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「NAPOLEON」 (Columbia Games)を対戦する

積み木のナポレオンこと「NAPOLEON: The Waterloo Campaign, 1815」(Columbia Games)を対戦しました。今回プレイしたのはColumbia Gamesより発売されている第4版です。*1

 

本作の特徴

本作を特徴づける要素を3点あげます。

  1. 積み木ユニット
  2. ピア・トゥ・ピア形式のマップ
  3. 戦闘解決は戦術マップで行う

 

本作は第1版が1974年に出版され、その後、出版社を変えながら4種類の版が出ています。

第1版:GAMMA TWO GAMES(1974年)

第2版:AVALON HILL

第3版・第4版:Columbia Games

 

第3版、さらに第4版になった時点でルールやユニット数の追加*2があったようですが、上にあげた3つの特徴は継承しています。

ユニットはブロック/積み木で表され、「積み木のナポレオン」と呼ばれています。プレイヤーはフランス軍対連合軍の2人プレイ。3人プレイの場合は、連合軍がイギリス・オランダ連合軍とプロシア軍に分かれます。

マップは街/村を街道でつないだピア・トゥ・ピア(P2P)方式。第2版のマップはシンプルというかプリミティブなデザインでしたが、第4版はかなり描きこまれています。ただぱっと見た感じ、範囲が広くなったり、街/村が増えたりもしていないように見えます。

今回プレイした第4版のマップです。

初期配置は配置範囲を決められた自由配置か、ヒストリカル配置になります。
いずれの場合も、フランス軍はマップ下あたり、イギリス・オランダ連合軍はマップ左上方向、プロシア軍はマップ右上方あたりに配置されることになります。

フランス軍は、連合軍の補給源であるマップの上側の都市名が大きめフォントで書かれている、ブラッセル(BRUSSELS)(マップ中央上あたり)、ヘント(GHENT)(マップ左上)、リエージュ(LIEGE)(マップ右上あたり)を目指すことになります。
史実ではブラッセルの手前にある、ワーテルロー(WATERLOO)、カトラブラ(QUATRE BRAS)、リグニー(LIGNY)といった街/村にて戦闘が行われました。

マップでもうひとつ注目して欲しいのは、マップ下端にあるターン記録表です。
Fはフランス軍のプレイヤーターン、Aは連合軍のプレイヤーターンを表しているのですが、黒く塗られたプレイヤーターンは夜間ターンとなり、昼間ターンと異なり、戦闘や強行軍は行うことができないという制約がつきます。
1日目(6月15日)はフランス軍ターン、連合軍ターンが昼間となり、続くフランス軍ターンは夜間ターンのため戦闘が制限されます。2日目になると今度は、連合軍ターン、フランス軍ターンとなるため、いってみれば連合軍は1日目の昼間と2日目とで2回連続で戦闘を仕掛けることができるのに対し、フランス軍はそれがないことになります。2日目から3日目は逆のパターンですね。
つまり昼間‐夜間という入れ替わりと両軍のプレイヤーターンの切り替えタイミングがずれていることから、戦闘を仕掛けるタイミングの考慮が発生することになります。

 

ゲームシステムについて

ユニット/兵種

兵種は「歩兵」「騎兵」「砲兵」「騎砲兵」の4種。戦闘時以外はユニットの内容は相手からは見ることができません。第2版にはありませんでしたが、第4版ではナポレオン他、3軍それぞれの司令官もユニット化されています。

 

移動ルール

ひとつの街/村にいる複数のユニットがひとつのグループを形成しているとして、フランス軍は自分のプレイヤーターンに2グループを活性化できます。イギリス軍・プロシア軍はそれぞれ1グループずつを活性化することができます。

移動可能距離と「強行軍」

「歩兵」「砲兵」は隣の街/村まで、「騎兵」「騎砲兵」は2個先の街/村まで移動できます。「強行軍」を宣言するといずれの兵種も追加で1個ずつ移動距離を増加させることが可能ですが、損耗チェックが発生します(1/2の確率で1ステップロス。司令官とスタックしている場合は修正あり)。

街道の交通量の制約

街/村にスタック制限はないのですが、街道毎に1回のプレイヤーターンを通して通過可能なユニット数に制約があります。主街道であれば8ユニット、中小街道の場合は6ユニットが上限です。移動途中に川を横切る地点がある場合は、上記の数は半分になります。
街道の通過制限のため、プレイヤーは軍の集結やタイミングなどを考慮する必要がでてきます。

 

戦闘ルール

敵ユニットがいる街/村に隣接している場合、戦闘を宣言でき、別途用意されている戦術マップを用いて解決します。
戦術マップは簡素なもので、中央・左翼・右翼・予備部隊の4つのエリアに分かれ、相手も自分に相対するようになっています。
戦闘に参加するユニットを各エリアに配置し、移動‐戦闘を行うプレイヤーターンを交互に実施します。

戦闘はエリア毎に解決します。参加するユニットの戦闘力に応じて決められた個数のダイスを振り、ある数値以下が出たダイスの個数が相手に与えるステップロス損害になります。

部隊が除去されたり、後退することで中央・左翼・右翼のいずれかのエリアに部隊がいなくなるとその軍は士気阻喪を起こしたということで全体の戦闘に敗北となります。状況によって、後退による損害や勝者側の追撃を受けます。

部隊を戦術マップ上に展開する際に、予備部隊エリアに部隊を配置することで、戦況に応じ適宜、前線のいずれかのエリア援助する等の対応が必要となるかもしれません。

戦術マップ上での部隊の駆け引き含め、本ゲームのポイントになっています。

第4版での追加要素

第2版(アバロンヒル版)と比べると戦術マップ上の戦闘ルールに多く変更が施されているようです。代表的なものとしては、地形チットの採用(戦術マップに展開する際に、両軍は地形チットを引いて、戦術マップ上に配置することで不確定要素としての地形効果をとりいれたもの)や、戦術マップ配置時に軍団を混在しての配置ができない点などがあるようです。

 

プレイ

連合軍を担当しました。初プレイということで自由配置ではなくヒストリカル配置を採用しました。

赤がイギリス・オランダ連合軍、黒がプロシア軍、奥側の青色駒がフランス軍です。

投了時点の状況。
損害を顧みず強行軍を多用したフランス軍に、連合軍はうまく対応できませんでした。フランス軍の意図を見抜けず、追いかけないといけないタイミングになると苦しくなった感じです。最後はイギリス軍の補給源のひとつであるGHENT(ヘント)を落とされてしまい、イギリス軍は毎ターン自動的に1ユニットを損耗していくというどうしようもない状況に陥ってしまっています。イギリス軍もプロシア軍も主力を残している状態なのですが、河川が絡むと移動や戦闘の制約から思うように反撃できませんでした。

 

感想戦

美しいゲームです。シンプルさの中に突き詰められたプリミティブな美しさ。その意味では第4版はいろいろと加えられている分、若干損なわれている気がしないでもないです。
とはいえ、よりプリミティブな第2版が手放しでよいかというとそうでもありませんね。古いGENERAL誌などを見るとどこそこに本作の作戦研究記事が掲載されていて、ギリギリと研究されていたりして、経験者と対戦すると決して勝てないという話もありますし、フランス軍がどこを攻めるかなんて記事(第4版にも使える内容ですが)は、将棋の中飛車振り飛車居飛車戦法みたいな感じで確率計算とかまであって、なんとも初心者お断り的な雰囲気さえあります。

プレイヤーターンの中の夜間ターンの扱いや、河川が絡んだ際の移動や戦闘の制約を考慮したフォーメーション。一回に1エリア分しか移動できないことからくる移動の問題また強行軍の活用などなど考えなければならないポイントは多数あります。いろいろ研究したくなる作品でした。

 

第2版でのヒストリカル配置です(フランス軍駒は撮影のためこちら側を向けていますが、実プレイの際は見えないです)。上のほうにある第4版の初期配置写真撮比べてみてください。
駒上の印はシールではなく、直接、木駒に印刷サれている点もポイント高いです。コレクター心をくすぐるコンポーネントです。


 

比較的新しいワーテルローキャンペーンテーマの作品です(こちらも面白いです)。積み木ユニット、ピア・トゥ・ピア式のマップやそのマップ範囲など本作ともよく似ています。こちらの作品はカードドリブンなので、カードに示された数値分しか部隊は移動してくれません。疲労はユニット毎に疲労ポイントがあり、疲労が蓄積されすぎると移動や戦闘を行ってくれなくなります。こうしたデザイン上の相違は興味深いです。

(終わり)

 

 

ワーテルローキャンペーンの中のカトル・ブラの戦いを扱った作戦戦術級の傑作です。ワーテルローを舞台にした「Wellington's Victory」の姉妹作です。
ワーテルローテーマの作品は多いのですが、傑作も多いです。記事のナンバーも途中で止まっていて、ゲームも中断してしまっています。本作も再開したいところです。

 

 

 

*1:第4版は残念ながら現在、版元売り切れ状態です。国内取り扱いのサンセットゲームズにも在庫ないようで、絶版と表示されています。

*2:第1版・第2版は駒数48個、プレイ時間60分と最もコンパクトで、その後、第3版でマップは同じ広さで駒数が2倍に増加しますが、第4版で整理され56個となりました。