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歴史、ミリタリー、ウォーゲーム

「Golan '73」(GMT)を対戦する(2/2)

GMT GamesのFast Action Battle シリーズから第四次中東戦争ゴラン高原における戦いを扱った「Golan '73」を対戦しました。

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yuishika.hatenablog.com

 

 

第1戦(シリア軍担当)

初期配置

ダイスによりMさんがイスラエル軍、当方がシリア軍を担当しました。
ヒストリカルシナリオではシリア軍の配置は決まっています。
一方のイスラエル軍は停戦ライン上に配置される警備部隊(Strong Point)11駒についてダミー3駒を含め、部隊ユニットが機甲/歩兵、兵力(ステップ数)、また兵員の質(一部エリート兵)を混ぜて配置します。
特にダミーユニットは、シリア軍に攻撃を起こさせ「リソース」の使用を吸引させることができれば大成功です。

第1ターン(シリア軍ターン)

第1ターンのシリア軍プレイヤーターンは移動が終わった状態、前線のエリアでイスラエル軍の警備部隊と接敵した状態で開始します。接敵状態のエリアでは戦闘が起きます。シリア軍は豊富な「リソース」をふんだんに投入し、次々とイスラエル軍の警備部隊ユニットを除去していきます。得点エリア6ヶ所のうち2ヶ所を占拠し順調です。

第1ターン(イスラエル軍ターン)

シリア軍工兵が停戦ライン上にイスラエル軍が設けていた戦車壕に次々と架橋していきます。これによりシリア軍占領地域からイスラエル占領地への補給線がつながるようになり、シリア軍は奥のエリアへの侵攻が可能となります。

イスラエル軍は前線に配置されている2個の機甲旅団の各部隊の位置を調整するだけで反撃は行いません。

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写真の右手が北になります。
番号をつけたエリアが得点エリア。シリア軍がサドンデス勝利をおさめるには7得点以上が必要。

 

第2ターン(シリア軍)

史実において開戦が14時だったということを受けてか、第2ターンは同じ10月6日の夜間ターンになります。夜間ターンではシリア軍は移動範囲を制約を受け、また両軍とも攻撃においてマイナス修正をうけることになります。

ふんだんな「リソース」にあかせてシリア軍は攻勢を続行します。
得点エリアであるヘルモン山の占拠に必要となる麓のエリアを攻撃しようとしたところ、イスラエル軍がイベントチットを引き、そのエリアにいたシリア軍のモロッコ兵部隊の戦意を喪失させます*1。やむなくシリア軍は別のエリアにいた歩兵連隊をヘルモン山麓のエリアまで移動させ、攻撃続行、これによりヘルモン山へと続くルートが占拠でき、次のターンには攻撃できるようになります。

「涙の谷」(Tel Abu-Nida:~の丘という意)エリアの西方にあるエリア「Kuneitra:クネイトラ」は地形効果が高い上に、エリート戦車部隊が守備していたため1ターンでは落とせません。戦闘は翌日に続きます。

ja.wikipedia.org

クネイトラはいわくつきのエリアのようですが、ゲーム内においては、特に得点エリアなどに指定されているわけではないです。ゴラン高原を扱った別のゲームによっては町が描かれている場合もあります。

 

目覚ましい戦果をあげたのはナファク南西部。
守備のイスラエル軍機甲旅団の一部の部隊を後退させ、シリア軍が得点エリアであるナファクに続く街道に進出します。ナファクとの間にさえぎるイスラエル軍部隊はありません。

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第2ターン(イスラエル

ナファクの危機に本国で動員された機甲旅団が不完全状態のまま戦場に投入され、シリア軍先鋒とナファクとの間に割って入ります。イスラエル軍部隊の逐次投入が始まったのです。

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写真では見切れていますが、上方にヨルダン川が南北に流れており、それを超えるとイスラエル本国になります。動員された部隊はすぐに前線に投入されます。

 

第3~4ターン

ナファク南方で、シリア軍は損耗を受けた部隊を下げ、フル装備の部隊によりイスラエル軍増援に攻撃を掛けますが失敗します。
クネイトラの占領、またヘルモン山、南方の得点エリアの確保などを行いますが、シリア軍の攻勢の勢いはここまででした。

イスラエル軍は毎ターン到着する増援により防御を固めます。
シリア軍にとっての好機は二度と訪れなかったのです。

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第5ターン~

イスラエル軍は増援部隊により得点エリアであるナファクや涙の谷を固めてしまいます。シリア軍はこの中央戦線で攻撃を再興しようにも、中央線戦の部隊はなにかしらのステップロスを受けている中、スタック制限(1エリアあたり2ユニット)下では、イスラエル軍を上回る火力を集めることができないことは明白でした。

最後のチャンスと、南方の得点エリア(写真からは見切れている)を目指し、南方での突破を図りますが、ここでもイスラエル軍の増援にはばまれ、1ターン内での奪取が難しいと判明した時点で、次ターンにはサドンデス条件に引っかかることが必至となり、シリア軍は投了します。

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投了時点の両軍の状況。
シリア軍は南方で得点エリアを目指し攻撃を見せますが、1ターン内でエリアの確保は難しいと判断され投了します。
イスラエル軍前線も一部弱小の部隊で支えられている部分がありましたが、積み木ユニットなので相手戦力はわからないんですよねぇ・・。
中央部分に突出しているイスラエル軍部隊(円で囲っている部分)は、完全戦力(火力4)でエリートでかつ機甲部隊という強力な部隊、格が違いすぎる相手とは戦えない・・。
中央部のシリア軍主力はいずれもなにかしらの損害を被っており、衝力を失っています。シリア軍は補充兵力が少ないため、失ったステップを回復するには工夫が必要。いずれにせよ戦線は膠着状態に陥っていました。

 

第2戦(イスラエル軍担当)

時間が余ったので2回戦を行いました(1回戦の所要時間は4時間程度でした)。
攻守の担当を変え、今度はイスラエルを担当。

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初期配置の様子をイスラエル軍側から見た図。
イスラエル軍はこの時点、たくさんユニットが並んでいるように見えますが、いずれも弱小のステップ1~2のユニットばかりです。
ちなみにマップ手前に左右に流れている川がヨルダン川。シリア軍が作戦計画の際に作戦開始2日目夕刻には到達したいとしていたエリアになります。ゲームでもシリア軍がここを占拠すると3点と大量得点が可能となるエリアになります。
ブノット・ヤコブ」という名称は往年のTACTICS誌4号に付属したミニゲームのタイトルとなった橋になります。こんなところにあったんだ!と数十年ぶりの発見です。

 

第2戦についてはあまり写真を残していないため簡単に・・。
緒戦は、当方がシリア軍を担当した時よりも計画的に、ダミーはダミーと推測しながら、イスラエル軍の警備部隊を排除。戦車壕への架橋や地雷原除去も計画的に進行させ、順調に得点エリアを確保します。
その後、第1戦と同じように、第2ターンから第3ターンにかけてやはり、ナファクの南方でイスラエル軍の戦線に穴ができ、シリア軍につけこまれそうになりますが、増援の投入により穴は塞がれます。

その後、南方で大きくシリア軍は前進しますが、こちらもイスラエル軍の機甲旅団の増援により叩かれ、シリア軍戦線は後退します。イスラエル軍の集中攻撃により南部戦線のシリア軍は停戦ラインの西側からほぼ追い出された状態で1戦目と同じく最低得点を満たせずサドンデスで終了しました(所要時間3時間)。

 

感想戦

シリア軍は止まったら負け?

相互に1戦ずつ担当したところで、シリア軍は厳しいのではないの、という点でMさんと意見が一致しました。
今回、1戦目、2戦目ともシリア軍の戦況は同じ様な展開をたどっています。
3ターン目あたりで一瞬、突破のチャンスを掴みかけるのですがいずれもイスラエル軍の増援部隊に穴を塞がれたり、その後、突出した部隊がイスラエル軍の反撃を受け、押し返されたりしています。得点エリア4ヶ所は確保するもののそれ以上の確保ができず、除去ユニットの得失点差により最低得点を確保できずにサドンデス負けを喫するのです。

また1戦目で痛感したのは、補充能力が劣るシリア軍は前線主力のステップロス損害を十分に回復できないため、火力が減少した状態に陥り、しかも1エリア2ユニットというスタック制限のため、火力の上限を伸ばせない状態で、完全戦力状態かつフルスタック状況のイスラエル軍精鋭とあたらなければならなくなるのです。ランチェスターの法則よろしく、完全戦力状態と火力減少状態との部隊との射撃戦の結果は自明で、突破やエリアの占拠など期待できないことになります。

しかもシリア軍は最低得点を確保できなければサドンデスで終了してしまうという縛りも負っています。得点エリア5ヶ所目になる、「ナファク」や「涙の谷」を占拠するためにはどうするのか?

少なくともシリア軍は常に戦場の主導権を握り、イスラエル軍を右往左往させるくらいに攻撃手を繰り出し続けなければならないのでしょう。しかもそのチャンスは2ターン目か3ターン目まで。イスラエル軍の増援の到着が本格化する前に決めなければなりません。
戦線の膠着はイスラエル軍に有利に働き、シリア軍は得することないです(なぜならば後になればなるほどイスラエルの増援が到着するし、「リソース」の利用可能量も増大する)。
今回あまり発生しなかった突破移動・突破戦闘を行うため、予備ユニットの指定や、スペシャルアビリティ(チットによって得られる特殊能力のひとつ)を駆使していく必要があるのではないかと想像はするのですが、それがシリア軍の勝利に直結するかはよくわかりません。少なくともルールの習熟は必要でしょう。

 

初期の攻勢をしのげば楽になるイスラエル軍

ゲーム当初こそ部隊数の少なさから若干苦労するのですが、増援が到着しはじめる3ターン目以降、ターン数を重ねるごとにイスラエル軍は楽になっていきます。部隊ユニット自体の増援もさることながら、ステップロスした部隊の補充戦力も来るため、戦線の強化が容易なのです。

毎ターンのように精鋭機甲旅団が到着するようになった時の全能感は快感ですぜ。

 

プレイ前はもっと豪快な戦線の移動などが発生するのかと思っていましたが、そういうゲームではなかったです。
ここまで書いたとおりゲームバランスは決して良いとは言えない印象を受けましたが、積み木ゲーム特有の感触や、適度な数のユニット数、初級者向けを装いその実、考えさせる場面が少なくないというゲームデザインなど、やりこみ要素はあるように感じました。
また機会があれば試してみたいゲームです。

 

 

余談:史実におけるシリア軍の敗因について・・

シリア軍は圧倒的な兵力差に奇襲というタイミングにより戦闘を始めたにも関わらず、空前の負け戦を演じてしまいます。このゲームが描いているゴラン高原の戦いの前半だけでも、開戦時の装備戦車の台数、1220輌対177輌だったのが、そのほとんどの戦車を失うハメになってしまっています。
ただなぜそれほどの損害が出たのか、なぜシリア軍は負けたのかという分析自体があまり見かけないように思います。

装備戦車もT55とT62に対する、パットンとセンチュリオンです。T55はともなくT62は最新の滑空砲を装備するなど決して劣っているとは思えません。また一部の資料には記載があったのですが、当時のイスラエル戦車は数台に1台程度サーチライトを装備しているだけで夜戦装備においてシリア戦車に劣っていたという記述もあることなど決して、装備兵器が劣っていた訳ではないようなのですよね。
乗員の練度や士気の差も原因のひとつでしょうが、それだけでしょうか?

ちょっとこのあたりの書籍でも読むかな。 

 

ゴラン高原を扱ったゲームについて(TACTICSの付録を中心に)

ゴラン高原の戦いは往年の雑誌「TACTICS」でも付録ゲームとして2回取り上げられています。
1回目は隔月刊誌時代の第4号に付属したミニゲーム「ブノット・ヤコブ橋」。
マップの範囲としてはゴラン高原の全体をカバーしています。
2回目はSPI社が発売していたモダンバトルシリーズの作品「Golan」を付録化したものになります。

いずれもちはや会でリプレイ記事がありましたのでリンクをつけておきます。

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chiharakai2005.at.webry.info

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chiharakai2005.at.webry.info

 

 

ゴラン高原の風/テル・アヴィヴは雨だった
 
地図で見るイスラエルハンドブック

地図で見るイスラエルハンドブック

 

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*1:史実でも、モロッコ兵部隊は早々と戦意喪失し、シリア軍の足をひっぱっている