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「KOREA -Forgotten War-」OCS(MMP)を対戦する (1/2)【修正】

MultiMan Publishing社の製品ラインナップにはいくつかのシリーズ作品がありますが、本作はOperational Combat Series(以降、OCS)の中の一作で、朝鮮戦争の開戦から休戦交渉がはじまるまでの最初の1年間を扱っています。

OCS Korea second edition box cover

 

特徴的な補給ルール

OCSのルールの中でも補給に関するルールは独特です。デザイナーズノートを見ると、補給ルールのデザインコンセプトとして3点があげられています。

  1. 集積ができるようにすること
  2. 距離によって影響を受けつつも補給を運んで消費できるようにすること
  3. それほどややこしくない、ペーパーワークを必要としない程度のプレイアビリティでできること

 

次のサイトに和訳掲載されている「1st エディション デザイナーズノート」より抜粋。
OCSをプレイするなら必見のサイトです

ocs.memo.wiki

ゲームの中では「SP」(サプライポイント)と呼ばれる補給物資を運び、前線近くや戦線の後方に蓄積する必要があります。

「SP」は燃料や弾薬を現しており、車両を有する部隊(移動タイプが装軌または装輪のユニット。徒歩ユニットは含まれない)が移動する場合、砲兵部隊が砲撃を行う場合、また戦闘ユニットが戦闘を行う場合(これは攻撃側だけではなく防御側ユニットにおいても)、「SP」を消費します。消費できなければ攻撃を発起できないといったペナルティが課せられます。

補給源からの輸送方法は、海上輸送、鉄道輸送、空輸、車両による輸送から駄馬・荷馬車等による輸送まで各国軍隊のロジスティックス事情により異なる手段が用意されています。
前線において十分すぎるほどの補給があることはなく、攻勢作戦の前には消費を抑え、物資を蓄積しなければならないでしょう。

今回の「KOREA」において緒戦の北朝鮮はさすがに補給物資を備えた状態で開戦しますが、これも攻勢作戦を数度発動すると使い切ってしまうくらいの量です。節約して計画的に使っていくか、その後の攻勢作戦前には物資を貯めるか必要となります。ちなみに北朝鮮軍が使うことができる輸送手段は、鉄道輸送、トラック輸送、馬車です。
韓国軍は開始時においてはソウルやいくつかの拠点に物資を蓄積していますがこれらも、防衛戦闘の中に使い切ってしまうか、北朝鮮軍に集積地を占領されて接収されてしまう可能性があります。
その後は国連軍が持ってくる補給物資に頼ることになります。その国連軍の補給源は日本本土になります。日本本土から海上輸送を利用して釜山などの港湾に運び、港湾からは鉄道かトラックによって輸送されることになります(輸送機が配備された後は空輸もできるようになる)。国連軍の補給も無尽蔵ではなく、海上輸送や鉄道輸送の輸送量制限により制約され続けていきます。

補給を物資の輸送としてデザインされたゲームは以前からありましたが(例えば、北アフリカ戦線を扱った作品とか・・)、このOCSの補給システムは、クセがあるとは言え、デザインコンセプトの3番目の項目に記述されているようにプレイアビリティを保った上でのシステムになっているように感じました。

 

シナリオの紹介

選んだシナリオはシナリオ2「Invention of South Korea(韓国への侵略)」、北朝鮮による奇襲に始まる開戦から最初の3ヶ月間を扱ったものです。史実と照らし合わせると6月末のソウル陥落、7月韓国軍戦線の崩壊と国連軍の参戦、8月の釜山攻防戦・9月下旬の仁川逆上陸・国連軍のソウル奪還までの時期になります。
1ターンは3日 4日と3日が交互に現れる(2ターンで1週間)、全11 29ターン。
1ヘックス=5マイル(8キロ)
ユニットは大隊~師団単位。師団ユニットは連隊単位のユニットに分派可能。

北朝鮮軍は38度線を超えて侵攻し、地図内のソウル、大田、大邸の3都市を占領することが勝利条件となります。

(訂正)
北朝鮮軍の勝利条件はゲーム終了時にソウルと大田を確保していること。国連軍の勝利条件はソウル、大田、大邸の確保です。
史実では、北朝鮮軍は38度線を超えて侵攻し、6月28日ソウル、7月21日大田を陥落させ、8月には釜山を目指した攻防が開始されます。その後、9月15日に国連軍は仁川に逆上陸を果たし、9月28日にソウルを奪還します。
このシナリオはちょうど、エポック/サンセットゲームズの「KOREAN WAR」がゲーム化している期間に相当するシナリオと言うことができます。

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朝鮮半島の中は半島の西側から中央部を中心に鉄道網・道路網が整備されている。問題は東海岸で鉄道が十分に敷設されていないため、補給路の設定に工夫が必要となる。

 

初期配置 

初期配置はヒストリカルな配置が決まっています。
北朝鮮軍が38度線北側に軍隊を集結させているのに対し、韓国軍は38度線付近の主要都市に連隊単位のユニットが分散されて配置されているだけです。戦力が大きい師団ユニットも見えますが、配下の連隊を付近の拠点に分派しているため、これらも実態としては連隊規模の部隊にすぎません。

北朝鮮軍には戦車大隊があります。「KOREAN WAR」でも登場し特別ルール(韓国軍ユニットのZOCをすり抜けることができる)が与えられていたあの部隊です。また戦力的には小さいものの驚異的な移動力で韓国軍の後方をかき乱すオートバイ連隊もあります(この部隊もまた「KOREAN WAR」に登場していました)。一方の韓国軍は自動車化部隊としては装甲車の大隊が1個あるだけです。

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当時はきっちりと38度線に沿って国境が分けられていたため、韓国には西海岸の甕津半島(オンジン半島)に飛び地を持っていました(上記マップの左端あたり)。「KOREAN WAR」では史実にあわせてここにも歩兵連隊ユニットが1個配置されていましたが、本ゲームでは捨象されているようです。

 

当方は韓国軍、Dさんが北朝鮮軍を担当。二人ともOCS初プレイということで、Yさんのインスト&指導がつきました。

 

第1ターン/北朝鮮軍プレイヤー

1950年6月25日未明、北朝鮮軍は38度線を超えて侵攻を開始します。
天候は悪かったため空軍の出動はなかったのですが、砲兵部隊は全力攻撃です。

西部戦線(ソウル方面)

ソウルの前面にあたる開城、議政府付近に分散配置された韓国軍の2個師団分の連隊は強力な砲撃の援護の元、前進してきた北朝鮮の精鋭歩兵師団により文字通り粉砕されます。開城と議政府は北朝鮮軍に占拠され、前線はソウル間近に迫ります。

中央戦線(春川方面)

春川に韓国軍の構築陣地があり若干強化されています。
地形としてはいかにも山間部のように見えますが、緑色で表されている「Low Hill」ヘックスは、北朝鮮軍と韓国軍の大部分を占める”徒歩(Leg)”移動の部隊にとっては平地と同様の移動力消費となるので防御に適している訳ではありません。

春川とその東方に配置された連隊が攻撃され、韓国軍は洪川まで後退します。

東部戦線(東海岸方面)

山間部が迫っているため地形的な幅がなく、日本海に面した東海岸に沿った街道1本に沿った戦いになる場所です。東海岸沿岸は38度線から北側には鉄道が敷設されているのですが、南側は浦項付近までくだらないと鉄道はありません。その間はすっぽりと抜けた状態です。道路はあるので補給線は設定はできますが、司令部からの距離など制約がはいるため、部隊運用に注意を要する戦線と言えましょう。

史実では北朝鮮軍の海兵部隊が舟艇機動で韓国軍前線の背後に奇襲上陸などを仕掛けた戦線でもあります。「KOREAN WAR」では上陸作戦を行うことができる北朝鮮軍の海兵部隊ユニット(戦力としては小さい)が登場しますが、このゲームではよくわかりません。

北朝鮮軍は東海岸での攻勢はあきらめ守備隊だけを残し主力は西方向に転進させます。

 

史実では開戦4日目にあたる6月28日、北朝鮮軍はソウル市街に突入、あわてた韓国軍が漢江の橋を落として撤退しています。ゲームでいうと第1ターンの終わりか第2ターンにソウル占領したことになります。

OCSの戦闘システムでは攻撃を行うことができるタイミングとして1ターンの間に、移動途中の①”オーバーラン攻撃”、砲兵部隊や航空支援による②”砲爆撃”、③通常の戦闘フェイズでの攻撃、突破フェイズにおける移動セグメントでの④オーバーラン攻撃、また⑤戦闘セグメントでの攻撃があります。それぞれ実施できるユニット種類や条件に制約があるため、役割分担をする必要がありますが、戦闘システムをよく理解して、うまく計画すれば、2ターンでのソウル占領は十分にありえるのではないかと思いました。

またOCSのZOCルールは”弱ZOC”のため、敵ユニットに隣接するヘックスであってもZOCを打ち消して通り抜けることができます。通常のウォーゲームでの感覚でプレイしていると、やすやすと抜けられてしまいます。戦闘システムにおける複数回の攻撃手法と、この”弱ZOC”ルールをうまく組み合わせることで、韓国軍の戦線を突き崩すのです。

朝鮮戦争の開戦日は日本の書籍では、ウィキペディアでの記述を含めて6月25日となっていますが、ゲームでは6月26日となっています。現地時間6月25日、米国時間6月26日ということでしょう。

[2021/2/6 指摘により修正]
朝鮮戦争の開戦日は6月25日です(諸書籍・ウィキ等)。
アメリカ時間だとすると6月24日なのですが、ゲームではキャンペーンゲームの開始日は6月26日になっており、どうもあいません。
ゲームの設定が間違えているのではないかと思っています。

[2021/2 再修正]
OCSのデザインポリシーとして開戦日を起点に第1ターンが設定されている訳ではなく、OCSゲームが共通的に各ターンの日付を設定していることから、この「KOREA」では第1ターンが6月26日スタートとなった、とかなんとか・・。すみません何言っているかわからないですね。確認して正確に記述します。
ともあれ、ゲームの設定が間違えている訳ではなく、ポリシーに照らして確信犯的に、第1ターンのスタート日が決まっているということのようです。

 

第1ターン/韓国軍プレイヤー

韓国軍にできることは戦線の整理です。

西部戦線(ソウル・仁川方面)

ソウル近郊の部隊はソウル市街ヘックス中心に集め、ソウルにもっとも近い補給源である仁川港を奪われないよう、ソウルから西海岸までを部隊で埋めることにより戦線を張ります。
またソウルに備蓄されている多くの弾薬燃料から一部を、トラック部隊を使って後方に移動させます。

ソウルで戦線を構築するため、水原あたりの後方にいた部隊も北上させます。
ただ前線に兵力を集めすぎるのは、明らかに悪手で、北朝鮮軍の包囲殲滅作戦に乗ったも同然だったのです。

中央戦線(春川・洪川方面)、東部戦線(東海岸方面)

春川は占領されたため、次の拠点となる洪川に部隊を集めます。中央戦線は守備の拠り所となる地形があるため、守っては少し下がりという遅滞行動を行います。注意するのは、西部戦線側と同期をとって下がることでしょう。

東部戦線は北朝鮮軍の部隊が他方面に引き抜かれたため、攻勢はないと判断します。北朝鮮と異なり、韓国軍には他方面に転用できるような戦力はないのですが。

 

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実際のプレイにおける第1ターン終了時の写真です。この時は、ソウルに備蓄したかなりの補給物資とあわせ、わが軍は結構強力ではないか!と思っていたのです。

(つづく)

 

 

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