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「COMMANDS & COLORS:SAMURAI BATTLES」(GMT Games)を対戦する

「COMMANDS & COLORS:SAMURAI BATTLES」(GMT Games)を対戦しました。

本作は、「COMMANDS & COLORS」(以降、C&C)シリーズの一作で、日本の戦国時代の戦闘を題材にしています。

 

 

 

 

COMMANDS & COLORS システムについて

BGGの解説によればC&Cのシステムには次のような特徴があります。

  1. コマンドカードと戦術カードの2種類のデッキがあります
    前者により通常のアクションを実施し、後者により特殊攻撃などの特別なイベントを発動します。本作では特に後者を「ドラゴンカード」と呼びます
  2. 戦闘解決に専用のダイスを用います
  3. ヘックスボード/マップ上に、六角形の地形タイルを用いて地形をアレンジします
    マップは中央・右翼・左翼の3つのパートに分かれていて、カードイベントやユニットの活性化の際に用いられます
    地形を表すタイルが多数用意されていて、マップ上にタイルを置いて様々な地形を表します

 

ユニットについて

ユニットは積み木です。積み木のブロックの裏表の両側に同じイラストシールが貼られていますので、相手プレイヤーからもユニットの種類は見えます。

積み木1個の戦力はイラストとして2人の兵士が描かれています。兵士のユニットは4個で1セットとして扱い、移動・戦闘はセット毎に実施します(分離はできません)。損害が出る毎に1個ずつ除去されていくことになります。

兵士には、次のような兵種があります。

 

兵種のスペックはユニット上にではなく、別途用意されているリファレンスカードにまとめられています。リファレンスカードには移動力・射程(弓・鉄砲のみ)・射撃時のダイスの数(戦闘力)・近接戦闘時のダイスの数(戦闘力)・その他の特殊効果などが記載されています。

兵種による性能差はありますが、決定的な差がある訳ではありません。兵種ごとで、じゃんけんのようにこの兵種には強いとか弱いといった相性がある訳ではないため、戦闘は基本的にはダイス運で決まることになります。鉄砲は登場していますが、弓よりも射程は長いものの特別強力なユニットいう訳ではないです。

各ユニットの右肩には、兵種毎に「赤四角」「青三角」「緑丸印」の三種類のシンボルが描かれていますが、これは戦闘解決に用いる専用ダイスのマークに対応しています(後述)。

 

マップは端正なデザインのハードマップです。GMT製ゲームのハードマップと同じ折りたたみ式です。写真を見てわかるようにマップ上のヘックスのサイズがかなり大きいです。ちょうどASLのミニチュアゲーム版であるDeluxe ASLのようなサイズ感です。

標準状態ではマップはただの平原の状態なのですが、六角形の地形タイルを置いて様々な地形を表すことになります。今回は練習シナリオだったので地形もシンプルですが、ヒストリカルシナリオなどでは川の対岸同士の戦いなどでは、川がマップの左右を流れるようにタイルを敷き詰めたりもするようです(姉川の戦いか?)

なお地形タイルの中には、幔幕を巡らせた「本陣」や「城」もあるのですが、ゲームのスケール感はいまひとつよくわかりません。

 

カードは2種類あります。
カードスタンドに立てているのが通常のアクションを起こすコマンドカード、テーブルの上に寝かせて並べているのが特別な行動やイベントを起こす戦術カード(本作の場合、ドラゴンカードと呼ぶ)です。ドラゴンカードは、カードによって発動可能なタイミングが指定してあり、さらに発動時に「名誉と幸運トークン」(Honor and Fortune)を消費する必要があります

 

ゲームシーケンス

ゲームのシーケンスはシンプルです。プレイヤーターンを交互に実行します。先手・後手はシナリオに指定され、固定です。

プレイヤーターンのシーケンス

  1. 発動するコマンドカード1枚を選択する
  2. コマンドカードの内容に従い、どのユニットを活性化させるか指定する
  3. 活性化したユニットの移動
  4. 活性化したユニットの戦闘
  5. 新しいカードのドロー

 

コマンドカードには活性化する条件が記載されています。例えば、

「マップ上の左翼のエリアに位置するユニットから◯◯個のユニットを活性化する」

「マップ全体から赤四角のシンボルを持つユニット3個を活性化する」といった感じです。

条件にあうユニット(4個ずつのセット)をカードに記載された個数分、活性化対象として指定して活性化を宣言します。活性化したユニットを移動させ、さらに戦闘させる、という手順になります。

なおもう1種類のカードにあたるドラゴンカード(戦術カード)はカードに記載があるタイミング、条件の際に使うことができます。

 

コマンドカードで指定できなければユニットを活性化できず、移動や戦闘を行うことはできません。コマンドカードの手札枚数は5枚前後ですので、手番の際に取りうる手立てのバリエーションはそれほどある訳ではないです。つまるところ、自分の好きなタイミングで望ましい数のユニットを活性化させることができない、いわばカード任せということになります。*1

 

戦闘システムについて

戦闘はマストアタックではありません。
射程を持つ弓兵・鉄砲兵以外は相手ユニットに隣接した状態で近接戦闘を行うことになります。

移動と戦闘は同じプレイヤーターンの中で実施できますので、活性化したユニットを移動させ、敵ユニットに隣接させて戦闘を行う、というのが通常のアクションになります*2

兵種毎に戦闘時に振ることができるダイスの個数が、例えば「足軽槍兵」は4個といったように決まっています。

戦闘対象の敵ユニットが林などの防御地形にいたり、逆に攻撃を行う側が特定の地形にいる場合などは、ダイスの数が制約を受けます。例えば、防御側が「林」のヘックスにいる場合、攻撃を行う側が振ることができるダイスの数は2個が最大となります。

専用ダイスには、さきほど部隊ユニットの説明の際に触れた「赤四角」「青三角」「緑丸」といったシンボルがそれぞれ描かれた面があわせて3面あります。防御側のユニットの兵種とこの戦闘解決時のダイスの目が一致すると、防御側はシンボルが出た数と同じ数のステップを失うことになります。

さらに専用ダイスには、「侍」印、「刀」印、「旗」印が一面ずつ描かれています。それぞれその面が出た際の処理が異なってきます。
特に「旗」印が出た場合は防御側ユニットは後退する必要があり、「侍」印の場合は「名誉と幸運トークン」を1個獲得します。
防御側にリーダーにあたる武将駒が含まれている場合の処理が異なるなど、戦闘結果処理は慣れないうちは若干煩雑に見えます(難しくはありません)。

なお、同じC&Cシリーズの作品でも、ナポレオン時代の作品の場合は、諸兵科連合効果のようなものがルール化されていたそうですが、本作では諸兵科連合効果や騎兵突撃といったような特別な修正やルールはありません。

 

名誉と幸運トークン(Honor and Fortune)は本ゲームのスパイスの役割を担っており、戦闘結果、または各ターンの最後に選択で獲得する一方で、ドラゴンカードを使う際に消費し、また兵士や武将のユニットが後退した際に失われます。
その際、手持ちのトークンで支払うことができない場合は名誉が失われたとして、ダイスによる判定によっては、武将は切腹をしなければなりません。

 

プレイと感想戦

移動力は騎馬部隊と足軽は2ヘックス。徒士(徒歩状態の侍)は1ヘックスと大きくはありません。マップ上で華麗な機動戦が起こるということはないでしょう。

そもそものところでユニットの活性化自体が、それらのユニットを指定することができるコマンドカードがなければできませんので、なにかの作戦意図・戦術的な意図をもってユニットを動かすというよりは、手元にあるカード(標準枚数は5枚)の中で動かせそうなものがあれば動かすという状態になりがちで、作戦や戦術は正直、二の次になる感じです。

戦闘自体も、最強の槍装備のユニットが攻撃しても、1度の攻撃で相手を1ステップロスさせる期待値は1個以下しかなくそれほど劇的にはすすみません。
ドラゴンカードの効果によっては、内容によってそれなりの効果を与えるものもありそうですが、それも偶然要素が少なくない印象です。

ユニットや地形、マップ等のスケール感も漠然としていることも背景にあり、ゲーム全体に緩さがつきまとう印象で少なくとも作戦や戦術をキリキリと追求するような作品ではないです。
どちらかというと複数でワイワイとランダム要素やハプニング込みで楽しむような作品というべきでしょう。

ミニチュアゲームには詳しくないので断定はできないのですが、ミニチュアゲームに適用できるように、また凝った形状のミニチュアをマップ上で動かすという運用を考慮した際に運用がしやすいようなルールになっているのかなという印象を持ちました。

もっとも今回は練習シナリオということもあり、両軍の兵力差はなく、地形もほぼ平坦だったこともあるかもしれませんので、40シナリオもついているというヒストリカルシナリオをプレイすると多少は印象が変わるかもしれません。

 

左初手時点でコマンドカードに左翼で複数個の部隊の活性化が可能なカードがあったことから、「騎馬槍武者」と「足軽槍兵」をつけて青軍の最左翼に移動。接敵した「騎馬槍武者」のダイス4個振りで攻撃を仕掛けました(手持ち部隊中、最強クラス)。とはいってもダイス結果はよくて1ステップロスといった程度なので劇的に相手をなぎ倒したり、突破したりすることは起こりえません。

その後、写真中央部にある「林」の地形タイルを奪われてしまい、奪還しようにも、地形効果から攻めあぐねてしまうという状況に陥りました(ワーテルローのウーグモント農場のような状況ですね)。

 

(終わり)

 

 

フランス産の戦国時代を扱った作戦級の作品です。
兵種がかなり細分化され、諸兵科連合効果がルール化されています。
兵種は大きく「足軽」「侍」「馬廻衆」「中間」に分かれ、「足軽」はさらに「鉄砲」「弓」「槍」、「侍」と「馬廻衆」は「徒士」と「騎馬」に分かれます。

難点のひとつは、諸兵科連合効果がポーカーゲームの役のような処理になっているので、それをもって戦国時代のシミュレーションですと言われても腹落ち感は弱かった印象でした。

 

ややケレン味はありますが戦国時代を扱った傑作です。
兵種は騎馬隊、槍隊、鉄砲隊に分かれ、実施できる戦闘方法や性能が差別化されている一方で互いに補完しあうのが戦闘のポイントとなっています。

 

 

*1:コマンドカードの中には全線で部隊を活性化させるようなカードもありますが、数は限られます

*2:射程を持つユニットは、射程内の敵ユニットに対して遠距離戦闘を行うことができます