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「LIBERTY ROADS」(HEXASIM)を対戦する【2/3】

1944年、第二次世界大戦におけるノルマンディー上陸作戦以降の西部戦線を扱った表題作品を対戦しました。

 

 

ゲーム内容を紹介した前回記事です。

前回の説明の中で、重要なルールの言及を漏らしていました。

本作品にZOCはありません。

ZOC(支配地域)の概念がないため、戦線を引くには隙間なくユニットで埋めることが必要になります。

 

 

勝利条件と初期構想

対戦相手のYさんの希望によりYさんがドイツ軍、当方は連合軍を担当することになりました。6月ということもありD-Dayシナリオを選択。当初は初期配置が同じであるキャンペーンゲームという案もありましたが、1日では終了できないことから勝利条件、ひいては上陸位置が決められないという問題があるため、シナリオのほうを選択しています。

1944年6月にはじまり8月末まで全9ターンです。

勝利条件は、連合軍は10種類用意された条件のうちから4種類を秘密裏に選択し、シナリオ終了時にうち4つを達成すると連合軍の完全勝利、3つで部分的勝利、2つで引き分けというものです。

勝利条件の選択内容によっては連合軍は反攻軍の上陸をドイツ国境寄りで実施するのか、パリに近い場所で実施するのかといった上陸地点の選定に関係するのです。

達成可能性、上陸位置などから今回次の勝利条件を選択しました。

  1. 港湾都市1か所の占領
  2. パリの解放
  3. フランスとベルギー国内の大都市8か所の解放(除く、パリ、ブリュッセル
  4. Uボート基地3か所の占領

 

勝利条件を決めたところで、上陸海岸の選定します。
英仏海峡沿いの海岸であればイギリス本土の航空基地のエアカバー下におかれることになり航空支援や空挺降下などを実施しやすくなります。海上の移動距離も短くなるため上陸可能な部隊数も多くなります。一方でドイツ軍は英仏海峡沿いの海岸沿いには防御設備、有名な「大西洋の壁」を構築しているため、抵抗も厳しくなるでしょう。
大西洋岸では航空支援などは望めず、海上の移動距離もあってか上陸可能な部隊数も制約が厳しくなります。地中海沿岸は条件はゆるいのですが、地中海側での連合軍の動員可能兵力は限定的ですし、パリやドイツ国内への距離を考慮すると主戦線とはなりえません。

となると消去法として英仏海峡沿いが第一候補になるのですが、その中でも、カレー/ダンケルク周辺、ディエップ周辺、またシェルブール周辺は海岸防御力が高く(ドイツ軍による沿岸防御施設が多くあったということでしょう)、作戦難易度があがります。アムステルダム周辺は比較的海岸防御力は弱いのですが、湿地帯に囲まれているため地形的に支障がある点、またフランス国内の解放よりも、ドイツ国内に直接殴り込みをかけるという覚悟が必要(勝利条件もドイツ国内進攻を目指したものにする)な点が気になります。

消去法的にノルマンディー海岸を選ぶことにしました*1

次回以降プレイする際には、オランダ海岸への上陸や、史実でドイツ軍が連合軍の上陸地点として予想していたカレー周辺への上陸なども試してみる価値はあるでしょう。

 

マップ全図。左側が北方向、英仏海峡です。右手に見える海が地中海です。
写真の奥側がドイツ国内ということになります。
左手側に縦に走る海岸線を見るだけでも、ドイツ軍がいかに長い海岸線を防御しなければならなかったのかがわかります。

 

初期配置は両軍とも決まっています。

マップの向きを写真の中でのマップの向きとあわせて、関係する地名を書き込んでみました。いずれもノルマンディー上陸作戦もののゲームでおなじみの地名ですね。
いわずもがなですが、史実ではサント=メール=エグリーズのヘックスあたりから、カーン付近の海岸にかけて上陸作戦が行われています。


第1ターン(1944/6/6-6/10)

天候はは曇天。航空支援に制約はありません。

上陸エリアはノルマンディー周辺を選択。空挺降下の場所、上陸ヘックスも史実にあわせます、というか必然的にこうなるのではないかと・・。

 

空挺降下

  空挺降下位置は上陸位置と同じように選択ができます。ゲームを通して連合軍には5ユニットの空挺師団が登場し、ひとつのターンにおいて最大3ヘックス(3個師団分)に空挺降下を実施できます。アメリカ軍の2個空挺師団、イギリス軍の1個空挺師団の3個師団の降下位置を指定し、空挺降下チェックを行います。

北のアメリカ第82空挺師団(サント=メール=エグリーズへの降下)。いきなり失敗でユニット除去となりました。続くアメリカ第101空挺師団は1ステップロス、イギリス第1空挺師団も1ステップロスですが、それぞれ上陸部隊が上陸を予定しているヘックスの側背や間隙にあたるヘックスを占拠することになります*2

 

第一次上陸

続けて第一次上陸の開始です。
ゲームを通して連合軍は最大5ヘックスに上陸作戦を実施できますが、ひとつのターンの間に実施できるのは最大3ヘックスという制約があります。ここでは最大値にあたる3ヘックスに上陸を行うという訳です*3

上陸エリアによって、1次上陸に投入可能な部隊数、同じく2次上陸の部隊数、支援として配置できる「D-Dayマーカー」(上陸戦闘専用の支援マーカー)の数の、それぞれ最大数が定められているのは前記事で書いたとおりです。
ノルマンディー海岸では、これが6-11-9となっています。

1次上陸部隊は最大値の6個を上陸ヘックスの3ヘックスで分割し、2個歩兵師団をずつを配置します。続けて「D-Day」マーカーを1ヘックスあたり3個ずつということで選択します。
戦闘結果表のコラムシフト実施できる「艦砲射撃」「航空支援」を1個ずつ配置した後は、数が限定される「水陸両用戦車」「特殊工作戦車」*4「コマンド部隊」を選びます。

 

ヒトラーユーゲント師団の海岸への突入!

  続けてドイツ軍が「大西洋の壁マーカー」をランダムにドローします。配置数は海岸防御力と同じ。ドローされた「高射砲」マーカーにより「航空支援」が無効化され、「海上障害物(ヘッジホッグ)」によって「水陸両用戦車」や「特殊工作戦車」が無効化されます。
中でも盛り上がったのが「自動車化予備」というマーカーのドロー。
5ヘックス以内に位置するいかなる兵種の1個師団を攻撃されているヘックスに配置する、という効果を持ちます。
ドイツ軍は内陸にいた第12SS装甲師団<ヒトラーユーゲント>を呼び寄せ、イギリス軍が上陸したジュノー海岸に突入させました。<ヒトラーユーゲント>装甲師団はこのゲームの中で両軍あわせて最強クラスの部隊になります。

 

SS装甲師団による上陸地点への乱入という展開に、数十年前にプレイしたエポック社史上最大の作戦」で、ドイツのSS装甲師団により海岸ヘックスに突入され、マルベリー*5を破壊され敗北したという悪夢を思い出しました。

良い作品なのですがいつの間にか、版元のサンセットゲームズで絶版になっていますね

 

 

上陸成功

  アメリカ軍のオマハ海岸、ユタ海岸への上陸は、多少のステップロス損害はあったものの、思いの外あっさりと成功しました。
SS装甲師団に突入されたジュノー海岸は、「艦砲射撃」と「航空支援」の強力な支援とダイスの目により撃退に成功します。上陸部隊はステップロスをくらった程度で、<ヒトラーユーゲント>に1ステップロスの損害を与え後退させました。

上陸ヘックスのドイツ軍師団を排除すると、上陸ヘックスを橋頭堡として確保します。橋頭堡ヘックスは、大港湾ヘックスを確保するまでは連合軍の補給源であり、後続する部隊の海上輸送の拠点となります。すぐさま戦車師団を含む二次上陸部隊が上陸し、周辺ヘックスへ展開しました。

第1ターン 連合軍プレイヤーターン終了時の状況。二次上陸部隊を含め橋頭堡周辺に占領地を拡大している。

 

第1ターン ドイツ軍プレイヤーターン

  シェルブールに孤立したドイツ軍歩兵師団は「要塞化」を宣言し、シェルブールに籠もります。港湾ヘックスで「要塞化」を宣言すると、地形効果による防御効果が3倍になり補給状態として扱われる一方、要塞ヘックスで除去されたユニットは再建できなくなります。いわば死守命令と言ってもよいでしょう。

連合軍は大港湾ヘックスを占拠することで補給源を盤石にする必要にせまられています。また事前に選択した勝利条件の中でも、大港湾1個の占拠が条件となっていることから、シェルブールの占拠と港湾機能の再建(工兵ユニットを用いて行う)は必須なのです。

ドイツ軍はこのターンはまだ軍管区を越えた移動に制約があるなど、自由な兵力集中はかないませんが、可能な限り、北フランスへ戦力が移動しはじめます。

 

第2ターン(1944/6/11-6/20)

カーンの陥落、ファレーズへの突破

曇天です。

イギリス軍を中心として連合軍は、カーンを三方向から攻撃し陥落させます。戦闘結果により戦術効果として「突破」となったため、続く突破フェイズにてアメリカ軍戦車師団がファレーズへ進出しました。
連合軍西翼ではアメリカ軍師団が南下し、コタンタン半島の付け根にあたるアブランシュに接近します。ここを抜けば、ドイツ軍の戦線から西のブルターニュ半島方面を切り離すことができるでしょう。ブルターニュ半島には複数のUボート基地も存在し、また点在するフランスの大都市を占拠することも勝利条件の達成に向けた重要な目標です。

 

第3ターン(1944/6/21-6/30)

総統の信頼のため、無理めの攻撃でも余儀なくされるドイツ軍

  ドイツ軍による戦線の引き直しにより連合軍は少し前進しましたが、高地沿いに引かれたドイツ軍の防衛線で止まります。シェルブールへの攻撃は、1ユニットを除去したものの、陥落は次ターンにずれ込んだようです。
カーンの南に位置するファレーズから進出したアメリカ軍戦車師団がアランソンの占領に成功しました。

連合軍に、大都市や町などを解放される毎にドイツ軍(プレイヤー)は「総統の信頼度」を失っていきます。信頼度を回復するには、解放された戦略ヘックスを再奪取の他に「2個以上の装甲師団が参加する攻撃を実施する(結果は不問)」という条件があります。ドイツ軍は積極的な攻撃姿勢を維持し続けなければならないということになります。

このターン、ドイツ軍はアランソンに進出したアメリカ軍戦車師団に攻撃を実施し、アメリカ軍はアランソンから退却、ドイツ軍は「総統の信頼度」を少し回復したのでした。

(つづく)

 

 

 

 

冒頭のノルマンディー上陸作戦の場面はリアルで凄惨な描写で話題となりました。

 

西部戦線の通史という意味ではこれに勝るものはないと思います。うかうかしているうちにアマゾンプライムでの公開が終わってしまい、まだ全話見ることができないでいます。

 

 

「強襲シリーズに外れなし」です

*1:ノルマンディー海岸を選択したもうひとつの理由は、初回プレイだったということもあり、付属のプレイエイドの中でプレイの例であげられていた例に沿えば、ルールの適用漏れや適用ミスも防止できるかと考えたのです

*2:もともと戦力的には通常の地上部隊よりも劣る空挺師団がステップロス状態になると戦力としてはあまり寄与しないのが正直なところです

*3:残りの2ヘックス分の上陸を行う権利は、南仏への上陸作戦(ドラグーン作戦)など第二次上陸作戦に使うことになります。ただし第二次上陸作戦はルールで、第7ターン(8月1日‐)以降での実施となります

*4:イギリス軍が配備した、地雷除去戦車や、砂浜に鉄板を敷いていく戦車など上陸作戦を支援する車両です。

*5:海岸に設置した仮説の港湾施設