「STALINGRAD ROADS: Battle on the Edge of Abyss」(NUTS!)を対戦しました。
入門シナリオ:冬の雷雨作戦
1942年12月第3週~第4週の2ターンのみの入門シナリオです。初期配置は決まってます。
スターリングラード周辺のみのミニマップを用い、包囲下にある第6軍の救援のためにマンシュタインが実行した「冬の嵐」作戦を題材にしています。支援マーカーの使い方や、移動‐戦闘‐突破という本ゲームの基本システムの習得のためのシナリオです。
初期配置(固定)
青系ユニットがドイツ軍(緑色はルーマニア軍)、赤系ユニットがソ連軍です。
手前の第6装甲師団、第23装甲師団のスタックがマンシュタインの解囲軍の主力です。マップ最奥のスタックがスターリングラードと包囲下にある第6軍です。
第6軍の周囲には幾重に包囲線が引かれています。
ドイツ軍の攻撃チャンスは2ターン分の戦闘フェイズの2回に、戦闘結果で「突破」が出た際のみ可能になる突破フェイズでの攻撃分2回をいれて4回だけになります。
また単に突出するだけでは、ソ連軍ターンに補給線を絶たれて攻撃力が半減されてしまうため、補給線を通すヘックスには味方ユニットを敷き詰め、補給線を確保し続ける必要があるでしょう。
3回目のチャレンジでマンシュタイン軍の先鋒が第6軍とのコンタクトに成功しました。
- 1戦目・・・普通に攻撃するだけでソ連軍の包囲網の外線に触る程度で終わった
- 2戦目・・・ソ連軍の包囲網の最も内側を攻撃するところまで行くが、ダイスの目がもう一歩よくなく、「突破」が発生しなかった
- 3戦目・・・2戦目と同じルートで攻撃、ダイス結果により「突破」成功。戦闘後前進により解囲軍が包囲下の第6軍にコンタクト成功(上図)
コマ捌き 2/3、ダイス運 1/3といった感じのミニゲーム(ソリティアに近い)。
移動‐攻撃‐戦闘後前進‐突破という流れ、また補給線に関するゲームシステムの理解には良いです。
キャンペーンシナリオ
続けてキャンペーンゲームです。ドイツ軍を担当しました。
初期配置は両軍とも決まっています。
1942年11月第3週、ソ連軍によるウラノス作戦開始時点から始まります。
ソ連軍は第1ターンより特別ルールにより「大攻勢作戦」を発動できます*1。任意に選んだ10個の支援マーカーを使用でき、さらに通常の大攻勢作戦では範囲が限られるところを範囲限定無しで実施できるというものです。攻撃力重視で「砲撃支援」「航空支援」「カチューシャ」などが選ばれます。
ドイツ軍もスタート時に支援マーカーを任意に4個利用可能とすることができます。
この時点では支援マーカーの選択肢は少ないため、「Pak88」1個と「警戒大隊」3個を選びます。「Pak88」は配置されたヘックスを攻撃するソ連軍スタックに戦車部隊が含まれた場合、戦車部隊の攻撃力を半分にできるという強力なチット、「警戒大隊」*2は後述しますがソ連軍の進攻ルートに配置され妨害するのに使うことができるという、わらをもすがらなければならないドイツ軍(とくに序盤)にとっては大変貴重な働きをしてくれるユニットです。
ウラノス作戦の標的となったのはドイツ軍ではなく、枢軸同盟国軍でした。
枢軸同盟国軍は攻撃を受け損害が発生した場合、必ず「突破」効果が相手に与えられるという特別ルールが設けられています。「突破」が出ると、「戦闘フェイズ」に続く「突破フェイズ」で移動‐戦闘が可能となります。ソ連軍からすると、枢軸同盟国軍との戦闘では移動‐戦闘に続いて、突破フェイズの移動‐戦闘が加わるというダブルムーブが保証されていると言って良いでしょう。
第1ターン(1942年11月第3週)
ソ連軍は第6軍の西翼に展開するルーマニア第3軍、さらに東翼側のルーマニア第4軍に攻撃を実施します。
「大攻勢」が発動され、支援マーカーが大盤振る舞いで使用されます。
支援マーカーの「カチューシャ」は単独で目標となったヘックスに対して5対1で攻撃を行うというもの。続いて進出したソ連軍ユニットとともに、「砲撃支援」「航空支援」が使用され、それぞれのマーカーが配置された範囲内で発生する戦闘全てに対して、それぞれ決められた分、戦闘結果表のシフトが有利になるというものです。ルーマニア軍の戦線はまたたく間に粉砕されるか後退させられ、ソ連軍の「戦闘後前進」が発生します。
ソ連軍の「戦闘後前進」の実施後、ドイツ軍は支援マーカー「警戒大隊」を使います。「警戒大隊」チットは、ソ連軍の戦闘フェイズと突破フェイズの終了時のタイミングで、マップに配置することで地上ユニットと同様に扱うことができるというものです。攻撃力を持たず防御値も最低限、さらに配置可能なヘックスに条件(都市ヘックス、河川に架かる鉄橋の両端にあたるヘックスなど)があり配置先が限定される、さらには通常の地上ユニットとスタックができないといった制約があるのですが、戦線を突破したソ連軍の足を止める数少ない手段となります。
例えば、上の図では青い円内に「警戒大隊」を配置しています。大河を越えた補給線を引くには鉄道や道路沿いであるか司令部ユニットによってポンツーン(歩兵橋)を設置するかしかないのですが、警戒大隊を配置することで大河越えの地点を確保し、スターリングラード方面への補給線をかろうじて確保したことになります。
ドイツ軍プレイヤーターン
ドイツ軍にできることは多くはありません。そのプレイヤーターンに取得した支援チット(3個)は全て「警戒大隊」とします。後方のいくつかの都市に配置されていた保安師団*3を集めてチル川とドン川の合流点にあたるニジネ・チルスカヤやチル川沿いにソ連軍の足を一瞬止めるだけの弱い戦線を張ります。
いっそのことスターリングラードを放棄して第6軍は撤退させれば?という考えもあるかもしれませんが、「総統の信頼」パラメーターが落ちることは必至です。ただ試してみる価値はあるのかもしれません。今回は史実にならい第6軍はスターリングラードに残っています。*4
第2ターン(1942年11月第4週)
ソ連軍は次々とドン河を越えた突出部に部隊を集めます。突出部の南側にあたるチル川沿いには前ターンで急ぎ集めた急造の薄い戦線があるだけです。
ソ連軍はニジネ・チルスカヤの西方でチル川を渡河、またボルガ川では西方向に戦車軍団が張り出すように突出し、スターリングラード周辺の第6軍を後方と分断しました。
スターリングラードへつながる補給線としてチル川・ドン河合流点からニジネ・チルスカヤ付近で神経質な鍔迫り合いが続きます*5。
スターリングラード周辺は後方からの補給線を遮断されることになり、軒並み補給切れとなります。ここでドイツ軍はすぐに「スターリングラード要塞」を宣言します。「スターリングラード要塞」はスターリングラード周辺の部隊が補給切れになると宣言することができ、通常の補給切れユニットとは異なる扱いを受けることになる特別ルールです。
扱いとしては補給切れに似ているのですが、スターリングラード周辺の飛行場を補給源とすることができ、補給状態は別途パラーメーター管理されます。宣言下にあるユニットは特別な専用ユニットに交換されます。ユニットがソ連軍と交戦すると徐々にパラメーターは低下していきます。専用の「Ju-52」のシルエットが描かれたチットを用いた空輸による補給がはじまります。
ただ制約条件などデメリットもあるため、宣言に先立ってはルール確認を行い、宣言のタイミングは考慮したほうがよいかもしれません(今回プレイの反省)。
マンシュタインによる「冬の嵐」作戦の発動には条件があります。2個装甲師団が作戦を発動する司令部ユニットに隣接する位置まで集結しておく必要があります。
この時、ドイツ軍の装甲師団のほとんどは第6軍に所属しており、軒並みスターリングラード周辺に位置したことから、包囲の輪の中に取り残されていました。
マンシュタインの配下に2個装甲師団が揃うには増援として到着するのを待つ必要がありました。攻勢発動は早くとも次のターンになりそうです。*6
第3ターン(1942年12月第1週)
上図は第3ターンのソ連軍ターンが終了し、ドイツ軍プレイヤーターンにはいったところ(今回のゲーム終了時の状況)。
① ドイツ軍のスターリングラードへの補給線は、モロゾフカからカラチを通る鉄道線か、ニジネ・チルスカヤからの道路等を通っていたため、チル川とドン河の合流点周辺の地域が争奪の対象となりました。
ソ連軍は、戦車軍団によって突破進撃した①と②により第6軍を包囲し、補給切れを狙いました。
② ボルガ河方面から西へまっすぐ進出してきたソ連軍戦車軍団です。前ターンでドイツ軍の妨害により先鋒のあたりは補給切れになっています。
③ ソ連軍のスターリングラード市街への包囲として、北側と東側からの進撃がここで手を結びました。ドイツ第6軍は大きく補給切れにされ、さらにスターリングラード市街にいた部隊と、郊外の装甲師団・自動車化師団などとが分断されてしまいました。
④ 「スターリングラード要塞」宣言の次のターンからスターリングラード市街地ヘックスに隣接する飛行場に対して空中補給が始まります*7。
⑤ 第6軍の中でも移動力がある装甲師団と自動車化師団を脱出させようと移動していました。ところが「スターリングラード要塞」の宣言が行われた後は空中補給の拠点となる飛行場ヘックスから補給線を引く必要があったのですが、③によるソ連軍の進撃によりそれがかなわなくなってしまいました。このターン後、⑤周辺の第6軍ユニットは補給切れで除去されることになります。
「スターリングラード要塞」宣言のタイミングで、補給源の考え方が変わるため、これらの部隊の脱出のためには、「要塞」宣言のタイミングをずらしたほうがよかったかもしれません。いずれにせよ「要塞」宣言の中身、影響等は十分にルールを理解しておく必要があります。
⑥ レニングラードから着任したばかりのマンシュタインは、「冬の嵐」作戦のため異動してきた装甲師団を配置しています。「冬の嵐」作成は発動条件がありミスってしまいました。発動は次のターンに持ち越しです。
今回は時間切れ終了になりました。
感想戦
「LIBERTY ROADS」(HEXASIM)譲りのゲームシステムは、独自性もありつつ軽快で、見通しも良いです。ただ何度も書いているように追加されたルールを中心に間違えやすい、見落としやすいルール、使いこなしにくいルールなどが点在していてとっちらかっている点は否めません。そのいくつかは「事故りがちなポイント」として紹介しました。
デザイナー/ディベロッパーもそうした認識があるのかプレイを助けるプレイエイドが何枚もついています。もちろん英語ですが。
ソ連兵のドイツ軍に対する苦手意識を扱った「ドイツ軍の優位性」パラメーター、「ヒトラーの信頼」「マンシュタインの信頼」、ソ連具の攻勢準備状況を表す支援チットののプールや、今回の記事では触れていなかったが同時期に中央軍集団に対して発動されていたソ連軍のマーズ作戦の状況パラメーター、「スターリングラード要塞」宣言後に使用される「スターリングラード補給状況」パラメーターなどなど。
プレイエイドの一例:「マーズ作戦状況トラック」
毎ターン、作戦状況をダイス判定して連続的に状況が変化します。状況によってはドイツ軍やソ連軍は増援や支援チットの変動をはじめ影響があります。
支援マーカーも後から様々な種類が増援としてチットをいれるカップの中に追加されていきます。シンプルな航空支援や砲撃支援というチットの他、ドイツ軍のものを紹介すると、「ホト」「ルーデル」「ゲーリング」といった人名が記載されたものから、「ネーベルヴァッフェ」「ティーゲルⅠ」「Pak88」(これは本記事でも紹介)といった兵器類、イベント的なものも含め、多数あります。これはこれで新しい種類のチットを引く度に、その効果や発動条件、回収条件などなどをチェックしていく必要があります*8。
総じて、ケレン味のあるルールを多数抱えながらもプレイにあたってはそれほどストレスにならないのは、ゲームシステム自体の見通しが良いためではないでしょうか。
驚くのはけっこうヒストリカルに展開が進む点です。
今回は序盤だけで終わりましたが、この後の展開もぜひ挑戦したくなります。マンシュタインの苦悩はまだ始まったばかりでしょうから・・。
整理やルールの理解が必要になるとは言え、ヒストリカルな展開とプレイアビリティの両立、アイディア盛りだくさんといった風の各種アイテムによるゲームとしての楽しさなど含めオススメの良作です。
(終わり)
本作の支援チットに似たシステムを採用した作品
Fast Action Battleシリーズの第2作。第四次中東戦争におけるゴラン高原の戦いを扱った。シリーズは3作目までリリースされた。
「支援チット」にあたるチットは「リソース」と呼ばれ、戦闘に投入する。部隊ユニットは積み木なのもユニーク。本作はゲームバランスが悪いが、バルジの戦いを扱った1作目はバランス等も良い良作らしい(保有しているが未プレイ)。
沖縄戦のアメリカ軍の上陸後、首里城戦線の崩壊までを扱った作品。本作と同様にチット種類はバリエーションに富んでいる。テーマもさることながら、チットとして登場する部隊や兵器などのバックストーリーが重いです・・(2本目の記事を参照)
*1:前の記事に書いたようにソ連軍の「大攻勢」と「小攻勢」のルールは注意が必要です。特に冒頭からはじまるウラノス作戦は「大攻勢」を拡張した仕様になっていることから、シナリオ(キャンペーンゲーム)の特別ルールも参照する必要があります。
*2:・・・戦線後方で任務についていた鉄道作業員や建設部隊、休暇からの帰還兵、空軍基地の地上要員などをかき集め、応急編成の「警戒大隊」をいくつも作り上げて、チル川の南岸に送り込んだ。こうした働きによりチル川流域に薄いながらもドイツ軍の警戒線が形成され、マンシュタインは救出作戦の準備に専念することが可能となった。・・『歴史群像』58号「スターリングラード攻防戦」山崎雅弘氏記事より抜粋
*3:シンボルがドクロになっています。保安師団は歩兵連隊、中年の予備役兵から成る国土防衛連隊(保安連隊)他から構成され、パルチザン対応や前線を突破された際の予備部隊としても活動しました。
*4:ソ連軍によるウラノス作戦がはじまったのはドイツ第6軍が「スターリングラード市全域の占領」という総統命令に従い攻撃を行っていた中の1942年11月19日であった。ソ連軍による 総攻撃に対する第6軍司令官パウルスの動きは緩慢だったが、状況の急変を受け22日夕方には上級司令部であるB軍集団司令部に対し、「とりあえず現状の展開地を保持するつもりだが、防衛線構築がうまくいかなかった場合に備えて行動の自由を保障されたし。その場合、軍は全力で現在地を放棄して南西への脱出作戦を行う」と打電した。報告内容を知ったヒトラーは数時間後には「第6軍は現在位置を固守せよ。余は全力を挙げて貴軍の現有兵力を支援し交替部隊を用意する。行動の自由は、認められない」と返電した。 『歴史群像』58号「スターリングラード攻防戦」山崎雅弘氏記事より抜粋
*5:攻撃側と防御側の補給判定のタイミングの違い、いったん補給切れ判定されたユニットの回復、さらに「警戒大隊」の配置、「スターリングラード要塞」のルールなどはチェックが必要です。
*6:ソ連軍の攻勢に対応するため、第6軍・ルーマニア第3・第4軍を統括する新たな指揮組織として「ドン軍集団司令部」が創設され、その司令官としてレニングラード方面で第11軍の指揮をとっていたマンシュタインが任命された。マンシュタインが直ちに移動し、現地に到着した11月24日には、既に第6軍の背後は完全に封鎖されており、彼がすぐに使うことができる兵力は事実上、ルーマニア軍の敗残兵だけだった。 『歴史群像』58号「スターリングラード攻防戦」山崎雅弘氏記事より抜粋
*7:空中補給判定は、具体的には裏にイベントが書かれたJu-52 マーカーをダイスで決めた枚数ドローし、そのイベントを実施するというものです。ドローできる枚数を決めるダイスには、周囲の飛行場の状態などで修正が施されます
*8:新しいチットを引く度に内容チェックが欠かせないのは「LIBERTY ROADS」も同じでした