Their Finest Hour -歴史・ミリタリー・ウォーゲーム/歴史ゲーム -

歴史、ミリタリー、ウォーゲーム/歴史ゲーム/ボードゲーム

『日本のいちばん長い8月』(ゲームジャーナル)を対戦する


戦略級・太平洋戦域・ボードゲームマルチプレイ

 

終戦を決めるのは誰か ── 太平洋戦争末期の政争を扱う異色作

太平洋戦争末期の日本を舞台に、国家中枢における権力闘争を描いた異色作『日本のいちばん長い8月』ゲームジャーナル)を対戦しました。本作のゲームシステムは、フランス革命期の政治闘争を扱った傑作フランス革命1789』ゲームジャーナル)をベースとしています。
半藤一利の『日本のいちばん長い一日』から取られたタイトルといい、テーマ設定も含めて非常に好みの作品なのですが、これまでなかなかプレイ機会に恵まれず、今回が初対戦となりました。

 

作品概要

太平洋戦争末期、日本の「中枢」を描く

本作が扱うのは、太平洋戦争末期における大日本帝国の国家中枢での権力闘争です。
首相・東條英機が辞任に追い込まれた1944年7月のサイパン島陥落前後から、終戦となる1945年8月までの期間をゲームとして切り取っています。ゲームは東條英機が政権を持っているところからはじまりますが、彼がすぐに政権の座を降りるかはプレイヤー次第です。

プレイヤーはそれぞれ、政治家・軍人・宮中関係者といった実在の人物を手勢として抱え、国家の進路を左右する政治的・軍事的決断に関与していくことになります。

 

勝利条件とプレイヤーの「使命」── VPだけでは終わらないゲーム

ゲームの勝敗は、終了時までに獲得したVPによって決まります。しかし本作では、全プレイヤーが共通して背負う、もう一つの重いテーマがあります。
それは、「この戦争を、どのような形で終わらせるのか」という点です。

終局の形は大きく二つに分かれます。

  • 終戦ルート
    全5ターンの終了までに、御前会議でポツダム宣言受諾を最終決定し、終戦詔書を発する
  • 本土決戦ルート
    御前会議で本土決戦を採択し、戦闘に突入。連合軍に重大な損害を与えることで、停戦や講和への道を探る(という解釈)

単にゲームとしての勝敗だけではなく、歴史を作っているという構造が、前作にはなかった本作の魅力ではないでしょうか。

 

ゲームシステム概観 ──『フランス革命1789』からの継承と進化

本作のシステムは『フランス革命1789』を基礎としていますが、単なる焼き直しではなく、日本という題材に合わせた調整と拡張が施されています。

まずは、前作から引き継がれている主要要素です。

 

共通するシステム

  1. キャラクターカードを入札し、自分の手勢として獲得していく

  2. キャラクター固有の能力を用いてアクションを実行する

 

一方で、本作独自の要素として以下の点が追加・変更されています。

 

本作独自の要素

  3. 前作の「政体選択」が「首班指名」に置き換えられた

  4. 首班プレイヤーによる「組閣」

  5. 戦闘・軍備要素の拡張(航空攻撃の実施、本土決戦の準備)

  6. 御前会議での終戦または本土決戦の決定

以下、それぞれを見ていきます。

 

システム詳細解説

① キャラクターカードの入札

政治家、軍人(陸軍・海軍、現役・退役)、宮中関係者など、合計30数名のキャラクターがカードとして登場します。各キャラクターには固有スキルが設定されており、入札によって誰を味方につけるかが、そのまま戦略の骨格となります。

② キャラクター能力によるアクション

各ターンのアクションフェイズでは、自分が保有するキャラクターのスキルを使って行動を行います。このあたりの「エンジン部分」は前作と同様で、キャラクターの組み合わせによるプレイ感覚は健在です。

首班指名

各ターン、「首班指名」スキルを持つキャラクターや役職によって、次の首相を投票で決定します。首相候補は限定されており、さらに前任の首相によって次の候補が制限される場合もあります。登場する首相候補は以下の6名です。

自分の手元にある人物だけではなく、他プレイヤーが操作するキャラクターであったとしても、誰を首班に据えるかは、VPの獲得やその後の展開を大きく左右します。

④ 組閣

首班指名されたキャラクターを保有するプレイヤーは、組閣を行います。
任命する役職は以下の6職。

陸海軍系の役職には、現役の大将しか就任できません。また、各役職にはキャラクタースキルとは別の役職スキルが付与されるため、自分の手札内のキャラクターを配置することで、自陣営の活動量を大きく増加させることが可能です。
役職を手元のキャラクターたちで独占することで、多大な効果を得ることもあります。

⑤ 戦闘と軍備

本作では、戦争を扱う以上、軍事要素も大きく拡張されています。
陸海軍関係者や関連役職者は、陸上部隊や航空兵力を増強できます。

  • 陸上部隊
     本土決戦時に、連合軍との戦闘で使用。
  • 航空兵力
     本土決戦前でも、軍令トップの命令で出撃可能。連合軍艦隊に損害を与えます。

戦果はチットで判定され、本土決戦が選ばれた場合にはVPとして最終計算に加算されます。ただし結果にはドローしたチットによって大きな振れ幅があり、0VPということも珍しくありません。特に航空攻撃については、特攻作戦や台湾沖航空戦における信頼度の低い戦果報告を反映して戦果なしというチットが多く含まれます。

⑥ 御前会議と終戦詔書

御前会議には、「重臣」キャラクターと特定の役職者が出席します。
主要なキャラクターは

のいずれかに属しており、ポツダム宣言受諾に必要な票数が集まれば終戦、足りなければ本土決戦へと突き進むことになります。

 

プレイ感と戦略の方向性 ── 毎ターン突きつけられる選択

手札となったキャラクター構成次第で、

  • 誰を首班に据えるべきか
  • 終戦を目指すのか、本土決戦に賭けるのか
  • 軍備拡張にどこまで注力するのか

といった判断が大きく変わってきます。さらに、毎ターン行われるキャラクター入札でどのカードを狙うかという読み合いも重要です。

ルールの補足と小ネタ

前作からの変化点

  • 前作に存在した「処刑」アクションはありません
  • 代わりに「テロ(暗殺)」可能なキャラクターが前作の1人から4人に増加
    反対の意見を持つキャラクターの排除に成功するだけで、首班指名、御前会議など多数決が用いられる際の決定内容に影響を与えることも少なくない
  • 「亡命」に近い要素として「前線派遣」が登場。軍人キャラクターを左遷する形で盤面から排除できます

 

プレイ内容

今回は5人戦でのプレイです。

本作では初期資金は全員同額ですが、キャラクターの価値は一見しただけでは分かりません。政治力が強い人物、首班指名や御前会議などの投票に影響力を持つ人物、軍備を整えられる人物など、役割はさまざまです。このため『フランス革命1789』と同様、キャラクターの優劣の選別ができる経験者ほど入札で有利になる構造になっています。

毎ターン、ランダムに場に出されたキャラクターを順番に競売にかけ、直前の入札額より必ず高い金額で札を入れていきます。つまり、良い人物を取れるかどうかは資金力だけでなく、入札順と読み合いも重要になります。

序盤:小磯の確保と東條体制の継続

序盤、当方が最初に確保したのは首班候補でもある元陸軍大将の「小磯国昭」。首班候補というのは、後述する「首班指名(首相決定)」で実際に首相になれる人物です。
続いて、終戦派の中心人物となる「重光葵」などを手勢に加えました。

各ターンには「首班指名」があり、これは次の首相を投票で決めるフェイズです。第1・第2ターンともに小磯を推しますが、人望不足で票が集まらず、結果として東條英機内閣が続投します。

東條英機を中心とする「東條派」は、陸軍将官を多く集め、本土決戦に向けた部隊動員や軍備拡張を優先して進めていきました。この段階ではまだ「終戦か決戦か」は曖昧で、各プレイヤーともまずは自分の影響力を広げる展開になります。

中盤:政権交代と“冷や飯”状態

第3ターンになると空気が変わります。
このまま東條政権が続けば、東條プレイヤーのVPが伸びすぎる。そう判断した他プレイヤーが結集し、ついに政権交代が発生します。首班に選ばれたのは「米内光政」。

ここで発生するのが「組閣」です。
首相を出したプレイヤーは、陸相海相などの役職を他キャラクターに割り振ります。
役職に就くと追加スキルが得られるため、入閣できるかどうかが得点力に直結します。

ところが当方の問題は、配下に海軍系キャラクターが一人もいなかったこと。米内内閣は海軍中心のため、当方はほとんど行動できず、VPも入りません。いわば「冷や飯」状態です。

唯一の救いが、米内側に適任者がいなかったことで、「東久邇宮稔彦王」に陸軍大臣ポストが回ってきた点でした。もっとも彼自身はVPを生まないため、ゲーム的には苦しい立場でした。

政争:排除と暗殺

米内政権は安定化のため、東條英機をはじめとする東條派閥の陸軍関係者に「前線派遣」を実施します。前線派遣とは、軍人キャラクターを政治の場から追い出し、一時的に無力化するアクションです。これにより、重要な票やスキルを封じることができます。

同時に、別プレイヤーは「テロ(暗殺)」が可能な陸軍将校を集め、内閣関係者への攻撃を開始。その結果、終戦派のキーマンである「豊田副武」が排除され、米内派が行おうとしている終戦に向けた多数派工作への出鼻を挫きます。

軍令掌握と出撃命令

ここで当方は東久邇宮陸相の権限を使い、陸軍側の最高指揮官である「参謀総長」のポストを米内派から奪取します。参謀総長を押さえると、陸軍航空隊を出撃させる権限を持てるようになります。

これにより、連合軍艦隊への航空攻撃を命令。戦果はチットで判定され、将来の本土決戦時にはVPに変換されます。

本来、当方は重光葵近衛文麿といった終戦派を抱えていました。しかしこのまま終戦になると、米内派の勝利がほぼ確定する状況。そこで方針を転換し、東條派と協調して本土決戦路線に舵を切ります。

本作の面白い点は、「思想」ではなく「勝ち筋」で立場が変わるところです。

最終局面:御前会議の一票

最終ターン。
資金をかき集めた米内派が、ついに御前会議の開催条件を満たします。

御前会議は、終戦か本土決戦かを決定する投票を行います。ここで終戦派が規定票数を集められなければ、自動的に本土決戦ルートへ進みます。

当方は配下の終戦派キャラクターすら棄権させ、終戦阻止に全力で動きます。多数派工作が崩れたかに見えたその瞬間、終戦側に最後の一票が投じられ――

御前会議にてポツダム宣言受諾が決定。終戦ルートでゲームは決着しました。

 

感想戦 ── 割り切りの美学が光るデザイン

フランス革命1789』も非常に完成度の高い作品でしたが、本作はテーマ性も相まって、個人的にはさらに楽しめました。
特筆すべきは、その割り切り方です。前線の戦況は一切扱われず、サイパン、フィリピン、硫黄島、沖縄、原爆投下といった戦況を扱うイベントはありません。唯一描かれる戦争要素は、航空兵力による連合軍艦隊への攻撃とゲーム内の選択によって発生する本土決戦のみです。外交的なイベント、例えば、ポツダム宣言に対する「黙殺」や、中立国を介した和平工作への取り組み、ソ連からの宣戦布告といった外交イベントもありません。下で紹介している外交を中心とした政治ゲームである『CHURCHILL』(GMT Games)などとは全くデザイン思想(作品のスコープ)が異なっており興味深いところがあります。

本作では、こうした割り切りの代わりに、国家中枢での政争と権力闘争は非常に生々しく描かれます。支持者を役職に就け、不要な人物は前線派遣で排除する。盤内外で行われる投票工作と根回し・・。

ゲームはキャラクターを中心に展開する訳ですが、キャラクターごとの能力差も大きく、カード知識の有無が展開に直結します。全5ターンという短さも相まって、計画性が問われます。

難易度は低めで、初プレイでも参加しやすい一方、回数を重ねるほど面白さが加速するタイプの作品だと感じました。

(終わり)

 

 

 

今回作品と同一のゲームシステムでフランス革命を描いた

今回の作品とゲームシステムを同一にする作品。こちらもフランス革命に対する大胆な切り取りには感心しました。プレイアビリティは高く、プレイ時間も長くないためとてもプレイしやすい作品です。

 

 

第二次世界大戦末期の連合国側の大国間外交を扱った作品

今回の作品は太平洋戦争末期の日本国内における政争を扱っていましたが、その時、連合軍側が「いかにして日本を降伏させるか」とか「終戦後の極東のあり方」などを議論していた連合国側の外交を扱った作品です。
テーマとして今回作品の状況を反対側から見るような作品と言えますが、もうひとつは日本のゲームデザインと海外(アメリカ)でのゲームデザインの違いを見るような点も興味をそそられます。
こうして並べて見ると、今回作品はシンプルなデザインと言えますがそれでいてもプレイアビリティとゲームとしての面白さが両立していて、非常に素晴らしいと思いますね。

 

 

もし、終戦詔書が出されず、本土決戦が行われていたら・・を扱った作戦級

1945年8月に終戦詔書が出されなかった場合、同年11月に発生することになったアメリカ軍による九州上陸作戦を扱った作戦級ウォーゲームです。今回作品の中でも、陸軍部隊の国内動員、戦闘力が低く武装も十分ではない師団を多く組成する、いわゆる「根こそぎ動員」が扱われていますが、このようにして動員された軍隊がどこまで戦えたのか・・、ほんとうにこうした状況に至らなくでよかったよと月並みな感想ですが、痛感させられます。

 

総理大臣をどのようにして決めるのか?

明治憲法下で総理大臣は天皇の大権による親任という形で選ばれていたため、議会は関与しませんでした。また戦時中は大政翼賛会状態でしたので議会自体は十分機能していなかったことはよく知られています。本作は19世紀のイギリスにおける政党政治を扱った作品です。仕組みとしては理解しているものの、実際の首班指名、議会民主主義、政党政治といった構造の中で、人はどのように振る舞うのか(一般人ではなかなか理解しがたい)が身をもって実感できる作品です。

『VERSAILLES 1919』(GMT Games)を対戦する【修正】

ボードゲームマルチプレイ

 

第一次世界大戦終了後の戦後処理を行う大国間の外交を扱う『Versailles 1919』(GMT Games)を対戦しました。

 

ゲームの紹介

背景

ヴェルサイユ会議といえば、第一次世界大戦後の講和条件を定めるため、戦勝国主導で開催された国際会議として知られています。敗戦国、とりわけドイツに課された講和条約である「ヴェルサイユ条約」は、その後の国際情勢に大きな影響を与えました。膨大な賠償金は後にナチスの台頭、さらには第二次世界大戦の遠因になったとも言える重要な歴史イベントだったと言えるでしょう。

本作『Versailles 1919』のタイトルはこのヴェルサイユ会議に由来していますが、本作が扱っているテーマは単一の会議にとどまりません。第一次世界大戦後という転換期における戦後国際政治全般を、いわゆる「BIG 4」と呼ばれたアメリカ・イギリス・フランス・イタリアの視点から描いた作品です。

戦争は終わったものの、世界は依然として不安定であり、各国の利害や思惑が複雑に交錯する時代が舞台です。その緊張感がゲーム全体を通して表現されています。
戦争と外交が絡む国際会議を題材とした作品としては、本作と同じ Mark Herman がデザインした『CHURCHILL』、さらにそのシステムを発展させた『Congress of Wien(ウィーン会議)』があります。本作は、これらと比べると外交交渉の処理方法や軍事要素の扱いが大きく異なり、より具体的な「問題解決」の積み重ねに焦点を当てたデザインになっています。

 

概要

Versailles 1919』は、第一次世界大戦後のパリ講和会議とその余波を描く、1〜4人用の外交・交渉ゲームです。 プレイヤーはアメリカ、イギリス、フランス、イタリアのいずれかを担当し、世界各地で発生するさまざまな「Issue(問題)」に介入・影響を及ぼしながら、自国の影響力(VP)を高めていきます。勝利条件はシンプルで、ゲーム終了時に最も多くの影響力(VP)を獲得した国が勝者となります。
各国は以下の要素を持ちます。

  • 国家アジェンダ(Strategy Cards)
    各国が目指す外交方針や優先事項を示すカード
  • 影響力(Influence)
    交渉や問題解決に用いるリソース
  • 軍事力(Military Units)
    不安定化する地域に介入するための軍事的存在感
  • 国民の幸福度(Happiness / Unhappiness)
    国内世論の指標。低下すると軍事行動に制約が生じたり、VP(勝利点)に悪影響を及ぼしたりする

 

Issue(問題)カードとその内容

ゲームの中心となるのが「Issue(問題)」カードです。

これらは戦後世界に実際に存在した具体的な外交・政治問題を扱っており、例えば以下のようなテーマが含まれます。

それぞれの Issue カードには、複数の「結論」が用意されており、どの結論を選ぶかによって各国や地域情勢に異なる影響が及びます。

 

ゲームの構造:影響力キューブによる「交渉と入札」

ボード上には複数の Issue カードが並びます。
どの問題から手を付けるか、どこにどれだけ関与するかは、すべてプレイヤーの判断次第です。プレイヤーは、自国の影響力を表すキューブを Issue カードの上に配置することで、その問題への介入・主導権争い(入札)を行います。Issue が「解決」された際最も多くの影響力キューブを置いていた国がその Issue を「解決した国」となります。Issue を解決したプレイヤーは、そのカードに記載された複数の結論の中からひとつを選択できます。

結論の内容によって、

  • 戦略マーカーの獲得
  • 各国の「国民の幸福度」の増減
  • 各地域の安定度(不穏/平和)の変化

といった影響が発生します。

VASSAL版から。
丸付き数字は盤面に元からある記述で処理の順序を表す。
画面左側は「Issue」(横長の大判のカード)とイベントカード(通常サイズのカード)が配置され、丸付き数字1,2が記入された「On the Table」の場所に置かれた「Issue」が決着を待っているものとなる。
右側の上半分は地域毎の不穏状況を表し、プレイヤー国が派兵すると軍隊マーカーを配置する。
右端のカードは、各国の「Strategy Card」(国家アジェンダ)を表す。

 

Issueカードの具体例:ラインラント問題

Issueの例として、「Rheinland」というカードを見てみましょう。

史実におけるフランスのラインラント進駐問題を扱ったカードで、6ポイントと比較的高いポイントを持ったカードです(Issueカードのポイントは3ポイントくらいが標準)。解決したプレイヤーはこの6VPを得た上でさらに、右に表記されている3つの結論のいずれかを選択することができます。

3つの結論とは次のようなものです。

  • ドイツへの残留: 欧州地域の不穏度は下がるが、フランスの幸福度が大幅に低下する
  • フランスによる占領: 欧州地域の緊張が高まる
  • フランスによる併合: ドイツから賠償を得る(ドイツの賠償問題が深刻化することを表している)。イタリアの幸福度が下がり、欧州地域の不穏度が急上昇する

「どの国が得をし(または損をし)、地域や世界がどう変化するか」というジレンマがカード一枚一枚に凝縮されています。

ラインラント問題を扱うIssueカード
こうしたIssueカードが53枚あり、史実からとられた領土問題、民族自決、賠償金といった課題/問題がとりあげられている。結論によってはどの国が得(または損)をして、どのような影響があるのかを見るだけでも興味深いです

 

イベントカード

Issue カードの処理と並行して、半ば自動的に引かれていくのがイベントカードです。
イベントカードには歴史的人物や歴史的事件が描かれており、Issue の解決とは別軸で、突発的な影響や変化をゲームにもたらします。これにより、計画通りに進めていた外交戦略が思わぬ方向に揺さぶられることも珍しくありません。

イベントカードの例。
フリチョフ・ナンセンは、ノルウェーの探検家・学者にして外交官。
ロシア革命や戦争で生じた難民救済を主導し、のちにノーベル平和賞受賞した。
このカード自体は(イベントカードとしては珍しく)良い効果を得ることができる

軍事要素の扱い

本作では、すべての問題が軍事力で解決できるわけではありませんが、一部の Issue やイベントでは軍事力が重要な役割を果たします。各国は同数(3個)の軍事マーカーを持ち、派兵・出兵を行うとして、以下のいずれかのエリアに配置することができます。

  • 欧州
  • バルカン
  • 中東
  • アフリカ
  • 太平洋

Issue やイベントの結果によって、これらの地域の安定度が低下していくことがあり、限界を超えると「蜂起」が発生します。蜂起が発生したエリアでは、自国の権益が失われたり、他国に奪われたりする可能性があります。軍事マーカーの配置は、こうした事態を未然に防ぐための抑止力として機能します。

 

ゲームの終了と勝利条件

Issueカードの中に混ぜられた「終了カード」がドローされ、「On the Table」で決裁されると終了手続きにはいり、用意された Issue カードがすべて消費されるとゲームは終了し、VPの計算が行われます。獲得したIssue自体に設定されたポイントがVPになります。また各国は、ゲーム開始時に選択した国家アジェンダ(Strategy Cards)に沿って Issue の解決や戦略マーカーの獲得を行えていると、追加のボーナスVPを得ることができます。
単なる問題解決の数だけでなく、国家として一貫した外交姿勢を貫けたかどうかが最終的な勝敗を左右する点も、本作の特徴です。

 

日本の存在感

日本も戦勝国のひとつとして登場します。
プレイヤー国ではありませんが、プレイヤー国以外で唯一独自の「国民の幸福度」パラメーターを持つ国として扱われています。

国家アジェンダの中には、日本の幸福度を評価項目に含むものがあり、そのアジェンダを採用したプレイヤーは日本の国内世論を意識せざるを得ません。朝鮮半島問題、山東半島、人種差別、対ソ問題といった Issueがカード化されており、結論次第では日本の幸福度や太平洋エリアの安定度が変動します。
日本が強国として存在感を持ちながらもプレイヤー国ではない点は、当時の国際政治における実質的な発言力を反映しているように感じられます。

 

プレイ

3人プレイでしたので、BIG4の中からイタリアを除いた、英仏米の3国による競合となりました。第一次世界大戦後、孤立主義に傾いたアメリカなので他国とはもっとも利害関係がないだろうということでアメリカを選びました。

開始直後、イギリスは軍隊(マーカー)の1/3を復員させました。世界大戦で肥大化した軍隊を減らすことにより、兵士たちは故郷に帰ることができ、イギリスはその先見的な決断によりVPを得(早めに復員を宣言した国からより高いVPを得ることができる)、国民の幸福度もあがります。
ただこの判断はのちの展開をみると早すぎたかもしれません。

アメリカはVPを稼ぐため、直接自国に関係がない「Issue」にも関与するように「影響力マーカー」を置きます。ただこれはリスクがあり、あまり派手に分散しすぎると、このカードを取りたい、または他国にとらせたくないという場面で入札する余力がなくなります。
このあたりは広く様々なIssueに関わっていくのか、集中して特定のIssueを落とさないようにするのかといった点は戦術になるのだと思われます。

イベントの関係で最初の「蜂起」がヨーロッパの一地方で発生。各国はStrategy Cardを選び、自国の国家アジェンダを決めます。この内容を履行することでVP計算の際に有利になる事項が示されます。

アメリカは「Global Trade:世界貿易)」を取得(場に出たカードの中から選ぶことができる)。産業を興し(工場マーク)、賠償を削減し(グラフマーク)、国民の幸福度を上げ、また世界の不穏度を一定以下に抑える、まさに世界平和を実現し、交易による貼っていを目指そうという内容になります。
以降、アメリカは主に殖産興業施策に打込みます。

この時、おそらくイギリスとフランスは、「植民地主義:Nation Building」と「孤立主義:Isolationnism」を国是としていたようでした(詳細未確認)。

 

大国が動かなくても、ゲームの進行にあわせて自動的に発生するイベントカードによるイベントにより、世界中のあちこちで不穏度が増したり、蜂起が発生したり、それらが鎮圧されたりします。それ毎に地域での優勢を誇る勢力が変わっていきます。

ゲームが進むにつれアメリカの悩みは「国民の幸福度」が下がり続けたことでした。幸福度が一定レベル以下になると軍隊の規模が制約を受け、最終的には軍隊をもてないばかりか、VPのマイナスをかこってしまいます。
下がり局面にはいると取り得る「Issue」についても選択肢が制約をうけてくるようになります。

イギリスとフランスは関係する「Issue」が多いため、互いに交渉を行い、「Issue」の獲得や結論の選択において取引を重ねます。全部取りではなく、お互いに得を分け合うのです。
一定枚数の「Issue」が処理されると山札の中から「Issue」のひとつとして、終了カードが現れます。終了Issueはそれだけで7ポイントの高得点をもったカードです。どの国が落札するか・・

最終的に、アメリカは「工場マーカー」の取得、ドイツの賠償の抑制、また世界平和には成功するものの、ポイントとしては3位になりました。

今回プレイ時の終了時状況

 

感想戦

『CHURCHILL』『Congress of Wien』との違い

『CHURCHILL』『Congress of Wien』との比較という観点ではいくつか挙げられます。

  • 対象となる時代
    ゲームの舞台がまだ戦争中で戦時外交を扱う前二作に対し、本作は戦後処理をテーマにしている
  • 外交システム
    会議で議題を奪い合う構造ではなく、Issue を解決し、その結論まで含めて交渉する
  • 軍事の位置づけ
    戦争中ということもあり、前二作では軍事と外交が不可分だが、本作では抑止力として簡素に扱われる
  • 勝利構造
    本作には交渉はあっても、協力要素はなく、VP による純粋な競争

デザイン思想について

『CHURCHILL』『Congress of Wien』の場合、各プレイヤー国の状況や抱えたジレンマをシミュレートしようとしています。『CHURCHILL』でいうと連合国を形作るプレイヤー国はまず枢軸国に勝利する必要がありますが、枢軸国は強固で例えば「第二戦線の構築」米国からイギリス・ソ連に対する「軍事支援」といった協力関係がなければ、うまく抑え込むことはできません。一方であまりに協力しすぎると、影響国範囲の拡大や各国が持つ国家アジェンダの相違などにより、戦後秩序がそれぞれの国の思惑の元に形作られる懸念があります。ゲーム中でもこうした各国が抱えたジレンマを感じることができるデザインになっていると考えます。

一方、本作は確かに舞台や詳細な設定、また登場する「Issue」や「イベント」類は第一次世界大戦直後に世界が直面した諸問題がとりあげられている一方、参加するプレイヤー国の持つ「影響力キューブ」や「軍事力キューブ」はゲームスタート時点で同数であるというところからはじまります。この点はゲーム的な処理ではあっても、シミュレーションとしてはあまり感心できる処置ではないようです。
扱われる「Issue」やその結論の詳細度(これはかなり感心しました)、また単に議論を獲った獲られたというだけではなくその結論までを扱うことで、条件闘争や代替条件の交渉などができるということで交渉や取引が発生するレベルになっているのに対し、外交として競合するベースは各国同じラインに絶たせるというゲーム的な扱いを行っています。

前者が状況やジレンマのシミュレーションを重視しているのに対し、本作は Issue の具体性を高める一方、それ以外の部分はゲーム的に整理されています。
扱う問題のディテールと、交渉・取引が自然に発生する構造は、本作ならではの魅力だと感じました。

 

結論として

面白かったです。

国家アジェンダを軸に Issue を解決していく構造、そして Issue ごとに結論まで含めて扱う点は非常に優れていました。
第一次世界大戦後の世界がどのような問題を抱え、どのような妥協や判断が積み重ねられていったのかを考えさせてくれる点で、本作は外交ゲームとして高い完成度を持っていると思います。歴史を学ぶ上でも参考になります。

軍事や地域情勢の表現は簡素ですが、プレイアビリティの向上につながり、またその分外交の表現とのバランスが取れており、ルール難易度も比較的抑えられています。

戦後外交や戦間期を扱った作品は決して多くありません。
その意味でも、『Versailles 1919』は貴重で、繰り返しプレイする価値のある作品だと感じました。

 

(終わり)

 

 

 

同じデザイナーによる外交を扱った作品です。ゲームシステムとしての相違については記事内で触れた通りです。

 

『CHURCHILL』と同じシステムを採用して、ナポレオン戦争の終盤を扱った作品です。

 

戦間期ドイツ国内政治を扱ったボードゲーム
ラインラント問題も登場し、賠償金の支払遅延によりフランス軍の進駐が発生するし、アメリカによる賠償金支払猶予など外交面では今回の作品と表裏となる事象が多く描かれます

 

1989年のソ連崩壊以降の欧州情勢をロシアVS欧州という対立軸で扱った作品です。2人用ゲームなので外交や交渉などはありませんが、ヘッドラインの処理が今回作品の「Issue」の扱いににているためあげています。

 

 

 

 

『ブラックオーケストラ(Black Orchestra)』(Game Salute)をプレイする

ボードゲームマルチプレイ

 

第二次世界大戦中のドイツを舞台に、ヒトラー暗殺をテーマとした協力型ボードゲーム『ブラックオーケストラ(Black Orchestra)』(Game Salute)をプレイしました。

 

 

ゲームの概要

初版は2016年発売。今回はその後追加されたエキスパンションを含めた構成でのプレイです。本作は史実に材をとった重いテーマを扱いながらも、明確な目標と緊張感のある進行を備えた協力ゲームになっています。

 

プレイヤーキャラクターと役割

プレイヤーはヒトラー暗殺を企てる「共謀者」となり、国防軍・情報部・民間人のいずれかに分類される実在の人物を担当します。キャラクターのバリエーションはかなり多く、史実に名を残した人物から、あまり知られていない人物まで幅広く収録されています。

イベントやアイテムの中には特定の職業でなければ使えなかったり使用時にボーナスがもらえないといった制約が存在するため、キャラクター選択の際には3つの属性がバランスよく揃っている方が、ゲーム運営は安定しやすい印象です。

共謀者には、映画にもなったヴァルキューレ作戦の中心人物であるシュタウフェンベルク大佐や、白バラ運動で知られるゾフィー・ショルなども含まれており、テーマ性の強さを感じさせます。

 

キャラクターのパラメーター

各キャラクターには以下の2つの重要なパラメーターが設定されています。

  • 動機(Motivation)

  • 容疑(Suspicion)

「動機」が低い状態では、手札枚数制約が厳しい、固有能力を使用できない、特定の暗殺手段が使えないといった制約を受けます。そのため、ゲーム序盤ではいかにして早めに動機を高め、行動の自由度を確保するかが重要になります。

動機はカード効果や他キャラクターからの支援、あるいはイベント(例:ユダヤ人迫害を目の当たりにする)によって上昇します。一方で、ゲシュタポからの威圧など意欲を削ぐようなイベントによって低下することもあり、常に安定しているとは限りません。

「容疑」はゲシュタポからの疑念の度合いを表します。行動やイベントによって上下し、最高レベル(Extreme)の状態で「ゲシュタポの手入れ」が発生すると、そのキャラクターは逮捕されてしまいます。

 

マップとナチス高官

マップはベルリン市街の詳細マップと、ドイツおよび占領地を抽象化したポイント・トゥ・ポイント形式のマップで構成されています。キャラクターは移動アクションによって各地点を行き来し、配置されているアイテムを探索・取得します。

アイテムには銃器、爆薬、毒薬など暗殺に直結するもののほか、尋問や危機を切り抜けるための補助的なものも存在します。また、一部の地点には固有効果が設定されており、例えばアウシュビッツではキャラクターの「動機」が大きく上昇する、といった強烈な演出が用意されています。

非プレイヤーキャラクターとして、ヒトラーの他、ゲーリング、ヘス、ゲッベルス、ボルマン、ヒムラーといったナチス高官が登場します。彼らはイベントに応じてマップ上を移動し、同じ地点にいるプレイヤーに対して厄介なペナルティを与えます。

例えば、ゲーリングであればアイテムの破棄、ヒムラーであれば容疑の上昇など、キャラクターごとに異なる嫌らしい効果が設定されています。

落ち着いて雰囲気のある色調のマップ。下はベルリン市街の詳細図
封筒を模したマーカーがアイテム。カラーのポーン(木駒)がキャラクターを表す。
上方にある横に細長い名前がはいったユニットがヒトラーの他、ナチス高官を表す。

 

カードとゲームの進行

ゲームで使用するカードは大きく3種類あります。

  • 共謀者カード
  • 尋問カード
  • イベントカード

共謀者カードはプレイヤーがアクションで引くカードで、「暗殺計画」や「違法書類」などが含まれています。違法書類を所持したままゲシュタポの手入れが起きると、逮捕のリスクが一気に高まります。

尋問カードは、逮捕後に釈放されるまでの間に使用されるカードです。カードに書かれた選択肢について、他プレイヤーと相談することは許されておらず、個人の判断が強く問われます。運良く疑いが晴れることもありますが、多くの場合はゲシュタポとの取引が発生し、ときには仲間を売るという展開もあり得ます。

イベントカードは全7ターンの進行に沿って公開され、歴史的出来事、ナチス高官の移動、そして一定枚数の「ゲシュタポの手入れ」カードが含まれています。

イベントカード例

 

ゲームシーケンス

 

暗殺の実行

暗殺は専用の6面ダイスを複数個振り、「スコープアイ印」の目をいくつ出せるかで成否が判定されます。「スコープアイ印」が出る確率は各ダイス1/6です。振るダイスの数は暗殺手段、アイテム、カード効果によって増加させることができます。

成功に必要な「スコープアイ印」の個数は、ゲーム開始時に設定される難易度(Easy / Standard / Hard)と、その時点での「ヒトラーに対する軍の支持」によって決まります。最低は2個、軍の支持が最大になると7個必要になります。

軍の支持は戦争前半では高く、ドイツが勝利するイベントでさらに上昇しますが、敗北イベントが続くと徐々に低下していきます。そのため、ゲーム開始直後の支持が低いうちか、戦争後半に暗殺を狙う流れになりやすいでしょう。

とはいえ、必要数の「スコープアイ印」を揃えるのは容易ではなく、「共謀者カード」による振り直し効果などを駆使しても失敗することは珍しくありません。万全を期すと同時に、失敗時の次善策を用意しておく重要性を強く感じました。

デザインと質感が良い専用ダイス。スコープアイ印の面が成功。

 

終盤の演出

最終ターンとなる第7ターンでは、連合軍が東西から進撃してくる影響で、キャラクターが移動できるマップ範囲が徐々に狭まります。時間切れが迫る焦燥感を、ルールとマップの両面から表現している点が印象的です。

 

プレイ

今回は3人プレイ。

民間人キャラクターである「ベルリン市警警察本部長ヴォルフ=ハインリヒ・フォン・ヘルドルフ」を担当しました。このキャラクターは、ベルリン市街にいる間はナチス高官と同じ地点にいてもペナルティを受けず、さらにベルリン市街で暗殺を試みる際にはダイスを2個追加できるという特性を持ちます。特にダイス追加は心強い能力と言えます。

若干さえない印象ですが、ベルリン市街内であれば能力を発揮する優秀マン。

 

他の2人は軍人と情報部を担当。銃器を用いた暗殺は軍人である必要があります。

序盤、共謀者たちはマップ内を移動しながら準備を進めます。ナチス高官の移動を避け、ゲシュタポの疑いを招かないように注意深く。
目的は明確で、「動機」を高め、手札枚数を増やすこと。行動の選択肢を広げなければ、暗殺そのものに辿り着けません。
「共謀者カード」に含まれる「暗殺計画」の書類には、列車爆破や毒殺といった手段と、それを実行するために必要なアイテムが記されています。

最初に選ばれたのは毒殺でした。首謀者はヘルドルフ。
ヒトラーの食事に毒を混入させるという、静かな方法です。
結果は失敗でした。十分な数のダイスを振りましたが、必要な目は揃いませんでした。理由は示されず、ただ失敗として処理されます。

暗殺計画は失われ、状況は振り出しに戻りました。
再び計画書を探し、その内容に沿ったアイテムを集め直す必要が生じたことになります。時間と余裕は、確実に削られていきます。

その過程で、ヘルドルフは二度ゲシュタポに逮捕されています。
いずれも取引によって釈放されたが、代償は小さくありません。仲間からの発奮により、再び「動機」を高め、計画を再始動させます。ただ、行動の自由は制限され、次の手入れが現実的な脅威として意識されるようになります。

そうしているうちには戦況は次第に悪化していきます。
ノルマンディーに第二戦線が開かれ、東部ではソ連軍がワルシャワ近郊まで進出しました。敗北を示す報告が重なり、これ以上の戦争継続は国の存亡に関わるという認識が、共謀者たちの間でも共有されます。

新たな暗殺計画やアイテムの収集は困難と判断され、方針が切り替えらます。
国防軍からヘルドルフに銃器が提供され、暗殺の舞台はベルリン市街に定められます。ヘルドルフの特殊能力が効果を出す地理的条件によって、非軍人であることの不利を補う狙いです。

前線での敗報が続くにつれ、国防軍内でのヒトラー支持も低下しきます。機会が着々と近づいている予感です。残された条件は一つ、ヒトラーがベルリンに戻るタイミングだけです。

その機会が訪れると、共謀者たちは同じ地点に集まります。
銃器が渡され、少しでも成功率を高めるための細々としたアイテムやカードが共用されます。

結果は成功。
こうして共謀者たちは、ヒトラーの排除を成し遂げました。

 

今回終了時の状況。
ヒトラーがヨーロッパ要塞を宣言し、ベルリン空襲やワルシャワ蜂起が起こる中、ベルリンに来たヒトラー(写真でポーンが集まっている場所にカードにより誘引された)は、ベルリン市警長官ヘルドルフにより銃で暗殺された。

 

感想

ゲシュタポの存在、頻発する「ゲシュタポの手入れ」、逮捕後の重苦しい尋問、マップ上を徘徊するナチス高官たち、そしてターンとともに進行する戦況。

さらに、強制収容所の存在や、イベントカードに散りばめられたユダヤ人迫害をはじめとするナチスの異常な行動が、通奏低音のようにゲーム全体の雰囲気を形作っています。単なるフレーバーにとどまらず、プレイ中に何度も精神的な重みを突きつけてくる点は、本作ならではでしょう。

ゲームの骨格自体は「マップを移動し、アイテムを集め、条件が整ったらラスボスに挑む」というオーソドックスな構造です。しかし協力ゲームとして、カードやアイテムの受け渡しによって役割を集中させ、暗殺役を明確に決める設計がよく機能しています。

一方で暗殺の難易度は高く、ヒトラーと同じ地点にいるタイミング調整、国防軍の支持状況、十分な準備、そして最終的には運も要求されます。成功したときの達成感と、失敗したときの絶望感の振れ幅はかなり大きめです。

暗殺に失敗しても首謀者が退場しないとか、複数回も逮捕されても保釈されたりなどいやいやゲシュタポはそんなに甘くないだろう、といったツッコミどころはありますが、ゲームのたてつけとして仕方がなかったのでしょう。

イベントカードやマップ、ダイスといったコンポーネントデザインが美しく、テーマの重さを損なわずにゲームとしての完成度を高めている点も好印象でした。

 

補足:

タイトルになっている「ブラック・オーケストラ」は、史実に現れるナチス・ドイツに対する最大級の地下抵抗組織の総称で「赤いオーケストラ(Rote Kapplle)」からとられた造語ではないかなと

 

(終わり)

 

 

残念ながら未プレイですが、同じテーマの作品です。

 

 

 

『BURNING BANNERS』(Compass Games)を対戦する【4戦目】シナリオ12・17

ファンタジーマルチプレイ

 

『Burning Banners』(Compass Games)を4人で対戦しました。

 

本作は今までも複数回プレイしていますので、ゲーム内容の詳しい紹介は過去記事をご参照ください。

 

種族の紹介

『Notebook LM』でインフォイラストレーションんを作成したら非常に出来がよかったので掲載します。

 

第1戦:シナリオ12「ゴブリン全盛期」

侵略側:シャシュカ王国(ゴブリン)、闇の軍勢
抵抗側:オースボーン(ドワーフ)、東方帝国
担当勢力:闇の軍勢

 

シナリオ概観

シャシュカ王国を構成するゴブリン族が大挙してフィヨルドランドへ侵入しました。フィヨルドランドは滅亡の縁に立たされ、ゲーム開始時点では小島の港を1か所保持するのみという状況です。ゲームにはフィヨルドランドの軍隊の残党が登場しますが、東方帝国のプレイヤーが操作します。
シャシュカ王国は続けて南方の東方帝国領内へ侵攻しようとしたところ、東方からオースボーンの救援軍が到着しました。シャシュカ王国は正面の東方帝国に加え、側面からのオースボーンの攻勢にも対応しなければならないでしょう。

 

闇の軍勢という勢力

闇の軍勢は、本作の中でも特に癖の強い勢力です。

  • 「居住地」をほとんど持たない
    自前の居住地を持たず、他勢力の居住地に生成される「集結地」から兵力を動員します。性質上、ゲリラ的な運用が基本になります。
  • 制限付きだが厄介な兵種構成

     多くの兵種が「野生」タイプで、居住地の占領などに制約があります。一方で「飛行」能力を持つユニットが多く、機動性は高めです。個々の戦闘力は高くありませんが、「集結地」から動員できるため、相手からすると安全な自国内など自由に軍隊が湧いてくることになり、嫌らしい配置が可能です。

  • 代表的ユニット:野ネズミの群れ

     他勢力の一般兵に相当するユニットですが、
    ・耐久力はなく、損害を受けると即除去
    ・しかし「先制攻撃」能力を持ち、攻撃力は黒ダイス1個と強力という極端な性能をしています。どこにでも設置可能な「集結地」から突然現れ、先制攻撃で相手を除去しうるため、対戦相手から見ると非常に鬱陶しい存在になります。

  • 特殊能力「奴隷化(Enslave)」

     成功すると、他勢力の軍隊ユニットを1個支配下に置くことができます。奪われた側が一気に崩れる危険性をはらんだ能力です。
    (他勢力には全く存在しないタイプの能力のため、「闇の軍勢」を担当する中では発動が最も楽しみな技でもあります)。

 

シャシュカ王国の宿命

シャシュカ王国(ゴブリン)は、経済面でも非常にピーキーな勢力です。

  • 他の勢力は支配下の居住地から定常収入を得ますが、シャシュカ王国は中立または他勢力の居住地を占領した際の「略奪」による一時収入のみ
  • さらに、支配下にある居住地1か所ごとに維持費が発生し、これを支払えなくなった時点で王国は崩壊します。
  • 居住地は動員やユニット回復に必須なため、最低1か所は保持せざるを得ず、何もしなくても毎ターン出費が続きます。

結果としてシャシュカ王国は、焼畑農業のように占領と略奪を続けなければ生き残れないという、非常に攻撃的かつ不安定な運命を背負っています。

 

プレイの流れ

マップは縦長で、地形の関係から湾を挟んで上下2つの大陸に分かれています(海上移動は可能)。

下側(南側)の大陸:シャシュカ王国 vs 東方帝国

上側(北側)の大陸:シャシュカ王国 vs オースボーン救援軍

闇の軍勢:南側の港と島嶼部を確保

という構図で戦線が形成されました。

 

今回のゲーム終盤、南側の大陸の状況(上のマップと向きが異なるので注意):

大動員を実施し、戦力を充足させたシャシュカ王国は南下を試みますが、戦力を整えた東方帝国による防衛線を前に前進を阻まれました。進撃の停止はシャシュカ王国の「崩壊」につながります。

茶色:シャシュカ王国(ゴブリン)  水色:フィヨルドランド
紫色:東方帝国  赤色:闇の軍勢

 

結果

定常収入によって安定的に戦力を増強できる東方帝国・オースボーンに対し、シャシュカ王国が新たな居住地を確保できなくなった時点でゲーム終了としました。

戦略の工夫次第で可能性はあるのかもしれませんが、シャシュカ王国を維持しつつ2勢力を同時に相手取るのは相当な高難度に感じられます。

闇の軍勢としても、もう少しうまく介入できれば展開は変わったかもしれませんが、
牽制するには戦力不足でした。

 

 

第2戦:シナリオ17 不死の皇后

侵略側:東方帝国、闇の軍勢
抵抗側:オースボーン(ドワーフ)、フィヨルドランド
担当勢力:オースボーン

 

シナリオ背景とバランス

魔女(本作ストーリーにおける諸悪の根源)に操られた東方帝国の皇后が皇帝を殺害。
東方帝国は侵略側として動くことになります。

一見変則的ですが、正統派の軍事力を持つ「東方帝国」と「オースボーン」がそれぞれの陣営に分かれるため、実はバランスの良いシナリオになっています。

侵略側:
東方帝国(正規軍)+ 闇の軍勢(トリッキー)

抵抗側:
オースボーン(重装・高耐久)+ フィヨルドランド(高機動)

と、役割分担が明確な構成になっています。

参考図:「闇の軍勢」の配置位置が今回は異なりますが、他3勢力については上記の状況になっていました。

※今回「闇の軍勢」は右上の「オースボーン」の勢力圏の下あたりに展開しました。

 

オースボーンという勢力

オースボーンはドワーフ族の国家で、経済力と軍事力を兼ね備えた富裕勢力です。

居住地からの税収に加え、鉱夫ユニットを配置することで鉱山収入を得られます。

一般兵クラスの「鉱夫(Miner)」は戦闘力こそ白1個と最低限ですが、

  • 動員コストが安い
  • 2ステップユニットで打たれ強い
  • 経済基盤にも貢献

と、非常に優秀な存在です。

最強ユニット「Storm Giant」は黒3・白3というゲーム屈指の戦闘力を誇ります。

 

展開

今回はゲーム会のリアルイベントの都合で時間が限られており、各勢力が勢力圏を広げ、本格的な衝突が始まる直前で終了となりました。

今回の終盤図:前掲のマップとは逆向きでオースボーン側から全体を俯瞰しています

東方帝国対フィヨルドランド、オースボーン対闇の軍勢といった対決状態になっています。オースボーンは種族固有の特殊能力カードを入手したことにより、山岳地帯や敵対する軍隊ユニットを無視した高速移動が可能となっており、実はこのとき「Storm Giant」と英雄ユニットのスタックにより、「東方帝国」の首都を急襲することを画策していました。ゲーム終了のため未遂に終わりました。

灰色:オースボーン  水色:フィヨルドランド
赤色:闇の軍勢  紫色:東方帝国

 

まとめ

面白い作品です。比較的手軽なマルチプレイヤーによるファンタジーウォーゲームとして楽しめます。

多彩なシナリオと特色ある種族が登場するマルチプレイヤーゲームで、ルール難易度も高くはありません。コンポーネントも良く、気持ちよくプレイできます。
若干侵攻側の勢力はトリッキーな分、扱いが難しいところはありますが、それでも全体のバランスは良いのではないでしょうか。
Compass Gamesからは種族の追加を行うエキスパンションのリリースが発表されていますので、そのあたりの調整がはかられているとよいかなと考えます。

(終わり)

 

 

 

『Model's Counterback』(Dissimula Edizioni)を対戦する【2/2】

東部戦線・作戦級

 

『Model’s  Counterback』(Dissimula Edizioni)を対戦しました。

 

 

1. ゲーム概要とテーマ

『Model’s Counterback』(Dissimula Edizioni)は、1944年夏、ドイツ軍中央軍集団崩壊後の戦局を扱った作戦級ウォーゲームです。攻勢を続けるソ連軍に対し、モーデル元帥がワルシャワ郊外で機動防御を駆使して反撃を試みる「防御側が主役」の戦いが描かれます。

ソ連軍のスチームローラーに対する機動防御のドイツ軍、と聞くと、鈍重なソ連軍と、少数精鋭で縦横に動くドイツ軍、「柔よく剛を制す」構図を思い浮かべがちですが、本作におけるソ連軍は決して鈍重ではありません。

ソ連軍の主力となる戦車軍団を構成する部隊ユニットは、ドイツ軍の部隊と同程度の機動力を持ち、戦闘力においても見劣りすることはありません。本作のソ連軍は数と戦力、さらに機動力を兼ね備えた、非常に使いやすい戦力として登場します。

一方ドイツ軍には、

  • 活性化における自由度の高さ(ソ連軍は活性化単位が軍団毎に固定)
  • 縦深陣地による損害回避(=後退することでステップロス損害を軽減できるが、ソ連軍は不可)
  • 強力なスツーカによる航空支援(ソ連軍にも砲撃支援があるが射程の制約ため局地的)
  • 特殊能力を持つモーデル元帥ユニット(ダイス振り直しや、活性化済スタックの再活性化等)

といった特徴的な優位点が与えられています。ただし、それらは決して圧倒的優勢といったことはなく、使いこなせなければ、ソ連軍の正面攻撃に押し潰される危険性を常に孕んでいる状態です。

 

2. 両軍の性格とプレイ感

ソ連軍:王道の正面攻撃+軽快な部隊による後方撹乱

ソ連軍は部隊数でドイツ軍より優勢です。ドイツ軍はもはや連続した強固な戦線を構築できるほどの兵力を持たないため、ソ連軍の機動力の高い偵察大隊といった部隊ユニットは、薄い防衛線を容易に突破し、ドイツ軍の背後へ回り込むことができるでしょう。

ドイツ軍が、道路結節点への注意が疎かになっている場合は、一般道路や幹線道路を伝って、一気に後方深く侵入されることになります。本作のソ連軍は、前線を押し潰すだけでなく、後方を荒らすことで勝利を引き寄せる軍でもあります。

ドイツ軍:ソ連軍を止めることはできないが遅らせることはできる・・

ソ連軍の活性化が軍団単位で、かつ軍団同士が協働しづらい関係性であるのに対し、ドイツ軍は未活性ユニットであれば自由に活性化可能です。後半に登場するSS装甲師団と組み合わせることで、局地的な優勢を作り出す余地は十分にあるでしょう

ただし、それは「ここぞ」という一点に限られます。漫然と、または全体で押し返そうとすると、ソ連軍の物量と機動力に飲み込まれかねません。

 

3. 本作を特徴づけるシステム要素

本作の印象を一言で言えば、盤面全体で展開する機動戦といえます。それを強く後押しする仕掛けが、いくつも用意されています。

■ 小さなマップスケールと大きな移動力

  • 1ターン=1日
  • 1ヘックス=2km

という細かいスケールのため、ユニットの移動力は全体的に大きい数値が設定されています。
偵察大隊14、戦車大隊12、機械化歩兵でも10と、道路移動を併用すれば20~30ヘックス以上の移動も珍しくないでしょう。

■ 移動しやすい地形

ワルシャワ郊外という設定上、マップには幹線道路と一般道路が密に張り巡らされています。
道路の消費移動力は次の通り定められており、

  • 一般道路:1/2MP
  • 幹線道路:1/3MP

高速移動が可能なため、部隊は想像以上の距離を一気に移動できます。

■ ZOC拘束の弱さと「離脱」ルール

  • ZOC侵入時:1MP追加、その時点で移動終了
  • ZOCからの離脱:ペナルティなし

さらに一定の移動力を持つ部隊であれば、相手の移動タイミングで相手ユニットが自部隊のZOCに侵入してきた際に、ノーコストで1ヘックス後退できる「離脱」が可能です。しかも回数制限はありません。無軌道に後退するのは得策ではないにしても、下手に相手に拘束されることを避け、自軍に有利な場所へ位置を変えることができます。
このため、戦線は固定化しにくく、毎ターンさらに毎ラウンドで状況が変わる流動的な戦いになります。

■ 強力なイベントカード

毎ターン両軍が引くイベントカードは、局地的ながら局面をひっくり返す力を持つものが多い印象です。
※ オリジナルは「イベント・チット」ですが、プレイアビリティ向上のためチットをカード化してプレイしています。

オーバーランの存在感

移動力が続く限り、何度でも攻撃可能なオーバーランは本作の華とも言える攻撃手段です。防御側も「離脱」で戦闘を回避できるため、戦闘は単発で終わらず、追撃と後退の連鎖になりやすいです。

■ 緩めの補給ルール

補給源につながる道路ヘックスから5ヘックス以内であれば補給下にあると判定されます。道路網が豊富なため、自軍ユニットの周囲6ヘックスを完全に囲まれ包囲状態でもされない限り、補給切れに陥ることはないように思います。
1ターンのスケールが1日という点も補給判定が厳しくない理由のひとつだと思われます。

 

4. プレイレポート

ソ連軍を担当しました。

写真右手が北になります。
マップ上部にある半円状の部分がワルシャワ市街。上端になっている東西に描かれているのがヴィスワ川(Wista)。

オレンジ色の星印で印をつけている勝利ポイント都市はマップ内に8か所あり、ゲーム開始時はすべてドイツ軍の支配下におかれています。

太い線が幹線道路。マップ上方向を左右に走るものから、マップ左下からワルシャワ方向、またマップ右下からワルシャワ方向に走る線の3本がメイン道路となります。
幹線道路以外にも縦横に細い線(一般道路)が走っていることがわかります。

ソ連軍は写真左端から第1ターンに2個戦車軍団、第2ターンに1個戦車軍団が登場。この3個の戦車軍団が主力となる。第7ターンにさらに1個軍団(非自動車化の歩兵)が写真下側(西側)から登場します。

ドイツ軍は第3ターンに第19装甲師団がマップ右上方向から、第4ターンに第5SS装甲師団ヴィーキングがマップ下左方向から、第5ターンに第3SS装甲師団トーテンコップがマップ下右方向からそれぞれ幹線道路をたどりマップ上に現れます。

 

第1ターン(1944年7月27日)

ソ連軍はマップ左端から2個軍団が登場します。
今回、ハウスルールとして、初期配置のドイツ軍はスタック禁止、またソ連軍登場ヘックスへの配置も禁止としました(初期配置条件からソ連軍の登場ヘックスを塞ぐことが可能であったため制約をかけたもの)。

第3戦車軍団(水色のライン)では、最初にドローしたイベントカードの中にあった「タンク・エース」を使い、同軍団の最強ユニットである戦車師団(8-4)に配置し、戦闘修正+4(元の修正値+2にタンクエース効果による+2)という戦闘修正値を得ます。このユニットが除去されない限りこの効果は続くのです。両軍の最強重戦車大隊(ドイツ軍のティガー、パンテル装備の大隊、ソ連軍の場合はJS2)(+3)すら上回るこの修正値は、本作では極めて危険な存在となりえます。

続くソ連軍第2活性化ラウンドでは第8親衛戦車軍団(赤色ユニット)も前進。薄く張られたドイツ軍防衛線を排除すると、「予備」指定されていた移動力14の偵察大隊が道路を使って、一気に前進。ドイツ軍側に対応可能な非活性状態の部隊ユニットがなかったことから、次ターンにはワルシャワ蜂起が発生する条件となる蜂起ラインを越えることが確定的となりました。

第1ターン終了時:
ソ連軍の2個戦車軍団がマップ左端より侵入。ソ連軍の偵察大隊のひとつがPraga付近に接近。ドイツ軍ユニットは明灰色のユニット(活性化済を表すトラックのシルエットが描かれたマーカーが載っている)

 

第2ターン(1944年7月28日)

第8親衛戦車軍団の偵察大隊が蜂起ラインを突破し、第3ターンからのワルシャワ蜂起が確定します。
同軍団の主力はドイツ軍の部隊ユニットを排除しつつ、道路移動を最大限活かしながら、Praga(ワルシャワヴィスワ川西岸地区)外縁まで進出します。

第3戦車軍団の「タンクエース」師団は、移動力の続く限りオーバーランを連続して実施します。3回目の攻撃ではVP地点 Minsk Mazowiecki のドイツ軍守備ユニットを攻撃し、さらに同市街を越えた実に4回目の攻撃でようやく停止するほどの暴れぶりを見せました。
Minsk Mazowiecki はその後、後続の第3戦車軍団主力により包囲攻撃を受け陥落しています。

ドイツ軍はバラバラと到着する増援ユニットから、ワルシャワ蜂起発生にあたって除去(蜂起の鎮圧に投入されるということで盤面から除去)されるユニットを確保し、Pragaの防御を固めます。

第2ターン終了時:

 

第3ターン(1944年7月29日)

本作では各ターンの先攻はソ連軍に固定されており、常に先行するソ連軍がターン開始時の主導権を握る展開になります。

第8親衛戦車軍団はワルシャワへ突入するのではなくPragaを左手に見ながら、北上し、Radzymin、Nieporet付近の渡河点ヘックスといった他のVP地点を目指します。
Pragaの市街にドイツ軍が対戦車砲部隊を混在させ、陣地構築したハイスタックをいくつも作ったことにより、無理攻めによる損害と部隊の拘束を嫌ったのです。

補足:ワルシャワ蜂起前後
史実でもソ連軍はPraga外縁まで進出した後、7月29日に攻勢停止命令を出している。
政治的な理由が主と言われるが、Pragaへの本格侵攻は9月10日と約1ヶ月後に先送りされた。

ドイツ軍はもともとPraga北側付近で戦線を張り、ソ連軍の北上を避けることを企図していたようですが、ソ連軍先鋒の侵攻が早かったことから、マップ北側より増援で到着した第19装甲師団もRadzymin(VP地点)等の防衛に送り込むしかなかった。

第3ターン:
ソ連軍第8親衛戦車軍団はParagaへの攻撃は避け、そのまま北上し、RadzymiやNieporet方面へ向かいます。後続の第16戦車軍団もそれに続きます。
ソ連軍第3戦車軍団は、第4ターンにマップ左下からドイツ軍の強力な増援である第5SS装甲師団が進出してくるのに備え、Minisk Mazowieckiの防御を固めます。

第4〜5ターン(1944年7月30日~同8月1日)

ソ連軍の先鋒となった第8親衛戦車軍団とそれに続いた第16戦車軍団とともに、北西に進路を取り、Radzyminを攻撃、さらに北側から登場したドイツ軍第19装甲師団とNieporet付近の渡河点(VP地点)を巡って激突しました。ドイツ軍は森林や湿地ヘックスを巧みに使いながら戦線を張り、スツーカを使った対地支援を執拗に行うことでソ連軍を悩ませますが、押し切られ、渡河点(VPヘックス)はソ連軍の手に落ちました(第5ターン)。


第5SS装甲師団ヴィーキングは第4ターンにマップ西端(写真手前側)に登場することが可能でしたが、登場タイミングを1ターン遅らせることで、登場位置を北側のRadzyminに続く街道に変更しました。
これによりソ連軍第3戦車軍団が位置していたMinsk Mazowiecki への圧力が減り、代わりにRadzyminへの圧力が強まることが必至となります。
ソ連軍は第3戦車軍団をRadzyminへ向かわせ、ドイツ軍の第5SS装甲師団ヴィーキング、第3SS装甲師団トーテンコップ(第5ターンに登場)の最強2個師団とソ連軍の2個戦車軍団がRadzymin付近で激突することになるのです。

第4ターン:
Radzymiは第8親衛戦車軍団の攻撃により陥落。第16戦車軍団、また第8親衛戦車軍団の一部はNieporetの周囲に展開するドイツ第19装甲師団他を攻撃しました。

 

第6ターン(1944年8月2日)

Radzyminにおける2個のドイツSS装甲師団との激突が予想される中、ソ連軍はRadzyminを堅守すべきか、いったん引くかを迷いますが、VP確保を優先しRadzymin周辺を強化します。

一方、Nieporet周辺のVPヘックスも確保済ですが、こちらはドイツ第19装甲師団が執拗に絡んでくることから、ソ連軍(第3戦車軍団中心)は、同師団の後方に部隊を迂回させ、北上を目指します。

SS装甲師団ヴィーキング、トーテンコップがマップに登場し、Radzymin付近でソ連軍と激突、ソ連軍防衛線は押し込まれました。ただしドイツ軍も戦力分断を恐れ、オーバーランの使用には慎重のようです。

コラム:勝利条件

ゲーム終了時のVP獲得状況による

マップ上には8か所のVPヘックスが存在し、この時点でソ連軍は4か所(Minsk Mazowiecki の2か所、Radzymin、Nieporet付近の渡河点)を確保済であるためドイツ軍と同点の状況ドイツ軍はPragaの3か所と北方の1か所を確保中。
他にはドイツ軍がスケジュールとして決まっている他戦域や蜂起鎮圧への戦力引き抜きに対応できない場合のペナルティがある

 

というところで時間切れ終了。両軍のほとんどの戦力が登場する中、残り4ターンがどう展開するのか読めない状況です。

「タンクエース」1枚、また戦線を張れないにしても部隊ユニットの位置ひとつで間隙を突かれ、移動力の大きさゆえに主戦場が短期間で南から北へ移っていきました。
こうしたダイナミズムこそが、本作の魅力となっています。

第6ターン終了時:
ドイツ軍のSS師団2個が到着し、Radzymiへの攻撃を開始します。
ソ連軍はMinsk Mazowiecki方面から第3戦車軍団の主力を急ぎ移動させます。各軍団の所属部隊がバラバラになりかけていますので、この後のターンにおいて課題となった可能性があります。

 

(終わり)

 

 

 

 

 

2025年はこんなゲームをプレイした!(ウォーゲーム)

 

 

2025年も12月に差しかかろうとする11月末日、ウォーゲーム界隈では大きなニュースがありました。

『レッドサンブラッククロス』(以下、RSBC)の再販です。
非常に喜ばしい知らせである一方、同時に伝えられた報として『レッドサンブラッククロス2』(以下、RSBC2) の制作中止が明らかになりました。

 

RSBC2中止については従来より「実現は難しいかもしれない」という印象が拭えなかった一方でどこか期待していた部分もありました。今回の決定は「さもありなん」と納得しながらも落胆も含んだ複雑な思いです。

オリジナル版が発売された当時のように、ビッグゲームが乱発され、プレイヤー層がそれを享受していた時代とは状況が異なります。現代において、あのスケールの作品をどうアップデートし、再構築するのかという方向性を決めるだけでも困難が予想されます。

資金面はクラウドファンディングなどで解決の道筋がつく可能性はありますが、作品として作り上げるための時間と情熱は、他から調達したり代替したりすることが難しいリソースです。ある種カルト的な人気を持つファンを満足させつつ、現代的な装いや、今この時代にリメイクする意味合いを持たせるだけの情熱とエネルギーを注ぎ込むのは、もはや困難だったのだろうと想像します。一種さみしい思いを感じつつも、この幻となった作品を見送りたいと思います。

 

 

一方で再販が決まったRSBCには期待しています。ゲームジャーナル誌では、『江戸幕府の黄昏』や『激闘関ヶ原』のように再販にあたりコンポーネント刷新した実績もあり、期待値は自然と高まります。

とはいえ、あまりハードルを上げすぎても仕方ありません。オリジナル版の踏襲であったとしてもまったく問題ありません。なお再販版RSBCはそれなりの価格になるのではと想像しています。

再販にあたり期待したい要望は以下のとおりです。

  • エラッタの対応、ルールの不明瞭部分の明確化

  • FAQやリプレイ、プレイ例の充実によるプレイアビリティ向上の支援

  • 一部シナリオ設定の見直し: 設定がおかしい(意図的か判然としない)部分の精査

また、本作の魅力のかなりの部分を占めていたヒストリカルノート類は、残す方向で検討していただくと、コレクション性がさらに高まると考えます。

(補足) 後日、関係者から設定資料系は収録するとXで発言がありました

 

 

  • 2025年 プレイまとめ
    • ■ Fighting Formations: US 29th Infantry Division(GMT Games)
    • ■ LITTORAL COMMANDER THE BALTIC(The Dietz Foundation)
    • NAPOLEON’S TRIUMPH(Simmons Games)
    • ■ 第五次辺境戦争(IED/GDW)
    • ■ Model's Counterback(Dissimula Edizioni)
    • 江戸幕府の黄昏(ゲームジャーナル
    • ■ CONGRESS OF VIENNA(GMT Games)
    • ■ ARDENNES II(Multi Man Publishing)
    • Bulge 20: The Ardennes Offensive(Victory Point Games / ボンサイゲームズ)
    • ■ 九州侵攻 オリンピック作戦 Operation Olympic Kyushu 1945(ボンサイゲームズ)
    • ■ STORM OVER JERUSALEM(Multi Man Publishing)
    • ■ Battlefields of the Napoleonic Wars(Ingenioso Hidalgo)
    • ■ 独ソ電撃戦(国際通信社/IED)
    • 関ヶ原(エポック/サンセットゲームズ)
    • ■ LIBERTY ROADS(HEXASIM)
  • 2026年にむけて

 

2025年 プレイまとめ

さて、本題に戻ります。

2025年にプレイした作品数は30本強、ブログ記事は約50本と、昨年(35作品・50本)とほぼ同等のペースでプレイした一年でした。

以下、特に強く印象に残った作品を記載します。なお紹介は順不同です。

表示しているアイコンは、作品の特徴として評価したポイントを表しています。

 ゲームメカニズムに特徴

シチュエーションや設定が魅力(個人的好みがはいります)

 プレイアビリティが高い

難易度が高い

定番作品

 

■ Fighting Formations: US 29th Infantry Division(GMT Games)

 第二次世界大戦西部戦線を舞台にした戦術級ゲーム。シリーズ3作目。1・2作目は東部戦線を舞台にしていました。

最大の特徴は「アクションポイント」という独自のメカニズムにあります。敵味方が、種類と使用回数があらかじめ制限されたアクションというリソースを奪い合う仕組みで、ウォーゲーム的なシミュレーションの観点から見ると「これは何を再現しているのか?」と不思議に思うかもしれません。メカニズムとしてはユーロゲームのワーカープレイスメントに近く、実施するアクションを奪い合うという盤外でのプレイヤー同士の駆け引きが生まれるのが面白いところです。結果として「これはこれでアリ」と納得させられる魅力を持っています。
アクションポイント制というメカニズムを除けば、戦術級ウォーゲームとしては軽快な印象です。もう少しやりこんでこの「軽やかさ」の正体を探りたいところです。

 

■ LITTORAL COMMANDER THE BALTIC(The Dietz Foundation)

 2030年のバルト海での米露衝突を扱う作品。盤面で展開されるユニットの動きよりも、事前に行うデッキ構築とカードを使ったプレイが主役ではないかという、主客転倒した感もあるゲームシステムが特徴です。

限られたポイントで最適な編成を選ぶ必要があり、対応策(さらには対応策を複数用意しておく必要がある)を読み違えると途端に打ち手が尽きる厳しさがあります。

前作(INDO-PACIFIC)ではそこまでの強い魅力を感じなかったのですが、「BALTIC」で、カード和訳や読み込みを進めたところ、面白みが一変。「カードを読み込んだぶんだけ面白くなるタイプのゲーム」だと言えるでしょう。

 

NAPOLEON’S TRIUMPH(Simmons Games)

 アウステルリッツの戦いを扱うエリア方式の作戦級ゲーム。
細長い積み木のユニットと美しいエリアマップが特徴で、戦闘解決にダイスや戦闘解決表といった偶発性に依存した仕掛けはありません。プレイヤーは盤面全体での作戦と、エリアの中での位置取りという戦術的な要素で勝負していかなければならないというある種、スパルタンな印象を受けるシステムです。
見た目は素晴らしい一方、盤面から状況が読み取りにくく、独自メカニズムのためプレイ難度は総じて高め。挑戦的なタイトルです。

 

■ 第五次辺境戦争(IED/GDW)

 超光速通信が存在しない宇宙を舞台にした戦略・作戦級ゲーム(生産の要素はありません)。通信はジャンプ艇頼み、ジャンプ航法にも距離制限ありという技術の設定が背景世界の理(ことわり)の根幹になっています。
総司令官(プレイヤー)からの命令が前線の艦隊に届くまでにタイムラグが生じることから、一部の優秀な提督が率いる艦隊以外は1〜4ターン先までプロットが必要という仕組みが独特の雰囲気を生みます。
古い作品のためルールにあいまいな部分がある点は気になりますが、他に類を見ない独特のプレイ感はじっくりと取り組みたくなります。

 

■ Model's Counterback(Dissimula Edizioni)

 1944年夏、ワルシャワ郊外を舞台に、ドイツ軍が機動防御でソ連軍を迎え撃つ作品。ドイツ軍だけではなく、ソ連軍も軽快にマップ全体を動き回り、双方が盤上でダイナミックに展開します。ゲームシステムはオーソドックスなものなので安心感があり、プレイアビリティも高いです。イベントカードのイベントがけっこう強力で、また機動戦のため展開がプレイによってかなり変わる点もよいです。1日でプレイできるサイズ感で、緊張感あるプレイを楽しむことができる作戦級ゲームです。

 

こうして並べてみると、『Model’s Counterback』を除けば、いずれもゲームメカニズムに何らかの独自性を持つ作品が顔を揃えています。
もっとも、発表年は新旧入り混じっていて、必ずしも「最近の作品」というわけではありません。
「結局、目新しいメカニズムがすべてなの?」と言われそうなので、ここからは別の観点で印象に残った作品も挙げておきます。紹介は順不同です。また表示したアイコンの数は優劣を表すものではないです)。

 

続きを読む

『THE GREAT BATTLES OF ALEXANDER』(GMT Games)を対戦する

 

アレキサンダー大王の時代の古代における会戦を戦術レベルで描いた『THE GREAT BATTLES OF ALEXANDER』(GMT Games)を対戦しました。

 

 

作品概要

  本作と共通の基本システムを用いた作品群は「GBoH(Great Battles of History)」シリーズと総称されており、アレキサンダー大王時代に限らず、古代ギリシャ古代ローマ、古代インド、中世ヨーロッパ、さらには日本の戦国時代まで、幅広い時代と地域を扱った各タイトルがリリースされています。

各作品には複数のエキスパンションが用意され、再販時にはそれらをまとめたデラックス版として発売されることも多いため、シリーズ全体の構成はやや把握しづらい印象を受けます。

 

今回プレイしたタイトル

  今回プレイした『The Great Battles of Alexander Deluxe Version』は、2023年に最新版が発売されたタイトルです。アレキサンダー大王の父であるマケドニアフィリッポス2世の時代から、大王死後のディアドコイ戦争までをカバーし、関連するエキスパンションをすべて包含した大規模な内容となっています。

含まれるモジュール

ルールブックは第6版が最新版となっています。

 

基本スケール

  • 1ターン:20分
  • 1ヘックス:70ヤード(約64メートル)
  • 1ユニット(1戦力あたり):歩兵:150~200人、騎兵:100人

 

基本シーケンス

 

基本システムの考え方

  アレキサンダー大王の戦いを振り返ると、しばしば両軍の動員兵力の多さに驚かされます。しかし当時は通信手段や精緻な命令伝達網が未発達であったため、兵力が膨大であっても組織的統制には限界がありました。隊列と統制が極めて重要で、一度それが崩れると、個々の兵士では状況を立て直せず、連鎖的な潰走に至ることも珍しくありませんでした。

本作の基本システムは、こうした古代戦争特有の性質を強く意識して設計されています。

デザイナーズノートによれば、本作は「諸兵科連合戦術」と「リーダーシップ」の二点を中核としてデザインされています。アレクサンダー大王の戦いでは、兵力で敵を上回る場面はほとんどなかったにもかかわらず、異なる兵種と戦術体系の複雑な相互作用を巧みに運用することで勝利を収めてきました。本作は、その点をルールとして体感させることを強く意図した作品だと言えるでしょう。

 

指揮官と命令システム

  シーケンスに示されている通り、本作ではまず指揮官を活性化させ、活性化した指揮官が自身の指揮範囲内にある部隊へ命令を下します。部隊は命令を受けてはじめて、移動や射撃といった能動的な行動を取ることができます(敵ユニットと隣接している場合の白兵戦は例外的に自動発生します)。

指揮官の活性化は、各指揮官ユニットに設定された「主導権値(Initiative Value)」の低い順に、所属する軍を問わず進行します。この主導権値は、その指揮官が発行できる命令数も兼ねているため、優秀な指揮官ほど後半に活性化し、かつ多くの命令を行える仕組みです。

指揮官の重要性を強調したシステムを特徴づける重要な要素が二つあります。

モーメンタム(Momentum)

指揮官の活性化終了後にダイスを振り、成功すると再度命令フェイズを実施できます。失敗時には追加のペナルティ判定が発生する可能性もありますが、優秀な指揮官であればおおよそ半分程度の確率で連続して活性化が可能です。成功時には実質的なダブルムーブとなり、戦局を動かす強力な手段となります。

奪取(Trump)

主導権値が高い指揮官は通常後半に活性化しますが、相手指揮官の活性化中やモーメンタム成功時に割り込みを宣言できます。割り込まれた側の指揮官は活動済みとなり、命令を実行できなくなります。代わりに宣言した側の指揮官が即座に活性化され、主導権を奪って自軍の行動に転化できる点が本ルールの肝です。

 

部隊ユニット

  本作では兵種の区分が非常に細かく設定されています。射撃可能な部隊も弓兵に限らず、投槍兵や投石兵などが個別に表現されています。

ファランクスや重装歩兵といったユニットは横に長いダブルサイズカウンターで表され、密集隊形による強力な戦闘力と、方向転換に制約を受ける鈍重な運動性といった性格が視覚的にも示されています。ユニットには向きが設定され、ZOC(支配地域)は前面にのみ及びます。

各部隊には結束力(Cohesion)が設定されており、戦闘による損害だけでなく、森や丘陵などの不整地を移動したり、後退するなど隊列を乱す行動を行うことでも低下します。累積した損害が部隊ユニット毎に設定されている結束力の限界を超えると、その部隊は潰走します。

 

戦闘と勝敗条件

戦闘には射撃戦と白兵戦があります。

射撃戦では投石、弓、弩、投槍など装備した兵器毎に射程があり、命中チェックで成功すると損害を与えることができます。

白兵戦に入る際には突撃手順があり、その前段階で士気チェックが行われます。失敗すると隊列が乱れ、結束力が低下します。

白兵戦の解決には、兵種間の優劣、ユニットの向きや位置関係、指揮官の存在など、複数の要素が影響します。結果は結束力の喪失として反映され、限界を超えた部隊は潰走します。

潰走、あるいは除去されたユニットは、その価値に応じた潰走ポイントを自軍損害に加算します。全軍の潰走ポイントが、シナリオで定められた撤退レベルに達した時点で、その軍は敗北となります。

 

シナリオ紹介と初期配置

今回は両名ともシリーズ初プレイであったため、システムの感触を確かめることを目的とした試行的プレイとなりました。

題材:エリゴン渓谷の戦い(BC358年)
対戦:マケドニアフィリッポス2世) vs イリュリア(バルデュリス王)

イリュリアは紀元前4世紀にバルカン半島西部に存在した部族連合国家で、バルデュリス王の下で一時はマケドニア領を支配しました。しかしBC358年、フィリッポス2世の反撃に敗北し、本戦は両国の力関係が逆転する転機となった戦いです。

初期配置は指定です。マケドニア軍は中央に「ファランクス」を配置し、両翼に「重歩兵」や「散兵」を展開。指揮官は2名です。一方イリュリア軍は中央に「重装歩兵」を置き、「中歩兵」を主力とし、両翼に「軽歩兵」や「軽騎兵」を配置。指揮官は3名となっています。

戦力面ではファランクス5個を有するマケドニア軍が優勢ですが、指揮官数ではイリュリア軍が上回ります。両軍とも初期状態では、指揮官の指揮範囲が全軍を完全には覆っていない状態から始まります。

 

両軍の兵力は拮抗しており約1万程度の歩兵と500騎程度の騎兵と伝わっています。
手前の黄土色のユニットがイリュリア軍、赤がマケドニア軍です。

両軍の間の距離は1ターンでファランクスや重装歩兵が相手への攻撃位置を取ることができる程度の距離ですので、即開戦できる状態と言えるでしょう。

 

プレイ経過(概要)

イリュリア軍を担当。主導権値の低い指揮官から順に活性化し、両翼から前進を開始しました。右翼では軽騎兵を前進させ、投槍による射撃後に白兵戦へ移行。左翼では軽歩兵主体で前進しました。

この過程で、主将以外の指揮官を敵ZOC内に進入させてしまい、移動も指揮もできなくなるという大きなミスを犯しました。これは本作の指揮官運用の厳しさを端的に示す失敗例でした。

中央ではバルデュリス王率いる重装歩兵が前進し、マケドニア軍のファランクスと激突。続くフィリッポス2世の活性化と連続したモーメンタム成功により、イリュリア軍中央の中歩兵が次々と潰走し、戦線は急速に崩壊しました。

 

戦訓

  • 指揮官数や中歩兵の数といったイリュリア軍の優位点を活かせなかった
  • 指揮官を敵ZOCに進入させる致命的ミス
  • 戦列が一度崩れると、連鎖的に全体が瓦解する危険性が高い
  • 不利な白兵戦を避けるため、「撤退」ルールの積極的活用が必要
  • 連続した活性化を可能とする「モーメンタム」は積極的に活用する

総じて、戦術機動や戦法に対する理解不足が露呈した内容でした。

 

イリュリア軍は中央から左翼にかけて接敵しています(右翼の部隊は潰走した後)。
イリュリア軍のダブルサイズユニットである「重装歩兵」は3個と、マケドニア軍の「ファランクス」5個と比べ少ないため、その穴埋めに「中歩兵」(シングルサイズ)を中央部の突撃に用いますが耐久力に劣る「中歩兵」は次々と潰走し、マケドニアの「ファランクス」はイリュリアの「重装歩兵」への集中攻撃を開始しようとしている状況です。
一度崩れた戦列の穴を塞ぐことは難しく、イリュリア軍はこの後、全軍が崩壊に至ることでしょう。

 

感想と総評

本作は、多くの優れた戦術級ウォーゲームと同様、ゲーム的な最適解よりも、史実で用いられた戦術がそのまま有効に機能するよう設計されている印象を受けます。

戦術レベルの微妙なニュアンスを表現するため、ルールは細分化されています。そのため、一定以上の理解を前提としたプレイが求められます。この点はASLなどと共通する雰囲気があります。

一方で、版を重ねている割にはルールの整理が十分とは言えず、全体として見通しが良いとは言い難いのも事実です。これは根本的なルールの再構築を行わず、追加と改変を重ねてきた結果ではないかと推測されます。

日本語ルールについて

こうした見通しの悪さに拍車をかけているのが、日本語訳における訳語の揺れや判読性の問題です。例えば、失われた結束力を回復する「Recover」と、潰走状態の部隊を正常化する「Rally」の双方に「回復」という訳語が用いられており、文脈理解を難しくしています。

訳語選択の厳密さや略語処理の整理が行われていれば、理解のハードルは大きく下がったのではないかと感じました。(自分で基本システムの部分だけでも訳し直すことも考えています)

 

システムとしては非常に興味があるところですので、引き続きプレイをしていくことにしました。

(終わり)

 

 

 

ウォーゲームの「めんどくさい」をAIで解決する【紹介記事】

 

ウォーゲーム(いわゆる「重ゲー」と呼ばれるボードゲームの一部も含まれるかもしれません)を遊ぶにあたって、プレイ前の準備段階や、実際のプレイ中に発生する「正直ちょっとめんどくさい」作業を、生成AIを使って簡単にできないか。
そんな問題意識から書いた記事群です。

 

現在、Noteで公開しており、本記事ではその概要を紹介します。

1本目の記事では、ウォーゲームを遊ぶ際に発生しがちな「めんどくさい」作業全般について触れたうえで、特にルール内容の把握に焦点を当てています。
Googleの「NotebookLM」を活用し、分量が多く把握に時間のかかるルールブックを、いかに効率よく理解するか、という点を中心に書いています。

2本目の記事では、海外製ウォーゲームのルールブックや関連資料を、生成AIを使って翻訳するというテーマを扱っています。
従来の機械翻訳との違いに触れつつ、生成AIならではの利点や、ウォーゲームとの相性の良さについて整理しています。

3本目の記事では、2本目の内容を踏まえ、生成AIを使って翻訳を行う際の注意点やコツを紹介しています。
あわせて、「ここが実際にとても役に立った」という具体的な使用例も挙げ、実践的な内容になるよう意識しました。

 

ご興味があればリンク先をご参照ください。

 

 

(終わり)