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「ALMORAVID:Reconquista and Riposte in Spain 1085-1086」(GMT)を対戦する【補記修正 2023/10/2】

ゲームの紹介から続けてAARを書くつもりで「つづく」としていたのですが、その後の記事を書かずじまいになっていました。簡単にですが続きで書こうとしていたことを追記しています【2023/10/2 補記修正】

 

11世紀、イベリア半島におけるレコンキスタを扱った「ALMORAVID:Reconquista and Riposte in Spain 1085-1086」(GMT)を対戦した。
レオン王国およびカスティーリャ王国の王アルフォンソ6世(勇敢王)によるイベリア半島イスラム教諸国(タイファ)への侵攻(レコンキスタ)に対し、救援を求められた北アフリカムラービト朝のユースフ・イヴン・ターシュフィーンが介入したという戦役を描く。プレイヤーはアルフォンソ6世か、ユースフを含むイスラム教国側を担当する。

何度読んでもなかなか覚えられない本作のタイトルはムラービト朝の英語読み(英語では、アルモラヴィッド朝と呼称する)らしい。ムラービト朝は、11世紀から12世紀の100年ほどモロッコを中心とする北アフリカから本ゲームが扱うイベリア半島の南半分について勢力を誇った。その名称であれば、世界史の歴史地図帳で見たような覚えがある・・・ような気がする。

 

 

 

 

当サイトでも以前に紹介した「NEVSKY」のゲームシステムを採用した、「Levy & Campaign」シリーズの2作目にあたる。ちなみにGMT社のHPを見るとそれぞれ題材を変え、シリーズ第3作・第4作が発売予定としてラインナップされているところを見ると、好評なのだろう。
・・と記事を書いているうちに、GMT社から、次回作として「Inferno: Guelphs and Ghibellines Vie for Tuscany, 1259-1261」をリリースするからね、と連絡がはいった。次は中世イタリアが舞台のようだ。

 

 

ゲームの紹介

本ゲームについて3つの特徴をあげたい。

軍役ルール

シリーズ名を直訳すると「召集と軍役」といったところだが、本ゲームの特徴のひとつを言い当てたものになっている。
プレイヤーが担当する軍勢はいずれも封建的主従関係の元、封建領主によって軍役として召集された軍勢だ。
主君から召集された家臣は軍を仕立てて駆けつけるところなど日本の鎌倉時代から室町時代末期までの武士社会の状況に似ているのかもしれない。

本ゲームに登場する家臣は、軍役期間が過ぎるとさっさと帰国してしまう。敵軍と対峙中であろうが、拠点を包囲中であろうがお構いなしだ*1
動員期間の延長は可能なのだが、見返りとして報酬を支払うか、その地での略奪を許さなければならない。なんらかのうま味がないと残業には応じないといったところか。一度略奪を実施するとその地は荒廃してペンペン草も生えない状態になってしまうので始末に負えない。
報酬として払う金は、自国で実施する徴税によって得る必要がある。主君が自国のさらに本拠地のエリアで徴税を行うことで得られるが、敵国土へ遠征中であれば実施ができない、などこちらを立てればあちらがたたないといった縛りはあちこちに用意されている。

 

補給ルール

ゲームシステムの2番目の特徴は補給の扱いだ。
補給は従軍した家臣毎に本拠地から部隊がいる場所までの運搬手段を用意し、補給物資を運搬していく必要がある。さらに補給物資は前線の戦闘部隊だけが消費するのではなく、補給線を維持し運用するためにも消費される。後者の点は多くのウォーゲームでは捨象されている要素だろう。
前作ネフスキーでは物資の運搬手段として荷馬車の他、船、川船さらに河川が凍結する冬場に用いるそりと、複数が用意されていた。
補給不足に陥ると前線の部隊はこれまた勝手に帰国してしまう。敵を圧倒する大軍を前線に引っ張っていくにはまかなうだけの補給線を構築し補給を実施しなければならない。太い補給線はそれ自体が物資を消費する・・・と、先に紹介した部隊の動員と従軍期間に基づくローテーションを含め、計画的に動員し、補給を提供し続けなければ軍は瓦解してしまうという恐ろしいゲームになっている。

出陣する際に十分な準備期間をかけ、多めに補給物資や資金を抱えて出陣すればいいのではないかという考えもあるのだが、これにもまた縛りがある。余計なリソースを抱えた部隊は無駄にリソースを消費してしまうという「浪費」というルールが用意されている。多すぎる物資は無駄使いや運搬の手間を嫌っての遺棄放棄、さらには横流しなどにより浪費されてしまうといったところだろうか。

本作での物資の運搬手段は、荷馬車とロバの2種類になった。
通常の平地の街道については荷馬車で対応できる。さらに荷馬車は物資を消費しない*2。今回の舞台となるイベリア半島のマップには山岳地帯をいく峠道が多く走っている。山岳を迂回して走る街道と異なり、峠道を使うことにより目的地へのショートカットができることが少なくない。ロバはこうした峠道を通る際に用いられる。
荷馬車でも峠道を越えることはできるのだが、道の整備の問題からか過積載扱いとなり部隊の機動力は大きく削がれる。ロバを用いることで運搬力を確保しながら機動力を維持できる。ところがこのロバを抱えている部隊はロバ自体が物資を消費する。

 

街や城郭のイラストを結んだ水色(明灰色?)のラインが街道を表す。峠道はさらに細い白抜きの複雑に曲折した線。大きく迂回する街道筋に対して峠道を用いることでショートカットが可能となる。

 

ローカル色がある多様な軍隊

3番目の特徴として軍勢を構成する兵種の多彩さがある。大きくは騎馬兵と徒歩兵に分別され装備品により分かれるのだが、キリスト教軍とイスラム教軍とで異なり、さらに両軍配下の部隊は動員された地域毎の特色がある内容になっている。
かたやフルアーマー状態の騎士や装甲騎兵、装甲歩兵がいる一方、粗末な武具だけで弓やスリングを使う農奴兵がいる。戦闘力や戦い方は兵種によって異なってくる。イスラム側には北アフリカから海を越えて沿線してきたアフリカ兵がまた独自の装備をもって従軍している。
騎馬兵としては、騎士・装甲騎兵・アフリカ騎兵・軽騎兵、徒歩兵には装甲歩兵・アフリカ歩兵・民兵農奴兵と登場する。

戦闘ルールは、攻撃を行うユニットの数分のダイスを振る、いわゆる「”6”出ろ」システムの発展版だ。兵種・装備によって、相手に損害を与えるダイスの目、防御装備により損害の吸収可否などが変わる。弓や投げやり、スリングを装備している兵による射撃戦、その後の白兵戦が実施される。また野戦と別に攻城戦のルールが用意されている。

 

キリスト教側の軍隊。それぞれのカードは軍役を課せられ動員された家臣を表す(それぞれの家紋が描かれている)。
カード上の木駒が部隊を表し、ひとつの木駒が数百人規模、色や形状でそれぞれ異なる種類を表している。大きくは三角形の丸みを帯びた木駒は騎馬兵、直方体の木駒は徒歩兵を表す。

家臣カードの上には、部隊を表す木駒以外に、荷馬車やロバのマーカー、さらに現在保有している資源を表すマーカーが載せられている。

 

 

【2023/10/2 補記修正】

続きの記事を書かないままになっていました。

キリスト教国軍を担当。キリスト教国は半島から異教徒たちを追い出すため、イスラム教国に侵攻しているところからゲームははじまります。イスラム教国は小さな複数の国家からなっており足並みがそろっていません。そこで海を渡った北アフリカから同じイスラム教を信奉する勢力からの援軍を依頼しています。

 

マップ全図。上方の黄色縁取りがされたエリアがキリスト教国、下側の緑の縁取りがイスラム教国(複数に分かれている)。

ゲームスタート時にキリスト教国軍の一部は、イスラム教国の領域に侵攻中で、マップの最中央部の大きめに描かれた「トレド(Toledo)」を包囲しているところからはじまる。

 

 

 

 

 

 

 

 

*1:前作ネフスキーのプレイ中、敵の城郭を包囲中に主力の家臣が帰国してしまい、主君の直属の兵だけとなった覚えがある

*2:ルールにより、荷馬車自体は補給物資を消費しないことになった。ゲーム内での煩雑化を避けたのだろう