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「NAPOLEON 1815」(SHAKOS/ボンサイゲームズ)を対戦する【3人戦】

1815年、フランス・ベルギー国境を舞台にフランス軍対イギリス・オランダ軍とプロシア軍から成る同盟軍(以降、同盟軍)との一連の戦いを扱った「ナポレオン 1815」(SHAKOS/ボンサイゲームズ)を3人対戦しました。
同一ルールでナポレオンの戦いを扱ったシリーズの第3作にあたります*1。さらに本作はボンサイゲームズより完全日本語版が発売されており、プレイ環境が充実しています。今回プレイしたのはこのボンサイゲームズの日本語版になります。

 

 

 

 

ゲームの紹介

スケールは戦役級。
最終決戦が行われたワーテルローだけではなく、前哨戦が戦われたカトルブラやリニーを含む広範囲な地域がマップに含まれます。1ターンは半日、キャンペーンゲームは全10ターン。ユニットは軍団単位です。

 

ゲームの手順

シーケンスはシンプルです。

  1. ターン毎にフランス軍と同盟軍とでイニシアティブを判定
  2. イニシアティブをとった側(先攻)が軍団(またはスタック)を1個活性化し、移動や戦闘を実施
  3. 後攻が軍団(またはスタック)1個を活性化し移動・戦闘を実施。
    以降、軍団(またはスタック)毎にフランス軍/同盟軍が交互に活性化
  4. すべての軍団の活性化が終了するかパスが宣言されるとターンが終了

 

勝利ポイント

勝敗の判定はポイント制。重要地点の占領、敵戦力の除去数が主な得点源となります。特に同盟軍の場合は一定数のVP地点を確保し続けると毎ターン自動的に1VPを獲得できるため、フランス軍は悠長なことをする暇はなく、急ぎVP地点の奪取に向けて動く必要があります。

 

3人プレイの際の同盟軍ルール

本ゲームでのユニークな要素として、3人プレイの際、同盟国側の2プレイヤー、つまりイギリス・オランダ連合軍担当のプレイヤーと、プロシア担当のプレイヤー間の情報伝達や相談に関する制限が設けられていることがあります。
原則は禁止。イベントカードの中にある「副官」カードの使用、またはウェリントンユニットとブリッヒャーユニットが隣接しない限り、両プレイヤーはゲームに関する情報の伝達や相談等の会話を行うことができません。

毎ターン、イニシアティブを決める際に、各プレイヤーは1枚ずつカードをドローするのですが、フランス軍と同盟軍のどちらがイニシアティブを取る(=先攻になる)のか決めるのとあわせて、同盟軍の中でどちらがそのターンのリーダーになるのかを決めます。

リーダーとなったプレイヤーはもう一方のプレイヤーに対して、活性化の指示やカードの利用の指示を行うのですが、ここで相手に対して軍勢の状況や手札の内容を聞くことはできません。
例えばイギリス・オランダ軍プレイヤーがリーダーの場合、次の活性化で自分の軍団/スタックを活性化させるのか、プロシア軍を活性化させるのかの指示を出します。
仮にプロシア軍に活性化を指示した場合も、プロシア軍プレイヤーに対して、どの軍団/スタックを活性化させるのかといったことは言えないし、プロシア軍プレイヤーも自分の軍勢がどのような状況にあるのか(戦力や疲労度、どの軍団がどこに位置するのかなど)を伝えることもできません。味方だといってもなんらここで情報を交換することができないことになります。

カードについては相手の手番中に相手の軍団の行動に反応するようなタイミングで使用することもあるのですが、ここでも同じで、同盟軍はリーダーとなったプレイヤーが指示を出さない限り、もうひとりのプレイヤーは勝手にカードの使用を宣言することはできません。またリーダープレイヤーは、相手がどのようなカードを持っているのかという手札内容を知ることはできないため、指示の出し方も独特なものにならざるを得ません。例えば、「フランス軍の移動を妨害するようなカードを持っていれば使ってください」という指示を出すといったことになります。

 

ユニットと移動・戦闘

全般にルールの難易度は高くありません。

各軍団の戦力と疲労度は別途シート上で管理します。
戦力は歩兵と騎兵に分かれているが戦力的には同等で、戦闘に参加した軍勢の中に騎兵が存在すると追撃の際に追加打撃を与えることができます。また一部の騎兵だけで編成された軍団については騎兵だけで移動する場合には移動ボーナスがあります。

戦闘の結果、戦力と疲労度は個別に損害として表現されます。
疲労度は移動や都市や陣地の占領、敵が存在するエリアへの進入と脱出、一部のカードイベントなどにおいて加算されていきます。一定の疲労度が蓄積するとその軍団の戦闘力にマイナス修正がつく上、さらに疲労度が増加し、限界を超えるとその軍団自体が除去されてしまいます。

疲労度の回復には、1ターンの間その軍団を活性化させないでおくことで全力回復が可能です。またはカードによる回復(ただし1ターンあたり1個軍団のみ1~2ポイント回復)、他にはカードイベントに拠る必要があり、積極的に回復を試みなければ、回復可能なタイミングも方法も限定されていると言って良いでしょう。

移動も戦闘もカードを使うことで実施します。
移動させる軍団を指定しカードをドローすると、カードに指定された数値(1~5)が移動力となります。移動力は1個軍団だけで移動する場合はカードの数値がそのまま移動力となるのですが、同時に移動する軍団(ユニット)の数が1個増える毎にマイナスされます。軽快に移動したければ軍団毎に個別、またはせいぜい2個軍団程度毎に活性化し、移動させるのがよいでしょう。活性化単位を細分化する場合の難点は、カードによる移動力の判定結果がかなりばらつくので注意を要することです。期待する戦場に到着しない、期待する機動ができないことが少なからず発生する覚悟が必要となります。

戦闘判定もカードをもって行いますが、戦闘に参加した軍団の戦闘力、疲労状態などからカードのドロー枚数が算出されます。それぞれドローしたカードにより相手に与える損害を算出します。損害は戦力の削減数と追加される疲労度からなります。

ナポレオン、ブリッヒャー、ウェリントンは将軍ユニットとして扱われ、ナポレオンユニットとスタックしている場合、移動力ボーナス、戦闘時のボーナスなどの特典を得られます。

 

フランス軍の軍団リスト。青キューブは歩兵、黄色キューブは騎兵を表します。プレイ開始後は各軍団の2段目の行欄に疲労度(赤キューブ)が並ぶことになります。
イギリス・オランダ軍、プロシア軍もそれぞれ同種のリストを持っていますが、敵同士はもちろん、同盟国内でも互いにこの情報を開示することはありません。

 

プレイ

今回プレイした3人はいずれも本ゲーム初プレイでした。

シナリオはヒストリカル配置のキャンペーンであるシナリオ3を選んでいます。
3人の誰も積極的にフランスを希望しなかったため、担当国はチットドローで決めることにしました。結果はフランスを担当することになりました。

ゲームは終始フランス主導で展開すること(しなければならないこと)は想像できました。フランスが機動し、戦場を選ぶのです。イギリス・プロシアの両軍が集結すると、フランス軍は戦力的に劣ることになるため、両軍は合流させずに各個に撃破するべきでしょう。
先に書いたように、ブリッヒャーとウェリントンが隣接状態になると両軍間のコミュニケーションの制約がなくなることを考慮した場合も、両軍の合流させるのは得策ではありません。

 

シナリオ3:ヒストリカルキャンペーンの初期配置。
フランス国内に配置されたフランス軍(青コマ)よりプロイセン軍(黒コマ)、イギリス・オランダ連合軍(赤コマ)を臨んだ状況です。旗印マーカーがあるポイントがVPを獲得できる地点になります。
フランス軍は集結中で、第2ターン・第3ターンにマップ上に到着する軍団も少なくありません(ナポレオンと親衛隊など)。

同盟軍は旗印地点を7か所確保している場合、毎ターン1VPを獲得することができます。初期状態ですでに7箇所を確保済なので、フランス軍はすみやかに積極的に進撃を行い、少なくともこの同盟軍の得点源へ対処する必要があるかもしれません。

 

第5ターン。

移動がカードに依存するため、正直、思ったように機動できないことを理解しはじめます。ひとつには、第2ターン、第3ターンと連続してイベントカードで「降雨」がドローされてしまい、移動を含むアクションを起こしただけで疲労度追加、移動力も低下するという積極機動が求められるフランス軍にとっては最悪なコンディションが続いたことも良くありませんでした。

当初の作戦構想では史実通りのカトルブラ、リニー方向ではなく、それらを避けた方向への進出を検討していたのですが、なかなか難しいようです。それよりも同盟軍の自動VP獲得の状況を打破するため、結局のところ最も近いカトルブラ、リニーを指向することになりました。

 

最初の戦闘は思わぬところで勃発します。互いに偵察を行う”騎兵斥候”と思われたユニットがダミーではなく実体を持った部隊だったのです。VP地点でもない場所での戦闘はお互い疲労度を貯め損害だけが増えるだけで、あまりメリットはありません。

「騎兵斥候」は選択ルールで登場します。両軍とも登場する数が指定されているのですが、ダミーユニットとしての使い方の他、敵ユニットがいるエリアに進出することで、その敵ユニットがダミー(=騎兵斥候)なのか、軍団ユニットなのかを探り出すことができます。相手が軍団ユニットだった場合でも、軍団の特定や戦闘力数などまで判定することはできません。

 

フランス軍は、イギリス・オランダ軍の陣地があるカトルブラに軍を集結させはじめます。応じるようにイギリス・オランダ軍もカトルブラに増援を送り込もうとするのですが、移動力が足りずに到着できない軍団も出てきます。
カトルブラの一歩手前に位置するフランス軍ユニットも移動力が足りずに集結できなかった人たちです。
フランス軍はリニーにいるプロイセン軍に対しても牽制のため軍団を送り込みます。

第6ターンから第7ターンにかけてカトルブラで両軍が激突しました。
フランス軍の攻撃に対しイギリス軍は後退を拒み頑強に抵抗しますが、翌日(第7ターン)の攻撃の結果、カトルブラの陣地を放棄し、後退を開始しました。

第8ターン  リニー
プロイセン軍に対してフランス軍が攻撃を実施します(リニーは白地で赤色の厚さが薄いコマが位置している場所です)。
フランス軍のカードが炸裂し、勢力としてやや劣勢だったにもかかわらず、プロイセン軍に対して、戦力の除去6/疲労度追加6という大損害を与えることに成功します。プロイセン軍は後退していきます。一方、フランス軍は戦力除去の損害こそ2と少なかったものの、疲労度の追加10となり各軍団の疲労度が急速に悪化しました。この後、ボディブローのように後に効いてくることになります。

同じ頃、カトルブラを占拠したナポレオン他のフランス軍主力は、1ターンをアクションを起こさずに過ごすことにより疲労度の全回復を図りますが、これを阻もうとするイギリス軍の小部隊が全滅覚悟で襲来。フランス軍疲労度回復の機会を逸します。このこともまた後に尾を引くことになりました。

 

リニーとカトルブラを確保することにより同盟軍側の毎ターン1VP獲得の特典は阻止したものの、これ以上のポイント獲得のために、同盟軍が占拠する拠点の確保は時間的に難しくなります。残る方策は会戦で大勝利を得ることで敵戦力除去のポイントのみとなったのです。

が、連戦の中でフランス軍の各軍団は疲労度が貯まった状態で、疲労度回復も限定的なものに留まっていました。これ以上疲労度が悪化した場合、各軍団において戦闘時のカードのドロー枚数が1枚減ってしまうという状況(例えば戦力を維持している軍団ではドロー枚数が2枚から1枚、半分以上の数の軍団では1枚から0枚と戦闘に参加する意味が少ない状況)です。
あえて不利な状況での戦闘に挑むのか(VPは彼我の損失の差ですので大戦果をあげる必要があります。またナポレオンの親衛隊がいるスタックが負けてしまうと逆にVPがマイナスされてしまう懸念もあります)。

何もしなくても負けならば、乾坤一擲の勝負に出るということもありましたが、ここで実質フランスの投了となります。カトルブラ、リニーと2つの戦いには勝利するものの、戦略的には目標を達しなかったといったところでしょうか。

 

感想戦

プレイ感は率直に言うと想定していたものとは異なりました。
もっと一手一手抜き差しならない緊迫感のあるものを想定していたのですが、意外にも緩いものでした。おおらかと言っていいかもしれません。移動が想像していたよりもできず、また移動距離もカードの結果によることもあり、全く思ったように動いてくれないのです。

ユニークと思ったのは個々の戦闘の中で、プレイの最後までどのような敵と戦っているのか不明な点です。個々の軍団ユニットの戦闘力や疲労度の管理は完全にそのオーナーに依存していて、相手方にはその内容は明かされません。
マップ上に展開するユニットは、「騎兵斥候」ユニットによって、ダミーなのか軍団ユニットの判別はできるのですが、それ以上ではありません。例えば複数の敵ユニットがいるエリアにいったいどの程度の戦力がいるのか、こちらの軍勢だけで対抗できる規模なのかを判別する術は与えられていないのです。このため敵ユニットが存在するエリアに進出するにあたっては、彼我の戦力の比較などもできないまま突入していく必要があります。
接触しても、その規模や内容など確とした相手がわからない、また相手に与えた損害こそわかるものの、それがどの程度のダメージになっているか、どの程度の余力があるのかはわからないと、なにかしら茫洋としたものと戦っているようにも感じました。こうした点もまたおおらかなプレイ感覚の要因なのかもしれません。

記事ではあまり言及しませんでしたが、様々な判定にすべてカードをもちいることから、かなり早くカードが回転します。戦闘や移動時に切り札的に使うことができるカードは手札として残しておけるのですが、手札枚数に制限がないことから、いざ戦闘に備えてかなりの枚数を手元に貯めておくことができます。これも良いカードであればむしろ早めに使って山札を回転させるという考え方もありかもしれません。

ルール難易度が高くないと言いましたが、シンプルな分、細かいところでの疑問点は様々でてきました。多かったのが、カードプレイと3人プレイの際の特別ルールの適用に関することです。本作は日本語版として丁寧に訳出がされ、またカードイベントについてはルールブック側でも補足説明が用意されていたのですが、ところどころ原文を参照したいと感じた点もありました。*2

ルール難易度が高くなく、プレイ時間も半日程度と手軽にプレイできる点もよいので、機会があれば再戦したい作品でした。

(終わり)

 

以前VASSAL対戦していた「NEY VS WELLINGTON」(SPI)の記事です。すみません、ここで止まっています(プレイも)。

 

 

 

 

*1:イエナ・アウエルシュタットの戦いを扱った「ナポレオン 1806」、アイラウの戦いを扱った「ナポレオン 1807」がこれまで発売されている

*2:以下はメモです。

未検証: フランス軍はカードによる移動において、同盟軍よりも移動距離が多いカードが多いのではないか?
未検証: フランス軍のカードのうち、移動力が大きいカードは戦闘などに用いる際の性能が良い?このため戦闘などのため性能がよいカードを手札に留め置き始めると、移動性能が良いカードがでてこなくなる?