「Fighting Formations: US 29th Infantry Division」(GMT Games)は、「Fighting Formationsシリーズ」の一作で、第二次世界大戦におけるアメリカ陸軍第29歩兵師団をテーマにした戦術級ボードゲームです。
その斬新なシステムに面食らいつつも、ワクワクしながらプレイしました(そしてこの記事を書いています)。

『FIGHTING FORMATIONS』(GMT)のルールブックを読んでいるが基本システムがよくわからん。プレイブックを見ながら実際に動かしてみるか・・#ウォーゲーム #Wargames pic.twitter.com/JSPpNd33WK
— yuishikani (@yuishikani1) 2025年4月21日
『Fighting Formations: US 29th Infantry Division』を対戦。1944年の西部戦線を小隊単位で描く戦術級ゲーム。ユニークなゲームシステムについて語りたい事は多いが、字数が限られるため詳細はブログで紹介する。ルールは新規性が高くシステマティックに(続#ウォーゲーム #Wargames #ボードゲーム pic.twitter.com/40a7ZIlki2
— yuishikani (@yuishikani1) 2025年5月4日
Fighting Formationsシリーズについて
「Fighting Formationsシリーズ」は本作が3作目にあたります。
2011年に第1作が発表されていますので、比較的寡作なシリーズといえます。以下がシリーズのラインナップです:
Fighting Formations: Grossdeutschland Motorized Infantry Division (2011)
Fighting Formations: Grossdeutschland Division's Battle for Kharkov (2018)
Fighting Formations: US 29th Infantry Division (2025)
1作目と2作目では、ドイツ国防軍の精鋭部隊「グロスドイッチュラント師団」をテーマに、独ソ戦の戦場を扱ったシナリオが収録されています。1作目は1941~1942年、2作目は1943年の戦闘が再現され、時代に応じて車両や火砲などの装備が変化します。一方、3作目の本作では、1944年6月のノルマンディー上陸作戦でオマハビーチに上陸し、その後も西部戦線で戦ったアメリカ陸軍第29歩兵師団が主役です。
GMT Gamesによると、シリーズの今後の展開として、以下のようなテーマが検討されています(未確定):
アメリカ陸軍第1歩兵師団(Big Red One)
ドイツアフリカ軍団(Afrika Korps)
アメリカ陸軍第442連隊戦闘団(442nd Regimental Combat Team)
コマンド部隊(Commando Troops、恐らくイギリス軍)
レンジャー大隊(Ranger Battalions)
特に、イタリア戦線で活躍した日系アメリカ人部隊「第442連隊戦闘団」を扱った作品は楽しみです。ただしこれまでの発刊ペースから3作先となると、登場は20年以上先になるかもしれません!

ゲームスケール
ゲームのスケールは以下の通りです:
1ヘクス=約75メートル
1ターン=実時間で約5分
ユニット=基本的に小隊単位(損害や自主的な分割により分隊規模のユニットも登場)
歩兵ユニットは正方形、車両や火砲は長方形のカウンターで表現され、どちらも小隊または分隊単位です。スケール感としては、1ヘクス=40メートル、1ターン=約2分、1ユニット=分隊/砲1門/車両1両の『Squad Leader』や『ASL』と比べると1サイズスケールが大きいということになるでしょうか。
ゲームシステム
一見、ユニットやマップは一般的な戦術級ゲームと大きな違いはありません。本作の特徴は、ゲームを駆動する独自のシステムにあります。このシステムは、ルールブックを軽く読んだだけでは理解しづらく、付属のプレイブックに記載されたプレイ例を併せて何度か読み込むことでようやく把握できた印象です。ただし、複雑というわけではなく、一度理解すればプレイアビリティは高く、煩雑な手順の他ゲームと比べると軽快に進行します。
もっとも、経験者から直接ルールを教わる方が、ルールブックとにらめっこするよりも早く理解できるかもしれません。
本作の特徴的なシステムを以下に3点挙げます:
- 「Order Matrix(命令表)」と「Initiative Track(主導権トラック)」によるゲームの駆動
- 指揮官を表す「コマンドマーカー」
- 複数種類のダイスを用いた戦闘解決システム
1. Order Matrix(命令表)とInitiative Track(主導権トラック)
本作の核心は、「Order Matrix(命令表)」と「Initiative Track(主導権トラック)」によるゲーム進行です。
「Order Matrix(命令表)」には、アメリカ軍とドイツ軍それぞれに10種類の「Order(命令)」とその発動に必要なポイントが記載されています。たとえば、アメリカ軍では「射撃:2ポイント」「回復:3ポイント」「移動:4ポイント」「前進:5ポイント」など、1~10ポイントで発動する命令が設定されています。ドイツ軍も同じ種類の命令を持ちますが、必要ポイントが異なり、たとえば「移動:3ポイント」「回復:4ポイント」「突撃:5ポイント」となっています。これは各国軍隊の特性を反映した設計で、ドイツ軍は「移動」や「突撃」が容易(低コスト)で、アメリカ軍は「回復」や「大隊支援」がドイツ軍に比べて低いコストになっています。
「Initiative Track(主導権トラック)」は、中央に「0」を起点とし、両側にアメリカ軍とドイツ軍のポイントが伸びるトラックで、「イニシアティブポーン」で現在の主導権を示します。ポーンが自軍側にある場合、そのプレイヤーが命令を発動できます。命令の実行後、使用したポイント分だけポーンが相手側に移動し、移動後のポーンの位置に応じて次の命令権が決まります。
命令表には10個のキューブが配置され、シナリオや各ターンの開始時に10面ダイス(D10)を10回振って位置が決定します。

プレイに用いる「Order Matrix」(中央)と、「Initiative Track」(下部)
写真ではすでに9個までキューブが消費されており、8の欄にのみ残っている状態。
ターンの最初には10面ダイスにより個々のキューブはいずれかの欄に配置され、プレイヤーはそれらを1個ずつ消費することで命令を実施していく。
数値が低い命令は、数値が高い欄に置かれたキューブを取ることで代用できる(その場合、高いほうのポイントを消費する必要がある)。
10個のキューブがすべて使用された時点でそのターンは終了し、次のターンに進む。
ターンの中でプレイヤーがマップ上の部隊ユニットを移動や戦闘、突撃といった操作をしたり、イベントカードをドロー、またはカードを使用するといったことを行うには内容に応じた命令を実施する必要があります。
命令の実施のためには、希望する命令のポイントに対応するキューブ、またはそれよりも高いポイントのキューブを取ります(使用します)。
たとえば「射撃」を行いたい場合、ちょうど「命令表」に「射撃」の位置(アメリカ軍の場合は、「命令表」の「2」の欄)にキューブが残っていればそれを取る。もしキューブがない場合は、それより大きいランクのキューブ(アメリカ軍の場合は、「3」より上の欄」)を取ることで「射撃」の命令を実施することができます。
命令を発動する際、キューブのポイントと命令対象のユニットに応じたポイント(後述の「コマンドマーカー」参照)分、イニシアティブポーンを相手側に移動させ、ポーンが相手側に移動すれば次の命令は相手に、こちら側に残れば続けて自軍が命令を発動できます。
キューブは両軍で共有のため、10個すべてが消費されるとターンが終了し、次のターンで再びキューブを配置します。頻繁に使う低コストの命令(「射撃」「移動」など)は早々に消費されるため、ターン後半では高コストのキューブを巡る駆け引きが生じます。
2. コマンドマーカー
指揮官は「コマンドマーカー」として抽象的に表現されます。「コマンドマーカー」はマップ上の任意の場所に配置され、シナリオで定められた指揮範囲(2~3ヘクス)を持ちます。
命令発動時に命令を実施するユニットごとに必要となポイントは、対象ユニットが指揮範囲内か外かで変化します(当然、指揮範囲内の部隊ユニットに対して命令を実施する際のコストは安く、指揮範囲外のユニットに実施するためにはポイントは高くなります)。
特徴的なのは、コマンドマーカーの運用サイクルです。配置されたターンを含む2ターン後には一旦除去され、保留状態となり、4ターン目に再配置可能となります。シナリオごとにマーカーの総数が決まっており、プレイヤーは配置のタイミングと場所を戦略的に考える必要があります。
なお、コマンドマーカーが単独で置かれたヘクスに敵ユニットが入ると永久除去されるため(指揮官の捕獲や負傷・死亡を表現)、注意が必要です。
3. 複数種類のダイスを用いた戦闘解決
戦闘は主に射撃として処理されます(盤外からの砲撃支援や同一ヘクスでの白兵戦もありますが、割愛)。射撃には対歩兵・非装甲目標用のHE射撃と、装甲目標用のAP射撃があり、ユニットごとにHE射撃力とAP射撃力が設定されています。ここまでは一般的な戦術級ゲームと同様ですが、戦闘解決の手順が独特です。
戦闘解決では、攻撃側と防御側の2回のダイス判定が必要です。通常は10面ダイス2個(2D10)を振りますが、攻撃側のダイスは状況に応じて2D6、2D8、2D10、2D12、2D20に変化します。ダイスの種類が大きいほど防御側の判定を上回りやすくなり、効果的な攻撃となります。このため、戦闘では両軍とも頻繁にダイスを振ることになります。

村の中の拠点(枠が赤いヘックス)を奪い合うシナリオ(シナリオ1)
ドイツ軍のⅢ号突撃砲(分隊規模なので1両)が、ボカージュをはさんでアメリカ軍のM4(小隊規模なので3両)と睨み合う。
中央のヘックスにドイツ軍の丸いコマンドマーカーが配置されている。
(つづく)