Their Finest Hour -歴史・ミリタリー・ウォーゲーム/歴史ゲーム -

歴史、ミリタリー、ウォーゲーム/歴史ゲーム/ボードゲーム

NotebookLM(GOOGLE)を試す(仮)再修正

Googleが「NotebookLM」というAIを使ったオンラインサービスの提供をはじめた。
ChatGPTなどはあらかじめ学習をされた状態で提供されているが、本サービスは参照するソースを利用者が指定する。

日頃、海外製のゲームを多くプレイしているウォーゲーマー、ボードゲーマーも非常に有用なツールだとわかったので、ぜひ紹介したい。

なお現状のところ無料で使えるので安心して試すことができる。

 

 

NotebookLM By Google Labs A Note-Taking With AI

 

利用者はNotebookを作成し、ソースとなる複数の文書を登録する。AIは登録されたソースを学習するとクロスリファレンスとして情報をまとめたり、ガイダンス等の様々な文書を作成してくれたりする。チャット形式で質問をすると、ピンポイントでの照会にも対応する。

ソースとなるのは、テキストファイル、ドライブ、PDFファイル、さらにネット上のサイトも指定することができる。
生成する文書の例として、「要約」「目次」「学習ガイド」「FAQ」「タイムライン」があげられている。

 

 

サンプル1. 「LIBERTY ROAD」(HEXASIM)

近日内にプレイ予定の「LIBERTY ROAD」(HEXASIM)をサンプルにした。
本作はルールの難易度は高くなく、ルール分量はそれほどでもないためマニュアルを読んだだけでも理解がしやすい作品だ。ただ後述するようにいくつかの点で記述が不足していたり、記述が難解だったりする点があるのが気になっていた。

 

わかりづらいルールをピンポイントで質問してみた

実施方法

  1. 出版社のサイトから、「ルールブック」「エラッタ」「補足説明ドキュメント」をダウンロードする。いずれも英文、PDFファイル。
  2. PDFファイルをそれぞれ「Google翻訳」を用い、日本語化する。
  3. 日本語化した3ファイルを「NotebookLM」にアップロードする

アップロードすると「NotebookLM」側が学習する。学習時間は5分程度だったと思う。学習が終わったところで、質問をしてみた。

ひとつは「ルールブック」では明らかに記述が欠けていて、後から公開されたエラッタで補完された事項に関する質問だ。もうひとつはルールブックの中で記述が断片的な事項に関する質問を行った。

 

 

前者の問いに対して、「エラッタ」から情報を補完して「ルールブック」本紙の断片的な情報とあわせて回答してくれたようだ。後者については「ルールブック」中に散在する情報をまとめて回答してくれている。

続けて記述が難解で概念がわかりづらい「PLUTOマーカー」について質問した。

 

内容としてけっこうまとまっている。こうしたサマリーはルールの理解に便利だ。

次に日本語ではなく英語で同じ質問したが、これも回答してくれた。
回答は質問の都度文章を生成しているため、さきほどと書き方は異なった。

 

ソースを英語だけにして、日本語で質問してみた

さきほどのチャレンジでは英文ドキュメントを事前に日本語化したファイルをソースとして指定したが、このソース・ファイルが英文のままだったらどうなるのか試してみた。

 

実施方法

  1. 出版社のサイトから、「ルールブック」「エラッタ」「補足説明ドキュメント」をダウンロード(いずれも英文、PDFファイル)する。
  2. PDFファイルをそれぞれ「Google翻訳」にかけ、日本語化する。
  3. 英文の3ファイルをそのまま「NotebookLM」にアップロードする

 

質問は日本語で実施した。

 

回答も日本語だ。
内容も日本語訳のソースを介した場合と遜色はないようだ(若干情報が抜けているようにも見えるため検証要)。

ソースの言語は関係なく回答してくれることがわかった。
日本語訳がない場合でも原語のルールブックのPDFファイルやエラッタ、プレイエイドなどを読み込ませておけば、ひとつひとつ確認する必要がなくなるのだ。これは大きい。
回答の精度については完璧ではないので適宜ソース側を参照するようにとGoogleサイドも言っているので、必要によってはソース側を確認することも必要なのだと考える。

少なくとも、ルールに関する情報がPDFファイル等で投入できるのであれば、言語を気にする必要もないという点がわかっただけでも収穫だ。十分に使えるのではないだろうか。

 

「NootbookLM」を使って何をする?

事前にルールブック、エラッタ、BGGの情報などを読み込ませておいて、ゲーム会に持ち込む。
ルールの不明点などがあればプレイヤーみんなでルールブックやサイト検索を始めるのはよくある光景だ。このような場合、本サービスを利用することによって、質問一発で有益な情報を得られるのではないだろうか。

今回の「LIBERTY ROAD」は比較的素直なルールブックの記述なのでまだ把握が可能なのだが、作品によってはルールブック内の記述が点在していたり、いざ探そうとするとわからなくなる、索引がないといったものが少なくない。記載内容の矛盾や情報の欠落などもまま起こりがちだ。

もちろん海外製品だけではなく日本製の製品でも同様だ。様々なところに点在するノウハウを結集して一括して情報を取り扱うことを可能とするサービスのように思う。

 

宿題

BGGのフォーラムでもルールに対する質問や、場合によってはデザイナー本人降臨による会話がなされていることが少なくない。

今回時間がなく十分検証できていないが、リンクでつながっているサイト(BGGのフォーラムのようなもの)を効率よく読み込ませる方法を確認している。少なくとも現時点、親画面からリンクをたどって自動的にクロウルするような機能はないようだ。

 

 

サンプル2. 「Advanced Squad Leader」(MMP)

ボリューム内容とも高難度のルールを持った作品ということでASLをサンプルに読み込ませてみた。ASLの全てのルールを読ませるのはファイルの指定だけでも手間がかかるので、今回基本ルールにあたるA章からD章の日本語訳ファイルを読ませてみた。

 

サンプルとしてあがっている「学習ガイド」を作れ、と指示すると用語集などとともに次の文章を生成した。

 

練習問題

ASLのルールに関する知識を深めるために、以下の問題に答えてみましょう。

  1. 「視認」と「LOS」の違いは何ですか? (2-3文)
  2. 「隠蔽状態」のユニットは、どのような条件で「隠蔽状態」を失いますか? 具体的な例を挙げて説明してください。 (2-3文)
  3. 「壕」と「トーチカ」の違いは何ですか? また、それぞれの地形が持つ戦術的な利点を説明してください。 (2-3文)
  4. 「ボグ判定」は、どのような状況で行われますか? また、ボグ判定に失敗するとどうなるかを説明してください。 (2-3文)
  5. 「CE状態」と「BU状態」の違いは何ですか? また、それぞれの状態における車両と搭乗員の行動について説明してください。 (2-3文)
  6. 「地域目標タイプ」と「歩兵目標タイプ」の違いは何ですか? 具体的な例を挙げて説明してください。 (2-3文)
  7. 「指揮能力」は、戦闘においてどのような影響を与えますか? 具体的な例を挙げて説明してください。 (2-3文)
  8. 「火炎瓶射出器」と「PIAT」の違いは何ですか? また、それぞれの兵器が持つ戦術的な利点を説明してください。 (2-3文)
  9. 「無線接触」は、砲撃においてどのような役割を果たしますか? (2-3文)
  10. 「放棄された車両」に進入する際のルールと、進入を試みる歩兵ユニットが注意すべき点を説明してください。 (2-3文)

問題が難しすぎるんですが・・
少なくとも問題として出された各種の定義について、AI側は理解しているのだ。逆に言えば、質問をすればこれらの違いを回答してくれる。これでルールブックをあちこち参照する必要性が格段に下がる。

 

(終わり)

 

 

「1868 戊辰戦争」を対戦する【1/3】ゲームの紹介

戊辰戦争を題材とした戦役級ゲーム「1868 戊辰戦争」(第三惑星委員会:同人)を対戦しました。
2024年春のゲームマーケットで初披露され、その後「小さなウォーゲーム屋」でも取り扱われましたが、即座に売り切れるほどの注目を集めた作品です。私はゲームマーケットで入手しました。

幕末は、小説・映像作品などで戦国時代と並ぶ人気のある時代です。ボードゲームやウォーゲーム*1の世界では、新撰組や倒幕運動など大政奉還までを扱った作品はいくつか存在しますが、戊辰戦争を直接的に扱った作品はそれほど多くありません。函館戦争やその他の局地戦を題材にした作品はあっても、戊辰戦争全体をキャンペーンとして捉えた本作のような作品は珍しいのではないでしょうか。
戊辰戦争では、長岡、会津、庄内などの列藩同盟*2諸藩や函館の戦いが有名ですが、アメリカの南北戦争のような大軍同士の会戦が中心の戦争とは異なり、比較的小規模な戦闘が連続し*3わかりづらい。さらに政略や外交レベルの要素が絡んでいたこともあり、単純なゲーム化は容易ではないからではないかと考えられます。

本作では、政略や政治はプレイヤーが能動的にコントロールする要素ではなく、カードイベントやダイス判定による処理としてまとめていますので、プレイヤーのコントロールは軍事作戦に集中することになります。
プレイヤーは新政府軍か、旧幕府・列藩同盟諸藩を担当します。1対1のゲームで、マルチプレイヤーゲームではありません。

ルールブックとは別に、詳細なデザイナーズノートが添付されており、テーマの選択やゲームのスコープ、要素の取捨選択に関するデザイン方針が説明されています。また、ネット上にはディベロッパーズノートも公開されており、デザインや開発過程の変遷を追うことができます。いずれもゲームデザインを知る上で大変興味深く読むことができます。

 

 

 

ゲームの紹介

概要

1ターンは半月を表し、1868年4月の江戸城無血開城から同年11月の会津藩降伏までの全14ターンで構成されています*4。マップ上の「上野」「横浜」「白河」「新潟」の4箇所が要地とされ、これらの占拠状況が部隊の補充や活性化チットの数、さらには勝利条件に関係します。旧幕府・列藩同盟側が勝利するためには、14ターン終了時に会津藩が未降伏である必要があります*5

 

マップ

A3サイズの3枚からなり、城や港などの拠点・宿駅(宿場町)を点で結ぶP2P方式を採用しています。南は駿河・信州・越中から北は津軽海峡まで、東日本全体をカバーしています。主要街道・通常道・山道によって通過に必要な移動力が異なり、進攻路の選択に影響を与えます。

マップのおおよその全景。初期配置の状況。
P2P方式とはいえ、マップ上にかなりの数の地点が設定され、展開するユニット数も相当数があることがわかります。

 

ユニット

 ユニットシートは2枚で、合計350枚のユニットが含まれます。ユニットとして、歩兵・砲兵・甲鉄艦が登場します。司令部や指揮官の個人名を持つユニットは登場しません。歩兵は両勢力の主力で、1ユニットは大隊規模、数百人から多くとも5百人程度の規模の部隊を表します。砲兵は一部の藩で複数砲を集中運用していた部隊を表しています。甲鉄艦は1隻単位で登場します。

歩兵ユニットには、戦力‐火力‐練度の3つのパラメーターが記されています。
戦力値は1戦力あたり100人規模(当時の1個中隊規模)を表します*6
ユニークなのは火力の欄ですが、装備している銃砲のレベルを表しています。
旧式な火縄銃クラスだと「1」、前装銃だと「2」、最新式の後装銃を装備した部隊は「3」となっています。兵装のレベルを扱っているため、この欄は数値ではなく、A~Cといった文字での表記のほうが区別がついてよかったかもしれません。
3番目の数値は練度や士気などを表し、攻撃を受けた際の後退のチェックや損害判定に用いられます。

これらの3つのパラメータにより、洋式の軍事教練を受け最新式の銃を装備した精鋭部隊から、火縄銃を抱え旧式な軍制のまま参加した藩の部隊までを効果的に表現しています。

 

基本システム

チットプルシステムを採用しており、ドローしたチットに記されたグループを活性化させ、移動と戦闘をグループ毎に交互に実施します。新政府軍と旧幕府・列藩同盟軍では活性化単位が異なり、両勢力の性質の相違を反映しています。

毎ターン引くチット数はその時点で占拠している要地の数に比例します。後半、白河を失い、新潟を失いとしていく旧幕府軍・列藩同盟軍は活動量の点でも苦しい立場に立たされていくことになります。

チットプルシステムを採用したゲームでよく見られる「プレイ後半における戦闘可能戦力の先細り」*7現象は本作では考慮されてのことか、あまり起こらない工夫がされています。

 

戦闘ルール

 メインマップでの移動の結果、敵勢力が存在する地点に進入した場合、地点毎に戦闘解決を行います。戦闘は別に用意された簡易的な戦術マップである「戦闘ボード」で処理されます。

一度の戦闘は相手が全て後退するか、最大5ラウンド射撃が交わされます。
ラウンドは砲兵部隊による射撃の後、歩兵部隊の射撃になるのですが、歩兵の射撃は、「火力」値が大きなユニットから解決されます(「火力」値が同値の場合は、防御側が先攻)。

「火力」値が小さいユニットは一方的に射撃を受け、射撃を行うこともなく後退や除去させられる可能性があります。「火力」値に優れる部隊であれば相手に反撃の機会を与えないまま、戦闘を終了させることも可能です。

射撃戦の解決は、攻撃を行うユニット毎に目標ユニットを決め、攻撃側だけではなく、防御側もダイスを振ります。このため戦闘解決は若干時間を要することになりますが、ゲームとしての醍醐味でもあります。

防御側の判定は「練度」値がベースになり、「練度」値が高い部隊ほど「後退」しづらくなり、除去も難しくなる点は、本作の戦闘システムの特徴です。

なお戦闘解決にあたって射撃戦の後に白兵戦のラウンドなどはありません。抜刀隊や新撰組の剣士が活躍するようなターンは用意されていません。このあたりの終始一貫したデザイナーのスタンスは小気味よいものがあります。

 

勢力の参戦条件と降伏条件

列藩同盟に参加する各藩は最初から参戦状態にある訳ではなく、個別に設定された条件の充足+イベントカードの使用により参戦していくことになります。
また降伏条件も各藩の状況により個別に条件が定められています。概して参戦する際はドミノ倒しのように次々と参戦することがある一方、降伏する場合も同様にドミノ倒しになる可能性があるため注意が必要です。

 

イベントカードは史実で起こった各種の事件・イベントの発生時期をランダムにするために用いられています。If要素は他のゲームのカードイベントに比べると若干薄いように感じます。

 

ユニット一覧/戦闘序列を見るのも楽しい

こうした作品の楽しみのひとつとしてユニット一覧、戦闘序列を見る楽しみがあるのですが、本作も例外ではありません。特別ルールが用意されているユニットも一部ありますが、特別ルールはなくても、その名称だけでも様々な物語性を読み取ることができるユニットが少なくなく、幕末ファンにはこたえられないものになっています。

 

旧幕府軍/新撰組

 サブカルの影響でいまや世界的な知名度を誇る(?)新撰組ももちろん登場します。ただこの時期の新撰組は退潮時期にあたり、ゲーム開始時の直前の1868年3月、甲州勝沼の戦いで新政府軍に大敗し壊滅。下総にて再編中のところ、翌4月に局長近藤勇が流山で捕縛されています(直後に刑死)。ユニットの能力としては雑魚キャラ扱いですが、その扱いについてデザイナー/ディベロッパー氏からは次のように言及されています。

土方歳三斎藤一も刀一本ではどうしようもない時期だったということですね。いくらでもケレン味をもたせることができそうな題材に対する距離の置き方は好ましいです。

 

旧幕府軍/伝習隊

 徳川幕府最強・最精鋭の陸軍部隊です。新政府への恭順を拒否した約2000名が大鳥圭介に率いられ函館戦争まで転戦しています。ゲーム中でも両軍を通して最強クラスの能力を誇り、初期配置では下総国国府台に登場します(マニュアルの記載が正しく、ユニットに記載された配置位置が間違えている模様)。

 

庄内藩/二番大隊

 両軍の部隊の中でもひときわ目立つ北斗七星を逆さに配した「破軍星旗」の旗印で異彩を放っているのは、苛烈な戦闘指揮で連戦連勝し鬼玄蕃として知られる酒井玄蕃が率いた庄内藩二番大隊です。この時、23歳という若き将星でした。
本作に登場する各ユニットには基本掲げた旗印があしらわれているのですが、この部隊のユニットだけは、庄内藩の他の大隊と異なったシンボルがデザインされています。このあたりデザイナーの細かなこだわりが感じられて楽しいですね。

 

仙台藩/額兵隊

 仙台藩の星恂太郎が率いた額兵隊もユニット化されています。ゲーム後半だけに用いるカードイベントとしての登場のため、時期が遅かったり、登場しなかったりで活躍はなかなかむつかしい点が残念なところです。

 

会津藩/白虎隊・玄武隊

 悲劇的な最期で知られる白虎隊は会津藩戊辰戦争に際し、10代の武家男子を持って組織した部隊。死後百年を超えて故郷会津の重要な観光資源として貢献していると考えると感慨深いものがあります。玄武隊は50歳から56歳の武家男子によって構成された部隊。両隊は、会津版ユーゲント、はたまた国民突撃隊と言ったらいいすぎでしょうか*8。新政府軍の侵攻に対して藩をあげて防衛体制を作らなければならなかった会津藩の窮状が伺いしれます。
能力的には火力値・練度とも最低値と史実でもそうだったように新政府軍の前には全く歯が立たず、一瞬の足止めにしかならないユニットになっています。

 

桑名藩/藩兵

 越後柏崎に初期配置される桑名藩兵ユニット。ゲーム中登場する陸上部隊の中で最弱ユニットです。
その数値からてっきり鳥羽伏見の戦いの戦いでの敗残の後、伊勢桑名の本国領を失った敗残兵かと誤解したのですが、桑名藩は柏崎に飛び地があったようです。
後に日露戦争で第8師団長として黒溝台会戦などを戦い「東洋一の用兵家」と呼ばれた立見尚文はこのとき、桑名藩の雷神隊を率いていました。雷神隊ユニットもゲーム中に登場しています(本記事の上のほうにあります)。なお立見尚文も当時23歳でした(若い!)。



 

(つづく)

 

 

 

 

 

 

*1:コンピュータゲーム含む?

*2:正確には奥羽越列藩同盟

*3:個々の戦闘での両軍の損害は多くはない

*4:月数があわないのは、陰暦・閏月などが関係している模様

*5:現実問題として旧幕府軍・列藩同盟軍側がゲーム終了時まで「上野」を保持し続けたり、「横浜」を占拠することは難しいと考えられ、ゲーム内での両軍の行動は「白河」「新潟」、さらには列藩同盟参加藩の主城を巡るものになります。会津藩の降伏条件は、新政府軍が会津若松を支配するか(会津若松城が落城)、会津若松の四方の地点をを新政府軍に占拠され、かつ仙台藩米沢藩が中立状態か戦争から脱落した状態になっていることが必要です。

*6:この数値=規模が比例している点は、部隊規模が想像できてとてもわかりやすいですね

*7:一般的にチットプルシステムでは、引いたチットによって活性化することができるユニットの数や戦力は損害が増えていくため、減少していきます。ゲームの終盤には活性化しようにもそのグループにはほとんどユニットが残っていません、という状況になることも見られます。当然十分な攻撃を発起できなくなり、ゲームの進行が難しくなっていくこともありえます。本作では意図的なものかはわかりませんが、一枚のチットで活性化できるユニット数の制約が緩くなっているため、そのグループ自体が少なくなったとしてもほかのユニットを活性化できる余地が設けられています。

*8:他藩では士身分以外の階層からなる部隊も組成された(長州の奇兵隊は言うまでもなく、庄内藩や長岡藩ユニットの中に農民層や町人層からなる部隊が登場)のに対し会津藩は士身分とそれ以外との断絶が激しく、戊辰戦争での会津藩の諸隊は基本士身分だけで構成されたということを、どの本だったのかは失念しましたが読んだ記憶があります。よって「国民」と呼ぶには少々異なるかもしれません

「Ukraine'43」(GMT Games)を対戦する【2/2】

「死ぬまでにプレイしておきたい / プレイしておけ」という作品リストがあるそうで、その一作「Ukraine'43」(GMT Games)を対戦しました。

前の記事では、第1ターン最初のソ連軍の攻撃によりドイツ軍の戦線が、ハリコフ北方で大きく突破されたところまでを紹介していました。今回はその続きになります。

※ 前記事で「スミ Sumy」と書いていた都市は、ウィキペディアによると「スームィ」と日本語表示されていますので変更します。現在進行中のウクライナ戦争にてまたスームィは戦場となったようです。

 

 

 

 

プレイ

戦況(第1ターン:ソ連軍プレイヤーターン終了時)

前記事で紹介した状況

ソ連軍プレイヤーターン終了時

「ハリコフ北方戦区」でソ連軍は3個所でドイツ軍戦線を突破しました。スームィ北方で歩兵師団を潰走させた戦車師団が前進しスームィを占領。これにともないスームィの東方に配置されていた2個歩兵師団が包囲下に陥っています(紫色の円で2ヘックス分を囲った部分)。
黄色円は、反撃のために後置されているドイツ軍の精鋭装甲師団です。

※ スームィ= スミ(写真内)

 

ソ連軍プレイヤーターン終了時の全景です。
赤矢印部分がソ連軍が前進してきた箇所を示しています。
やはり「ハリコフ北方戦区」の3箇所、特にスームィ北方の突破が大きいですね。

 

第1ターン:ドイツ軍プレイヤーターン

直前のプレイヤーターンでのソ連軍の突破(上図の橙色の爆発印ならびに矢印)を受け、ドイツ軍は「ハリコフ北方戦区」でスームィ周辺での戦線の穴を防ぐために部隊をかき集めます。反撃用兵力としてハリコフ周辺に後置されていた虎の子の装甲師団のいくつかも戦線の穴埋めに投入さざるを得なくなります(上図の緑矢印)。
かき集めた師団だけでは数が十分ではありません。師団ユニット間の距離が通常よりも広くなっています(通常は1ヘックス間を置いた2ヘックス毎に配置するところを、2ヘックスの間隙をおいた3ヘックス単位でユニットが配置された戦線になっています)。これは非常に脆い状態です。

さらに一重の戦線では同様に突破された後の対処ができないため、イジューム屈曲部などの南部戦線に位置したいくつかの装甲師団も鉄道輸送も利用し移動します。

破られた戦線への手当に目処がたったところで、残った装甲師団とハリコフに配置されていたタイガーⅠ装備の重戦車大隊、さらに歩兵師団を集め限定的ながら反撃を行いました(水色矢印線による移動と赤色枠の爆発印)。

 

スームィを中心としたハリコフ北西部でソ連軍は大きく前線を押し出し、ドイツ軍は戦線を後退させています(上図の水色線)。水色の円内は、ソ連軍部隊により包囲されたドイツ軍師団です。

 

第2ターン:ソ連軍プレイヤーターン

ソ連軍プレイヤーターンのソ連軍が移動を終了した時点の状況です。攻撃箇所(橙色の爆発印)へ攻撃を行う部隊集結しています。

第2ターンのソ連軍は前ターンで前進したポイントを中心に攻勢を継続します。
ハリコフ北方戦区のスームィ南方では、前ターンで装甲師団などにより張られた薄い戦線が目標とされ、複数箇所で攻撃が発起されています。

 

戦闘結果判定を実施し、戦闘後前進・突破前進(赤矢印)を行った「ハリコフ北方戦区」のソ連軍の状況です。
前記事に書いたとおり、戦闘後前進・突破前進のルールは凶悪です。戦線が突破されるのはいたしかたないにしても、突破したソ連軍師団が前後左右に移動を行うことで、ドイツ軍の薄い戦線がギザギザに切り裂かれています。

 

「イジューム屈曲部」以南の状況。
戦線が破れているポイントが何箇所かでています。

 

第2ターン:ドイツ軍プレイヤーターン

ハリコフ北西部で突破したソ連軍の先鋒は、サームィ南部付近で1個装甲師団を含む3個師団を包囲し、南下し、ポルタヴァに迫る状態です。ただこれは裏を返せば、先鋒部分は補給線を引けないリスクも抱えています(この時はかろうじて補給線を確保できました)。
ドイツ軍はハリコフ前面の戦線を縮小し、”大穴”を塞ごうとしますが突破された全線にわたってカバーできるほど機動力を持った部隊が存在しません。

これ以上の対応はできないと判断され、投了しました。

 

ハリコフ以南も戦線の後退と縮小による部隊捻出によって戦線の穴を塞ごうとしています。「イジューム屈曲部」の西側は”混乱状態”ある歩兵師団も並べてようやく戦線を構築できているレベルです。

 

感想戦

何度も書いているように、ドイツ軍は初期配置状態で最初のソ連軍の攻撃を受けた段階で戦線に大穴が空いてしまいました。当然、ソ連軍の初期配置を工夫したDさんの作戦勝ちではありますが、ドイツ軍としてはコントロールの仕様がない状況です。

「死ぬまでにやっておけ」というくらいに評判の良い作品ですので、こうした事態は、本作がゲームバランスが悪いということを示しているのではなく、裏を返して、ドイツ軍はこのくらいの大穴が開くことを前提に、その後のユニットをさばいていかなければならないということなのだと理解しました。

プレイ中、Dさんとは、ドイツ軍を率いたマンシュタインが受けていたであろう重圧とそれに耐えた胆力に感嘆しました。

という訳で本作は再戦を予定しています(7月以降)。

(おわり)

 

 

 

「ROMMEL’S WAR」(WORTHINGTON)を対戦する

「ROMMEL’S WAR」は第2次世界大戦におけるアフリカ戦線、1942年のトブルクを巡る枢軸軍とイギリス軍の攻防を扱っています。
再三ゲーム化されミリタリーファンには、おなじみのテーマですが、本作は、シンプルながら質感の高いコンポーネント、抽象化が特異なユニークなシステム、ルール説明に要する時間10分に1プレイ 1時間以下とプレイアビリティの高さも魅力の作品になっていました。

 

ボックスアートから渋いです。

 

 

ゲームの紹介

コンポーネントについて

質感が高いハードマップです。
トブルクを中心にリビア西部から、マップの右端はエジプトのアレクサンドリアまで含まれ、地点をラインで結んだP2Pで描かれています。
海岸沿いの道路は高速移動ができる「舗装道路」、内陸部には点線で描かれた「未舗装道路」があります。

ユニットは積み木ユニット、木駒です。印刷された紙シールを貼り付けるのではなく、駒に直接印刷された上質な仕様です。このゲームに限らず、積み木ユニットは雰囲気があって良いですね。プレイ意欲があがります。

 

ユニット数は多くはありません。灰色の枢軸軍が17個、黄色のイギリス軍は19個です*1。ユニット上には、兵種記号・戦闘力・移動力が表記され、一部ユニットには第15装甲師団などのおなじみの部隊名が記載されています。ドイツ軍とイタリア軍も区別はされているのですが、性能値以外で影響はありません。
兵種には「装甲/戦車」「歩兵」「偵察」「対戦車」「陣地」「航空隊」に分かれ、性能数値の違い以外に特殊能力が与えられている兵種もあるため重要です。

ユニットの戦力は戦力5の「装甲/戦車」師団から、戦力1のユニットまで混在しています。

 

 

勝利条件

ゲームはトブルクを巡る争いになります。
ゲーム終了時にトブルクを占有している勢力が勝利です。
これには例外があり、トブルクを保有していない側が、トブルクを包囲した状態(トブルクを囲うように周囲の3地点を占拠する)の場合は、盤上に残っているユニット数が多いほうが勝者となります。

実際には、イギリス軍がトブルクを占拠し、枢軸軍はトブルクを包囲しているという状態で、ユニット数勝負ということになることが多いようです。枢軸軍はスタート時点でイギリス軍に比べてユニット数が2個少ないため、ゲーム中でより多く相手のユニットを除去させておく必要があることになります。

 

移動と戦闘

マップ上の各地点にスタック制限はありません。

移動フェイズでプレイヤーは、最大4個のユニットをひとつのグループとして、2個グループを活性化させ移動できます。活性化可能なグループ数はカードの効果により1個グループ増加させ合計3グループを活性化させることができる場合もあります。

敵ユニットがいる地点に移動させた場合、戦闘が発生します。
戦闘解決時にはじめて相手のスタック内容が開示されます*2

戦闘解決は、地点にある両勢力のユニットを開示し、戦闘力の合計値が多いほうが勝者となります。敗者は、任意の1個ユニットを除去し、隣接する地点へ後退しますが、「陣地」ユニットがスタックしている場合は、後退は不要となります。

戦闘解決は、1個グループの移動毎に実施してもよいですし、2個グループを移動させてまとめて実施してもよいです。2個のグループがそれぞれ同じ地点に対して複数回攻撃を実施することも可能です。

 

ここからがポイントです。

戦闘にはその地点にいるすべての防御側のユニットが参加するのに対し、攻撃側は活性化したグループ毎に戦闘解決を行う場合は4個ユニットしか参加できないことになります。2グループを活性化させ、同じ地点に移動させた場合は、8個が参加することになります。

1回の戦闘では負けた側のユニットが1個ずつしか除去されません。

トブルクを「陣地」ユニットとともに、複数ユニットで占拠している場合、攻撃側(多くの場合、枢軸軍)は、防御側のユニットを1個ずつ、”剥がしていく”必要があるのです。攻撃を行う側は、1グループずつ波状的に攻撃を重ねていくのか、戦闘力を高めるため、2グループまとめた上で攻撃するのか・・という判断が必要です。

 

ランダム要素・・増援とカード

ゲームは全10ターンです。

初期戦力は枢軸軍は4ユニット(うち3ユニットはランダムにドローする)、イギリス軍は4ユニット(すべてランダム)*3

2ターン目以降各勢力は2個ずつランダムにドローされた増援を受け取ります。当然、ランダムなのでどの戦力が到着するかは不明です。

両勢力は各ターンのはじめにカードを1枚ずつドローします。
カードには戦闘解決時の戦闘力の値を修正するか、活性化するグループ数を+1することができる効果が書かれています。ゲーム中に受け取る全10枚のうち、枢軸軍側は10枚中3枚は「NO EFFECT」のハズレ、イギリス軍側は7枚が同様のハズレになっています。
ゲーム中、両勢力はカードのめぐり合わせによってどのタイミングで攻勢をとるのかなどタイミングをはかることになります。特にイギリス軍側は効果があるカードが少ないため、運任せとはいえ、有効なカードがどのタイミングで出るのかは重要なポイントになります

ゲームを通して、両勢力は増援とカードをランダムに受け取ることになります。戦闘解決が戦闘力の合算値で決まってしまうのに対し、ランダム要素をそれ以外にもってきた点はユニークです。

 

情報量は多く無いのですが、カードデザインもかっこよいです。

 

展開

枢軸軍を担当しました。
初期状態で分散されていたイギリス軍を各個に撃破除去しながら、アレクサンドリアからトブルクに続く海岸道路を遮断します。
移動力の点で高速移動ができる海岸道路と、内陸部の道路とでは雲泥の差です。
増援は各ターンに到着しますが、兵種や戦闘力を選ぶことができませんので、来る毎に前線に送り出すことになります。このためスタックによって戦闘力の凸凹ができてしまいます。

戦闘はそれまで隠されていた駒をオープンにして決まり、負けた側は1個ユニット除去となることから、負けがこむとあっという間に戦力に差がつけられてしまいます。それを思うとユニット数が優位で、かつ確実に相手を圧倒できるタイミングでなければ戦闘にはいれません。

今回は「航空」ユニットは終盤にしか到着しなかったのですが、このあたりの兵種の扱いはシミュレーションというよりゲームっぽい処理だなという印象を受けました(「感想戦」に記述)。

終盤の状況です。
盤面のユニット数は優勢ですが、イギリス軍にトブルクとそのとなりの地点にも「陣地」をおかれてしまい、トブルク包囲に失敗しています。
アレクサンドリアからトブルクに至る「海岸道路」は封鎖できていますが、イギリス軍は移動できるユニット数は限られるものの「海上輸送」が可能です。

 

感想戦

プレイ後、「X」にアブストラクト要素が40%・・と書いたのですが、この点は撤回します。
兵種を細分化し兵種毎の特徴や優劣関係を単純化し強調させている点、毎ターンドローする増援とカードによってゲームの流れが左右され、ランダム要素の割合が多いように感じられれた点がその理由でした。

実際にプレイしてみると、相手の兵力の読み合い、特定の地点の取り合い、不確かな補給(増援やカード)などなど、抽象化のポイントは特異ですが、アフリカ戦線の特徴をとらえたシステムと理解しました。

 

兵種が細かく分かれている点はDさんによる「軍人将棋」のようという評はそのとおりだと思います。デザイナーズノートにも「このゲームはチェスだ」と書いているので、イメージは近いのかもしれません。
兵種については、移動力が異なる「装甲/戦車」「歩兵」の区別は設けるにしても、「対戦車」「偵察」の存在感は薄く、また「陣地」はユニットではなく、トブルク固定でもよかったのではないかという印象を受けました。
ただこの兵種に関する印象は、戦闘時に一部のユニットの正体を隠しておくことができるというルールを見落としていたことから、この点を正しくすると変わるかもしれません。今回他にも
活性化できるユニット数に関するルールを間違えていたことが後で判明しています。

冒頭に書いたとおり質感の良いコンポーネントと、少々変わった抽象化が施されたゲームシステム、高いプレイアビリティもあり、プレイする価値がある作品になっていました。

(おわり)

 

 

 

*1:かつて発売されていたEPOCH WARGAME ELECTRONICS(EWE)シリーズも両プレイヤーが扱う駒は各20個ずつでした。

*2:ここで攻撃側に「偵察」ユニットが参加していた場合は、戦闘を行わずに「戦闘前退却」を実施できます

*3:最初のドローした戦力があんまりだ、という時のためにマリガン(再ドローの権利)がオプションルールで認められています

「REBEL FURY」(GMT Games)を対戦する【2回戦】チカマウガ(Chickamauga)の戦い

南北戦争をテーマにした6つのシナリオが収録された作戦級ゲーム「REBEL FURY」(GMT Games)を対戦しました。

一定の条件はありますが同一のユニットが同じターンの中で、何度も移動や攻撃を実施できるというユニークなルールを採用しています。
前回対戦では市外の丘陵地に構築された陣地を巡る限定的な戦場が舞台だっため、本作のユニークな移動システムを活かせていないのではないかという議論がありました。今回は広い戦場に舞台にしたシナリオとして、テネシー州チャタヌーガ(Chattanooga)南方で1863年9月に発生した「チカマウガの戦い」を扱ったシナリオを選んでいます。

 

ゲームシステムはこちらを参照してください。

 


 

背景

チカマウガの戦いは、南北戦争が始まって3年目の1863年9月18日から20日にかけて、テネシー州の都市チャタヌーガ市*1周辺にて発生しました。ローズクランズ将軍が指揮する北軍はチャタヌーガ市周辺から南軍を追い出すことを目指し、ブラッグ将軍率いる南軍を攻撃します。チャタヌーガは、南軍の本拠地アトランタをはじめ南方への進攻路の入り口になると考えられていたのです。

結果、北軍は敗退し、両軍の死傷者は、戦争を通してゲティスバーグの戦いの戦いの次に多い激戦となります。勝利した南軍は北軍を戦場から追い出すことには成功しましたが、北軍軍団の殲滅や東テネシーの南軍支配の回復というう目的は達成できず、さらには想定以上の損害を被りました。

シナリオは、9月18日午後にはじまり、20日午後までの全5ターンになっています。

 

勝利条件と初期配置の状況

南軍を担当。

点線は北軍(青色のライン)、南軍(赤色のライン)の初期配置状況を表します。初期配置位置は指定です。

北軍は14個ユニット、3個分遣隊。南軍は13個ユニットとほぼ拮抗しています。

北軍は、ゲーム終了時点でチャタヌーガから、青色実線で示した連絡線を南軍の部隊から妨害されない状態を確保する。同様に南軍は、ゲーム終了時に赤色実線の連絡線を北軍の部隊から妨害されない状態を確保することが勝利条件になります。

 

この時点で正直、南軍が勝利条件を達成するのは難しいと考えていました。確保しなければならない連絡線は長く、最終ターン終了時に連絡線の付近からすべての北軍ユニットを排除するのは難しいのではないか。さらには連絡線の起点となるチャタヌーガ市街ヘックスには、小規模とはいえ(分遣隊)、北軍ユニットが存在しているのです。南軍の勝利のためには、チャタヌーガ市街を制圧して、さらにマップ左右に伸びる連絡線に北軍ユニットを近づけないということが必要となるのです。それを5ターンの間に実現しなければなりません。

 

ゲームスタート時、両軍とも戦闘モードの司令官ユニットを1個ずつ有しています。
戦闘モードの指揮範囲は5ヘックス(上図の点線円内)。指揮範囲内にいる自軍ユニットは自由に、何度でも移動を実施できるのですが、指揮範囲外にいるユニットが移動する場合は、自軍の司令官ユニットの指揮範囲内に向かって移動することしかできません。

両軍ともマップ全体に広く展開しているところからはじまりますが、自由に機動できる訳ではなく、指揮範囲外にいる部隊については、移動しないか、移動する場合は自軍司令官の指揮範囲に向かって移動するしかありません。

せっかくマップが広いにもかかわらず、戦場が限定されていまうことになります。

また、戦闘システムの関係で、戦闘を起こす場合、相手に対して局所的に数的有利を確保する必要があります。

 

初期配置の状況。
手前の明灰色のユニットが南軍、奥側の水色のユニットが北軍です。
マップのほとんどは林ヘックスで覆われているため、移動は道路に沿ったものになってしまいます(道路ヘックスを介さず、林ヘックスにはいったユニットは移動モードから戦闘モードになる必要があり、移動力が1に減少します)。

 

プレイ

第1ターン。両軍の司令官ユニットはモード変更はできないため、戦闘モードのままです。指揮範囲は5ヘックスに限られます。
スタート時点では広く展開していた両軍ですが、交互にユニットを移動させると、両軍とも局所的な数的有利を実現するため、自軍の司令官の周辺に集結していくことになります。

 

移動フェイズでは両軍は交互に1ユニットずつ移動させますが、敵ユニットのZOCのにはいったところでそれ以上は移動できなくなります。
両軍がユニットをにじり寄らせたところで、上図のような状況になりました。
南軍は右翼側はユニットが厚いのですが、左翼側は完全に北軍にユニット数で負けています。

部隊数の比較で北軍は、南軍に比べ1個ユニット、さらに分遣隊2個ユニット分も含めると3ユニット分数に勝っていました。両軍の部隊が近接していたことから先に戦線が確定した右端から順番に並べていくと両軍ユニットの数の差が南軍左翼にかけて表出した状況となったのです。

 

第1ターン 戦闘フェイズ終了時の状況。
林ヘックスでの戦闘は通常のヘックスに比べ、ユニット除去の確率があがります。
このターン、南軍は4個ユニット除去、北軍は2個ユニット除去+2個分遣隊除去となります。残存しているユニットは、北軍12個ユニット、南軍9個となりました。

練度修正+地形修正+砲撃支援+同一軍団効果+(指揮修正)などを加えていくと、両軍とも修正値は最大レベルに近づき、差をつけることが難しくなります。
本マップの大部分を覆った林ヘックスでは平地ヘックスと比べると、ユニット後退の結果の場合もユニット除去される確率が増えることから、派手にユニット除去が起こる可能性がでてくるのです。
ダイスの目による振り幅の大きな戦闘結果に、第1ターン南軍は、全軍の3分の1にあたる4ユニット除去に至りました。

 

第2ターン。
両軍とも司令部ユニットのモード変換に失敗し、前ターンに続き戦闘モードのままになります。仮にモード変更に成功していた場合、指揮範囲は12ヘックスとなり、ユニットが自由に動くことができる範囲が6倍以上になったのですが、モード変換に失敗したことから、前ターンに引き続き、狭い範囲での活動になってしまいます。

南軍は後方からの増援が到着したことでユニット数の差はいくらかは薄まっていますが、まだ前線には間に合っていません。

 

第3ターン 移動フェイズ終了時。
前線の戦力はほぼ拮抗し、多少の押し合いはあっても大勢は変わりません。
結果、連絡線の確保はもちろんチャタヌーガ市街は遠い状態です。

 

第4ターン。南軍はそれまで率いていたブラッグ将軍が退場し、代わりに2人の司令官ユニットが登場します。ここにきてはじめてより広い戦場を指揮範囲に収めることができるようになったのです。
ただユニット数は前ターンから大きく減少していることから、北軍を押し返すだけの力はありませんでした。

両軍とも連絡線の確保は難しく、また除去ユニット数の差から北軍の勝利とすることで協議終了しました。

 

 

感想戦

本作のユニークなシステムを期待して挑んだシナリオでしたが、想像のような自由な形にはなりませんでした。林ヘックスが多いマップや、司令官ユニットの数が限定されていたことが原因ですが、いくつか気になった点を書きます。

■ 移動範囲が限定され、戦場がこじんまりとしたものになった

司令官ユニットの指揮範囲の中であれば、自由に(何度でも)移動できるのですが、指揮範囲外になったとたんにその方向は限定されてしまいます。今回のシナリオで登場した司令官ユニットは両軍とも1ユニットだけであり、さらに2ターン目には司令部がモード変換に失敗したことにより指揮範囲を拡大できず、戦場が限定的になってしまいました。

マップは広く、初期配置では兵力が広く展開していたにもかかわらず、戦場はこじんまりとしてしまいました。

マップ全体を林ヘックスが覆っていたことから、自由に移動できた場合もその範囲は道路ヘックスにならざるを得なかった点もあります。

■ ダイス結果による戦闘結果の振れ幅が大きく、コントロールする術が少ない

ダイス結果による戦闘結果の振れ幅が大きい点もきになりました。対策としてゲーム中ではより有利なシフト(砲撃支援、同一軍団効果などなど)を得られるように部隊を集め、攻撃を集中することがありますが、両軍とも打てる手は打ち尽くすことから、結局のところシフトが上限に近くなり、両軍の差がなくなります。
各ユニットの戦力が両軍ともすべてのユニットで同一であることから(部隊による錬度効果の差はある)、局地的なユニット数の数的有利を実現するために、ますます部隊ユニットの集中化が進み、戦場が狭い範囲に集中してしまいます。

結果、ダイス結果に任せる必要があり、運否天賦のレベルに至ってしまいます。

 

ゲームシステムとしては有望だと思うのですが、シナリオレベルではうまくいっていないようにも感じました。

(終わり)

 

 

 

 

*1:チャタヌーガChattanooga)は、アメリカ合衆国テネシー州の都市。ハミルトン郡の郡庁所在地である。人口は18万1099人(2020年)テネシー川東岸に位置する商工業、及び観光都市である。市名は、この地に先住していたインディアン部族のチェロキー族の言葉で「岩が迫り来る場所」という意味である。

チャタヌーガというと、グレン・ミラー楽団の曲で、「Chattanooga Chu Chu」と歌っているミドルテンポの平和な鉄道の曲が思い浮かぶのですが、曲名もそのまま「Chattanooga Chu Chu」という題名でした。

「OPERATION TYPHOON」(SPI/IED(国際通信社))を対戦する【3/3】対戦2日目

IED(国際通信社)より再販されたビッグゲーム「OPERATION TYPHOON」を2日間・4人で対戦しました。

 

 

 

 

2日目

くじびきを行ったのですが、担当はほとんど変わらないことになり、特に異議もなかったため次のように分担することになりました。

■ ドイツ軍: 北側(第3・第4装甲軍) yagi会長、 
        南側(第2装甲軍・第4軍) 大久保氏

ソ連軍: 北側(当方)、南側(提督氏)

ドイツ軍は南北の担当が交替、ソ連軍は前日と同じ割振りです。

 

初期配置

初期配置は、史実配置を用いました。

初期配置(史実配置)
以降、マップ左手が南、右手が北になります。

 

前記事では紹介していませんでしたが、ゲームスタート時にドイツ軍プレイヤーはソ連軍プレイヤーには秘密裏に戦略目標を決める必要があります。
ゲーム終了時に選んだ戦略目標を開陳し、勝利判定を行います。
戦略目標ごとに勝利条件が異なり、それぞれについて戦術レベル・作戦レベル・戦略レベルと異なった複数の勝利レベルが用意されています。戦略目標は次の3種類です。

  • モスクワの占領
  • モスクワを包囲するものの突破
  • モスクワ完全無視で東方への突破

ドイツ軍ファンが夢想する、ヒトラーがあそこまでモスクワにこだわらなければ・・というIFの世界も含め、広大なマップ上で試すことができるのです。

ソ連軍にとってもドイツ軍の戦略目標は気にする必要があり、モスクワ防衛に注力し、ドイツ軍によるマップ東端からの突破に備えた防衛線はあきらめるのか、部隊の展開にも大きく影響します。

 

第1ターン(1941年11月16日)

ドイツ軍プレイヤーターン終了時/北方戦区

黄色線はスタート時の両軍の戦線です。青灰色のユニットがドイツ軍。
第4軍左翼(北翼)から第4装甲軍の隷下部隊が前進しています。
写真はドイツ軍プレイヤーターン終了時ですので、黄色線と比較することで、ドイツ軍の攻撃が成功した箇所や前進の状況がわかります。

特別ルールにより第1~3ターンの間は第2装甲軍は補給を受けることができませんので、ドイツ軍としては余裕が出た補給ポイントを第4軍に回した形になっています。

 

ターン終了時/北方戦区

ソ連軍が後退し、戦線を整理した後の状態です。
前日の対戦では、戦線の引き直しが十分ではないところをドイツ軍につけこまれ、ユニット除去が増加したという失敗をしていますので、今回は早めに、十分な距離をとるように、後退をしています。
ドイツ軍の進攻は補給線の関係で道路沿いに行われることから、道路周辺以外から部隊を引き抜き、代わりに道路沿いの防御を一線から二線に手厚くする、後方道路の結節点や町には予備部隊として足が速い戦車旅団や騎兵旅団を配置するといった対応をとります。

 

第2ターン(1941年11月17日)

ターン終了時:北方戦区

傾向は変化はありません。
ソ連軍は、ドイツ軍に絡み取られないように後退しました。

 

ターン終了時/南方戦区

第2装甲軍は補給切れ状態ですが、主力がトゥーラを迂回し、東(写真下方向)に突進しています。結果、トゥーラ周辺ががら空き状態。第4軍との間隙も大きくなっています。

 

第3ターン(1941年11月18日)

ターン終了時/北方戦区

戦線に色がでてきたターンでしょうか。
第4装甲軍の正面でソ連軍の1スタックがドイツ軍に包囲され、退却できずに残ってしまいました。やむなく包囲下の部隊は残したまま、ソ連軍は前線を下げます。

ドイツ第3装甲軍はほとんど前進していないのですが、ソ連軍は第3装甲軍前面の戦線を下げます。第4装甲軍前面の戦線を下げたため、歩調をあわせた形です。
もっとも第3装甲軍のあたりはモスクワからも遠く離れているため、早めに撤収して部隊運用に余裕をつくりたいところです。ただ急ぎすぎると、ソ連軍の最右翼の翼端からドイツ軍に回り込まれる懸念があることと、ドイツ軍第3装甲軍をフリーにさせてしまうと、それはそれで面倒です。

ドイツ軍も、道路沿いに部隊を集めたため、森林ヘックスが多いエリアが手薄になってきています。また第4軍が、南戦区の第2装甲軍近くで戦線を張っている師団群と、北戦区の第4装甲軍と協同している師団群との間に大きく間隙が空いてきています。

 

第4ターン(1941年11月19日)

ターン終了時/北方戦区

ターン終了時/南方戦区



第5ターン(1941年11月20日

天候チェックは毎ターンの開始時にあるのですが、毎回「雪降れ、雪降れ」と祈っていました。寒くなればいいというものでもなく、天候が「晴天」か「曇天」で、地表が「凍結」してしまうと、装甲/戦車部隊は機動がしやすくなるので、これはこれで問題です。
ソ連軍にとっては、雪が降って、さらに地表が凍結する、という組み合わせがベストですが、確立は1/12です。

ターン終了時/北方戦線

写真で見ると一本調子で後退しているように見えるのですが、実はどこそこでユニットは除去され続けています。モスクワ市街やモスクワの東方(写真下側)にいる予備部隊から、少しは補充はされるのですが、除去された部隊を完全に穴埋めできるだけの数が来援するわけではないです。
写真右端、ドイツ軍の第3装甲軍の前面には2個歩兵師団のみを残し、モスクワ方向に後退させています。第3装甲軍が万が一、北の端を突破することへの備えですね。

モスクワに近いところは後退方向としてモスクワを意識しています。もう2~3ターンでモスクワをぐるりと取り囲む陣地ヘックスにたどりつくことになるでしょう。

問題は勝利ポイントの対象となっている都市クリンの扱いです。北方からモスクワ方向に後退途中の師団も加わって、そこそこの数の師団が付近に残っています。戦わずして放棄するのもなぁ・・と思いながら中途半端な状態でした。この思い切りの悪さがあとあと禍根を残すことになります・・。

もうひとつの問題は、モスクワの南西方向、写真左側、モスクワの南西方向(モスクワ市街から左上あたり)の森林ヘックス地帯にて、大きく間隙が空いてしまっています。ちょうど南方を担当する提督氏との境い目になっているエリアです。もともと森林ヘックスが多く機動がやりにくいこと、ドイツ軍もソ連側と同様2人のプレイヤーの分担が分かれていた境い目だったこともあり、両軍とも間隙を作ってしまっていたという訳です。

ひとつの軍を複数人で分担してプレイした際に起こりがちな事象ですね。

ターン終了時:南方戦区

こちらの写真のほうが、モスクワ南西方向の間隙がはっきりわかります。

南方はさらに劇的な状況になっていました。
勝利ポイント都市であるトゥーラとセルプトコフがドイツ軍によって緩く包囲されつつあります。トゥーラの東方でソ連軍スタックが包囲され、ここを突破されると、ソ連軍最左翼は翼端から戦線の裏側へ回り込まれそうです(ドイツ軍第2装甲軍担当大久保氏いわく「大包囲」)。
またセルプトコフからモスクワへ通じる道路沿いにもドイツ軍が進出しており、これがそのまま北進した場合、モスクワ南西部の防御は不十分です。

 

第6ターン(1941年11月21日)

ターン終了時/北方戦区

最北翼の第3装甲軍は東方(マップ下方向)ではなく、クリン方面に移動しはじめます。第4装甲軍前面では、ソ連軍の防衛線がモスクワを中心とした円弧状になってきます。
南方戦区ですが、セルプトコフが包囲されています。ただし、前ターンで懸念した第4軍のモスクワへの進撃はまだ先になりそうです。

ターン終了時/南方戦区

セルプトコフは完全包囲、トゥーラもほぼ包囲状態に陥っています。
トゥーラを迂回した第2装甲軍主力はモスクワを目指して北上しはじめました。

第7ターン(1941年11月22日)

ソ連軍プレイヤーターン移動フェイズ終了時/北方戦区

ドイツ軍プレイヤーターンが終了し、さらにソ連軍移動フェイズが終了した時点です。
クリンが第3装甲軍と第4装甲軍によって圧迫されています。

ドイツ軍プレイヤーターン終了時点で、クリン周辺のソ連軍部隊は第3装甲軍と第4装甲軍によって分断されつつありました。これまでの方針であれば、一部の部隊を犠牲にしつつ後退するところですが、えぐるように突出してきたドイツ軍装甲部隊を攻撃することで捨て石することなく抵抗できるかと考えたのでした。
写真はソ連軍移動フェイズ終了時なので移動後の状態です。
突出していたドイツ軍装甲師団(黒色ユニットは武装親衛隊!)に対して攻撃をかけます。

若干の楽観的見通しと、北方戦区のソ連軍としては初めての逆襲というシチュエーション、さらにはプレイ時間の制約等々を考慮し、攻撃に踏み切ったのです。
結果は無事にドイツ軍2個師団の除去に成功し、クリンと後方との補給線も確保できたのでした。

第8ターン(1941年11月23日)

ドイツ軍プレイヤーターン終了時/北方戦区

クリンの陥落はやむなしとして、クリンの東方向で10個程度のソ連軍師団が包囲されつつあります。前ターンでのドイツ軍装甲師団スタックへの攻撃のため、戦力を一箇所に集中してしまったために弱いクリン戦線の両翼から後方に回り込まれた形です。

ドイツ軍プレイヤーターン終了時/南方戦区

トゥーラとセルプトコフは包囲されていますが、ドイツ軍は強攻はしないようです(?)。ソ連軍の最左翼を第2装甲軍の主力が迂回しつつある点はソ連軍として今後の対処が必要です。

 

というところで、ソ連軍が危うい状況を迎えつつある中、時間も押してきたため協議終了です。ポイントは正確にはカウントしていませんが、このままクリン周辺で包囲されたソ連軍約10個師団が殲滅され、クリン、トゥーラ、セルプトコフが陥落されたとすると最低でもドイツ軍の戦術的勝利は固いだろうという判断です。

ソ連軍の増援はここから本格化しますし、またモスクワ周囲には陣地線があるためここからソ連軍の底力が発揮されるというところかもしれませんが、除去されたユニット数も多く、戦線の維持だけでもしばらくは綱渡りが続くでしょう。

 

感想戦

■ ビッグゲームをプレイするということ

ビッグゲームを堪能しました。

広大なマップと詳細な戦闘序列、膨大な数のユニット群を扱うビッグゲームのプレイは、ウォーゲーマーにとって常に憧れのプレイです。実際には時間的、空間的制約からなかなか実現できないものですが、今回は時宜を得て、またとない機会に恵まれました。

本作はビッグゲームの範疇に入る作品として、ユニット数もそれほど多くはありません。ユニット数が多いビッグゲームでは、多数のユニットの移動や戦闘解決に手間がかかり「作業」に陥りがちですが、本作ではそのようなことなくプレイできました。ユニット数が多すぎると、個々の移動や戦闘解決に手間がかかり、大局観を失いがちですが、本作では大局観を持ってプレイできたと言えるでしょう。

 

■ 今回のプレイについて

ソ連軍を担当したため、記事はソ連軍視点での記述となっています。書き込めていない部分もありますが、ゲームとしてはドイツ軍の方が制約が多いです。4つの軍の間での補給ポイントの割り振り、活性化する軍団の選定、同一師団効果や諸兵科連合効果などを駆使し、高比率を維持した攻撃を継続することは、それはそれで苦労が多そうです。

担当した北方戦区については、クリンの撤収タイミングの判断を誤りました。ドイツ軍に占拠されるのは避けられないと考えていましたが、一勝負もせずにあっさりと勝利ポイント都市を明け渡してしまうのは、撤収を躊躇してしまったためです。もっとあっさりと明け渡すことによって、ドイツ軍に何もせずに勝利ポイント(5VP)を与えることになるのも癪ですね。

戦術的には、クリン攻防戦において、ドイツ軍に対して攻撃を行うために、それまで丹念に維持してきた戦線を崩してしまいました(第7ターン)。これが続くクリン周辺の包囲(第8ターン)につながった点も反省点です。

ドイツ軍プレイヤーからは、もっとドイツ軍戦線の後方に騎兵師団などを派遣して、いやがらせをするといった手があったのではないかという指摘がありました。戦線を維持するための部隊確保に汲々としていたため、余裕がなかったのが正直なところですが、ドイツ軍の立場からすると、補給線を脅かされるなどいやらしい手になるであろうことは想像できます。

今回のプレイでは「天候」が安定していたため、ドイツ軍の足止めにはなりませんでした。地表の状態が「泥濘」になった時は、口には出さずに喜んだものの、本ゲームの「泥濘」はドイツ軍の足止めにはなりませんでした。

 

■ 「OPERATION TYPHOON」について

システムとしてはやや古い点は否めませんが、その分、ゲーム特有のルールを中心にチェックすれば、ゲームシステムの運用そのもので悩むことはありません。古いシステム故に、バグ出しが完了しているITシステムのようです。全ユニットがアントライド(初めて戦闘に参加する際に戦力値が決まる)になっているにもかかわらず、ゲーム自体が崩れないのはさすがと言えるでしょう。

プレイ可能なビッグゲームという本作の評価も当然ですね。

 

 

(おわり)

 

1940年のドイツの西方への電撃戦を扱った作品です。
OCSはそのスケールからビッグゲームが多く、OCSの中ではこの作品は決して”大きな”ゲームではないのですが、それでも扱うユニット数はかなり多いです。
本作ではマジノ線の守備部隊など、若干「作業」に陥ってしまいました。

 

タイフーン作戦における第2装甲軍の戦区だけをフィーチャーした作品です。ゲームの対象期間なども本作と同様です。この時はドイツ軍を担当しましたが、天候と地表の状態にかなり苦労した印象があります。このゲームでの天候のイメージがあったため、今回のプレイでもドイツ軍の足を止めてくれるように天に期待したのですけどね・・。
またトゥーラを迂回するのかしないのか、という点もポイントですね。
「OPERATION TYPHOON」をプレイしたあとでは、トゥーラは迂回策一択ですね。

 

 

 

 

タイフーン作戦【完全版】

 

 

「Ukraine'43」(GMT Games)を対戦する【1/2】

「死ぬまでにプレイしておきたい / プレイしておけ」という作品リストがあるそうで、その一作「Ukraine'43」(GMT Games)を対戦しました。

初版の発売は2000年。後にコマンドマガジン誌60号に収録されています。2015年に別作品と言ってよいほどルールを変えた第2版が発売。今回プレイしたのはこの第2版になります。

デザイナーは当代一番の人気デザイナーの一人、マーク・シモニッチ。
多作でも知られ、近作としては2023年に発売された「North Africa'41」など、作戦級~戦役級といったサイズ感で第2次世界大戦の欧州戦域における戦いを扱った一連の作品群があります(他にも多数あります)。

シモニッチが近年リリースしている第2次世界大戦を舞台にした作戦級作品は、作品ごとに細かい適用は異なるものの、ルールの基本的な部分が共通化されています。ここではこの共通システムを、「シモニッチ・システム」としておきましょう。

「Ukraine’43」は第2版にあたってのルール変更により、「シモニッチ・システム」に寄せた内容に変更されました。第1版に比べると、ゲームのシーケンスや戦闘ルールがシンプルになるなど、プレイしやすくなったと言われています。

 

 

 

 

ゲームシステムの紹介

陸上ユニットは師団から軍団単位が中心です。ユニットは、機械化と非機械化に分かれます。機械化部隊の一部は主要装備により、ドイツ軍であればティガーⅠ、Ⅲ号突撃砲ソ連軍であれば、T34やKV1といったシルエットが表示されたユニットもあります。
司令官ユニットとして、ドイツ軍はマンシュタインソ連軍はジューコフが登場し、それぞれ特殊な能力(ダイスの振り直し)が与えられています。

 

支配地域(ZOC)は追加の移動力を消費することで脱出可能。ZOC to ZOCの移動も認められています(敵ZOCにはいった時点で強制的に停止)。

戦闘は、隣接した敵ユニットへの攻撃が強制されず、任意に攻撃を実施できるMay Attack方式です。

プレイのシーケンスは、「移動」‐「戦闘」をIGoYouGo方式で繰り返すオーソドックスなものです*1

通常の作戦級ゲームのルールをベースとしてアレンジが加えられていると言ってよいでしょう。

 

ルールを読んでいて印象的だった要素を3点紹介します。
いずれも他の「シモニッチ・システム」ゲームでも用いられているシステムです。

 

戦闘後前進

本作の「戦闘後前進」では、戦闘に参加していて勝利したユニットは、退却/除去された敵ユニットが占めていたヘックスを通らず、自分がいたヘックスから自由に前進(または後退)を行うことができます(それぞれのユニットが移動できるヘックス数は、ユニットの種類やそれをもたらした戦闘結果によって定められている)。
どのブログまたは記事で読んだのかは忘れましたが、ドイツ軍については戦闘後前進を行う場合、前進を行うのではなく、後退を行い戦線を整えることも良い、と言及されていました。

機動強襲(Mobile Assult)

「機動強襲」は「戦闘後前進」による移動を行う途中で、隣接した敵ユニットに対して追加的に実施できる攻撃を指します。攻撃が成功する限り連続的な攻撃が可能です。戦闘後前進で4ヘックス前進することができる装甲/戦車ユニットの場合、最大4回攻撃を実施することが可能となります。
装甲/戦車ユニットが参加する攻撃が成功し「機動強襲」を行った場合、周囲の敵ユニットも含め、大打撃を与えることになるのです(実際、プレイの中でもそのような場面があった)。

ZOCボンド

他のゲームではあまり見かけないルールですが、ZOCボンドという概念があります。
2個のユニットがヘックスひとつを間隔を置いて配置された際に、両方のユニットのZOCのが重なる部分を「ZOCボンド」と呼び、通常のZOCより強力な効果があるとしています。本作でのZOCの強制力は、通常のゲームのそれと比べると弱いのですが、この「ZOCボンド」の強制力の強さは対照的です。

 

 

プレイ

初期配置

ドイツ軍を担当しました。

1943年8月の前線に沿い、両軍が対峙した状態でゲームは始まります。
両軍部隊が配置された境界線上のヘックスは「陣地」扱いになっています。ドイツ軍の初期配置は決まっていますが、ソ連軍の配置は自由配置です。今回の対戦相手のDさんはこのソ連軍初期配置を念入りに研究していました。攻撃発起箇所については高比率での戦闘ができるように部隊を集中させています。

ドイツ軍の戦線は第一線に歩兵師団が並んでいますが、第二線を引けるほどの部隊数はありません。戦線の数ヘックス後方に、装甲師団が控えている点はドイツ軍にとって数少ない心の支えです(とはいえ、一部はステップロス状態ではじまります)。

マップ全体の北側2/3程度(ハリコフ北方戦区、イジューム屈曲部、とします)。
ところどころにおかれたサイコロは、ソ連軍担当が綿密に計画した、予定攻撃箇所とその戦闘力比率を表しています。

 

第1ターン

ソ連軍プレイヤーターン終了時の状況

ハリコフ北方戦区でソ連軍は3個所でドイツ軍戦線を突破しました。スミ北方で歩兵師団を潰走させた戦車師団が前進しスミを占領。これにともないスミの東方に配置されていた2個歩兵師団が包囲下に陥っています(紫色の円で2ヘックス分を囲った部分)。
プレイ開始直後、ドイツ軍は所定の初期配置から何の移動も行っていない段階での最初のダイスロールでこれをやられて、正直、絶望的になりました。
希望と言えば、ハリコフ郊外の黄色で囲ったヘックスに配置されている装甲師団、重戦車大隊などの装甲兵力の存在です。これらをどう振り向けましょうか・・。

 

ソ連軍プレイヤーターン終了時の全景です。
赤矢印部分がソ連軍が前進してきた箇所を示しています。
やはりハリコフ北方の3箇所、特にスミ北方の突破が大きいですね。
イジューム屈曲部は、史実でもソ連軍が突破した箇所のようで、河川が複雑になっていることから、通常得られる、河川の防御効果を得られないというドイツ軍の防衛線のウィークポイントになっている箇所になります。

 

(つづく)

 

 

 

 

*1:第1版はこれにリアクションや第2移動・第2戦闘があるなど複雑なシーケンスを採用していたが、第2版ではこれらの手順は簡素化された

「REBEL FURY」(GMT Games)を対戦する(2/2)

「REBEL FURY」(GMT Games)は、南北戦争の複数の会戦を扱った作戦級ゲームです。ユニークなシステムのため、最初のとっつきにくさは否めませんが、プレイアビリティも高く、取り組みがいがある作品です。

 

Close this window

 

 

 

歴史的背景

フレデリックスバーグの戦いは1862年12月11日から15日にかけてバージニア州フレデリックスバーグで戦われた南北戦争の初期の戦いであり、南軍の最大の勝利の 1 つと評価されています。
アンブローズ・バーンサイド少将率いるポトマック軍(北軍)(106,000人)は、フレデリックバーグ郊外のメアリーズ高地に設けられたロバート・E・リー将軍率いる北バージニア軍(南軍)(72,500人)の塹壕線に対し攻撃を実施しました。
バーンサイドは南軍陣地に対して次々と無謀な正面攻撃を実施したことで北軍は膨大な損害を受けます。最終的に北軍の死傷者は南軍の2倍に達し敗走しました。作戦後、責任をとりバーンサイドは司令官を解任されました。

 

フレデリックスバーグの戦いにおけるハンフリー師団の勇敢な突撃 :Alfred Waud(米国議会図書館所蔵)
ポトマック軍のアンドリュー・ハンフリーズ将軍が率いた師団は、それまでの攻撃で負傷した兵士たちをかきわけ、最後の攻撃をサンケンロードに対して行うが、精鋭の南軍兵士によって激しく攻撃された。

 

フレデリックスバーグの戦い:Currier & Ives 1862(アメリカ議会図書館所蔵)

連合軍の兵士たちがメアリーズ高地に向かって行進する様子を描いています。タイトルの下のキャプションには次のように書かれています。「この戦いで、ポトマック軍の獅子のような心を持つ兵士たちは敵に立ち向かう不屈の勇気を示しました。11日、ラパハノック川の渡河を強行し、潜んだ反逆者たちからの殺人的な銃火を浴びながらも12日にはフレデリックスバーグを占領しました。13日の朝、兵士たちは敵の塹壕に対して必死の勇気をもって突撃します。数千の兵たちが戦死するか傷つき、恐るべき戦闘は夜が訪れるまで続きました。塹壕に隠れた敵によって押し返されたとしても、北軍の兵士たちは、彼らが最も誇り高い勝利を収めた日々と同じように、南軍の裏切り者たちに立ち向かう準備ができています。」(一部意訳)

 

フレデリックスバーグの戦いで使用されたラパハノック川にかかる舟橋(撮影は1863年

 

 

プレイ

シナリオはフレデリックスバーグの西側に南北に延びるメアリーズ高地の稜線沿いに陣地を構築していた南軍に対して実施された北軍の攻撃を扱っています。
12月12日午後から13日にかけて、シナリオターン数は3ターンです。

南軍を担当することになりました。

 

初期配置

初期配置の状況。マップは上方が北を指しています。
写真右上に展開している水色ユニットが北軍フレデリックスバーグの西側に南北に延びるメアリーズ高地沿いに展開している青灰色のユニットが南軍です。
南軍は高地の稜線沿いに塹壕を設置しています(ユニットに隠れている分もありますが、濃い目の茶色のラインが塹壕を表します)。
メアリーズ高地の左上側に並んだ薄赤色でマーキングしたヘックス(南軍の塹壕になっている)を占拠することで北軍は勝利します。北側の塹壕ヘックスが対象で、南側の塹壕は勝敗には関係しないことになります。

ラパハノック川の東岸から位置する北軍ユニットは、川に設置されたいくつかの舟橋(ポントゥーン)を経由して渡河することになります。

 

第1ターン移動フェイズ

移動フェイズでは1ユニットずつ交互にユニットを移動させます。
ユニットが司令部ユニットの指揮範囲内にいる限りは敵ZOCにはいって移動できなくなるか、パスを宣言するまで、何度でもユニットを活性化できます。

南軍としては塹壕線の防衛に穴が空かないようにすること、また塹壕線が切れている南軍右翼の翼端から回り込まれないように移動を塞ぐことを目指します。
一方の北軍は東岸にいる部隊を全て渡河させ、戦闘位置につけることを目指しています。総攻撃は次のターンを想定しているようです。

北軍による塹壕線に対する攻撃は13日に実施されていますので、第2ターンが総攻撃開始というのは史実にそった展開です。

移動途中もスタック制限の制約が課せられるため、移動順には注意を払う必要があります。特にルートが限定される浮舟橋を渡す必要がある北軍は特にそうです。

 

第2ターン 移動フェイズ

第2ターンの移動フェイズ終了時の状況です。

北軍は、勝利条件ヘックスにあたる西翼(写真左側)から中央部にかけて南軍が守る塹壕戦に戦闘を挑むため前進しますが、東翼は後退します。東翼では逆に、南軍が塹壕を出て、北軍に向かって前進しました。

 

第2ターン 戦闘フェイズ

戦闘フェイズ終了時の状況。

敵ユニットが配置された塹壕ヘックスに隣接したユニットはマストアタックになります。それ以外の地形に位置する敵ユニットに対する攻撃は任意です。

戦闘も移動と同様に1ユニットずつ解決されます。ユニークなのは、同じユニットが何度でも攻撃を行うことができ、防御側も何度も攻撃を受けることがありえることです。

北軍塹壕線に隣接させたユニットにより攻撃を実施しますが、塹壕の地形効果が厳しくほとんど損害を与えられません。いくつかのヘックスでは防御側ユニットの後退に成功しますが、両隣のヘックスにいる南軍師団の攻撃によりすぐに奪還されることが続きます。

後でわかったのですが、ここで何点かルールを間違えていました。
塹壕の中にいる防御ユニットは、地形効果で損害を受けにくい反面、損害が出た場合は、後退ではなく除去などに変わる

1. 防御側ユニットが塹壕内にいる場合、「Attack Result Table」の結果の適用に
   あたって、特別対応となります。

  • 「攻撃側後退」の場合、追加で赤ダイスを振りその結果により、「攻撃側潰走(Blown)」または「攻撃側後退」となる
  • 「防御側後退」の場合、防御側ユニットは除去
  • 「防御側潰走(Blown)」の場合、防御側ユニットは除去

2. 塹壕ヘックスにいるユニットは、隣接する塹壕ヘックスの塹壕内に
   敵ユニットが存在する場合は、塹壕の中にはいることはできません
   (塹壕の地形効果を得ることができない)。

 

第3ターン 移動フェイズ

北軍は南軍陣地に対する再度の攻撃位置につきます。

上記のとおり防御側に”後退”を示す損害が出た場合の対応については誤りがあったのですが、そもそものところで陣地にこもった南軍に対していずれかの損害を与えるのがなかなか難しいのです。
勝利条件ヘックスを全て占拠するという、北軍の勝利条件はそもそも達成できないのではないか?という話が起きました。

 

第3ターン 戦闘フェイズ

戦闘フェイズ終了時の状況。

 

感想戦

塹壕内ユニットに対する損害反映を正確にしたとすると防御側ユニットはもう少し除去されることになったのではないかと考えられます。
ただそれらが反映されたとしても、シナリオとしては北軍が勝利条件を満たすことは難しいのではないかという印象です。史実通りだとするとそのとおりですが、その場合は勝利条件をどうにかしたほうがよかったかもしれません。

 

ゲーム全体としては冒頭に書いた通りです。
ユニークなシステムのため、最初のとっつきにくさは否めませんが、プレイアビリティも高く、取り組みがいがある作品です。

今回は戦闘領域が限定された戦いだったため、次回はより作戦範囲が広いシナリオで試してみたいとものです。「移動回数制限無し」というシステムが作戦範囲が広い戦いの場合にどのようになるのか検証したいと考えます。

 

無駄な移動の実施回数の制限について

本シナリオでのユニット数は両軍で大きな差はありません。
一方で南軍は初期配置状態ですでに塹壕ヘックスに配置されていたユニットも少なくなかったことから、必要な移動は北軍より先に終わります。ここで単純にパスを宣言するとそれ以降の移動はできなくなることから、北軍がその後どのような移動を行った場合も対応できなくなります。
そうすると、自軍が必要な移動は終了していたとしても、相手もパスを実施するまで、自軍もパスを宣言せずに、例えば予備で後方に待機させている騎兵旅団ユニットなどを使って本来は必要がない移動を何度も繰り返すことになりかねません。
前記事でも紹介したとおり、そのような”無駄”な移動は連続して実施する回数制限が設けられています。
この点は本作のゲームシステム(冒頭に書いたとおり、全体としてはユニークで素晴らしいシステムなのですが)の一番の疑問点、スマートではないと感じられたポイントですね。みなさんのご意見も聞きたいところです。

 

備忘:南北戦争時代の砲兵運用について

ナポレオン時代の大砲は射程距離が短く、また通信手段がなかったことから後世の砲兵部隊のように戦線の後方から長距離で射撃を行うのではなく、大砲自体を最前線に並べて敵に対して直接射撃を行っていたことは、ナポレオン時代の戦術級ゲーム(例: Welington's Victory、Ney VS Welington など)をプレイしてみれば理解できます。

本ゲームの砲兵戦力の反映は2種類あり、ひとつはマップ上のどこで発生した戦闘でも適用できる「砲撃支援」と、決められた範囲でのみ適用できる「重砲支援」とがあります。いずれも「Battle Rating(戦闘評価値)」への修正を行うという内容です。

調べてみると、南北戦争時代も大砲の射撃は直接射撃がメインで、ごく一部気球などによる観測により間接射撃が実験的に行われたということです。
ゲーム内の前者は師団に所属した師団砲兵による射撃で、後者は軍・軍団単位で保有していた重砲による射撃で、いずれも直接射撃を表しているのだと推測します。

 

(おわり)