Their Finest Hour -歴史・ミリタリー・ウォーゲーム -

歴史、ミリタリー、ウォーゲーム

「THE LAST HUNDRED YARDS」を対戦する(1/2)

GMT社の「THE LAST HUNDRED YARDS」(以降、「LHY」)をプレイしました。
小隊から中隊規模の小さな戦闘組織をシミュレートしており、ルールブックの冒頭に次のように謳っている作品です。

The game introduces new and innovative systems to model small unit behavior in combat.(このゲームは、戦闘における小規模な組織の行動をモデル化するため新しく革新的なシステムを導入しています)

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boardgamegeek.com

 

ゲームの概要

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第二次世界大戦時の1944年ノルマンディー作戦以降を舞台にドイツ軍とアメリカ軍による歩兵戦闘を中心とした小規模な戦闘を扱っています。*1

プレイヤーは中隊から大隊規模の部隊を指揮し、1ユニットは歩兵は分隊から班単位、指揮官ユニットは指揮官と伝令、通信兵などを含めた指揮チーム(4名程度と説明されているの)、また車両は1両単位で登場します。
機関銃、携帯対戦車兵器、砲兵器などはその兵器と操作する要員(5人~10人前後)も含んだユニットになっています。

1ターンは2~5分、1ヘックスは50ヤード(約45メートル)というスケールです。

分隊単位の戦術級ゲームのスタンダードというべきMMP社「Advanced Squad Leader」シリーズ(以降、「ASL」)とほぼ同一です。また今年前半に盛んに対戦をしていました、Flyingpig Games社の「Old School Tactics」(以降、「OST」)ともスケール感はほぼ同一です。

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マップは「ASL」のように複数パターン用意されたマップをシナリオによって組み合わせて使います。ダイスは10面ダイスを使います。
カード類はありません。

 

ゲームシステム

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「THE LAST HUNDRED YARDS」のゲームシステム

リアクションシステム

 「ASL」のオーソドックスなターンシステム、「OST」のインパルスポイントシステムに対して、「LHY」のゲームシステムはアクション-リアクションシステムとしておきます。
作戦級のゲームで、相手の動きに対応してリアクション移動といった行動をシステムに組み込んだものがありますが、イメージは近いかもしれません。

  1. イニシアティブを決める。
  2. イニシアティブを得たプレイヤーは小隊毎に活性化させ、アクション(移動・射撃・回復)を実施する
  3. 小隊のアクションが終了すると、相手にリアクションを求め、相手方はリアクションが可能なユニットについてリアクションを行う
  4. リアクションに対するリアクションも可能で、双方がリアクションを行わないと宣言すると、イニシアティブプレイヤーは、次の小隊の活性化を行う(2~4を繰り返す)
  5. イニシアティブプレイヤーが配下の全ての小隊の活性化を終了させるとターン終了

ここで言うリアクションが可能なユニットとは基本的には、

相手方のユニットが、自分のLOS内で移動、射撃、回復などのアクションを行ったユニット。言い換えると敵のアクションを視認できたユニット、がリアクションが可能なユニットとなります。

ただこれ条件だけだと前線にいないユニットは何の行動もできないことになりますので、敵アクションを視認していないユニットについては限定的ですが許容しているアクションもあります。例えば、指揮官ユニットとスタックしているか隣接しているユニット(ただし後者は制約あり)による移動・回復が該当します。

このゲームの特徴のひとつは次の点にあります。
活動プレイヤーによる一連のアクション、それに対するリアクションが終了すると、「ASL」であれば今度は攻守交代した上で、攻撃側のプレイヤーがたどった手順を相手方プレイヤーもたどる訳ですが、本ゲームの場合はここで次のターンに進みます。

そうです。
イニシアティブを取らなかったプレイヤー(非活動プレイヤー)はそのターンの間は、活動プレイヤーのアクションに対応したリアクションは行うことができますが、自らアクションを行うことはできないのです。
リアクションでは基本的にはアクションに反応したものになるため、自ら能動的な行動を起こすことが難しいことになります。

プレイの手順

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簡単にプレイの手順を紹介します。

Ⅰ.イニシアティブフェイズ

イニシアティブを決めます

Ⅱ.活性化フェイズ

活動プレイヤーは小隊毎に活性化し、アクションを実施、それに対するリアクションの実施という流れを繰り返します。小隊の活性化とリアクションが完了すると終了。
上に書いたアクション-リアクションの流れはこのフェイズの中の手順になります。

Ⅲ.攻撃解決フェイズ

Ⅱ.の中で射撃は攻撃値の算定までを行います。実際にダイスを振って戦闘解決を行うのはこちらのフェイズでまとめて実施します。
発生した結果は同タイミングで適用されます。

Ⅳ.強襲解決フェイズ

白兵戦です。白兵戦への突入はⅡにおける移動やⅢの結果として発生するのですが、解決はこのフェイズで実施します。

Ⅴ.迫撃砲砲撃フェイズ

歩兵戦闘主体ということもありこのゲームでは盤外射撃扱いで迫撃砲による支援がけっこうフィーチャーされています。

Ⅵ.時間経過判定フェイズ

後述

Ⅶ.クリーンナップフェイズ

 

時間経過の判定

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終了するターン数が読めないという点では、サドンデスルールの変形とも言えますがユニークなので紹介します。

「LHY」では各ターンの終了時にそのターンでどのくらいの時間が経過したのかをダイスにより判定します。結果は2~5分になります。
シナリオによって異なりますがこの経過時間は勝利条件にもつながってきます。
シナリオによって定められた勝利条件を達成するために要した時間がそのままポイントになり、途中に生じた除去ユニット数やシナリオによって定められた条件によるポイントに加算されます。
(シナリオによって定められた)攻撃側は早く攻略する(勝利条件を満たす)ことが求められ、防御側は長く保持する、持久することが求められます。


AARは次回につづきます。
 

 

 

ご参考:「OLD SCHOOL TACTICAL」のシステム

2020年の前半集中的に同じ戦術級ゲームにあたる「OST」をプレイしていました。

OST」を特徴づけるシステムは「インパルスポイントシステム」ということになるでしょう。全体の難易度は「ASL」に比べると高くありません。

yuishika.hatenablog.com

 

インパルスポイントシステムの概要

インパルスポイントは各ゲームシナリオ毎、またそれぞれの軍ごとに定められたダイスにより決められます(3D6、2D+6など)。

ルールブックの説明を借りれば、「インパルスシステムは戦場における不確実性、例えば指揮命令の貧弱さ、弾薬の欠乏、戦火の元での怖れや勇気、その他多数の考慮事項を表したもの」とされています。

各ユニットは移動(Move)、突撃移動(Assult Move)、射撃(Fire)、回復、盤外射撃の誘導、退避(Take Cover)などを行うことで、ユニット毎にインパルスポイントを消費します。両軍がインパルスポイントを全て消費したところでそのターンは終了します。

イニシアティブポイントが多いほうのプレイヤーは、ポイントが相手方と同じになるまでの間、ポイントを消費する行動を行い続けることができます。いわゆる「俺のターン」が続くのです。
相手方はその間、相手の移動に即した「臨機射撃」を行う権利はありますが、それ以外は行動を行うことはできません。
両軍のポイントが同じになった以降は、交互に行動を行うことになります。

OSTのスケール

1ユニット:1個分隊(最小は班)、指揮官、狙撃兵は1人、
車両、砲兵器は1両・1門単位
1ヘックス=40メートル
1ターン=明記なし

 

OST」におけるインパルスポイントシステムの問題点(私見

ゲームのスケールとしては「ASL」と同スケールなのに対し、ゲームシナリオの展開としてはこじんまりとした展開になることが多いのが気になっていました。その原因について考察すると次のように考えています。

各ターンのインパルスポイントはダイスの目によって決まります。特徴はその振れ幅が大きいことです。例えば、インパルスポイントを決めるダイスの設定が”3D6”の場合は最大18となる一方最小値は3となります。”2D+6”の場合は、8~18となります。*2
例えば「ASL」の場合は攻守を野球のように交代しながら、基本登場しているユニットは全て移動でき射撃などの戦闘も可能です。特に全体の行動量について制約がかかることはないです。
「ASL」のゲーム展開の中では(シナリオの規模にもよりますが)、攻撃側の進撃ルートは1本ではなく、複数の攻撃軸をたてることが多いです。主攻・助攻といった複数の軸です。当然、防御側もそれを予想して防御を考慮します。

一方、「OST」の場合、各ターンの行動量はダイスの目によって決まりますので、かなり変動が大きいことになります。大きく多数のユニットに行動を行わせることができるターンがある一方で、ほとんど動けないターンも生じるのです。行動にムラがでてくるのです。

次に同じくらいのインパルスポイントが得ることができるかわからない、という状態になると、今のターンでのインパルスポイントの振り分けも、主攻軸に重点を置いた配分になり、助攻軸への振り分けは小さかったり、助攻軸自体はできないということにつながるのかと考えます。結果、攻撃も一本調子の単調なものになってしまう・・。
まぁ「OST」でももっと大掛かりなシナリオへ挑戦するなどすれば印象は変わるのかもしれません。

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*1:続編では空挺部隊、さらに現在太平洋戦域を舞台にした作品がラインナップに上がっています。

*2:インパルスポイントはゲーム進行の中で損害が累積すると一定割合でポイントがマイナスになるのですが、基本はダイスの目によって決まる割合が大きいです。

「Alesia: Last Stand of the Gauls」(S&T誌)を対戦する(3/3)

紀元前1世紀のガリア戦争における「アレシア包囲戦」を題材にしたStrategy & Tactics誌の付録ゲーム「Alesia: The Last Stand of the Gauls」(以後、「Alesia」)を対戦しました。

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2日目

後半

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ウェルキンゲトリクスがアレシアの市街ヘックスから出撃し、ローマ軍はアレシア市街の南側(マップ上側)にいたカエサル率いる主力はアレシアの東を回り、ウェルキンゲトリクスの頭を抑えようとします。

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カエサルが迫る中、ウェルキンゲトリクスは北への脱出を諦め、敵ZOCを脱出し、西への移動を開始した。

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ウェルキンゲトリクスを活性化できるチットはすでに使い切っていたため、これ以上の移動はできず、夜間ターンが来るまで耐えなければならないという状況。
夜間ターンの再配置ルールに従えば、夜間ターンになれば、アレシアから4ヘックス離れているため、盤外に出ることができる!?

この後、ローマ軍の攻撃に1ステップロスし、残るは1ステップのみとなったところで、1/3、1/6の確率でアウトになる攻撃をかいくぐり生き残ったウェルキンゲトリクスは、夜間ターンの再配置ににより無事盤外に脱出したのでした・・。

サドンデス基準を満たしていないため、ルールとしては、3日目にはいるところですが、ウェルキンゲトリクスが盤外に出た以上、これ以上のゲーム続行は無意味ということでここで終了です。

ポイント比較では除去したユニット数に基づくポイントはほぼ同数で、ウェルキンゲトリクスの脱出によるポイント分でガリア軍の勝利となりました。

 

感想戦

チットプルは盛り上がります。
強ZOCにより思うように動けない軍隊も統率が難しい時代の戦いという印象です。
ファイアパワー方式なのでとりあえず攻撃してみようと軽く戦闘ができる点もよかったですね。
たまにはこういう軽いゲームも良いです。いつもルールブックと格闘するようなゲームばかりでは大変です。

今回は選択ルールは採用していません。

若干適用を迷ったり、あれ?と思うルールがなかった訳ではないですが後でルールブックを読み返すと適用忘れなどもありました。教訓としては、「日本語ルールで不明確な部分は、英文ルールも見ろ」ですね。 

さていつかはAHの「CAESAR」にも挑戦してみたいものです。

 

 

グレート・ウォーリアーズ (字幕版)

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  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video
 

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「Alesia: Last Stand of the Gauls」(S&T誌)を対戦する(2/3)

紀元前1世紀のガリア戦争における「アレシア包囲戦」を題材にしたStrategy & Tactics誌の付録ゲーム「Alesia: The Last Stand of the Gauls」(以後、「Alesia」)を対戦しました。

 

yuishika.hatenablog.com

 

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対戦相手はかみさん。
当方はガリア軍を担当しました。


初期配置

ガリア軍にはアレシアに籠もった「籠城部隊」(青色ユニット)と、外部から救援に駆けつける「解囲部隊」(緑色)の2軍があります。

「籠城部隊」はアレシアの市街ヘックスの他、市街ヘックスに配置できないユニットは、「アレシアプール」と呼ばれる盤外に配置されます。「アレシアプール」には戦闘の結果、後退することになったアレシア市街内のガリア軍」ユニットが置かれるなど一種のセーフエリアになっています。

「解囲部隊」は東西南北など進入してくる方向別に6つのエリアに配置され、ゲーム開始後に活性化の状況などを受けてマップ外から進入してくることになります。なおローマ軍はガリア側の「解囲部隊」がどのエリアに配置されたかは見ることができないことになっています。このためローマ軍は初期配置時には、アレシアに閉じ込めたガリア軍の他、どこから現れるのかわからない「解囲部隊」のため全周に備える必要があります。

ガリア軍の配置に続き、ローマ軍(朱色)がアレシアを二重に囲んでいる包囲線を中心に配置されます。特に朱色枠で中が青色になっている「堡塁ユニット」は、移動はできませんが、射程2、戦闘力2を持つという射撃ユニットの中では最強の戦闘力を持つユニットになっています。包囲線のイラストにあった“やぐら”のようなものがこの「堡塁ユニット」にあたるのでしょう。

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ローマ軍は「堡塁ユニット」のZOCで隙間がないように配置します。ガリア軍からすると、今後ウェルキンゲトリクスユニットがアレシアを脱出するにあたっては、この「堡塁ユニット」で作られたZOCの壁をどこから崩して置く必要があるでしょう。

包囲線について補足すると、前記事で掲載していたイラストのように、包囲線を外側から突破しようとすると、逆茂木や空堀、また高い塀などに阻まれることから、ガリア軍の主力である歩兵ユニットが包囲線の置かれたヘックスに入るためには、全移動力を使う必要があります。ガリア軍ユニットは包囲線を横切って行くだけでも一苦労ということになります。

包囲線でつながったヘックス間は回廊が整備されているといことで、ユニットが包囲線に沿って移動する場合は移動力を抑えることができます。特にローマ軍ユニットが包囲線ヘックスに沿って移動する場合は、地形に関わらず0.5移動力で移動することができるため、ガリア軍の「解囲部隊」が現れた方向にすぐさま兵を送ることできるでしょう。

 

1日目

先攻はガリア軍。

いきなり「モラルチェック」のチットを引きます。

「モラルチェック」では3D6によりその時点の除去されたユニット以上の目が出ると成功し、全軍活性化が可能となる一方で、失敗するとそのターンの以後の活動はできなくなるというやっかいなものです。
ゲームは始まったばかりですのでモラルチェックは自動的に成功、が、活性化するべきリーダーがいません。「解囲部隊」を全活性化といっても、まだローマ軍の出方も不明な状態では、全軍活性化を号令するのは難しいかなと考え、泣く泣くこのラッキーカードは見送ります。

続いてローマ軍のチットは順当に活性化。ローマ軍の主力がアレシアを取り巻き、あちこちで攻撃を開始します。

数ターン後には、ガリア軍の活性化も進み北辺を中心に「解囲部隊」が登場します。

「マストアタック」制のため、接敵し戦闘が始まった箇所ではその後のターンでも活性・非活性に関わらず戦闘が続きます。けっこうこれは大きいです。ひとつひとつの戦闘は小さくても何度も戦闘が続く中ではそれなりに損害が出てくるのです。

またルール説明にも書いた通り、戦闘力が1以下の場合も戦闘結果表では1の欄を用いて解決するため、攻撃し続けることができるのです。これもまた損害が続出する展開の原因となります。

 

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1日目序盤~中盤

ガリアの「解囲部隊」(緑色のユニット)がローマ軍包囲線の外郭にとりつきます。
一方のローマ軍(朱色のユニット)は、アレシアの町の中に居るガリア人の「籠城部隊」(青色のユニット)を少しずつ削りとっている状態です。

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1日目中盤~終盤

ガリアの「解囲部隊」がローマ包囲線の外郭を破り、戦闘後前進などを駆使し、内郭に取り付きます。
この時点でアレシア町内はほとんど「籠城部隊」が残っていません。後退が発生したユニットが「アレシアプール」に移され、そのまま居残っているため、マップ上のアレシア市街ヘックスに残っているユニットが激減したのです。

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1日目終盤

両軍とも残りチットが少なくなり1日の終盤が迫ってくると、夜間ターンにある再編成・再配置の処理を見越した動きになってきます。

ガリア軍の立場からすると、この時点で多少ステップロスをしたとしても夜間ターンで自動回復できること(これは大きい)、さらに再配置の段階でアレシアから3ヘックス以内に存在するユニットはアレシア内に再配置されるというルールを期待した動きになります。 

「解囲部隊」として外側にいる部隊も、アレシアに接近した状態で夜間ターンを迎えることで、翌朝にはアレシア市街から登場できるようになるのです。
当然、アレシアを包囲していたローマ軍によってこれらの接近したガリア軍攻撃を受けます。
1ターン終了時、両軍とも完全に除去されたユニットは23ユニット(ローマ軍は堡塁ユニット含む)。ガリア軍のアレシア「籠城部隊」はゲーム開始時から2/3が除去されていましたが、「解囲部隊」の中でアレシアに接近できた6ユニットがアレシアに入城できました。この救援部隊は2日目のウェルキンゲトリクスの脱出にあたって大きな戦力となっていったのでした。

 

2日目

夜間ターンのうちにいったん盤面から姿を消していたガリア軍「解囲部隊」は北方を中心に3つのエリアから再度進撃してきます。前日の戦闘でこの方面の堡塁ユニットの多くは除去されています。さすがの夜間ターンでも除去された堡塁ユニットの復活はできないので、ローマ軍の防衛力は著しく弱くなっているはずです。

ガリア軍の3ターン目、引いたチットはアレシアの内側と「解囲部隊」の双方から1リーダーずつ活性化できる「連携(Combined)」。
「解囲部隊」がまだアレシアに十分接近できていないので若干早すぎる印象もありましたが、ウェルキンゲトリクスのアレシアからの脱出を決断し、北方へ路を拓こうと動き出します。
アレシア内の「アレシアプール」に籠もっていたユニットを出動させ、ウェルキンゲトリクスが脱出できるようにローマ軍の援軍を妨害するユニットなどを配置します。
ローマ軍は包囲線の回廊を利用して北方へユニットを集めようと高速移動させますが、一度ガリア軍と接敵してしまうと、強ZOCにより相手を撃退するまでそれ以上進めなくなります。ガリア軍はウェルキンゲトリクスユニットを脱出させるだけで20ポイントはいるため、損害を顧みずによってくるローマ軍を強ZOCで拘束するように動きます。

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2回で終了させようと思っていましたが、もう1回続きます。

「Alesia: Last Stand of the Gauls」(S&T誌)を対戦する(1/3)

ガリア戦記」で描かれた紀元前1世紀のガリアを題材にしたGMT Games社の「FALLING SKY」の対戦を画していたのですが、個人的な理由により準備なかなか進まない中*1、同じガリア戦記テーマでStrategy & Tactics誌の付録ゲーム「Alesia: The Last Stand of the Gauls」(以後、「Alesia」)を対戦する機会が先に巡ってきました。

yuishika.hatenablog.com

 

 

S&T 312 cover

GMT「FALLING SKY」がローマ共和国によるガリア平定全体(いわゆるガリア戦争)を題材にしたCOINシステムによるマルチゲームであるのに対し、本作はその平定の過程で実際に発生した戦いを題材にした作戦級ゲームになります。

ゲームが題材にしている「アレシアの戦い」とはガリア戦記の終盤の山場とも言えるもので*2紀元前52年、ローマ共和国ガリア総督ユリウス・カエサル率いるローマ軍とガリア(現フランス)の種族のひとつアルウェルニ族のウェルキンゲトリクス*3率いるガリアの部族連合軍のとの間に行われた戦いです。

ja.wikipedia.org

 

当時のガリアは支配を進めるローマ共和国と現地の反ローマ種族によるガリア戦争が続いていました。紀元前52年、反ローマ派の主導権をとったアルウェルニ族の首長ウェルキンゲトリクスが率いるガリア連合軍は各所でローマ共和国軍と戦いを続けるのですが、敗退しアレシアという町に逃げ込みます。
カエサルは好機と見てガリア国内に展開していた軍を集結しアレシアを包囲。包囲軍はローマ正規軍12個軍団の他、ゲルマン人騎兵、クレタ人投石兵、ヌミディア人軽装歩兵等の補助兵あわせて60,000人であったと伝わっています。

アレシアはブルゴーニュ地方の丘陵地帯にある町で周囲を睥睨するように頭一つ高い土地に位置していました。ここにウェルキンゲトリクスの「籠城部隊」80,000が籠もります。*4
するとカエサルは周囲の高原の稜線を利用して、ローマ人得意の土木工事を行い約1ヶ月でアレシアを包囲するように二重の陣を構築します。内側はアレシアからのウェルキンゲトリクスの軍を抑えるため、また外側は包囲部隊を攻撃してくるガリア人の解囲部隊から防御するための陣になります。

ガリア人達はウェルキンゲトリクスを解放のため、兵力を結集した解囲部隊を送り込みます。その規模25万の歩兵と8千の騎兵からなり、4人の指揮官が率いたと言われています。
こうしてカエサルは内と外とあわせて約34万人のガリア軍を約6万人のローマ軍で迎え撃つこととなったのです。

File:Muséoparc d'Alésia 0038.jpg - Wikimedia Commons

「アレシアの戦い」は総司令官であったカエサル自らによる「ガリア戦記」という稀代の記録により詳細内容が後世に伝わっています。このためゲーム化の機会は多く、中でもアバロンヒル社が発売していた「Caesal: Epic Battle of Alesia」は往年のシミュレーションゲーム誌「タクテクス」(ホビージャパン刊)の初期の号で紹介されたこともあって記憶に残る作品になっていると思います。

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アバロンヒル社から発売されていたアレシアの戦いを題材にしたゲーム

 

ゲームシステム

さて今回プレイした、「Alesia」ですが、ゲームシステムは簡単に言うと、チットドリブン、強ZOC、マストアタックにあたります。 
以上、と言うことで終わるとせっかくのゲームシステムのエッセンスが伝わりませんので、もう少し紹介します。

 

ゲームスケール

1日=9ターン、ゲームは3日

1ヘックス≒約500メートル

ローマ軍ユニット:1ユニット=3~4コホート(大隊)=1000~1600人

ガリア軍ユニット:1000~4000人、騎兵は500~1000人

 

ゲームシーケンス

以下を交互に実施し、全ての手持ちのチットを引き終わると1日が終了します。
チットの数は両軍10枚弱、ゲーム期間は全3日間です。*5

  1. チットを引く
  2. 活性化リーダーを決める
  3. 移動
  4. 射撃戦(射程を持つユニットのみ)
  5. 白兵戦
  6. プレイヤーの交代

 

チットドリブン

プレイヤーはチットを引き、チットに記載された数値分の人数のリーダーを活性化させます。活性化されたリーダーはそのユニットに記載された”指揮範囲”の数値のヘックス内にいる部隊ユニットを動かすことができるようになります。

プレイヤーは交互にチットを引いていき、手持ちのチットを全て引き終わると”日”が終わり、再編成などを行う夜間ターンになります。

おなじ日の中でも、各リーダーやその指揮範囲内のユニットは何度でも活性化させることができます。
直前のチットで活性化させたばかりのリーダーとその指揮範囲内のユニットを今回のチットですぐに活性化させることも可能です。また指揮範囲内の部隊ユニットの活性化にあたっては、所属軍団や部族による違いによる制約はありません。
ゲームが対象にしているのはわずか3日間ということもあり、補給線などの面倒なものの考慮も不要です。

ガリア軍のチットは、アレシアに籠城した「籠城部隊」と、包囲を破ろうと外側から攻撃する「解囲部隊」と分かれています。ガリア軍のチットの中に1枚だけ、「籠城部隊」と「解囲部隊」の両方を同時に活性化させることができるものが入っていますが、それ以外の活性化チットは、どちらか一方に属するリーダーしか活性化できないようになっています。ローマ軍にはこうした違いはありませんので、アレシア攻撃にもまた郊外から押し寄せるガリアの解囲部隊への対処にも自由に対処できます。

両軍にはほぼ同数で同じ内容のチットが与えられています。一部のチットは特別のギミックが用意されています。

「総攻撃チット」はゲームを通して両軍とも1度だけ使うことができるチットで、使いたい”日”のチットの中に混ぜておき、引いた際には全リーダーを活性化させることができます(このあたりの処理は以前に紹介した「耳川の戦い」の「総攻撃チット」に似ています)。

「モラルチェックチット」はローマ軍には1枚、ガリア軍には2枚はいっているチットです。このチットを引くと、その軍はモラルチェックを行います。3D6により、そのタイミングまでに除去されたユニット数以上の数値を出せば成功、出せない場合は失敗となります。
モラルチェックに「成功」すると、その軍のリーダーは全て活性化させることができる一方、「失敗」した場合はそれ以上、活動を行うことができなくなり、相手軍に手番を交代します。

 

強ZOC、マストアタック

敵ZOCにいったん捉まると戦闘後の処理以外では脱出ができません。
ただしリーダーユニットは無条件に、また騎兵ユニットは敵ZOCの相手方にリーダーユニットまたは騎兵ユニットがない場合は離脱が可能となっています。

またマストアタックのため、敵ZOC内にあるユニットは必ずどれかの敵ユニットを攻撃する必要があります*6

 

戦闘解決はファイアパワー方式

戦闘解決はファイアパワー方式でかつ他ユニットと戦闘力を足さずにユニット毎に解決するという方式が採用されています。ファイアパワー方式ですので、防御側ユニットの戦闘力は関係なく攻撃することができます。
地形効果やリーダーユニットとスタックすることによる指揮効果は戦闘解決表のコラムシフトとして反映されるのですが、戦闘解決表の最も弱い欄は”戦闘力1以下”となっているため、シフトの結果戦闘力が”0”以下になるような場合も遠慮せずに積極的に攻撃していくことで、確率は低いとは言うもののなんらかの損害を与えることができるようになっています。
なお防御側に射撃戦を行うことができるユニット(弓兵、投石兵、ローマ軍の砦ユニット)がいる場合は1/6の確率で、攻撃側に損害が出る場合があります。

なおほとんどのユニットは2ステップになっています。戦闘結果としては1発除去は少なく、1ステップずつロスさせていき結果除去というパターンが多いでしょう。
戦闘力1や0以下といった攻撃も通るため、あちこちで戦闘が発生し、少なからず損害がでますので、ユニットは結構除去されていきます。

 

アレシアの特別ルール

ウェルキンゲトリクスの「籠城軍」が立てこもったと都市アレシアとアレシアの「籠城部隊」についてはいくつかの特別ルールが用意されています。

ローマ軍はアレシアのヘックスに対してZOCを及ぼすことができません。これによりガリア軍の「籠城部隊」は、アレシアを包囲しているローマ軍を必ず攻撃する必要はないため自殺的な攻撃を行う必要がありません。戦闘により後退が出た場合に後退する先がなかったりといった事態に陥ることはなく、またアレシア内の移動を自由に行うことができるようになっています。

もうひとつ、ローマ軍はアレシアの都市ヘックスに進入することができないとルールも影響が大きいです。

包囲戦を扱うウォーゲームの場合、包囲されている側が、ZOCルールやマストアタックのルールを適用されることにより、自殺的な攻撃の強要や後退位置がないことからの強制除去などが生じ、急激にジリ貧になるものが少なくないのですが、本ゲームでは包囲される都市に特別ルールを適用することによりこうした事態を防いでいるようです。

 

夜間ターンルールと勝利条件

両軍に与えられたチットを全て引き終わるとその”日”は終了し、夜間ターンになります。夜間ターンではユニットの回復と再配置が行われます。

両軍ともステップロスしたユニットは全て完全回復します。

ローマ軍はアレシアの周りを取り囲むように設置された包囲線かローマ軍キャンプに戻り、ガリア軍はアレシアから3ヘックス以内に位置しているユニットはアレシア都市内に、また4ヘックス以上のヘックスにいるユニットは全て盤外まで退却します。

両軍とも夜になると出撃前の陣地に戻り、翌日また攻めてくるという訳です。

 

勝利条件は、基本ポイント制です。
ガリア軍はウェルキンゲトリクスの盤外への脱出やカエサルユニットの除去により大きな得点を得ることができ、それ以外は除去したローマ軍部隊ユニット、砦ユニットの数により得点します。

ローマ軍はウェルキンゲトリクスユニットの除去、また除去したガリア軍ユニットにより得点します。
それ以外には両軍の総司令官ユニットの除去などにより、サドンデスルールもあります。

 

ルールについては適用にあたり不明点を中心にハウスルールを取り決めてプレイしてす。
騎兵突撃など用意されている選択ルールは左様していません。

また実際のプレイの中では不自然に感じられる部分もありましたので、後ほど紹介します。

 

マップ等の紹介

今回のゲーム、ガリア軍、ローマ軍が初期配置した状況です。
中央に配置された青いユニットがガリア軍の「籠城部隊」で配置されているヘックスがアレシアの都市ヘックスになります(上記の、ローマ軍が進入不可のヘックス)。

アレシアを取り囲むように、オレンジ色と赤色の線がありますが、これがローマ軍が構築した包囲線を現し、ところどころに砦ユニット(砦ユニットの配置位置は自由)が配置されています。

ガリア軍の「解囲部隊」はこのマップの周囲6方向のどこからか(複数も可)に配置されており進入していくるのですが、進入してくるまでは、解囲部隊がどこから現れるかはローマ軍にはわからないようになっています。

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中央の青色ユニットはガリア軍のアレシア「籠城部隊」、オレンジと赤で描かれたローマ軍の包囲線に沿い、堡塁ユニットや部隊ユニットが配置されている。
なお写真上は南、下は北となっている。

以下はご参考、前述のアバロンヒル社「Caesal: Epic Battle of Alesia」のマップです。アレシアと取り囲む包囲線が描かれている。なお南北の方向は、今回の「Alesia」と同じ下側が北方向になる。

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yuishika.hatenablog.com

 

 

ガリア戦記 (岩波文庫)

ガリア戦記 (岩波文庫)

 
ガリア戦記 (平凡社ライブラリー664)

ガリア戦記 (平凡社ライブラリー664)

 

文庫版ではユリウス・カエサルは8巻より登場し、ガリア戦記で記録された時代は9巻から10巻、さらにアレシアの戦いは10巻で描かれています。

*1:現時点2020年12月にプレイ予定です

*2:ガリア戦記自身の記述はかなり淡々としているのですが(記録として書かれたものなので当然といえば当然ですが、読み物としては少々退屈です)、ガリアの各種族を平定するほぼ最終盤としてこのアレシアの戦いが描かれ、作品そのものの山場にもなっています。

*3:塩野七生の「ローマ人の物語」では、ヴェルチンジェトリックスと表記されている

*4:籠城にあたって食料の節約のため、ウェルキンゲトリクスはもともとのアレシアの住人だったガリア人の種族を追い出します。まぁ住人からすると酷い話です。その数10000人程度と伝わっています。追い出された住人はローマ軍に助けを求めますが、カエサルはこれを無視します。住人がどうなったのかは伝わっていませんが、塩野七生は夏場でもあったので冬場とは異なり彼らが生存する術もあったのではないかと書いています。

*5:史実では、ガリア軍の解囲部隊が到着して、包囲陣の内側と外側との戦闘が本格的に開始して3日にて決着したことを受けこの日数で設定されているのでしょう。

*6:隣接する全ての敵ユニットを攻撃する必要はなく、敵ユニットに隣接するユニットは隣接するいずれかの敵ユニットを攻撃する必要がある