「The Korean War」(Compass Games)を対戦しました。VICTORY GAMESから販売されていた作品の再販版です。旧版に比べるとマップがリファインされ、マップとユニットが大きなサイズになったようです。
朝鮮戦争を開戦から休戦協議がはじまった時期まで扱っており、シーソーゲームのように両勢力の勢力圏が変わったことを受け、朝鮮半島全域がマップに含まれています。
再販版のマップはフルマップ4枚分。けっこうな広さになります。
(今までプレイした)朝鮮戦争を扱った代表的なゲーム
朝鮮戦争を扱った作品は今まで2作品ほどプレイしています。いずれも良作です。今回の作品は朝鮮戦争扱った作戦/戦略級作品としては3作目ということになります。
旧エポック/サンセットゲームズ「朝鮮戦争 / The Korean War」(以降、EPC/SSG版)
元は日本語名だったのですが、サンセットゲームズから再販された際、英語名になりました。故鈴木銀一郎氏デザインのゲームとして有名で、シンプルな中にもケレン味たっぷりのルールが用意されています。
千葉会では未だ時折プレイしているのを見かける名アイテムです。
「KOREA -Forgotten War-」(MMP)は、Operation Combat Series(OCS)と呼ばれる共通ルールをベースに第2次世界大戦中の戦場を扱ったシリーズの中の1作です。攻勢作戦を行うにあたっては、補給ポイントを攻勢発起点近くまで移動させ蓄積する点など、今回のゲームに通じるものがあります。1950年6月にはじまる開戦シナリオ、釜山包囲戦を扱うシナリオと2回プレイしています。
ゲームシステム
1ヘックス=12キロ
ユニット:師団単位(国連軍は連隊への分割も可能)
1ターン=1ヶ月
マップの広さに比べるとユニット数は少ないです。ユニットのスケールという点ではEPC/SSG版と同規模。さらに本ゲームは補助部隊関係がユニット化されていないため、陸上部隊のユニット数はさらに少ない印象です。
地形としては半島の東側の荒地・山岳地のあたりの道路事情が悪く、移動しにくくなっています。3ゲームとも半島東側を荒地・山岳地帯として描いているのは共通なのですが、道路事情などの解釈は各ゲーム特色があります。部隊展開も異なってくるでしょう。
独特の活性化システム
1ターンは2つのアクティブフェイズからなっています。*1
アクティブフェイズでは、イニシアティブをとったプレイヤーから交互にユニットを活性化させることになります。
両プレイヤーとも、活性するユニットがなくなったか、パスをした時点で、アクションフェイズは終了となります*2
活性化したユニットは一律3ポイントの活性化ポイントを得て、移動や戦闘、陣地構築などを行います。*3
移動や戦闘はそれぞれ一度に使うポイントによってその効果が3段階に分かれています。
移動の場合は、1ポイントだけを使った移動(戦術移動)の場合は4移動力、2ポイントの移動(作戦移動)は8移動力、また3ポイント使った場合は12移動力を使うことができます。
戦闘については、一度に投入する活性化ポイントによってその戦闘の戦闘結果を判定する際のダイスの値に対する修正値が異なってきます。例えば、活性化ポイントを3ポイントとも投入した場合は全力攻撃として戦闘結果判定時に+3のダイス修正を得ることができます。
移動・戦闘やその他のアクションの組み合わせや順番は自由なので、例えば、活性化ポイント1を移動に費やして敵ユニットに隣接させ、次に1ポイントを使い戦闘を行い、残った1ポイントでさらに移動(または再度の攻撃)といったことできます。
活性化ポイント全て3ポイントを投入し、移動をせずに攻撃を行うこともできれば、全ポイントを移動だけに使うこともまた可能です。
活性化を行う手番になったプレイヤーはダイスにより「連続して活性化できるユニット数」を決めます。2個以上のユニットを連続して活性化できる事になった場合、相手のリアクションを受けずに連続して移動や戦闘を行うことができることになります。連続してユニットを活性化できる数は最大4ユニットになっており、その数は補給状態などにより左右されます(第1~2ターンは特別の判定表が用意されています)。
活性化したユニットは活性化ポイントを使って移動・戦闘などのアクションを行うことは書きましたが、戦闘を行った場合、戦闘結果を求めるところまで実施します。後でまとめて判定というわけではありません。
戦闘結果をユニット毎に解決するわけですが、戦闘へ参加できるユニットの扱いに関するルールはよく考えられています。
活性化ユニットが攻撃を行う際に、隣接する味方ユニットがあった場合、隣接した味方ユニットはそのアクティブフェイズ中での活性化が未済・済に関わらず、攻撃に参加することができます。戦闘を行う活性化したユニットに隣接している限り、戦闘への参加回数も上限はありません。
うまく位置取りをすると同じユニットが、ひとつのアクティブフェイズ中に、何度も戦闘に参加することができるというシステムになっています。
独特の活性化システムによりプレイヤーは戦闘にあたって、活性化する順番、活性化ポイントの利用や投入量、移動した位置や戦闘への参加などを考えながら作戦をすすめていくことになります。
開戦劈頭における北朝鮮軍の猛烈な突破もこうしたゲームシステムを用いることで再現できます。
装甲戦闘
史実では緒戦、T34/85を装備した北朝鮮軍の戦車大隊は十分な対戦車能力をもたなかった韓国軍を翻弄しました。EPC/SSG版では北朝鮮軍戦車大隊の活躍をケレン味のある特別ルールで表現していましたが、本作も朝鮮戦争における戦車部隊の扱いを描いたルールが用意されています。
戦車部隊は、歩兵師団・歩兵連隊のような通常ユニットとは異なり、単体ではスタックや攻撃ができない「アセット」と呼ばれるユニットで表されています。「アセット」はいずれかの歩兵師団と行動を共にするのですが、「アセット」=装甲部隊が配置されたユニットが戦闘を行う場合、通常の戦闘解決に先立って、装甲戦闘の解決が行われます。装甲戦闘を行った結果は続く通常戦闘解決時のダイス修正となって影響します。
歩兵師団・連隊などの各ユニットは対戦車値をもっており、装甲部隊の持つ装甲戦闘力との比率から、特別に用意されている装甲戦闘結果表を用いて結果判定を行います。結果は攻撃が成功した場合はこの後に行われる通常戦闘の戦闘結果判定におけるダイスの目の修正値として得られ、失敗した場合は、装甲部隊がステップロスすることになります。
ユニット
陸上戦力は1ユニット=師団単位を基本としており、国連軍は師団を連隊単位に分割することができます、韓国軍ユニットは連隊単位になっています。
スタックは1ヘックスあたり1個師団相当のユニットとなっています。
盤面に並んだユニット数は多くはありません。砲兵部隊は登場しません。
航空ユニットは航空支援として、地上支援か交通妨害へ投入することができます。
地上支援は通常戦闘時にダイス修正を行うことができるものです。OCS版のように航空基地から発進して・・といったことは行わず、地図上のどこへでも出撃することができます。
交通妨害は、半島全域を10程度のエリアに分けて表された空域ディスプレイを用います。いずれかのエリアに配置した上で、北朝鮮軍が物資集積所に配布する補給ポイントを決める際のダイスにマイナス修正を与える、さらには集中的に配置することでそのエリア内の北朝鮮軍の道路移動を妨害するといった効果があります。北朝鮮軍にとっては非常にいやらしくボディブローのように効いてくる活用となります。
1950年9月の空域ディスプレイ。釜山包囲のために集結している北朝鮮軍がいるエリア、慶尚北道と全羅道にB-29シルエットの航空ユニットが積み上がっています。特に慶尚北道のほうは道路移動が利用できない状態になっています。
OCS版が多種多様な部隊、はては艦砲射撃を行う海軍艦艇までユニット化していたのと比べ、また比較的シンプルなゲームであるEPC/SSG版と比べても本ゲームのユニット群はシンプルに見えます。航空部隊だけはなぜか機種別にシルエットを変えるなど凝ったデザインになっています
補給システム
補給ポイントを用いた補給システムは、前述の活性化システムとあわせて独特なものになっています。
アクティブフェイズにおいて各プレイヤーは物資集積所を配置します(最大3ヶ所)。次に各集積所に配布される補給ポイントを判定します。判定は物資集積所がおかれた地域や時期・補給源の状況などによって影響され、さらに北朝鮮軍の判定にあたっては、交通妨害に投入される国連軍空軍ユニットの爆撃力によってマイナスの影響を受けます。
補給ポイントはターンを越えて繰り越すことが可能です。
攻勢作戦を発起する前にはポイントを貯める、といった操作がでてくるのです。
次に物資集積所に集積されたポイントからこのアクティブフェイズに何ポイント消費するかを決めます。
この消費する補給ポイントによって、その物資集積所から補給を受ける戦闘ユニットの攻撃力はユニット額面の攻撃力-防御力が、0.5倍から最大2倍まで変化します。
0.5倍という状況は、そのアクティブフェイズに補給ポイントが投入されなかったか、いずれの物資集積所からも距離がありすぎるユニットに適用される数値です。
第1ターンと第2ターン(1950年6月、7月)についてはこの補給ルールは適用されず、第3ターンから適用されることになります。
特に北朝鮮軍はこの影響が大きく、第3ターンの時期には韓国領内に大きく侵攻し、攻勢を続けている一方で、補給に苦しみだす様子がうまく表現されています。
独特の活性化システムや補給システムに最初は戸惑うのですが、すぐに馴れます。ユニット数が多くないことも相まって、スムーズに展開することができるようになるのです。
きりが良いので今回はここまで。次回はプレイ内容を紹介します。
コマンドマガジンのレビューでも指摘されていましたが、山間部を走る「Path(小路)」がバックの荒地や高地のカラーの中で埋没してしまっていて目立ちません。プレイ中も注意しておかないとついつい見落としがちでした。ちなみに下記は旧VG版のマップ。派手派手しいのですが、視認性は旧版のほうがよかったようです。
(つづく)