Their Finest Hour -歴史・ミリタリー・ウォーゲーム/歴史ゲーム -

歴史、ミリタリー、ウォーゲーム/歴史ゲーム/ボードゲーム

「1868 戊辰戦争」を対戦する【2/3】対戦記

戊辰戦争を題材とした戦役級ゲーム「1868 戊辰戦争」(第三惑星委員会:同人)を対戦しました。旧幕府・列藩同盟(以降、同盟軍)を担当しました。

 

 

ゲーム、システムの紹介は次の記事を参照ください。

 

 

 

初期配置:慶応四年四月の状況

青字は参戦状態にある同盟軍勢力。緑字の長岡藩、米沢藩仙台藩盛岡藩(と周辺の中小藩)は、列藩同盟寄りの中立勢力。橙字の久保田藩(と周辺の中小藩)は新政府寄りの中立藩となります。中立藩はそれぞれ条件やカードイベントにより参戦します。

赤系統の色のユニットが長州・薩摩・土佐・佐賀藩兵からなる新政府軍、橙色のユニットは新政府側に兵を出した主に西日本の諸藩、北関東辺りに多数配置されている紫色のユニットは新政府寄りの中小藩となり、ダイスによる判定により参戦等が決まります。

赤字で示した地点(横浜、上野、白河、新潟の4か所)は前記事で紹介した重要地点。この確保状況で戦力の補充等へ影響します。

 

マップを一望してわかるように、江戸・下総付近で旧幕府諸隊が孤立状態にあります。伝習隊などは最新式の火力を装備した上で兵数も多いため旧幕府軍の中でも最強クラスの部隊ですが、江戸城などに配置されている新政府軍主力の部隊数には及びませんので、このまま江戸のあたりでもたもたしていると、新政府軍の大軍に捕捉されてすり潰されることは必至です。なんとかしてこれらを脱出させる必要があるでしょう。

上野には彰義隊がいるのですが、3ユニット、兵数は1200程度、装備が水準以下(火力が2か1)なので新政府軍には太刀打ちできません。さらには上野から脱出する経路が新政府軍により塞がれているため、脱出は絶望的です。イベントカードにより攻撃を受けるタイミングは変わってくるのですが、全滅は時間の問題でしょう。

 

イベントカード

新政府軍が「大村益次郎」カードを出すと上野寛永寺彰義隊が攻撃を受けるのですが、旧幕府「勝海舟」カードによりそのタイミングが1ターン先延ばしになります。
小千谷会議」カードは長岡藩の参戦に関係するカードです。河井継之助は当初中立を唱え小千谷にて新政府軍側と談判するのですが決裂しました。

 

勝利条件

勝利条件は、ゲーム終了時に新政府軍は、会津藩会津若松城を陥落させるか、会津若松城を包囲した状態で、米沢藩仙台藩が新政府側になるか中立状態にあるというものです。同盟軍は新政府軍に拮抗することをもとめられている訳ではなく、いかに会津を守るか、持久するかということになります。

 

慶応四年四月上旬:脱出

  (A)写真内には配置していませんが、国府台に伝習隊他の旧幕府軍諸隊*1のスタックが存在します。彼らをいかに関東から脱出させるか、中盤以降の同盟軍の戦力に大きく影響を与えるため、ポイントといえるでしょう。

(B)上野/寛永寺には彰義隊が籠もっています。脱出には隣接エリアの新政府軍の排除が必要ですが、戦力・兵装からすると強行突破は絶望的です。
第1ターン、新政府軍は「大村益次郎」カードにより、寛永寺への攻撃を行おうとしましたが、同盟軍が「勝海舟」カードを出したことにより、攻撃は次ターンに延びることとなりました。

(C)史実での「市川・船橋の戦い」で新政府軍と戦った「撤兵隊(さっぺいたい)」です。下級御家人から構成されたということですが、同じ旧幕府軍部隊の伝習隊ほどの精強さはありません。兵数は標準的、兵装は普通(火力2)、練度も普通といったところ。正面からぶつけても蹴散らされるだけですので北への脱出を模索します*2
第1ターン、新政府軍は伝習隊のスタックに攻撃を仕掛けるのには躊躇したのですが、「撒兵隊」は見逃してくれませんでした。「船橋の戦い」です。

(D)初期状態で登場する艦船は、新政府軍1隻、同盟軍2隻です。新政府軍の船が武装しているのに対し、旧幕府軍の船は非武装の輸送船なので戦闘になっても対抗しようがなく、逃げ回るしかありません。今回プレイでは、後に房総の先から「撤兵隊」の脱出に貢献します(第3ターン以降)。

 

 

「撤兵隊」(手前)VS「新政府軍」の一派遣軍(奥側)の戦闘です。
「新政府軍」の「砲兵」部隊(「A」の欄に配置された部隊)と、「火力3」の欄に配置された歩兵部隊の射撃が終わってはじめて、「撤兵隊」は射撃ができるようになります。幸い「撒兵隊」は部隊を失うことなく後退に成功し、木更津方面に遁走しました。

 

慶応四年四月下旬:北上

  (A)下総を脱出した伝習隊他は、会津を目指し日光街道を北上します。史実ではこの後、新政府側の宇都宮城を攻撃しますが、本ゲームでは余計な戦闘をきらったことから宇都宮での戦闘を避け迂回しました。*3

(B)「撤兵隊」は木更津に移動します。小兵のため新政府軍も深追いはしないだろうと予想していましたが、無事見逃してくれたように見えます。

(C)「勝海舟」の交渉により命脈を伸ばしていた彰義隊も、新政府軍によって一撃で鎮圧されました。新政府軍を一部戦力とはいえ2ターン誘引しただけでも戦果としましょう。
ただ要地に指定されている「上野」の失陥は重大です。新政府軍に比べ補充能力が弱い同盟軍は「戦力の回復チェック」の回数を1回分失うことになります。

 

 

慶応四年閏四月:壊滅

  (A):伝習隊ほか旧幕府軍諸隊は、新政府軍側の宇都宮での戦闘を避け、日和見を決め込んでいた小藩を威圧しながら北上していました。第2ターンで進入した藩は旧幕府軍を通過させたのですが、次のターンで進入した黒羽藩は抵抗の意思を示します。黒羽藩(大関氏)は小藩ながら伝習隊や新政府軍の薩長肥の部隊と同じ最新式の装備を擁しています。
もっとも数が異なるため数百人規模の黒羽藩部隊は退けられるのですが、黒羽藩兵部隊は白河との経路にあたるエリアに後退しました。これがまずかった。

第4ターンにいたり、急迫してきた新政府軍が「黒羽」で旧幕府軍を捕捉します。戦闘は拮抗しますが、最終的には最新装備を保有する部隊数に優れた新政府軍が勝利し、旧幕府軍は後退しようとします。ところが後退可能なエリアがなかったのです。
ここで白河を目前にしながら旧幕府軍諸隊は壊滅しました。

本作の戦闘システムは、先に船橋で「撤収隊」があっさり後退できたように、後退がしやすい仕組みになっています。特に今回の「伝習隊」のように練度・士気が高い部隊は特にそうです。確実に排除したい場合は後退余地がない状態で後退を強制させるのが一番の方法になります。

 

旧幕府軍諸隊の脱出については、ただ遁走するのではなく、会津藩または仙台藩側から脱出経路を先に制圧し、脱出路をあらかじめ確保しておくべきではないかという意見がでました。

デザイナー/ディベロッパー氏も伝習隊の脱出について言及していますので紹介します。

 

 

(B)旧幕府海軍の輸送船により房総にいた「撤兵隊」は海路から小名浜あたりに移動しています。

 

慶応四年閏四月‐六月:北越戦争

写真は第4、5ターン(閏四月‐五月)あたりの状況です。

  (A)長岡藩は当初、中立を唱えますが傲慢な新政府軍の姿勢に小千谷にて長岡藩と新政府軍の会議は決裂します。「小千谷会議」は前半に登場するイベントカードのため、長岡藩の参戦は避けられず、問題はいつ発生するか、という点になります。

先走りますが、長岡藩の降伏条件は「仙台藩」と「米沢藩」の両方が降伏することです。米沢藩仙台藩自体の降伏にはそれぞれの藩の本拠地の占拠状況が関係するのですが*4長岡藩は本拠地長岡が新政府軍に占拠されたとしても降伏せず、戦い続けることになります。

(B)(D)長岡藩の主力は藩を出て、新潟防衛に赴いています。
後に、長岡藩は新潟で新政府軍の北陸道軍と死闘を演じ、最後は新政府軍の最新装備に押し切られ、すんでのところで敗北し、新潟を失います。

  周辺の同盟軍諸藩の部隊も糾合し、イベントカードによって登場していた「榎本武揚」率いる旧幕府艦隊の艦砲射撃による援護も受け新潟の奪還を試みますが、これもまた一歩及ばず。河井継之助に率いられた長岡藩兵は北へ落ちていくことになります新発田に依拠し奪還のチャンスを伺うところで今回は終了します。*5

今回のプレイで新潟を失陥したときには同盟軍はすでに「白河」も失っており、「新潟」の失陥により、戦力の回復(一度除去されたユニットをランダムに戻す)のためのダイスチェックが不可能となります。

(C)前記事で紹介した桑名藩の飛び地柏崎です。戦力‐火力‐士気いずれも最低値のユニットですが、進入した新政府軍は必ず停止しなければならないため、確実に足止めになります。

(E)旧幕府陸軍部隊のひとつ「衝鋒隊」です。プレイ中は気づかなかったのですが、こんなところにいたのか、と写真を整理していて見つけました。
鳥羽・伏見の戦いで負けた幕府軍の一部が新政府への帰順を拒否し、関東・越後と転戦、最後は函館戦争で榎本軍の一翼を担ったという歴戦の部隊です。
衝鋒隊*6の副隊長は今井信郎。この名前を聞いてピンときた人は幕末ファンですね。幕末期、京都見廻組に所属し維新後、坂本龍馬暗殺の詳細を証言した人物です*7

(F)新政府軍の北陸道軍です。

 

終わらなかったので(続く)

 

 

 

長岡に行くとさほど大きくはない市街地の中心部、河井継之助記念館と山本五十六記念館がほんの近くにあって驚きました(隣のブロックのカドッコ・・的な近さ)。

 

 

*1:この中に弱体化した新撰組のユニット(前記事参照)もいます。

*2:伝習隊などとあわせて手薄に見えた横浜への特攻作戦が浮かんだのですが、横浜には「台場」と呼ばれる固有の防御ユニットがいるため一瞬であきらめました。

*3:裏に返されているユニットは中立藩を示しています。旧幕府軍または新政府軍がそのエリアに進入する毎にダイスを振ります。旧幕府軍に対しては、そのまま素通りさせるか、敵対することかの2択となります。

*4:厳密には付帯条件があったりイベントカードによる降伏もある

*5:ご存知のとおり史実での河井継之助は長岡から会津へ落ち延びる際に戦傷死しています。往年のアドテクノスの作品「北海道共和国」では、遠く函館まで転戦した河井継之助が登場しています。

*6:衝鋒隊を一発で変換してくれるGoogleの日本語変換アプリ!

*7:彼自身は見張り役で、手はくだしていない、そうです。この証言により、彼の名は坂本龍馬の小説などでずっと残り続けることを思えば、歴史というのは不思議なものです。