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「ヴィルツブルク Wurzburg」(SPI / IED)を対戦する 【2】シナリオ1・シナリオ2

 

コマンドマガジン177号「ヴィルツブルク Wurzburg」(SPI / IED)を対戦しました。

プレイしたのはシナリオ1、2の2本です。
シナリオ1は遭遇戦を扱っています。
シナリオ2では市街を防衛するアメリカ軍に対して、ソ連軍が侵攻してくるシチュエーションになっています。シナリオ2については前回オミットした核兵器に関するオプションルールを適用しました。

 

 

前回のプレイ分はこちら。ルール紹介もしています。

 

 

シナリオ3と書いていますが2の間違いです。

 

 

シナリオ1. 前進と接触

ソ連軍を担当しました。

両軍の戦力です。

 

第2ターン(Xday PM): アメリカ軍プレイヤーターン

先攻はシナリオの指定によりアメリカ軍。
第2ターン、アメリカ軍の先鋒がヴュルツブルク市街のうちマイン川を挟んだ南岸に到達しています。

 

第2ターン(Xday PM):ソ連軍プレイヤーターン(戦闘解決前)

ソ連軍もヴュルツブルク市街に進入し、突出していたアメリカ軍のヘリコプター部隊、とアメリカ軍の先鋒を攻撃します。

 

第3ターン(Xday+1 AM):ソ連軍プレイヤーターン

アメリカ軍は市街地での衝突を避け、平地が多く機動がしやすい左翼(ソ連軍から見て)側に増援を集中しはじめたように見えました。正面から押すのではなく郊外から迂回して押し進み、ヴュルツブルク市街への連絡線を切る意図ではないかと推測し、ソ連軍側も左翼に戦線を張ります。

 

第4ターン(Xday+2 AM):アメリカ軍プレイヤーターン(戦闘解決前)

アメリカ軍の攻撃は市街地とその左手にある森林地帯に行われたため、ヴュルツブルク迂回は杞憂に終わりました。

 

第5ターン(Xday+2 AM):アメリカ軍プレイヤーターン

アメリカ軍はヴュルツブルク市街南方に増援で到着した砲兵部隊を集約しています。

 

第5ターン(Xday+2 AM):ソ連軍プレイヤーターン(戦闘解決前)

ソ連軍の一斉攻撃、ヴュツルブルク市街南岸からの追い出しにかかります。
マーカーが置かれた場所が戦闘発生箇所です。

 

第6ターン(Xday+2 PM):アメリカ軍プレイヤーターン(終了時)

アメリカ軍の最後の猛攻。市街地北岸側(ソ連軍側)にも進出しますが、戦力が少なすぎました。もうすこし南岸側にアメリカ軍ユニットが並んでいたら、ソ連軍はマストアタックの義務を果たすため攻撃戦力を分散しなければならなかったかもしれません。
北岸進出を果たしたアメリカ軍ユニットは、ソ連軍ターンにいずれも押し包められた除去されてしまい、ゲーム終了となりました。

 

感想戦

アメリカ軍が市街地を迂回しソ連軍左翼から進出しようとしてきた際には少々ヒヤリとしました。本ゲームはほとんどのユニットの移動力が12と大きいため、かなり機動ができます。戦線に穴があった場合、そこから侵入されるとなかなかやっかいなことになるでしょう。幸いソ連軍側もアメリカ軍と同等の機動力を与えられているため、対応自体は難しくはありませんが、シナリオ1は正面衝突プランの他にも作戦の検討余地があるのかもしれません。

 

 

核兵器ルール:オプション

次のシナリオではオプションになっている核兵器ルールを取り入れることになりました。

核兵器は両軍とも保有しており、マップ上のどこにでも攻撃ができます。
容量が5kt、20kt、50ktと3つのサイズがあり*1、それぞれ威力が異なり、<直撃範囲>と<影響範囲>が爆心地からのヘックス数で決まっています。

5ktという最も使用されるであろう戦術核では、<直撃範囲>は爆心地ヘックスのみ、影響範囲は爆心地から2ヘックスまでになっていますが、これが20ktになると前者が1ヘックスつまり隣接ヘックスまで、後者が4ヘックスとなります。

<直撃範囲>にユニットが存在した場合、戦闘結果表*2の一番数値が大きい欄を用いて結果判定を行います。地形修正が加わるため森林・市街地といった障害地形に位置する場合は威力は弱められますが、修正がない平地ヘックスだった場合、1/2の確率*3で部隊ユニットは”消滅”します*4。それ以外の結果では、防御側後退の結果となり、部隊ユニットは混乱したとされ、裏返され決められたヘックス数後退しなければなりません。

<影響範囲>については影響は最低限で、平地にいた場合に1/6の確率で後退となり、それ以外では影響はありません。

核兵器はそれぞれの側でサイズ毎に使用可能数が決まっています。ちなみにアメリカ軍は20発、ソ連軍は10発です。毎ターン最大3発まで使用できます。

核兵器を使用する場合は、前ターンに攻撃箇所をプロットしておく必要があります。
ただ使用制限ルールがあり、爆発をさせるタイミングで、<影響範囲>内に味方ユニットが存在した場合、アメリカ軍はその攻撃を行うことができなくなるという使用制限が適用されます。

ちなみに広島や長崎に使われた原爆は20ktサイズになります。

 

シナリオ2. ヴュルツブルク包囲戦

核兵器オプションを導入し、シナリオ2をプレイしました。
ダイスによりアメリカ軍を担当しました。

ヴュルツブルクを守るアメリカ軍に対して、侵攻したソ連軍が攻撃を加えるというシナリオになります。アメリカ軍には途中より強力な航空支援が行われます。

勝利条件はゲーム終了時にアメリカ軍はアメリカ軍側の盤端まで妨害されない形で連絡線がとった上で、ヴュルツブルク市街を1ヘックスでも占拠していること、ソ連軍はそれを阻止することになります。

 

初期配置

アメリカ軍はヴュルツブルク市街の外郭の外側に防衛線を張ります(配置位置はヴュルツブルク市街より3ヘックス以内であれば自由)。
機動歩兵大隊(2-3-12)については、陣地構築されているということで最初の配置位置から移動しない場合は大きな地形修正を得ることができます。

 

第2ターン(Xday PM):特殊兵器インターフェースフェイズ

核兵器の解決と次ターンに向けたプロットはターンの最初に行われます。
第1ターンにソ連軍の移動位置を予測していたアメリカ軍の核攻撃位置(赤いマーカー)、見事にあたりました。
ところが爆弾のサイズを20ktと指定していたことから、影響範囲4ヘックス以内にアメリカ軍部隊が存在していることになり、攻撃は中止されます。幻の核攻撃となったのです。

 

第3ターン(Xday+1 AM):特殊兵器インターフェースフェイズ

第2ターンまでの移動でソ連軍はヴュルツブルク市街を囲うように包囲する位置まで進出しています。核攻撃を前提にした距離感ですね。いやらしい配置です。

ゆるい包囲網の中、第2ターンにプロットされたソ連軍の核攻撃が炸裂します。
マーカーが載せられたアメリカ軍ユニットが影響を受けるユニットです。

ソ連軍からすると防御側のアメリカ軍は固定目標になりますが、アメリカ軍からするとソ連軍は移動目標であるのに加え、アメリカ軍ユニットを巻き込まないように攻撃するには直撃でなければ影響を与えることができない小さなサイズの核を使うしかない点が苦しいところです。

この調子で核攻撃を続けられると、アメリカ軍の前線はガタガタになりそうです。

 

第3ターン(Xday+1 AM):ソ連軍プレイヤーターン

ソ連軍は市街地を迂回して進出していた両翼の部隊を進め、ヴュツルブルク南方で包囲の環を閉じます。第2ターンに登場する増援は前線に到着しておらず、アメリカ軍には包囲の環が閉じようとするのを、留める術はありませんでした。

ところがアメリカ軍の南端に位置していた核攻撃により混乱中だった部隊が予想外に奮闘し、ソ連軍による包囲を完成させようとする部隊との戦闘で、ソ連軍を退けたのです。包囲はすんでのところで免れます*5

 

第3ターン(Xday+1 AM):アメリカ軍プレイヤーターン(戦闘解決前)

第2ターンに増援として登場していた戦車連隊(3個大隊)を急行させるとソ連軍包囲軍に攻撃を仕掛け、退けます。ヴュルツブルク包囲の危機はいったん去ったのでした。

注目するべきは、写真右側に森林地帯を迂回してアメリカ軍右翼に迫るソ連軍部隊です。アメリカ軍も対抗して右翼に部隊を展開させます。

ソ連軍のヴュルツブルク包囲の試みも、右翼からの南進もそれぞれ脅威でしたが、それぞれ詰めが厳しくなく、アメリカ軍としては救われます。ソ連軍側も兵力の分散などの諸事情があったのでしょう。

 

第4ターン(Xday+1 PM):アメリカ軍プレイヤーターン

ソ連軍はヴュルツブルク北側正面から強引に攻め上るのではなく、アメリカ軍右翼にあたる森林地帯などの側面に部隊を集めています。アメリカ軍右翼はマイン川がよい防衛線として機能しています。川を越えて前進すると、次に相手からの攻撃を受けた際に後退できずに除去されてしまうリスクがあるため、前進のタイミングの判断が難しいのです。

このターンよりアメリカ軍には航空支援が実施されます。自軍の攻撃タイミングの他、ソ連軍の攻撃に対する防御にも使える点が強力です。ソ連軍からすると、満を持した攻撃に対して、アメリカ軍の航空支援が防御にはいることで簡単にそのオッズがひっくり返されるのは心理的にも痛手ではないでしょうか。

 

第5ターン(Xday+2 AM):特殊兵器インターフェースフェイズ

ソ連軍はマイン川南側の部隊に対して、アメリカ軍も市街地北側に位置していたソ連軍に対して核攻撃を実施します。(マーカーの位置)
いずれも混乱し後退していきます。
(混乱した部隊ユニットはそのターンの終了時には回復します)。

 

第5ターン(Xday+2 AM):アメリカ軍プレイヤーターン(終了時)

ソ連軍の攻撃によりマイン川の北岸側にいたアメリカ軍部隊は核攻撃によって混乱した部隊を除き、除去されるか、撤退しています。戦線はマイン川を挟んだものになります。

アメリカ軍は左翼においてヘリコプターユニットを使い、長大な移動力を駆使したソ連軍の部隊を同時に2箇所包囲状態に置き、2個部隊を除去します。
これにより左翼のソ連軍の戦線に穴が開きます。

 

第6ターン(Xday+2 PM):特殊兵器インターフェースフェイズ

部隊ユニットが密集する場所は核兵器のかっこうの目標となります。
ソ連軍の核攻撃が、ヴュルツブルク市街のアメリカ軍部隊に炸裂します(マーカー位置)。
市街地にいる部隊は、5kt核であれば直撃を受けない限り損害はでることはほぼないのですが、直撃では部隊の混乱+後退となる可能性は高いです。

第6ターン(Xday+2 PM):アメリカ軍プレイヤーターン

ソ連軍は前ターンに2部隊壊滅の要因となったアメリカ軍のヘリコプター部隊を包囲攻撃しますが、アメリカ軍は航空支援全量を投下して、ヘリコプター部隊の戦闘をひっくり返します。
ヴュルツブルク市街でマストアタックによる強制攻撃の結果、攻撃側が後退することが続くなど、戦線は複雑に入繰りを繰り返します。

 

第7ターン(Xday+3 AM):特殊兵器インターフェースフェイズ

ソ連軍は執拗にヴュルツブルク市街南岸に核攻撃を繰り返し(赤いマーカー)、アメリカ軍の前線部隊は混乱し、後退を余儀なくされます。結果アメリカ軍の戦線に大穴を開けることに成功します。

 

第7ターン(Xday+3 AM):ソ連軍プレイヤーターン

核攻撃によって開いた戦線から、ソ連軍は3個大隊をヴュルツブルク市街南岸に進攻させます。ところがヴュルツブルク市街南岸に、ソ連軍部隊とマイン川に挟まれて残ったアメリカ軍の1個戦車大隊が次に活躍をみせます。

 

第7ターン(Xday+3 AM):アメリカ軍プレイヤーターン

先の戦車大隊を起点にアメリカ軍は最後の航空支援をフル活用し、ヴュルツブルク市街南岸からソ連軍部隊を除去することに成功します。

この時点でアメリカ軍はヴュルツブルク市街の南岸にある4ヘックスを保持し続けており、マップ南端までソ連軍に邪魔されることがない連絡線を引くことができる状態にありました。

 

第8ターン(Xday+3 PM)

両軍とも核攻撃は発動しませんでした。戦線が錯綜していたため、差し控えたのです(アメリカ軍は単なるプロット忘れ)。

前のターンまで猛威を振るっていたアメリカ軍の航空支援はなくなり、アメリカ軍も自前の砲兵部隊のみの支援となります。

ソ連軍は前半、ヴュルツブルク市街南岸ヘックスに猛烈な攻撃を行い、アメリカ軍の排除に成功します。アメリカ軍の後退にあわせて戦闘後前進を行ったことにより、ソ連軍部隊は市街の外まで前進に成功したのです。これはまずい状況です。
ここでもしアメリカ軍をすべての市街ヘックスに隣接できない状態まで押し込めていたら、ソ連軍の勝利の確率はかなりあがったのではないでしょうか。
アメリカ軍は市街地ヘックスを直接攻撃できないことになり、2ヘックス以上の戦闘後前進の権利を獲得した場合以外では市街地ヘックスを獲得することは難しくなったはずです。

結果としてアメリカ軍は1ヘックスだけですが市街地ヘックスを直接攻撃できる地歩を維持できました。ここを起点に、市街地ヘックスを確保できれば問題はありません。
写真は、アメリカ軍プレイヤーターンに攻撃位置についたところの状態です。

アメリカ軍は1ヘックス残ったチャンスにすべての砲兵支援を注ぎ込みました。ヴュルツブルク市街ヘックスの確保に成功します。

 

感想戦

ターンの最後まで勝敗はもつれました。
アメリカ軍は強力な航空支援に助けられたところが多数あります。特にここぞという勝負ところに支援を集中することで必勝を期することができる点はアメリカ軍の大きなアドバンテージでしょう。

ソ連軍が攻撃側なので基本的にはソ連軍が展開を主導していくことになるでしょう。アメリカ軍はソ連軍のリアクションになります。
今回、ソ連軍の攻撃は若干散漫な印象がありました。正面からなのか、側面なのか、包囲を狙うのか、いくつもの可能性見せながらも、いずれも徹底されなかったことからアメリカ軍は助けられたところがあります。

ソ連軍もいったんは包囲に成功するものの、包囲の維持には執着しなかったためかあっさり解囲されてしまっています。このあたり作戦をいろいろ試すことができそうです。

さて問題の核兵器ルールですが、事前プロット方式と、影響範囲内に味方ユニットがいる際には使用できないといった使用制限のため野放図な報復合戦にもならず、危惧していたゲームとしてのバランス崩壊もありませんでした。

核兵器を打ち込まれるリスクがあるため、ユニットの配置や移動において集中させることができないという影響はありますが、オプション採用によってゲーム性が変わるといったことも小さいかという印象でした。

ただ心情的なところも少なくないのですが、ゲームに暗い陥穽が開いたという印象は拭えませんでした。真面目な話をすると、例えそれが小さな戦術核であったとしても、核攻撃が行われた直後に攻撃箇所になんの制約もなく移動できるという点は、例えそれらの部隊がNBC装備の部隊であったとしてもな、といった違和感があります。

今回対戦していただいたKさんは専門領域が近いということもあってか、「日本人以外は、核兵器を単なる威力が大きな爆弾といた程度にしか考えていないんでしょうね。困ったものです。」と言われていました。

 

(終わり)

 

 

 

*1:それ以上の100kt、200ktのものについてはプレイヤー間で相談の上、導入しろ、とあります。

*2:さらに2種類ある戦闘解決表のうち、損害が大きく出る「突撃戦闘結果表」を用います

*3:防御側除去DEと、Exについても除去と判断しました。核兵器を使った際の戦闘結果表の読み替えについての説明は十分ではありません。BGGも調べましたが、特に言及している記事はありませんでした

*4:とルールブックに書いてあります

*5:本ゲームには補給ルールはないためここでヴュルツブルクが包囲されても、ペナルティはありません。