Their Finest Hour -歴史・ミリタリー・ウォーゲーム/歴史ゲーム -

歴史、ミリタリー、ウォーゲーム/歴史ゲーム/ボードゲーム

「REBEL FURY」(GMT Games)を対戦する【2回戦】チカマウガ(Chickamauga)の戦い

南北戦争をテーマにした6つのシナリオが収録された作戦級ゲーム「REBEL FURY」(GMT Games)を対戦しました。

一定の条件はありますが同一のユニットが同じターンの中で、何度も移動や攻撃を実施できるというユニークなルールを採用しています。
前回対戦では市外の丘陵地に構築された陣地を巡る限定的な戦場が舞台だっため、本作のユニークな移動システムを活かせていないのではないかという議論がありました。今回は広い戦場に舞台にしたシナリオとして、テネシー州チャタヌーガ(Chattanooga)南方で1863年9月に発生した「チカマウガの戦い」を扱ったシナリオを選んでいます。

 

ゲームシステムはこちらを参照してください。

 


 

背景

チカマウガの戦いは、南北戦争が始まって3年目の1863年9月18日から20日にかけて、テネシー州の都市チャタヌーガ市*1周辺にて発生しました。ローズクランズ将軍が指揮する北軍はチャタヌーガ市周辺から南軍を追い出すことを目指し、ブラッグ将軍率いる南軍を攻撃します。チャタヌーガは、南軍の本拠地アトランタをはじめ南方への進攻路の入り口になると考えられていたのです。

結果、北軍は敗退し、両軍の死傷者は、戦争を通してゲティスバーグの戦いの戦いの次に多い激戦となります。勝利した南軍は北軍を戦場から追い出すことには成功しましたが、北軍軍団の殲滅や東テネシーの南軍支配の回復というう目的は達成できず、さらには想定以上の損害を被りました。

シナリオは、9月18日午後にはじまり、20日午後までの全5ターンになっています。

 

勝利条件と初期配置の状況

南軍を担当。

点線は北軍(青色のライン)、南軍(赤色のライン)の初期配置状況を表します。初期配置位置は指定です。

北軍は14個ユニット、3個分遣隊。南軍は13個ユニットとほぼ拮抗しています。

北軍は、ゲーム終了時点でチャタヌーガから、青色実線で示した連絡線を南軍の部隊から妨害されない状態を確保する。同様に南軍は、ゲーム終了時に赤色実線の連絡線を北軍の部隊から妨害されない状態を確保することが勝利条件になります。

 

この時点で正直、南軍が勝利条件を達成するのは難しいと考えていました。確保しなければならない連絡線は長く、最終ターン終了時に連絡線の付近からすべての北軍ユニットを排除するのは難しいのではないか。さらには連絡線の起点となるチャタヌーガ市街ヘックスには、小規模とはいえ(分遣隊)、北軍ユニットが存在しているのです。南軍の勝利のためには、チャタヌーガ市街を制圧して、さらにマップ左右に伸びる連絡線に北軍ユニットを近づけないということが必要となるのです。それを5ターンの間に実現しなければなりません。

 

ゲームスタート時、両軍とも戦闘モードの司令官ユニットを1個ずつ有しています。
戦闘モードの指揮範囲は5ヘックス(上図の点線円内)。指揮範囲内にいる自軍ユニットは自由に、何度でも移動を実施できるのですが、指揮範囲外にいるユニットが移動する場合は、自軍の司令官ユニットの指揮範囲内に向かって移動することしかできません。

両軍ともマップ全体に広く展開しているところからはじまりますが、自由に機動できる訳ではなく、指揮範囲外にいる部隊については、移動しないか、移動する場合は自軍司令官の指揮範囲に向かって移動するしかありません。

せっかくマップが広いにもかかわらず、戦場が限定されていまうことになります。

また、戦闘システムの関係で、戦闘を起こす場合、相手に対して局所的に数的有利を確保する必要があります。

 

初期配置の状況。
手前の明灰色のユニットが南軍、奥側の水色のユニットが北軍です。
マップのほとんどは林ヘックスで覆われているため、移動は道路に沿ったものになってしまいます(道路ヘックスを介さず、林ヘックスにはいったユニットは移動モードから戦闘モードになる必要があり、移動力が1に減少します)。

 

プレイ

第1ターン。両軍の司令官ユニットはモード変更はできないため、戦闘モードのままです。指揮範囲は5ヘックスに限られます。
スタート時点では広く展開していた両軍ですが、交互にユニットを移動させると、両軍とも局所的な数的有利を実現するため、自軍の司令官の周辺に集結していくことになります。

 

移動フェイズでは両軍は交互に1ユニットずつ移動させますが、敵ユニットのZOCのにはいったところでそれ以上は移動できなくなります。
両軍がユニットをにじり寄らせたところで、上図のような状況になりました。
南軍は右翼側はユニットが厚いのですが、左翼側は完全に北軍にユニット数で負けています。

部隊数の比較で北軍は、南軍に比べ1個ユニット、さらに分遣隊2個ユニット分も含めると3ユニット分数に勝っていました。両軍の部隊が近接していたことから先に戦線が確定した右端から順番に並べていくと両軍ユニットの数の差が南軍左翼にかけて表出した状況となったのです。

 

第1ターン 戦闘フェイズ終了時の状況。
林ヘックスでの戦闘は通常のヘックスに比べ、ユニット除去の確率があがります。
このターン、南軍は4個ユニット除去、北軍は2個ユニット除去+2個分遣隊除去となります。残存しているユニットは、北軍12個ユニット、南軍9個となりました。

練度修正+地形修正+砲撃支援+同一軍団効果+(指揮修正)などを加えていくと、両軍とも修正値は最大レベルに近づき、差をつけることが難しくなります。
本マップの大部分を覆った林ヘックスでは平地ヘックスと比べると、ユニット後退の結果の場合もユニット除去される確率が増えることから、派手にユニット除去が起こる可能性がでてくるのです。
ダイスの目による振り幅の大きな戦闘結果に、第1ターン南軍は、全軍の3分の1にあたる4ユニット除去に至りました。

 

第2ターン。
両軍とも司令部ユニットのモード変換に失敗し、前ターンに続き戦闘モードのままになります。仮にモード変更に成功していた場合、指揮範囲は12ヘックスとなり、ユニットが自由に動くことができる範囲が6倍以上になったのですが、モード変換に失敗したことから、前ターンに引き続き、狭い範囲での活動になってしまいます。

南軍は後方からの増援が到着したことでユニット数の差はいくらかは薄まっていますが、まだ前線には間に合っていません。

 

第3ターン 移動フェイズ終了時。
前線の戦力はほぼ拮抗し、多少の押し合いはあっても大勢は変わりません。
結果、連絡線の確保はもちろんチャタヌーガ市街は遠い状態です。

 

第4ターン。南軍はそれまで率いていたブラッグ将軍が退場し、代わりに2人の司令官ユニットが登場します。ここにきてはじめてより広い戦場を指揮範囲に収めることができるようになったのです。
ただユニット数は前ターンから大きく減少していることから、北軍を押し返すだけの力はありませんでした。

両軍とも連絡線の確保は難しく、また除去ユニット数の差から北軍の勝利とすることで協議終了しました。

 

 

感想戦

本作のユニークなシステムを期待して挑んだシナリオでしたが、想像のような自由な形にはなりませんでした。林ヘックスが多いマップや、司令官ユニットの数が限定されていたことが原因ですが、いくつか気になった点を書きます。

■ 移動範囲が限定され、戦場がこじんまりとしたものになった

司令官ユニットの指揮範囲の中であれば、自由に(何度でも)移動できるのですが、指揮範囲外になったとたんにその方向は限定されてしまいます。今回のシナリオで登場した司令官ユニットは両軍とも1ユニットだけであり、さらに2ターン目には司令部がモード変換に失敗したことにより指揮範囲を拡大できず、戦場が限定的になってしまいました。

マップは広く、初期配置では兵力が広く展開していたにもかかわらず、戦場はこじんまりとしてしまいました。

マップ全体を林ヘックスが覆っていたことから、自由に移動できた場合もその範囲は道路ヘックスにならざるを得なかった点もあります。

■ ダイス結果による戦闘結果の振れ幅が大きく、コントロールする術が少ない

ダイス結果による戦闘結果の振れ幅が大きい点もきになりました。対策としてゲーム中ではより有利なシフト(砲撃支援、同一軍団効果などなど)を得られるように部隊を集め、攻撃を集中することがありますが、両軍とも打てる手は打ち尽くすことから、結局のところシフトが上限に近くなり、両軍の差がなくなります。
各ユニットの戦力が両軍ともすべてのユニットで同一であることから(部隊による錬度効果の差はある)、局地的なユニット数の数的有利を実現するために、ますます部隊ユニットの集中化が進み、戦場が狭い範囲に集中してしまいます。

結果、ダイス結果に任せる必要があり、運否天賦のレベルに至ってしまいます。

 

ゲームシステムとしては有望だと思うのですが、シナリオレベルではうまくいっていないようにも感じました。

(終わり)

 

 

 

 

*1:チャタヌーガChattanooga)は、アメリカ合衆国テネシー州の都市。ハミルトン郡の郡庁所在地である。人口は18万1099人(2020年)テネシー川東岸に位置する商工業、及び観光都市である。市名は、この地に先住していたインディアン部族のチェロキー族の言葉で「岩が迫り来る場所」という意味である。

チャタヌーガというと、グレン・ミラー楽団の曲で、「Chattanooga Chu Chu」と歌っているミドルテンポの平和な鉄道の曲が思い浮かぶのですが、曲名もそのまま「Chattanooga Chu Chu」という題名でした。