Their Finest Hour -歴史・ミリタリー・ウォーゲーム -

歴史、ミリタリー、ウォーゲーム、ボードゲーム

「歴史群像 177号(2023/2)」を読む

 

 

第1特集は「太平洋戦争時の日本巡洋艦

第1次世界大戦後の軍縮時代から第2次世界大戦に至る重巡洋艦軽巡洋艦がどのような構想のもとに整備されていったのかを辿っていく。条約規制下でも他国に遜色ない戦力を揃えるように様々な工夫をこらして建造されていった重巡洋艦に対して、軽巡洋艦は5500トンクラス以降ながらく停滞した(手が回らなかった?)。全体には目新しい内容ではなかった。

第2特集は、「戦国大名徳川氏の勃興」

大河ドラマにあわせた特集。承久の乱まで遡り後に室町幕府を打ち立てる足利一族が多く領地を持った三河は、大河ドラマ太平記」でも足利一族の本拠地として大きくとりあげられていたが、その足利一族の国であった三河で勃興したのが松平氏だと説き起こす。
記事の後半はこの後の大河ドラマでもとりあげられるであろう、家康による三河一向一揆の鎮圧から三河平定までが扱われる。が、いかんせん個人的に興味がそそられる内容ではなかった。

 

今号の記事の中で読み応えがあったのが次の3本

■ 戦後日本戦車発達史

戦後の日本戦車の変遷を、貸与戦車時代から61式、74式、90式、10式といった国産戦車の設計思想やその時々の政治情勢・国際情勢または軍事技術がどのように考慮され取り入れられたのか、一連の経緯をたどる。
旧軍時代の四式中戦車・五式中戦車の設計思想や仕様要件が、61式や中には74式戦車の仕様として生きていたという点は興味深かった。

またこの記事にあわせて、巻頭カラーページの「61式戦車 迷彩試作記」は、迷彩塗装の研究を行った当時の自衛官の手記。色の選択、迷彩パターンひとつをとってもストーリーあり、という内容であった。

陸上自衛隊再軍備にあたってはじめて試作開発を行った装甲戦闘車両である、60式自走106ミリ無反動砲の記事もよかった。

 

■ WWⅡ 歩兵携行式対戦車兵器

本誌中央カラーページは、第2次世界大戦時の各国が用いた歩兵携帯対戦車兵器の写真をカラー化した。個々の兵器の説明は多くはなかったが、百聞は一見にしかずの言葉通り、カラー化された諸写真が雄弁に語る内容であった。特にイギリス軍が用いた、PIATや、ドイツ軍版バズーカ砲のパンツァーシュレックの写真は珍しかった。

 

フランコ

山崎雅弘氏の記事でスペインのフランコ将軍を扱った記事もよかった。スペイン内戦から戦後までの一連のスペイン近代現代史をたどる内容であった。

注目は、スペイン内戦であれだけドイツ軍やイタリア軍の支援を受けたはずのフランコ政権が、第2次世界大戦においてなぜ枢軸側での参戦をおこなわなかったのかという部分。日独伊の三国同盟に参加する寸前までいっていて取りやめになったという。

スペイン人義勇兵で構成されたドイツ第250師団(通称:「青」師団)も少し触れられる。

 

 

戦後日本戦車のうち、74式戦車までを扱うことができるのは、ツクダの「パットン」。60式自走無反動砲も登場する。
90式戦車と10式戦車が登場するゲームはなかなか見当たらなかったりする。

 

試作で終わった旧軍時代の四式中戦車、五式中戦車が登場するのは、同じツクダの「九七式中戦車

 

 歩兵用携行兵器が登場するのは「スコードリーダー」シリーズ。ドイツ軍のパンツァーファウスト、パンツァーシュレックアメリカ軍のバズーカー、イギリス軍のPIATまでユニット化されていた。
アドバンスドスコードリーダー(ASL)になると使い捨てのパンツァーファウストのユニットは廃止されてしまった(使用する前に歩兵分隊が所有しているかどうかのチェックを行った上で、使う)。

写真はASLシリーズに登場するバズーカ砲ユニット。

 

 

「GUADALAHARA」はスペイン内戦のグアダラハラの戦いを扱った作品。
フランコ率いるナショナリスト党を支援したイタリアが全面的に義勇兵を送り込むが、マドリッドの手前で敗北してしまうという戦い。

 

 アバロンヒル第三帝国」では、IFシチュエーションをチットで決めるという選択ルールがあるが、その中で枢軸軍側に用意された10種類のIFシチュエーションのひとつが、スペインが枢軸側に立って参戦するというもの。戦力的にはたいしたことはないが、なによりもイベリア半島が枢軸側になることで地続きであるイギリス領ジブラルタが危機に陥るのは必定。

 

 MMP(GAMERS)「BLACK WEDNESDAY」は、レニングラード近郊でのスペイン「青」師団の戦闘を扱ったTCS作品。残念ながら、積みゲー状態だ。

 

 

「沖縄の落日」(ゲームジャーナル)を対戦する(3/3)

沖縄戦の陸戦を中心に、日米両軍の主力が激突した南部の戦いを首里防衛線が崩壊するあたりまでを扱ったゲームジャーナル誌の「沖縄の落日」を対戦した。

 

 

 

日本軍を担当した。

12ターンフルターンで戦い抜いたが最終的なVPでアメリカ軍に水をあけられた。
10ターン目あたりで首里防衛線は突破されていたので、その気になればアメリカ軍は那覇に突入したことだろう。ゲーム内では勝利条件の設定からアメリカ軍は那覇に向かうメリットはなく、むしろ勝利ポイントの獲得のため東海岸側に残るVPマーカーが配置されている制高点や陣地エリアに向かった。
事ここに至って、ゲームの中の第32軍は、首里那覇を捨て絶望的な持久戦を継続するために南部撤退を実施するといったところだ。

日本軍は「義烈空挺隊」による飛行場突入は発生したがVPを獲得するだけだ。史実でもそうだったように陸戦の戦局にはなんら影響を与えない。
日本軍による「攻勢命令」は発生しなかった。総攻撃にあたって日本軍に特別なダイス修正などが付加される訳でもなく、日本軍の思うタイミングで攻撃が発生する訳ではないので、タイミングによっては史実と同様に攻勢を行うことでかえって損害を増すことになるだろう。「攻勢命令」チットがドローされ、八原参謀の反対意見が通らなかった場合には総攻撃が発生するのだが、その時に備え「夜襲」チットを手元に残していた。「夜襲」チットを使うと日本軍は射撃戦無しでいきなり白兵戦を仕掛けることができるようになる。ただおそらくアメリカ軍側には「照明弾」チットがあって、阻止されただろう・・。
ついでに言うと「大和特攻」も発生しなかった。発生したとしてもVPの獲得のみで、陸戦には影響を与えないのは、他の海空戦のチットと同様だ。
 
チットのドローについてはここまでも書いてきたとおり、史実要素を考慮すればいたしかたない内容なのだが、補充がほぼ効かない分、日本軍が不利に見えた。ただチットの適用については、ルール解釈の誤りがあったので是正すればもう少し日本軍の不利は解消されるかもしれない。
また支援部隊チットは、一時に使うのではなく出し惜しみをしながら使うのがよいかもしれないが、日本軍のマップ上に展開しているユニットは強くないため、悩ましい。

本ゲームに関する1本目の記事(リンクは上のほうにある)について、アメリカ軍のチットの使い方を誤っていたと思われるため、内容を修正している。

前記事にも書いたとおり特に日本軍のチットについてはひとつひとつその選定や内容について(それぞれシリアスな内容を含んだものだが)、興味深かった。
それだけに、実際に首里防衛線が突破された際には、「もはや、ここまで・・」と実際の日本軍がそうであったように嘆息が漏れた。

本ゲームの場合、ゲームの外見、第一印象ではチットプルによりイベントが多数発生するような演出が施されたゲーム性重視のゲームのように見えていたため、実際のプレイ感としては少々意外な感じも受けた。

沖縄戦はやはり、通常のゲームとは異なる”気持ち”がはいってしまうなと思う。
外国人視点での沖縄戦を体験するため、2022年秋のゲームマーケットで未使用中古品として入手したWAR GAMER誌付録の「OKINAWA」(コマンドマガジンの付録にもなった)を試してみようかと思う。

 

おまけ

初期配置。マップ右端に嘉手納の街がある。日本名、中飛行場のちの嘉手納飛行場だ。
カーキ色の軍がアメリカ軍、茶色が日本軍。最初の3ターンは日本軍は最前線にいる大隊(賀谷支隊)だけが移動できる。

 

第2ターン終了時。アメリカ軍は1ターンに1個ずつVPマーカーを獲得していけばよいのでむやみに戦線をひろげず、2箇所程度に攻撃を集中している。日本軍はまだ善戦していて、一度では陥落しない陣地もあり、第2ターン辺りでは陸戦にてVPを獲得していた。
アメリカ軍部隊が東海岸まで突き抜け(マップ下方向)、日本軍陣地を大きく包囲しようとしている。日本軍のほとんどの部隊は移動制限により、移動することはできない。

 

第3ターン先攻。アメリカ軍の戦闘爆撃機の攻撃により日本軍の守備隊が1箇所吹っ飛んでいるが、これはルール適用誤り(後でわかった)。陣地は航空攻撃にも強い。
各陣地で双方のチットを用いた応酬が続く、「戦闘工兵」と「コマンダー」がペアになっていると日本軍としては「狙撃兵」を無効化された上で陣地の地形効果も無効化されるためどうしようもなくなる。

 

第3ターン後半。1箇所ずつ陣地を落とされ、それに伴いだんだんと戦線が後退していく。日本軍の陣地間の間隙にアメリカ軍部隊により侵入され、包囲される陣地がでてきた。戦闘結果がただの後退であっても除去されることになるため、日本軍の損害が倍増し始める。

 

第4ターン先攻。まだ日本軍の後続部隊は移動制限があり移動できていない。
日本軍も後方の陣地は構築中のところが多く、「建設工兵」チットとスタックしなければ陣地とは扱われない。支援部隊チットの数も少なくなりつつあり、日本軍のジリ貧が垣間見えるようになる。
日本軍の「県民防衛隊」が防衛する拠点を、アメリカ軍の「火炎放射器」装備の部隊が白兵戦で除去するという、考えてみると陰惨な戦闘が発生したのもこのあたり。

 

第10ターンあたり。アメリカ軍の先鋒は西海岸側で日本軍の陣地を抜いた。那覇まで遮る有力な日本軍部隊も陣地もない。

東海岸側の防衛拠点の部隊は後方を遮断される前に南部へ脱出を図るべし、と撤退命令が出る頃(このゲームの中では、勝利条件のため、そのようなムーブは発生しないが)。

後半ターンになると日本軍が陸戦で勝利をする確率はますます減り、日本軍のVPは「菊水作戦」などの海空戦で得ているだけになっていた。

 

最終ターン頃。毎ターン陸続と増援が登場するアメリカ軍に比べると、日本軍の増援は後半ターンに1個中隊ずつ登場するくらいで焼け石に水状態。チットについては本文中にも書いたとおりの状態なので戦力差は毎ターン確実に開いていく状態になる。
振り返ってみてもう少しやりようはあったのかもしれないが、この補充能力の差はいかんともしがたいようにも思う。

 

ゲームとしてはコンパクトな部類ながら、いろいろ考えさせられることが多かったという意味で評価したい。

 

最後に対戦いただいたかみさんの記事のリンクを張っておきます。
アメリカ軍からの視点と洞察が参考になります。AARの内容が相違しているのは、当方がきちんとメモをとっていなかったための誤りですのでご了承ください。


義烈空挺隊の生き残りの兵1名が最後にたどりついたという残波岬に居た猫。野良猫がたくさんいた。

第32軍司令部が最後に位置した摩文仁の丘から南の海を臨む。季節は同じ6月の海と空。

 

(了)

 

 

「沖縄の落日」(ゲームジャーナル)を対戦する(2/3)日本軍の登場チットについて

沖縄戦の陸戦を中心に、日米両軍の主力が激突した南部の戦いを首里防衛線が崩壊するあたりまでを扱ったゲームジャーナル誌の「沖縄の落日」を対戦した。

 

 

 

 

両軍で登場するチットはそれぞれの兵装・部隊・戦術などからとられているが、アメリカ軍のそれが一般的な名称で終わっているのに対し、日本軍のチットの多くはそれぞれ史実からとらている思い入れが強いものになっているようです。
前回の記事でできていなかったものも含めて紹介します。

 

日本軍のチット

特設連隊

日本軍の陸上支援部隊チットのひとつ。1個ユニットのみ歩兵部隊として、チット内に登場。戦闘力(射撃能力)は保有してなく、白兵戦値が「2」となっている(通常の日本軍の歩兵中隊の白兵戦値は「1」)。が、白兵戦値のダイス修正ボーナスは保有していない。人数は連隊規模だが、1ステップのみ。

史実の特設連隊は、中飛行場(今の嘉手納飛行場)の建設・維持管理・飛行支援を担当する部隊からアメリカ軍上陸直前に編成された。編成時の兵員総数は2個大隊約2000名。装備も戦闘訓練も十分ではなく砲兵戦力を保有していなかったため、夜間斬り込みでしか戦闘ができなかった。アメリカ軍上陸時には独立歩兵第12大隊(賀谷支隊)とともに最前線にたたされた。
アメリカ軍上陸直後の4月3日頃には組織的な行動はとれなくなりほぼ全滅状態になった。

 

海上挺進基地大隊

日本軍の陸上支援部隊チットのひとつ。1個ユニットのみ歩兵部隊としてチット内に登場。戦闘力(射撃力)は保有してなく、白兵戦値が「1」となっている(ボーナス修正はなし)。

四式肉薄攻撃艇(マルレ)装備の部隊(「震洋」は海軍の攻撃艇なので別もの)。特攻艇とも言われるが必ずしも特攻だけを攻撃手法とはしていなかった模様。上陸前に空爆により基地を破壊され装備を失ったりもするが、アメリカ軍の上陸直後から主に夜間での出撃を繰り返した。船舶装備を全て失った後、残存の隊員は陸上戦闘に参加し、ほとんどが戦死をとげた。

 

県民防衛隊

日本軍の陸上支援部隊チットのひとつ。1個ユニットのみ歩兵部隊としてチット内に登場。戦闘力(射撃力)は保有してなく、白兵戦値は「1」となっている(ボーナス修正はなし)。

沖縄では通常の予備役召集から拡張され、予備役外の17-45歳の男性までを対象に防衛召集が行われた。防衛招集兵22,000-25,000名のうち13,000名が戦死したとされる。
アメリカ軍上陸までに軍事訓練などはほとんどなく、軍服は支給されたが、武器も不足していた。基本的には土木作業になどに投入され、直接の戦力にはならなかったという。ただ、ゲリラ戦目的の遊撃隊に配属されるなど直接的な戦闘任務にもしばしば参加、戦闘に参加しないまでも最前線の部隊に同行して戦闘補助任務を担っていた。前出の「特設連隊」も防衛召集のひとつであり、戦闘任務に投入された例である。

 

第27戦車連隊

 日本軍の陸上支援部隊チットのひとつ。戦闘力-白兵戦力装甲値が1-1-2(アメリカ軍の戦車部隊チットは2-1-2。戦車戦自体が発生する訳ではないが戦力的には同レベルで扱われている)。日本軍で唯一の戦車部隊として1ユニットのみ登場する。再編成に必要なポイントが5と高いため、一度除去されると二度と復活は難しい(もっとも他の日本軍支援部隊も復活が難しいのは同様だが)。
アメリカ軍の戦車チットも2ユニット(他に水陸両用戦車1個、火炎放射戦車1個)しかないが、アメリカ軍のチットは復活に特に制約がないため、少々のタイムラグ後、チットプールからドローすることで再登場が可能。

沖縄に配置された第32軍唯一の機甲戦力。満州で編成された戦車第2師団の師団捜索隊から抽出改編され1944年7月に沖縄に配備された。一部を宮古島に分派していたため、沖縄本島に配備されていた車両は、九七式中戦車、九五式軽戦車それぞれ十数両にすぎなかった。5月3日の第32軍総攻撃により戦車のほとんどを撃破され残存戦車6両となる。5月4日以降は首里防衛線の石嶺丘陵に戦車をトーチカとして運用、隷下部隊の歩兵・砲兵(九○式野砲、一式速射砲を装備)の機動的運用により戦闘を継続。5月27日全車両を喪失した後、石嶺丘陵を撤退した。

 

32センチ臼砲

 日本軍の支援砲撃チットのひとつとして登場。射程・火力とも他の支援砲撃チットよりも劣るが、支援砲撃火力を1/3に低下させてしまうアメリカ軍の「煙幕弾」チットを 無視できる。

史実での正式名称は、九八式臼砲。「ム弾」「無砲弾」とも呼称される。発射台に直接、有翼のロケット弾のような形状の弾を配置して使用する。ただし弾側に噴射機能はない。破壊力では30センチの榴弾砲と同程度とされた。硫黄島での戦いでの利用が有名。

重擲弾筒

戦闘力-白兵戦力が2-1と、通常の日本軍の歩兵中隊(1-1または1-2)よりも射撃能力で上回り、さらに白兵戦力にはボーナスがつく心強いユニット。5ユニットも登場するため、序盤から中盤にかけて貧弱な火力の日本軍を支えてくれる。が、除去後の復活にはそれなりの補充ポイント(3)が必要なのは、他の日本軍の陸上支援部隊チットと同様のため、終盤の日本軍はジリ貧に陥る。

みんな大好き八九式重擲弾筒。通称ニーモーター。通常、1個小隊のうち1個分隊が擲弾筒装備になっており、4門が配備されていた。
沖縄戦における重擲弾筒の活躍についてはウィキペディアに詳しいので引用してみる。

・・擲弾筒は沖縄戦アメリカ軍兵士がもっとも恐れた兵器の一つで、前線で戦ったアメリカ軍兵士の評価は「それ(擲弾筒)はあらゆる兵器のなかでもっとも猛威をふるった」「擲弾筒の弾丸の飛んでくる音は目標となっている者には聞こえず、聞こえたときには手遅れだった。非常に大きな損害をこうむったものだ」「その砲弾をアメリカ軍の頭上に落下させることができたし、それほど弾着が正確でとくに嫌われていた」であった。

ウィキペディア沖縄戦」より

 

機関銃

戦闘力-白兵戦値2-0と日本軍の火力を強力に補強する支援部隊。さらに制高点に配置された際は射程が2ヘックスになる。
重擲弾筒と同様に火力に劣る日本軍にとって心強い支援チット。3ユニット登場する。一度除去されると補充ポイントが必要なのは他の日本軍陸上支援チットと同様。

機関銃についてもウィキペディアの「沖縄戦」の記述で取り上げられているので引用する。

・・重火器を含む総合的な火力では、圧倒的優勢であったアメリカ軍だったが、こと近距離の歩兵戦では、日本軍に火力で遅れをとることもあった。日本軍の歩兵部隊が小隊規模で擲弾筒を装備していたのに対して、アメリカ軍歩兵は中隊規模でも同様な支援火器はなく、また分隊レベルの支援火器が日本軍は軽機関銃であったのに対し、アメリカ軍はブローニングM1918自動小銃であり、弾倉が20発の容量と少なく、また銃身交換が容易にできず、射撃の持続性で軽機関銃に劣っていた。日本軍が沖縄戦で主に使用した九九式軽機関銃の1分間の発射速度は約800発で、M1918自動小銃アメリカ軍の主力機関銃ブローニングM1919重機関銃の約2倍の発射速度であり、九九式軽機関銃の甲高い発射音はアメリカ軍兵士に女性の叫び声のように聞こえて恐れられた。そして、第32軍には、フィリピンに送られるはずだったこの九九式軽機関銃九二式重機関銃が第10軍より大量に支給されており、第32軍の各師団は通常の編制より火器の装備密度が高かった。この豊富な火力によりアメリカ軍の歩兵と戦車を分離させて撃破する戦術は、沖縄戦では他の戦闘でも多用されアメリカ軍は速射砲や機銃陣地の火力支援を受け、その前面で爆薬で戦車に決死攻撃をかける日本兵が潜む塹壕を「蜘蛛の穴」と呼んで警戒することとなった

ウィキペディア沖縄戦」より

ASL(アドバンスドスコードリーダー)でも日本軍の小火器として軽機関銃重機関銃が登場するが、個々の兵器としての評価は決して高くない。が、数と密度を集めた際に有効であったということだろう。今度、ASLで「嘉数高地」を扱ったシナリオ集を確認してみる。

 

義烈空挺隊

日本軍の海空戦チットで「特殊作戦」をドローし、さらにダイスを振って1/6の確率で発生する。日本軍はVPを得ることができる。

5月24日、隊員百数十名は12機の九七式重爆撃機に分乗(1機あたり飛行隊隊員2~3名、空挺隊隊員11~12名)し出撃。4機は発動機不調により引き返したが、8機が突入。同日22時、6機が北飛行場(読谷飛行場)、2機が中飛行場(嘉手納飛行場)に強行着陸を図った。
アメリカ軍の記録では読谷飛行場では1機が胴体着陸に成功、機体から飛び出した日本兵により付近の航空機を破壊て回り飛行場は混乱状態に陥ったとされる。
翌25日13時頃、空挺隊員の最後の1名が残波岬で射殺され部隊は全滅したとされる。
過ぎる5月22日、第32軍は南部撤退を開始する予定であり、沖縄戦の大勢も決し時期を逸した状態であったため、ここまで温存していた精鋭の空挺部隊を使うことに異議があったとされるが、最後は「死に場所を与える」ように出撃命令が下った。
出撃直前に報道班員が取材したこともあり、戦時中には珍しく出撃直前までの部隊の写真や声が多く残っていることでも知られる。

 

桜花

日本軍の海空戦チットで「特殊作戦」をドローし、さらにダイスを振って1/3の確率で発生する。日本軍はVPを得ることができる。

ロケット推進を用いた特攻機アメリカ側の通称「Baka Bomb」。目標付近まで一式陸攻に搭載させ到達させる必要があったが、鈍重な爆撃機により多数のアメリカ軍戦闘機の邀撃を突破しなければならず、損害が多かった。桜花搭載時、一式陸攻は時速240キロ程度しか出せなかったという。400~500キロで飛び回る戦闘機からすると射撃の的でしかなかったであろうことは容易に想像できる。
有名なのは1回目の出撃となった神雷部隊の野中隊。18機の一式陸攻アメリカ軍の艦載戦闘機の攻撃により桜花の発進もできずに全滅している。その後も出撃を重ねるが、母機の機体不良など問題が多く戦果はあまりあげられていない。沖縄戦の途中から出撃は取りやめ、本土決戦用に温存された。

 

彗星薄暮攻撃

日本軍の海空戦チットで「特殊作戦」をドローし、さらにダイスを振って1/3の確率で発生する。日本軍はVPを得ることができる。

1945年2月に編成された夜間戦闘機隊「芙蓉部隊」による攻撃を指すものと思われる。

菊水作戦

 日本軍の海空戦チットで復数枚あるチット。ダイスを振って成功するとVP(1~2VP)が発生する。アメリカ軍の海空戦エリアに「水上艦」チットがある場合はVPの代わりに水上艦へ損害を与える場合もある。

4月6日の菊水一号作戦から6月22日の菊水十号作戦まで行われ、陸海両軍の航空隊が参加した。海軍機は940機、陸軍機は887機が特攻を行った。海軍では2,045名、陸軍では1,022名が特攻により戦死したが、連合軍も約10,000名の兵士が死傷し、36隻の艦船を失い368隻が損傷するといった甚大な損害を被った。

 

大和特攻

 日本軍のイベントチットのひとつ。戦艦大和を中心とする日本艦隊の水上特攻。ダイスの目によりVPを得ることがある。

 

攻勢命令

 日本軍のイベントチットのひとつ。敵ZOC内にいる日本軍はすべて攻撃をおこなわなければならない。「攻勢命令」チットをドローした際に八原参謀が失脚していない場合は「幕僚会議」を開催することができ、ダイス判定により攻勢を中止することができる。

 日本軍は八原参謀が主張した持久戦術によりアメリカ軍の進撃を遅滞させてきたが、5月3日総攻撃を実施した。八原参謀は総攻撃に反対したが、長参謀長以下他の参謀の主張を留めることはできなかった。総攻撃はすぐさまアメリカ軍の反撃にあい、5月4日夜にはその失敗は明らかになり、5日牛島総司令官は長参謀長を介さず、八原に中止命令を告げ、以降、軍の指揮を八原の方針に一任するとした。
総攻撃の失敗により、沖縄戦は二週間以上短縮されたと言われる。

 

(つづく)

 

 

 

 

「沖縄の落日」(ゲームジャーナル)を対戦する(1/3)【訂正あり】

沖縄戦の陸戦を中心に、日米両軍の主力が激突した南部の戦いを首里防衛線が崩壊し第32軍が南部撤退を行う前あたりまでを扱ったゲームジャーナル誌の「沖縄の落日」を対戦した。発売当時、首里城火災のため、発売自粛?で入手できないといった話があったと聞くいわくつきの作品だ。

 

 

 

写真右手が北、マップ左上あたりに那覇の市街地ヘックスがある(ゲーム内では使うことはないが)。途中の高地や森林が主戦場となり、有名な嘉数高地(Kakazu Ridge)なども登場する。赤で縁取られたヘックスが日本軍が拠るところの陣地ヘックス。
カーキ色のユニットがアメリカ軍、茶色は日本軍。当たりくじのような赤の縁取りがあり、旭光がデザインされたマーカーは、日本軍側のチット(陸上支援部隊)で、戦闘時に開示するまで内容は不明となっている。  

 

 

ゲームシステムの紹介

攻守交代しターンを進めるオーソドックスなシステムで、戦闘は防御側射撃ー攻撃側射撃ー白兵戦というシーケンスで進んでいく。
射撃戦はファイアパワー方式で戦闘力(火力)の数値分の個数(地形修正等あり)のダイスを振ることで相手に与える損害を算出する「"6"出ろ」システムだ。結果は1ステップロスして後退か、単なる後退か。

射撃戦では物量(火力)がものいうためアメリカ軍有利、白兵戦では白兵戦値という異なる数値を用いるが、適用されるダイス修正により日本軍が若干有利にある(これにアメリカ軍が「火炎放射器」チットあたりを使うとその優劣は逆転される)。

全12ターン。
時間的なスケールは明示されていないが、史実と照らすと、1ターンは3~4日程度と想定される。主力となる歩兵部隊はアメリカ軍は大隊単位、日本軍は中隊~大隊単位となっている。歩兵以外の支援部隊の多くはチットとして提供される。


チットシステムは本ゲームの最大の特徴

チットは各プレイヤーターンの最初に決められた枚数を引き、その内容によってすぐに適用されるものや、手元に保持しておくことができるもの、部隊ユニットとして増援と同じようにマップ上に登場させる必要があるものがある。なお手元に留め置いた場合の枚数制限はない。

  • イベント:即イベントを発生させる
  • 海空戦部隊(水上艦艇、航空機):航空部隊や水上部隊、または海空でのアクションを行う
  • 陸上支援部隊:マップ上に配置し、陸上ユニットとして使う
  • 戦術:戦闘発生時に使用し効果を及ぼす(アクションカードとしての機能)


陸上戦闘に直接関係がするのは陸上支援部隊と戦術に関するチットになるが、相手に効果を与えるものと、その効果を打ち消すチットがあり、チットを出す、出さないというカードゲームでの札の出し合いのような展開になる。

日本軍の歩兵部隊の多くが配置される陣地ヘックスは防御時の地形効果として、戦闘解決に扱うダイスの数を半分にする。例えばアメリカ軍が火力を20戦闘力を集めると戦闘解決に20個のダイスを振ることになるのだが、陣地ヘックスはダイスの個数を10個に半減してしまう、というかなり強力な防御効果を持っている。
この陣地ヘックスに対抗できるのはアメリカ軍の「戦闘工兵」になり、陣地ヘックスの地形効果を無効化できる。
アメリカ軍が「戦闘工兵」チットを投入すれば、日本軍はその対抗として「狙撃兵」チットを投入することで「戦闘工兵」チットを無効化できる。アメリカ軍はさらに「コマンダー」チットを投入することにより日本軍の「狙撃兵」チットを無効化できる。結果として、当初の「戦闘工兵」チットが残ることになり、陣地ヘックスはダイスの数を半減させるという地形効果を失うことになるのだ。

このように戦闘解決に際して、戦闘に参加させるチットを交互に提示していくことにより、兵力を強化したり、特殊な効果を及ぼしたり、さらに相手のチットを無効化できたりする。

アメリカ軍側の白兵戦値を強化することができる「火炎放射器」チットに対しては日本軍の「狙撃兵」チットが有効。「狙撃兵」に対しては上記の通り、「コマンダー」により無効化が可能。
日本軍の「夜襲」に対しては「照明弾」、アメリカ軍の「戦車」と「火炎放射戦車」に対して、日本軍は「対戦車砲」や「対戦車班」が対抗する。「対戦車班」はアメリカ軍の「コマンダー」により無効化される。
チットは一度使用すると除去されるが、一部のチットを除き、一定の処理の後、プールに戻され、再度ドローすることが可能となる。

 

史実を考慮すると日本軍・アメリカ軍のチットの利用環境の差は理解できるが・・

沖縄戦においてアメリカ軍は豊富な補給と膨大な増援を擁し、さらに制海権・制空権を握っていた。一方の日本軍は、孤立化した状態にあり、救援は望めなかった。制空権を握られた状態では、日中の部隊の自由な移動はまず不可能であった。
こうした両軍のおかれたシチュエーションの違いにより、チットの種類や構成だけではなく、チットの使用環境は両軍でかなり異なる。

アメリカ軍のチットは特に制約もなく再使用できるのに対し、日本軍は支援部隊系のチット(「機関銃班」「重擲弾筒」「対戦車砲」などのチット)を中心に一度除去された後は補充ポイントがなければ再配置ができない。日本軍に十分な補給や補充があった訳ではないため、補充ポイントを得る可能性は低い。ポイントを得るには「補充」チットを引く必要があるが、「補充」チット自体の出現頻度がレアな存在だ。

毎ターンに得られるチット枚数はアメリカ軍は終始6枚なのに対し、日本軍は初期の3ターンのみ5枚、以降は4枚と差がある。さらに記載した通り、日本軍は支援部隊を中心に再利用がほぼ難しいのに対し、アメリカ軍には制約がない。アメリカ軍は下手に手元にとどめておくよりも、どんどん使っていくことで、有益なチットを何度も登場させることができる。
日本軍のいくつかの戦術チットを無効化できる「コマンダー」や、陣地の地形効果を無効化できる「戦闘工兵」など最たるものだ。一度引いて使わないで手元に置いておくチット枚数に制約がないこともあって、アメリカ軍は、日本軍のチットを使った活動を封じることは比較的容易に思われる。日本軍からすると「狙撃兵」チットを使って除去したこれらのチットがペナルティ無しに(再登場までに多少タイムラグがあるのと、プールからドローしてくる「運」は必要だが)何度も再登場してくることになる。
またカードドリブン系のゲームにあるような手元に貯めておいておける手札制限がないため、アメリカ軍は有用なチットは何枚でも手元にとどめておくことができ、使用したい時に登場させることができる一方、日本軍はマップ上に配置することが前提になるチットが多いこともあって、手元に留めおくほどの余裕はない。
アメリカ側の攻撃に対して日本軍の有効な反撃手段となる「狙撃兵」や「対戦車砲」といったチットはマップ上に配置することが前提になるのに対し、アメリカ軍は、「戦闘工兵」や「コマンダー」をあらかじめ配置する必要はなく、使いたい戦闘にそのまま使用することを宣言することで使用できる。
【訂正】「コマンダー」や「戦闘工兵」を宣言することで自由な箇所で使用できると書いているが、これは適用間違いと思われる。基本的にアメリカ軍の部隊または戦術チットも日本軍と同様に移動をしていく必要がある。
日本軍が当時自由な移動ができない状態であり、一方のアメリカ軍の移動や配置を邪魔するすべがなかったことを考慮すると、チットの扱いの差は当然の仕様とも言えるが、如実に戦いの流れに影響を与える。

日本軍は戦力が貧弱であるため強力な地形効果が得られる陣地ヘックスにこもることになる。それでも初期のうちは「重擲弾筒」や「機関銃班」といった支援部隊のチットとスタックさせることでなんとかアメリカ軍側に多少の損害を与えることもできるのだが、こうした支援系チットもいったん除去されると復活は難しく、またゲームが進むにつれ増援が到着するアメリカ軍に対して日本軍はほぼ増援がないことからも、だんだんとジリ貧になっていく。地形的に包囲されやすい陣地の場合は、防御側後退であっても除去になること、後方の陣地は構築が間に合っていない(日本軍の「設営工兵」チットがあれば陣地とすることはできる)こともあり、拠るべき拠点が十分ではないことなどのため急速に日本軍はその勢力を失っていく。
増援が(ほぼ)ない、補給もないというのは実際の日本軍の通り、といえばそれまでなのだが、本ゲームの日本軍もあるところまでは敢闘できるものの、物量に押されて最終的に防衛線を破られることは必然となっている。

 

【補足】 こうしたチットの利用環境(再利用環境)のアンバランスな状態を埋めるために、アメリカ軍には各プレイヤーターンにおいて攻撃を発起する地点分の補給ポイントを消費するというルールがある。この補給ポイントというのはチットを消費することで得られる、ということで余計にチットを消費させるルールとなっているのだが、そもそものところでドローできるチット枚数が多いためそれほどの負担になる訳ではなく、今回のターンは補給ポイントが苦しいから攻勢を控えよう、といった抑制効果はあまりないように感じられた。

 

勝利判定はVPによるが得点方法は独特

勝利判定は勝利ポイント/VP制なのだが、「最終的には戦線崩壊する」ことが必然である戦闘を扱うにあたってポイント獲得方法は独特なものになっている。
VPのメインの獲得方法はマップ上にある制高点ごとに点数がわからないように伏せられて配置されたVPマーカーを取り合うことによる。ゲーム開始時にマップ内の制高点のすべては日本軍が占めているのだが、アメリカ軍は毎ターン1個ずつこのVPマーカーを獲得しなければならない。制高点を確保するとそのままVPマーカーはアメリカ軍の手に落ちる(ただし点数面を見ることができるのはプレイ終了時だ)
日本軍は、あるターンでアメリカ軍が1個もVPマーカーを確保できなかった場合、任意の日本軍支配下にある制高点のVPマーカーを獲得できる。アメリカ軍側からすると、毎ターン1個のVPマーカーを確保するというノルマが与えられていると言える。
制高点の多くは日本軍の陣地ヘックスとなっていることから、戦闘は制高点の取り合いとして展開するという訳だ。
ただこのルールはゲーム終盤、アメリカ軍におかしな行動を引き起こす。
日本軍の戦線を突破し、那覇に突入が可能になったとしても、アメリカ軍部隊は踵を返し、VPマーカーのある制高点の確保に向かってしまうのだ。もっとも戦線突破され、その穴を塞ぐ手段もない時点で日本軍の実質敗北ということだろうから気にすることはないかもしれない。

 

日本軍の特攻作戦もVP獲得手段だが、全面的に「運」の要素に依存している

制高点におけるVPマーカーの争奪というだけでは日本軍が不利とされたか、日本軍はチットによって引かれた海空戦の結果によってVPを得ることができる場合がある。
「菊水作戦」は特攻作戦だが、ダイスによる結果によって成功すると、VPを得るか、アメリカ軍の水上艦を撃退することができる。「大和特攻」も同様だ。他にも「特殊作戦」として、桜花による攻撃、彗星による薄暮攻撃、義烈空挺隊の突入などが発生し、VPを得ることもある。
こうした特攻作戦のチットを引くことも、その後のダイスでの判定もいずれも運次第となるので、運次第の方法に大きく依存(感覚的には日本軍のVP獲得手法の2/3程度)してしまうのは問題ではないかという印象はある。

 

(つづく)

 

 

 

 

写真でわかる事典 沖縄戦

写真でわかる事典 沖縄戦

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「Mr. MADISON'S WAR The Incredible War of 1812」(GMT)を対戦する(2/2)

1812年アメリカ合衆国イギリス連邦が北米を中心とした戦場で戦っていた米英戦争を扱った「Mr. Madison's War The Incredible War of 1812」(GMT)を対戦しました。

 

 

 

 

 

アメリカ軍を担当しました。

1ターンに受領できるカード枚数は1812年で7枚。
交互にカードを使っていくのですが、カードというリソースをどう配分していくのか、悩みどころです。1812年で活動できるターンは、「春~夏ターン」と「夏~秋ターン」の2ターンになります。アクションは2ターン分の14回となります。

アメリカ軍が攻撃を発起するエリアが大きく3方面あるのですが、どこでどれだけアクションを起こすのか(1813年以降の場合はこれに3つの湖それぞれでの船の建造がはいります)が考えどころになります。

 

エリー湖西岸付近・デトロイト方面

デトロイトの南東にはイギリス軍の拠点になっているマルデン砦(Fort Malden)があります。

エリー湖オンタリオ湖間の地峡部分(ナイアガラ)とオンタリオ湖

両軍が3ヘックスにわたってそれぞれ砦を構えています。史実ではこのあたりの砦を焼き討ちにした、とかされたとかいった事件があったため、そうした史実を受けたイベントカードが用意されています。

オンタリオ湖東岸またはセントローレンス川

オンタリオ湖の北東にもイギリス軍艦艇の拠点になっている港町があります。
その北東にイギリスの拠点であるモントリオールケベックが控え、ここにはイギリスの大軍が駐留しています。

 

マップ東側のシャンプレーン湖近くには初期配置でアメリカ軍に大きめのスタックがいます。このスタック数個連隊を北上させたのですが、すぐさまイギリス軍はモントリオールから大軍を南下させたため戦力として拮抗状態になり、それ以上手を出せない、膠着状態に陥ります。
アメリカ軍の指揮官ユニットは階級が高いので大軍を動かせるのですが、指揮値が3ですので、ポイント3のカードでしか活性化できません。カードのめぐり合わせによっては不活発にならざるをえないという使い勝手が悪い指揮官です。アメリカ軍にはこういう指揮官が多いです。

活性化できないため、後退させるのも難しく仕方なく冬営のための補給集積所を用意しました(樽が書かれたマーカーが補給集積所です)。

 

オンタリオ湖で船を建造し、イギリス海軍よりも数的有利(1隻でも多い場合はダイス修正が得られる)を確保後、イギリス海軍を撃退しました。アメリカ海軍がオンタリオ湖の支配を得ました。

左下の地峡部分はイベントカードなども得ていたのですが、イベントとして使っても一発で終わってしまいそうで、カードをポイントとして使ってしまいました。タイミングを得ず、どうもせめづらいです。

ゲームの後半、イギリス軍が逆にカードイベントを利用してアメリカ軍の砦を落としていました。

オンタリオ湖の支配権はこの後も二転三転しますが、最終的には建造可能な船の隻数が多いアメリカ軍がイギリス艦隊を封じてしまいます。
ただ湖の支配権を得た後の次の手が難しいところです。湖北岸に強襲上陸をかけることも検討しますが、逆に上陸部隊が孤立させられそうで、断念してしまいました。

 

指揮値2の指揮官に率いられた増援の陸軍部隊がイギリス艦隊の拠点になっていたマルデン砦に突入させます。突入に先立ってカードイベントにより、アメリカ艦隊はイギリス艦隊が港外へ退避しようとしたところを補足、海戦にもちこみました。数的優勢を得ていた米国艦隊により、イギリス艦隊は降伏(=全滅)してしまいます。ここにエリー湖制海権アメリカ艦隊が担うことで決定します。

マルデン砦から退却したイギリス陸軍部隊は、エリー湖北岸で守備態勢にはいります。アメリカ軍はその後方への強襲上陸を行うことでの挟撃といった作戦も検討しましたが、実施には至りませんでした。

 

最終年の1814年になると講和条約カードの出現によってサドンデス的に終了となります。アメリカ軍はエリー湖オンタリオ湖制海権を得ています。シャンプレーン湖では数的優勢を得るところまで来ていたのですが、イギリス軍の出すイベントカードによって(「強風」という艦隊出港を中止させるリアクションカードが連続して出された)、出港を阻まれ続け、同地でのイギリス艦隊の撃滅と制海権確保に失敗します。

最終的には数ポイント差でイギリスの勝利となりました。

 

感想戦

先にも書いたように限られたリソースをどのように配分投入するのかがポイントです。湖ごとに相互に移動ができない艦船はもとより、陸上兵力についても3つのエリアのいずれかに投入すると他のエリアへの転用は難しいです。(時間的には十分可能だったとは思うのですが、)3つのエリアをまたいだ機動戦といったものはここでは発生しえません。このため、バランス良く各エリアで発起するアクションを配分するのがよいのかどうか、さらに陸上へのアクションに対して、艦船の建造にどの程度、力を傾けるべきかも問題です。建造できる艦船数は湖ごとに決まっているのですが、アメリカは建造可能なすべての艦船を建造するといずれの湖においてもイギリス海軍の艦船数をオーバーするため湖の支配を果たしやすくなります(今回のプレイではそれに近い状態になりました)。ただそこまで艦船の建造に力をいれるべきなのか?
今回のプレイでは、陸上の戦闘へのリソース投入は十分ではなかったかもしれません。

 

史実では3年にも及んだ戦争なのですが結果的にこの五大湖・カナダ国境戦線は小競り合いはいくつもあったのですが全体には膠着状態が続き、さほど戦線に動きがなく終わったようです。なじみが薄いこともあってなかなか感情移入が難しいかなとも思っていたのですが、ゲームとしてはなかなかに楽しめる内容でした。

(了)

 

 

「Mr. MADISON'S WAR The Incredible War of 1812」(GMT)を対戦する(1/2)

1812年といえばナポレオンがロシア遠征を行った年で、チャイコフスキーの愛国的な作品もあいまって歴史ファンのみならずクラシック音楽ファンにも記憶に残る年になっている訳ですが、その同じ1812年アメリカ合衆国イギリス連邦が北米を中心とした戦場で戦っていた米英戦争を扱った「Mr. Madison's War The Incredible War of 1812」(GMT)を対戦しました。

タイトルになっているマディソンさんは時の第4代大統領ジェームズ・マディソンで、ニューヨークにある公園「マディソン・スクエア」の由来になった人です。

 

 

 

米英戦争を扱った作品としては、近年では「Dawn’s Early Light: The War of 1812」(Compass Games)があります。2022年末の千葉会オークションに出品されていましたが、傑作だそうです。同作が北米全体をマップ範囲にした戦略級(?)になっていることからすると、本作の戦場は五大湖とカナダ国境付近に限定されています。

 

ナポレオン戦争に関わっていたイギリスは新大陸に戦力を向ける余裕がなく、アメリカはその隙を狙って火事場泥棒的に宣戦布告します。
アメリカは英領カナダの奪取を狙い、カナダ領内に侵攻します。エリー湖オンタリオ湖を抑えるのですが、セントローレンス川オンタリオ湖からモントリオール方面に流れる川)の水運は抑えることができず。モントリオールケベックの攻略は失敗します。

 

青色ユニットがアメリカ軍、赤色ユニットはイギリス軍です。黄色の矢印はアメリカ軍の増援の進路になります。
イギリス軍はマップ右上のモントリオールケベックを補給源とするため、エリ-湖(マップ左下の湖)や、オンタリオ湖(マップ中央の湖)の北岸沿いが長大な補給路となっています。このため、両軍はエリ-湖・オンタリオ湖・シャンプレーン湖(モントリオールの南側にある小さな湖)・ヒューロン湖デトロイトの北側に広がる湖)にそれぞれに復数の軍艦からなる艦隊を展開し、制海権ならぬ湖の海上権を争っています。

 

ゲームシステムの紹介

カードドリブンシステム

1年は(わずか)3ターンで表されています。「春~夏ターン」「夏~秋ターン」、そして「冬ターン」です。冬の間は部隊は冬営に入り、移動や戦闘はできません。さらに冬にはいる前には冬営の準備をしなければ、冬を無事に越せないという制約があります。

カードドリブンシステムで毎ターン7~9枚(ターンによって異なる)のカードをドローし、各ターン内でドローしたカードをすべて使いきることになります。カードは1812年カード、1813年カードと年ごとにすべて交換されます。

カードにはイベントやアクションとあわせ、オペレーションポイント(1~3ポイント)が記載されています。イベントカードやアクションカードとして使うか、記載されているポイントもってユニットの活性化させて行動をさせるか、というカードドリブンシステムでよくあるシステムになっています。

カードを使うことにより次のようなことが実施できます。

  • イベントの発生(イベントが記載されたカードの場合)
  • 戦闘カードとしてアクション/リアクションを実施(アクションカードの場合)

カードに記載されたポイントを利用すると次のことを行うことができます。

  • 指揮官ユニットの活性化
  • ユニットの活性化
  • ユニットの回復
  • 船の建造/修復
  • 補給集積所の設置

 

指揮官ユニット

指揮官ユニットを活性化させると指揮官とスタックしている部隊(陸上部隊または船)から指揮可能なユニット数まで同時に活性化させることができるためユニットを個別に活性化するよりもはるかに効率が良いです。
指揮官ユニットには「指揮値」と言う1~3までの数値があり、対象の指揮官ユニットを活性化させるには、指揮値以上のポイントを持ったカードを使う必要があります。指揮値1の指揮官ユニットはどのカードによっても活性化が可能ですが、指揮値3の場合は、ポイント3を持ったカードでなければ活性化できないことになります。ポイントが3のカードはカードをイベントカードやアクションカードとして使った場合の効果が大きい、価値が高いカードである場合が多いので、イベントやアクションとして使うのではなく指揮官ユニットの活性化に使う際には少々迷う場合があるかもしれません。

アメリカ軍に比べイギリス軍のほうが指揮官が優秀であった事を表すため、イギリス軍の指揮官ユニットのほうが指揮値が小さく、その分、活性化しやすくなっています。

 

戦闘

陸上部隊は1ユニット=連隊単位。当時砲兵は弱体で騎兵もほとんど見られなかったということなので歩兵ばかりです(数個のみ騎兵部隊が登場)。

兵士には当時の軍隊の構成により、正規兵、民兵に分かれ、さらにインディアン部隊がいます。兵士にはグレードがあり、戦闘時のグレードの差は修正値になるのですが、正規兵はグレードがAかB、民兵はごく一部を除きグレードはCです。

インディアンは森ヘックスで、正規兵や民兵と戦闘を行う際に攻撃側でも防御側としてでも有利な修正を得ることができます。なおインディアンのほとんどはイギリス側でした。

指揮官ユニットにはさきほどの指揮値の他、戦闘修正(優秀な指揮官ほどダイス修正の値が大きくなる)、階級(階級が高いほど多くの部隊を活性化できる。おうおうにして階級が高い指揮官が戦闘修正などの能力に優れている訳ではないのが悩ましい)が記載されています。

戦闘ルールはシンプルです。戦闘に参加するユニットの戦闘力を足し、2D6で決定します。戦闘力比率、地形、指揮官の戦闘修正、兵士のグレードなどはすべてダイスの目の修正として反映されます。
実際にプレイした感じだと派手に損害が出る訳ではないです。せいぜい1~2ステップを失いどちらかが後退するという結果になります。地形的に敵中に強襲上陸を行ったりしていない限り、後方を包囲されるような地形でもないため、負けた側はするりと後退して終わりという結果が少なくありません。

ここまで書いていて戦闘ルールとしては先日プレイした「WAR FOR AMERICA」とさほど変わるような内容ではないことに気づきました。「WAR FOR AMERICA」の戦闘では地味に感じられたのですが、今回のゲームではそれほど悪くはない印象を受けました。確かに目を見張るような損害が出るようなシステムではないのですが、当時のある種、悠長な戦闘がそのようなものだったのだろうと捉えました。

いずれにせよ、「WAR FOR AMERICA」の戦闘ルールへの評は見直さなければならないかもしれません。

 

 

海軍ルール

両軍はその補給線を確保するため湖の制海権の確保が重要でした。このため両軍に大小の軍艦が1ユニット=1隻で、名前付きで登場します。
スクーナー/スループ」「ブリッグ」「ブリガンティーン/コルベット」「フリゲート」「戦列艦」といったクラスの帆船が登場します。

制海権を確保することにより船を利用した活動の自由が効くようになります。補給や強襲上陸、撤退といった行為が湖上の海路を通して実施できるのです。

制海権をめぐって海戦も起きます。海戦は参加する船のクラスと隻数により算定される数値を比べ、1D6にて判定されます。海戦の場合、相手よりも隻数が1隻でも多い場合、ダイス修正がつくため、少しでも隻数を集めたほうが有利になっています。
さらに海戦の戦闘結果では0以下、または7以上の結果の場合、相手が降伏するため、全隻除去という結果がありえるのも特徴です。実際プレイ中も、エリー湖において7~8隻からなるイギリス艦隊が降伏するという結果が出ました。

それぞれの湖の艦艇は一部の湖間を除けば相互に移動できるようにはなっていません。例えばエリー湖オンタリオ湖は独立しているため各々で艦艇を用意する必要があります。
またそれぞれの湖において建造できる船は、増援表で指定があるため、無尽蔵に建造できる訳でもないです。もっとも、船の建造にもカードのポイントの利用が必要ですから、どれだけ船の建造にリソースを投下するのか、という問題を抱えています。

 

(次回AARに続く)

 

 

 

おまけ: 話題の「ChatGPT」に聞いてみた!

ネット検索でGoogleに代わるのではないかとも言われ上場の際には史上最大の公開になるのではないかとも言われている、OpenAI社の「ChatGPT」に、米英戦争の事とか、その原因を聞いてみると、驚くような回答が来ました。
和訳はChromeによる翻訳機能を使っています。

 

米英戦争とは?

米英戦争について、と質問をしたことろ、米英戦争を直訳でAmerica-Anglo warと聞いたところの答えが次のものです。日本語で言うところの「米英戦争」は「War of 1812」と言うのだそうですが、それは戦争ではなかったと言っていますね。

申し訳ありませんが、歴史上「英米戦争」の記録はありません。英米戦争という用語は、歴史的に認識された出来事ではありません。1812 年の米英戦争など、米国と英国の間で紛争がありましたが、膠着状態に終わり、戦争とは見なされません。米国と英国は、第一次世界大戦第二次世界大戦中に同盟国と見なされ、歴史を通じて密接な関係を築いてきました。別のイベントを意味している可能性があります。具体的なイベントがあれば教えてください。

と返ってきました。どうも米英戦争の直訳では意味が通じないようです。しかも1812年の戦争は戦争ではない、とまで言っています。
ウィキで米英戦争の英語表記を探して(「War of 1812」と言うそうです)、アメリカ側の戦争の理由を聞いてみると次のような回答がありました。かなりアメリカはひどいです。

1812年の戦争(和名:米英戦争)の原因は?

続けて「米英戦争」の原因は?という質問の答えがこれです。このレベルだとウィキペディアにそのまま書いているような内容ではあるので、それほど目新しいものではないです。ただ何度か同じ質問をしたところ、要旨は同じなのですが、都度、回答の文章は変わっていたので、予め答えを持っているのではなく、文章自体は都度生成しているのではないかと推測されます。

1812 年の戦争は、1812 年から 1815 年まで続いた米国と英国の間の紛争でした。この戦争には、次のようないくつかの原因がありました。

  • 貿易制限: 英国政府は、当時イギリスと戦争状態にあったフランスとのアメリカの貿易を阻止するために、一連の貿易制限を米国に課していました。これはアメリカの商人に打撃を与え、商品の輸出を困難にしました。
  • 押印: 英国海軍は公海でアメリカの船を止め、イギリスの臣下であると主張する船員を押収するという慣行を行っていました。これにより、アメリカの船員が意に反して連行され、イギリス海軍での勤務を余儀なくされるという多くの事件が発生しました。
  • アメリカの拡大: 米国は急速に西方に拡大しており、多くのアメリカの指導者は、この戦争を特にカナダへの国境をさらに拡大する機会と見なしていました。
  • 戦争タカ派の影響: 戦争タカ派として知られるアメリカの政治家グループは、主に西部と南部の州出身で、英国との戦争を推し進めました。彼らは、米国は戦争で英国を簡単に打ち負かすことができ、領土と名声を獲得する機会になると信じていました。
  • 禁輸法: ジェームズ・マディソン大統領は、1807 年の禁輸法に署名し、アメリカの船舶が他国と取引することを禁止しました。これはアメリカの経済と商人に打撃を与えました。

戦争は膠着状態で終わり、1815 年にゲント条約が調印され、戦前に存在していた国境と条件が再確立されました。

 

 

 

 

「ALMORAVID:Reconquista and Riposte in Spain 1085-1086」(GMT)を対戦する(1/2)

11世紀、イベリア半島におけるレコンキスタを扱った「ALMORAVID:Reconquista and Riposte in Spain 1085-1086」(GMT)を対戦した。
レオン王国およびカスティーリャ王国の王アルフォンソ6世(勇敢王)によるイベリア半島イスラム教諸国(タイファ)への侵攻(レコンキスタ)に対し、救援を求められた北アフリカムラービト朝のユースフ・イヴン・ターシュフィーンが介入したという戦役を描く。プレイヤーはアルフォンソ6世か、ユースフを含むイスラム教国側を担当する。

何度読んでもなかなか覚えられない本作のタイトルはムラービト朝の英語読み(英語では、アルモラヴィッド朝と呼称する)らしい。ムラービト朝は、11世紀から12世紀の100年ほどモロッコを中心とする北アフリカから本ゲームが扱うイベリア半島の南半分について勢力を誇った。その名称であれば、世界史の歴史地図帳で見たような覚えがある・・・ような気がする。

 

 

 

 

当サイトでも以前に紹介した「NEVSKY」のゲームシステムを採用した、「Levy & Campaign」シリーズの2作目にあたる。ちなみにGMT社のHPを見るとそれぞれ題材を変え、シリーズ第3作・第4作が発売予定としてラインナップされているところを見ると、好評なのだろう。
・・と記事を書いているうちに、GMT社から、次回作として「Inferno: Guelphs and Ghibellines Vie for Tuscany, 1259-1261」をリリースするからね、と連絡がはいった。次は中世イタリアが舞台のようだ。

 

 

ゲームの紹介

本ゲームについて3つの特徴をあげたい。

軍役ルール

シリーズ名を直訳すると「召集と軍役」といったところだが、本ゲームの特徴のひとつを言い当てたものになっている。
プレイヤーが担当する軍勢はいずれも封建的主従関係の元、封建領主によって軍役として召集された軍勢だ。
主君から召集された家臣は軍を仕立てて駆けつけるところなど日本の鎌倉時代から室町時代末期までの武士社会の状況に似ているのかもしれない。

本ゲームに登場する家臣は、軍役期間が過ぎるとさっさと帰国してしまう。敵軍と対峙中であろうが、拠点を包囲中であろうがお構いなしだ*1
動員期間の延長は可能なのだが、見返りとして報酬を支払うか、その地での略奪を許さなければならない。なんらかのうま味がないと残業には応じないといったところか。一度略奪を実施するとその地は荒廃してペンペン草も生えない状態になってしまうので始末に負えない。
報酬として払う金は、自国で実施する徴税によって得る必要がある。主君が自国のさらに本拠地のエリアで徴税を行うことで得られるが、敵国土へ遠征中であれば実施ができない、などこちらを立てればあちらがたたないといった縛りはあちこちに用意されている。

 

補給ルール

ゲームシステムの2番目の特徴は補給の扱いだ。
補給は従軍した家臣毎に本拠地から部隊がいる場所までの運搬手段を用意し、補給物資を運搬していく必要がある。さらに補給物資は前線の戦闘部隊だけが消費するのではなく、補給線を維持し運用するためにも消費される。後者の点は多くのウォーゲームでは捨象されている要素だろう。
前作ネフスキーでは物資の運搬手段として荷馬車の他、船、川船さらに河川が凍結する冬場に用いるそりと、複数が用意されていた。
補給不足に陥ると前線の部隊はこれまた勝手に帰国してしまう。敵を圧倒する大軍を前線に引っ張っていくにはまかなうだけの補給線を構築し補給を実施しなければならない。太い補給線はそれ自体が物資を消費する・・・と、先に紹介した部隊の動員と従軍期間に基づくローテーションを含め、計画的に動員し、補給を提供し続けなければ軍は瓦解してしまうという恐ろしいゲームになっている。

出陣する際に十分な準備期間をかけ、多めに補給物資や資金を抱えて出陣すればいいのではないかという考えもあるのだが、これにもまた縛りがある。余計なリソースを抱えた部隊は無駄にリソースを消費してしまうという「浪費」というルールが用意されている。多すぎる物資は無駄使いや運搬の手間を嫌っての遺棄放棄、さらには横流しなどにより浪費されてしまうといったところだろうか。

本作での物資の運搬手段は、荷馬車とロバの2種類になった。
通常の平地の街道については荷馬車で対応できる。さらに荷馬車は物資を消費しない*2。今回の舞台となるイベリア半島のマップには山岳地帯をいく峠道が多く走っている。山岳を迂回して走る街道と異なり、峠道を使うことにより目的地へのショートカットができることが少なくない。ロバはこうした峠道を通る際に用いられる。
荷馬車でも峠道を越えることはできるのだが、道の整備の問題からか過積載扱いとなり部隊の機動力は大きく削がれる。ロバを用いることで運搬力を確保しながら機動力を維持できる。ところがこのロバを抱えている部隊はロバ自体が物資を消費する。

 

街や城郭のイラストを結んだ水色(明灰色?)のラインが街道を表す。峠道はさらに細い白抜きの複雑に曲折した線。大きく迂回する街道筋に対して峠道を用いることでショートカットが可能となる。

 

ローカル色がある多様な軍隊

3番目の特徴として軍勢を構成する兵種の多彩さがある。大きくは騎馬兵と徒歩兵に分別され装備品により分かれるのだが、キリスト教軍とイスラム教軍とで異なり、さらに両軍配下の部隊は動員された地域毎の特色がある内容になっている。
かたやフルアーマー状態の騎士や装甲騎兵、装甲歩兵がいる一方、粗末な武具だけで弓やスリングを使う農奴兵がいる。戦闘力や戦い方は兵種によって異なってくる。イスラム側には北アフリカから海を越えて沿線してきたアフリカ兵がまた独自の装備をもって従軍している。
騎馬兵としては、騎士・装甲騎兵・アフリカ騎兵・軽騎兵、徒歩兵には装甲歩兵・アフリカ歩兵・民兵農奴兵と登場する。

戦闘ルールは、攻撃を行うユニットの数分のダイスを振る、いわゆる「”6”出ろ」システムの発展版だ。兵種・装備によって、相手に損害を与えるダイスの目、防御装備により損害の吸収可否などが変わる。弓や投げやり、スリングを装備している兵による射撃戦、その後の白兵戦が実施される。また野戦と別に攻城戦のルールが用意されている。

 

キリスト教側の軍隊。それぞれのカードは軍役を課せられ動員された家臣を表す(それぞれの家紋が描かれている)。
カード上の木駒が部隊を表し、ひとつの木駒が数百人規模、色や形状でそれぞれ異なる種類を表している。大きくは三角形の丸みを帯びた木駒は騎馬兵、直方体の木駒は徒歩兵を表す。

家臣カードの上には、部隊を表す木駒以外に、荷馬車やロバのマーカー、さらに現在保有している資源を表すマーカーが載せられている。

 

(つづく)

 

 

 

*1:前作ネフスキーのプレイ中、敵の城郭を包囲中に主力の家臣が帰国してしまい、主君の直属の兵だけとなった覚えがある

*2:ルールにより、荷馬車自体は補給物資を消費しないことになった。ゲーム内での煩雑化を避けたのだろう

「帝国の興亡 EMPIRES OF THE MIDDLE AGES」(SPI/ホビージャパン)を対戦する

「帝国の興亡 EMPIRES OF THE MIDDLE AGES」(SPI/ホビージャパン)を対戦した。カール大帝によるフランク王国の建国(771年)からビザンティン帝国の滅亡(1465年)までの実に700年に及ぶ歴史と、欧州全域から近東・中東までを扱うマルチプレイヤーズゲームである。全期間を扱うグランドキャンペーン(全140ターン!)をはじめ、時代毎に切り出したプレイしやすいシナリオも複数用意されている。

 

 

 

ゲームの概要

プレイヤーは時代毎に登場する王国・帝国の長、王・皇帝として国率いる立場となる。1ターンは5年。

王・皇帝には、戦闘・外交・内政の3つの能力値が与えられている。治世の中で代替わりが起こった場合、これらのスキルが変更される。能力値は1から9までで変化するが平均値は3。史実上の優秀なスキルを持つ王・皇帝でも能力値は5程度に設定されているところを見ると、能力値9とはよほどの異能のスキルということになる*1

 

言語圏と宗教

長い歴史を扱う上で様々な要素が考慮されているのだが、言語圏と宗教の扱いは感心した。マップ上の各エリアはその住人がどの言語圏に属しているかによって分類されている。ロマン語派(イタリア語・フランス語等)、ゲルマン語派(ドイツ語等)、スラブ語派、ギリシャ語、バルト語、ケルト語、非インド=ヨーロッパ語の7言語グループだ。
さらに同じ言語圏でもいくつかの言語圏はさらに細分化される。例えばロマン語派は6つの言語(北部イタリア語、南部イタリア語、オック語オイル語、イベリア語、ヴァラキア語)、ゲルマン語圏には5つの言語が含まれる。
宗教にはローマカソリック東方正教イスラム教、その他の異教、航海民族と分類されている。
自国の言語圏や宗教と異なるエリアを統治する場合は、都度マイナス修正として作用する。失敗するとエリアが不穏状態や反乱・独立につながっていく。*2
言語や宗教の相違の克服手法としては「植民」や「改宗」といった施策が用意されているが、対象エリアの社会成熟度や人口によって膨大な時間と費用を必要とするものとなっており、一朝一夕に実現できるものではないものとして表現されている。

 

エリアと社会レベル

マップはポイントトゥポイントのエリア方式になっている。陸上の各エリアは、先の言語、宗教とは別に、人口と社会成熟度がパラメーター化されている。社会成熟度(社会レベル)が高いエリアからは統治することで得られる収入が多い一方で、統治するのが難しくなる(成熟度が高いほど内政などへのダイス修正がマイナスとして働く)。また人口が多いエリアは規模が大きい分、変化が起きにくい(征服や改宗といった際に何度も実施する必要がある=長い時間を要する)。
例えば北イタリアからローマに至る地域、各国の首都がある地域は社会成熟度が高く、辺境に行くほど数値は小さく、中にはマイナス地域(蛮地?)が存在する。社会成熟度は時代(シナリオ)によって変化する。

 

ホビージャパンから発売されていた日本語ライセンス版を使ってプレイした。
写真では見切れているがマップは北欧から北アフリカの地中海沿岸、シリア、エルサレムといった中東まで含まれている。各エリアは使用言語で色分けされており、同一の言語圏は同系色で表現されている。
写真の緑色マーカーは神聖ローマ帝国、青色はフランス王国。赤色はイギリス王国。イベリア半島にある半月マークのマーカーはイスラム教に改宗されていることを表す。

マップ上に配置されたコマは、各エリアのパラメーターやステータス(状態)を表すマーカーばかりで、マルチプレイゲームにありがちな軍隊ユニットやキャラクターを表すようなユニットはひとつもない(あえて言うなら、各国の宮廷の場所を表す「Court」ユニットくらいか)。

 

ゲームの手順

各ターンの手順は大雑把に言うと、次のような内容だ。

  1. イベントカードによるイベントの発生
  2. イヤーカードの配布:各プレイヤーに5枚ずつ配布(ただしこの時点でカードの中身は見ることができず、カード順を変更することもできない)
  3. プレイ順の決定
  4. 第1プレイヤーから順に、アクション実施

アクションには次のものがある。

  • 内政
  • 外交
  • 征服
  • 略奪
  • 要塞建設

アクションは最大5回(イヤーカードの枚数分)実施できる。
一つ目のアクションを決めると、その成否を判定するため、さきほど配られたイヤーカードの手持ちの分の一番上のカードをめくる。イヤーカードには、アクション種類毎の結果+αの情報が記載されているため、カードが示す結果、または指示に沿い最初のアクションを実行し、その結果を反映する。
その後、2番目以降のアクションを決め、その結果を2枚目のイヤーカードをめくって確認する。各プレイヤーはターン毎に最大5回のアクションを実施できることになるが、パスしてもよい。使わなかったイヤーカードは、他プレイヤーによって「征服」アクションを起こされた際に可能となる「防衛」に用いることができる。

上記のアクションの他、各プレイヤーは自分のアクションフェイズ内のいずれかのタイミングで「徴税」を行うことができる(または強制的な「収奪」も可能)。資金を得るタイミングはこの「徴税」がメインとなるため、大事である。ただし徴税を行ったエリアは反乱チェックを行う必要がある。ここでさきほどの言語圏や宗教が異なる場合や社会成熟度に反比例するようにマイナスになっていく。不穏となったエリアは別の機会に「内政」を行うことで解除していきたい。放置しておくとなんらかの悪いイベント(例えば「凶作」)が発生した際に最悪、反乱や独立になる懸念がある。

 

SPI版のイヤーカードの例。
各アクション毎の結果等が記載されている。結果がそのまま記載されている場合と、ダイスによるチェックが求められる場合とがある。

 

アクションの中の「外交」は他プレイヤーとの外交ではなく、自分の支配下にないエリアを懐柔させる手段として提供されているものだ。領地を増やす方法として「征服」という強硬な手段もあるが、対象エリアの人口などによって何年にもわたって実施する必要があり、資金と時間を要する。さらには対象エリアばかりではなく、リソースを投入することから自国も荒廃していくなど、あまり割が良い手段とはなっていない。戦争は最後の手段としてあるのだが、まずはアクションとして用意された「外交」を用いることで懐柔するのが望ましい。

 

「条約」「領有主張」「会議招集」「破門」など

マルチプレイヤーズゲームにつきものの外交(プレイヤー間の外交)もある。
ルールブックを読んだ感想としてルールとして機能するのかが不明なのだが、プレイヤー間の外交の実現として、強制力が高いものとして決め事を紙に書く「条約」というものが用意されている。「条約」の締結のためには会議が招集される。
そう、このゲームに会議という概念が何度か登場するのだが、領土紛争の解決などがあるとされている。会議での決定事項を破った場合は「破門」される。「破門」された王・皇帝は、邪教とされ内政・徴税といった各アクションにおいてマイナスの修正を受ける。「破門」された王・皇帝の復帰が認められるのもやはり会議においてか、イベントで「後継者なし」が出た場合とある。

また「領有主張」という考えかたもユニーク。エリアを領有するためにはまず「領有主張」により宣言を行い、イヤーカードの結果として領有の承認を得るか、または会議にて承認をもらうかする必要があるという。他国があるエリアについても条件が整えば、領有を主張できる。シナリオによっては国同士が接したエリアを中心に複数の国が領有を主張しているエリアも登場する。

 

軍隊ユニットといった兵力を表すユニットは登場しない

本ゲームのユニークな点として、戦略級のマルチプレイヤーズゲームではつきものの、軍隊や兵力を表すユニットが登場しないことがある。「征服」などのアクションには軍隊がつきものなのだが、軍隊そのものはユニットとしては存在しない(十字軍が登場した際の「十字軍マーカー」はあるが、兵力を表すユニットではない)。
どのパートで読んだのか不明で見つけられなかったのだが、1ターンが5年というスケールであること、また史実においてもこうした征服行為は1度だけの侵略行為だけで成り立っている訳ではなく、何度にも渡る軍隊により侵攻以外の様々な手段を含めた行為の総称であるということから軍隊ユニットは用意していないという説明があった。
象徴的な軍隊ユニットをどこかのエリアに配置して、その軍隊が隣国のエリアに進出して・・といった活動はリアルではないということだろう。なるほど・・と思う。

 

内憂外患

ヒストリカルなシチュエーションの再現のため、イベントカードによるイベント(豊作・凶作・疫病・異端の発生・・・)の他、特にルールが用意されているものとして教会の分裂、十字軍、侵略者(バイキング、サラセン人、マジャール人、シリア人、モンゴル)や新興勢力の発生などがある。

 

 

感想

大局的な国家間の争いを扱うマルチプレイヤーのゲームは少なくないが、マルチプレイに伴う同盟や裏切りで盛り上がり、ヒストリカル性は二の次におかれていることが少なくない。本作はそれらとは逆にヒストリカルなシチュエーションの再現に重点がおかれたデザインになっている。ただその再現されるシチュエーションは派手な対外戦争ではなく、様々な内憂外患で発生するイベントをこなしつつ地道な治世を行っていくことだ。

実際にプレイをしてみると、内政の実施による国家としての収入の安定をはかっていくことに手がいっぱいになる。毎ターンに受け取ることができるイヤーカードは5枚と決まっているため、ビザンチン帝国や神聖ローマ帝国のように領有するエリアが多い国の場合、どのエリアにアクションを行うのかを決めるだけでも大変だろう。
このゲームの期間内ではないが、ローマ帝国が東西に分裂したり、西ローマ帝国がさらに分割したりした理由も推察できるというものだ。大国をひとりの皇帝の治世で治めるのがいかに難しく、また治世の手段として統一された宗教(キリスト教東方正教)が採用されたというのも理解できるというものだ。
一方で戦争には膨大な時間と国のリソース(資金)を要し、相手国だけではなく自国の荒廃も引き起こす懸念がある、壮大な”賭け”になる。誰が好き好んで戦争を起こそうか、という気分になる。

ゲームを通して西洋中世史に対しこうした様々な一種の洞察が得られるのが面白い。

 

神聖ローマ帝国を担当したが、ゲームスタート時から北イタリア方面の領地は「不穏」状態となっている。ドイツ方面のエリアの国力を高めつつ、イタリア方面のトラブルの芽を摘む対応が求められる。イタリア方面は言語圏が異なるため、内政や徴税のために不利な修正が適用される。
こうして、ターンの多くは内政と、イベントカードによって起こされるトラブル対処に追われる。このゲームが、「マルチプレイヤーによるソロプレイゲーム」と呼ばれるのも頷ける・・。

 

(了)

 

 

 

*1:Decision Gamesからの再販版ではシナリオに登場する史実の王・皇帝についてカードがひとりずつ用意されたようだが、SPI版にはそのようなものはない。

*2:宗教については、王・皇帝が「破門」されると異端とされ、本来の領地の統治に大きく影響することになる。