『ASSAULT ON GALLIPOLI』(HEXASIM)は、第一次世界大戦におけるガリポリの戦いを戦術レベルで扱った作品です。タイトルが示す通り、第一次世界大戦において繰り広げられたガリポリ半島における英連邦軍とトルコ軍との戦いを扱っています。

ゲームの紹介
スケール
マップはエリアマップで、ガリポリ半島のエーゲ海側にあたる西岸のオーストラリア・ニュージーランド軍団(ANZAC)の上陸地点を中心とした地域をカバーしています。
登場ユニットの種類とスケールは以下のとおりです。
- 歩兵:大隊単位
- 機関砲および砲兵:中隊単位
- 指揮官:実在の指揮官名が記載。ムスタファ・ケマル・アタテュルク(ケマル・パシャ)も、「ケマル大佐(Colonel Kemal)」として登場し、専用ルールが設けられています。:
- 連合軍側に上陸支援艦船(1隻単位で数隻登場)
ゲームのシーケンス
- イニシアティブの決定
- アクションカードのドロー
- 活性化フェイズ(プレイヤーが交互に以下を選択):
(1)ユニットの活性化(ユニット単位またはスタック単位に活性化)
(2)アクションカードによるイベントの実行(カードの使用)
(3)パス(Killing Time Track(後述)向けのダイスチェックが発生) - 白兵戦フェイズ:
同一エリアに両勢力のユニットが存在する場合、白兵戦を解決
ユニットの活性化
活性化したユニットまたはスタックは、1ターンに1回、以下のアクションを実行できます:
※ 移動により敵ユニットが存在するエリアに入る場合、そのエリアの敵ユニット/スタックから「機会射撃」を受ける可能性があります。
ゲーム構造の特徴(戦術級ゲーム的要素)
本ゲームのシーケンスは、『スコードリーダー』や『ASL(Advanced Squad Leader)』の戦術級ゲームに似ています。*1
『スコードリーダー/ASL』との類似を踏まえた本ゲームの戦闘シーケンスは以下の通りです:
- 準備射撃(移動せずに実施)
- 移動
- 機会射撃(非アクティブ側、任意)
- 前進射撃(移動を行った上で実施。任意)
- 白兵戦
戦闘解決(射撃戦)
ユニットは射程を持ちます。砲兵や機関銃中隊はもちろん、一般的な歩兵ユニットも3エリア先まで射撃による攻撃が可能です。
射撃を行うユニットの火力合計値と同じ数の10面ダイス(d10)を振ります。指揮官ユニットの指揮値は火力に修正を適用します。成功値は「4以下」で、塹壕や地形効果により変動し、与ダメージ数が決定します。通常1回の射撃解決では10個前後のダイスを振ります。
地形効果としては、塹壕、森などの他、高度違いによる修正があります。
戦闘解決(白兵戦)
同じエリアに両軍の部隊ユニットが存在した場合、白兵戦が発生します。白兵戦の戦闘解決は射撃戦とは全く異なるものになり、「白兵戦カード」を使用します。
カードは「銃剣突撃」「潜入」「不意打ち」「襲撃」「前進弾幕砲撃」「予備陣地」の6種類で、火力合計値に応じて配布されます。イニシアティブ側から交互にカードを出し、対抗できなくなった時点で勝敗が決します。
時間処理について:緩めのエリアインパルスシステム
本作のターン終了は、両軍がすべてのユニットを活性化するか、両軍がパスを宣言した場合に発生します。また、「Killing Time Track」により強制終了が設定されています。このトラックはターン開始時に7~10の値から始まり、戦闘解決でダイス目「10」が出るごとに1ずつ減少し、パスを選択した際のダイスチェックでも進行する可能性があります。トラックが「0」になるとターンが終了します。
このシステムはエリアインパルスシステムの一種ですが、即座に手番が終了する厳格なものではなく、トラックにより残り時間が可視化されるため、予見的に対応が可能です。
シナリオ1: The ANZAC Lnading ANZAC軍の上陸
上陸作戦が実施され上陸直後の1915年4月25日‐29日を扱っています。
トルコ軍を担当しました。シナリオはANZAC軍の上陸直後から開始されます。海上には英連邦軍の数隻の艦船が遊弋し、艦砲射撃はかなり強力です。

ANZAC軍(緑系の色)、トルコ軍(茶色)です。
勝敗に関係するVP地点は、青と赤のキューブの地点になります。トルコ軍は青キューブが置かれたエリア2か所を確保する必要があります。
初期配置は両軍とも決まっています。
トルコ軍は後方の砲兵で目標エリアを砲撃し、守備隊を「損耗状態」(反撃不能)にしようと試みます。準備射撃により十分に敵の反撃能力を奪った後、敵エリアに移動し、前進射撃、その後、白兵戦を行う流れです。
対して英連邦軍は艦砲射撃と陸上の砲兵でトルコ軍を攻撃し、トルコ軍が侵入したエリアに隣接するエリアからは歩兵が集中して射撃を行います。
エリア支配は敵を全滅させることでしか変わらないため、目標エリアでの進入部隊の維持が重要なのです。
交互に活性化を行うというシステムのため、自分の手番中に相手に損害を与え、一部のユニットの除去に成功したとしても、続く相手手番のうちに対応されてしまい、元の状態に戻ってしまいます。前線のエリアに欠員が出ると後方から補充の部隊ユニットが送り込まれるし、塹壕マーカーの防御力が低下すると回復させるのです。
塹壕はかなり有効で、塹壕の地形効果(ダイス修正‐2)を使うことができる防御側は射撃戦では有利になります。*2
こうしたことから、攻撃側は防御側に対して、補充能力を超える損害を与えるか、白兵戦で戦力を上回る必要があります。全体のユニット数やその合計の戦力差が小さいため、攻撃の集中や分散が難しい状況です。
航空機や戦車が存在しない時代のため瞬時に特定箇所への集中できる打撃力は砲兵以外にはありません。結果、ゲームの中では攻撃パターンや防御側の防衛力などの黄金律を崩すようなダイス運やカードの使用がもとめられることになります。
なお連合軍は、勝利に必要なエリアの確保後は、「パス」を多用することで、「Killing Time Track」を進める(「パス」宣言時にダイスチェックの結果により、同トラックの数値が減算される)ことを積極的に実施し、時間切れを早める作戦をとっています。
シナリオ2: The Turkish Conter-Attack トルコ軍の反撃
1915年5月18日‐20日
表題のとおりトルコ軍が連合軍の橋頭堡を攻撃するシナリオです。前線の戦力はシナリオ1に比べると少なくなっていますが、両軍とも途中で増援があります。

戦場としてはシナリオ1と同一です。
VPを得ることができるエリアの配置が変わっています。青いキューブが3つ並んで置かれたエリアが争奪のポイントになります。
トルコ軍は隣接エリアに部隊を集結させ、砲撃と周辺エリアからの射撃を畳み掛けます。
ここでトルコ軍は一点失敗をしました。増援の歩兵連隊が後方から移動する途中、遮蔽物がない平地を移動させ、沖合の連合軍艦艇からの艦砲射撃を集中され、壊滅的な損害を被ったのです。
あとの展開はシナリオ1とおおよそ変わりません。
決め手に欠くまま連合軍の依る高地を攻めあぐねるうち、逆に連合軍が出したカードにより、エリア内の全部隊ユニットを「損耗状態」にされ、さらに追い払われてしまいました。
【追記】
書き忘れていましたので追記します。
終盤、トルコ軍の潜水艦カードが連続してドローしたため、外洋から艦砲射撃を行っていたイギリス海軍の巡洋艦を2隻撃沈しました!
感想戦
本作のルール難易度は高くなく、エリアマップシステムによる高いプレイアビリティが特徴的です。
エリアインパルスシステムを採用していますが、ダイスの目によって自分の手番が突然中断されるような厳しいものではなく(下記、エリアインパルスシステムを採用した作品紹介記事を参照)、ターン全体の残り時間(「Killing Time Track」)が減少するだけにすぎません。このため緊張感はエリアインパルスシステムを採用した他の作品と比べ緩やかです。こうした印象もあって、プレイ直後に「X」で「エリアインパルスとしては緊張感が控えめ」と投稿したほどです。
ゲーム展開は、第一次世界大戦の地上戦を再現しており、戦車や航空支援といった打撃力の高い兵器が存在しない時代背景から、戦闘は地味で戦線が動きにくい傾向です。ゲームシステムや戦場の制約もあり、派手な展開は期待できませんが、これこそ第一次世界大戦の地上戦のリアリティとも言えるでしょう。
交互に手番を行うシステムとなっているため、攻撃を実施する側からすると打撃を畳み掛けることが難しく、こちらが与えた損害が相手のターンで回復され、元の状態に戻ってしまう「攻めあぐねる」状況が続きます。増援や補充は有限ですが、両軍の戦力が拮抗しているため、圧力をかけ続けて敵の戦線を崩すことを目指す一方、自軍が先に破綻するリスクも伴います。戦場は狭く、陽動や複数箇所への同時攻撃を行う余裕や戦線の広がりもないため、戦略的な選択肢は限られます。
戦い方には工夫の余地があるものの、戦線を動かすのは容易ではなく、地道に攻め続けることが求められます。この「粘り強い戦い」こそが本作の魅力であり、第一次世界大戦の過酷な戦場を体感できる点で独特な面白さを提供する作品と言えるでしょう。
(終わり)
第一次世界大戦末期(1918年)西部戦線における地上戦を扱った作品です。塹壕戦ではないのですが、本作での戦闘と同様に、準備砲撃、歩兵による突撃という流れが描かれます。また戦車が大々的に登場するのもWWⅠ末期ならではです。
第一次世界大戦初期(1914年)の南東部、ガリツィアでの戦いというマイナーな(ただし動員兵力は膨大)戦線を扱った作戦級です。部隊規模は本作よりも大きいのですが、膠着する戦線という点で共通するものがあります。
以下、エリアインパルス制を採用した印象的な作品の紹介記事です。
今回作品は”緩め”のエリアインパルスシステムを採用していましたが、対極にある、エリアインパルス制を採用した作品としてまず挙げたい一作です。
ダイスの目次第で突然自分の手番が相手側に変わるという仕掛けがあり、ゲーム中、精神がヒリヒリ焼かれ続ける作品です。
押し寄せるベトミン軍、必死に防衛戦を張るフランス軍。エリアインパルス制がうまくとりこまれ、プレイアビリティと独特の緊張感のある展開が楽しめる作品です。
圧倒的なアメリカ軍の攻撃。絶望的な状況でアメリカ軍の攻撃の切れ目を狙って行われる日本軍の夜襲・・。日本軍が登場することもあり、「STRALINGRAD -VERDUN ON THE VOLGA-」とは違った意味でプレイ感が重い作品です。