Their Finest Hour

歴史、ミリタリー、ウォーゲーム

大河ドラマ「太平記」18話「帝の脱出」:

前回のあらすじ

1333年、鎌倉幕府滅亡の年を迎える。

先年からの東北での乱により、鎌倉にも流民が多く流れ込み、武家屋敷街の路傍にも物乞いが居並ぶ状況になっていた。西国でもいったんは鎮圧されていた大塔宮や楠木正成といった後醍醐先帝を支持する豪族の挙兵が相次いでいた。

 幕府の陰の権力者長崎父子より、後醍醐先帝(片岡仁左衛門)を殺すように使嗾された佐々木道誉陣内孝則)は、恐れおののくあまり足利高氏真田広之)を相談に招く。
足利高氏真田広之)は道誉に、北条氏を討つための軍を上げることを伝える。それまで暗殺の件は待って欲しい、逆に後醍醐帝を護衛して欲しい、と言う。
高氏は同席した花夜叉(樋口可南子)に、できる限り北条の軍を引き受け持久してほしいという、楠木正成への伝言を頼む。

北条高時邸での軍議の場、赤橋守時勝野洋)は北条家が土地、富、権力を独占していることにより不平不満がたまっていると主張するが、その意見はあっさりと退けられる。
守時の意見を入れることは、幕府ひいては北条一族の権力構造そのものの否定に繋がるため受け入れることはとうてい出来ないことだった。
やがて、議論に飽いた北条高時片岡鶴太郎)は愛妾らとの蹴鞠に興じはじめ、抜本的な対策の芽は完全に摘まれたように見えた。

西国での乱を鎮圧すべく北条一族を中心に組成された軍勢が鎌倉を出立するが、のちに彼らは二度と鎌倉へ還ることはなかった。

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冒頭ナレーション。
幕府と御家人の関係を説明する。
幕府は御家人達に土地の所有を認め訴訟事の仲裁などを司る。
一方で御家人達はいざ幕府・鎌倉に事あれば兵を出す。
ただその際、戦費は御家人側の負担となるため、度重なる出兵のため御家人達の不平不満が貯まる状態になっていた。幕府は財政の面で崩壊する状態になろうとしていたという。

 

隠岐脱出

雪深い旧暦2月の隠岐
後醍醐帝が隠岐島まで連れてきていた愛妾の一人小宰相(佐藤恵利)は幕府側と内通していた。監視の役人に後醍醐帝の島脱出の日時を漏らしているところを、帝脱出の支援のため島にはいっていた”石”(柳葉敏郎)らに見られていた。

「・・お上は欺かれているのです。今どきの若い女子など・・阿野廉子原田美枝子)は帝に詰め寄るが、帝は取り合わない。
「あれは連れて行く。」
お上はこの廉子と小宰相の言うことのどちらをお取りになられます。どちらをお信じになられるのです。それをお聞かせくださいませ
「廉子、朕は小宰相を哀れな女子と思うてるのじゃ。若い身でワシのためにこのような島に。すぐにでも都に戻してやる、と鎌倉方から囁かれ続ければ誰しも心が動こう。朕は小宰相を信じてはおらぬ。それ故、明日の夜じゃ、と教えておいた。皆にも申した通り、朕は今宵ここを出る。

後醍醐帝は無自覚だったのだろうなぁ。ただ女達から見れば、帝の一挙手一投足が一大事。相手を蹴落として独占することを目標としていてもおかしくないことにきづくべきだったよね。

「上は、はじめから?」
小宰相は信じていない、自分のほうを信じていると言われた、と阿野廉子が嬉しさに声を震わせる。
「そうでもせねば、敵を欺くこともできまい。・・ただ、小宰相を憎むではないぞ。あれは哀れな女子じゃ。・・朕が頼りに思うのは廉子だけぞ。それを疑うでないぞ。

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沖に待つ阿波の海賊岩松氏の船まで、”石”の操る小舟に乗る、小宰相と阿野廉子
「あれはお上の乗られた舟であろうか?」
舳先で立ち上がろうとした小宰相を、阿野廉子が後ろから海へ突き落とす。阿野廉子はキッと船頭の”石”を振り返るが、”石”は何も言えないでいた。

阿野廉子の後醍醐に一途すぎるような性格と、冷酷な部分とが出てきたエピソード。廉子の眼光ひとつで”石”のような小者は何も言えなくなってしまった。

 

幕府評定

珍しく苛立たしげな金沢貞顕児玉清)。評定開催前に赤橋守時勝野洋)を捉え、訴える。
「あれだけ軍勢を送ってもまだ楠木の首がとれぬ。吉野山は落城したが肝心の大塔宮(護良親王)には逃げられた。それに此度の先帝だ。今日の評定で長崎殿が何を申されるかは火を見るよりは明らかだ。」
「軍勢の追加でござろう」応える守時の声は暗く沈んでいる。
「第二の軍勢を送って、皆叩き潰す。そういう話になる。ただ、誰と誰を送るか。誰を大将に命じるか。これは長崎殿の思いつくままにまかせておいてはまずかろうと、存ずるのじゃ。」
「はて?」金沢貞顕の意図を図りかねている守時。
「例えて申せば、足利一族じゃ。此度は送らぬほうがよいと思うのじゃ。・・足利は貞氏殿が亡くなられてから何かが変わった。そう思わぬか?そうでなくてもこのドサクサじゃ。魔が差すということもある。・・次の軍勢が大挙して鎌倉を出ていけば、ここは手薄になる。もし、足利殿に悪心あれば軍を率いていったんは三河あたりまでいき、取って返してこの鎌倉を攻める。このところが長崎殿にはわかっておらぬのじゃ。」
「足利殿は妹登子の婿殿ぞ。」
「それがしは万に一つを申しておるのじゃ。足利殿だけではなくて、外様の大名は皆そうじゃ。浮足立って誰でも軍勢に加えればよいというものではない。その事、長崎殿にも御辺から篤と話してもらいたいのじゃ。」

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評定の場、執権赤橋守時を主座に居並ぶ幕府重臣
「先帝が隠岐より出賜うたとなれば、河内の悪党どもはこれも御旗にいよいよつけ上がってこようぞ。」
口火を切ったのは長崎高資西岡徳馬)。
「先に送った軍勢で不足ならば、新たに軍を送り、一刻も早く、叩く潰すべきと存ずるが、如何!」
いつものように高飛車、強気の言に下座から口々に賛同の声があがる。
「此度のことは得宗に置かせられても大層なご心痛でだ。直ちに新たな軍勢を送るべしとの御定を頂き、我らが手分けをして、とりあえず軍勢の内訳を考えてみた。」
おもむろに書付を取り出す、長崎円喜フランキー堺)。
リストの中に足利治部大輔の名前を見て、顔を見合わせる守時と貞顕。

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高氏の決意と母の覚悟

鎌倉市中の寺に日参する母清子(藤村志保)を迎えに来た、と寺の門前に待つ高氏。
路傍には幼い子連れの物乞いがいた。

「母上は近頃、よう寺に参られまするな。毎日お出かけじゃ、と登子が申しておりまするぞ。」と高氏。
「寺へ来て、御仏の顔を拝しているとこの愚かな母にも少しずつ分かってくることがあるのじゃ。この世にはおのれの力ではどうにもならぬことがある。それ故、御仏がおられるのじゃ、と。」
「さりながら、御仏はあの表に並ぶ貧しい乞食(こつじき)を救うてはくれませぬぞ。あの乞食を産む、北条殿の政を正してはくれませぬぞ。誰かがおのれの力に頼んで世を変えなければ
「おのれに世を変える力があるとお思いか?」
「わかりませぬ。」
わからぬのに、北条殿に立ち向かうおつもりか?・その事を申しためにわざわざ出向いたのであろう?
・・母は父上と同じじゃ。世のためにそなたを死なせたくない。世を正すために我家を失いたくはない。愚かな母じゃ。」
楠木正成殿というお方が、こう書いておられました。『大事なもののために死するは負けとは申さぬものなり』。何が大事かこの高氏も思うところがございまする。・・負けのない戦ならば、戦ってみとうございまする。・・ただ母上や、登子の事を、千寿王の事を思うと・・。・・仏に祈ってこのまま何事もなく、何事もなく・・父上のように、高氏も・・
「この世には、おのれの力ではどうにもならぬことがある。少しずつそれが、これもそういうことであろうかのう。・・足利家はそなたに預けたのじゃ。もはや何も申しませぬ。」

父貞氏はかつて高氏に言った。
「父のように迷うな。神仏の赦しがあれば、天下を取れ!」
母清子は老境にありもはや守りの姿勢にある。世の中の矛盾や困難や不満はすべて仏に祈ることで越えようとしている。そういう母を、高氏は真正面から否定はしないが、仏に祈っても世の中は変わらないと言う。その母も最後は家長は高氏だ、と覚悟する。

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決別から臨戦へ

執権赤橋守時が火急の用により足利邸を訪ねてくる。
「何の前触れもなく罷り越したる非、お許しくだされ」
いつもの通り硬く、また低姿勢の守時。
「今日、罷り越したるは他でもない西国の騒ぎについてじゃが、本日幕府は西国に対し新たな軍を送ることを決しました。ついてはその軍勢に足利殿にもお入り願えぬかと、それが幕府内の、とりわけ長崎殿のたっての願いでござってな。足利殿のご意向を承りたく参上つかまつった。・・いかが?」
「長崎殿の仰せとあらば、行かぬとは申せますまい」と高氏。
それに対して守時から意外な言が出る。
「この守時はいかせとうござらぬのだが。此度の戦はそれがしには不吉に思われる。昨夜、らちもない夢を見ましてな。それがしが足利殿と戦をいたす夢なのじゃが・・」
「・・それはまた・・。なにゆえそれがしが赤橋殿と?」鼻で笑ってみせる高氏。
守時はまっすぐに高氏の顔を見て答える。
「足利殿が北条の政(まつりごと)を正さんがため、鎌倉に弓をお引きになり・・」
「・・らちもない夢でござりまするな。よしんば戦をいたすとしても、赤橋殿は我が兄、敵ではなく我が味方といたしたきもの。たとえ、夢の中でも」高氏は視線を外しながら言う。
お気持ちはありがたい。が、これだけは申し上げておこう。北条は我が一族、腐り果てたといえ、我が一族。これに弓引くことはできぬ。愚かな赤橋守時よ・・。・・らちもない話よ。お気になされるな。西国の騒ぎに気が動転して、あらぬ事まで・・。・・ではお受け頂いた、と。そのように・・かたじけのうござる。」
深々と辞儀をいれる守時に、高氏も返す。

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高氏のそれとない誘いに、表情を殺したようにした上できっぱりと断りをいれる守時、またそれを受け守時の真意を悟った高氏の複雑な残念そうな表情。二人の表情を交互に写すだけのシーンなのだが、見応えがあるシーンであった。

守時が去った後、高氏は高師直柄本明)に指示をだす。
三河の吉良殿に早打ちで使者を送れ。戦じゃ、と。諸国の足利一族に使者を送れ。足利が総力をあげて戦を致す、馳せ参じられよ、と。」
さらに言う
新田義貞殿は今いずこにおわす?」
「新田!」直義が聞く。
「新田殿は大番役で京にお勤め中だと。」師直が答える。
「でも河内で楠木軍と戦中かもしれぬな。大番役のものは大方、六波羅軍に駆り出される。河内に向かった、と」
「ならば、右馬介を走らせよ。新田殿にお伝えしたいことがある。師直、右馬介に使いを」

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足利への備え 

 北条高時邸。北条高時を座長にして、長崎父子を前に持論を力説しているのは、金沢貞顕。 
「・・それがしは万に一つを申しておる。が、もしその万に一つが起きた時、我らは取り返しがつかない戦に巻き込まれますぞ。」

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「金沢殿、あいも変わらず臆病でござるな。足利殿がこの手薄になった鎌倉を襲うと仰せられる?どれほどの兵で襲う?鎌倉でまとまる足利一族の数はせいぜいが4、500。そこかしこで兵を集め、三河まで参れば一族の大名吉良殿が合流する。それでもたかだか3000程度でござろう。」
頭から否定するのは、長崎高資
勢い反論しようと身を乗り出した貞顕に、長崎円喜が水を差すように言う。
「左様、足利殿は三河で反転致し、鎌倉に向かってきたところでせいぜい3千の兵。手薄とは言え、我が方にはまだ幾万の兵がござる。ものの数ではない。」
「それ足利一族だけの数でござろう。他の外様大名をそれに加えれば、1万を超す兵はたちどころぞ。」と貞顕。
「金沢殿」すかさず反論しようとする円喜。
「待て待て」二人の仲裁にはいったのは北条高時
「要は貞顕は外様をまとめて外に出すのは危ないと申すのであろう?それはワシもようわかる。円喜、考えてもみぃ?ワシの犬は檻の中にいる故、かわいいのじゃ。かみつくものは檻の中が良いぞ。

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高時らしいたとえ話だが、本質に迫っているところがすごい。
またどことなく長崎円喜の喋り方が以前に比べると老いた様子を見せるなどフランキー堺の演技が細かい。

「おそれながら太守。この鎌倉より都までの街道はさも我らが檻のようなもの。いかなる犬も身動きならぬ街道にございまする。」
「それは何故?」
円喜の説明に、高時が聞き返す。

そこで円喜は余裕綽々の様子で、奥より佐々木道誉を呼び出す。
「判官、来ておったのか?」声のトーンがあがる高時。
「太守におかれましてはお変わりもなく」いつものとおり芝居じみた挨拶をする道誉。

円喜は道誉を招き寄せる。
近江の領主である佐々木道誉は先に近江に入り兵を集め、足利の到着を待つと合流の上、京都に向かうという。万が一、足利軍が、金沢貞顕が懸念しているように、三河にて反転し鎌倉に向かった際には、佐々木の軍がその背後を衝くのだと、円喜は説明する。

「・・いかに犬が歯を剥こうと勝ち目はござらぬ。」断言する円喜。
「判官、しかと左様か?」高時が道誉に確かめる。

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「おまかせくださいませ。足利殿の動きは、この判官が隅から隅まで目を光らせておりますれば、ゆめゆめ鎌倉に弓を向けさせるものではござりませぬ。」
「うむ、しおらしい。
ともあれ、戦はかなわぬ。出せる兵は誰でも出して、早うに宮方を抑え、長いくさにせぬことが肝要ぞ。
貞顕、よいの?
ここまで高時に言わせると貞顕にも反論する道はない。

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座から退出した、長崎父子は佐々木道誉に耳打ちする。
「判官殿、隠岐の先帝の始末は御辺にまかせておいたはずじゃ。それを逃げられた。この騒ぎの元はそこにある。
足利殿には我らも思うところがある。それ故、あえて鎌倉より出す。しかと見張られよ。
道誉の背後から恫喝したのは高資。
「それは申した通り」震える小さな声で答える道誉。いつものはったりめいて堂々とした道誉らしくない。
此度背けば鎌倉におる一族郎党、みな首をはねる!
円喜が扇子を道誉に首に押し当て、首をはねる仕草に道誉は愛想笑いを浮かべるだけだった。

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感想

今回はおもしろかった。

まずは「鎌倉組」。北条高時長崎円喜長崎高資金沢貞顕赤橋守時の5人。今回は未登場だがこれに覚海尼が加わった6人が鎌倉幕府首脳陣のドラマを引っ張っている。彼らが目立つとドラマが面白くなる。

人の良いただの気配りおじさんと思っていた金沢貞顕が今までの足利贔屓をかなぐり捨てて、ひたすら対足利対策の論陣を張る。

赤橋守時は相変わらず筋が通ったスタンスだが、今回の高氏との一幕は、一時は共に改革を夢見た同士が、その出自の違いが故に袂を分かたなければならないという悲劇の場面であった。ひたすら表情を殺した守時に対して、高氏の表情の変化は見応えがあった。

権威・権力を傘に来て恫喝すれば人は動くとしか考えてなさそうな長崎高資。強気の策しかとれず、またこれまでの描写から吝嗇の気が強い様子が伺える。

硬軟取り混ぜた策を弄する政治的怪物長崎円喜。若干最近は寄る年波には勝てない様子が口が回っていない様子が節々に描かれているように思う。
数々の陰謀の糸を引いてきた長崎父子だが、今回の佐々木道誉に対して、後醍醐帝の暗殺をしくじったことを非難したのはまずかったかな。後述するがあれで道誉の逃げ道を塞いでしまったので、道誉は足利側につくしかなくなった印象だ。あれさえなければ、もしかすると道誉は、常に逃げ道、第2の道を用意しつづけた彼のスタンス通りに、鎌倉方へつくという道を捨てなかったかもしれないのだ。

北条高時は人物や演技を語るだけで一記事書けそうなので今回は割愛するが、ここまで登場した5人のパーソナリティや演技、これ以外の組み合わせはないのではないかと思えるくらいに気に入っている。
またあと数回で揃って舞台から去っていくのが非常に寂しく思っている。

「鎌倉組」への対抗するのは「足利ファミリー」。
貞氏法要の際には北条と足利は一心同体とまで頑なであった母清子が今回落ちた。義兄の赤橋守時との件も片付いた(結果は残念ながら決別だったが)ので、残るは妻登子。次回のタイトルからすると、登子のほうは次回に持越し。
直情径行の気がある弟直義、深慮遠謀執事にして高氏の参謀ともいうべき高師直との性格の違いはこれまでも度々描かれてきたが、引続き着目点。ただ目先のテーマではない。

この2つの大きなドラマからすると後醍醐帝のドラマはまだまだだ。
今回は阿野廉子がこのまま悪女路線を走り始めるのか注目。

 

後醍醐天皇 (岩波新書)

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  • 作者:兵藤 裕己
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「プラモ迷宮日記 第3集 フラットレッドの巻」(モリナガ・ヨウ:大日本絵画)を読む

手元のバックナンバーを確認すると、第1集の発行が2011年、第2集は2012年となっているので実に8年ぶりの続刊、モリナガ・ヨウが模型雑誌「アーマーモデリング」に連載していた記事の単行本化第3集になります。

 

毎回、プラモデル(それも主にAFV関係)を題材に、模型少年的な”あるある”ネタに、模型としての作り込み、さらには模型を作るにあたってのその車輌のエピソードや、作りながらの感じた事、疑問点などを題材にして、細かい丁寧な手書き文字で書き表されたイラストエッセイにまとめてあります。その精緻なグラフィックも相まって1ページ1ページ読むのに時間が必要だったりするのですが、それだけ丁寧に読み込ませてしまうその筆は健在です。
当方は模型少年というよりもミリタリーファン要素が大きいためどちらかというと後者のほうで興味をそそられるのですが、度々描かれている模型を作ったが故の気づきは新鮮だったりします。

収録にあたっては掲載順ではなくエピソードの種類毎に編集し直されているようです。

 

エピソードに登場する車輌模型(当方が拾った分のみ)

アメリ

  • M3 スチュアート
  • フォードGPA
  • M10 
  • M3 リー

イギリス

  • クォード・ガントラクター
  • 6ポンド対戦車砲
  • チーフテン
  • ランドローバー・ピンク
  • 25ポンド砲
  • マークⅣ
  • バレンタイン
  • ホイペット

フランス

  • ソミュア

ドイツ

  • Sd kfz222
  • エレファント
  • ラング
  • ブルムベア
  • ヴェスペ
  • 38(t)
  • フンメル
  • A7V
  • Ⅳ号戦車C型

ソ連

  • SU76

日本

  • トヨタ製フェートン
  • 87式自走高射機関砲

その他

 

後半3割り程度はAFVのラジコン模型に話しの中心が移ります。

 

 

35分の1スケールの迷宮物語

35分の1スケールの迷宮物語

 

 

 

ASLSK シナリオS74 IRON FIST をプレイする(1)シナリオ訳出・背景等

先ごろ発売されたアドバンスドスコードリーダー スターターキット(Advanced Squad Leader Starter Kit)シリーズの拡張キット#2より、シナリオS74になります。
「隠蔽」配置が適用されるシナリオですので本来はソロプレイに適当ではないのですが、シナリオの設定が上海事変ということで興味があったので、試しプレイになります。

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なお今回はシナリオカードの訳出とシナリオ背景を紹介します。

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ASL SCENARIO S74 IRON FIST

中国、上海、1937年8月17日

上海でリトル東京として知られているその地域は、上海での戦闘の最初の週にすぐに中国軍に包囲され日本の飛び地のようになっていた。この地域には黄浦江に沿って日本海軍の水交社やドック地区が含まれていた。中国軍はこの飛び地を一掃する機会として捉え、この要塞化された地域に対し損害を顧みずに軍隊を無尽蔵に投入した。中国軍の動きに対して日本軍は巨大な圧力を感じ、副司令官の長谷川清は日本の最高司令部に増援の派遣を依頼した。中国はこの好機を逃さないようにドイツ軍事顧問団に支援を依頼した。顧問団は第87師団に新計画として「IRON FIST(鉄の拳)」作戦を考案したが、これは第1次世界大戦後期にドイツが用いた突撃歩兵を用いた浸透戦術、つまり特別に訓練された部隊が砲撃の背後に素早く追随する形で前進し、防御の隙間に素早く進入する、を用いたものであった。

勝利条件

中国軍はゲーム終了時にマップkのM1の建物を支配下に置くこと。

バランス調整

日本軍: 戦闘序列に92式重装甲車(Type 92B Combat Car)を1台追加する

中国軍: シナリオ特別ルール1の3番目の文章の内容を無効化する(kM1建物の+4TEM)

シナリオ特別ルール

  1. 「隠蔽(8.3)」は有効である。林と建物は隠蔽地形とする。マップk M1の建物のヘックスはすべて+4の地形修正値(TEM)を持つ。
  2. 日本軍の隠匿配置(8.1.8.5)は無効である
  3. 第1ターン以降、日本軍の帰還(recall)状態にないAFVは移動するためにはDR≦8をださなければならない。移動フェイズの開始時点において隣接しているAFVはそれぞれ-1のDRMを受ける。AFVがDRに失敗した場合、車輌は移動できず機動状態(Motion)にあった場合は直ちに停止する必要がある。
  4.  中国軍の5-3-7/2-2-7分隊のみが決死隊(8.5.2)として指定できる。また狂暴化状態にない場合は不意打ち(Ambush)チェックにおいて-1のdrmを受けることができる。
  5. カップの中に3個の釘付け(Pin)カウンター、2個のDM(士気阻喪)カウンター、また6個の釘付けでもDMでもないカウンターをいれる。第1ターン以降、中国軍は盤外配置(Offboard Setup)において、1個以上の分隊(MMC)を含む日本軍スタックそれぞれについて1個のカウンターを引く。釘付け(Pin)カウンターが引かれた場合、そのスタック上に置き、隠蔽カウンターを除去する。士気阻喪(DM)カウンターが引かれた場合、そのスタック内にいるすべての分隊(MMC)についてステップ減少(Step Reduction)状態にし、釘付け(Pin)カウンターを置き、隠蔽カウンターを除去する。他のカウンターが引かれた場合は、効果無しとする。いったんすべての釘付け(Pin)カウンター、士気阻喪(DM)カウンターが引かれるか、1個以上のMMCを含む全てのスタックについて引かれるた場合、止める。釘付け(Pin)カウンターが置かれたスタックに含まれるすべてのMMCはシナリオを釘付け状態から開始する。SMCの場合、この釘付けまたは士気阻喪カウンターが置かれたことによる影響を受けない。

顛末

砲撃の解除に伴い中国軍の突撃歩兵は前進し猫のように器用に部隊間の間隙をすり抜け、日本軍の部隊間の連絡と配置を混乱させた。だが日本軍は虎の子の装甲車を伝統的な海軍陸戦隊と組み合わせて投入した。中国軍は犠牲を払ったにも関わらず大突破は実現できないまま、日本軍の援軍が到着した。張志忠将軍とドイツ軍事顧問団は自分達の窓が閉ざされたことを悟った。

マップ

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中央の赤丸内の建物が勝利条件の建物になります。
中国軍はマップ上端より進入。日本軍は上側のマップのヘックス番号4から下側全体にかけて配置できます。
日本軍は8.5個分隊。マップの広さに比べると数は多くはないです(スターターキットのシナリオ全般に言えますが)。中国軍は、日本軍より火力が高いエリート分隊8個に、一般兵分隊12個です。
日本軍側に装甲車が2両、中国軍には爆薬がありますがそれ以外は通常の各種機関銃が支援火器になります。

 

シナリオの背景

1937年7月北京郊外盧溝橋にて発生した日中両国の衝突は政府や参謀本部の方針を違えて現地部隊主導で拡大していく中、同年8月に発生したのが第二次上海事変です。
第二次上海事変における軍事的な衝突は8月13日に始まっていますが、本シナリオはその直後8月17日を舞台にしています。

シナリオカード冒頭の状況説明に登場する長谷川清は当時現地に派遣されていた第三艦隊司令官で、各軍艦の陸戦隊と鎮守府から派遣された特別陸戦隊を束ねていた人物です。日本海軍陸戦隊4千人あまりに対して中国国民党軍が上海周辺に集めた軍勢は20万人とも言われています。またその精鋭部隊はドイツから派遣されていた軍事顧問団の指導を仰いでおり、その装備もドイツ式のものでした。この点は本シナリオの戦闘序列で中国軍エリート部隊の基本能力が日本軍のエリート部隊より火力において優れた数値にあらわれています。

長谷川艦隊司令官は状況を海軍軍令部(当時まだ大本営は組成されていませんでした。シナリオカードに登場する日本の最高司令部は海軍軍令部と読みました)に報告し、陸軍師団の動員に繋がりますが実際に陸軍部隊が現地に投入されるのは8月23日からになります。その際、また例によって逐次投入という悪弊を見せるのですがこれはまた別の話ですね。

 

シナリオについて

シナリオ特別ルールについて

今回ユニークな特別ルールが付けられています。特別ルール5です。
釘付けや士気阻喪などのカウンターからチットを作ってそれを持って日本軍のスタックに適用するというものです。中国軍が取った浸透戦術による日本軍の初期の動揺を表現するためのルールですが、チット引きによってかなり影響があるのと隠蔽もはがれることを考えると、初期配置時のスタックについて考慮する必要がありますね。

特別ルール3は日本軍の装甲車の機動に関する制限です。これが日本軍の装甲車の機械的信頼性の問題なのか、実際の運用上の制約等を反映した問題なのか、または特別ルール5と同様に中国軍の攻撃への反応に起因するのかはよくわからないです。いずれにせよ日本軍は装甲車を縦横無尽に機動させるというよりは、固定砲台のような使い方をせざるをえないのかもしれません。

日本軍に登場する92式重装甲車(Type92B)には車輌固有のルールがついています。

  • Type92BはBMGとCMGのどちらかのMGが先に射撃をした際、その攻撃とそのフェイズの残りの攻撃において、先に射撃を行ったMGが主砲と見なされる
  • 両方のMGが同じ射撃グループとして射撃を行う場合は、所有者はそのフェイズにおいてどちらの機関銃を主砲とみなすのかを宣言しておく必要がある。その宣言は行われなかった場合は、主砲はランダムに決められる。
  • Type92Bは両方の機関銃装備が使用不能にならない限り、主砲使用不能による帰還(Disabled MA Recall)(7.10)の対象にはならない
  • Type92BのBMGが対AFV戦闘において命中となった場合、AP To Kill Tableでは12.7ミリの欄を用いて判定する。

     ※ ここの欄は後で修正・補足します。

 

 

日中戦争全史 上巻

日中戦争全史 上巻

 
それでも、日本人は「戦争」を選んだ (新潮文庫)
 

 

大河ドラマ「太平記」17話「決断の時」:”決断の時”と言いつつ決断のその時は描かれていない?

前回のあらすじ

後醍醐先帝の隠岐への配流にあたって護送を担った佐々木道誉は数々の便宜を先帝に施したことにより先帝より「公卿に生まれ直せ」とまで言われる。

道誉の厚遇のことは鎌倉の長崎円喜・高資父子にも聞こえるところとなり、隠岐島の判官が佐々木一族であることも受け、長崎父子に道誉に対して後醍醐先帝を弑逆するように使嗾される。

その頃、足利家は懸案だった亡父貞氏の弔い法要を鎌倉ではなく足利庄で執り行う。
法要をめぐり、高氏・直義兄弟、高氏母清子、高氏妻登子、また高氏の義兄の執権赤橋守時、伯父の金沢貞顕と各人それぞれの思いが交錯する。
高氏は法要に出席した岩松経家、また新田義貞より先帝の拉致や挙兵についての話を訊くことになる。

1332年末近く、吉野山にて護良親王、河内にて楠木正成がそれぞれ再び挙兵する。

 

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取引

佐々木道誉陣内孝則)に招かれ訪れた高氏(真田広之)。
佐々木屋敷では酔った道誉と、花夜叉(樋口可南子)が迎える。

道誉が、長崎父子より後醍醐先帝を殺すように言われ、恐れるあまりに引き受けた事を花夜叉が暴露する。道誉は自分を悩ませていた秘事が他人に知られるところとなったことい動揺し、誰から聞いたか、と花夜叉に詰め寄る。花夜叉は、長崎高資が酔って猿楽の女に漏らしたのだと言う。

道誉の狂態を見ながらも高氏は淡々と道誉に言う。
「・・で、判官殿は、隠岐の先帝を真に害し奉るおつもりか?そは判官殿の本意ではありますまい。
「長崎殿の命に背けば、この首が危ない」と道誉は手で首を打ち払う仕草をしてみせる。
長崎殿が誰ぞに討たれてしまえば、そのようなご案じは無用でござろう。
討たれる?誰に?」道誉が訊ねる。
足利に」高氏は平然と言った。
道誉と花夜叉は意外な成り行きに何も言えないでいる。

「長崎殿が動けば北条軍二、三十万はすぐ動く。足利殿の兵は諸国集めてせいぜい一万とわずかでござろう。・・勝ち目はござるかな?」道誉が訊く。
北条軍の大半は楠木正成軍討伐に河内に向かうことに相成りましょう。この鎌倉は手薄となる。不意を衝けば、あるいは・・。
高氏は淡々と答える。

f:id:yuishika:20200728141837j:plain「不覚をとり、討ち損なった時は?」さらに訊く道誉。
「足利は滅亡、この世は何一つ変わらずでござりましょう。・・判官殿は素知らぬ顔でそれを見届けた後、帝を害し奉ればよろしかろう。何の咎めもないはず。それまで判官殿には先帝を固くお護りいただきとうござる。
または、我らの動きにいかなる事があろうとも手出しをなされぬよう、ただそれだけを願い奉る次第。幸いにして世を変えることができるなら、判官殿にとっても良い世であるはず。この取引、どちらに転んでも判官殿には損はござりませぬ。」
「悪い話ではござらぬ。が、なにゆえ掛かる話をこの判官ごときに打ち明けなされるのか。危ないとは思われぬのか?
「それがしは判官殿を味方を思うてござります。強い味方と思うてござります。・・それでよろしゅうござりますな。」
道誉は高氏の目を見据えたまま杯の酒を飲み干す。高氏も応えて酒を飲む。
道誉が哄笑し、高氏も笑い声を上げる。

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高氏は、道誉の脇に控えていた花夜叉に向いた。
「お聞きの通りじゃ。河内の楠木殿によしなにお伝えくだされ。楠木殿がどれだけ北条軍をひきつけておけるか、我らの生死もそこに掛かっておると
「花夜叉、ぬしは?」道誉は花夜叉と楠木党との関係を知らなかった模様。
花夜叉は高氏に答える。
「花夜叉、これよりただちに河内に向かいますれば、これにて。ごめんくださいませ」
と退出する。

 

路傍にて

高氏とその一行は、佐々木邸からの帰り、屋敷が立ち並ぶ鎌倉の街路の両側にびっしりと筵に寝転がる貧民達の姿を見る。東北の乱(安東の乱)の後、焼け出され食い詰めた流民が流れ込んでいるという。高氏は流民の群れに取り囲まれる幻影を見る。

このドラマの中で、楠木正成の描写では、正成が農民達と収穫を祝ったり、また農民たちの境遇に心を遣る場面の描写はあったが、高氏を描く中で一般民衆が描かれたのは初めてではないかと思われる。高氏の思慮の中に一般民衆という視点は今まであまり描かれていなかっただけに唐突な印象はあるし、今後も同じような民衆の視点が描かれるのかは注意したい。

思案しながら由比ヶ浜を歩く高氏を、母上がご案じだと弟直義(高嶋政伸)が迎えに来る。
「・・勘の鋭いお方だからのう。ワシが何を考えておるのか、気がかりなのであろう。」母清子の事だ。
「そうかもしれませぬ。兄上が北条に弓を向ける、それは間近じゃ、と。・・直義もそう思うておりまする。その気配が母上にもわかるのか・・
「恐ろしいことじゃ。そう思わぬか。もはや後戻りはできぬ、そうする他はない。そう思いながら、まだ間に合う、まだ引き返せる、どこかでそう思うておる。恐ろしいのじゃ、戦が起これば苦しむものが巷にあふれよう。登子や千寿王、母上を見るたびに、安穏に暮らすのが良いと、そう思う。
というて、今の幕府は腐りきっておる。このままではいかん。
先の帝は誰もが立派なお方じゃと言う。ならば、帝の力をお借りし、帝とともに良い世の中をつくってみたい。誰もが苦しむことのない、そして美しい国を。
ワシの夢じゃ。直義!ワシは迷うぞ。
「ワシとて迷いまする。じゃが、夢は捨てられませぬ。夢を失い安穏に暮らしたいと思いませぬ。」直義。

前エピソードと比べると高氏は、一挙に謀叛に心が傾いた様子。確かに前回も新田義貞にそのような事は言ってはいたが、赤橋守時金沢貞顕ら北条方の親足利派の人物達の思いすらはねつけてでも謀叛に傾いた、最後のひと押しが何だったのかが少々わかりにくいなぁ。

 

軍議

「なにゆえじゃ、なにゆえ楠木はかように強い。楠木はたかが数百の兵じゃというではないか。」
北条高時邸で開催された軍議の席、上座で声を上げているのは北条高時片岡鶴太郎)。

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執権職を退いたと言っても、依然北条家得宗として表の一番の権力者だ。

楠木正成の後ろには吉野山で挙兵した大塔宮護良親王がおり、諸国の武将に激を飛ばしていると、長崎高資西岡徳馬)が報告する。
「・・北条を倒した暁には、北条の領地を皆に分け与える、と」恩賞の約束が飛んでいると。
「左様、都の周辺にのさばる悪党、野武士の輩を先々の恩賞で釣って味方に引き入れておるのでござります」話を継いだのは、長崎円喜フランキー堺)。
楠木の軍は恩賞に釣られた水ぶくれの軍にござりまする
それを聞いた高時は幕府も恩賞を与えよ、倍を与えれば戦をせずに済むのではないかと言う。「恩賞じゃ、恩賞じゃ!」と、高時は叫んだ。
「お待ちくだされ、もはや我らには恩賞として与える領地などありませぬ。
と円喜が高時を止める。

「左様、三浦を滅ぼし、安達を滅ぼし、皆から召し上げた領地はことごとく得宗家が。こと得宗家の重臣長崎家が己のものとなされてまいった。・・皆得宗家が奪ってしまわれた。もはや恩賞に与える領地はございますまい。
円喜の意見を継ぐように始めたが最後は得宗家・長崎家を批判したのは赤橋守時勝野洋)。
「赤橋殿、口が過ぎましょうぞ!三浦、安達の領地はここにおられる金沢殿にも分け与えられておる。得宗家だけが私腹を肥やしておるとは聞き捨てならぬ!
怒りのあまり咳き込む円喜。

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「今は誰の領地が多いとか少ないとか、申しておる時では」
あわてて間にはいる金沢貞顕児玉清
守時が言いたいのはそこにはない。
「そういう事ではござらぬ。この赤橋を含め、北条一族が諸国の領地をあまた押さえ、勢いその恨みを買うことになった。これは認めねばならぬ、と。
だからどうだと言われるのだ!」力づくで開き直るような意見を言うのは常に長崎高資西岡徳馬)。
「我らの領地を悪党どもにくれてやれと、申されるのか!!」
「左様!北条は奪うのみで与えなければ民の心は離れていきまする。
「赤橋殿!!!」円喜が叫ぶ。

もともとなぜに楠木ばかり味方が増えるのか?というところから始まった議論だが、ポイントは恩賞の多寡だということになったにも関わらず、長崎高資が悪党に恩賞をやるのか?と、言った事で、ここまでの議論自体を崩してしまっている。

乱を鎮めたいが恩賞としての土地自体が存在しないという、もともとのところで土地本位制とでも言うべき制度の上に成り立っていた幕府のため、その制度疲弊が起きたということだろう。
北条による土地の寡占を崩さない限り根本的な問題は解決できず、そのためには荒療治だが幕府そのものが無くなり、北条家の土地を含めて各土地の支配者をガラガラポンする必要があったということなのかもしれない。
となると鎌倉幕府の滅亡は必然であったというべきだろう

結局、この土地本位制自体は室町時代も続き、今度は足利将軍家自体が土地をもたなすぎて、衰退してしまうことになるがそれはこのドラマのずっと後の話。

「えーい、もうよい、もうよい!」高時が議論を中断するように叫ぶ。
「貞顕、すぐに出せる軍勢はいかほどじゃ?」
「ざっと十万」
「それで勝てるか?」高時が訊く。
「その十万をこの道蘊にお与えいただければ楠木ごとき一捻りにいたして見せまする」
割って入ったのは僧形の二階堂道蘊(北九州男)。
「よくぞ申された二階堂殿。御辺が此度の大将じゃ!」円喜が言う。

円喜がここで声をあげたのは、道蘊への賛意よりも得宗家長崎家の立場が不利になるような議論から話題を変えたいということだろう。
このあたり、単に議論を壊すだけの高資よりも円喜のほうがずっとずる賢い。

高時が珍しくまっとうに意見を言う
「赤橋、北条が富み栄えるは父祖代々の血と汗の賜物ぞ。それを手放せと申せば今度は北条のうちうちで争いが起きよう。難しいのぅ。戦は好かんが、やむをえまい」
「さりながら!」守時はまだ食い下がる。

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そこへ庭に遊ぶ高時の愛妾顕子(小田茜)らの嬌声が聞こえ、蹴鞠の鞠(まり)が軍議の場に転がってきた。

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「後はよしなに」高時は顔を緩め、にやつくと鞠を持って庭に飛び出す。
「太守!」守時の声はむなしくなる。

軍議の話題はすでに、十万の出兵の内訳の話となり、ここに根本的な議論は永遠に失われていた。

 

鎌倉勢の出兵

足利家筆頭重臣というべき執事高師直柄本明)が幕府出兵の件、東国から十万の兵が出兵することになったが、そこには足利家ははいっていない、と高氏に報告する。
「足利は出ずともよい、と?」と高氏。
「主力は北条の方々にございます」
「十万余りなら、まだ相当の兵力が鎌倉に残ることになる・・」
「北条殿がこのまま、足利家を温存するとは思えませぬ。おそらく足利を含む第二陣の出兵があるやに思われます。」
冷静な分析を加える師直。
第二陣が出る折こそ、この鎌倉が手薄になる時かと。
それまで楠木殿が持ちこたえるかどうか。十万以上の兵を相手に持ちこたえられるかどうかじゃ。

1333年正月半ば、幕府軍の第一陣が西へ出立する。その旅が二度を帰ることのない片道の旅となるのである、というナレーションが印象的。

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久子と卯木

楠木正成は、花夜叉から高氏の言葉を伝え聞き、幕府軍をひきつけるため河内に軍を引き上げる事を決める。
・・戦を長引かせて、皆長持ちして、死なぬように戦うて、敵をひきつける。

正成の決断はちょうど高氏のプランに乗った形だ、はからずも本来敵味方であるはずの二人の男の思惑が一致した瞬間。

正成他男衆が退出し、残った正成妻久子(藤真利子)と花夜叉。

「申し訳ござりませぬ。大事な話をお持ちになられたのに、殿はあの通りで」きっちりと礼を言う久子。
「義姉様、よろしいのです」花夜叉こと卯木も礼を返す。
「あれで真はうれしいのです。それならそうで、「かたじけない」とはっきり申せばよいのです。」
「あれが兄上なのです。」
「意地っ張りなのです。」意見が一致する二人。
「ようわかります。私もそうですから。武士の家が嫌になり、猿楽舞と駆け落ちしてからもう十何年。意地を通しておりまする。」
「もう相手の方もお亡くなりになられたではありませぬか。なにゆえでござりまする?
なにゆえ、武士の家がおいやになられたのです」

父親が戦で捕らえた6つ7つの子を畑で切り捨てるのを見たからだ、と答える花夜叉。こちらがやらねば相手がやる、戦とはそういうものだ、武士とはそういうものだと言われた、と。

「それなのにようわかりませぬな。こうして楠木家が一大事じゃと、戦の手伝いをしておりまする。」
「やはりよう似ておりまするな。卯木殿と我が殿は。どちらも武門に向かぬお方じゃ。戦嫌いが戦をしておりまする。

二人の女性が、ひとりは妻としてひとりは妹として正成を論評するのが可笑しいシーン。ここまであまり接点がなかった二人だが今後どのように絡むのかはいまひとつ想像がつかない。

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感想

楠木家のシーンの後、隠岐島での後醍醐帝のシーンがはいるのだが、帝の愛妾阿野廉子原田美枝子)が帝を睦まじくしているもうひとりの愛妾小宰相(佐藤恵利)に嫉妬するというシーンなので割愛。
小宰相が実際の眉を抜いてさらに高い位置に円形に描いた殿上眉のメイクなのに対し、阿野廉子は実際の眉をベースにした引眉風のメイクになっている。この眉に関するメイクの違いがなんらかの演出の所以なのかは現時点はよくわからない。

さて今回は記事内に書いたように高氏が事実上、謀叛を起こす事を佐々木道誉に告げるという場面となった。道誉は北条高時とも近く、また高氏は道誉に何度か裏切られてきていることを考えると、ここまで軽々しく事を告げてよいのかという気がかなりする。ただ言った事により道誉の帝弑逆という軽挙を押し留め逆に護ることを実現し、また花夜叉を通じて楠木正成に対して意を通じることとなることを考えると、一石二鳥と言えなくもない。
でもまぁここまで描かれてきた、幕府こと長崎家の諜報網などを考えると露見のリスクのほうが高そうに思える。

またもうひとつ気になったのは、帝の力を借りて、世の中を正したい美しい世を実現したいという高氏の思いの話。
かつて赤橋家から登子を迎えるにあたって、赤橋守時と手を携えて幕府を変えたい、世の中を正したいという話をしていたはずだが、その後、赤橋守時が執権になった後も、「今日まで安穏にお暮らし」(by 道誉)と中央に出ることなく数年をすごしている。

おそらくこの後、後醍醐帝による新政においても、世の中はただせず、美しい世は実現できなかったため、自ら幕府を開くこととなり、その後の観応の擾乱なども同じような理由で行っていくのかもしれないが、今後の高氏を測る上でのキーワードだろう。

 

北条高時邸での軍議のシーンは鎌倉幕府そのものの制度が抱える問題点をあぶり出しているようで非常に面白いシーンであった。また時折、鋭い意見を言いながらも最後は会議を捨て、蹴鞠に興を移してしまう高時演じる片岡鶴太郎の演技はよかった。

 

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