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『ブラックオーケストラ(Black Orchestra)』(Game Salute)をプレイする

ボードゲームマルチプレイ

 

第二次世界大戦中のドイツを舞台に、ヒトラー暗殺をテーマとした協力型ボードゲーム『ブラックオーケストラ(Black Orchestra)』(Game Salute)をプレイしました。

 

 

ゲームの概要

初版は2016年発売。今回はその後追加されたエキスパンションを含めた構成でのプレイです。本作は史実に材をとった重いテーマを扱いながらも、明確な目標と緊張感のある進行を備えた協力ゲームになっています。

 

プレイヤーキャラクターと役割

プレイヤーはヒトラー暗殺を企てる「共謀者」となり、国防軍・情報部・民間人のいずれかに分類される実在の人物を担当します。キャラクターのバリエーションはかなり多く、史実に名を残した人物から、あまり知られていない人物まで幅広く収録されています。

イベントやアイテムの中には特定の職業でなければ使えなかったり使用時にボーナスがもらえないといった制約が存在するため、キャラクター選択の際には3つの属性がバランスよく揃っている方が、ゲーム運営は安定しやすい印象です。

共謀者には、映画にもなったヴァルキューレ作戦の中心人物であるシュタウフェンベルク大佐や、白バラ運動で知られるゾフィー・ショルなども含まれており、テーマ性の強さを感じさせます。

 

キャラクターのパラメーター

各キャラクターには以下の2つの重要なパラメーターが設定されています。

  • 動機(Motivation)

  • 容疑(Suspicion)

「動機」が低い状態では、手札枚数制約が厳しい、固有能力を使用できない、特定の暗殺手段が使えないといった制約を受けます。そのため、ゲーム序盤ではいかにして早めに動機を高め、行動の自由度を確保するかが重要になります。

動機はカード効果や他キャラクターからの支援、あるいはイベント(例:ユダヤ人迫害を目の当たりにする)によって上昇します。一方で、ゲシュタポからの威圧など意欲を削ぐようなイベントによって低下することもあり、常に安定しているとは限りません。

「容疑」はゲシュタポからの疑念の度合いを表します。行動やイベントによって上下し、最高レベル(Extreme)の状態で「ゲシュタポの手入れ」が発生すると、そのキャラクターは逮捕されてしまいます。

 

マップとナチス高官

マップはベルリン市街の詳細マップと、ドイツおよび占領地を抽象化したポイント・トゥ・ポイント形式のマップで構成されています。キャラクターは移動アクションによって各地点を行き来し、配置されているアイテムを探索・取得します。

アイテムには銃器、爆薬、毒薬など暗殺に直結するもののほか、尋問や危機を切り抜けるための補助的なものも存在します。また、一部の地点には固有効果が設定されており、例えばアウシュビッツではキャラクターの「動機」が大きく上昇する、といった強烈な演出が用意されています。

非プレイヤーキャラクターとして、ヒトラーの他、ゲーリング、ヘス、ゲッベルス、ボルマン、ヒムラーといったナチス高官が登場します。彼らはイベントに応じてマップ上を移動し、同じ地点にいるプレイヤーに対して厄介なペナルティを与えます。

例えば、ゲーリングであればアイテムの破棄、ヒムラーであれば容疑の上昇など、キャラクターごとに異なる嫌らしい効果が設定されています。

落ち着いて雰囲気のある色調のマップ。下はベルリン市街の詳細図
封筒を模したマーカーがアイテム。カラーのポーン(木駒)がキャラクターを表す。
上方にある横に細長い名前がはいったユニットがヒトラーの他、ナチス高官を表す。

 

カードとゲームの進行

ゲームで使用するカードは大きく3種類あります。

  • 共謀者カード
  • 尋問カード
  • イベントカード

共謀者カードはプレイヤーがアクションで引くカードで、「暗殺計画」や「違法書類」などが含まれています。違法書類を所持したままゲシュタポの手入れが起きると、逮捕のリスクが一気に高まります。

尋問カードは、逮捕後に釈放されるまでの間に使用されるカードです。カードに書かれた選択肢について、他プレイヤーと相談することは許されておらず、個人の判断が強く問われます。運良く疑いが晴れることもありますが、多くの場合はゲシュタポとの取引が発生し、ときには仲間を売るという展開もあり得ます。

イベントカードは全7ターンの進行に沿って公開され、歴史的出来事、ナチス高官の移動、そして一定枚数の「ゲシュタポの手入れ」カードが含まれています。

イベントカード例

 

ゲームシーケンス

 

暗殺の実行

暗殺は専用の6面ダイスを複数個振り、「スコープアイ印」の目をいくつ出せるかで成否が判定されます。「スコープアイ印」が出る確率は各ダイス1/6です。振るダイスの数は暗殺手段、アイテム、カード効果によって増加させることができます。

成功に必要な「スコープアイ印」の個数は、ゲーム開始時に設定される難易度(Easy / Standard / Hard)と、その時点での「ヒトラーに対する軍の支持」によって決まります。最低は2個、軍の支持が最大になると7個必要になります。

軍の支持は戦争前半では高く、ドイツが勝利するイベントでさらに上昇しますが、敗北イベントが続くと徐々に低下していきます。そのため、ゲーム開始直後の支持が低いうちか、戦争後半に暗殺を狙う流れになりやすいでしょう。

とはいえ、必要数の「スコープアイ印」を揃えるのは容易ではなく、「共謀者カード」による振り直し効果などを駆使しても失敗することは珍しくありません。万全を期すと同時に、失敗時の次善策を用意しておく重要性を強く感じました。

デザインと質感が良い専用ダイス。スコープアイ印の面が成功。

 

終盤の演出

最終ターンとなる第7ターンでは、連合軍が東西から進撃してくる影響で、キャラクターが移動できるマップ範囲が徐々に狭まります。時間切れが迫る焦燥感を、ルールとマップの両面から表現している点が印象的です。

 

プレイ

今回は3人プレイ。

民間人キャラクターである「ベルリン市警警察本部長ヴォルフ=ハインリヒ・フォン・ヘルドルフ」を担当しました。このキャラクターは、ベルリン市街にいる間はナチス高官と同じ地点にいてもペナルティを受けず、さらにベルリン市街で暗殺を試みる際にはダイスを2個追加できるという特性を持ちます。特にダイス追加は心強い能力と言えます。

若干さえない印象ですが、ベルリン市街内であれば能力を発揮する優秀マン。

 

他の2人は軍人と情報部を担当。銃器を用いた暗殺は軍人である必要があります。

序盤、共謀者たちはマップ内を移動しながら準備を進めます。ナチス高官の移動を避け、ゲシュタポの疑いを招かないように注意深く。
目的は明確で、「動機」を高め、手札枚数を増やすこと。行動の選択肢を広げなければ、暗殺そのものに辿り着けません。
「共謀者カード」に含まれる「暗殺計画」の書類には、列車爆破や毒殺といった手段と、それを実行するために必要なアイテムが記されています。

最初に選ばれたのは毒殺でした。首謀者はヘルドルフ。
ヒトラーの食事に毒を混入させるという、静かな方法です。
結果は失敗でした。十分な数のダイスを振りましたが、必要な目は揃いませんでした。理由は示されず、ただ失敗として処理されます。

暗殺計画は失われ、状況は振り出しに戻りました。
再び計画書を探し、その内容に沿ったアイテムを集め直す必要が生じたことになります。時間と余裕は、確実に削られていきます。

その過程で、ヘルドルフは二度ゲシュタポに逮捕されています。
いずれも取引によって釈放されたが、代償は小さくありません。仲間からの発奮により、再び「動機」を高め、計画を再始動させます。ただ、行動の自由は制限され、次の手入れが現実的な脅威として意識されるようになります。

そうしているうちには戦況は次第に悪化していきます。
ノルマンディーに第二戦線が開かれ、東部ではソ連軍がワルシャワ近郊まで進出しました。敗北を示す報告が重なり、これ以上の戦争継続は国の存亡に関わるという認識が、共謀者たちの間でも共有されます。

新たな暗殺計画やアイテムの収集は困難と判断され、方針が切り替えらます。
国防軍からヘルドルフに銃器が提供され、暗殺の舞台はベルリン市街に定められます。ヘルドルフの特殊能力が効果を出す地理的条件によって、非軍人であることの不利を補う狙いです。

前線での敗報が続くにつれ、国防軍内でのヒトラー支持も低下しきます。機会が着々と近づいている予感です。残された条件は一つ、ヒトラーがベルリンに戻るタイミングだけです。

その機会が訪れると、共謀者たちは同じ地点に集まります。
銃器が渡され、少しでも成功率を高めるための細々としたアイテムやカードが共用されます。

結果は成功。
こうして共謀者たちは、ヒトラーの排除を成し遂げました。

 

今回終了時の状況。
ヒトラーがヨーロッパ要塞を宣言し、ベルリン空襲やワルシャワ蜂起が起こる中、ベルリンに来たヒトラー(写真でポーンが集まっている場所にカードにより誘引された)は、ベルリン市警長官ヘルドルフにより銃で暗殺された。

 

感想

ゲシュタポの存在、頻発する「ゲシュタポの手入れ」、逮捕後の重苦しい尋問、マップ上を徘徊するナチス高官たち、そしてターンとともに進行する戦況。

さらに、強制収容所の存在や、イベントカードに散りばめられたユダヤ人迫害をはじめとするナチスの異常な行動が、通奏低音のようにゲーム全体の雰囲気を形作っています。単なるフレーバーにとどまらず、プレイ中に何度も精神的な重みを突きつけてくる点は、本作ならではでしょう。

ゲームの骨格自体は「マップを移動し、アイテムを集め、条件が整ったらラスボスに挑む」というオーソドックスな構造です。しかし協力ゲームとして、カードやアイテムの受け渡しによって役割を集中させ、暗殺役を明確に決める設計がよく機能しています。

一方で暗殺の難易度は高く、ヒトラーと同じ地点にいるタイミング調整、国防軍の支持状況、十分な準備、そして最終的には運も要求されます。成功したときの達成感と、失敗したときの絶望感の振れ幅はかなり大きめです。

暗殺に失敗しても首謀者が退場しないとか、複数回も逮捕されても保釈されたりなどいやいやゲシュタポはそんなに甘くないだろう、といったツッコミどころはありますが、ゲームのたてつけとして仕方がなかったのでしょう。

イベントカードやマップ、ダイスといったコンポーネントデザインが美しく、テーマの重さを損なわずにゲームとしての完成度を高めている点も好印象でした。

 

補足:

タイトルになっている「ブラック・オーケストラ」は、史実に現れるナチス・ドイツに対する最大級の地下抵抗組織の総称で「赤いオーケストラ(Rote Kapplle)」からとられた造語ではないかなと

 

(終わり)

 

 

残念ながら未プレイですが、同じテーマの作品です。