
SF・戦略級
スペースオペラ宇宙を舞台に銀河規模の反乱を扱った往年のSPI/AVALON HILL社ボードゲーム『FREEDOM in the GALAXY』(日本語名:銀河革命、以降FITGと表記)を対戦しました。星管区ゲーム、大銀河ゲームをプレイしましたので、ゲーム紹介を含めて記事にしたいと思います。
FITGは1979年にアメリカのゲームメーカーSPIが発売し、その後AVALON HILLが引き継いだボードゲームです。往年のウォーゲーム専門誌『タクテクス』でレビューされ、AVALON HILLのカタログでは最高難度の難易度10と評価された作品です。WWⅡものが居並ぶ中に異色のSF作品として掲載されていたことを記憶しているベテランウォーゲーマーも少なくないでしょう。


本作のキャンペーンシナリオにあたる「大銀河ゲーム」のプレイ。
なおマップはプレイアビリティ向上のため、拡大コピーしたものを用いている。
基本情報
| 発売年 | 1979年(SPI版)/1981年(AVALON HILL版)/その後TSR版も発売 |
| デザイナー | Howard Barasch、John H. Butterfield |
| プレイ人数 | 2人(変則的な複数人プレイも可能) |
| プレイ時間 | 星管区シナリオで数時間、大銀河ゲームで10時間以上 |
| ジャンル | SF系ウォーゲーム(重量級) |
SPI版・AVALON HILL版・TSR版の3種類が存在しますが、ハードマップ/ソフトマップの違いなどコンポーネントに若干の差異があるものの、ゲーム内容に違いはありません。TSR版発売以降は長らく絶版状態が続いており、現在に至ります。
舞台は遠い宇宙の銀河。プレイヤーの一方は「銀河帝国」を率い、もう一方は「反乱側」を率います。帝国は圧倒的な軍事力で銀河全土を支配しており、反乱側は少数精鋭のキャラクターたちを使って星系を一つひとつ解放し、勝利ポイントの獲得を目指します。
コンポーネントは当時のSPI社ボードゲームらしい作りで、銀河マップ、ユニットカウンター、アクションの結果判定用カード、キャラクターカードで構成されています。そのボリュームからホビージャパン社による輸入ゲームの中では6,800円と高い部類に属していたように思います。このあたり記憶が定かでありませんので、おぼえていらっしゃる方があればご指摘ください。
現代のゲームのようなミニチュアはもちろん、カラフルなコンポーネントはありません。ユニットやカードも当時の印刷技術のレベルもあって色数は少なく、正直地味です。舞台となる銀河系の多くの星系が描かれたマップも効果的ではありますが、幾何学模様のようなデザインでビジュアルに訴えるところは少ないです。かろうじて、登場するキャラクター一人ひとりにつけられたキャラクターカードにそのキャラのイラストが掲載されていたことだけが、華やかな要素だったかもしれません。このようにプレイヤーの想像力・イメージ力に委ねられた部分が少なくないものの、いったんゲームに入るとそこには壮大な宇宙の物語が広がっていきます。
制作背景:スター・ウォーズとの関係
FITGを語る上で、スター・ウォーズとの関係は避けて通れません。
1977年、ジョージ・ルーカス監督の『スター・ウォーズ』が公開され、世界中に空前のブームを巻き起こしました。FITGはその2年後に発売された作品であり、スター・ウォーズから強い影響を受けた作品として知られています。
「SPIがスター・ウォーズのゲーム化ライセンスの取得を試みたが交渉がまとまらず、独自のSF世界設定の作品として発表した」という話は、タクテクス誌でも触れられていたとして記憶しているウォーゲーマーも多いようです。ただし現在のところこれを裏付ける一次資料は確認されておらず、「業界の噂」の域を出ないということのようです。ともあれ、SPIにとって本作のセールスは好調だったようです。
作中に登場するキャラクターの一部がスター・ウォーズのキャラクターに範を取ったと言われているのは事実で、プレイしてみれば対応関係はすぐに思い当たります。
- アダム・スターライト(Adam Starlight):ルーク・スカイウォーカー
- ジーナ・アドラー(Sina Adora):レイア姫
- ドラキール・グレブ(Drakir Grebb):ダース・ベイダー
- C-3POやR2-D2に相当するロボットキャラクターも、「コンパニオン」と呼ばれるアイテムの一種として登場します*1。
- ハン・ソロに相当するキャラクターは特定の一人には集約されておらず、複数のキャラクターにその個性が分散されているように見えます。
なお、アダム・スターライトとドラキール・グレブの間に父子関係は設定されていません。FITGが発売された1979年時点では、『帝国の逆襲』(1980年)はまだ公開されていなかったためです。

アダム・スターライト:
スターウォーズのルーク・スカイウォーカーに対応するキャラクターですが、能力値は平凡で、”フォース”にあたるような特殊能力はない。
パルプ・マガジン時代の挿絵のような絵柄なのは本作のデザイナーがそういう世代なのでしょうね。なおキャラクターのスペック値はイラスト面の裏面に記載されている。
スター・ウォーズの影響を色濃く受けながらも、FITGはスター・ウォーズの「劣化コピー」ではありませんでした。着想を得た原作へのリスペクトを保ちながら、ボードゲームという媒体で独自の面白さと深みに昇華させた作品として評価できます。
本作が、スター・ウォーズという世界設定の制約を受けずにより大きな世界観で制作できたことは、ゲームデザインとしては非常によかったのではないかと考えます。2000年代以降のスター・ウォーズシリーズが観念論・精神論のような世界観に陥ってしまったことを知っているとなおさらです。
一方で、仮に本作がスター・ウォーズを原作とするゲームであった場合、眠った版権の倉庫の奥にしまわれたままではなく、今もなお遊ばれ続けていたかもしれないと思うと複雑な気持ちもあります。
ゲームシステム:銀河を舞台にした非対称の戦い
FITGの最大の特徴は、帝国と反乱側という「まったく異なる状況と異なる目標を持つ二者」が激突する非対称な関係にあることです。今でこそ非対称ゲームは多数存在しますが、そのような構造をもった作品が少なかった当時作としてゲームへの落とし込みやシステムの組み上げは見事なものがあると考えます。
マップと星系の構造
ゲームの舞台となる銀河マップには、30以上の恒星系(「星系」)がシステマティックなデザインで配置されています。各星系にはひとつ以上の惑星が所属しており(マップ全体で51惑星)、さらに各惑星にはそのサイズに応じて複数の地表エリアが設けられています。星系同士は宇宙船や艦隊によるワープ航法で移動が可能です。各惑星には惑星軌道があり、また宇宙船の性能ぎりぎりの長距離ワープを行った際には航行に失敗し、宇宙のサルガッソー宙域に迷い込んでしまうこともあります。
銀河全体は5つの「星管区」に分かれており、各星管区には複数の星系、各星系には複数の惑星、各惑星には複数のエリアという階層構造になっています。
各星系には人口・工業力・帝国への忠誠度/反乱への支持度などのパラメーターが設定されており、戦略的な価値が異なります。帝国にとっては工業力の高い星系を押さえて艦隊を維持することが重要であり、反乱側にとっては帝国への忠誠度が低く民衆の支持を集めやすい星系を優先的に解放することが鍵となります。
大銀河キャンペーンでは、各星系にランダムに「秘密」チットが割り当てられ、個々の星系にスペースオペラらしい特別なギミックが与えられます。この情報は帝国プレイヤーだけが把握でき、反乱側プレイヤーは実際にその星系に入るまで内容を知ることができません。同様のギミックはエポック/国際通信社(現EDI)の『銀河帝国の興亡』でも採用されていますね。

マップには上図のような「星系」がみっしりと描かれている。
オシリウス(Osirius)星系には、「Icid」「Orlog」「Liomax」の3つの惑星がある。
さらに各惑星にはそれぞれに衛星軌道(Orbit)があり、例えば第2惑星「Orlog」には、3つの地表エリアが存在する。図中の赤い点線は、付近の「星系」へのワープ航路を表す
ターンの流れと両陣営の役割
ゲームはターン制で進行し、シーケンスはシンプルです。各ターンで両陣営が交互にアクションを行います。
帝国側のプレイヤーは、圧倒的な軍事力を背景に銀河各地に艦隊を展開し、反乱の芽を摘んでいきます。しかし銀河は広大であり、すべての星系を完璧にカバーするのは不可能に近く、どこを重点的に守るかの判断が腕の見せ所となります。
一方、反乱側のプレイヤーはそもそも帝国と正面から戦える戦力を持っていません。最初は少数のキャラクターたちを星系に潜入させ、住民の支持を獲得し、地下組織を育て、帝国の目の届かないところでじわじわと解放区を広げていくことになります。いわばゲリラ戦・諜報戦の様相を帯びた戦い方です。
この状況の違いが、両者のゲーム体験をまったく異なるものにしています。帝国側は「支配者」として銀河全体を俯瞰する感覚、反乱側は「秘密工作員」として帝国の隙を突く展開となります。
キャラクターという物語装置
FITGをただのウォーゲームに留めていない最大の要素が、キャラクターの存在です。
帝国軍に10人、反乱側に22人、それぞれ固有のスキルと能力値を持つキャラクターが登場します。ある者は戦闘に優れ、ある者は外交や扇動に長け、またある者は脱出や潜入が得意です。帝国側の総督・将軍クラスのキャラクターたちが反乱側のキャラクターたちの前に立ちはだかります。
反乱側のキャラクターを乗せた宇宙船は、帝国軍艦隊の探知をかいくぐって惑星へと赴きます。そこでは有力なキャラクターを探す*2、アイテムを入手する、情報を得る、サボタージュ活動を扇動する、敵キャラクターを暗殺するといった行動を行います。他にも取れるアクションは複数用意され、どこで行うかによっても取り得るアクションの内容、また成功率が異なってきます。
それぞれの活動はカードによって判定され、結果によっては単にアクションに失敗するだけではなく、凶暴な原生生物や原住民に襲われ戦闘に巻き込まれるなど、負傷や死亡に至ることもあります。
大々的な行動は帝国軍の注意を引くでしょう。惑星から脱出しなければ帝国艦隊が軌道上に殺到し封鎖されてしまうかもしれません。それでも強行脱出を図れば追撃を受けることになります。まさにスター・ウォーズ第1作冒頭のシーンそのものです。宇宙船の性能が低ければ簡単に追いつかれ、キャラクターたちを乗せたまま宇宙の塵になってしまうかもしれません。
潜入に成功すれば反乱の火種が広がり、失敗すれば捕虜となって尋問や拷問を受けることになります。仲間が救出作戦を決行して脱出できるかもしれませんし、そのまま処刑されてしまうかもしれません。こういったドラマが、ゲームの進行に伴って自然と生まれてきます。
最初はスター・ウォーズのキャラクターを通したイメージで見ていたキャラクターも、FITGとしてプレイするうちに、いつしか「映画の誰それ」ではなく「このゲームで自分と一緒に戦ったキャラクター」として記憶に刻まれていきます。そこにFITGというゲームが持つ固有の物語生成力があります。このキャラクター性もこの作品が今もなお愛されている理由のひとつであることは間違いないでしょう。

キャラクター毎に設定されているスペックの種類
同梱されている別冊「銀河ガイド(Galaxy Guide)」には登場キャラが略歴とともに紹介されている

(上の図表にユニットが例示されている)
レイナー・ダーバン:
元帝国軍騎士団長。彼の地位を狙った現帝国騎士団長(ダースベーダーにあたるキャラ)による奸計に陥れられ、反乱軍に加わった。反乱軍では最強の統率力を誇り、特に地上戦闘指揮では無類の強さを発揮する
戦闘システム
大規模戦闘は艦隊戦と地上戦の2段階で処理されます。軍隊ユニットは宇宙艦隊と地上軍を兼ねています。艦隊戦で制宙権を掌握した後、各惑星の惑星防衛機能(Planet Defence Base)を攻略してはじめて、地上戦力として地表エリアを巡って争うという流れになります。
解決はダイスと戦力値の組み合わせによるシンプルな仕組みですが、キャラクターが参加する場合、その艦隊指揮や地上戦闘の能力値が戦闘に大きな修正を与えます。「帝国の大艦隊を前に、たった一人のキャラクターが奇跡的な反撃を成功させる」というシチュエーションがゲームの仕組みとして発生しえます。
またキャラクター同士、あるいはキャラクターと原生動物(各惑星土着のモンスターなど)や原住民といった個人間戦闘もしっかりサポートされています。
数々のSFギミック
随所にスペースオペラ・SF的なギミックが取り込まれているのも本作の魅力です。
反乱軍が帝国(プレイヤー)に秘密裏に設置する「秘密基地」は、その位置が暴露されたとき、ゲームの展開を大きく左右することになります。
先に紹介した星系に配置される「秘密」チットの結果では、星系によって特殊な施設が配置されたり、効果が与えられます。こうした宇宙規模のSFゲームではおなじみの惑星全体がひとつの生命体である、いわゆる「惑星ソラリス」*3的な存在も「秘密」設定のひとつとして登場します。
銀河内には(スター・ウォーズと同様)人類以外の知的種族が存在します。中には複数の星系に勢力を持つ「汎銀河人」と呼ばれる種族が複数おり、それらの星系のひとつで反乱が発生した場合、「ドミノ効果」によって他の星系へと伝染することがあります。
帝国軍だけが建造できる「虐殺兵器(Imperial Atrocities)」もまた魅力的です(特に帝国側としては)。スター・ウォーズにおけるデス・スターに相当しますが、本作では複数の種類が用意されています。
勝利条件
両陣営の勝利は、支配下においている星系によって得られるポイントの積み上げによって決まります。ただし帝国軍には特別な勝利条件として、反乱側のキャラクター全員を排除(死亡または捕虜)することによる勝利も用意されています。反乱側の活動はすべてキャラクターたちが担っているため、人材を根絶やしにすれば反乱そのものが潰えるというわけです。
後継者たちへの影響:FITGが残したもの
FITGは今では入手困難で歴戦のウォーゲーマーにしか知られていない存在ですが、ゲームデザイン史においては確かな足跡を残しています。
最も直接的な後継者として名前が挙がるのは「Star Wars: Rebellion」(1998年、Milton Bradley)、2016年にFantasy Flight Gamesが発売した「Star Wars: Rebellion」(日本語版あり)でしょう。宇宙艦隊とともにキャラクターを中心に据えた非対称なゲーム構造、固有ミッションを持つキャラクターユニット、非対称な勝利条件、銀河規模のマップ管理……これらの要素はFITGが1979年に示したデザインが引き継がれたものかもしれません。
ただし、この継承関係については異論もあるようです。BGGのフォーラムではFITGとの類似を指摘する意見が出るたびにリベリオン側から反論が起き、リベリオンのデザイナー自身も「FITGのことは知らない」と発言しているという情報もあります。スター・ウォーズという同じ世界観をゲームに落とし込めば自然と似たデザインに収斂する、という見方もあり、真相は定かではありません。それでもFITGを知った上でリベリオンを遊べば、その類似に驚かずにはいられません。
再販の可能性と現状
残念ながら現在、FITGは正規の流通ルートで入手することはほぼ不可能です。ヤフオクなどのオークションサイトで時折出品されますが、状態の良いものは相応の価格になることが多く、カウンターやカードの欠損は要注意点です。オリジナルのカードの紙質もあまりよくないので、今になってのプレイにあたっては自作することも必要かもしれません*4。
再販やデジタル化が実現しない背景には、SPI倒産後の権利関係、その後さらに複雑に絡み合った版権の問題など、容易には解決できない事情があるようです。
それでも、FITGの復活を望む声はいまも絶えません。BGGの本作のフォーラムではいまだに多数の意見が交わされていますし、先日、プレイしたよという報告をXで書いたところ、国内ばかりではなく海外プレイヤーからも「いいね」を多くもらったのは驚きでした。根強いファンがいる作品であることは確かなようです。このまま埋もれたままにしておくにはあまりにも惜しい作品ではないでしょうか。

本作の版権は、SPIやAVALON HILL作品の少なくない数の作品がそうであるように、大おもちゃメーカーの巨大な版権倉庫の奥にしまわれてしまっているようです。
(つづく)
銀河を舞台にスペオペからアニメ、SF映画、SF小説をぶっこんだような世界での星間国家間の争いとして扱うマルチプレイゲーム。これも面白いです。
本作のデザイナーのJohn H. Butterfield氏の代表作。
マーケット・ガーデン作戦を扱うガチウォーゲーム。作戦戦術級の傑作と思うのですが、システムが凝りすぎて他に転用が難しいのか、後継作はでていないように思います。なおNES社で予定しているこの作品の再販版の発売は非常に楽しみです。
同じJohn H. Butterfield氏による宇宙開拓史を扱った作品。
内惑星の開発からはじまり、外惑星、さらに太陽系外と展開するのですが、プレイアビリティ重視の超高速な展開と、おもしろさの勘所を押さえたデザインには熟練のワザを見るようです。
多作で知られるJohn H. Butterfield氏の作品をあげていくとキリがないところはありますが、それでも毎度新しいシステムを導入していくるのはすごいです。この作品は第三次ハリコフ攻防戦を扱っていますが、特徴的なチットプルシステムを導入することで、戦闘力比率による戦闘解決というウォーゲームの宿痾のような要素の排除を試みています。