された部隊ですので、防御にはまだ使えても精鋭のドイツ軍への攻撃には使えません。

 

南部戦線の状況
ロスラヴリやクルィチャウといった付近にもソ連軍ユニットが出没しており、ドイツ軍は歩兵師団を連隊単位に分割することで戦線を形成している。
エリニャはドイツ軍の占領下にあったが、見方によっては突出部となっており、エリニャ突出部の南辺はソ連軍の攻撃にさらされる状態にあったといえる。
とはいえ、強力なドイツ軍兵力がロスラヴリに終結していた。

 

1941年8月19日~

このターン、ドイツ軍は前線の部隊の半分強が引き抜かれます。総統命令により、引き抜かれた精鋭装甲軍団キエフ包囲戦に投入されることになったのです。これにともないソ連軍も相当数のユニットが抜かれるのですが、すでに除去されたユニットも除去されるユニットの数にいれることができるので、初期状態からほとんどのユニットが生き残っていたドイツ軍ほどの惨状にはならずにすんでいます。いずれにせよこれまでソ連軍の前進を阻んでいたドイツ軍装甲師団のあちこちがいなくなったのでした。

 

アングルが変わっているが北部戦線。
ジャルコフスキーからドゥホフンチーナ間の鉄路上にいた装甲師団、ドゥホフンチーナの後方で待機していた装甲師団などが転進している。
包囲されていたヤールツェヴォの包囲部隊も薄くなっている。

 

終局

結局、2日間をかけて8ターン(’ゲーム内日数にて28日間)進みました。
北部戦線は当初の想定通り町ヘックス1個の奪取に向け進行し、ドゥホフンチーナの周囲には達することができた。ただこの後、攻撃を続けたとしてもドゥホフンチーナを陥落させるまではもうひと押しが足りない印象です。

OCSは作戦級ゲームとしては若干クセがある印象を受けていますが、それでも今、じっくりと取り組むことができるルールが共通化されたシリーズ作品として魅力的です。今回のゲームを通して、ルールの理解不足を痛感しながらじっくりと取り組みたいと強く思いました。という訳で、プレイは終わったのですが、シリーズ共通ルールを読み返しています。(まぁ、昨年はじめにMMP社のデッドストックセールで買い込んだ未開封OCSがいくつもあるのも事情ですが)

 

今回対戦の最終局面。
師団を連隊単位に展開できるドイツ軍に対し、ソ連軍はそんな器用な部隊運用はできないため、師団単位で展開するしかない。この曲面ではソ連軍はスタックを崩し、ドゥホフンチーナを大きく包囲するように展開しようとしている。が、この状態のままで町の陥落まで行くには戦力が足りないだろう。戦力を引き抜かれてもドイツ軍の守りは堅かった。
南部戦線ではエリニャを攻撃しようとするが、なかなかうまくいかない状態にあった。
AR=5(ARの最高値)をもったドイツ軍の自動車化歩兵連隊数個が暴れまわり、ソ連軍前線を混乱に陥らせていた。AR値の差が3や4もあると、なかなか相手を留めることすらできない。

(終わり)

 

 

第三装甲集団は今回の戦域ではモスクワ街道より北側を進んだ。南側をすすんだグデーリアンとの仲はあまりよろしくなかった模様。