「死ぬまでにプレイしておきたい / プレイしておけ」という作品リストがあるそうで、その一作「Ukraine'43」(GMT Games)を対戦しました。
初版の発売は2000年。後にコマンドマガジン誌60号に収録されています。2015年に別作品と言ってよいほどルールを変えた第2版が発売。今回プレイしたのはこの第2版になります。
デザイナーは当代一番の人気デザイナーの一人、マーク・シモニッチ。
多作でも知られ、近作としては2023年に発売された「North Africa'41」など、作戦級~戦役級といったサイズ感で第2次世界大戦の欧州戦域における戦いを扱った一連の作品群があります(他にも多数あります)。
シモニッチが近年リリースしている第2次世界大戦を舞台にした作戦級作品は、作品ごとに細かい適用は異なるものの、ルールの基本的な部分が共通化されています。ここではこの共通システムを、「シモニッチ・システム」としておきましょう。
「Ukraine’43」は第2版にあたってのルール変更により、「シモニッチ・システム」に寄せた内容に変更されました。第1版に比べると、ゲームのシーケンスや戦闘ルールがシンプルになるなど、プレイしやすくなったと言われています。
ゲームシステムの紹介
陸上ユニットは師団から軍団単位が中心です。ユニットは、機械化と非機械化に分かれます。機械化部隊の一部は主要装備により、ドイツ軍であればティガーⅠ、Ⅲ号突撃砲、ソ連軍であれば、T34やKV1といったシルエットが表示されたユニットもあります。
司令官ユニットとして、ドイツ軍はマンシュタイン、ソ連軍はジューコフが登場し、それぞれ特殊な能力(ダイスの振り直し)が与えられています。
支配地域(ZOC)は追加の移動力を消費することで脱出可能。ZOC to ZOCの移動も認められています(敵ZOCにはいった時点で強制的に停止)。
戦闘は、隣接した敵ユニットへの攻撃が強制されず、任意に攻撃を実施できるMay Attack方式です。
プレイのシーケンスは、「移動」‐「戦闘」をIGoYouGo方式で繰り返すオーソドックスなものです*1。
通常の作戦級ゲームのルールをベースとしてアレンジが加えられていると言ってよいでしょう。
ルールを読んでいて印象的だった要素を3点紹介します。
いずれも他の「シモニッチ・システム」ゲームでも用いられているシステムです。
戦闘後前進
本作の「戦闘後前進」では、戦闘に参加していて勝利したユニットは、退却/除去された敵ユニットが占めていたヘックスを通らず、自分がいたヘックスから自由に前進(または後退)を行うことができます(それぞれのユニットが移動できるヘックス数は、ユニットの種類やそれをもたらした戦闘結果によって定められている)。
どのブログまたは記事で読んだのかは忘れましたが、ドイツ軍については戦闘後前進を行う場合、前進を行うのではなく、後退を行い戦線を整えることも良い、と言及されていました。
機動強襲(Mobile Assult)
「機動強襲」は「戦闘後前進」による移動を行う途中で、隣接した敵ユニットに対して追加的に実施できる攻撃を指します。攻撃が成功する限り連続的な攻撃が可能です。戦闘後前進で4ヘックス前進することができる装甲/戦車ユニットの場合、最大4回攻撃を実施することが可能となります。
装甲/戦車ユニットが参加する攻撃が成功し「機動強襲」を行った場合、周囲の敵ユニットも含め、大打撃を与えることになるのです(実際、プレイの中でもそのような場面があった)。
ZOCボンド
他のゲームではあまり見かけないルールですが、ZOCボンドという概念があります。
2個のユニットがヘックスひとつを間隔を置いて配置された際に、両方のユニットのZOCのが重なる部分を「ZOCボンド」と呼び、通常のZOCより強力な効果があるとしています。本作でのZOCの強制力は、通常のゲームのそれと比べると弱いのですが、この「ZOCボンド」の強制力の強さは対照的です。
プレイ
初期配置
ドイツ軍を担当しました。
1943年8月の前線に沿い、両軍が対峙した状態でゲームは始まります。
両軍部隊が配置された境界線上のヘックスは「陣地」扱いになっています。ドイツ軍の初期配置は決まっていますが、ソ連軍の配置は自由配置です。今回の対戦相手のDさんはこのソ連軍初期配置を念入りに研究していました。攻撃発起箇所については高比率での戦闘ができるように部隊を集中させています。
ドイツ軍の戦線は第一線に歩兵師団が並んでいますが、第二線を引けるほどの部隊数はありません。戦線の数ヘックス後方に、装甲師団が控えている点はドイツ軍にとって数少ない心の支えです(とはいえ、一部はステップロス状態ではじまります)。
マップ全体の北側2/3程度(ハリコフ北方戦区、イジューム屈曲部、とします)。
ところどころにおかれたサイコロは、ソ連軍担当が綿密に計画した、予定攻撃箇所とその戦闘力比率を表しています。
第1ターン
ソ連軍プレイヤーターン終了時の状況
ハリコフ北方戦区でソ連軍は3個所でドイツ軍戦線を突破しました。スミ北方で歩兵師団を潰走させた戦車師団が前進しスミを占領。これにともないスミの東方に配置されていた2個歩兵師団が包囲下に陥っています(紫色の円で2ヘックス分を囲った部分)。
プレイ開始直後、ドイツ軍は所定の初期配置から何の移動も行っていない段階での最初のダイスロールでこれをやられて、正直、絶望的になりました。
希望と言えば、ハリコフ郊外の黄色で囲ったヘックスに配置されている装甲師団、重戦車大隊などの装甲兵力の存在です。これらをどう振り向けましょうか・・。
ソ連軍プレイヤーターン終了時の全景です。
赤矢印部分がソ連軍が前進してきた箇所を示しています。
やはりハリコフ北方の3箇所、特にスミ北方の突破が大きいですね。
イジューム屈曲部は、史実でもソ連軍が突破した箇所のようで、河川が複雑になっていることから、通常得られる、河川の防御効果を得られないというドイツ軍の防衛線のウィークポイントになっている箇所になります。
(つづく)
*1:第1版はこれにリアクションや第2移動・第2戦闘があるなど複雑なシーケンスを採用していたが、第2版ではこれらの手順は簡素化された