Their Finest Hour -歴史・ミリタリー・ウォーゲーム/歴史ゲーム -

歴史、ミリタリー、ウォーゲーム/歴史ゲーム/ボードゲーム

「THE PUNIC WARS ポエニ戦争」(BONSAI GAMES)を対戦する(1/2)

「THE PUNIC WARS ポエニ戦争」(BONSAI GAMES)を対戦しました。周囲ではすこぶる評判が良い作品です。コンパクトなゲームながら、大胆なデザインにより見事にポエニ戦争を描き出しています。
ルールは平易ですが若干他ではない概念(戦争の継続とか)もあります。どちらかというと一度経験すると理解できるといった内容ですので、まずはやってみましょう。

 



 

背景 ー 戦争は3回発生した

史実でポエニ戦争は3回発生します。第1次と第2次の間が20年、第2次から第3次の間が50年空いています。第1次ポエニ戦争は23年、第2次ポエニ戦争が17年続いていますので、3回の戦争でかなりの年数が経っていることがわかります*1

第1次ポエニ戦争は紀元前264年から紀元前241年。シチリア島を巡る戦いとなります。ポエニ戦争より以前の時代を扱った「SWORD OF ROME」(GMT)ではシチリア島の西半分をカルタゴ、東半分をギリシャ人勢力が治めていました。ここにローマが介入したことになります。23年にも及ぶ戦争は最終的にローマが勝利を収めますが、途中、アフリカに上陸したローマ軍が迎撃したカルタゴ軍に大敗するという一幕もありました。ハンニバルの父、ハミルカルが登場するのはこの第1次ポエニ戦争になります。

第2次ポエニ戦争は紀元前219年から紀元前201年。ハンニバルによるローマ侵攻を指します。第1次ポエニ戦争後、スペインで兵を養ったハミルカルの意思を継いだハンニバルがスペインにあるローマの植民都市を攻撃することで開戦します。ハンニバルはアルプスを越え、北イタリアに乱入、カンネーの戦いでローマ軍を撃滅します。その後、ローマは持久に入り、ハンニバルの軍も補給の問題から軍を進めきれず、膠着状態に陥ってしまいます。
ローマのスキピオ大スキピオ)がスペインを奪い、北アフリカに侵攻。防衛のため本国に召喚されたハンニバルスキピオザマで戦いますが敗北し、カルタゴはローマとの講和に応じざるをえなくなります。
ハンニバルは戦後、カルタゴの行政の長となり改革に着手、支払不能と思われた膨大なローマへの賠償金を支払うことに成功します。ところが自国内の政争により亡命を余儀なくされ、最後は亡命先で自決してしまいます。

第3次ポエニ戦争はすこし時間を置いた、紀元前149年から紀元前146年に発生します。賠償金を払い終えたカルタゴは海外植民地などを失ったものの経済的な繁栄を取り戻していました。カルタゴと周辺国との諍いに介入する形でローマ軍が侵攻し、包囲されたカルタゴは略奪と破壊の末、滅ぼされ、住人の多くは奴隷として売られたと伝わっています。
なお、ローマの手により、徹底的に破壊した上で、植物のひとつも生えないように、その土地に塩がまかれたという話は後世の創作とのことです。*2

 

ゲームの紹介

負けている側が継戦できなくなると負けが確定

史実で3次に渡る戦争が発生したのにあわせ戦争は3回発生します。どちらかが2勝したところでゲームとしては終了します。

ゲームでは、戦間期を扱うターンはなく、戦争が終了すると戦後処理を行い、すぐに次の戦争がはじまります。

個々の戦争は「講和」か「自然終結」のどちらかにより終了します。

戦争期間中、ターン毎に両プレイヤーは勝利ポイントを計算し、その得失点差を累計していきますが、得失点差が7VPを超えたところで「講和」となります。
「自然終結」ではその時点での勝利ポイントで負けている側が戦争を継続できなくなり、勝っている側が戦争の継続を望まなかった場合に終了します。

戦争の継続可否を説明するために、本ゲームでは「Resource Point」(以後、「RP」)という概念が登場します。「RP」は、戦争開始時にその時点で支配している国・地域・海域のポイントを合計したもので、だいたい3〜5ポイントくらいになるかと思います。RPは、戦争開始時にそのまま1ポイント=1戦力(キューブ1個分)として戦力とすることができます。戦争初期時点では両軍とも戦力は脆弱ですので、戦力の増強できるとう点は非常に魅力的です。ただ、これは罠です。
「RP」にはもうひとつの役割が与えられているのですが、こちらが重要です。ターンを開始するにあたって「RP」が必要となるのです。

VPが負けている側は「RP」を支払うことによって新しいターンを開始することができます。勝っている側が「RP」を支払ってもよいのですが、勝っている側は、その時点で相手よりVPが勝っている訳ですから、わざわざ「RP」を支払うことなく、そのまま今回の戦争を終了させることができるのです。
このため、負けている側は否が応でも「RP」を支払って新しいターンを開始させ、そこで逆転を講じるしか勝利がないことになります。VPで負けている側が「RP」を支払うことができなくなった時点で新しいターンは開始できないことになり、そこで敗北となるのです。「RP」という概念は他のゲームにはない概念のため、最初とっつきづらく感じるかもしれません。

 

アクションを行うインパルスの実施回数はランダム

ターンの中では作戦フェイズにおいて両プレイヤーは動員・移動・戦闘などのアクションを行います。

先攻プレイヤー・後攻プレイヤーが1アクションずつ実施するとインパルスの終了チェックを実施します。その時のインパルス数以下の数字が出た場合、そこでインパルスは終了し、実質的にはそのターンが終了することになります。
インパルスを終了させたくない場合は、貴重な手札を捨てることにより継続させることは可能ですが、手札は通常1、2枚しかないため、ここはかなり悩むところでしょう。
いずれにせよ、ひとつのターンの中の中核にあたるインパルスが何回続くのかはダイスの目に依存していることになります。

 

3回の戦争を通して次のような手順ですすみます。

第1次戦争

 - ターン

    開始フェイズ     …カードを手札に追加する

    先攻決定フェイズ   …「RP」を使ってターンを開始するか決める

    作戦フェイズ

      インパルス

        先攻プレイヤーのアクション

        後攻プレイヤーのアクション

        終了チェック …ダイスにより決める

      インパルス

      ・・・終了チェックで終了するまで繰り返す

    終了フェイズ

 - ターンVPで負けている側がRPを払える限り繰り返す

 - ・・・

 - 戦後処理   …次の戦争に向けてユニット配置などを行う

   (戦間期にあたる処理はありません)

第2次戦争

第3次戦争

 

インパルスの中ではアクションを実施できますが、アクションには次のようなものがあります。

  • 軍団を動員
  • 陸上移動
  • 海上輸送
  • カードの使用

実施できる内容は名称から推測できると思いますが「海上輸送」は説明しておきます。
その名称とおり軍団ユニットを海上を通って輸送することになります。
マップ内にはシチリア島サルデーニャ島などの島がありますし、また相手の本国を突く場合も海上輸送は切っても切り離せません。
通過する海域を支配している場合は、対岸のエリアに直接輸送し上陸させることができるのですが、海域を支配していない場合は輸送途中に1回海上でストップし、次のインパルスでようやく目的地側に上陸することになります。
自軍が支配していない海域を輸送する場合は相手側が「艦隊」カード出すことにより迎撃される可能性があります。
海域の支配と「海上輸送」が大きく関係しているといえます。

 

戦闘は「6出ろ」システム

戦闘システムはシンプルな「6出ろ」システムの変形です。

攻撃側は攻撃に参加する軍団ユニットの数分のダイスを降るのですが、上限が「戦術値」と呼ばれる数値になります。通常の状態では両軍とも「戦術値」は2になります。一部のカードにより「戦術値」は変動します。例えばハンニバルカードが場に出ている状態では「戦術値」は+2になります。通常2個のダイスが、4個になる訳ですから、ハンニバルがいかに強力かがわかるでしょう。

「5」のダイスの目の個数分の軍団ユニットが戦闘不能として戦闘から外されます。「6」のダイスの目の個数分の軍団ユニットは除去されます。

ダイスの目の修正がつく場合がありますが詳細は割愛します。

また戦闘には野戦と攻城戦があるのですが、野戦は同時解決、攻城戦は防御側が先攻して攻撃を行う形式です。

 

カードは自分で選ぶ

カードは両軍とも12枚ありますが、手札に何のカードを加えるかは自分で決めることができます。史実起因のイベントや戦闘時や移動時のボーナス、またキャラクターなどがカードとしてゲームに取り込まれています。代表的なものはハンニバルスキピオといった人物、また海上輸送中の敵ユニットを迎撃する「艦隊」、「攻城兵器」、傭兵などなどがあります。

通常、カードは各ターンの最初のフェイズに1枚ずつ任意に選んで手札にすることができます。例外として、ローマはその時点での勝利ポイントの差分が、0ポイント(カルタゴと拮抗している)か負けている場合、2枚追加させることができます。

カルタゴとローマの相違

ローマとカルタゴの性格づけとしていくつかのルールがあります。

ローマは動員として2ユニットずつ動員できますが配置場所はイタリア半島内に限定されます。一方のカルタゴの動員能力は1個ユニットですが、配置場所は自分の支配が及んでいるエリアであればどこにでも配置ができます。
これはローマが市民軍であったのに対し、カルタゴが傭兵主体の軍隊であったことの違いを表しているのでしょう。ローマは動員をかけた上で遠征地に兵を輸送または移動させる必要があります。一方のカルタゴは遠征地の現地で動員ができるという訳です。

カードについてその時点でローマがカルタゴとVPにおいて拮抗または負けている場合、手札を1枚多く手札に加えることができることを説明しましたが、これはローマが危機管理能力が高く、戦略的な選択肢を多く用意できたことを表しているとしています。

 

ハンニバルのアルプス越え

ハンニバルのアルプス越えを扱ったルールが用意されています。カルタゴ軍だけがアルプスを越えて移動ができ、アルプスを越える際に軍団ユニット毎にダイスを振り、1/3の確率でユニットは除去されますが、生き残ったユニットは、強力なエリート部隊にレベル アップします。エリート部隊は戦闘時のダイスに+1できます。

 

コントラストから遠目には陸上と海域が逆に見えてしまいますが、色が濃い部分が陸上です。赤色のキューブはローマの軍団、青はカルタゴ、黒はカルタゴのエリート軍団(アルプスを超えることができた勇士)です。

 

(つづく)

 

 


 

 

 

 

 

 

*1:第3次ポエニ戦争は両国の軍事的な優劣がついた後に起こった、「大坂の陣」的な戦いであったため前の2回の戦争に比べると期間は3年と短い

*2:戦争に負け軍事力を失ったカルタゴを日本に例えるという風潮は一昔前にありましたが、最近はトント聞かないですね。もちろんアメリカがローマです。