Their Finest Hour -歴史・ミリタリー・ウォーゲーム/歴史ゲーム -

歴史、ミリタリー、ウォーゲーム/歴史ゲーム/ボードゲーム

『BURNING BANNERS』(Compass Games)を対戦する【5戦目】キャンペーンゲーム(6人戦)

ファンタジー・マルチプレイ

 

12月に続き、『BURNING BANNERS』(COMPASS Games)を対戦しました。

今回は全6勢力が出揃う最大規模のキャンペーンゲームです。
ケロス大陸を舞台に、善悪二陣営が覇権を争う大戦争を描く作品であり、緻密に構築された架空世界と歴史設定の上に展開される重量級ゲームです。

 

 

本作は今までも複数回プレイしています。ゲーム内容の詳しい紹介は過去記事をご参照ください。

 

ゲームの準備

6つの種族

ゲーム内でキャンペーンゲームは「年代記」と呼ばれており、開始年と終了年を選ぶことができるようになっています。開始年によって設定されている歴史背景に沿った初期状態で開始することになります。

今回選んだのは「年代記」の開始年、つまりは大戦争初年度から扱ったものです。ケロス大陸の平原に突如として出現する「月の尖塔(Spire of the Moon)」(ボックスアートの中央に描かれている塔)を拠点に「闇の軍勢」が周囲に侵攻を開始します。侵略勢力は「闇の軍勢」と「シャシュカ王国」のゴブリン族・オーク族から構成され、これに対抗するのが「オースボーン(ドワーフ族)」「東方帝国」「フィヨルドランド」の三勢力です。

 

 

勝利条件

侵略勢力の勝利条件は、抵抗勢力が保有する6都市のうち2都市を陥落・確保すれば即時終了。あるいはゲーム終了時に村落を20か所確保していれば勝利となります。
ただし重要な制約があります。侵略勢力の一部のユニットは「野生」や「巨大サイズ」といった属性を有ししており、これらが都市や村落を攻略して陥落させた場合、拠点は占領ではなく破壊されます。破壊された拠点は勝利条件に参入されません。
「巨大サイズ」のユニットは戦闘力も高いため戦力の確保のため、攻撃に使いがちなのですが、慎重に避ける必要があります。

1ターンは1シーズンですが冬ターンは活動できませんので1年が春夏秋の3ターンから構成されることになります。残りターン数の長さにより戦い方は必然的に変わるでしょうから、キャンペーンの総年数はプレイ開始前に決定する必要があります。今回プレイではここが曖昧なままスタートしていました。十分なプレイには最短でも3年分=全9ターンくらいは必要なのではないでしょうか。

 

種族の割り振り

希望者がいたゴブリン族を除いた5種族については抽選で決定しました。
今回担当したのはオースボーン、ドワーフ族です。

山岳地帯を勢力圏とし、6勢力内で唯一、鉱山に鉱夫を派遣し採掘アクションを実施することで鉱山収入を得ることができます。軍勢ユニットは総じて質が高い一方、移動力は小さく、飛行能力を有する部隊も持たないため、平地での機動戦には制約があります。その代わり、山岳ヘックスを平地と同じ移動コストで移動できる種族固有能力を有しているため、地形が錯綜する場所では独自の展開力を持つことが可能です。

オースボーンのプレイヤーシート

 

スタート時点の勢力図

ゲームスタート時点の勢力図です。

  • 闇の軍勢:  赤(敵地に「集会場」を設置可能)
  • ゴブリン族: 茶(マップ上方から侵入)
  • オーク族:  黒(マップ右端から侵入)
  • オースボーン: 橙色
  • フィヨルドランド: 水色
  • 東方帝国:  紫

星印の箇所は勝利条件の対象となる「都市」

 

「月の尖塔」が現れたのはオースボーンの勢力圏でした。さらに北方からはゴブリン族が、東方からはオーク族が侵入してくる状態です。オースボーンからすると、三正面から圧迫された態勢と言ってよいでしょう。

加えてオースボーンは開始時点で6都市中、ドウェルフェルト、タロンシールド港、首府ドラケンボルドの3都市を保有しています。うち2都市を失うと抵抗勢力の敗北となりますので、都市防衛の観点からも最前線の責任を負う配置になっていました。

 

侵略勢力の主力であるゴブリン族・オーク族は定常収入を持たず、都市や村落の占拠・略奪・破壊によって資源を獲得します。侵攻を停止させることは、両種族にとって経済的な窒息状態に直結します。国境沿いの村落を堅守または遅滞により彼らの侵攻の足を止めることができれば有利に働くと判断しましたが、この見通しは早々に修正を迫られることになります。

 

侵略勢力の侵攻の状況:

ゴブリン族(茶)は北方、オーク族(黒)は東方から侵入を開始。
「闇の軍勢」(赤)は抵抗勢力側の勢力圏内にある村落郊外に「集会所」を構築して、そこを足がかりに兵を集め、侵攻を行います。

 

プレイの状況

ゴブリン族の侵攻

北方より侵入したゴブリン族は、オースボーンと同様に山岳地帯を平地同様に移動可能な種族能力を持っていました。これまでプレイしてきたシナリオ戦ではあまり登場していなかった勢力だったため、この能力は考慮外でした。

山岳ヘックスを軽快に移動したゴブリン族の侵攻がはじまる(写真上方向が北)

 

山地を縫う形で進出した彼らは、北方の村落・都市を迅速に包囲します。オースボーンは北方方面に英雄ユニットを配置していなかったため、ゴブリン側英雄の魔法攻撃を一方的に受ける状況が生じました。激戦の末、北方唯一の城塞都市ドウェルフェルトは陥落します。しかしゴブリン族にとって失敗だったのは、攻撃に「巨大サイズ」でゴブリン族最強ユニットの「沼地の巨人」を参加させていたことです。沼地の巨人はその強力な攻撃力を発揮する代償として、城塞都市を破壊してしまったのです。

その後、ゴブリン族は山間に点々と残置するオースボーンの村落や鉱山への攻撃へは深入りを避け、山地を超えてフィヨルドランドの村落がある海岸に向けて進路をとっていきます。本ゲームでは補給の概念はありませんので補給線の確保などは考慮不要です。防御効果が高い山地ヘックスの拠点攻略に拘泥するのではなく、攻撃が容易な方向に進撃したのは正解といえるでしょう。

北方の城塞都市ドウェルフェルトと「闇の軍勢」の本拠地「月の尖塔」付近図

 

第3ターン終了時(ゲーム終了時)の北方戦線の状況(写真右が北方向)

南下したゴブリン族の戦線はフィヨルドランドに接触。
フィヨルドランドはいったんはヴァイケンジンガー要塞付近まで迫った「闇の軍勢」を押し返した

 

オーク族の剛腕

東方から進出したオーク族は、精強な軍勢を背景に平原を横断し、国境付近の自由民の村落を制圧・略奪・破壊します。目指す目標はオースボーンの首府ドラケンボルドです。山間の堅城を前に、両軍は消耗戦を展開し、英雄と軍勢、英雄が繰り出す魔法と徘徊するモンスターより獲得したアーティファクトが交錯する長期戦となります。

東方国境とオースボーンの首府ドラケンホールド付近図(上方向が北)

国境(マップ右端)からドラケンホールド周辺にてオースボーンとオーク族との間で激戦が交わされた。

 

第3ターン終了時(ゲーム終了時)の中央戦線の状況(写真右が北方向)

オーク族(黒)が、オースボーン(灰色)の首府ドラケンホールドに迫るが、主力が「巨大サイズ」や「野生」ユニットのため、攻めあぐねる。

南方では港湾都市タロンシールド港にも圧力が加えられました。タロンシールド港は海に向かって突き出た岬の根本にあたるため攻撃軍を配置できる土地が少なく、さらには沼地と大河によって囲まれている天然の要害ですが、オースボーンの兵力を北方、首府付近、港湾の3つのエリアに分散せざるを得ない状態では弱含みです。

オースボーン第3の都市タロンシールド港付近図

オーク族は右上のドクロ印から侵入。
タロンシールド港はその前面が湿地、さらにその周囲を大河で囲まれるという天然の要害に位置する

第3ターン終了時(ゲーム終了時)の南方戦線の状況(写真右が北方向)

オーク族(黒)は攻城塔を投入するが、地形が悪くうまく城に近づけない。

※全体写真の一部を拡大しているため不鮮明になっています

 

オースボーンの作戦

戦線の状況を点描しましたが、最後にオースボーンの作戦を書いておきます。

開戦直後から鉱夫を周辺の鉱山に派遣し、採掘態勢を整備したことは奏功しました。鉱山収入は終始、安定した財源として機能します。

またあわせて本格的な戦争が開始される前に、近場のモンスターを討伐することでアーティファクトの獲得に挑みました。

ただここまで書いたように軍勢を3エリアに展開する必要がある点は工夫が必要でした。特に英雄の配置には考慮が必要でした。初期状態で英雄を複数人確保することは費用面から言うとかなり厳しいところはあります。ところが今回の展開でもあったように英雄が不在のエリアでは相手の魔法攻撃への対処方法が欠ける部分があるためなんらかの工夫が必要だったかもしれません。

 

感想戦

初のキャンペーンゲーム、かつ6勢力フルでのプレイとなりました。

インストを込みで1日プレイして4ターン目にはいろうとするところで時間切れ終了となりました。
終了年をはっきり決めて置かなかったため作戦の取り方に齟齬が生じた可能性があります。焼畑農業的な焦土作戦を展開するゴブリン族・オーク族は長期戦を前提とした際には行動が変わってくる可能性があります。

展開であったように最前線となるオースボーンが忙しい一方で戦線から離れた東方帝国は十分に活躍できるところがありませんでした。同じ抵抗勢力として、オースボーンは一部の都市、例えばタロンシールド港の防衛を東方帝国に預けてしまったり、また東方帝国の軍勢を早い段階で前線に引き入れてしまうといった対応が必要だったように思います。

またさすがに6人戦となると手番以外の待ち時間が長くなることもまた課題ではあります。ただプレイとしては十分に面白いものであったので、また機会があれば挑戦してみたいところです。

(終わり)

 

 

 

『PEOPLE POWER』(GMT Games)を対戦する

戦略級・マルチプレイ

 

1980年代フィリピンで起こったピープルパワー運動を扱ったCOINシリーズの一作People Power: Insurgency in the Philippines, 1983-1986(GMT Games)を対戦しました。

一定以上の世代であれば、マルコス大統領やイメルダ夫人といった名前、アメリカから帰国した野党指導者アキノ氏が空港で暗殺される衝撃的な映像を記憶している方も多いのではないでしょうか。

本作はその1983年のアキノ氏暗殺から1986年のEDSA革命までを扱います。

プレイ時間は約2時間。COINシリーズの入門作として扱いやすいボリューム感の一作になっていました。

 

 

 

 

COINシステムとは

COINとは「COunterINsurgency(対反乱作戦)」をテーマとしたGMT Gamesのシリーズで、非対称の複数勢力がカード駆動で競い合うゲームシステムです。

特徴は以下の通りです。

  • 勢力ごとに実施できるアクションと目指す勝利条件が異なる
    (非対称のゲーム構造)
  • 軍事行動は要素の一部でしかなく、非軍事領域である政治・宣伝・統治といった要素が重要
  • カードドリブン。山札からドロ-したカードに示された順に従い、プレイする

通常のウォーゲームが扱う単なる軍事衝突ではなく、政治的正統性や民衆の支持を巡る争いを表現するのがシリーズの特徴です。

 

今回ゲームの紹介

本作は1983年のアキノ氏暗殺から1986年2月のEDSA革命までを扱います。オプションとして1981年開始の拡張シナリオも用意されています。

 

登場する勢力は3勢力です

  • 政府【青】 :軍隊と警察を保有する体制側。他勢力には弾圧や軍事行動で対抗する。金をばら撒き民衆の支持をとりつける一方で私的な蓄財にも勤しむ
  • 共産ゲリラ(NPA)【赤】 :通常は地下に潜伏するゲリラ部隊を有し武装闘争を展開。一方で、テロにより社会を不穏化することで民主化勢力の非暴力な活動を妨害する
  • 民主化勢力【黄】 :都市中間層や教会を背景に拡大。非暴力主義を掲げる。他勢力に対しては説得、転向といった非暴力的な活動で対抗する

 

多くのCOIN作品が4勢力構成であるのに対し、本作は3勢力です。そのため構図が把握しやすく、関係性は明確です。

3勢力の関係性:非対称の勝利条件と主なアクション

政府と共産ゲリラは軍事的に対立している。政府は掃討(Sweep)と攻撃(Assault)によりゲリラをあぶり出し、排除しようとするがゲリラは潜伏することでしのごうとする。時折、襲撃(Ambush)により政府の勢力を削り、またテロ(Terror)により平穏を壊す(=民主化運動を妨害する)
政府は民主化勢力に対して弾圧(検挙:Roundup)を行う一方、民主化勢力は政府の軍隊や警察からの転向(Convert)を促す・・等々

 

勝利条件もまた非対称です。

※ パトロネージ*1

 

マップ

マップはフィリピン全土を抽象化し、都市4か所(マニラ、セブ、ダバオ、サンボアンガ)と6つの地方エリアで構成されます。マップも小型です。

エリアの中でマニラは人口値5と突出しており(他のエリア・都市の人口値は1~2)、極めて重要です。首都ですので「政府」ががっちりと守っているのですが、油断すると民主化運動や、ともすれば共産ゲリラの跋扈を許してしまうかもしれません。

本作でもCOINシリーズで共通的に表される「支配」と「支持」という概念が使われます。エリア・都市にはそれぞれ「支配」状況とは別にその民衆の「支持」がどの勢力なのかを表されます。
政府が軍事的に支配していても、民衆の支持は民主化勢力(または共産ゲリラ)に傾いているという状況が同時に成立します。この二層構造が、単なる軍事ゲームとは異なる状況を生み出します。

 

手番構造とイベント

山札からカードを1枚公開し、記載された順番に従って勢力が行動します。プレイヤーは次のいずれかを選択します。

  • カードイベントを実行する
  • 自勢力固有のアクションを組み合わせて実施する
  • パスする

 

NotebookLMに作ってもらった資料ですが、上のイラスト化されたフロー図の内容は適当なものになっていますのでご注意ください

 

本作特有の仕組み

本作ではテーマ性を補強するため、シリーズの他作品には見られない、次のような要素が追加されています。

  • キャラクターカード:各勢力を代表する人物4人用意されている。各勢力はそのうち1枚を選ぶと、そのカードが持つ特殊な効果をもたらす
  • 「絶望の行為」カード:プレイ開始前に選び、ゲーム終了時の勝利判定時に影響を与えるイベント等をもたらす

 

プレイ

午前・午後で1プレイずつ合計2プレイしました。

1983年シナリオ初期配置:
マップはフィリピン全土を収録。右側が北。大きな円のエリアが都市で、右側から順にマニラ、セブ、サンボアンガ、ダバオ(左下)となっています。

エリア数も少なく、その分、プレイアビリティに寄与しています。
カラフルな円筒・キューブなどの木駒が各勢力のユニットを表します。

青系は政府ですが、青が軍隊、水色が警察を表します。政府は都市部を中心に勢力を持っていますが、郊外エリア(特に南のほう)では共産ゲリラ(赤色)が跋扈しているのがわかります。

民主化勢力もそうですが円筒の駒に何の印字もない状態は「潜伏状態」ですので政府の軍・警察は手出しできません。マニラの民主化勢力(黄色)の一部の円筒にハンドサインが印字されていますが、これはアキノ氏暗殺直後で民主化勢力の活動家が表にでてきている状態です。

 

各プレイヤーとも、プレイのコツ、例えば、各勢力が実施できるアクションが互いにどのように作用し効果を与えるのか、また勝利条件の達成のため、または他勢力の妨害のために何を行っていくのかがわからず、手探りの状況からはじまりました。

1戦目:政府担当

政府は軍と警察と強力な兵力を有していますが、「活性化」状態の民主化勢力やゲリラでなければ、攻撃を行うことができません。活性状態にない=潜伏中の勢力は攻撃できないのです。

ゲームスタート時点の初期配置の段階から、民主化勢力の一部の活動家ユニットが活性化しています。直前のアキノ氏暗殺に対する抗議活動ということでしょう。
政府はすかさず「検挙・弾圧:RoundUp」オペレーションにより、活動家の排除を試みます。

潜伏中のゲリラに対しては、「掃討:Sweep」により発見、さらに次の手番で「強襲:Assault」で除去という手段をとります。郊外エリアで共産ゲリラが多く存在するエリアを対象に、ゲリラ撲滅を試みました。

 

政府の弱点は、様々なアクションを行う際に必要となる「リソース/資金」を定常的に得る手段が限定される点です。他勢力と異なり、初期値が大きいため、計画的に使うということなのでしょう。

いくつかのラウンド(各勢力の手番)が処理された後、共産ゲリラが複数エリアで活動を行うため活性化したタイミングで、政府は「ASSAULT:強襲」を実施。キャラクターカードの効果により、警察ユニットも軍隊ユニットと同様に扱うことができるという効果も加え、ゲリラを攻撃します。
結果、ダイスの目も良く、ゲリラの「拠点」を2か所の除去にも成功します。

共産ゲリラの「拠点」を除去は、想定外の効果をもたらします。除去したゲリラ拠点毎にアメリカからの「援助:Aid」を大きく増加させることができるのです。

 

「Enrich:蓄財」アクションを実施すると、「援助:Aid」の数値を下げ、代わりに「パトロネージ」を上げることができます。さながらフィリピン政府は、共産ゲリラの拠点の壊滅に成功し、アメリカからの支援が増える中、支援分を私的な蓄財に励んだ、といったところでしょうか。

他勢力はこの「パトロネージ」の増加に対して有効な手段を取ることができずに、そのまま政府の勝利となりました。

1戦目終了時の状況。大統領選挙が発生、その時点でのVP状態から政府が勝利条件を達成。
政府はルソン島北部やミンダナオ島西部の共産ゲリラ組織の撲滅に成功し、アメリカからご褒美でもらった「援助」を蓄財(パトロネージ)に回すという、途上国あるあるの「Kleptocracy:盗賊政治」を実践することで勝利

 

2戦目:共産ゲリラ担当

共産ゲリラの勝利条件は、共産ゲリラを「支持」するエリアの人口値合計と、各地に配置する共産ゲリラの拠点の数の合計が13を超えることになります。ゲーム開始時、拠点が3個所にあるだけですので、支持エリアを拡大する必要があります。

拠点が置かれたエリアを中心に兵力を増加(Rally:集結)させ、「強請:Extort」により「リソース/資金」を得ます。マニラから遠いダバオやサンボアンガが狙い目です。集めた兵力をもって政府軍や警察を攻撃します(Ambush:待ち伏せ)。

ところがイベントカードのイベントの実施を優先するという判断ミスにより、行動を行ったゲリラ部隊を「活性化」の状態のままにしてしまっていました。欲をかかずにすぐに「潜伏中」の状態に戻るアクションを優先して実施するべきでした。

すかさず政府は「活性化」状態のゲリラ部隊を攻撃し、ゲリラの「拠点」2か所も除去されてしまいます。1戦目を逆の立場で再現することになってしまいました。*2

その後、ふたたびゲリラの増加させますが、一度失った「拠点」の復活はなかなか果たせず、1986年の大統領選挙*3を経て、僅差のポイントにて民主化勢力が政府をを破ることになりました。

2戦目終了時の状況。
マニラ(右上の都市)にも共産拠点を確保、またダバオ(左下)に共産ゲリラの部隊多数を揃えるが時間切れ。ただここでも政府がパトロネージを溜め込みポイントを伸ばした。他2勢力にとり、政府のパトロネージをいかに抑えるかは本作のポイントではないか。

 

感想

基本システムはCOINそのものなので、経験者であればすぐに入り込めます。

COINシリーズの4勢力から1勢力減らしただけですが、勢力間の関係性がわかりやすく、またエリア数も抑えられていることもあって、シリーズの中ではかなり遊びやすい印象でした。プレイヤーが1人少なくなる分、考える時間=ダウンタイムも短く、2時間もあればプレイ可能なサイズ感は非常に魅力的です。

プレイヤーが各勢力がとりえるアクションの内容、勢力間の関係性、勝利へのアプローチなどを理解できるようになると、丁々発止の競い合いができるのようになるでしょう。その境地に達するにはもう何度かかのプレイは必要な印象です。

テーマが現代史に近く、また近隣国の歴史という点もあり興味深くプレイできた点もあげておきます。

一方で、これはシリーズ共通の課題ですが、カードの歴史的背景を知らないと、駒がとったとられたといったイベントの処理結果のみを追うだけになりイベントが平板に見える部分があります。様々な歴史的事象や人物の状況や事績がルールやカード内に練り込まれていることを考慮すると、登場人物や事件について事前に軽く調べておくと、ゲーム体験は格段に深まります。

総じてプレイアビリティ高いプレイ感は、はじめてのCOINゲームとしてかなり良いのではないでしょうか。

 

補足:フィリピン戦後史概要

太平洋戦争末期の1944年、フィリピンは主戦場となり、特に首都マニラは壊滅的な被害を受けました。1945年に米国統治下へ戻り、1946年7月に独立します。

独立後は形式上民主主義体制を採りましたが、実際には有力家族による寡頭政治が続き、汚職や買収が横行しました。

1965年にフェルディナンド・マルコスが大統領に就任します。マルコスは公共事業を進めましたが、財政赤字と対外債務が拡大しました。
1969年の大統領選挙において、マルコスの再選は不正とされ、経済は悪化します。
1972年9月、共産ゲリラの脅威を理由に戒厳令を発動し、議会停止や報道統制を行い、事実上の独裁体制を築きました。

マルコスによる独裁体制の特徴は次の通りです。

  • 軍を権力基盤とし、反対派を弾圧
  • 側近財界人に利権を集中させるクローニー資本主義
  • イメルダ・マルコスを含む一族支配と蓄財
  • 憲法改正による大統領権限の強化
  • メディア統制による世論操作

当初は外資導入で成長しましたが、1970年代後半には汚職と外債依存が深刻化しました。
1979年のオイルショックで経済は打撃を受け、失業や物価高が進み、左派勢力や教会、中間層へと反体制運動が広がりました。

1983年8月、野党指導者ベニグノ・“ニノイ”・アキノ Jr.が帰国直後空港の衆人環視の中で暗殺されます。この事件は社会に大きな衝撃を与え、反独裁運動が一気に拡大しました。経済も急落し、債務危機に陥ります。暗殺されたアキノ氏夫人のコラソン・アキノが反体制の象徴となりました。

1986年2月、正統性を主張するために実施した大統領選で不正が明白になると、大規模な抗議行動が発生します。軍の一部も離反し、EDSA革命と呼ばれる市民蜂起によってマルコスは国外へ逃亡しました。コラソン・アキノが大統領に就任し、独裁体制は終焉しました。

 

補足:COINシリーズ一覧

COINシリーズは発売予定のものを含めて15作品がカタログに掲載されています。

Volume    Title    Published    Conflict
I    Andean Abyss    2012    Colombian conflict
II    Cuba Libre    2013    Cuban Revolution
III    A Distant Plain    2013    War in Afghanistan (2001–2021)
IV    Fire in the Lake    2014    Vietnam War
V    Liberty or Death: The American Insurrection    2016    American Revolutionary War
VI    Falling Sky: The Gallic Revolt Against Ceasar    2016    Gallic Wars
VII    Colonial Twilight: The French-Algerian War, 1954-62    2017    Algerian War
VIII    Pendragon: The Fall of Roman Britain    2017    End of Roman rule in Britain
IX    Gandhi: The Decolonization of British India, 1917-1947    2018    Indian independence movement
X    All Bridges Burning: Red Revolt and White Guard in Finland, 1917–1918    2020    Finnish Civil War
N/A    The British Way: Counterinsurgency at the End of Empire    2023    British decolonization
XI    People Power: Insurgency in the Philippines, 1981-1986    2023    People Power Revolution
XII    Red Dust Rebellion    2024    Fictional conflict following colonization of Mars
XIII    China's War 1937-41    2025    Second Sino-Japanese War
XIV    The Pure Land: Ōnin War in Muromachi Japan, 1465-1477    forthcoming    Warring States Period
XV    A Fading Star: Insurgency and Piracy in Somalia

※ 赤字はプレイ経験がある作品

 

(終わり)

 

COINシリーズはAARを書きにくいところがあるためプレイはしても、記事を起こしていないパターンが多いですね

*1:パトロネージ(Patronage):政治的後ろ盾としての支援:単発の資金援助や物資提供だけでなく、外交的な容認・擁護、国際舞台での正当化、反対勢力への圧力回避などを含む。
COINゲームではよく登場する概念で、ベトナム戦争を扱った「FIRE IN THE LAKE」やアフガニスタン紛争を扱った「DISTANT PLANE」でも登場していた。現地政府に対するアメリカからの後ろ盾といった意味合いになるが、COINゲームではさらに突っ込んで、援助を横流しした私的な蓄財といったニュアンスも含んだ概念と想定される。
特に本作では政府が実施できる特別な能力として「Enrich:蓄財」があり、アメリカの援助ポイントを減らすことで、パトロネージを4ポイントも増加させることができる。
マルコス大統領が海外援助を莫大な私的な蓄財として海外に逃避させていたことは有名な話で、マルコス政権下のフィリピン政府のそうした性格を表したものであろう。
なお本作で他の2勢力はこの政府の「Enrich」能力を使ったパトロネージを防がなければ勝利の道はない。

*2:どの勢力を担当した場合も、「拠点」の有り無しはそのエリアで勢力を増やす際に大きく影響します。一方で本作では各エリアにおける「拠点」のスタック制限は3勢力あわせて2個までとなっていることから、エリアを確実に確保するために、そのエリアへ自勢力の「拠点」を2個作ってしまうというのは良い戦術ではないか、と考えます。

*3:大統領選挙カードが現れた時点で決算処理を行う。ゲームは2回目の大統領選挙(1986年に実施されたもの)をもって終了する。

『SQUAD LEADER』(AVALON HILL)を再訪する

戦術級・東部戦線

 

いまさら『SQUAD LEADER(以下、SL)』を引っ張り出すことはないだろう、と思っていました。ところが年初、別のゲームの対戦でお会いした方が、SLの魅力を——多分にASL(ADVANCED SQUAD LEADER)との比較においてでしたが——熱っぽく語られていました。決してあてられたわけではないのですが、折良くメルカリで見つけた安価な出品作を手にいれることになりました。

 

 

Clean Boxfront Scan

 

戦術級ウォーゲームの金字塔

1977年にアバロンヒル社から発売された『SQUAD LEADER』は、第二次世界大戦の歩兵戦闘に焦点を当てた戦術級ウォーゲームの金字塔とされる作品です。

  • スケール:1ユニット=分隊(Squad / 約10名)〜 兵士数名
  • 時間:1ターン=約2分
  • 地形:1ヘックス=40メートル。市街地・森林・丘陵などを詳細に表現
  • 目的:シナリオごとに設定された戦術目標の達成

 

当時、アバロンヒル作品の輸入を行っていたホビージャパンのカタログで本作が「難易度最高レベル」と評されていたのを覚えています。それにもかかわらず中学生だった私がこれを選んだのは、特定の戦いを再現する「作戦級」に比べ、複数のシナリオが遊べる戦術級の方が「一粒で何度も美味しい」という、当時の慎ましい損得勘定に合致したからでした。

SQUAD LEADERシリーズのモジュール

第4作『GI: ANVIL OF VICTORY』ともなると、第1作の面影は骨格に留まるほどにルールが刷新されました。当時の『TACTICS』の記事を参考に、4作分のルールブックから有効な記述だけを切り貼りし、スクラップブックのような「自家製ルールブック」を仕立てたのも、懐かしい思い出です。

その後、どうにもこうにもできなくなったのか、システムを根本から再構築する形で現在の『ASL』へと進化を遂げることになります。

個人的には、第2作『CROSS OF IRON』で車両ルールが一挙に拡充された時の高揚感が忘れられません。最も遊び込んだのも第2作目までで、第3作以降は印象が薄く*1、第4作に至ってはシナリオ内容をほとんど覚えていません*2
その後、手元の現物は友人に譲渡したため、長らく私の棚からSLの姿は消えていました。

 

掘り出し物との出会い

今回入手したSLは、箱こそ経年劣化以上の傷みがありましたが、中身は驚くほど良好でした。マップやカード類は未使用に見え、国籍や種類など混在したまま袋詰めされていたユニットも、確認したところ欠落はありません。ゲーム自体が実質的に未使用だったため、汚れもヘタレもない「掘り出し物」といってよい内容だったのではないかと考えます。

 

リプレイ:シナリオ1「親衛赤軍の反撃」

SLを再開するにあたって、最初に選ぶべきはシナリオ1「親衛赤軍の反撃」をおいて他にないでしょう。『SQUAD LEADER』をプレイした人であれば、必ずといってよいほど遊ばれたと思われる、最初のシナリオになります。
1942年、スターリングラード。街路を挟んで対峙するソ連軍が、ドイツ軍が籠もる建物群へ攻勢をかける市街戦シナリオです。今回はソロプレイのため、VASSALを用いています。

 

勝利条件と初期配置:

マップ上にはドイツ軍のスタックが配置された5つの石造建造物(グレーの建物)がありますが、ソ連軍はこのうち2つまでを奪取することで勝利、ドイツ軍はそれを阻止する必要があります。*3

建物単位に配置兵力は決まっていますので、選択の余地はあまりありません。
スタックさせるかさせないか、敵戦力が見える位置に配置するか、1歩下げて配置するかといった程度の違いです。

ドイツ軍が先に配置、ソ連軍が先行と指定されています。
ドイツ軍は初期配置においてはソ連兵からの射撃を受ける位置を避けたい一方で、一歩下げた位置に配置してしまうと今度はソ連兵はやすやすと街路を渡って移動してきてしまうでしょう。とはいえ、もともと建物単位に配置場所が決まっているためほとんど縦深はありません。自然とソ連兵の銃火にさらされる場所に配置せざるを得ないのも確かです。
一方のソ連軍は第一撃でドイツ軍に有効な射撃を行うような配置を選ぶことになります。

 

ソ連軍第1ターン終了時:

ドイツ軍左翼側では、ソ連軍の親衛狙撃兵師団歩兵(6-2-8ユニット:火力6・射程2・士気8)の射撃によりいきなりF5の建物のドイツ軍の2ヘックス分の分隊が戦闘不能になってしまいます。ドイツ軍は周辺のJ4やI7から射撃を行いますが振るいません。
ドイツ軍のキラースタックというべきI7からの射撃では、軽機関銃が故障するわ、ソ連軍側に早くも狂暴兵(バーサーカー)(赤いユニット)を出現させてしまうわなど、ダイス運が悪いです。
その後、ドイツ軍左翼正面のソ連親衛歩兵は突撃フェーズで街路を渡りF5の建物に押し寄せます。ドイツ軍左翼の危機です!

ここで改めて、ASLとはルールが異なる「機関銃の貫通」や、処理条件が異なるのではないかということで「潰走」の処理をひとつずつ確認していきます。

 

ドイツ軍第1ターン終了時

ドイツ軍はダイスが奮わず、左翼正面F5の建物に続いて、中央の建物(K4)でも戦闘不能が続出。ソ連軍の親衛歩兵(6-2-8)は、射程こそ短いものの射程(2ヘックス)以内に接近された際の火力は凄まじく、一度懐に入られると手が付けられません。

また狂暴兵(赤いユニット)は戦闘不能という状態がなく、KIA(戦死)の結果により排除するしかないため、非常にやっかいです

 

ソ連軍第2ターン終了時

早くもドイツ軍左翼の建物(F5)がソ連軍の手に落ちました。生き残った指揮官と歩兵分隊は後方の建物に潰走します。勢いに乗るソ連軍はさらにF5の建物を超えるとさらに街路を渡り、後方のドイツ軍の建物へ迫ります。
中央部の建物(K4)では上方向から侵入したソ連兵との白兵戦が発生。もっとも、こちらのソ連兵は一般歩兵(4-4-7)のため、軽機関銃を持つドイツ兵が火力で上回る局面も見られます。

 

ドイツ軍第2ターン終了時

左翼において第2線にあたる建物に迫られる中、ドイツ軍の機関銃が火を吹き、街路を渡りつつあったソ連兵スタックの一部を潰走させます。ただ残ったソ連兵の集中的な射撃によりI7の建物に配置されていたキラースタックのドイツ軍最優秀の指揮官(9-2)が、ついに戦闘不能に陥ります。残る分隊が必死に踏ん張っているものの、極めて厳しい状況です。

中央部K4の建物ではドイツ軍スタックが前ターンから白兵戦になっていた隣接ヘックスに突入し、ソ連兵に逆襲をします。

 

ソ連軍第3ターン終了時

ドイツ軍のキラースタックI7は見る影もなく、潰走し2つ目の石造建造物がソ連軍の手に落ちました。どこかの建物を取り返さなければドイツ軍の敗北です。

これまで膠着が続いていた右翼ではドイツ軍の分隊が戦闘不能に陥ったタイミングで、ソ連兵が街路を押し渡り、L6の建物に寄せています。
中央K4の建物で、ドイツ軍が白兵戦に勝利し、ソ連兵3個分隊の除去に成功します。

 

ドイツ軍第3ターン終了時

ドイツ軍右翼のL6の建物のドイツ兵が、直前に白兵戦に勝利したばかりの中央N4の建物のドイツ軍とあわせ、街路を渡ろうとしていたソ連歩兵に対して射撃を行い、損害を与えます。実質、L6の建物へのソ連軍の攻撃を押し返した状況になりました。

左翼側はソ連の親衛赤軍の大群に対して対抗する術はあまりないように見えます。さらには再び狂暴兵(赤いユニット)が出現してしまいました。彼らは続いて右翼側の建造物めがけて街路を渡ってくることは必至でしょう。

 

感想戦

今回のプレイは、ここで終了することにしました。
戦況としては、ややソ連軍有利といったところでしょうか。

厳密に勝利を目指すのであれば、ソ連軍が当初配置されていたマップ上方の建物が手薄なため、ドイツ軍がそこを占拠して勝利条件を阻害する手もあったかもしれません。同様にソ連軍も、移動の手間はありますが、右下の無人となった石造建造物を押さえることで容易に占拠する建造物の数を増やすことができたはずです。

久々に盤面を広げてみましたが、率直な感想は「おもしろい」の一言に尽きます。ダイスの目によってその後の戦局が簡単に左右される点は驚きでした。
意外なほどルールは身体が覚えており、プレイ感も想像以上に軽快でした。

 

混在する記憶と「現代のツール」

もちろん、細かなルールについては確認を要しました。
今回は紙のルールブックに加え、NotebookLMに英文ルールを読み込ませて参照するという、当時では考えられない現代的な手法を試しています。

特に「潰走フェイズ」における判定条件の記述が記憶よりも簡素で、「こんなにあっさりしていたか?」と戸惑う場面もありました。どうやら私の中で、無印のSL、その後の拡張シリーズ、そしてASLのルールが層のように重なり、記憶の「混同」を引き起こしているようです。

 

『SQUAD LEADER』が「軽く」感じられる理由

今回プレイ感が軽く感じられた要因のひとつに、SLとASLにおける「移動」と「防御射撃」の設計思想の違いがあることは、異論の余地はないでしょう。

ASLでは敵ユニットの移動を常に注視し、特定のヘックスに入った瞬間に射撃を宣言しなければなりませんが、SLでは「移動し終えたユニット」に対し、その移動経路を遡る(巻き戻す)形で射撃対象を指定できます。
ASLは同時性・リアルタイム性の厳密さを追求した結果、防御射撃に関連するルールが極めて複雑化し、これがプレイの“重さ”に繋がっています。
一方、SLは、移動・防御射撃で見られるような「おおらかさ」が、むしろゲームとしてのテンポの良さを生んでいるのは新鮮な発見でした。

 

揺れる「再訪」の意義

さて、今後のSLプレイをどうするか。

かつて夢中になったシナリオ5「HILL 621」*4の丘陵戦や、4枚のマップを縦に繋ぐ構成が印象的だったシナリオ12「The Road to Wiltz」*5などが思い浮かびます。

しかし、一歩踏み出そうとすると、ある根源的な問いが頭をもたげます。
いまさらSQUAD LEADERでプレイする意義はあるのか? ASLで良いのではないか?

まぁ、いましばらくこの「葛藤」を楽しみたいとは思います。

 

(終わり)

 

 

*1:空挺降下やグライダーのルール、渡河作戦のボートとか、ポンツーン(歩兵橋)とか大掛かりなシナリオが多かった印象。オランダの王族を逃がすシナリオ、ロンメルが登場するシナリオとか・・

*2:第4作は既存分も含め歩兵ユニットが全面刷新になったのと、アメリカ軍の車両ユニットでカリオペ(60連装ロケット砲装備のM4)があったことでしょうか、

*3:実際はもっと細々と条件がついていますが、おおよそは上記の通りです。

*4:1944年東部戦線、中央軍集団の崩壊の中での丘陵地帯に陣を張るドイツ軍にソ連軍の大軍が押し寄せるというシナリオ

*5:1944年バルジの戦いにおけるバストーニュ近くでドイツ軍歩兵師団が長く隊列を組み前進するのを、アメリカ軍の守備隊が妨害するというシナリオ。

『日本のいちばん長い8月』(ゲームジャーナル)を対戦する


戦略級・太平洋戦域・ボードゲームマルチプレイ

 

終戦を決めるのは誰か ── 太平洋戦争末期の政争を扱う異色作

太平洋戦争末期の日本を舞台に、国家中枢における権力闘争を描いた異色作『日本のいちばん長い8月』ゲームジャーナル)を対戦しました。本作のゲームシステムは、フランス革命期の政治闘争を扱った傑作フランス革命1789』ゲームジャーナル)をベースとしています。
半藤一利の『日本のいちばん長い一日』から取られたタイトルといい、テーマ設定も含めて非常に好みの作品なのですが、これまでなかなかプレイ機会に恵まれず、今回が初対戦となりました。

 

作品概要

太平洋戦争末期、日本の「中枢」を描く

本作が扱うのは、太平洋戦争末期における大日本帝国の国家中枢での権力闘争です。
首相・東條英機が辞任に追い込まれた1944年7月のサイパン島陥落前後から、終戦となる1945年8月までの期間をゲームとして切り取っています。ゲームは東條英機が政権を持っているところからはじまりますが、彼がすぐに政権の座を降りるかはプレイヤー次第です。

プレイヤーはそれぞれ、政治家・軍人・宮中関係者といった実在の人物を手勢として抱え、国家の進路を左右する政治的・軍事的決断に関与していくことになります。

 

勝利条件とプレイヤーの「使命」── VPだけでは終わらないゲーム

ゲームの勝敗は、終了時までに獲得したVPによって決まります。しかし本作では、全プレイヤーが共通して背負う、もう一つの重いテーマがあります。
それは、「この戦争を、どのような形で終わらせるのか」という点です。

終局の形は大きく二つに分かれます。

  • 終戦ルート
    全5ターンの終了までに、御前会議でポツダム宣言受諾を最終決定し、終戦詔書を発する
  • 本土決戦ルート
    御前会議で本土決戦を採択し、戦闘に突入。連合軍に重大な損害を与えることで、停戦や講和への道を探る(という解釈)

単にゲームとしての勝敗だけではなく、歴史を作っているという構造が、前作にはなかった本作の魅力ではないでしょうか。

 

ゲームシステム概観 ──『フランス革命1789』からの継承と進化

本作のシステムは『フランス革命1789』を基礎としていますが、単なる焼き直しではなく、日本という題材に合わせた調整と拡張が施されています。

まずは、前作から引き継がれている主要要素です。

 

共通するシステム

  1. キャラクターカードを入札し、自分の手勢として獲得していく

  2. キャラクター固有の能力を用いてアクションを実行する

 

一方で、本作独自の要素として以下の点が追加・変更されています。

 

本作独自の要素

  3. 前作の「政体選択」が「首班指名」に置き換えられた

  4. 首班プレイヤーによる「組閣」

  5. 戦闘・軍備要素の拡張(航空攻撃の実施、本土決戦の準備)

  6. 御前会議での終戦または本土決戦の決定

以下、それぞれを見ていきます。

 

システム詳細解説

① キャラクターカードの入札

政治家、軍人(陸軍・海軍、現役・退役)、宮中関係者など、合計30数名のキャラクターがカードとして登場します。各キャラクターには固有スキルが設定されており、入札によって誰を味方につけるかが、そのまま戦略の骨格となります。

② キャラクター能力によるアクション

各ターンのアクションフェイズでは、自分が保有するキャラクターのスキルを使って行動を行います。このあたりの「エンジン部分」は前作と同様で、キャラクターの組み合わせによるプレイ感覚は健在です。

首班指名

各ターン、「首班指名」スキルを持つキャラクターや役職によって、次の首相を投票で決定します。首相候補は限定されており、さらに前任の首相によって次の候補が制限される場合もあります。登場する首相候補は以下の6名です。

自分の手元にある人物だけではなく、他プレイヤーが操作するキャラクターであったとしても、誰を首班に据えるかは、VPの獲得やその後の展開を大きく左右します。

④ 組閣

首班指名されたキャラクターを保有するプレイヤーは、組閣を行います。
任命する役職は以下の6職。

陸海軍系の役職には、現役の大将しか就任できません。また、各役職にはキャラクタースキルとは別の役職スキルが付与されるため、自分の手札内のキャラクターを配置することで、自陣営の活動量を大きく増加させることが可能です。
役職を手元のキャラクターたちで独占することで、多大な効果を得ることもあります。

⑤ 戦闘と軍備

本作では、戦争を扱う以上、軍事要素も大きく拡張されています。
陸海軍関係者や関連役職者は、陸上部隊や航空兵力を増強できます。

  • 陸上部隊
     本土決戦時に、連合軍との戦闘で使用。
  • 航空兵力
     本土決戦前でも、軍令トップの命令で出撃可能。連合軍艦隊に損害を与えます。

戦果はチットで判定され、本土決戦が選ばれた場合にはVPとして最終計算に加算されます。ただし結果にはドローしたチットによって大きな振れ幅があり、0VPということも珍しくありません。特に航空攻撃については、特攻作戦や台湾沖航空戦における信頼度の低い戦果報告を反映して戦果なしというチットが多く含まれます。

⑥ 御前会議と終戦詔書

御前会議には、「重臣」キャラクターと特定の役職者が出席します。
主要なキャラクターは

のいずれかに属しており、ポツダム宣言受諾に必要な票数が集まれば終戦、足りなければ本土決戦へと突き進むことになります。

 

プレイ感と戦略の方向性 ── 毎ターン突きつけられる選択

手札となったキャラクター構成次第で、

  • 誰を首班に据えるべきか
  • 終戦を目指すのか、本土決戦に賭けるのか
  • 軍備拡張にどこまで注力するのか

といった判断が大きく変わってきます。さらに、毎ターン行われるキャラクター入札でどのカードを狙うかという読み合いも重要です。

ルールの補足と小ネタ

前作からの変化点

  • 前作に存在した「処刑」アクションはありません
  • 代わりに「テロ(暗殺)」可能なキャラクターが前作の1人から4人に増加
    反対の意見を持つキャラクターの排除に成功するだけで、首班指名、御前会議など多数決が用いられる際の決定内容に影響を与えることも少なくない
  • 「亡命」に近い要素として「前線派遣」が登場。軍人キャラクターを左遷する形で盤面から排除できます

 

プレイ内容

今回は5人戦でのプレイです。

本作では初期資金は全員同額ですが、キャラクターの価値は一見しただけでは分かりません。政治力が強い人物、首班指名や御前会議などの投票に影響力を持つ人物、軍備を整えられる人物など、役割はさまざまです。このため『フランス革命1789』と同様、キャラクターの優劣の選別ができる経験者ほど入札で有利になる構造になっています。

毎ターン、ランダムに場に出されたキャラクターを順番に競売にかけ、直前の入札額より必ず高い金額で札を入れていきます。つまり、良い人物を取れるかどうかは資金力だけでなく、入札順と読み合いも重要になります。

序盤:小磯の確保と東條体制の継続

序盤、当方が最初に確保したのは首班候補でもある元陸軍大将の「小磯国昭」。首班候補というのは、後述する「首班指名(首相決定)」で実際に首相になれる人物です。
続いて、終戦派の中心人物となる「重光葵」などを手勢に加えました。

各ターンには「首班指名」があり、これは次の首相を投票で決めるフェイズです。第1・第2ターンともに小磯を推しますが、人望不足で票が集まらず、結果として東條英機内閣が続投します。

東條英機を中心とする「東條派」は、陸軍将官を多く集め、本土決戦に向けた部隊動員や軍備拡張を優先して進めていきました。この段階ではまだ「終戦か決戦か」は曖昧で、各プレイヤーともまずは自分の影響力を広げる展開になります。

中盤:政権交代と“冷や飯”状態

第3ターンになると空気が変わります。
このまま東條政権が続けば、東條プレイヤーのVPが伸びすぎる。そう判断した他プレイヤーが結集し、ついに政権交代が発生します。首班に選ばれたのは「米内光政」。

ここで発生するのが「組閣」です。
首相を出したプレイヤーは、陸相海相などの役職を他キャラクターに割り振ります。
役職に就くと追加スキルが得られるため、入閣できるかどうかが得点力に直結します。

ところが当方の問題は、配下に海軍系キャラクターが一人もいなかったこと。米内内閣は海軍中心のため、当方はほとんど行動できず、VPも入りません。いわば「冷や飯」状態です。

唯一の救いが、米内側に適任者がいなかったことで、「東久邇宮稔彦王」に陸軍大臣ポストが回ってきた点でした。もっとも彼自身はVPを生まないため、ゲーム的には苦しい立場でした。

政争:排除と暗殺

米内政権は安定化のため、東條英機をはじめとする東條派閥の陸軍関係者に「前線派遣」を実施します。前線派遣とは、軍人キャラクターを政治の場から追い出し、一時的に無力化するアクションです。これにより、重要な票やスキルを封じることができます。

同時に、別プレイヤーは「テロ(暗殺)」が可能な陸軍将校を集め、内閣関係者への攻撃を開始。その結果、終戦派のキーマンである「豊田副武」が排除され、米内派が行おうとしている終戦に向けた多数派工作への出鼻を挫きます。

軍令掌握と出撃命令

ここで当方は東久邇宮陸相の権限を使い、陸軍側の最高指揮官である「参謀総長」のポストを米内派から奪取します。参謀総長を押さえると、陸軍航空隊を出撃させる権限を持てるようになります。

これにより、連合軍艦隊への航空攻撃を命令。戦果はチットで判定され、将来の本土決戦時にはVPに変換されます。

本来、当方は重光葵近衛文麿といった終戦派を抱えていました。しかしこのまま終戦になると、米内派の勝利がほぼ確定する状況。そこで方針を転換し、東條派と協調して本土決戦路線に舵を切ります。

本作の面白い点は、「思想」ではなく「勝ち筋」で立場が変わるところです。

最終局面:御前会議の一票

最終ターン。
資金をかき集めた米内派が、ついに御前会議の開催条件を満たします。

御前会議は、終戦か本土決戦かを決定する投票を行います。ここで終戦派が規定票数を集められなければ、自動的に本土決戦ルートへ進みます。

当方は配下の終戦派キャラクターすら棄権させ、終戦阻止に全力で動きます。多数派工作が崩れたかに見えたその瞬間、終戦側に最後の一票が投じられ――

御前会議にてポツダム宣言受諾が決定。終戦ルートでゲームは決着しました。

 

感想戦 ── 割り切りの美学が光るデザイン

フランス革命1789』も非常に完成度の高い作品でしたが、本作はテーマ性も相まって、個人的にはさらに楽しめました。
特筆すべきは、その割り切り方です。前線の戦況は一切扱われず、サイパン、フィリピン、硫黄島、沖縄、原爆投下といった戦況を扱うイベントはありません。唯一描かれる戦争要素は、航空兵力による連合軍艦隊への攻撃とゲーム内の選択によって発生する本土決戦のみです。外交的なイベント、例えば、ポツダム宣言に対する「黙殺」や、中立国を介した和平工作への取り組み、ソ連からの宣戦布告といった外交イベントもありません。下で紹介している外交を中心とした政治ゲームである『CHURCHILL』(GMT Games)などとは全くデザイン思想(作品のスコープ)が異なっており興味深いところがあります。

本作では、こうした割り切りの代わりに、国家中枢での政争と権力闘争は非常に生々しく描かれます。支持者を役職に就け、不要な人物は前線派遣で排除する。盤内外で行われる投票工作と根回し・・。

ゲームはキャラクターを中心に展開する訳ですが、キャラクターごとの能力差も大きく、カード知識の有無が展開に直結します。全5ターンという短さも相まって、計画性が問われます。

難易度は低めで、初プレイでも参加しやすい一方、回数を重ねるほど面白さが加速するタイプの作品だと感じました。

(終わり)

 

 

 

今回作品と同一のゲームシステムでフランス革命を描いた

今回の作品とゲームシステムを同一にする作品。こちらもフランス革命に対する大胆な切り取りには感心しました。プレイアビリティは高く、プレイ時間も長くないためとてもプレイしやすい作品です。

 

 

第二次世界大戦末期の連合国側の大国間外交を扱った作品

今回の作品は太平洋戦争末期の日本国内における政争を扱っていましたが、その時、連合軍側が「いかにして日本を降伏させるか」とか「終戦後の極東のあり方」などを議論していた連合国側の外交を扱った作品です。
テーマとして今回作品の状況を反対側から見るような作品と言えますが、もうひとつは日本のゲームデザインと海外(アメリカ)でのゲームデザインの違いを見るような点も興味をそそられます。
こうして並べて見ると、今回作品はシンプルなデザインと言えますがそれでいてもプレイアビリティとゲームとしての面白さが両立していて、非常に素晴らしいと思いますね。

 

 

もし、終戦詔書が出されず、本土決戦が行われていたら・・を扱った作戦級

1945年8月に終戦詔書が出されなかった場合、同年11月に発生することになったアメリカ軍による九州上陸作戦を扱った作戦級ウォーゲームです。今回作品の中でも、陸軍部隊の国内動員、戦闘力が低く武装も十分ではない師団を多く組成する、いわゆる「根こそぎ動員」が扱われていますが、このようにして動員された軍隊がどこまで戦えたのか・・、ほんとうにこうした状況に至らなくでよかったよと月並みな感想ですが、痛感させられます。

 

総理大臣をどのようにして決めるのか?

明治憲法下で総理大臣は天皇の大権による親任という形で選ばれていたため、議会は関与しませんでした。また戦時中は大政翼賛会状態でしたので議会自体は十分機能していなかったことはよく知られています。本作は19世紀のイギリスにおける政党政治を扱った作品です。仕組みとしては理解しているものの、実際の首班指名、議会民主主義、政党政治といった構造の中で、人はどのように振る舞うのか(一般人ではなかなか理解しがたい)が身をもって実感できる作品です。

『VERSAILLES 1919』(GMT Games)を対戦する【修正】

ボードゲームマルチプレイ

 

第一次世界大戦終了後の戦後処理を行う大国間の外交を扱う『Versailles 1919』(GMT Games)を対戦しました。

 

ゲームの紹介

背景

ヴェルサイユ会議といえば、第一次世界大戦後の講和条件を定めるため、戦勝国主導で開催された国際会議として知られています。敗戦国、とりわけドイツに課された講和条約である「ヴェルサイユ条約」は、その後の国際情勢に大きな影響を与えました。膨大な賠償金は後にナチスの台頭、さらには第二次世界大戦の遠因になったとも言える重要な歴史イベントだったと言えるでしょう。

本作『Versailles 1919』のタイトルはこのヴェルサイユ会議に由来していますが、本作が扱っているテーマは単一の会議にとどまりません。第一次世界大戦後という転換期における戦後国際政治全般を、いわゆる「BIG 4」と呼ばれたアメリカ・イギリス・フランス・イタリアの視点から描いた作品です。

戦争は終わったものの、世界は依然として不安定であり、各国の利害や思惑が複雑に交錯する時代が舞台です。その緊張感がゲーム全体を通して表現されています。
戦争と外交が絡む国際会議を題材とした作品としては、本作と同じ Mark Herman がデザインした『CHURCHILL』、さらにそのシステムを発展させた『Congress of Wien(ウィーン会議)』があります。本作は、これらと比べると外交交渉の処理方法や軍事要素の扱いが大きく異なり、より具体的な「問題解決」の積み重ねに焦点を当てたデザインになっています。

 

概要

Versailles 1919』は、第一次世界大戦後のパリ講和会議とその余波を描く、1〜4人用の外交・交渉ゲームです。 プレイヤーはアメリカ、イギリス、フランス、イタリアのいずれかを担当し、世界各地で発生するさまざまな「Issue(問題)」に介入・影響を及ぼしながら、自国の影響力(VP)を高めていきます。勝利条件はシンプルで、ゲーム終了時に最も多くの影響力(VP)を獲得した国が勝者となります。
各国は以下の要素を持ちます。

  • 国家アジェンダ(Strategy Cards)
    各国が目指す外交方針や優先事項を示すカード
  • 影響力(Influence)
    交渉や問題解決に用いるリソース
  • 軍事力(Military Units)
    不安定化する地域に介入するための軍事的存在感
  • 国民の幸福度(Happiness / Unhappiness)
    国内世論の指標。低下すると軍事行動に制約が生じたり、VP(勝利点)に悪影響を及ぼしたりする

 

Issue(問題)カードとその内容

ゲームの中心となるのが「Issue(問題)」カードです。

これらは戦後世界に実際に存在した具体的な外交・政治問題を扱っており、例えば以下のようなテーマが含まれます。

それぞれの Issue カードには、複数の「結論」が用意されており、どの結論を選ぶかによって各国や地域情勢に異なる影響が及びます。

 

ゲームの構造:影響力キューブによる「交渉と入札」

ボード上には複数の Issue カードが並びます。
どの問題から手を付けるか、どこにどれだけ関与するかは、すべてプレイヤーの判断次第です。プレイヤーは、自国の影響力を表すキューブを Issue カードの上に配置することで、その問題への介入・主導権争い(入札)を行います。Issue が「解決」された際最も多くの影響力キューブを置いていた国がその Issue を「解決した国」となります。Issue を解決したプレイヤーは、そのカードに記載された複数の結論の中からひとつを選択できます。

結論の内容によって、

  • 戦略マーカーの獲得
  • 各国の「国民の幸福度」の増減
  • 各地域の安定度(不穏/平和)の変化

といった影響が発生します。

VASSAL版から。
丸付き数字は盤面に元からある記述で処理の順序を表す。
画面左側は「Issue」(横長の大判のカード)とイベントカード(通常サイズのカード)が配置され、丸付き数字1,2が記入された「On the Table」の場所に置かれた「Issue」が決着を待っているものとなる。
右側の上半分は地域毎の不穏状況を表し、プレイヤー国が派兵すると軍隊マーカーを配置する。
右端のカードは、各国の「Strategy Card」(国家アジェンダ)を表す。

 

Issueカードの具体例:ラインラント問題

Issueの例として、「Rheinland」というカードを見てみましょう。

史実におけるフランスのラインラント進駐問題を扱ったカードで、6ポイントと比較的高いポイントを持ったカードです(Issueカードのポイントは3ポイントくらいが標準)。解決したプレイヤーはこの6VPを得た上でさらに、右に表記されている3つの結論のいずれかを選択することができます。

3つの結論とは次のようなものです。

  • ドイツへの残留: 欧州地域の不穏度は下がるが、フランスの幸福度が大幅に低下する
  • フランスによる占領: 欧州地域の緊張が高まる
  • フランスによる併合: ドイツから賠償を得る(ドイツの賠償問題が深刻化することを表している)。イタリアの幸福度が下がり、欧州地域の不穏度が急上昇する

「どの国が得をし(または損をし)、地域や世界がどう変化するか」というジレンマがカード一枚一枚に凝縮されています。

ラインラント問題を扱うIssueカード
こうしたIssueカードが53枚あり、史実からとられた領土問題、民族自決、賠償金といった課題/問題がとりあげられている。結論によってはどの国が得(または損)をして、どのような影響があるのかを見るだけでも興味深いです

 

イベントカード

Issue カードの処理と並行して、半ば自動的に引かれていくのがイベントカードです。
イベントカードには歴史的人物や歴史的事件が描かれており、Issue の解決とは別軸で、突発的な影響や変化をゲームにもたらします。これにより、計画通りに進めていた外交戦略が思わぬ方向に揺さぶられることも珍しくありません。

イベントカードの例。
フリチョフ・ナンセンは、ノルウェーの探検家・学者にして外交官。
ロシア革命や戦争で生じた難民救済を主導し、のちにノーベル平和賞受賞した。
このカード自体は(イベントカードとしては珍しく)良い効果を得ることができる

軍事要素の扱い

本作では、すべての問題が軍事力で解決できるわけではありませんが、一部の Issue やイベントでは軍事力が重要な役割を果たします。各国は同数(3個)の軍事マーカーを持ち、派兵・出兵を行うとして、以下のいずれかのエリアに配置することができます。

  • 欧州
  • バルカン
  • 中東
  • アフリカ
  • 太平洋

Issue やイベントの結果によって、これらの地域の安定度が低下していくことがあり、限界を超えると「蜂起」が発生します。蜂起が発生したエリアでは、自国の権益が失われたり、他国に奪われたりする可能性があります。軍事マーカーの配置は、こうした事態を未然に防ぐための抑止力として機能します。

 

ゲームの終了と勝利条件

Issueカードの中に混ぜられた「終了カード」がドローされ、「On the Table」で決裁されると終了手続きにはいり、用意された Issue カードがすべて消費されるとゲームは終了し、VPの計算が行われます。獲得したIssue自体に設定されたポイントがVPになります。また各国は、ゲーム開始時に選択した国家アジェンダ(Strategy Cards)に沿って Issue の解決や戦略マーカーの獲得を行えていると、追加のボーナスVPを得ることができます。
単なる問題解決の数だけでなく、国家として一貫した外交姿勢を貫けたかどうかが最終的な勝敗を左右する点も、本作の特徴です。

 

日本の存在感

日本も戦勝国のひとつとして登場します。
プレイヤー国ではありませんが、プレイヤー国以外で唯一独自の「国民の幸福度」パラメーターを持つ国として扱われています。

国家アジェンダの中には、日本の幸福度を評価項目に含むものがあり、そのアジェンダを採用したプレイヤーは日本の国内世論を意識せざるを得ません。朝鮮半島問題、山東半島、人種差別、対ソ問題といった Issueがカード化されており、結論次第では日本の幸福度や太平洋エリアの安定度が変動します。
日本が強国として存在感を持ちながらもプレイヤー国ではない点は、当時の国際政治における実質的な発言力を反映しているように感じられます。

 

プレイ

3人プレイでしたので、BIG4の中からイタリアを除いた、英仏米の3国による競合となりました。第一次世界大戦後、孤立主義に傾いたアメリカなので他国とはもっとも利害関係がないだろうということでアメリカを選びました。

開始直後、イギリスは軍隊(マーカー)の1/3を復員させました。世界大戦で肥大化した軍隊を減らすことにより、兵士たちは故郷に帰ることができ、イギリスはその先見的な決断によりVPを得(早めに復員を宣言した国からより高いVPを得ることができる)、国民の幸福度もあがります。
ただこの判断はのちの展開をみると早すぎたかもしれません。

アメリカはVPを稼ぐため、直接自国に関係がない「Issue」にも関与するように「影響力マーカー」を置きます。ただこれはリスクがあり、あまり派手に分散しすぎると、このカードを取りたい、または他国にとらせたくないという場面で入札する余力がなくなります。
このあたりは広く様々なIssueに関わっていくのか、集中して特定のIssueを落とさないようにするのかといった点は戦術になるのだと思われます。

イベントの関係で最初の「蜂起」がヨーロッパの一地方で発生。各国はStrategy Cardを選び、自国の国家アジェンダを決めます。この内容を履行することでVP計算の際に有利になる事項が示されます。

アメリカは「Global Trade:世界貿易)」を取得(場に出たカードの中から選ぶことができる)。産業を興し(工場マーク)、賠償を削減し(グラフマーク)、国民の幸福度を上げ、また世界の不穏度を一定以下に抑える、まさに世界平和を実現し、交易による貼っていを目指そうという内容になります。
以降、アメリカは主に殖産興業施策に打込みます。

この時、おそらくイギリスとフランスは、「植民地主義:Nation Building」と「孤立主義:Isolationnism」を国是としていたようでした(詳細未確認)。

 

大国が動かなくても、ゲームの進行にあわせて自動的に発生するイベントカードによるイベントにより、世界中のあちこちで不穏度が増したり、蜂起が発生したり、それらが鎮圧されたりします。それ毎に地域での優勢を誇る勢力が変わっていきます。

ゲームが進むにつれアメリカの悩みは「国民の幸福度」が下がり続けたことでした。幸福度が一定レベル以下になると軍隊の規模が制約を受け、最終的には軍隊をもてないばかりか、VPのマイナスをかこってしまいます。
下がり局面にはいると取り得る「Issue」についても選択肢が制約をうけてくるようになります。

イギリスとフランスは関係する「Issue」が多いため、互いに交渉を行い、「Issue」の獲得や結論の選択において取引を重ねます。全部取りではなく、お互いに得を分け合うのです。
一定枚数の「Issue」が処理されると山札の中から「Issue」のひとつとして、終了カードが現れます。終了Issueはそれだけで7ポイントの高得点をもったカードです。どの国が落札するか・・

最終的に、アメリカは「工場マーカー」の取得、ドイツの賠償の抑制、また世界平和には成功するものの、ポイントとしては3位になりました。

今回プレイ時の終了時状況

 

感想戦

『CHURCHILL』『Congress of Wien』との違い

『CHURCHILL』『Congress of Wien』との比較という観点ではいくつか挙げられます。

  • 対象となる時代
    ゲームの舞台がまだ戦争中で戦時外交を扱う前二作に対し、本作は戦後処理をテーマにしている
  • 外交システム
    会議で議題を奪い合う構造ではなく、Issue を解決し、その結論まで含めて交渉する
  • 軍事の位置づけ
    戦争中ということもあり、前二作では軍事と外交が不可分だが、本作では抑止力として簡素に扱われる
  • 勝利構造
    本作には交渉はあっても、協力要素はなく、VP による純粋な競争

デザイン思想について

『CHURCHILL』『Congress of Wien』の場合、各プレイヤー国の状況や抱えたジレンマをシミュレートしようとしています。『CHURCHILL』でいうと連合国を形作るプレイヤー国はまず枢軸国に勝利する必要がありますが、枢軸国は強固で例えば「第二戦線の構築」米国からイギリス・ソ連に対する「軍事支援」といった協力関係がなければ、うまく抑え込むことはできません。一方であまりに協力しすぎると、影響国範囲の拡大や各国が持つ国家アジェンダの相違などにより、戦後秩序がそれぞれの国の思惑の元に形作られる懸念があります。ゲーム中でもこうした各国が抱えたジレンマを感じることができるデザインになっていると考えます。

一方、本作は確かに舞台や詳細な設定、また登場する「Issue」や「イベント」類は第一次世界大戦直後に世界が直面した諸問題がとりあげられている一方、参加するプレイヤー国の持つ「影響力キューブ」や「軍事力キューブ」はゲームスタート時点で同数であるというところからはじまります。この点はゲーム的な処理ではあっても、シミュレーションとしてはあまり感心できる処置ではないようです。
扱われる「Issue」やその結論の詳細度(これはかなり感心しました)、また単に議論を獲った獲られたというだけではなくその結論までを扱うことで、条件闘争や代替条件の交渉などができるということで交渉や取引が発生するレベルになっているのに対し、外交として競合するベースは各国同じラインに絶たせるというゲーム的な扱いを行っています。

前者が状況やジレンマのシミュレーションを重視しているのに対し、本作は Issue の具体性を高める一方、それ以外の部分はゲーム的に整理されています。
扱う問題のディテールと、交渉・取引が自然に発生する構造は、本作ならではの魅力だと感じました。

 

結論として

面白かったです。

国家アジェンダを軸に Issue を解決していく構造、そして Issue ごとに結論まで含めて扱う点は非常に優れていました。
第一次世界大戦後の世界がどのような問題を抱え、どのような妥協や判断が積み重ねられていったのかを考えさせてくれる点で、本作は外交ゲームとして高い完成度を持っていると思います。歴史を学ぶ上でも参考になります。

軍事や地域情勢の表現は簡素ですが、プレイアビリティの向上につながり、またその分外交の表現とのバランスが取れており、ルール難易度も比較的抑えられています。

戦後外交や戦間期を扱った作品は決して多くありません。
その意味でも、『Versailles 1919』は貴重で、繰り返しプレイする価値のある作品だと感じました。

 

(終わり)

 

 

 

同じデザイナーによる外交を扱った作品です。ゲームシステムとしての相違については記事内で触れた通りです。

 

『CHURCHILL』と同じシステムを採用して、ナポレオン戦争の終盤を扱った作品です。

 

戦間期ドイツ国内政治を扱ったボードゲーム
ラインラント問題も登場し、賠償金の支払遅延によりフランス軍の進駐が発生するし、アメリカによる賠償金支払猶予など外交面では今回の作品と表裏となる事象が多く描かれます

 

1989年のソ連崩壊以降の欧州情勢をロシアVS欧州という対立軸で扱った作品です。2人用ゲームなので外交や交渉などはありませんが、ヘッドラインの処理が今回作品の「Issue」の扱いににているためあげています。

 

 

 

 

『ブラックオーケストラ(Black Orchestra)』(Game Salute)をプレイする

ボードゲームマルチプレイ

 

第二次世界大戦中のドイツを舞台に、ヒトラー暗殺をテーマとした協力型ボードゲーム『ブラックオーケストラ(Black Orchestra)』(Game Salute)をプレイしました。

 

 

ゲームの概要

初版は2016年発売。今回はその後追加されたエキスパンションを含めた構成でのプレイです。本作は史実に材をとった重いテーマを扱いながらも、明確な目標と緊張感のある進行を備えた協力ゲームになっています。

 

プレイヤーキャラクターと役割

プレイヤーはヒトラー暗殺を企てる「共謀者」となり、国防軍・情報部・民間人のいずれかに分類される実在の人物を担当します。キャラクターのバリエーションはかなり多く、史実に名を残した人物から、あまり知られていない人物まで幅広く収録されています。

イベントやアイテムの中には特定の職業でなければ使えなかったり使用時にボーナスがもらえないといった制約が存在するため、キャラクター選択の際には3つの属性がバランスよく揃っている方が、ゲーム運営は安定しやすい印象です。

共謀者には、映画にもなったヴァルキューレ作戦の中心人物であるシュタウフェンベルク大佐や、白バラ運動で知られるゾフィー・ショルなども含まれており、テーマ性の強さを感じさせます。

 

キャラクターのパラメーター

各キャラクターには以下の2つの重要なパラメーターが設定されています。

  • 動機(Motivation)

  • 容疑(Suspicion)

「動機」が低い状態では、手札枚数制約が厳しい、固有能力を使用できない、特定の暗殺手段が使えないといった制約を受けます。そのため、ゲーム序盤ではいかにして早めに動機を高め、行動の自由度を確保するかが重要になります。

動機はカード効果や他キャラクターからの支援、あるいはイベント(例:ユダヤ人迫害を目の当たりにする)によって上昇します。一方で、ゲシュタポからの威圧など意欲を削ぐようなイベントによって低下することもあり、常に安定しているとは限りません。

「容疑」はゲシュタポからの疑念の度合いを表します。行動やイベントによって上下し、最高レベル(Extreme)の状態で「ゲシュタポの手入れ」が発生すると、そのキャラクターは逮捕されてしまいます。

 

マップとナチス高官

マップはベルリン市街の詳細マップと、ドイツおよび占領地を抽象化したポイント・トゥ・ポイント形式のマップで構成されています。キャラクターは移動アクションによって各地点を行き来し、配置されているアイテムを探索・取得します。

アイテムには銃器、爆薬、毒薬など暗殺に直結するもののほか、尋問や危機を切り抜けるための補助的なものも存在します。また、一部の地点には固有効果が設定されており、例えばアウシュビッツではキャラクターの「動機」が大きく上昇する、といった強烈な演出が用意されています。

非プレイヤーキャラクターとして、ヒトラーの他、ゲーリング、ヘス、ゲッベルス、ボルマン、ヒムラーといったナチス高官が登場します。彼らはイベントに応じてマップ上を移動し、同じ地点にいるプレイヤーに対して厄介なペナルティを与えます。

例えば、ゲーリングであればアイテムの破棄、ヒムラーであれば容疑の上昇など、キャラクターごとに異なる嫌らしい効果が設定されています。

落ち着いて雰囲気のある色調のマップ。下はベルリン市街の詳細図
封筒を模したマーカーがアイテム。カラーのポーン(木駒)がキャラクターを表す。
上方にある横に細長い名前がはいったユニットがヒトラーの他、ナチス高官を表す。

 

カードとゲームの進行

ゲームで使用するカードは大きく3種類あります。

  • 共謀者カード
  • 尋問カード
  • イベントカード

共謀者カードはプレイヤーがアクションで引くカードで、「暗殺計画」や「違法書類」などが含まれています。違法書類を所持したままゲシュタポの手入れが起きると、逮捕のリスクが一気に高まります。

尋問カードは、逮捕後に釈放されるまでの間に使用されるカードです。カードに書かれた選択肢について、他プレイヤーと相談することは許されておらず、個人の判断が強く問われます。運良く疑いが晴れることもありますが、多くの場合はゲシュタポとの取引が発生し、ときには仲間を売るという展開もあり得ます。

イベントカードは全7ターンの進行に沿って公開され、歴史的出来事、ナチス高官の移動、そして一定枚数の「ゲシュタポの手入れ」カードが含まれています。

イベントカード例

 

ゲームシーケンス

 

暗殺の実行

暗殺は専用の6面ダイスを複数個振り、「スコープアイ印」の目をいくつ出せるかで成否が判定されます。「スコープアイ印」が出る確率は各ダイス1/6です。振るダイスの数は暗殺手段、アイテム、カード効果によって増加させることができます。

成功に必要な「スコープアイ印」の個数は、ゲーム開始時に設定される難易度(Easy / Standard / Hard)と、その時点での「ヒトラーに対する軍の支持」によって決まります。最低は2個、軍の支持が最大になると7個必要になります。

軍の支持は戦争前半では高く、ドイツが勝利するイベントでさらに上昇しますが、敗北イベントが続くと徐々に低下していきます。そのため、ゲーム開始直後の支持が低いうちか、戦争後半に暗殺を狙う流れになりやすいでしょう。

とはいえ、必要数の「スコープアイ印」を揃えるのは容易ではなく、「共謀者カード」による振り直し効果などを駆使しても失敗することは珍しくありません。万全を期すと同時に、失敗時の次善策を用意しておく重要性を強く感じました。

デザインと質感が良い専用ダイス。スコープアイ印の面が成功。

 

終盤の演出

最終ターンとなる第7ターンでは、連合軍が東西から進撃してくる影響で、キャラクターが移動できるマップ範囲が徐々に狭まります。時間切れが迫る焦燥感を、ルールとマップの両面から表現している点が印象的です。

 

プレイ

今回は3人プレイ。

民間人キャラクターである「ベルリン市警警察本部長ヴォルフ=ハインリヒ・フォン・ヘルドルフ」を担当しました。このキャラクターは、ベルリン市街にいる間はナチス高官と同じ地点にいてもペナルティを受けず、さらにベルリン市街で暗殺を試みる際にはダイスを2個追加できるという特性を持ちます。特にダイス追加は心強い能力と言えます。

若干さえない印象ですが、ベルリン市街内であれば能力を発揮する優秀マン。

 

他の2人は軍人と情報部を担当。銃器を用いた暗殺は軍人である必要があります。

序盤、共謀者たちはマップ内を移動しながら準備を進めます。ナチス高官の移動を避け、ゲシュタポの疑いを招かないように注意深く。
目的は明確で、「動機」を高め、手札枚数を増やすこと。行動の選択肢を広げなければ、暗殺そのものに辿り着けません。
「共謀者カード」に含まれる「暗殺計画」の書類には、列車爆破や毒殺といった手段と、それを実行するために必要なアイテムが記されています。

最初に選ばれたのは毒殺でした。首謀者はヘルドルフ。
ヒトラーの食事に毒を混入させるという、静かな方法です。
結果は失敗でした。十分な数のダイスを振りましたが、必要な目は揃いませんでした。理由は示されず、ただ失敗として処理されます。

暗殺計画は失われ、状況は振り出しに戻りました。
再び計画書を探し、その内容に沿ったアイテムを集め直す必要が生じたことになります。時間と余裕は、確実に削られていきます。

その過程で、ヘルドルフは二度ゲシュタポに逮捕されています。
いずれも取引によって釈放されたが、代償は小さくありません。仲間からの発奮により、再び「動機」を高め、計画を再始動させます。ただ、行動の自由は制限され、次の手入れが現実的な脅威として意識されるようになります。

そうしているうちには戦況は次第に悪化していきます。
ノルマンディーに第二戦線が開かれ、東部ではソ連軍がワルシャワ近郊まで進出しました。敗北を示す報告が重なり、これ以上の戦争継続は国の存亡に関わるという認識が、共謀者たちの間でも共有されます。

新たな暗殺計画やアイテムの収集は困難と判断され、方針が切り替えらます。
国防軍からヘルドルフに銃器が提供され、暗殺の舞台はベルリン市街に定められます。ヘルドルフの特殊能力が効果を出す地理的条件によって、非軍人であることの不利を補う狙いです。

前線での敗報が続くにつれ、国防軍内でのヒトラー支持も低下しきます。機会が着々と近づいている予感です。残された条件は一つ、ヒトラーがベルリンに戻るタイミングだけです。

その機会が訪れると、共謀者たちは同じ地点に集まります。
銃器が渡され、少しでも成功率を高めるための細々としたアイテムやカードが共用されます。

結果は成功。
こうして共謀者たちは、ヒトラーの排除を成し遂げました。

 

今回終了時の状況。
ヒトラーがヨーロッパ要塞を宣言し、ベルリン空襲やワルシャワ蜂起が起こる中、ベルリンに来たヒトラー(写真でポーンが集まっている場所にカードにより誘引された)は、ベルリン市警長官ヘルドルフにより銃で暗殺された。

 

感想

ゲシュタポの存在、頻発する「ゲシュタポの手入れ」、逮捕後の重苦しい尋問、マップ上を徘徊するナチス高官たち、そしてターンとともに進行する戦況。

さらに、強制収容所の存在や、イベントカードに散りばめられたユダヤ人迫害をはじめとするナチスの異常な行動が、通奏低音のようにゲーム全体の雰囲気を形作っています。単なるフレーバーにとどまらず、プレイ中に何度も精神的な重みを突きつけてくる点は、本作ならではでしょう。

ゲームの骨格自体は「マップを移動し、アイテムを集め、条件が整ったらラスボスに挑む」というオーソドックスな構造です。しかし協力ゲームとして、カードやアイテムの受け渡しによって役割を集中させ、暗殺役を明確に決める設計がよく機能しています。

一方で暗殺の難易度は高く、ヒトラーと同じ地点にいるタイミング調整、国防軍の支持状況、十分な準備、そして最終的には運も要求されます。成功したときの達成感と、失敗したときの絶望感の振れ幅はかなり大きめです。

暗殺に失敗しても首謀者が退場しないとか、複数回も逮捕されても保釈されたりなどいやいやゲシュタポはそんなに甘くないだろう、といったツッコミどころはありますが、ゲームのたてつけとして仕方がなかったのでしょう。

イベントカードやマップ、ダイスといったコンポーネントデザインが美しく、テーマの重さを損なわずにゲームとしての完成度を高めている点も好印象でした。

 

補足:

タイトルになっている「ブラック・オーケストラ」は、史実に現れるナチス・ドイツに対する最大級の地下抵抗組織の総称で「赤いオーケストラ(Rote Kapplle)」からとられた造語ではないかなと

 

(終わり)

 

 

残念ながら未プレイですが、同じテーマの作品です。

 

 

 

『BURNING BANNERS』(Compass Games)を対戦する【4戦目】シナリオ12・17

ファンタジーマルチプレイ

 

『Burning Banners』(Compass Games)を4人で対戦しました。

 

本作は今までも複数回プレイしていますので、ゲーム内容の詳しい紹介は過去記事をご参照ください。

 

種族の紹介

『Notebook LM』でインフォイラストレーションんを作成したら非常に出来がよかったので掲載します。

 

第1戦:シナリオ12「ゴブリン全盛期」

侵略側:シャシュカ王国(ゴブリン)、闇の軍勢
抵抗側:オースボーン(ドワーフ)、東方帝国
担当勢力:闇の軍勢

 

シナリオ概観

シャシュカ王国を構成するゴブリン族が大挙してフィヨルドランドへ侵入しました。フィヨルドランドは滅亡の縁に立たされ、ゲーム開始時点では小島の港を1か所保持するのみという状況です。ゲームにはフィヨルドランドの軍隊の残党が登場しますが、東方帝国のプレイヤーが操作します。
シャシュカ王国は続けて南方の東方帝国領内へ侵攻しようとしたところ、東方からオースボーンの救援軍が到着しました。シャシュカ王国は正面の東方帝国に加え、側面からのオースボーンの攻勢にも対応しなければならないでしょう。

 

闇の軍勢という勢力

闇の軍勢は、本作の中でも特に癖の強い勢力です。

  • 「居住地」をほとんど持たない
    自前の居住地を持たず、他勢力の居住地に生成される「集結地」から兵力を動員します。性質上、ゲリラ的な運用が基本になります。
  • 制限付きだが厄介な兵種構成

     多くの兵種が「野生」タイプで、居住地の占領などに制約があります。一方で「飛行」能力を持つユニットが多く、機動性は高めです。個々の戦闘力は高くありませんが、「集結地」から動員できるため、相手からすると安全な自国内など自由に軍隊が湧いてくることになり、嫌らしい配置が可能です。

  • 代表的ユニット:野ネズミの群れ

     他勢力の一般兵に相当するユニットですが、
    ・耐久力はなく、損害を受けると即除去
    ・しかし「先制攻撃」能力を持ち、攻撃力は黒ダイス1個と強力という極端な性能をしています。どこにでも設置可能な「集結地」から突然現れ、先制攻撃で相手を除去しうるため、対戦相手から見ると非常に鬱陶しい存在になります。

  • 特殊能力「奴隷化(Enslave)」

     成功すると、他勢力の軍隊ユニットを1個支配下に置くことができます。奪われた側が一気に崩れる危険性をはらんだ能力です。
    (他勢力には全く存在しないタイプの能力のため、「闇の軍勢」を担当する中では発動が最も楽しみな技でもあります)。

 

シャシュカ王国の宿命

シャシュカ王国(ゴブリン)は、経済面でも非常にピーキーな勢力です。

  • 他の勢力は支配下の居住地から定常収入を得ますが、シャシュカ王国は中立または他勢力の居住地を占領した際の「略奪」による一時収入のみ
  • さらに、支配下にある居住地1か所ごとに維持費が発生し、これを支払えなくなった時点で王国は崩壊します。
  • 居住地は動員やユニット回復に必須なため、最低1か所は保持せざるを得ず、何もしなくても毎ターン出費が続きます。

結果としてシャシュカ王国は、焼畑農業のように占領と略奪を続けなければ生き残れないという、非常に攻撃的かつ不安定な運命を背負っています。

 

プレイの流れ

マップは縦長で、地形の関係から湾を挟んで上下2つの大陸に分かれています(海上移動は可能)。

下側(南側)の大陸:シャシュカ王国 vs 東方帝国

上側(北側)の大陸:シャシュカ王国 vs オースボーン救援軍

闇の軍勢:南側の港と島嶼部を確保

という構図で戦線が形成されました。

 

今回のゲーム終盤、南側の大陸の状況(上のマップと向きが異なるので注意):

大動員を実施し、戦力を充足させたシャシュカ王国は南下を試みますが、戦力を整えた東方帝国による防衛線を前に前進を阻まれました。進撃の停止はシャシュカ王国の「崩壊」につながります。

茶色:シャシュカ王国(ゴブリン)  水色:フィヨルドランド
紫色:東方帝国  赤色:闇の軍勢

 

結果

定常収入によって安定的に戦力を増強できる東方帝国・オースボーンに対し、シャシュカ王国が新たな居住地を確保できなくなった時点でゲーム終了としました。

戦略の工夫次第で可能性はあるのかもしれませんが、シャシュカ王国を維持しつつ2勢力を同時に相手取るのは相当な高難度に感じられます。

闇の軍勢としても、もう少しうまく介入できれば展開は変わったかもしれませんが、
牽制するには戦力不足でした。

 

 

第2戦:シナリオ17 不死の皇后

侵略側:東方帝国、闇の軍勢
抵抗側:オースボーン(ドワーフ)、フィヨルドランド
担当勢力:オースボーン

 

シナリオ背景とバランス

魔女(本作ストーリーにおける諸悪の根源)に操られた東方帝国の皇后が皇帝を殺害。
東方帝国は侵略側として動くことになります。

一見変則的ですが、正統派の軍事力を持つ「東方帝国」と「オースボーン」がそれぞれの陣営に分かれるため、実はバランスの良いシナリオになっています。

侵略側:
東方帝国(正規軍)+ 闇の軍勢(トリッキー)

抵抗側:
オースボーン(重装・高耐久)+ フィヨルドランド(高機動)

と、役割分担が明確な構成になっています。

参考図:「闇の軍勢」の配置位置が今回は異なりますが、他3勢力については上記の状況になっていました。

※今回「闇の軍勢」は右上の「オースボーン」の勢力圏の下あたりに展開しました。

 

オースボーンという勢力

オースボーンはドワーフ族の国家で、経済力と軍事力を兼ね備えた富裕勢力です。

居住地からの税収に加え、鉱夫ユニットを配置することで鉱山収入を得られます。

一般兵クラスの「鉱夫(Miner)」は戦闘力こそ白1個と最低限ですが、

  • 動員コストが安い
  • 2ステップユニットで打たれ強い
  • 経済基盤にも貢献

と、非常に優秀な存在です。

最強ユニット「Storm Giant」は黒3・白3というゲーム屈指の戦闘力を誇ります。

 

展開

今回はゲーム会のリアルイベントの都合で時間が限られており、各勢力が勢力圏を広げ、本格的な衝突が始まる直前で終了となりました。

今回の終盤図:前掲のマップとは逆向きでオースボーン側から全体を俯瞰しています

東方帝国対フィヨルドランド、オースボーン対闇の軍勢といった対決状態になっています。オースボーンは種族固有の特殊能力カードを入手したことにより、山岳地帯や敵対する軍隊ユニットを無視した高速移動が可能となっており、実はこのとき「Storm Giant」と英雄ユニットのスタックにより、「東方帝国」の首都を急襲することを画策していました。ゲーム終了のため未遂に終わりました。

灰色:オースボーン  水色:フィヨルドランド
赤色:闇の軍勢  紫色:東方帝国

 

まとめ

面白い作品です。比較的手軽なマルチプレイヤーによるファンタジーウォーゲームとして楽しめます。

多彩なシナリオと特色ある種族が登場するマルチプレイヤーゲームで、ルール難易度も高くはありません。コンポーネントも良く、気持ちよくプレイできます。
若干侵攻側の勢力はトリッキーな分、扱いが難しいところはありますが、それでも全体のバランスは良いのではないでしょうか。
Compass Gamesからは種族の追加を行うエキスパンションのリリースが発表されていますので、そのあたりの調整がはかられているとよいかなと考えます。

(終わり)

 

 

 

『Model's Counterback』(Dissimula Edizioni)を対戦する【2/2】

東部戦線・作戦級

 

『Model’s  Counterback』(Dissimula Edizioni)を対戦しました。

 

 

1. ゲーム概要とテーマ

『Model’s Counterback』(Dissimula Edizioni)は、1944年夏、ドイツ軍中央軍集団崩壊後の戦局を扱った作戦級ウォーゲームです。攻勢を続けるソ連軍に対し、モーデル元帥がワルシャワ郊外で機動防御を駆使して反撃を試みる「防御側が主役」の戦いが描かれます。

ソ連軍のスチームローラーに対する機動防御のドイツ軍、と聞くと、鈍重なソ連軍と、少数精鋭で縦横に動くドイツ軍、「柔よく剛を制す」構図を思い浮かべがちですが、本作におけるソ連軍は決して鈍重ではありません。

ソ連軍の主力となる戦車軍団を構成する部隊ユニットは、ドイツ軍の部隊と同程度の機動力を持ち、戦闘力においても見劣りすることはありません。本作のソ連軍は数と戦力、さらに機動力を兼ね備えた、非常に使いやすい戦力として登場します。

一方ドイツ軍には、

  • 活性化における自由度の高さ(ソ連軍は活性化単位が軍団毎に固定)
  • 縦深陣地による損害回避(=後退することでステップロス損害を軽減できるが、ソ連軍は不可)
  • 強力なスツーカによる航空支援(ソ連軍にも砲撃支援があるが射程の制約ため局地的)
  • 特殊能力を持つモーデル元帥ユニット(ダイス振り直しや、活性化済スタックの再活性化等)

といった特徴的な優位点が与えられています。ただし、それらは決して圧倒的優勢といったことはなく、使いこなせなければ、ソ連軍の正面攻撃に押し潰される危険性を常に孕んでいる状態です。

 

2. 両軍の性格とプレイ感

ソ連軍:王道の正面攻撃+軽快な部隊による後方撹乱

ソ連軍は部隊数でドイツ軍より優勢です。ドイツ軍はもはや連続した強固な戦線を構築できるほどの兵力を持たないため、ソ連軍の機動力の高い偵察大隊といった部隊ユニットは、薄い防衛線を容易に突破し、ドイツ軍の背後へ回り込むことができるでしょう。

ドイツ軍が、道路結節点への注意が疎かになっている場合は、一般道路や幹線道路を伝って、一気に後方深く侵入されることになります。本作のソ連軍は、前線を押し潰すだけでなく、後方を荒らすことで勝利を引き寄せる軍でもあります。

ドイツ軍:ソ連軍を止めることはできないが遅らせることはできる・・

ソ連軍の活性化が軍団単位で、かつ軍団同士が協働しづらい関係性であるのに対し、ドイツ軍は未活性ユニットであれば自由に活性化可能です。後半に登場するSS装甲師団と組み合わせることで、局地的な優勢を作り出す余地は十分にあるでしょう

ただし、それは「ここぞ」という一点に限られます。漫然と、または全体で押し返そうとすると、ソ連軍の物量と機動力に飲み込まれかねません。

 

3. 本作を特徴づけるシステム要素

本作の印象を一言で言えば、盤面全体で展開する機動戦といえます。それを強く後押しする仕掛けが、いくつも用意されています。

■ 小さなマップスケールと大きな移動力

  • 1ターン=1日
  • 1ヘックス=2km

という細かいスケールのため、ユニットの移動力は全体的に大きい数値が設定されています。
偵察大隊14、戦車大隊12、機械化歩兵でも10と、道路移動を併用すれば20~30ヘックス以上の移動も珍しくないでしょう。

■ 移動しやすい地形

ワルシャワ郊外という設定上、マップには幹線道路と一般道路が密に張り巡らされています。
道路の消費移動力は次の通り定められており、

  • 一般道路:1/2MP
  • 幹線道路:1/3MP

高速移動が可能なため、部隊は想像以上の距離を一気に移動できます。

■ ZOC拘束の弱さと「離脱」ルール

  • ZOC侵入時:1MP追加、その時点で移動終了
  • ZOCからの離脱:ペナルティなし

さらに一定の移動力を持つ部隊であれば、相手の移動タイミングで相手ユニットが自部隊のZOCに侵入してきた際に、ノーコストで1ヘックス後退できる「離脱」が可能です。しかも回数制限はありません。無軌道に後退するのは得策ではないにしても、下手に相手に拘束されることを避け、自軍に有利な場所へ位置を変えることができます。
このため、戦線は固定化しにくく、毎ターンさらに毎ラウンドで状況が変わる流動的な戦いになります。

■ 強力なイベントカード

毎ターン両軍が引くイベントカードは、局地的ながら局面をひっくり返す力を持つものが多い印象です。
※ オリジナルは「イベント・チット」ですが、プレイアビリティ向上のためチットをカード化してプレイしています。

オーバーランの存在感

移動力が続く限り、何度でも攻撃可能なオーバーランは本作の華とも言える攻撃手段です。防御側も「離脱」で戦闘を回避できるため、戦闘は単発で終わらず、追撃と後退の連鎖になりやすいです。

■ 緩めの補給ルール

補給源につながる道路ヘックスから5ヘックス以内であれば補給下にあると判定されます。道路網が豊富なため、自軍ユニットの周囲6ヘックスを完全に囲まれ包囲状態でもされない限り、補給切れに陥ることはないように思います。
1ターンのスケールが1日という点も補給判定が厳しくない理由のひとつだと思われます。

 

4. プレイレポート

ソ連軍を担当しました。

写真右手が北になります。
マップ上部にある半円状の部分がワルシャワ市街。上端になっている東西に描かれているのがヴィスワ川(Wista)。

オレンジ色の星印で印をつけている勝利ポイント都市はマップ内に8か所あり、ゲーム開始時はすべてドイツ軍の支配下におかれています。

太い線が幹線道路。マップ上方向を左右に走るものから、マップ左下からワルシャワ方向、またマップ右下からワルシャワ方向に走る線の3本がメイン道路となります。
幹線道路以外にも縦横に細い線(一般道路)が走っていることがわかります。

ソ連軍は写真左端から第1ターンに2個戦車軍団、第2ターンに1個戦車軍団が登場。この3個の戦車軍団が主力となる。第7ターンにさらに1個軍団(非自動車化の歩兵)が写真下側(西側)から登場します。

ドイツ軍は第3ターンに第19装甲師団がマップ右上方向から、第4ターンに第5SS装甲師団ヴィーキングがマップ下左方向から、第5ターンに第3SS装甲師団トーテンコップがマップ下右方向からそれぞれ幹線道路をたどりマップ上に現れます。

 

第1ターン(1944年7月27日)

ソ連軍はマップ左端から2個軍団が登場します。
今回、ハウスルールとして、初期配置のドイツ軍はスタック禁止、またソ連軍登場ヘックスへの配置も禁止としました(初期配置条件からソ連軍の登場ヘックスを塞ぐことが可能であったため制約をかけたもの)。

第3戦車軍団(水色のライン)では、最初にドローしたイベントカードの中にあった「タンク・エース」を使い、同軍団の最強ユニットである戦車師団(8-4)に配置し、戦闘修正+4(元の修正値+2にタンクエース効果による+2)という戦闘修正値を得ます。このユニットが除去されない限りこの効果は続くのです。両軍の最強重戦車大隊(ドイツ軍のティガー、パンテル装備の大隊、ソ連軍の場合はJS2)(+3)すら上回るこの修正値は、本作では極めて危険な存在となりえます。

続くソ連軍第2活性化ラウンドでは第8親衛戦車軍団(赤色ユニット)も前進。薄く張られたドイツ軍防衛線を排除すると、「予備」指定されていた移動力14の偵察大隊が道路を使って、一気に前進。ドイツ軍側に対応可能な非活性状態の部隊ユニットがなかったことから、次ターンにはワルシャワ蜂起が発生する条件となる蜂起ラインを越えることが確定的となりました。

第1ターン終了時:
ソ連軍の2個戦車軍団がマップ左端より侵入。ソ連軍の偵察大隊のひとつがPraga付近に接近。ドイツ軍ユニットは明灰色のユニット(活性化済を表すトラックのシルエットが描かれたマーカーが載っている)

 

第2ターン(1944年7月28日)

第8親衛戦車軍団の偵察大隊が蜂起ラインを突破し、第3ターンからのワルシャワ蜂起が確定します。
同軍団の主力はドイツ軍の部隊ユニットを排除しつつ、道路移動を最大限活かしながら、Praga(ワルシャワヴィスワ川西岸地区)外縁まで進出します。

第3戦車軍団の「タンクエース」師団は、移動力の続く限りオーバーランを連続して実施します。3回目の攻撃ではVP地点 Minsk Mazowiecki のドイツ軍守備ユニットを攻撃し、さらに同市街を越えた実に4回目の攻撃でようやく停止するほどの暴れぶりを見せました。
Minsk Mazowiecki はその後、後続の第3戦車軍団主力により包囲攻撃を受け陥落しています。

ドイツ軍はバラバラと到着する増援ユニットから、ワルシャワ蜂起発生にあたって除去(蜂起の鎮圧に投入されるということで盤面から除去)されるユニットを確保し、Pragaの防御を固めます。

第2ターン終了時:

 

第3ターン(1944年7月29日)

本作では各ターンの先攻はソ連軍に固定されており、常に先行するソ連軍がターン開始時の主導権を握る展開になります。

第8親衛戦車軍団はワルシャワへ突入するのではなくPragaを左手に見ながら、北上し、Radzymin、Nieporet付近の渡河点ヘックスといった他のVP地点を目指します。
Pragaの市街にドイツ軍が対戦車砲部隊を混在させ、陣地構築したハイスタックをいくつも作ったことにより、無理攻めによる損害と部隊の拘束を嫌ったのです。

補足:ワルシャワ蜂起前後
史実でもソ連軍はPraga外縁まで進出した後、7月29日に攻勢停止命令を出している。
政治的な理由が主と言われるが、Pragaへの本格侵攻は9月10日と約1ヶ月後に先送りされた。

ドイツ軍はもともとPraga北側付近で戦線を張り、ソ連軍の北上を避けることを企図していたようですが、ソ連軍先鋒の侵攻が早かったことから、マップ北側より増援で到着した第19装甲師団もRadzymin(VP地点)等の防衛に送り込むしかなかった。

第3ターン:
ソ連軍第8親衛戦車軍団はParagaへの攻撃は避け、そのまま北上し、RadzymiやNieporet方面へ向かいます。後続の第16戦車軍団もそれに続きます。
ソ連軍第3戦車軍団は、第4ターンにマップ左下からドイツ軍の強力な増援である第5SS装甲師団が進出してくるのに備え、Minisk Mazowieckiの防御を固めます。

第4〜5ターン(1944年7月30日~同8月1日)

ソ連軍の先鋒となった第8親衛戦車軍団とそれに続いた第16戦車軍団とともに、北西に進路を取り、Radzyminを攻撃、さらに北側から登場したドイツ軍第19装甲師団とNieporet付近の渡河点(VP地点)を巡って激突しました。ドイツ軍は森林や湿地ヘックスを巧みに使いながら戦線を張り、スツーカを使った対地支援を執拗に行うことでソ連軍を悩ませますが、押し切られ、渡河点(VPヘックス)はソ連軍の手に落ちました(第5ターン)。


第5SS装甲師団ヴィーキングは第4ターンにマップ西端(写真手前側)に登場することが可能でしたが、登場タイミングを1ターン遅らせることで、登場位置を北側のRadzyminに続く街道に変更しました。
これによりソ連軍第3戦車軍団が位置していたMinsk Mazowiecki への圧力が減り、代わりにRadzyminへの圧力が強まることが必至となります。
ソ連軍は第3戦車軍団をRadzyminへ向かわせ、ドイツ軍の第5SS装甲師団ヴィーキング、第3SS装甲師団トーテンコップ(第5ターンに登場)の最強2個師団とソ連軍の2個戦車軍団がRadzymin付近で激突することになるのです。

第4ターン:
Radzymiは第8親衛戦車軍団の攻撃により陥落。第16戦車軍団、また第8親衛戦車軍団の一部はNieporetの周囲に展開するドイツ第19装甲師団他を攻撃しました。

 

第6ターン(1944年8月2日)

Radzyminにおける2個のドイツSS装甲師団との激突が予想される中、ソ連軍はRadzyminを堅守すべきか、いったん引くかを迷いますが、VP確保を優先しRadzymin周辺を強化します。

一方、Nieporet周辺のVPヘックスも確保済ですが、こちらはドイツ第19装甲師団が執拗に絡んでくることから、ソ連軍(第3戦車軍団中心)は、同師団の後方に部隊を迂回させ、北上を目指します。

SS装甲師団ヴィーキング、トーテンコップがマップに登場し、Radzymin付近でソ連軍と激突、ソ連軍防衛線は押し込まれました。ただしドイツ軍も戦力分断を恐れ、オーバーランの使用には慎重のようです。

コラム:勝利条件

ゲーム終了時のVP獲得状況による

マップ上には8か所のVPヘックスが存在し、この時点でソ連軍は4か所(Minsk Mazowiecki の2か所、Radzymin、Nieporet付近の渡河点)を確保済であるためドイツ軍と同点の状況ドイツ軍はPragaの3か所と北方の1か所を確保中。
他にはドイツ軍がスケジュールとして決まっている他戦域や蜂起鎮圧への戦力引き抜きに対応できない場合のペナルティがある

 

というところで時間切れ終了。両軍のほとんどの戦力が登場する中、残り4ターンがどう展開するのか読めない状況です。

「タンクエース」1枚、また戦線を張れないにしても部隊ユニットの位置ひとつで間隙を突かれ、移動力の大きさゆえに主戦場が短期間で南から北へ移っていきました。
こうしたダイナミズムこそが、本作の魅力となっています。

第6ターン終了時:
ドイツ軍のSS師団2個が到着し、Radzymiへの攻撃を開始します。
ソ連軍はMinsk Mazowiecki方面から第3戦車軍団の主力を急ぎ移動させます。各軍団の所属部隊がバラバラになりかけていますので、この後のターンにおいて課題となった可能性があります。

 

(終わり)