Googleが「NotebookLM」というAIを使ったオンラインサービスの提供をはじめた。
ChatGPTなどはあらかじめ学習をされた状態で提供されているが、本サービスは参照するソースを利用者が指定する。
日頃、海外製のゲームを多くプレイしているウォーゲーマー、ボードゲーマーも非常に有用なツールだとわかったので、ぜひ紹介したい。
なお現状のところ無料で使えるので安心して試すことができる。
利用者はNotebookを作成し、ソースとなる複数の文書を登録する。AIは登録されたソースを学習するとクロスリファレンスとして情報をまとめたり、ガイダンス等の様々な文書を作成してくれたりする。チャット形式で質問をすると、ピンポイントでの照会にも対応する。
ソースとなるのは、テキストファイル、ドライブ、PDFファイル、さらにネット上のサイトも指定することができる。
生成する文書の例として、「要約」「目次」「学習ガイド」「FAQ」「タイムライン」があげられている。
サンプル1. 「LIBERTY ROAD」(HEXASIM)
近日内にプレイ予定の「LIBERTY ROAD」(HEXASIM)をサンプルにした。
本作はルールの難易度は高くなく、ルール分量はそれほどでもないためマニュアルを読んだだけでも理解がしやすい作品だ。ただ後述するようにいくつかの点で記述が不足していたり、記述が難解だったりする点があるのが気になっていた。
わかりづらいルールをピンポイントで質問してみた
実施方法
アップロードすると「NotebookLM」側が学習する。学習時間は5分程度だったと思う。学習が終わったところで、質問をしてみた。
ひとつは「ルールブック」では明らかに記述が欠けていて、後から公開されたエラッタで補完された事項に関する質問だ。もうひとつはルールブックの中で記述が断片的な事項に関する質問を行った。
前者の問いに対して、「エラッタ」から情報を補完して「ルールブック」本紙の断片的な情報とあわせて回答してくれたようだ。後者については「ルールブック」中に散在する情報をまとめて回答してくれている。
続けて記述が難解で概念がわかりづらい「PLUTOマーカー」について質問した。
内容としてけっこうまとまっている。こうしたサマリーはルールの理解に便利だ。
次に日本語ではなく英語で同じ質問したが、これも回答してくれた。
回答は質問の都度文章を生成しているため、さきほどと書き方は異なった。
ソースを英語だけにして、日本語で質問してみた
さきほどのチャレンジでは英文ドキュメントを事前に日本語化したファイルをソースとして指定したが、このソース・ファイルが英文のままだったらどうなるのか試してみた。
実施方法
質問は日本語で実施した。
回答も日本語だ。
内容も日本語訳のソースを介した場合と遜色はないようだ(若干情報が抜けているようにも見えるため検証要)。
ソースの言語は関係なく回答してくれることがわかった。
日本語訳がない場合でも原語のルールブックのPDFファイルやエラッタ、プレイエイドなどを読み込ませておけば、ひとつひとつ確認する必要がなくなるのだ。これは大きい。
回答の精度については完璧ではないので適宜ソース側を参照するようにとGoogleサイドも言っているので、必要によってはソース側を確認することも必要なのだと考える。
少なくとも、ルールに関する情報がPDFファイル等で投入できるのであれば、言語を気にする必要もないという点がわかっただけでも収穫だ。十分に使えるのではないだろうか。
「NootbookLM」を使って何をする?
事前にルールブック、エラッタ、BGGの情報などを読み込ませておいて、ゲーム会に持ち込む。
ルールの不明点などがあればプレイヤーみんなでルールブックやサイト検索を始めるのはよくある光景だ。このような場合、本サービスを利用することによって、質問一発で有益な情報を得られるのではないだろうか。
今回の「LIBERTY ROAD」は比較的素直なルールブックの記述なのでまだ把握が可能なのだが、作品によってはルールブック内の記述が点在していたり、いざ探そうとするとわからなくなる、索引がないといったものが少なくない。記載内容の矛盾や情報の欠落などもまま起こりがちだ。
もちろん海外製品だけではなく日本製の製品でも同様だ。様々なところに点在するノウハウを結集して一括して情報を取り扱うことを可能とするサービスのように思う。
宿題
BGGのフォーラムでもルールに対する質問や、場合によってはデザイナー本人降臨による会話がなされていることが少なくない。
今回時間がなく十分検証できていないが、リンクでつながっているサイト(BGGのフォーラムのようなもの)を効率よく読み込ませる方法を確認している。少なくとも現時点、親画面からリンクをたどって自動的にクロウルするような機能はないようだ。
サンプル2. 「Advanced Squad Leader」(MMP)
ボリューム内容とも高難度のルールを持った作品ということでASLをサンプルに読み込ませてみた。ASLの全てのルールを読ませるのはファイルの指定だけでも手間がかかるので、今回基本ルールにあたるA章からD章の日本語訳ファイルを読ませてみた。
サンプルとしてあがっている「学習ガイド」を作れ、と指示すると用語集などとともに次の文章を生成した。
練習問題
ASLのルールに関する知識を深めるために、以下の問題に答えてみましょう。
- 「視認」と「LOS」の違いは何ですか? (2-3文)
- 「隠蔽状態」のユニットは、どのような条件で「隠蔽状態」を失いますか? 具体的な例を挙げて説明してください。 (2-3文)
- 「壕」と「トーチカ」の違いは何ですか? また、それぞれの地形が持つ戦術的な利点を説明してください。 (2-3文)
- 「ボグ判定」は、どのような状況で行われますか? また、ボグ判定に失敗するとどうなるかを説明してください。 (2-3文)
- 「CE状態」と「BU状態」の違いは何ですか? また、それぞれの状態における車両と搭乗員の行動について説明してください。 (2-3文)
- 「地域目標タイプ」と「歩兵目標タイプ」の違いは何ですか? 具体的な例を挙げて説明してください。 (2-3文)
- 「指揮能力」は、戦闘においてどのような影響を与えますか? 具体的な例を挙げて説明してください。 (2-3文)
- 「火炎瓶射出器」と「PIAT」の違いは何ですか? また、それぞれの兵器が持つ戦術的な利点を説明してください。 (2-3文)
- 「無線接触」は、砲撃においてどのような役割を果たしますか? (2-3文)
- 「放棄された車両」に進入する際のルールと、進入を試みる歩兵ユニットが注意すべき点を説明してください。 (2-3文)
問題が難しすぎるんですが・・
少なくとも問題として出された各種の定義について、AI側は理解しているのだ。逆に言えば、質問をすればこれらの違いを回答してくれる。これでルールブックをあちこち参照する必要性が格段に下がる。
(終わり)