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「Mr. MADISON'S WAR The Incredible War of 1812」(GMT)を対戦する(1/2)

1812年といえばナポレオンがロシア遠征を行った年で、チャイコフスキーの愛国的な作品もあいまって歴史ファンのみならずクラシック音楽ファンにも記憶に残る年になっている訳ですが、その同じ1812年アメリカ合衆国イギリス連邦が北米を中心とした戦場で戦っていた米英戦争を扱った「Mr. Madison's War The Incredible War of 1812」(GMT)を対戦しました。

タイトルになっているマディソンさんは時の第4代大統領ジェームズ・マディソンで、ニューヨークにある公園「マディソン・スクエア」の由来になった人です。

 

 

 

米英戦争を扱った作品としては、近年では「Dawn’s Early Light: The War of 1812」(Compass Games)があります。2022年末の千葉会オークションに出品されていましたが、傑作だそうです。同作が北米全体をマップ範囲にした戦略級(?)になっていることからすると、本作の戦場は五大湖とカナダ国境付近に限定されています。

 

ナポレオン戦争に関わっていたイギリスは新大陸に戦力を向ける余裕がなく、アメリカはその隙を狙って火事場泥棒的に宣戦布告します。
アメリカは英領カナダの奪取を狙い、カナダ領内に侵攻します。エリー湖オンタリオ湖を抑えるのですが、セントローレンス川オンタリオ湖からモントリオール方面に流れる川)の水運は抑えることができず。モントリオールケベックの攻略は失敗します。

 

青色ユニットがアメリカ軍、赤色ユニットはイギリス軍です。黄色の矢印はアメリカ軍の増援の進路になります。
イギリス軍はマップ右上のモントリオールケベックを補給源とするため、エリ-湖(マップ左下の湖)や、オンタリオ湖(マップ中央の湖)の北岸沿いが長大な補給路となっています。このため、両軍はエリ-湖・オンタリオ湖・シャンプレーン湖(モントリオールの南側にある小さな湖)・ヒューロン湖デトロイトの北側に広がる湖)にそれぞれに復数の軍艦からなる艦隊を展開し、制海権ならぬ湖の海上権を争っています。

 

ゲームシステムの紹介

カードドリブンシステム

1年は(わずか)3ターンで表されています。「春~夏ターン」「夏~秋ターン」、そして「冬ターン」です。冬の間は部隊は冬営に入り、移動や戦闘はできません。さらに冬にはいる前には冬営の準備をしなければ、冬を無事に越せないという制約があります。

カードドリブンシステムで毎ターン7~9枚(ターンによって異なる)のカードをドローし、各ターン内でドローしたカードをすべて使いきることになります。カードは1812年カード、1813年カードと年ごとにすべて交換されます。

カードにはイベントやアクションとあわせ、オペレーションポイント(1~3ポイント)が記載されています。イベントカードやアクションカードとして使うか、記載されているポイントもってユニットの活性化させて行動をさせるか、というカードドリブンシステムでよくあるシステムになっています。

カードを使うことにより次のようなことが実施できます。

  • イベントの発生(イベントが記載されたカードの場合)
  • 戦闘カードとしてアクション/リアクションを実施(アクションカードの場合)

カードに記載されたポイントを利用すると次のことを行うことができます。

  • 指揮官ユニットの活性化
  • ユニットの活性化
  • ユニットの回復
  • 船の建造/修復
  • 補給集積所の設置

 

指揮官ユニット

指揮官ユニットを活性化させると指揮官とスタックしている部隊(陸上部隊または船)から指揮可能なユニット数まで同時に活性化させることができるためユニットを個別に活性化するよりもはるかに効率が良いです。
指揮官ユニットには「指揮値」と言う1~3までの数値があり、対象の指揮官ユニットを活性化させるには、指揮値以上のポイントを持ったカードを使う必要があります。指揮値1の指揮官ユニットはどのカードによっても活性化が可能ですが、指揮値3の場合は、ポイント3を持ったカードでなければ活性化できないことになります。ポイントが3のカードはカードをイベントカードやアクションカードとして使った場合の効果が大きい、価値が高いカードである場合が多いので、イベントやアクションとして使うのではなく指揮官ユニットの活性化に使う際には少々迷う場合があるかもしれません。

アメリカ軍に比べイギリス軍のほうが指揮官が優秀であった事を表すため、イギリス軍の指揮官ユニットのほうが指揮値が小さく、その分、活性化しやすくなっています。

 

戦闘

陸上部隊は1ユニット=連隊単位。当時砲兵は弱体で騎兵もほとんど見られなかったということなので歩兵ばかりです(数個のみ騎兵部隊が登場)。

兵士には当時の軍隊の構成により、正規兵、民兵に分かれ、さらにインディアン部隊がいます。兵士にはグレードがあり、戦闘時のグレードの差は修正値になるのですが、正規兵はグレードがAかB、民兵はごく一部を除きグレードはCです。

インディアンは森ヘックスで、正規兵や民兵と戦闘を行う際に攻撃側でも防御側としてでも有利な修正を得ることができます。なおインディアンのほとんどはイギリス側でした。

指揮官ユニットにはさきほどの指揮値の他、戦闘修正(優秀な指揮官ほどダイス修正の値が大きくなる)、階級(階級が高いほど多くの部隊を活性化できる。おうおうにして階級が高い指揮官が戦闘修正などの能力に優れている訳ではないのが悩ましい)が記載されています。

戦闘ルールはシンプルです。戦闘に参加するユニットの戦闘力を足し、2D6で決定します。戦闘力比率、地形、指揮官の戦闘修正、兵士のグレードなどはすべてダイスの目の修正として反映されます。
実際にプレイした感じだと派手に損害が出る訳ではないです。せいぜい1~2ステップを失いどちらかが後退するという結果になります。地形的に敵中に強襲上陸を行ったりしていない限り、後方を包囲されるような地形でもないため、負けた側はするりと後退して終わりという結果が少なくありません。

ここまで書いていて戦闘ルールとしては先日プレイした「WAR FOR AMERICA」とさほど変わるような内容ではないことに気づきました。「WAR FOR AMERICA」の戦闘では地味に感じられたのですが、今回のゲームではそれほど悪くはない印象を受けました。確かに目を見張るような損害が出るようなシステムではないのですが、当時のある種、悠長な戦闘がそのようなものだったのだろうと捉えました。

いずれにせよ、「WAR FOR AMERICA」の戦闘ルールへの評は見直さなければならないかもしれません。

 

 

海軍ルール

両軍はその補給線を確保するため湖の制海権の確保が重要でした。このため両軍に大小の軍艦が1ユニット=1隻で、名前付きで登場します。
スクーナー/スループ」「ブリッグ」「ブリガンティーン/コルベット」「フリゲート」「戦列艦」といったクラスの帆船が登場します。

制海権を確保することにより船を利用した活動の自由が効くようになります。補給や強襲上陸、撤退といった行為が湖上の海路を通して実施できるのです。

制海権をめぐって海戦も起きます。海戦は参加する船のクラスと隻数により算定される数値を比べ、1D6にて判定されます。海戦の場合、相手よりも隻数が1隻でも多い場合、ダイス修正がつくため、少しでも隻数を集めたほうが有利になっています。
さらに海戦の戦闘結果では0以下、または7以上の結果の場合、相手が降伏するため、全隻除去という結果がありえるのも特徴です。実際プレイ中も、エリー湖において7~8隻からなるイギリス艦隊が降伏するという結果が出ました。

それぞれの湖の艦艇は一部の湖間を除けば相互に移動できるようにはなっていません。例えばエリー湖オンタリオ湖は独立しているため各々で艦艇を用意する必要があります。
またそれぞれの湖において建造できる船は、増援表で指定があるため、無尽蔵に建造できる訳でもないです。もっとも、船の建造にもカードのポイントの利用が必要ですから、どれだけ船の建造にリソースを投下するのか、という問題を抱えています。

 

(次回AARに続く)

 

 

 

おまけ: 話題の「ChatGPT」に聞いてみた!

ネット検索でGoogleに代わるのではないかとも言われ上場の際には史上最大の公開になるのではないかとも言われている、OpenAI社の「ChatGPT」に、米英戦争の事とか、その原因を聞いてみると、驚くような回答が来ました。
和訳はChromeによる翻訳機能を使っています。

 

米英戦争とは?

米英戦争について、と質問をしたことろ、米英戦争を直訳でAmerica-Anglo warと聞いたところの答えが次のものです。日本語で言うところの「米英戦争」は「War of 1812」と言うのだそうですが、それは戦争ではなかったと言っていますね。

申し訳ありませんが、歴史上「英米戦争」の記録はありません。英米戦争という用語は、歴史的に認識された出来事ではありません。1812 年の米英戦争など、米国と英国の間で紛争がありましたが、膠着状態に終わり、戦争とは見なされません。米国と英国は、第一次世界大戦第二次世界大戦中に同盟国と見なされ、歴史を通じて密接な関係を築いてきました。別のイベントを意味している可能性があります。具体的なイベントがあれば教えてください。

と返ってきました。どうも米英戦争の直訳では意味が通じないようです。しかも1812年の戦争は戦争ではない、とまで言っています。
ウィキで米英戦争の英語表記を探して(「War of 1812」と言うそうです)、アメリカ側の戦争の理由を聞いてみると次のような回答がありました。かなりアメリカはひどいです。

1812年の戦争(和名:米英戦争)の原因は?

続けて「米英戦争」の原因は?という質問の答えがこれです。このレベルだとウィキペディアにそのまま書いているような内容ではあるので、それほど目新しいものではないです。ただ何度か同じ質問をしたところ、要旨は同じなのですが、都度、回答の文章は変わっていたので、予め答えを持っているのではなく、文章自体は都度生成しているのではないかと推測されます。

1812 年の戦争は、1812 年から 1815 年まで続いた米国と英国の間の紛争でした。この戦争には、次のようないくつかの原因がありました。

  • 貿易制限: 英国政府は、当時イギリスと戦争状態にあったフランスとのアメリカの貿易を阻止するために、一連の貿易制限を米国に課していました。これはアメリカの商人に打撃を与え、商品の輸出を困難にしました。
  • 押印: 英国海軍は公海でアメリカの船を止め、イギリスの臣下であると主張する船員を押収するという慣行を行っていました。これにより、アメリカの船員が意に反して連行され、イギリス海軍での勤務を余儀なくされるという多くの事件が発生しました。
  • アメリカの拡大: 米国は急速に西方に拡大しており、多くのアメリカの指導者は、この戦争を特にカナダへの国境をさらに拡大する機会と見なしていました。
  • 戦争タカ派の影響: 戦争タカ派として知られるアメリカの政治家グループは、主に西部と南部の州出身で、英国との戦争を推し進めました。彼らは、米国は戦争で英国を簡単に打ち負かすことができ、領土と名声を獲得する機会になると信じていました。
  • 禁輸法: ジェームズ・マディソン大統領は、1807 年の禁輸法に署名し、アメリカの船舶が他国と取引することを禁止しました。これはアメリカの経済と商人に打撃を与えました。

戦争は膠着状態で終わり、1815 年にゲント条約が調印され、戦前に存在していた国境と条件が再確立されました。