1918年、ロシア革命を受けて発生したフィンランド内戦を扱った「HELSINKI 1918: GERMAN INTERVENTION IN THE FINISH CIVIL WAR」(U&P GAMES)を対戦した。
メインマップにはヘルシンキ郊外から市街地中心部が収められており、郊外に上陸した1個師団規模のドイツ軍はヘルシンキ市街に攻め上がる。守るのは赤色革命を画策する労働者農民階層からなる赤衛軍。さらに市街地には反赤色革命派として資本家・地主層の支持を集める白衛軍がゲリラ的に登場する。
ゲームは実際に市街戦が発生した1918年4月11日から13日を扱っている。
1ヘックス=300メートル、時間単位=15分(夜間は1時間)、1ユニット=中隊規模とスケールだけを見ると作戦戦術級クラスとなっている。
ゲームシステム
プレイヤーの数
2人プレイの場合は、赤衛軍対ドイツ軍・白衛軍となるが、白衛軍を独立させて3人プレイとすることも可能。
白衛軍は他の2勢力と比べると、イニシアティブを取る機会が少ないためアクションを起こしづらく、またユニット数も少ない。いわば出番が少ない。また、使えるアクションが他の2勢力とは異なるなど、トリッキーな陣営となっている。
イニシアティブシステム
このゲームは全体的にルールの難易度は決して高くはないのだが、特徴的なルールが何点かある。イニシアティブを用いたゲーム進行の処理はそのひとつである。
ゲームの基本は次の流れになる。
- ダイスによりイニシアティブを決める
- イニシアティブをとった勢力が、自分のアクションポイント数を決める
- イニシアティブをとった勢力が、アクションを実施する。
- 1.に戻って次のイニシアティブを決める
1.にあるイニシアティブ決定のダイス(1D6)を振るのは赤衛軍とドイツ軍。
大きな目を出したほうがイニシアティブを取ることになる。直前のイニシアティブを取っていた方は「-1」の修正を受けるため、直前のイニシアティブを取っていなかった側が有利にはなる。ダイスの目で負け続ける限りは”ずっと相手のアクションが続く”ことになる。
2人プレイの場合、ドイツ軍プレイヤーが白衛軍を操作するが、イニシアティブとその後のアクションにおいてドイツ軍と白衛軍は別個に扱うことになる。
白衛軍がイニシアティブを取るにはどうするのかというと、赤衛軍とドイツ軍のダイスの目が同じ目だった場合が該当する。
白衛軍はイニシアティブをとれないうちは何もできないが、赤衛軍がイニシアティブを取ったタイミングに、カードのドローだけは行うことができる。
カードのドローは、赤衛軍はドイツ軍がイニシアティブを取った際に1枚実施、白衛軍は赤衛軍がイニシアティブをとった際に1枚実施。ドイツ軍はアクションポイントを消費することにより実施、となっている。赤衛軍と白衛軍のドローはプレイ中に忘れがちなので注意が必要。
アクションポイント数の決め方
アクションポイントはイニシアティブを決定するダイスの目の数分となる。赤衛軍だけは初日の間はダイスの目をそのまま使うのではなく、その時のドイツ軍のダイスの目との差分の数に限定される。
白衛軍については別途用意された判定表を用いてアクションポイント決めるが、1~3ポイントと他2勢力が得ることができるだろうポイント数よりも小さいものになる。
こうして決められたアクションポイントの数を消費するようにアクションを行い、アクションポイントがゼロになったところで、次のイニシアティブを決めるダイスを振ることになる。
時間の進行
ユニークなのは時間の進行で、ドイツ軍の場合は、イニシアティブを取って1アクションポイント消費すると、1時間単位(日中:15分、夜間:1時間)進行するのに対し、赤衛軍または白衛軍がイニシアティブをとってアクションを行った場合は、時間は進行しない。
例えばドイツ軍がイニシアティブを決めるダイスで赤衛軍よりも大きく、「5」を出し、イニシアティブをとった場合、ドイツ軍のアクションポイントは「5」となる。
この場合、5個のアクションを実施できることになり、1アクションポイントごとに1時間単位進むので、日中の場合は、今回のイニシアティブの間で1時間15分時間が進行することになる。
ゲームは1918年4月11日15時にはじまり、13日の夕刻に最終ターンを迎える。日の入りは20時、日の出は6時なのでその間、日中は15分単位、夜間は1時間毎に時間単位ができるが、その総計数がゲーム中にドイツ軍が実行できるアクション数となる(実際は、全滅したユニット毎に最終ターンが繰り上がるので時間数は若干短くなる)。
赤衛軍と白衛軍についてはアクションを実施しても時間は進まないため、ゲーム中に実施できるアクション数の総合計は可変と言える*1。
アクションの種類
アクションポイントを消費して実施するアクションの種類は「移動」「戦闘」の他、勢力毎に異なったメニュとなっている。特に特徴的な白衛軍について書くと「移動」「戦闘」の他は、
- 遊撃隊の編成・・・ダイスにより成功すると市街地に配置することができる。数に上限があり、赤衛軍に逮捕*2されると収監?され、再登場はできなくなる
- 部隊ユニットの編成・・・遊撃隊が存在するヘックスにてダイスによるチェックの上、発生させることができる。発生すると通常の戦闘ユニットとなる。
白衛軍はダイスチェックに成功すると、市街地ヘックスに突然現れることになる。赤衛軍からすると、移動や戦闘時の後退チェック時などで悪影響があるため、白衛軍が湧き始めると早めに対処をしておく必要があるだろう。
白衛軍の「遊撃隊」と「部隊ユニット」の関係は以前にプレイした「ギリシャ内戦」での反政府組織側のユニットの処理に似ている。
ユニット
細長い木駒で表されるのは部隊ユニット。1個で中隊を表す。
1ヘックスあたりのスタック制限は3個。兵種は言及されていないが歩兵ということだろう。砲兵や機関銃の部隊は戦闘修正を行うことができるアクションカードのタイトルとして登場する。
ゲームに登場する3勢力で木駒の戦闘や移動能力等のスペックの差はない。このあたりの省略の仕方はボードゲーム寄りの整理という印象。
キューブ型の木駒は、赤衛軍・ドイツ軍については司令部を表す(白衛軍のキューブは「遊撃隊」)。史実でのドイツ軍は1個師団規模だったということなので、ドイツ軍の司令部ユニットは、その数から連隊本部/連隊司令部ということになるだろう(ゲーム中、ドイツ軍の司令部ユニットは3個登場する)。
マップにはおなじみにヘックスが印刷されているが、ヘックスサイズが大きく、木駒ユニットを置くと兵棋演習のようで見栄えがする。
独特なのはドイツ軍の司令部ユニット(キューブ)の配置方法で、部隊ユニットにようにヘックスの中に配置するのではなく、ヘックスのいずれかの頂点に配置する。
ヘックスの頂点は周囲3個のヘックスに接してることになるが、この司令部ユニットが配置された頂点に接した周囲3ヘックスがこの司令部の「直接指揮範囲」*3となる。
アクションポイントは指示を出した部隊ユニット毎に1ポイント消費するが、直接指揮範囲の同一のヘックスに復数のユニットが存在する場合は、ユニット数毎にポイントを消費するのではなく、まとめて1ポイントだけでアクションを起こすことができる。
効率よくアクションを起こしていくために、部隊ユニットは司令部ユニットに対して「直接指揮範囲」の中にいることが重要となる。
ゲーム中、ドイツ軍の戦線は刻々と変わっていくため、ドイツ軍プレイヤーは部隊ユニットと司令部ユニットの歩調があうように移動していく必要がある。
なお赤衛軍の司令部ユニットは移動できず、ドイツ軍とは異なり、ヘックスの中に配置する。
ドイツ軍(黒色)、赤衛軍(赤色)、白衛軍(白色)それぞれのユニット。
部隊ユニット(細長い木駒)は戦闘時には一時的に前後の方向が生じる。
ドイツ軍の司令部ユニット(黒いキューブ)、白衛軍の遊撃隊ユニット(白いキューブ)がヘックスの頂点位置に配置されているのは注目。
赤い斜線部があるヘックスが市街地。市街地ではドイツ軍と白衛軍の移動力は1(赤衛軍は2)となり市街地に進入すると機動力が失われる(通常平地で移動力は3、市街地以外での道路移動は4)。
白衛軍は遊撃隊(キューブ型の木駒)が先に発生し、遊撃隊に隣接したヘックスで部隊ユニット(細長い木駒)が発生する。
移動
ZOC(Zone of Control:支配地域)はない。
移動力という考え方はなく若干独特なルールになっているが、わざわざそのようなルールにした理由がよくわからないし、結果的には一般的なゲームと同様の効果なので詳しい説明は割愛する。
司令部ユニット、部隊ユニットとも、平地は3ヘックス、林は2ヘックス、道路か鉄道ヘックスだけでの移動であれば4ヘックス移動できると認識していればよい。プレイにおいて関係あるのは市街地の移動で、市街地は移動においては道路とはみなされず、ドイツ軍と白衛軍は1ヘックス、赤衛軍は2ヘックス移動が可能となっている。ただドイツ軍と白衛軍の場合、移動先のヘックスに友軍ユニットが存在する場合は、もう1ヘックス、合計2ヘックス移動できるという”馬跳び”のようなルールがある。
戦闘
戦闘は相手ヘックスに移動するかすでに相手と同じヘックスにいる場合に発生する。
戦闘解決はアクションの途中で発生するので、例えば移動して相手ヘックスにはいった時点で即解決することになる(一般的な作戦級ゲームにおける、オーバーラン攻撃のような解決タイミング)。
戦闘時、攻撃側は攻撃に参加したユニット数分の個数のダイスを振り、もっとも大きな目を採用する。防御側はそのヘックスに何個のユニットがいたとしても振るダイスは1個となるが、代わりに地形修正により地形修正値とダイスの目を比べて大きな数を判定に用いる。
攻撃側の数値と防御側の数値を比べて大きな数値を出したほうが勝者となり、数値の差分の数値が効果となる(差がゼロであれば効果なし、差が1~2の場合は敗者側の後退、等)。
この数値の比較の際にカードによる効果により数値のプラス・マイナスが発生する。また防御側の後方側のヘックスに攻撃側の他ユニットがいた場合は後退が妨げられることによる悪影響ということで防御側に不利な修正が与えられる。簡便ながら側面攻撃がルール化されている。
盤外マップ
ヘルシンキ市街とその近郊のメインマップの他、盤外として2か所のミニマップがあり、そのミニマップでの戦況の結果次第でメインマップに影響を与える。
ひとつはモイラー支隊という1個大隊規模のドイツ軍部隊を表し、ダイス判定の結果により市街地の港側に敵前上陸を行ってくる。
もうひとつはロシアからの鉄道の結節点(ティックリラ)を巡る戦闘で、ここをドイツ軍に抑えられるとメインマップ上の赤衛軍のモラル等に影響が出る。
勝利条件
ヘルシンキ市街地に5か所の赤衛軍拠点ヘックスがあり、その全てを占拠することでドイツ軍・白衛軍は勝利する。ドイツ軍と白衛軍はどちらがどれだけ占拠するかによって両者の勝利判定が異なる。
赤衛軍はこの拠点の確保数により勝敗が判定される。
ルール全般
イニシアティブの考え方やシーケンス、移動の考え方、戦闘処理など独特のルールがあるが、全般には難易度は高くない。最初はとまどうところが少なくないが、慣れるとスムーズに進行する。
スケールとして作戦戦術級とは言ったものの、射程の概念や砲撃ルールなどがある訳でもないため、実質は独特な作戦級と言って良い。
(続く)