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「FROM SALERNO TO ROME」(Dissimula Edizioni)を対戦する(1/2)

1943年にはじまるイタリア半島での戦闘を扱ったキャンペーン級の「FROM SALERNO TO ROME」(Dissimula Edizioni)を対戦した。

毎ターン与えられるアクションポイントを割り振りながら活動を行いつつ、相手の手番中にも、リアクション、臨機砲撃、予備部隊による移動/戦闘といったアクションを任意に差し込めていくなど独特のシステムが魅力的なゲームだった。

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ゲームの紹介

連合軍がサレルノ他へ上陸しイタリア半島への侵攻を開始した1943年9月から、ローマが解放された1944年6月までを扱う。

1ターン=1ヶ月、1ユニット=大隊~連隊(連合軍は連隊単位、枢軸側は守備側ということもあり小規模なユニットが多い)。他に海上ユニット、航空戦力はマーカーで登場。

 

アクションポイントにより師団単位または軍団単位に活性化させる

両軍には毎ターン、アクションポイント(AP)が与えられる。連合軍側はアメリカ軍とイギリス軍と別のAPとなっている。

両軍は回復-移動-戦闘といったアクションを行うことができるインパルスと呼ばれる手順を交互に行うのだが、ひとつのターンの中で何回インパルスが行なわれることになるかは、APの投入の仕方によってくる。APは次のターンには繰り越すことはできないため、APを使いきるまでインパルスが繰り返されることになる。数回のインパルスの中で集中してポイントを消費するように活動させることもできれば、守備的に消費を避け、長く細く使っていくことも考えられる。
各インパルスでは、より多くのAPを消費することを計画したプレイヤーが先攻となるので、各プレイヤーはそのターンにどのようにAPを消費するのかは重要な考慮点になる。戦場でイニシアティブを取るためには、より多いAPを投入する必要があるのだ。

APの消費量は活動種類によって異なるが、連合軍においても、全軍団・全師団を毎ターンフルに活性化させるだけの余裕がある訳ではない。
1個師団を活性化させるためのアクションポイントは1、1個軍団であればその軍団の配下の師団数+1のポイントが必要になる。軍団単位に活性化させると余計にポイントが必要になることから、効率が悪いように見えるが、軍団毎に活性化させることで、軍団配下の師団(だいたい配下にそれぞれ3~4個の連隊ユニット+αの支援部隊がある)同士による共同攻撃が可能となったり、同時に活性化させることができる独立部隊の数が増加するといった特典があるのだ。

ドイツ、アメリカ、イギリス各国軍はそれぞれ複数個の軍団を配下に抱えるため、活性化単位は悩むことになる。

ターンの中でどのタイミング(どのインパルス)でポイントを使っていくのか、というAPを使うタイミングもあいまって、AP運用はこのゲームの特徴となっている。

 

ターン進行表と各ターンで受け取ることができるアクションポイントの規模。

 

相手の手番中でも「リアクション」「臨機砲撃」「予備部隊による移動/戦闘」が随時(!)可能

相手方のプレイヤーターン中に、リアクションフェイズということで自軍の移動や戦闘を行うことができるフェイズが差し込まれた手順を行うゲームは少なくないが、本ゲームはそれを、相手の手番中に相手のあるユニットの移動が行われた直後、差し込む形で実施可能だったり(「リアクション」「予備部隊による移動/戦闘」)、また移動途中といったタイミングで宣言することが可能だったりする(「臨機砲撃」)。

明確に独立した「リアクションフェイズ」といったものがある訳ではなく、相手のアクション中にも注視しておき適当なタイミングで宣言する。相手方のアクション中も、常に注意を払っておかなければならない、ということになる。さらには本ゲームは前述した通り、活性化したユニット毎に移動や戦闘を行うため、1回のラウンドの中で、相手の移動や戦闘が活性化された範囲や順番の中で行なわれる中、こちら側の「リアクション」「臨機砲撃」「予備移動/戦闘」などが随時挟まれるという進行になるのだ。

「リアクション」は、敵ユニットが「移動」や「戦闘後前進」を行った直後にリアクション値を持ったユニットにより行うことができる移動だ。枢軸軍の部隊がリアクション値を持っていることが多く、通常の移動力の半分程度の数値になっている。

「臨機砲撃」は敵ユニットが自軍ユニットに隣接し、かつ砲兵ユニットの射程内になるヘックスに移動してきた場合に行うことができる砲撃となる。これにより相手側が攻撃ポジションにつこうとしたそのタイミングで砲撃を行うことができ、結果によっては攻撃をできなくするといった効果が期待できる。
これは敵ユニットの移動途中にも行うことができるという、戦術級ゲームによくある臨機射撃に似たルールになっている。

「予備移動/戦闘」は、予め「予備(Reserve)」として指定された部隊が、敵のアクション中に敵ユニットの移動や戦闘が終了したタイミングで、活性化を宣言し、移動や戦闘を行うことができるというもの。「予備」を活性化することができるタイミングは、相手のすべてのユニットの移動や戦闘が終了した時点である必要はなく、いわば相手の活動途中に宣言することで実施できるというもの。活性化を宣言された「予備」の移動や戦闘が終わると、再び相手の移動や戦闘が再開することになる。
なお「予備」の指定のためにはその師団ないし軍団を活性化させる必要がある。

 

作戦戦術級的な要素も・・

装甲部隊ユニットには「機甲ボーナス」という戦闘解決時のダイス修正値を持っている。装甲部隊ユニットは主装備の車輌が描かれている。
連合軍側の戦車部隊の「機甲ボーナス」はほぼ「+1」でしかないが、枢軸側には「+2」の数値が与えられている部隊が少なくない。

ユニットデザインという点では、装甲・機甲部隊ユニットの車輌が部隊によってカラーリングが異なって描かれていること。特に枢軸軍や一部のイギリス戦車にいたっては迷彩塗装までデザインされている。
砲兵部隊も主要装備の砲のシルエットのデザインになっているが燃える。自走榴弾砲装備の部隊もあれば、枢軸軍にはネーベルヴァッフェル装備の部隊があったりする。

装甲部隊ユニットに与えられるボーナス効果として、「タンクショック」もある。平地での戦闘において装甲部隊がいない相手スタックに装甲部隊を含んだスタックで攻撃した場合、スタック(!)の戦闘力が2倍になるというもの。裸で平地ヘックスにスタックした歩兵連隊からなるスタックなど一番のカモになるルールだ。

 

まだまだ盛りだくさんの仕掛け

さきほどの活性化の説明の際の漏らしていたが、連合・枢軸の両軍とも所属を超えて復数の部隊を同時に活性化させることができる「緊急活性化」というルールもある。枢軸側の「緊急活性化」には「KG(戦闘団:カンペグルッペ)」、連合軍側の場合は「TF(タスクフォース)」と名付けられている。史実のKGやTFと若干ニュアンスは異なるが、まぁ許容範囲かもしれない。

イタリア戦線の特徴として大小の上陸作戦が実施されている。
連合軍は、ゲーム中、1回だけ仕様できる「大規模上陸作戦」と、第2ターン以降、随時実施できる「小規模上陸作戦」を行うことができる。
大規模上陸作戦は最大2個師団の上陸を行うことができる。小規模上陸作戦の場合は、っ最大1個のユニットとなる。

イタリア戦線に配備されノルマンディ作戦のためにイギリス本島に引き抜かれるまでアメリカ軍第82空挺師団がローマへの空挺降下作戦を企図したように、「空挺降下」も可能だ。

特殊ユニットとして、イタリア戦線につきものの「山岳兵」、山間地の補給路の設定に使う「騾馬:ラバ」ユニットなんていうものも登場する。日系人部隊として有名な第100大隊は戦闘序列上、独立部隊として登場する。通常の歩兵部隊との性能差はない。ただ他に大隊規模の独立した歩兵部隊は登場していないことからすると優遇されているともいえる。同じく日系人で組織された有名な第442連隊戦闘団は登場しない(見つけることはできなかった。)。

PROTOTYPE components: some units and counters

 

イタリア戦線

実は今回、イタリア戦線もははじめてであることに気づいた。

はじめてウォーゲームを買った近所のスーパーの玩具売場にはアバロンヒルの「第三帝国」と「アンツィオ」があった。値段が同じであれば「第三帝国」を選ぶよね!
以来、「アンツィオ」は気になるゲームであり続けたがいまだにプレイする機会を得ていない。

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閑話休題

 

1943年7月24日

ムッソリーニ辞職

8月17日

連合軍、シチリア島解放

9月

3日 イタリア半島の先端に上陸(ベイタウン作戦)

8日 バドリオ政権が休戦を表明

9日 サレルノ上陸(アヴァランチ作戦)

9日 タラント上陸(スラップスティック作戦)

9月下旬

ドイツ軍は、イタリア軍武装解除し、イタリア半島をほぼ占領する

連合軍は、第82空挺師団をローマに降下させることを計画するが、ドイツ軍の展開や補給等を理由に作戦中止

イタリア無条件降伏

スコルツェニーは、ムッソリーニを救出

イタリア北部にドイツによる傀儡政権樹立

1944年1月

17日 連合軍はグスタフ線への攻撃を開始

22日 アンツィオ上陸作戦(シングル作戦)

2月

連合軍は、カッシーノへの攻撃を開始。戦線は5月まで膠着

5月

カッシーノ陥落

カイザー線突破

6月

ローマ陥落

 

 

(つづく)