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「KOREA -Forgotten War-」OCS(MMP)を対戦する 【第2戦】洛東江攻防戦(1/2)

MMP社のOperational Combat Series(以降、OCS)「KOREA -Forgotten War-」を再戦しました。シナリオ3「On the Naktong(洛東江にて)」。1950年8月1ヶ月間の、戦争全期間を通して韓国軍・国連軍が最も追い詰められていた時期を描いたシナリオです。
お相手していただいたのは前回、OCSを指導をしていただいたYさんです。

当方が北朝鮮軍、Yさんが韓国軍・国連軍を担当しましたf:id:yuishika:20210223101852j:plain

 

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シナリオについて

1950年8月の1ヶ月間を扱ったシナリオです(全8ターン)。

勝利条件

北朝鮮軍の勝利条件は、釜山近くに引かれた防衛ラインを超えて部隊を侵攻させるか(この場合、北朝鮮がサドンデス勝利する)、シナリオ終了時に大邱と馬山の占領が必要。一方の韓国軍・国連軍は同様にシナリオ終了時に大邱・馬山・浦項の確保が必要です。

陸上戦力

北朝鮮軍はシナリオ後半にわずかに増援が到着しますが大勢は開戦時から攻撃を続けてきた部隊がそのまま継続して使用されている状態です。開戦時に精強を誇った歩兵師団もなにかしら損害(ステップロス)を得ている状態から始まります。北朝鮮軍自慢の戦車大隊は4個大隊あったものはシナリオ開始時には1個大隊に減っています。史実において開戦時200両あったT34/85はこの時期、稼働車輌は40両になっていたという事実を踏まえた戦力ということでしょう。

一方の韓国軍・国連軍はシナリオ開始時の初期配置時には装備が十分ではない状態の師団・連隊が目立つのですが、これらはすぐに補充されていきます。

開戦当初は動員が進まなかったアメリカ軍ですが、この時期には本気をいれて増援を送り込んできており、部隊の士気や練度・装備品などの兵力の質を表す、AR(アクションレーティング)は韓国軍はもちろん北朝鮮軍の水準も上回るような部隊が多く見られます(ただし、日本からの輸送にあたって、補給物資(SP:Supply Point)を優先するか、増援の輸送を優先するかというジレンマ状態にあります)。特にアメリカ軍の海兵隊ユニットなど、部隊規模が小さい割に戦闘力が高い上、練度・装備を表すアクションレーティングもずば抜けており、あえて手を出す敵軍がいるか?というほど暴力的な強さを誇ります。

補給状況

OCSのゲームシステムのキモは補給です。補給はSPと呼ばれるポイントで表され、補給源から、実際に消費される前線まで、鉄道・トラック・航空機・海上輸送で運ばれるのは前記事で紹介した通りです。

北朝鮮軍の補給は潤沢でシナリオを通して4SPずつ得ることができる一方、韓国軍・国連軍は2.5SPになります。

1SPは1個師団が1ターン全力攻撃を行うことができるくらいの補給量です。補給物資は他にも師団砲兵や軍砲兵などの砲兵隊の砲撃、また自動車化・装軌化されたユニットの移動にあたっては燃料として必要になります。移動用の燃料という点では、北朝鮮は1個戦車大隊と司令部ユニットを除き、全て徒歩ユニットのためあまり考慮する必要はありません。この点、全部隊が自動車化または装軌化されているアメリカ軍が始終移動用燃料を考慮した上で移動しなければならない点に比べると大違いです。

シナリオの最初に与えられている補給物資とあわせ、毎ターン4SPを得ることができるということで、北朝鮮軍はシナリオ期間中を通して攻勢状態を継続できるくらいであり、補給不足とは無縁ということになります。

国連軍の補給は前記事に書いた通り、補給源となる日本からの輸送力が制約条件となります。輸送は海上輸送と輸送機による航空輸送があるのですが、日本国内から国連軍の増援部隊を輸送した場合はその分、前線に輸送できる補給物資が減るというジレンマを抱えています。

航空戦力

制空権は完全に国連軍側にあり、韓国内の基地や日本国内の基地、または日本海に遊弋する機動部隊から攻撃機や輸送機が次々と飛来することになります。ただし航空機による対地攻撃支援は各ターンの天候によって可否が左右され、半分の確率で実施不能になります。

特別ルール

北朝鮮軍にはひとつ面白い特別ルールが適用されます。この「釜山包囲戦(Pusan Perimeter)」という特別ルールでは、北朝鮮軍は馬山から大邱を通って東海岸に抜けるエリアに常に6個師団を投入しておかなければならないというものです。その条件を満たしている限り、北朝鮮軍は毎ターンのイニシアティブロールに+2の修正値を得ることができ、また部隊補充の表も有利なテーブルを用いることができます。一方、満たすことができない場合は、韓国軍・国連軍側の部隊補充や補給運搬が有利になるなど、北朝鮮軍にとってみれば条件を満たさないことによるペナルティが大きく、なんとしても条件を満たす必要がある制約になります。このルールにより北朝鮮軍はシナリオを通して洛東江周辺から部隊を引くことができず、積極的攻勢の姿勢を取り続けることが義務付けられることになるでしょう。

エポック/サンセットゲームズの「朝鮮戦争/KOREAN WAR」でも、この時期の北朝鮮軍は「金日成ライン」というライン内に一定の部隊数を置かなければならないというサドンデス(満たせない場合は北朝鮮の敗北)の条件がありましたが、それと似たルールですね。

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史実

6月末に始まった北朝鮮軍の侵攻の前に開戦3日目にしてソウルを失った後、韓国軍と国連軍はソウルと釜山の中間にあたる大田(テジョン)を中心に北朝鮮軍を迎え撃ちます。韓国軍・国連軍は装備を失う部隊が続出するなど大損害を受け、7月20日、大田を失陥。韓国政府は大邱(テグ)に後退します。

シナリオの題名に登場する「洛東江(ナクトンガン)」は韓国最長の河で、大邱の東方、太白山脈に端を発し、東から西に流れ、大邱のあたりで南に向きを変えます。そのまままっすぐ南へ流れ、東に折れ、最終的には釜山付近で海に注いでいます。韓国軍・国連軍はこの洛東江を天然の防衛線として部隊を配置し、両軍は河を挟んでの対峙となるのです。

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Wikipediaより 安東付近の洛東江

追い詰められたアメリカ軍を中心とした国連軍は釜山に次々と増援や補給物資を揚陸させます。一方の北朝鮮アメリカ軍航空機による交通妨害の元、占領地で強制動員した人夫を駆使して補給を続けます。

北朝鮮軍は8月の間中、洛東江の渡河を含む攻撃を各所で試みるのですが、失敗し続けます。各所で激戦が続きますが、結果的に北朝鮮軍による洛東江を超えての進撃は阻まれまることになります。

9月15日、国連軍による仁川への逆上陸作戦が実施されます。当初、北朝鮮軍前線では「仁川上陸」の件が秘匿されたのですが9月後半には洛東江をめぐる北朝鮮軍戦線は崩壊し、部隊は雪崩をうち後退していくことになるのです。

Wikipediaより このシナリオの終了時にあたる9月上旬時点での戦況図。

 

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シナリオ初期配置。詳細は次回記事にて

(つづく)