Their Finest Hour -歴史・ミリタリー・ウォーゲーム/歴史ゲーム -

歴史、ミリタリー、ウォーゲーム/歴史ゲーム/ボードゲーム

「RIFLES IN THE PACIFIC」(BONSAI GAMES)をプレイする(2/2)任務1:ジャングルパトロール

第二次世界大戦における太平洋戦線を舞台にした戦術級のソリティアゲーム「RIFLES IN THE PACIFIC」(BONSAI GAMES)をプレイした。
「任務1:ジャングルパトロール」を選ぶ。全10ターン。分隊を率い、ジャングルを偵察する。軍隊として日本海軍陸戦隊を選定した。

 

 

 

このゲームで海軍陸戦隊はエリート部隊扱いのようで、装備ポイントが他の軍より多い(他の軍隊が10ポイントであるのに対し、陸戦隊は12ポイント)、日本陸軍よりも一部の支援火器の装備ポイントが低いため、より多くの装備や重装備が可能となる。また白兵戦に突入する前に必要となる士気チェックにプラス修正がつくといったアドバンテージが用意されている。

軍刀を佩き拳銃を装備した分隊長1名、三八式歩兵銃装備の小銃兵7名、重擲弾筒装備の兵2名、手榴弾5発。以上で制限値いっぱいの12ポイントとなる。なお軍刀と手榴弾は白兵戦の際にプラス修正を得ることができる。

分隊長が直率する小銃兵6名からなる第1班、小銃兵1名(副分隊長)と2名の重擲弾筒兵からなる第2班の2チームに分けた。

次にマップ上の6つのエリアにイベントマーカーを1個ずつ裏返して配置する。
地形についてシナリオ毎に用意された地形決定表を用いダイスを振る。結果として疎林(ジャングル)1エリア、密林1エリアの他は開豁地と草原と比較的LOSが通りやすい地形配置になった。
ダイスにより時間帯は昼間になる(2/3の確率で夜戦扱いになる)。

 

第1ターン

ダイスによりアクションポイント(AP)は1。第1班がマップ上の一番手前のエリア#6(開豁地)に登場。ダイスによるチェックの結果、敵兵の姿なし。

 

第2ターン

APはまたもや1(ここで験を担いでダイスを変える)。
第2班をマップ上に登場させる(エリア#6)。敵兵なし(このシナリオでの敵兵の出現確率は高くない)。

 

第3ターン

APは1、ボーナスAP(BAP)が1。
第1班をエリア#5のジャングルに前進。敵兵なし。イベント等もなし。
さらにもう1ポイントを使いエリア#4の開豁地に前進。BAPは「移動」として使ったため、ボーナスとして偵察ポイント1ポイントを獲得する。偵察ポイントは名前のとおり「発見」アクションに影響を与えることができる他、蓄積しておいて「射撃」アクションなどでダイス修正として使うことができる。この後、登場した隠蔽状態の敵兵や、密林などの防御修正値が大きい地形にいる敵兵に対する射撃時に活用される。

イベントチットにより2エリア(500メートル)先に隠蔽状態の狙撃兵が大木に隠れて登場。ソリティアでなければ狙撃兵に射撃されてはじめて狙撃兵の存在に気づくということになるのだろうが、ソリティアである本ゲームでは登場が先になる。代わりに、登場した時点では「隠蔽」状態にあるため、その狙撃兵を倒すには「発見」アクションにより発見しなければ射撃などの攻撃を行うことができないのだ。

敵兵行動フェイズにて敵兵のアクションはダイスにより決められる。射程内に相手を捉えている場合は、射撃実施という結果から、狙撃兵が射撃。ランダムに目標が決められ、第1班のひとりの小銃兵が「制圧」される。「制圧」は萎縮状態のようで士気回復されないうちはユニットを戦力減退面にしておくことになる。

 

第3ターン終了時点の状況。
エリア#2に出現した狙撃兵がエリア#4にいる第1班に射撃を加え、兵士1名を「制圧」状態にした(エリア#2にある、伏射状態の兵士のシルエットのグレイのユニットが狙撃兵)。
A4大のマップは6つのエリアで分割され、プレイヤーが扱う部隊は手前の#6から登場する。赤いマーカーはランダムに配置されたイベントチット。プレイヤーの部隊が進入するとオープンにされ、シナリオ毎に定められたイベント表で確認する。「ジャングル」「草原」などと書かれたマーカーは地形マーカー。こちらもシナリオによって定められた地形判定表によってプレイ開始時にダイスによって決められる。

 

第4ターン

ダイスの結果は「6」3個。ボーナスAPが3となった。
第1班は狙撃兵がいるエリアに向けて前進(エリア#3)。2ポイント目を使い、狙撃兵に対して射撃。狙撃兵は前ターンに射撃を行っていたことから「隠蔽」状態は解けていたものの、密林+大木の地形修正、もともと防御力が高い狙撃兵に対応するため、分隊長が同伴している時に実施できる統制射撃(グループ射撃)を実施。敵狙撃兵を「制圧」、さらに個別の射撃に偵察ポイントを使うことでプラス修正を受け除去した。
第2班前進(エリア#5)。
第1班は「制圧」状態にあった兵士を回復させる。

敵兵存在チェックにて、新たに前方エリア(エリア#2)に敵小銃兵を発見。続く敵兵行動フェイズで射撃を仕掛けてくるが日本軍に損害なし。                                       

 

第5ターン

AP=1、BAP=1。
第2班がエリア#2の敵兵に擲弾筒を投射。エリア#2の敵小銃兵を「制圧」。
第1班が敵兵がいるエリア#2へ前進。

 

第5ターン終了時。第1班7名は敵兵がいるエリア#2に進入している。ところがエリア#1に新たに敵兵が登場した。

 

第6ターン

AP=3。
第1班は敵兵士へ白兵戦を挑む。1人に対する日本兵6人と人数としては圧倒しているが、その割にはダイス修正が大きくない。いずれにせよ敵兵を排除。
続く敵兵存在チェックにて前方のエリア#1(草原)に、小銃兵1名、SMG装備のリーダークラス1名が登場する。
敵兵行動フェイズにより、この敵兵はエリア#2に移動してきて第1班に白兵戦を挑んだ・・。結果、相手へは3ステップ、日本軍は1ステップを失う

 

第7ターン・第8ターン

白兵戦により敵兵を排除すると、第1班がエリア#1に到着したため、勝利条件を満たしシナリオは終了した。

 

キャンペーンゲームでは、この後、シナリオを順番にこなしていくことになる。全8本はいったシナリオは、河岸防衛、橋梁奪取、強襲上陸、敵基地強襲、敵無線局破壊、友軍兵士救出、敵陣地攻略とすすんでいく。
またキャンペーンゲームでは、シナリオによって得られたポイントを分隊の兵士のためにスキルと交換して兵士たちに付与していくことが可能となっている。                                                                                                                                                                                                                            

 

感想戦

今回シナリオは練習シナリオとしての役割もあるため敵の出現頻度が低く、地形もLOSが通りやすい地形であった。次戦以降でもっとゲームとしての手応えを見極めたいところ。
ソリティアの常として、判定などの作業部分がやや煩雑なのは確か。
ユニットやマーカーを配置する必要があるマップがA4サイズ1枚とコンパクトなのは良い。広いテーブルを用意しなくても十分にプレイできる(実際のプレイにはこれに各種判定表が記載されたプレイエイドや、シナリオ説明資料などA4大資料3枚程度を広げておく必要がある)し、広げっぱなしにしておいても邪魔になるサイズではないのはうれしい。
個人的にはアメリカ軍・オーストラリア軍などを扱うよりは感情移入しやすい日本軍がを操作できるという点も推したい。

(了)

 

 

 

 

「RIFLES IN THE PACIFIC」(BONSAI GAMES)をプレイする(1/2)

第二次世界大戦における太平洋戦線を舞台にした戦術級のソリティアゲーム「RIFLES IN THE PACIFIC」(BONSAI GAMES)をプレイした。
普段、ソリティアゲームは好んでプレイする訳ではないのだが、このゲームでは日本軍の操作ができること、さらに日本軍として海軍陸戦隊を選ぶことができることがわかり、俄然興味が湧いた。

戦術級のソリティアというと古くは「アンブッシュ」シリーズ(VG)、最近でも「COMBAT!」(COMPASS GAMES)などいずれも連合軍側だけの操作が可能となっている。基本、枢軸軍はやられ役、まして日本軍に至ってはジャングルの中から突然現れる剽悍な猿の一種の扱いだろう(偏見あり)。

 

 

操作できる軍は、アメリ海兵隊イギリス連邦軍、日本陸軍日本海軍陸戦隊となっている。国ごとに用意されているシートを見ると1943年とあり、登場する国々から推測するとソロモン、ニューギニアあたりを舞台としているということだろう

ひとつのユニットがひとりの兵士を表し、操作する部隊は分隊規模。10人以下の部隊だ。

最初にポイントが与えられ、ポイントの中で部隊を組成する。ポイントは10ポイント(陸戦隊のみが12ポイント)。

 

装備ポイントは例えば日本軍であれば三八式歩兵銃をもったライフル兵は1名=1ポイント。九九式軽機関銃装備の兵士は3ポイントとなっている。支援火器系としては軽機関銃重機関銃、日本軍には重擲弾筒が登場する。他に迫撃砲、対戦車兵器として対戦車ライフル(九七式自動砲)、火炎放射器爆雷、手榴弾などが登場する。
海軍陸戦隊と陸軍は装備兵器の種類上の差はないが、装備ポイントが異なり、陸戦隊のほうがより重装備の編成が可能だ。

アメリ海兵隊イギリス連邦軍の装備も同等の装備が可能だが特に装備ポイントの関係で短機関銃SMG)の装備ポイントが、ライフルと同等の1装備ポイントで装備できる点は日本軍との大きな違いとなる。
それぞれの兵器には、射程、火力(対人/対車輌)、同時目標数が設定されている。通常のライフルでは、射程1、対人火力1だが、軽機関銃では射程2、対人火力1、同時目標数2といった性能となる。
シナリオによっては戦車も登場する。日本軍の場合は九五式軽戦車、九七式中戦車だ。



マップは特徴的。A4大のマップは背景にジャングルや海岸線を模したイラストがはいっているが、ストライプと呼ばれ6つの帯状にエリアが区切られていて、TRPGの戦術マップのよう。
プレイヤー側は一番手前のエリアに進入してくるところからはじまり、本当の地形、敵の位置、またイベントなどがそれぞれダイスの目により判定される。
ライフルの射程が1とあるのでひとつのエリアの距離は200メートル前後かと思われるが、太平洋戦域のジャングル・島嶼戦であることを考慮するともっと短く100メートル 程度を想定しているのかもしれない。



各ターンの行動フェイズにてプレイヤーは3個の6面ダイスを振り、出た目によりアクション数を決める。
1-2であればアクション無し(ハズレ)、3-5では1アクションポイント(AP)、6はボーナスAP(BAP)となる。

分隊メンバーを複数のグループに分け、アクションはこのグループ単位で実施される。1ターンの間に何回アクションを実施してもよいが、射撃・白兵戦などの攻撃を行う関係のアクションは1回だけとなる。
3個のダイスを振って、アクションを行うことができる目が出るのは2/3の確率となることからすると、グループ数は2個とするのが妥当だろう。白兵戦になった際はグループの単位で実施するので人数が少なくなると不利になる。

 

アクションは移動、カバー、射撃、回復、隠蔽など12種類あり、それぞれほとんど1APを使うことで実施できるのだが、中にはボーナスAP(BAP)を使うことにより特典効果を得ることができるものもある。移動の際に必要となるポイントは通常1なのだが、ジャングルなどの地形によってはより多くのポイントが必要となる場合がある。

 

付属するシナリオは8つ。それぞれ自軍が操る軍と、敵対勢力として登場する軍を選ぶ。キャンペーンとして8つを続けてプレイすると途中での兵士たちのスキル獲得などの成長もルール化されている。

 

(つづく)

 


 

 

「THE PUNIC WARS ポエニ戦争」(BONSAI GAMES)を対戦する(2/2)

「THE PUNIC WARS ポエニ戦争」(BONSAI GAMES)を対戦しました。周囲ではすこぶる評判が良い作品です。コンパクトなゲームながら、大胆なデザインにより見事にポエニ戦争を描き出しています。

 

 

 


 

 

 

ダイスの目によりローマを担当しました。
以下は内容が正確でない部分もあります。

 

第1次戦争/第1ターン

スタート時点ではローマは支配しているエリアが少ないため、第1ターンを開始するには前記事で紹介した「Recource Point」(RP)を消費しなければなりません。RP3ポイントのうち2ポイントで2個軍団を動員し、残る1ポイントを第1ターンを開始します。
またローマは劣勢状態にあるタイミングでは、カード2枚を手札に選ぶことができます。カルタゴは1枚です。カードを多く持つということは、それだけ多くの打ち手を持っているということですので、塩野七生の「ローマ人の物語」の中で描かれる危機に強いローマを表した状態と言えましょう。

先攻はローマ。
イタリア半島のかかと部分にあるタラントゥムに集結したローマ軍は海上輸送でイオニア海に出撃します。イオニア海はいずれの国にも支配されていませんので1回海上で過ごし、次のインパルスで目的地に上陸することになります。
すかさずカルタゴは「艦隊カード」により迎撃を行いますが、ローマもリアクションとして「艦隊」カードを使いカルタゴ海軍の迎撃を無効化します。
続くインパルスでシチリア島の東側にある中立状態にあるシラクサに上陸。シラクサを占領したことにより、イオニア海に面した陸上エリア3カ所中、2カ所をローマが支配したことになり、同海域はローマの支配下になります。

イオニア海を支配したことにより、ローマはそのままカルタゴ支配下北アフリカ(今のリビアあたり)に上陸することも可能になる一方、シチリア島の西側にあるカルタゴ支配下のパノルムスを窺うこともできる状態になります。
シラクサに対して、パノルムスのカルタゴ軍が攻撃をかけますが、シラクサは城塞エリアであるため野戦ではなく攻城戦扱いとなります。野戦の戦闘解決が同時解決であるのに対し、攻城戦では防御側が先攻として攻撃側を迎撃します。カルタゴ軍は規模が大きくないこともあり、撃退されました。
その後、第1ターンは両軍とも軍団の動員をかけることで終了します。

ターンが終了するとそこで両国は支配状態にあるエリア(陸上・海域)のVPを合算し、その差額がVP差額となります。
ローマがイオニア海を獲得し、カルタゴシチリアの「部分支配」状態を失ったため、1ポイント差でローマが勝っている状態になります。
第2ターンを開始するには、負けているカルタゴはRPを使う必要があります。カルタゴは1ポイントのRPを使用し、第2ターンが開始されます。


第1次戦争/第2ターン

ローマはローマに集結していた2個軍団をティレニア海に出撃させます。カルタゴ本国がガラ空きだっためカルタゴは急ぎ本国に軍団を動員します。その間、海上にあったローマ軍は、サルデーニャ島に上陸し占領します。ティレニア海はローマの支配下になります。

カルタゴはカードによりシラクサをローマから独立させます。ローマはシラクサを失うとイオニア海の支配も失うことになります。ローマは軍を集めシラクサに上陸、「攻城兵器」のカードによりシラクサの城塞としての機能を無効化させ、シラクサカルタゴ軍を撃滅します。

ここでターンは終了したのですが、VPで負けているカルタゴが新しいターンを開始するためのRPを保有していなかったため戦争は終了します。

戦後処理によりローマはイオニア海ティレニア海サルデーニャ島(ただしポイントはない)、シラクサを得ます。膨れ上がった両国の軍隊は動員を解かれ最低限の規模にまで数を減らします。

 

第1次戦争終結時の状況
戦争終結時にシチリア島に両軍とも軍団を配置したが、戦闘がはじまるよりも戦争が終結した。終戦後処理でこれらの軍団は解散させられる。

 


第2次戦争

第2次戦争から戦場が広がり、ヒスパニア(スペイン)と西地中海海域が利用できるようになります。
勝利ポイントで負けているカルタゴがRPを支払い第1ターンが開始されます。

 

第2次戦争/第1ターン

両軍とも動員。カルタゴハンニバルのカードを出すと、ヒスパニアに集結した4個軍団を東に進軍させます。アルプス越えです。
軍団毎にダイスを振り、1/3の確率で除去されますが、生き残った場合は親衛軍団(黒のユニット)にレベルアップです。戦闘時のダイスの目修正が+1つきます。

ローマにとっては運がよくカルタゴ軍は2個軍団が除去され、2個軍団のみがアルプスを越えてきます。待ち受けるローマ軍は5個軍団。*1

 

ハンニバル率いるカルタゴ軍はアルプスを越え、北イタリアに侵攻した。
黒いユニットがカルタゴの親衛軍団(戦闘解決時のダイスに+1の修正がつく)。

 

両軍は北イタリアの平原で激突します。ハンニバルカードが場に出ているため、カルタゴの戦術値は+2され4なのですが、軍団ユニットが2個しかないため振ることができるダイスは2個です。戦術値が軍団の数を上回っていること、親衛軍団が参加していることからダイスの目修正は+2です。
数回の激突後、ローマ軍は4個軍団を除去され、カルタゴ軍は1個除去、1個戦闘不能となり、退却を選びます。土俵際のところでカルタゴ軍のイタリア乱入は阻止されたのでした。

ローマはシラクサに駐屯していた軍団をシチリア島西側のパノルムスに差し向けます。戦力差から快勝と思われた戦闘(ローマ3個軍団に対し、カルタゴ1個軍団)は、ハンニバルカードによる効果もあってか、パノルムス守備隊の奮闘により大損害を受け、撤退することになります。
一方でローマはティレニア海制海権を保持していることから、カルタゴ本国への侵攻をちらつかせます。カルタゴは母国守備を増強させざるをえません。そのすきにローマは北アフリカに上陸(ただし戦力は1個軍団にすぎませんのでいくらのものでもありません)。

ここでインパルスの終了チェックによりターンが終了することになりましたが、ローマはシチリアの完全支配を望んでいました。もう1回インパルスがあれば、パノルムスを攻略することが可能ではないか。パノルムスを攻略できれば、シチリアはローマの完全支配になるのです。
ローマは手札1枚を捨て、インパルスの延長を宣言します。

 

ターン終了の結果となった時点の状況。ローマはシチリア完全支配を目指しインパルスの延長を決断したが・・

 

ところが延長されたインパルスで先に動いたのはカルタゴ軍、しかもガリアの地にいったん退却し再編成を行っていたハンニバル親衛軍団を含む軍だったのです。
カルタゴ軍は、2回目のアルプスを難なく越えます(2回目以降、アルプス越えのダイスチェックは不要)。1個親衛軍団を含む3個軍団のカルタゴ軍が北イタリアに再び現れたのです。

迎撃に向かったローマ軍団はあっという間に蹴散らされます。しかも第2次戦争でのここまでの損害が大きく、これ以上、追加で動員することができないことがわかったのです。
カルタゴ軍は史実と同様にイタリア半島に侵入し、南下します。
ローマの本国軍は兵力を集めることができず、カルタゴ軍に対抗することができません。黙ってカルタゴ軍の跳梁を見守ることしかできなくなってしまいました。

ローマ軍は代わりにシラクサに集結していた軍団により、パノルムスを攻撃します。同地は陥落し、シチリアはローマの手に落ちます。
ここで終了チェックによりターンの終了となります。

カルタゴ軍はカルタゴ本国の部分支配、ヒスパニアの完全支配により2VP、ローマ軍はイタリア部分支配、シチリア完全支配、2つの海域の支配により4VPとなり、ローマ優勢。
ここでカルタゴがRPをまかなえないことが判明し、第2ターンは開始できず戦争は終了です。

2回の戦争でローマが勝利したためゲームもここで終了となりました。

 

第2次戦争終了時。ハンニバルの2回目のアルプス越えによりイタリア半島が蹂躙されかかったが、カルタゴ本国に継戦能力がなく戦争は終結した。
シチリアを完全支配状態にしたこと。牽制とはいえ北アフリカに上陸し、カルタゴによるアフリカの完全支配を妨げたことでかろうじてローマがVPで勝利する。
インパルスを追加したことでハンニバルの蹂躙を呼び込んでしまい、一歩間違うと敗北しかねなかった(ちょうど、カルタゴのRPが切れてよかった)。

 

 

感想戦

プレイ時間120分強。ゲームとして小ぶりな分、作戦研究をしやすそうだ。
動員能力、初期の手札枚数が多い分、ローマのほうが動きやすく感じたがどうだろうか。次回はカルタゴをプレイしてみよう。
カードは手札枚数が少なく、自分で選ぶことができる分、選ぶカードが固定化しそう。海域の支配によって表現された「制海権」の扱いが印象的。

コンポーネントが美しく、コンパクトな分、ボードゲーム側からのアプローチもありそうな印象を受けた。

(了)

 

 

 

 

*1:史実でハンニバルは兵力50,000を連れアルプスに挑み、13、000を失ったという。

「THE PUNIC WARS ポエニ戦争」(BONSAI GAMES)を対戦する(1/2)

「THE PUNIC WARS ポエニ戦争」(BONSAI GAMES)を対戦しました。周囲ではすこぶる評判が良い作品です。コンパクトなゲームながら、大胆なデザインにより見事にポエニ戦争を描き出しています。
ルールは平易ですが若干他ではない概念(戦争の継続とか)もあります。どちらかというと一度経験すると理解できるといった内容ですので、まずはやってみましょう。

 



 

背景 ー 戦争は3回発生した

史実でポエニ戦争は3回発生します。第1次と第2次の間が20年、第2次から第3次の間が50年空いています。第1次ポエニ戦争は23年、第2次ポエニ戦争が17年続いていますので、3回の戦争でかなりの年数が経っていることがわかります*1

第1次ポエニ戦争は紀元前264年から紀元前241年。シチリア島を巡る戦いとなります。ポエニ戦争より以前の時代を扱った「SWORD OF ROME」(GMT)ではシチリア島の西半分をカルタゴ、東半分をギリシャ人勢力が治めていました。ここにローマが介入したことになります。23年にも及ぶ戦争は最終的にローマが勝利を収めますが、途中、アフリカに上陸したローマ軍が迎撃したカルタゴ軍に大敗するという一幕もありました。ハンニバルの父、ハミルカルが登場するのはこの第1次ポエニ戦争になります。

第2次ポエニ戦争は紀元前219年から紀元前201年。ハンニバルによるローマ侵攻を指します。第1次ポエニ戦争後、スペインで兵を養ったハミルカルの意思を継いだハンニバルがスペインにあるローマの植民都市を攻撃することで開戦します。ハンニバルはアルプスを越え、北イタリアに乱入、カンネーの戦いでローマ軍を撃滅します。その後、ローマは持久に入り、ハンニバルの軍も補給の問題から軍を進めきれず、膠着状態に陥ってしまいます。
ローマのスキピオ大スキピオ)がスペインを奪い、北アフリカに侵攻。防衛のため本国に召喚されたハンニバルスキピオザマで戦いますが敗北し、カルタゴはローマとの講和に応じざるをえなくなります。
ハンニバルは戦後、カルタゴの行政の長となり改革に着手、支払不能と思われた膨大なローマへの賠償金を支払うことに成功します。ところが自国内の政争により亡命を余儀なくされ、最後は亡命先で自決してしまいます。

第3次ポエニ戦争はすこし時間を置いた、紀元前149年から紀元前146年に発生します。賠償金を払い終えたカルタゴは海外植民地などを失ったものの経済的な繁栄を取り戻していました。カルタゴと周辺国との諍いに介入する形でローマ軍が侵攻し、包囲されたカルタゴは略奪と破壊の末、滅ぼされ、住人の多くは奴隷として売られたと伝わっています。
なお、ローマの手により、徹底的に破壊した上で、植物のひとつも生えないように、その土地に塩がまかれたという話は後世の創作とのことです。*2

 

ゲームの紹介

負けている側が継戦できなくなると負けが確定

史実で3次に渡る戦争が発生したのにあわせ戦争は3回発生します。どちらかが2勝したところでゲームとしては終了します。

ゲームでは、戦間期を扱うターンはなく、戦争が終了すると戦後処理を行い、すぐに次の戦争がはじまります。

個々の戦争は「講和」か「自然終結」のどちらかにより終了します。

戦争期間中、ターン毎に両プレイヤーは勝利ポイントを計算し、その得失点差を累計していきますが、得失点差が7VPを超えたところで「講和」となります。
「自然終結」ではその時点での勝利ポイントで負けている側が戦争を継続できなくなり、勝っている側が戦争の継続を望まなかった場合に終了します。

戦争の継続可否を説明するために、本ゲームでは「Resource Point」(以後、「RP」)という概念が登場します。「RP」は、戦争開始時にその時点で支配している国・地域・海域のポイントを合計したもので、だいたい3〜5ポイントくらいになるかと思います。RPは、戦争開始時にそのまま1ポイント=1戦力(キューブ1個分)として戦力とすることができます。戦争初期時点では両軍とも戦力は脆弱ですので、戦力の増強できるとう点は非常に魅力的です。ただ、これは罠です。
「RP」にはもうひとつの役割が与えられているのですが、こちらが重要です。ターンを開始するにあたって「RP」が必要となるのです。

VPが負けている側は「RP」を支払うことによって新しいターンを開始することができます。勝っている側が「RP」を支払ってもよいのですが、勝っている側は、その時点で相手よりVPが勝っている訳ですから、わざわざ「RP」を支払うことなく、そのまま今回の戦争を終了させることができるのです。
このため、負けている側は否が応でも「RP」を支払って新しいターンを開始させ、そこで逆転を講じるしか勝利がないことになります。VPで負けている側が「RP」を支払うことができなくなった時点で新しいターンは開始できないことになり、そこで敗北となるのです。「RP」という概念は他のゲームにはない概念のため、最初とっつきづらく感じるかもしれません。

 

アクションを行うインパルスの実施回数はランダム

ターンの中では作戦フェイズにおいて両プレイヤーは動員・移動・戦闘などのアクションを行います。

先攻プレイヤー・後攻プレイヤーが1アクションずつ実施するとインパルスの終了チェックを実施します。その時のインパルス数以下の数字が出た場合、そこでインパルスは終了し、実質的にはそのターンが終了することになります。
インパルスを終了させたくない場合は、貴重な手札を捨てることにより継続させることは可能ですが、手札は通常1、2枚しかないため、ここはかなり悩むところでしょう。
いずれにせよ、ひとつのターンの中の中核にあたるインパルスが何回続くのかはダイスの目に依存していることになります。

 

3回の戦争を通して次のような手順ですすみます。

第1次戦争

 - ターン

    開始フェイズ     …カードを手札に追加する

    先攻決定フェイズ   …「RP」を使ってターンを開始するか決める

    作戦フェイズ

      インパルス

        先攻プレイヤーのアクション

        後攻プレイヤーのアクション

        終了チェック …ダイスにより決める

      インパルス

      ・・・終了チェックで終了するまで繰り返す

    終了フェイズ

 - ターンVPで負けている側がRPを払える限り繰り返す

 - ・・・

 - 戦後処理   …次の戦争に向けてユニット配置などを行う

   (戦間期にあたる処理はありません)

第2次戦争

第3次戦争

 

インパルスの中ではアクションを実施できますが、アクションには次のようなものがあります。

  • 軍団を動員
  • 陸上移動
  • 海上輸送
  • カードの使用

実施できる内容は名称から推測できると思いますが「海上輸送」は説明しておきます。
その名称とおり軍団ユニットを海上を通って輸送することになります。
マップ内にはシチリア島サルデーニャ島などの島がありますし、また相手の本国を突く場合も海上輸送は切っても切り離せません。
通過する海域を支配している場合は、対岸のエリアに直接輸送し上陸させることができるのですが、海域を支配していない場合は輸送途中に1回海上でストップし、次のインパルスでようやく目的地側に上陸することになります。
自軍が支配していない海域を輸送する場合は相手側が「艦隊」カード出すことにより迎撃される可能性があります。
海域の支配と「海上輸送」が大きく関係しているといえます。

 

戦闘は「6出ろ」システム

戦闘システムはシンプルな「6出ろ」システムの変形です。

攻撃側は攻撃に参加する軍団ユニットの数分のダイスを降るのですが、上限が「戦術値」と呼ばれる数値になります。通常の状態では両軍とも「戦術値」は2になります。一部のカードにより「戦術値」は変動します。例えばハンニバルカードが場に出ている状態では「戦術値」は+2になります。通常2個のダイスが、4個になる訳ですから、ハンニバルがいかに強力かがわかるでしょう。

「5」のダイスの目の個数分の軍団ユニットが戦闘不能として戦闘から外されます。「6」のダイスの目の個数分の軍団ユニットは除去されます。

ダイスの目の修正がつく場合がありますが詳細は割愛します。

また戦闘には野戦と攻城戦があるのですが、野戦は同時解決、攻城戦は防御側が先攻して攻撃を行う形式です。

 

カードは自分で選ぶ

カードは両軍とも12枚ありますが、手札に何のカードを加えるかは自分で決めることができます。史実起因のイベントや戦闘時や移動時のボーナス、またキャラクターなどがカードとしてゲームに取り込まれています。代表的なものはハンニバルスキピオといった人物、また海上輸送中の敵ユニットを迎撃する「艦隊」、「攻城兵器」、傭兵などなどがあります。

通常、カードは各ターンの最初のフェイズに1枚ずつ任意に選んで手札にすることができます。例外として、ローマはその時点での勝利ポイントの差分が、0ポイント(カルタゴと拮抗している)か負けている場合、2枚追加させることができます。

カルタゴとローマの相違

ローマとカルタゴの性格づけとしていくつかのルールがあります。

ローマは動員として2ユニットずつ動員できますが配置場所はイタリア半島内に限定されます。一方のカルタゴの動員能力は1個ユニットですが、配置場所は自分の支配が及んでいるエリアであればどこにでも配置ができます。
これはローマが市民軍であったのに対し、カルタゴが傭兵主体の軍隊であったことの違いを表しているのでしょう。ローマは動員をかけた上で遠征地に兵を輸送または移動させる必要があります。一方のカルタゴは遠征地の現地で動員ができるという訳です。

カードについてその時点でローマがカルタゴとVPにおいて拮抗または負けている場合、手札を1枚多く手札に加えることができることを説明しましたが、これはローマが危機管理能力が高く、戦略的な選択肢を多く用意できたことを表しているとしています。

 

ハンニバルのアルプス越え

ハンニバルのアルプス越えを扱ったルールが用意されています。カルタゴ軍だけがアルプスを越えて移動ができ、アルプスを越える際に軍団ユニット毎にダイスを振り、1/3の確率でユニットは除去されますが、生き残ったユニットは、強力なエリート部隊にレベル アップします。エリート部隊は戦闘時のダイスに+1できます。

 

コントラストから遠目には陸上と海域が逆に見えてしまいますが、色が濃い部分が陸上です。赤色のキューブはローマの軍団、青はカルタゴ、黒はカルタゴのエリート軍団(アルプスを超えることができた勇士)です。

 

(つづく)

 

 


 

 

 

 

 

 

*1:第3次ポエニ戦争は両国の軍事的な優劣がついた後に起こった、「大坂の陣」的な戦いであったため前の2回の戦争に比べると期間は3年と短い

*2:戦争に負け軍事力を失ったカルタゴを日本に例えるという風潮は一昔前にありましたが、最近はトント聞かないですね。もちろんアメリカがローマです。

「1989 Dawn of Freedom」(GMT)を対戦する(2/2)

「1989 Dawn of Freedom」(GMT)を対戦した。

 

 

 

感想戦

1.「得点カード」を使用するタイミング=「權力闘争」を発生させるタイミングがポイント

各ターンのはじめにドローした8枚のカードの中に「得点カード」がはいっていた場合、そのターンの中で「得点カード」を使用、つまりカードが対象としている国の「権力闘争」を発生させることになる。

「得点カード」の存在は使用するまで相手プレイヤーに知らせる必要はないため、使用するタイミングまでに、「権力闘争」の際に有利になる条件を実現させておくように動くことになるだろう。そのターン内では通常7枚のカードを処理する必要があるため、「得点カード」を使用するタイミングと、それまでにどのような段取りで進めるのか、を考える必要がある。

具体的には対象国で自勢力が支配するエリアを増やすことだ。これにより、「権力闘争」時に最初に配られるカードの枚数が増えるし、うまくいけばそのエリアが代表する社会階層のリーダー層の支持をとりつけることができる(「権力闘争」時に、リーダーカードをワイルドカードのような機能を持つカードとして用いることができるようになる)。

相手に、「得点カード」の存在を気取られることなく、相手が十分な準備ができていないタイミングで「権力闘争」を起こす・・ことで絶対的優位な状況で「権力闘争」に突入することができるだろう。

逆に相手方もまた「得点カード」を使用してくる可能性は高く、相手が先にどこかの国についての「得点カード」を使用した場合、その対処を行っているうちに自分の手札にある「得点カード」を使うタイミングを逸したり、または十分な準備を行えないうちに使わなければならなくなることも少なくない(「得点カード」をそのターンの中で使えなければ、そのプレイヤーは敗北する)。

「得点カード」の存在とそれをどう使っていくかが波乱要素となるということだ。

 

2.イベントが強力

カードを使用するとイベントを起こすか、カードに表記されたポイントでのアクションを行うと説明した。カードによって発生するイベントもその効果は、ポイントを使うことによるアクションに近いものがある。ところが概してカードのポイントを使うことによる影響よりも、カードイベントによる影響値や影響範囲の方が大きいことが多く、ポイントによってこつこつと積み上げた状況が、カードイベントによっていとも簡単にひっくり返されることも少なくないように感じた。

1に書いた「得点カード」も含め、カードのドロー(相手勢力のイベントを多く引いてしまう場合も含め)状況により左右する面が強いように感じた。つまりカードの”引き”が大きくゲームとしての勝敗に影響しがちである印象だ

 

3.「権力闘争」は若干微妙

運動・活動が嵩じて政権交代が発生したかを判定する「権力闘争」だが、全く異なる「権力闘争デッキ」と呼ばれる特別なカード1セットを用いて一種の小ゲームのような装いで判定を行う。この小ゲームは前の記事で紹介したように、トランプのスーツ合わせのようなルールになっている。初期のカード枚数や小ゲーム後に行われる影響判定時のダイス修正などにおいて、本ゲームとのつながりが取り込まれているが、小ゲームそのものは、全く異なるデッキを用い、異なるルールで行われることから若干、本ゲームから遊離した印象が否めなかった。

さらには「権力闘争」の勝敗がそのまま政権交代になるのではなく、「権力闘争」が勝利した際に政権交代が発生したかのダイスを振ることができる権利を得るだけにすぎない。結果として実プレイで4〜5回「権力闘争」に勝利したが、政権交代に至ったのは結果1回だけであった(判定表の確率としては政権交代の成功確率は50%以下)。

つまり小ゲームは結果においても、本ゲームと直接つながっていないように感じたのだ。政権交代の判定が結果的にダイス勝負になるのであれば、小ゲームの存在が弱いように感じた。

 

4.歴史的イベントの数々

2.でイベントが強力な割にランダム要素が強いという主旨の事を書いたが、一方で中で発生するイベントはまさに東欧革命の中で起こっていた事象が再現されており、歴史をたどる意味では非常に興味深かった。ソ連や中国の天安門事件も含め諸国内で発生していた個々の事象・事件が複雑に作用しあい、その後、大きな動きになっていくさまをゲームとして体験できるのは十分に楽しめるだろう。

このゲームの主眼は、ゲームとしての勝敗そのものではなく、こうした歴史的な事象・事件とそれに伴う状況を体験していくことにあるのではないかとも思う。

 

個々のイベントの中で興味深かかったのは、ゴルバチョフに関するイベントで、ゲーム中では、ゴルバチョフが係わるイベントの多くは保守派に利する効果を伴うものが多い。一方で当時の西側からの見方として、ゴルバチョフは西側寄りの考え方を行う開明派であるとの評価だったと思うが、ゲーム内ではゴルバチョフがとった諸施策というのは、あくまでソ連邦を立て直すために行ったことで、東欧諸国の民主派からすると、決して民主派の利に直結している分けではなかったという見方が興味深かった。

 

5.状況を発生させるよりも状況に巻き込まれるゲーム展開

ゲーム内で発生する事象や事件はイベントカードによって起こされるが、結果としてプレイヤーは自らが状況を発生するのではなく、あくまでカードイベントによって引き起こされる状況にいかに対処していくのかという場面が強い。

つまり自ら巻き込んでいく、起こしていくのではなく、発生した事象や状況に巻き込まれていく様子を楽しむ作品と見た。

 

さてここまで色々書いたが4に書いたように歴史的なイベントの数々を体感できていくことは非常に面白い。今後とも機会があれば対戦をしていきたい作品だ。

(了)

 

 

「1989 Dawn of Freedom」(GMT)を対戦する(1/2)

「TWILIGHT STRUGGLE」(GMT)のシステムを用い、1989年に起こった東欧革命を扱った本作を対戦した。
ボックスアートになっている右下の男性はソ連邦ゴルバチョフだが、左の男性はポーランド労働組合「連帯」のワレサ議長だ。もちろんゲーム内にはゴルバチョフは当然として、ワレサ議長も、彼が設立メンバーであった「連帯」も登場する。

 

 

 

ゲームの紹介

舞台となるのは東ドイツポーランドハンガリーチェコスロバキアルーマニアブルガリアの6カ国。「トワイライト・ストラグル」のシステムを用い、カードによって発生させるイベントやポイントによってマップ内に配置されたエリアを支配していく、エリアマジョリティシステムのゲームである。

プレイヤーは民主化をめざす改革派か、現在の政体を維持する保守派を担当する。

舞台が限定されている分、ひとつの国がさらに複数のエリアに細分化されている。「トワイライト・ストラグル」では、ひとつの国がひとつのエリアになっていたのに対し、本作ではひとつの国の中で細分化され、社会階層毎にエリアが用意されている。具体的にはエリート支配層(共産党幹部)、知識人階層、労働者、農民、キリスト教関係者、学生に分かれていて、各階層での支持をとりつけていく形にアレンジされている。*1
どの階層にアプローチしていくのかが、後述する「権力闘争」の解決においても影響していく。

 

各国は複数のエリアに分かれているのだがこれは地理的な場所を表しているものもあれば、階層を表しているものもある。例えば学生の階層には大学名が記載してあるし、工業地帯や農業地帯であれば、労働者や農民、首都は官僚階層といった形だ。

 

全10ターン。4ターン目からは中期、8ターン目からは後期ということでカードが追加されていく。史実にあわせ前期ではハンガリーポーランドが主舞台となり(この2カ国関係のカードが多くはいる)、中期でチェコスロバキア東ドイツブルガリア、後期がルーマニアということになる。したがってゲームの展開もこの順番にプレイヤー間の主要係争地が変わっていくことになる。

ターンの時間軸は不定で、マニュアルによれば1ターンの時間は初期ターンは数ヶ月、終盤は1ターン=数週間に相当するとある。

各ターン、プレイヤーは8枚のカードを受領し、そのターンのうちに7枚を使用しなければならない。

カードにはイベントとOPSと呼ばれるポイント(1~3ポイント)が記載してある。
イベントには自陣営が有利になるものと、相手陣営が有利になるイベントがある。各ターンにおいてプレイヤーは、8枚のカードのうちから1枚ずつ交互に処理をしていき、これを7回繰り返す。カードはランダムに配られるので、手元にきたカードに記載してあるカードには相手側が有利になるカードも混在するのだが、パスしたり捨札にはできないため、どこかのタイミングで相手側が有利になるカードを使う必要がある。

カードを使うことで次の3種類のことができる。

  1. 自陣営側のカードを使い、記載してあるイベントを発生させる
  2. 自陣営側のカードを使い、記載してあるOPS分のポイントを使う
  3. 相手陣営側のカードを使い、記載してあるイベントを発生させ(相手陣営が有利になるイベント)、記載してあるOPS分のポイントを使う

 

青い星印は改革派イベント、赤い星印は保守派イベントを表す

 

どうしても発生させたくない相手側カードについては、毎ターン1回だけだが、「天安門広場工作」に使用することができる。「天安門広場工作」は「トワイライトストラグル」でいうところの宇宙開発に相当する。
天安門広場工作」はその名称から想像できるように、中国における改革派と保守派の状況を進めていくことができるというものだ。双方の派閥のポイントを増やしていくことで中国での状況が変化し、欧州の状況に影響を与えていくことになる。

 

話をもどすと、OPSによるポイントにより次のことができる。

  1. 支援ポイントの配置:指定したエリアの自陣営の支持ポイントを増やす
  2. 支援チェック:指定したエリアの相手側支援ポイントの除去を試みる

結果としてそれぞれのエリアの支配に必要なポイント数分、相手が配置したポイントよりも上回ることができればそのエリアを支配したことになる。
ここまでは「トワイライトストラグル」経験者であればすぐに理解できるだろう。

 

本ゲームにおいては「権力闘争」と呼ばれるルールが追加されている。
カードの中に、「得点カード」と呼ばれる一種の決算カードが各国分混じっている。「得点カード」はカードが配布されるとそのターンのうちに使用する必要がある。
「得点カード」を使用するとそのカードが指定する国において「権力闘争」が発生する。

「権力闘争」では、カードが指定した国において政権交代が成功するかどうかを判定することになり、その判定用に別途用意されたカード(権力闘争デッキ)を用いた小ゲームを行い、その勝敗によって両勢力の増減が決まり、結果として革命の成否が判定される。

「権力闘争デッキ」を使った小ゲームは次のようなものだ。

対象国について、その時点で自陣営が支配しているエリア数に応じたカードを受領する。

カードには「ストライキ」「デモ行進」「歎願」「集会」とそれ以外に指導者カードとワイルドカード的なカードがある。先攻になったプレイヤーが出したカードに対応して、後攻プレイヤーは同じスーツのカードを出すか、指導者カードまたはワイルドカードをだす必要がある。先攻側の「ストライキ」カードに対して同じスーツである「ストライキ」カードを出せたとすると、後攻側はダイスを振り、先攻側が出したカードに記載された数以上の数を出すと今度は攻守が交代する。出せない場合は攻守そのままに先攻プレイヤーが次のカードを出す。
相手側が同じスーツのカードをもっていない、指導者カードやワイルドカードのような回避手段をもっていない状態になると、先攻側の勝利となる。
ストライキ」や「デモ行進」は比較的強いカードが多いため相手側の反撃にも耐えやすい(判定ダイスにおいて大きな目を出す必要がある)。「歎願」や「集会」は攻守交代されやすい、といった特長がある。

この小ゲームの結果、勝利した側はその国における支持状況の変化とあわせ、政権交代が起こったかを判定する・・というものだ。

 

「得点カード」は各国分用意されている。
「得点カード」は各ターン冒頭で配布されるカードの中にはいってくばられる。「得点カード」を受領すると、そのターンのうちに必ず使用する必要がある。
ここで考慮点としては、「得点カード」はそのターンのうちに使用しなければならない訳だが、ターンの中では7枚カードを使用することになるため、どのタイミングで「得点カード」を使い、「権力闘争」を発生させる点がある。

相手が準備ができてない一方で、こちら側の準備ができているタイミングで発動するのが理想的だ。つまり「権力闘争」の発生タイミングを調整していく必要があるということになる。

「権力闘争」で用いる専用カード

 

 

イベントをみてみよう

ワレサ」はポーランド国内の改革派勢力を増大させる効果がある。ただし「ワレサ」カードの前に、「『連帯』の合法化」カードが有効になっている必要がある。

ゴルバチョフが主導した「ペレストロイカ」のカードがでるとそのターン中、保守派のダイス修正が+1となる。あくまでゴルバチョフは保守派として体制を守るために改善をはかったという位置づけだ。

チャウシェスク」は有名なルーマニアの独裁者。もちろん保守派が増大するイベントになる。チャウシェスク関係では、「個人崇拝」、「ティミショアラの虐殺」といった強権的なものから、妻の「エレナ」も独立したカードで登場。

バルトの道」は、バルト三国で行なわれた人間の鎖の運動を指す。

シナトラ・ドクトリン」という改革派イベントのイベントを調べると、ソ連邦ワルシャワ条約機構諸国に国内問題を自ら解決できるようにした政策を、ゴルバチョフフランク・シナトラの「マイウェイ」掛けて言ったことに由来するらしい。

他にも多数のイベントが用意されている。言葉だけ拾っていくと、「国境の開放」、「ゼネスト」、「シュタージ」、「海外の放送」とそれに対する「国営放送」、「ソ連軍の撤退」「通貨インフレ」「膨大な対外債務」「マルタ会談」・・・。まさに東欧の共産主義諸国の崩壊を一望できる。

 

(つづく)

 


 

 

 

 

 

 

*1:ここで教会関係者がひとつの社会階層として登場するのが欧州らしいなと思う。初期配置時点で各国の教会関係者のエリアは民主化側に傾いている。宗教が民主化にあたって重要なステークホルダーのひとつであったことがうかがえる。

2022年下半期(8月~12月)はこんなゲームをした + 2022年個人的ベストゲーム

一時は、年末年始も仕事かと覚悟していた2022年の年の瀬だったが、予定で詰まるはずであったカレンダーが諸事情によりすっきりクリアになった。ただ残念ながら前倒しで冬休みを取れるほどではないため、仕事納めは例年通りになりそう。
忙しかった割にはゲームはプレイしていて、11月から12月は毎週のようにどこかでゲームをしていた。とはいえ、上半期に比べるとプレイしたゲームの数は半分程度になった。
忙しさに比例して増えたのが購入ゲームの数。忙しいのだから心のバランスのために買ってもしょうがないよね、と言い訳しつつ、際限なくなってしまった。入手したはよいものの箱さえ開けていないものも少なくない。正月休みの楽しみということにしておこう。

さて、恒例の「こんなゲームをした」記事だが、上半期分をまとめた時期が遅かったので、下半期分の対象となった作品数は多くはない(プレイした作品数も減っているしね)。

 

 

本記事は2022年アドベントカレンダーに参加しています。

 

 

上半期分の記事はこちら

 

 

 

戦術級

■ THE LAST HUNDRED YARDS

歩兵戦闘が主体の分隊スケールの戦術級。
テーマもスケールもほぼASLと同じなのだがASLよりはルールはシンプルでシナリオも小ぶりなものが多い。結果、プレイアビリティが高いのは良い。
自分の視界内で敵ユニットが移動や射撃、回復といったアクションを行った時にリアクションとしてアクションを行うことができるというリアクションシステムは面白いのだが、プレイ中の思考は追いついていないように思う。どうしてもASLと同じようなターン毎に表裏の攻防を交代で実施するIGoYouGoの発想にとらわれてしまっているのだ。その意味でまだ本作のシステムの神髄には触れていないのだろう。

 

 


作戦級

■ NAGASHINO 1575 SHIZUGATAKE 1583

戦国時代テーマのフランス製作品。共通的な基本システムの元、様々な合戦を描くシリーズの1作目。マップはエリアマップ。ユニットは槍足軽・弓足軽・鉄砲足軽・騎馬武者などと分かれていて作戦戦術級的な雰囲気も漂わせているのだが・・。

外国人視点での戦国時代テーマの作品ということで期待したのだが、結果としていまひとつかなと思ったのは大きく2点。
複数の兵科が同一戦闘に参加した場合、諸兵科連合効果が得られるのだが、トランプで役をそろえるような数合わせになっていて、それぞれの兵種が複合的に参加しているという必然性が感じられない。ゲーム的なテクニックとしてしか扱われていない点。

2点目はシナリオとしての作り。
本作は長篠の戦い賤ヶ岳の戦いの2マップが用意されているが、シナリオの設定(勝利条件など)が緩いため、結局、勝利ポイントの関係から、城/砦を落とせばいいのではないの?という構成にしかなっていないように感じた。

武田軍は眼前に陣をひいた織田・徳川軍の主力を攻撃するのではなく、後方で包囲している長篠城を落とすのに注力したほうが獲得できる勝利ポイントが大きい。そもそも防御を固めた織田・徳川軍の陣地に対して史実同様の騎兵突撃を行う必然性は全くない。武田軍が長篠城攻略を狙うのであれば、織田・徳川軍はむしろ馬柵の後ろにこもった防御を行うのではなく武田軍の攻城の阻止を狙って積極攻勢に出るべきということになる。これって長篠の戦いか?となる。

第2作で「関ヶ原」を取り上げるということらしいので、どう取り扱うのか見てみたい気はする。黒田家の鉄砲隊と福島家の槍隊に井伊家の騎馬武者が同一エリアにいるから、諸兵科連合効果でプラス修正だ!と言われても納得感は薄いんじゃないかなぁ(想像)。

 


                                      

戦略級

■ FLASHPOINT SHOUTH CHINA SEA

南シナ海・東南アジア各国を舞台に現在進行形のシチュエーションをゲーム化したもの。安倍晋三はじめ周辺各国首脳陣のカードもあるなど、まさに旬と言ってもよい。その分、陳腐化も早いかもしれない?
ゲームでは緊張関係は最悪の関係の一歩手前までしかなく、それ以上悪化はしないのだが、現実にはそういうストッパーはあるのか?
プレイ時間が1時間強とコンパクトなのも魅力。

 


■ ALMORAVID

「NEVSKY」のシステムを用いて描かれたレコンキスタ封建制臣従システムと厳格な補給システムはそのまま。厳しさは従来のままのはずだが、酷寒のロシアに比べると南国?のイベリア半島が舞台なので、気分的に楽な印象。本作は再戦も予定。

 

 

■ PUNIC WAR

3回にわたったポエニ戦争をコンパクトにまとめた。
スキピオハンニバルといったキャラ(他にもいるよ)、アルプス越えや戦象といったエッセンスも含め、ゲーム内に取り込まれていることに感心。
制海権の重要性や、逆説的にはカルタゴが滅んだ訳が理解できる。

 

 

■ IMPERIAL STRUGGLE

評判に違わず完成度が高い傑作。
ゲーム的に処理されていても非常に考えられている。馴れてくるとバランスの問題など見えてくるという話も聞くが、それまでにも十分に楽しめるのではないか。ということでこちらも再戦していきたいところ。

 


■ WAR FOR AMERICA

アメリカ独立戦争テーマのキャンペーンゲーム。独立戦争での様々な事象を表すために様々なルールが用意されているのだが、基本となる部分はオーソドックス。どちらかというと独立戦争に詳しく、「こんなところまでルール化したのか!」と驚きながらプレイするような作品かもしれない。独立戦争初心者にはちょっとつらい・・(カタルシスを得ることができるポイントを見出しにくい印象)。

 

 

 

その他ボードゲーム

■ 1989

「トワイライトストラグル」のシステムを用い、1980年代後半の東欧に舞台を限定した作品。カードによって発生させるイベントやポイントによってマップ内に配置されたエリアを支配していく、エリアマジョリティシステム。プレイヤーは民主化をめざす改革派か、現在の政体を維持する保守派を担当する。
舞台が限定されている分、ひとつの国がさらに複数のエリアに細分化されている。細分化されたのは地理的なエリアというよりは社会階層の要素が強く、各国の社会階層(エリート支配層、知識人階層、労働者、農民、キリスト教関係者、学生)に分かれていて、各階層での支持をとりつけていく形にアレンジされている。
「トワイライトストラグル」とのもうひとつの違いは、「権力闘争」のシステム。カードの中にドローしたそのターンの中で必ず発動させなければならないカードはいっており、そのカードが発動するとそこから「権力闘争」として別に用意されたカードを用いて、判定のためのゲームがはじまる。改革派が「権力闘争」に勝利すると政権が覆り民主化政権が樹立する。失敗するとそのまま政体が維持される。
強力なイベントがある点、決算カードの入り具合など運の要素が強い印象はあるが、システムもこなれていてよい作品になっている。

 

 

 

 

■ NEW WORLD

南北アメリカの植民地開拓を扱ったマルチプレイヤーズゲーム。母国との往還途中に次々と沈む船、原住民との戦いや疫病にばたばたと人が死んでいく。もちろん他国との戦闘でも死んでいく、と過酷な新大陸開拓が描かれる。マップが広くない分、プレイヤー同士の争いもシビアで酷いことになる。

 


■ エルドリッチホラー

クトゥルフテーマの協力型マルチプレイヤーズゲーム。1920年代を舞台に世界各国で開かれるゲートとそこからの魔物を退治して回るという協力型ゲーム。緻密なシナリオ構成や各種カードのつくりは、ゲームマスタがいないTRPGのようで面白い。

 

 

■ BATTLEMIST

ファンタジー世界の種族を率い国を大きくしつつ、冒険者によるクエストを行っていくというマルチプレイヤーズゲーム。

 

 

 

まとめ

今年プレイして面白かったものは、新旧入り交じっていますが、次のようなところです。※ 本記事に紹介がなければ、上半期のまとめ記事の中で扱っています。

Ney VS Wellington

UP FRONT

IMPERIAL STRUGGLE

エルドリッチホラー

 

今後やり込みたい作品は上記に加えて次の3作

FROM SALERNO TO ROME

OCSシリーズの作品

ALMORAVID

 

今年1戦もしていないですが来年はASLにも復帰したいところです。
あと前振り記事だけ書いて実プレイに未だ至っていない「JOHN CARTER WARLOAD OF MARS」という作品もある・・。

 

 

 

 

 

「War For America : The American Revolution, 1775-1782」(Compass Games)を対戦する

アメリカ独立戦争がテーマの表題のゲームを対戦した。

南北戦争ものには手を出さないと決めていた。嫌いというわけではなく、積みゲーを多数抱えている中、ジャンルとして手を広げてしまうのはやめておこうということだ。
南北戦争テーマの作品はダメで独立戦争ものがOKかというとそういう訳はなく、独立戦争テーマの作品にも手を出していない。南北戦争というの向こう側にある姿もよくわからない完全な未踏破領域だ。

 

 

 

ゲームの紹介

アメリカ独立戦争は、アメリカ合衆国とイギリスの間で戦われた。後にフランスも参戦する。
1年を、冬・早春・晩春・初夏・晩夏・秋の6つのターンに分け、1775年の初夏から1782年までを扱う。冬季は冬営ルールにより活動に制限を受ける。7年にも及ぶ戦争のため、キャンペーンでは全45ターンとなる。

デザイナーズノートによると、独立戦争テーマのゲームで評価が高い「Washington's War(再販版)」(GMT)の物足りない部分を踏まえてデザインした、とある。物足りないとされた点は、移動、海上戦力、北米外での英仏の争いの影響といった点らしい。

マップにはカナダからアメリ東海岸の最初の13州の他、海上移動や封鎖に用いる海路が記載され、さらにカリブ海マップも用意されている。*1マップはポイントトゥポイント方式。都市・町を陸路・河川や湖による水路・海路が接続した形式になっている。古いマップを背景にデザインされているため雰囲気はよいのだが、州名・都市名などの必要情報がわかりづらい嫌いがある。アメリカの地理をきちんと把握していないとこの州名・都市名についてはプレイ中、散々悩まされた。ルールで記載している地名とマップ上の記載が異なる・・・記載が相違している訳ではなく、記載方法が異なることが度々あったのだ。「XXXXルールは神奈川県に適用される」とルールブックにあるとすると、マップでみると町田市と記載があるのだが、町田市は神奈川県なのか?を判断する必要があるレベル、おそらくアメリカ人であれば地理の常識として判断できるのであろうが、外国人にはすこしわかりづらいぜ、といった内容だ。

13州を中心としたメインマップ。右手が北(赤色の部分はカナダ)。実際の地図を背景にしているため、雰囲気はあるがかなりウルサイ印象になっている。

 

カリブ海マップ。植民地軍には海上戦力がないことを考慮すると、ゲーム内で使うようになるのはフランス参戦後の1778年以降ということになるだろう。

 

ひとつのターンは4つのインパルスからなる。インパルス毎にダイスによりイニシアティブを決める。1回のインパルスの中ではアクションはひとつだけ実施できる。基本は、1スタックについて移動を行うと1アクションとなる。移動の結果、敵ユニットが存在するエリアに侵入すると、戦力比が大きい場合はオーバーラン、それ以外は戦闘になる。
1回のインパルスに1スタックだけか?と思うが、アクション数にカウントしないフリーアクションと呼ばれるアクションがあるので、まるっきりひとつのことしか行うことができないという訳ではない。ただ同じインパルスに複数のスタックが自由に移動するということはできないのは確かだ。分進合撃のようなことは起きにくいことになる。

デザイナーが力を入れたと言う移動ルールは、移動を行うにあたって実施可能かをチェックを行う。リーダーユニットがいないスタックや統率能力が高くないリーダーが率いるスタックの場合は十分に移動できずに、戦力を集中したいときに対応できないといったことが頻繁に発生することになる。

リーダーユニットとして、両軍の著名な将軍がユニット化されており、中には個人別に特別ルールがついているリーダーも少なくない。このあたりのデザイナーが強化した要素なのかもしれない。残念ながら名前を知っているのはワシントンくらいしかなかった。
リーダーユニットには、階級・統率力・戦闘力ランクが表示されている。スタック内に複数のリーダーユニットが存在する場合は階級が最上位のリーダーが指揮をとることになる。上位のリーダーが如何に無能でも、上位である限りはその命に従わなければならないといったところだろう。
統率力は前述の移動時のチェック、また共に移動させることができるユニット数を表す。戦闘力ランクは、AからCまであり、戦闘解決時の修正値として影響する。

リーダーは史実にあわせて登場や退場(イギリス軍人の場合は帰国してしまう等)、また昇格といった変更がある。

 

戦闘は一種のファイアパワー方式。自軍の戦闘力を用いて、攻撃を仕掛けた側、防御側それぞれが相手に与える損害を判定する。相手との戦闘力の差は、戦闘力比率によるダイス修正をもって反映される。相手に与えた損害が大きい側が勝者となり、敗者は退却する。

兵には兵種はないため騎兵や砲兵が登場する訳ではない。代わりに正規兵と民兵が区別され、動員方法や戦闘時の扱いが異なる。
イギリス軍は正規兵と植民地側でイギリス支持の「王党派」と呼ばれた民兵、さらに戦争が進むにつれて欧州からやってきたドイツ傭兵などがいる。植民地側は、民兵民兵が組織化され大陸軍と呼ばれた正規兵がいる。ほかにどちら側を味方するかはダイスによって決まるネイティブアメリカンの主要部族の部隊などもいる。
「王党派」以外のイギリス軍は欧州から船でやってくる。植民地側の「民兵」は”湧いて”くる。イギリスの正規兵部隊が今まで進出していなかった州に進出すると、民兵の発生チェックを行う。それも少数ではなく、イギリス軍部隊を圧倒するくらいの戦力が登場する(州の規模によって異なる)ので、イギリス軍はうかつに移動しまわることができない。どこかを占拠しようと戦闘を挑むにも、民兵の発生を計算にいれておかなければならない。

移動や戦システムはオーソドックスだ。新味があるシステムは採用されていない。難易度も高くはない。ただ史実を再現するために拡張されたルール(海上ルール等)や史実再現のめの細かいルールが多数用意されている印象だ。
海軍ユニット、海上輸送はイギリス軍の独擅場なのだが、後にフランスが参戦すると制海権争いやカリブ海を含んだ勢力争いに発展するようだ。今回、フランス参戦といったところまでは遠く及ばなかったのでカリブ海までゲーム範囲とされたことの良否は判断できない。
海軍関係ではユニークなところとして、湖に展開する湖上海軍といった部隊も登場する。陸上移動の中で、純粋な陸上移動のほか、河川などの水路を使ったルートもあるのだが、移動を通して河川上で移動が終始した場合、移動力が+1になるというルールがある。これにより、大きな河川がある地域では、河川沿いに移動が容易になることだろう。

 

プレイしてみた

ゲームは1775年の春のターンにはじまる。史実ではボストン郊外でイギリス軍がアメリカ側の民兵を襲った、レキシントンの戦いが起こった時期だ。
ゲームでもこの時期、両勢力とも兵力は少なく、分散している。

 

手前の緑色のユニットが植民地軍民兵ロードアイランド州)、その左手側にあるスタックがボストンとイギリス軍(赤色ユニット、リーダーは白色)。隣接するのは植民地軍の補給処。独立戦争の端緒となったレキシントンの戦いが起こった場所ということになる。

 

イギリス軍は未進出の州へはうかつに進撃はできない。民兵発生チェックにより民兵のスタックが登場する可能性があるのだ。またカナダ駐屯軍は国境を越えられない。結果としてボストンに駐屯する正規兵と王党派からなる部隊を使うしかない。本国から増援を得つつ、機会を伺う。
初夏ターンになり優秀なウィリアム・ハウ将軍(Howe、戦闘ランクA)が登場、ハウ将軍に一定の部隊を与え、植民地軍の小スタックを襲いはじめる。
植民地軍はボストン郊外に集結していた部隊を率い、カナダ国境近くにあるタイコンデロガ要塞を襲う。最低限の守備隊しかいなかったイギリス軍の要塞は簡単に陥落してしまう。

 

植民地軍民兵はカナダ国境近くのイギリス軍のタイコンデロガ砦を攻撃、陥落させる。
(水色と緑色のユニットが植民地軍、白色と赤色の兵士ユニットがイギリス軍)

 

植民地軍はその勢いのままカナダとの国境を越え、北上をはじめる。カールトン知事が防衛するモントリオールを避け、港町のケベックを占拠した。後で判明したことだが、植民地軍の民兵はカナダへ移動させることはできなかった。

 

タイコンデロガ砦を落とした植民地軍は北上し、守備が固いモントリオールを超え、ケベックを占拠した(右端の水色スタック)。
左上に見えるオレンジ色ユニットは、ネイティブ・アメリカンの6部族。後にほとんどがイギリス側に立って戦争に参加する。


イギリス軍のハウ将軍の梯団は、ボストン郊外から13州の中で最も小規模なロードアイランド州に進出。その後、小規模の植民地軍が守備するニューヨークを陥落させるなど、個別撃破に努めた。

 

イギリス軍最優秀のハウ将軍(戦闘レベルA)はロードアイランド州を占拠。ところがここからコネチカット州(CT)やニューハンプシャー州(NH)などへ侵入するとすぐさま植民地軍の民兵がワラワラと湧いてくることが判明。兵力が十分でない中、不用意な侵攻は敵の数を増やすだけとわかった。
植民地軍の民兵、普段は農作業をしている人々がいざ事あらば銃を抱えてすぐさまに集結したらしい。これが「ミニットマン」の語源とのこと。


イギリス軍はイベントカードによりネイティブインディアンの調略に成功し、イギリス軍側で参戦させることに成功させた。年後半、植民地軍側にワシントンが登場する。
その後、両軍とも大きな動きはできず1775年は終了する。

1776年独立宣言がなされ、植民地軍は大陸軍が成立する。州ごとにダイスにより大陸軍のユニットが”湧いてくる”。
今回、時間切れによりここで終了。

 

感想戦

今回のプレイでは戦争の1年目をやっとのことで終了させるところまでとなった。
1インパルス=1スタックがアクションを行うことができる、という制約、さらには移動を行う際のダイスによるチェックがあるため、移動ひとつをとってもハードルがあり、思ったように機動してくれない。信頼度が高い(=統率力が高い)リーダーユニットがいるスタックだけが頼りという印象だ。

戦闘も解決方法が若干変わっているものの目新しさや難しさ、また面白さを感じるような内容ではなかった。

デザイナーの焦点は、戦闘そのものではなく戦略級ということもあり両軍がその時々でおかれた状況の再現ということなのだろう。独立戦争の史実に思い入れがないとなかなか面白みを引き出すには至らない印象だった。

 

 

付録:史実をみてみよう

あまりにもこのあたりの史実に疎いことがわかったので、今更ながら史実にあたってみようと思う。(意外とゲーム内でも史実に沿った動きになったような印象)

 

■ 1775年

  • 4月:ボストン郊外のレキシントンにて民兵と英軍との間で銃火が交わされる(レキシントン・コンコードの戦い
  • 5月: タイコンデロガ砦のイギリス軍守備隊を植民地側民兵に急襲し奪取(この時期、同砦は荒廃しており一握りのイギリス軍守備隊がいるだけであった)
  • 6月:ボストン包囲戦民兵が包囲)開始。 バンカーヒルの戦い。包囲線は破られなかった。
  • 7月: ワシントン将軍登場
  • 11月: タイコンデロガ砦を進発したアメリカ軍がモントリオールを陥落させる
  • 12月: アメリカ軍がケベック市を攻撃するも、イギリスのカールトン知事により撃破される

 

■ 1776年

  • 2月: ノースカロライナ州ウィルミントン近くで行われたムーアズクリーク橋の戦いにて、アメリカ軍がイギリス側の王党派の軍に勝利する
  • 3月: イギリス軍のハウ将軍はボストンの放棄を決定しハリファックス基地まで退却。これにともないワシントンは軍の大半をニューヨークに移動
  • 6月: トロワリピエールの戦いによりカナダを侵攻した植民地軍は敗北
  • 7月: アメリカ独立宣言を採択
  • 8月: イギリス軍ハウ将軍がロングアイランドに上陸し、ロングアイランドの戦いによりアメリカ軍を駆逐する
  • 9月: イギリス軍ハウ将軍がニューヨーク市を支配
  • 10月: バルカー島の戦いにより、イギリスのカールトン知事は、アメリカ軍のカナダ侵攻軍を打ち破り、アメリカ軍はタイコンデロガ砦まで退却する
  • 10月: ニューヨーク州ホワイト・プレインズにて同戦いが発生。ハウ将軍麾下のイギリス軍がワシントン将軍麾下のアメリカ軍を破り、アメリカ軍は北に後退。
  • 12月: イギリス軍コーンウォリス将軍ニュージャージーに進軍。同地にて冬営。
  • 12月: ワシントンはトレントンの戦いでドイツ人傭兵で構成されるイギリス軍に対し、悪天候の中、渡河攻撃を行い勝利する。崩壊の瀬戸際にあったアメリカ軍はこの勝利により組織の存続と拡大につなげることができた。

■ 1777年

  • 1月: イギリス軍コーンウォリスはトレントンの奪取を試みるが、ワシントンは裏をかき、プリンストンの戦いにて、イギリス軍後衛部隊に勝利する
  • 7月: カナダを進発したイギリス軍バーゴイン将軍の軍はタイコンデロガ砦を占領
  • 8月: バーゴイン将軍の軍はベニントンの戦いにて植民地軍に敗れる。
  • 8月: モホーク族ブラント率いる軍がアメリカ軍側のスタンウィックス砦を包囲するが、後にカナダに退却。
  • 9月: バーゴインはアメリカ軍の側面をつこうとしたがフリーマン農場の戦いで反撃される。
  • 9月: ハウ将軍の軍はブランディワインの戦いにてワシントンの軍を破り、フィラデルフィア(当時の革命勢力の首都であった)を占領。
  • 10月: べミス高地の戦いに敗北したバーゴイン率いる軍は降伏する。
  • 10月: ワシントンとハウ将軍が、ジャーマンタウンの戦いを行う
  • 12月: ワシントンとハウ将軍が、ホワイトマーシュの戦いを行うが、決定的な勝敗に至らなかった。
  • この年をもってカールトンとハウが辞任。

 

■ 1778年

2月: フランスはアメリカと同盟条約を締結。フランスが参戦した。

フィラデルフィアの放棄

6月:ワシントンは撤退するクリントン軍を負いモンマスの戦いを実施。

6月: スペインがフランスの同盟国として参戦

 

(以下、略)

 

 

 

 

*1:当時イギリスとフランスは北米だけではなく、カリブ海でも角を突き合わせていたらしく(このあたりの事情は「IMPERIAL STRUGGLE」(GMT)でも描かれていた)、兵力を北米に送るのか、カリブ海方面に送るのかという選択であったらしい。この事から、北米戦線を正しく描くためにはカリブ海も必要だ、と判断されたとのことだ。