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歴史、ミリタリー、ウォーゲーム、ボードゲーム

「SMOLENSK」(MMP)を対戦する(1/2)

MMP社が発売している作戦級ゲーム「OCS」(OPERATIONAL COMBAT SERIES)の中の一作で、独ソ戦初期の中央軍集団における戦いを扱った表題ゲームを4人対戦しました。

 

 

このブログでもOCSのシリーズ作品は数回とりあげています。

「KOREA -Forgotten War-」 朝鮮戦争

「Blitzkrieg Legend」 1940年西部戦線における電撃戦

 

ユニット数が多くはない「KOREA」はまだしも「Blitzkrieg Legend」になるとひとりで一方の軍を担当するのはかなり辛くなります。人の管理範囲を超えるのです。OCSのデザイナ自身もこう言っています。

OCSのプレイには時間がかかります。ゲームのターンを進めていくには、あなたが考えるよりも長い時間を必要とするでしょう。・・OCSの比較的大きめのゲームをプレイするための最善の作は、多人数プレイを行うことです。
ープレイヤーズノートより抜粋ー

 

OCSの特徴

  OCSのルールは以前の記事で紹介しています。またネット上でも良質な紹介記事・プレイ記事が少なくないため参照してください。
今回のプレイにあたって再認識した点も含め改めてOCSの特徴を書くと、次のようになります。

 

  1. 補給ルールが独特
    補給ポイントを補給源から、鉄道・トラック・馬車・飛行機などを用いて前線近くまで運んでいく必要がある
  2. 補給ポイントは、移動(燃料を必要とする装甲ユニット・自動車化ユニットが対象)、戦闘(全部隊が対象。攻撃を行う際だけではなく、防御を行う場合も必要)、砲兵による砲撃の実施、出撃した航空部隊の整備を行った際などに消費される
  3. 弱ZOC、May Attack
    弱ZOCのゲームは少なくありませんが、OCSのZOCは弱ZOCの中でもさらに弱い。歩兵ユニットの場合は実質ZOCはなく、簡単に戦線に侵入される
  4. 自分のターン中に自ユニットを「予備(Reserve)」に指定することができる。予備(Reserve)をうまく使いこなすことはOCSの要所のひとつ。
  5. 各ユニットには練度や士気を表すAR(1~5)が設定されておりARの値についての彼我の差は戦闘解決時に大きく影響する
    OCSの戦闘解決では戦闘力比を求めて解決する前に、奇襲チェックを実施する。奇襲チェックでは攻撃側・防御側のユニットのAR値の差を修正値とすることから、今回のソ連軍とドイツ軍のようにあまりにもAR値の差があると、攻撃・防御とも、奇襲チェックが成功することで、戦闘力比が簡単にひっくり返る可能性がある。もちろんAR値が優位なドイツ軍には良い話ですが、ソ連軍にとっては都度都度の戦闘を行うかどうかの判断にあたって大きな問題となってくるだろう。

本ゲームでの両軍の概観

  ソ連軍は歩兵は師団単位、砲兵は旅団単位、戦車・騎兵などは連隊~師団単位。額面戦力は大きくても練度や士気が最低であることを表すAR=0というユニットやAR=1程度のユニットが少なくありません。特に戦車旅団は数が少ない上に大部分はARが低いです。おそらく装備だけ与えて前線につれてこられたような部隊でしょうか。歩兵師団もAR=1と2が半々くらい。対するドイツ軍のARが軒並み4や5といった数値であることから、ARの値の差により、こちらから攻撃を行なった際に、逆に防御側から奇襲を受け戦闘力の比率を簡単に逆転されてしまう懸念があります。攻撃に際にしてはARが高いユニットを混ぜて実施するなど対策が必要です。
さらに、ソ連軍ユニット全般に足が遅い。移動モードになることで多少は増えるのですが、機動力はないと言って良いでしょう。
師団数は膨大です。太平洋戦域の日本軍と比べると1つの作戦に投入される師団数が信じられないくらい多いです。民兵のユニットも多いです。わずかながらNKVDのユニット(ドイツ軍の武装親衛隊ユニットが黒色であるのと同様、ソ連軍のNKVDユニットは赤色です)も登場します。

  頼みは砲兵旅団。火力26というのはドイツ軍の砲兵ユニットにひけをとらないし、さらにはやたらと数があります。砲撃の解決には通常の戦闘と異なりARの値が関係ないため砲兵ユニットのARの値が低くてもマイナスの影響はない点も良いです。戦闘解決にARが関係ない砲撃は安心して実施できるのです。もちろん砲撃では、通常攻撃とは異なり、相手ユニットを完全に除去するまに至ることは難しいし、戦闘後前進などを行うことができる訳ではありません。ただ、攻撃準備にはいったような敵スタックを混乱させることにより攻撃の出鼻をくじく、という相手からするとイヤな攻撃を行うことができます。

  補給は全般に良好。前線部隊への補給の渡す元となる司令部ユニット、後方の補給源から司令部がある補給集積地まで補給物資を運ぶトラック・鉄道・馬車も数が多いです。毎ターンに支給される補給物資の量もドイツ軍よりも多いくらいで、補給について言えば、ドイツ軍よりも状況は良好です。

  航空ユニットはドイツ軍に比べると数は多くないし、機体の性能の絶対比較ではなく、当時の搭乗員の練度や士気も含めての性能なのだろうと思われますが、性能差もあります。制空権はまだまだドイツ軍が握っていると言ってよいでしょう。

 

  ドイツ軍ユニットは装甲師団の主力ユニットは大隊~連隊単位。歩兵師団は師団単位ですが、後述するとおり連隊レベルまで分割することが可能です。独ソ戦開戦から2ヶ月目とあってまだドイツ軍の部隊は精鋭状態です。部隊の練度や士気を表すAR値は、最低でも3で、ARの最大値である5や4のユニットが大部分です。
装甲ユニットや自動車化ユニットはソ連軍とのAR値の差が大きい事からも、移動フェイズの移動途中で追加の移動力を支払って実施することができる「オーバーラン」を多用することでソ連軍の前線を切り崩していくことになります。一線のスタックがオーバーランを行い、戦線に穴を開け、「予備(Reserve)」に指定されていたユニットが突破フェイズを使って突破するのです。

ただし装甲ユニット・自動車化ユニットは移動を行うには補給ポイントを消費します。戦闘においても同様です(戦闘にあたっては歩兵ユニットもポイントを消費する)。ドイツ軍はこのシナリオにおいて補給状態は、若干ソ連軍に劣ります。前線の進撃速度に後方の補給ネットワークが追いついていない状態とでもいうのでしょうか。

  ドイツ軍の標準的な歩兵師団です。ドイツ軍の歩兵師団は連隊単位に分割して展開することが認められています(ソ連軍の歩兵師団は分割不可能)。これにより広く前線に展開することも可能だし、また後方警備などにつかせることも可能です(ドイツ軍占領地の都市部にドイツ軍ユニットが存在しない場合、パルチザンが湧くことがあります)。

  OCSにおいて鉄道は補給ネットワークを設定するにあたって最重要といいって良い基本のルートなのですが、ソ連国内の鉄道の軌間はドイツのものと異なることから、ドイツ軍の前線後方では鉄道工兵が軌道幅の変換をせっせと行うことになります。

  制空権はドイツ軍が抑えています。戦闘機ユニットの性能を見ると、ドイツ軍の主力のBf109f型が「4」なのに対し、ソ連軍のMig3などの戦闘機は軒並み「2」です。バトル・オブ・ブリテンでは問題となったドイツ機の航続距離の短さも、ここでは問題にはならないようです。ユニットの能力値を見ると、短すぎる航続距離で問題があったBf109よりもソ連軍の戦闘機は軒並み航続距離が短いです。戦闘機以外にももちろんスツーカ(Ju87)もJu88、He111といった爆撃機も登場します。機種毎にユニット化されているため、いずれ両軍の航空機を眺めてみたいです。

 

ヒストリカルな情報

スモレンスクの戦いの流れを説明しようとしましたが、なかなかに複雑なのでいつものwikiを参照してください。

今回行なったシナリオ5「Early August」は、ゲームは8月8日に始まり9月半ばまでの全10ターン*1スモレンスクはシナリオがはじまる直前のタイミングで陥落しており、前線がスモレンスクを超えたところからはじまります。史実ではスモレンスク付近だけでも複数の戦闘が継続的に並行して発生していますが、中でもスモレンスク南東にあるエリニャを巡る攻防が9月にかけて行われ、いったんはソ連軍に奪還されます。

ゲームでは、8月19日のターンにドイツ軍はヒトラーの指示によりごっそりと兵力を抜かれてしまいます。抜かれた先はキエフ包囲や南方軍集団が征くウクライナ攻略です。
あわせてソ連軍側も同じタイミングで兵力を抜かれることになります。

勝利条件は指定された複数の町を、シナリオ終了時にいくつ確保できるかによります。


シナリオスタート時のソ連軍前線をユニットの配置をたどって赤線で書いています。マップは南北が逆なので注意。青字がドイツ占領の主な都市・町、赤字がソ連支配下の都市・町。読み方はいちおうグーグルマップとグーグル検索からとりましたが、原語がロシア語表示なので正確でないかもしれません。
マップ中央を東西にはしっている鉄道と道路が、かつてナポレオンも通ったモスクワ街道になります。
なおタイフーン作戦はこのゲームの期間(1941年9月まで)の後、10月に発動されます。

シナリオ開始時のモスクワ街道以北の北部戦線を中心の状況。上のVASAALマップではユニットがどれほど積み上がっているのかわかりづらいですが、実マップではユニットの密度がわかりやすいです。

 

(つづく)

 

 

 

 

 

第1特集が独ソ戦開戦から本ゲームで扱っているスモレンスクの戦い、キエフ包囲あたりまでを戦略レベルで取り上げています。

独ソ戦の本質を扱った入門書にして最良の書

 

 

*1:ちょっとここは怪しいの要確認です