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「CONGRESS OF VIENNA(ウィーン会議)」(GMT)を対戦する【2/2】感想戦

 

前記事に続き『CONRESS OF VIENNA』(GMT Games)を扱います。

 

 

 

当初は今回のプレイの様子を記述する予定でしたが、『CHURCHILL』と同様、本作のゲーム展開を文章で描写してもあまり面白くありません。
各ターンで勢力間の争いが最も顕著に現れるのは、外交交渉フェイズでの「論点」チットの奪い合いです。しかし、これはトラック上の小さなマーカーの動きに過ぎず、正直なところ、その様子をレポートしてもあまり面白みに欠けます。 
交マップでの処理の後に続く軍事マップでの処理は、比較的ダイナミックではあります。ただし、これも外交マップでの交渉結果を反映するものであり、ゲームのドラマや緊張感は結局、外交交渉フェイズに集約されてしまうのです。

 

各勢力の状況

ロシア

ロシアを担当しました。

ロシアの勝利ポイント(VP)獲得は、主に占領地の拡大に依存します。4か国の中で生産力が最も低い(「リソース」量が小さい)ため、動員や軍事行動を行う際の配分を慎重に検討する必要があります。

ゲーム開始時、ロシアは軍事国家として、名将クトゥーゾフ(軍事能力+5)がデフォルトで登場します*1。また、プロイセンブリュッヒャーやビューローなども配下として登場します。皇帝アレクサンドル1世はフランスのロシア遠征への復讐心から、平和会議の開催に絶対反対の対仏強硬派です。  

ロシアはゲーム冒頭で北ヨーロッパ中央ヨーロッパの2つの戦域に兵力を展開しており、どちらの戦域でもフランスに対して戦力で優位に立っています*2。この後、フランスの大動員が進行することを考慮すると、戦力優位な序盤に積極的に戦闘を行うのが有利なタイミングと言えます。

しかし、中長期的な対仏戦争を見据えると、休戦中のオーストリアを対仏大同盟に引き込む必要があります。そのためには、ロシア自身も一時的にフランスと休戦しなければなりません。

つまり、ロシアは以下のジレンマを抱えています:  

  • 戦力優位な序盤にフランスに打撃を与え、占領地を拡大し、可能ならポーランドプロイセンを開放して戦力や国力を増強したい。  
  • 一方で、オーストリアやイギリスを加えた対仏大同盟を結成するためには、一度フランスと休戦する必要がある。

ロシアの国別特殊能力は、イニシアティブ決定時に外交力を+1できること、および他国のカードを確認した後に自国のカードを交換できることです。これにより、イニシアティブ決定で有利に立ち回れます。

 

他の三国の状況も記しておきます。

オーストリア

オーストリアはゲーム開始時、フランスと休戦状態にあり、休戦を維持する限り毎ターンVPを獲得できます。短期的には休戦の継続を望む立場ですが、フランスが勢力を回復したり、ロシアがフランスを攻めあぐねることでフランスがVPを獲得し勝利条件を満たすと、本末転倒となります。このためオーストリアも「いつ休戦を解除するか」というジレンマを抱えていると言えます。

イギリス

イギリスはイベリア半島でフランスと対峙しつつ、新大陸では米英戦争を継続中です。米英戦争のためかなりの戦力が新大陸に割かれています。対仏戦争の継続は必要と考えていますが、フランスの相手はロシアやオーストリアに委ねたい意向です。

イギリスは豊富な生産力を活かし、ロシアやオーストリアに軍事援助を行うことができます*3。また、会議の「論点」のひとつとして登場する「イギリスからの援助」をロシアやオーストリアが獲得することで、イギリスプレイヤーの意思に関係なくイギリスは獲得した同盟国に対して援助を行うことが求められます*4

イギリスの独自の利点として、米英戦争勝利後の新大陸エリアや、スペインからフランス軍を排除した後のイベリア半島を占領し続ける限り、VPを獲得し続けられます。
これは他国にはない重要な点で、対仏戦線においてイベリア半島での優位な状況を維持しながら、ロシア・オーストリアの状況を高みの見物で行くのか、積極的に対仏戦線に介入していくのか。

フランス

フランスは本作の「敵役」として、連合国と対峙する孤独な立場にあります。連合国は内部で足の引っ張り合いをすることはあっても、フランス側に立つことはありません。そのため、フランス担当プレイヤーには精神的なタフさが求められるでしょう。

フランスは全5つの戦域に兵力を配置し、大動員で戦力を増強しますが、戦域間のバランスを取るのは困難です。ナポレオンは本作最大の軍事能力を持つ一方、外交ポイントも最も高い指導者カードです。ナポレオンの能力を軍事と外交のどちらに活用するかは重要な判断ポイントではないでしょうか*5

フランスは開始時点で60VPを保有し、勝利に最も近い位置にいます。しかし、サドンデス勝利ラインの80VPまでの20VPを獲得するのが最も難しい勢力と言えるかもしれません。

 

感想戦

AARを書いてもあまり面白みがないと書きましたが、これはゲーム自体が面白くないということではありません。通常のウォーゲームや重量級ボードゲームと比較すると、本作ではマップやボード上で展開される競技はあくまで結果の表現に過ぎず、真の面白さは、その前に繰り広げられるプレイヤー同士の丁々発止のやりとり、本作のテーマが外交であるため「外交戦」と呼べるかもしれません、にあるのではないでしょうか。逆に、外交マップでの争いをカードを使ったチットの取り合いに過ぎない、軍事マップでは戦線が単に前後するだけだと捉えてしまうと、ゲームが無味乾燥に見えるかもしれません。

イベントカードや外交カードの引き、軍事マップ上での戦闘結果判定のダイス目など、ランダム要素は確かに存在しますが、ゲームの主眼はそこにはありません

前作『CHURCHILL』では、敵国である枢軸国をBotとして扱い、プレイヤーを連合国の3カ国とすることで、一見、戦争の勝利を目指す協力ゲームのような装いを持ちながら、実際には3カ国間の深刻な対立を演出していました。その舞台として外交マップがあり、アメリカに対してレンドリースとして資金や兵器をたかりつつ、目先の難しい課題を他国に押し付け、戦勝による実利や戦後の利権獲得のための「論点」の奪い合いがありました。自国に有利な「論点」を獲得して実利を得る一方、不利な「論点」を他国に押し付けて利用されないようにする――こうした駆け引きが中心でした。

本作も、その本質は『CHURCHILL』と変わりません。ただし、対仏連合の国だけでなく、敵国であるはずのフランスを登場させることで、プレイヤー国同士の関係性をより複雑にしています。『CHURCHILL』の3カ国に比べ、本作の登場国の状況はより重層的で、比較すると少なくともドイツ日本はぶっつぶせという点では一致していた『CHURCHILL』の3カ国が一枚岩に見えるほどです。さらに、カードで登場するイベントや人物、マップ構造なども増量・複雑化しており、ドラマ性が大きく向上しています。各国の勝利ポイントの獲得方法を変えることで、こうした立場の違いを巧みに表現しています。

 

(終わり)

 

 

 

 

*1:ただし高齢のため、戦闘参加ごとに死亡判定を行う必要があります

*2:オーストリアは開始時点で中立です

*3:イギリス担当プレイヤーからすると、資金が奪われることになる

*4:『CHURCHILL』ではアメリカがレンドリースでソ連やイギリスを支援する役割を果たしましたが、本作ではイギリスがその役割を担います

*5:他のフランスの将軍たちもカードとして登場しますが、タイミング次第で手元にいない場合があるため、活用が難しい