「REBEL FURY」(GMT Games)は、南北戦争の複数の会戦を扱った作戦級ゲームです。ユニークなシステムのため、最初のとっつきにくさは否めませんが、プレイアビリティも高く、取り組みがいがある作品です。
歴史的背景
フレデリックスバーグの戦いは1862年12月11日から15日にかけてバージニア州フレデリックスバーグで戦われた南北戦争の初期の戦いであり、南軍の最大の勝利の 1 つと評価されています。
アンブローズ・バーンサイド少将率いるポトマック軍(北軍)(106,000人)は、フレデリックバーグ郊外のメアリーズ高地に設けられたロバート・E・リー将軍率いる北バージニア軍(南軍)(72,500人)の塹壕線に対し攻撃を実施しました。
バーンサイドは南軍陣地に対して次々と無謀な正面攻撃を実施したことで北軍は膨大な損害を受けます。最終的に北軍の死傷者は南軍の2倍に達し敗走しました。作戦後、責任をとりバーンサイドは司令官を解任されました。
フレデリックスバーグの戦いにおけるハンフリー師団の勇敢な突撃 :Alfred Waud(米国議会図書館所蔵)
ポトマック軍のアンドリュー・ハンフリーズ将軍が率いた師団は、それまでの攻撃で負傷した兵士たちをかきわけ、最後の攻撃をサンケンロードに対して行うが、精鋭の南軍兵士によって激しく攻撃された。
フレデリックスバーグの戦い:Currier & Ives 1862(アメリカ議会図書館所蔵)
連合軍の兵士たちがメアリーズ高地に向かって行進する様子を描いています。タイトルの下のキャプションには次のように書かれています。「この戦いで、ポトマック軍の獅子のような心を持つ兵士たちは敵に立ち向かう不屈の勇気を示しました。11日、ラパハノック川の渡河を強行し、潜んだ反逆者たちからの殺人的な銃火を浴びながらも12日にはフレデリックスバーグを占領しました。13日の朝、兵士たちは敵の塹壕に対して必死の勇気をもって突撃します。数千の兵たちが戦死するか傷つき、恐るべき戦闘は夜が訪れるまで続きました。塹壕に隠れた敵によって押し返されたとしても、北軍の兵士たちは、彼らが最も誇り高い勝利を収めた日々と同じように、南軍の裏切り者たちに立ち向かう準備ができています。」(一部意訳)
フレデリックスバーグの戦いで使用されたラパハノック川にかかる舟橋(撮影は1863年)
プレイ
シナリオはフレデリックスバーグの西側に南北に延びるメアリーズ高地の稜線沿いに陣地を構築していた南軍に対して実施された北軍の攻撃を扱っています。
12月12日午後から13日にかけて、シナリオターン数は3ターンです。
南軍を担当することになりました。
初期配置
初期配置の状況。マップは上方が北を指しています。
写真右上に展開している水色ユニットが北軍、フレデリックスバーグの西側に南北に延びるメアリーズ高地沿いに展開している青灰色のユニットが南軍です。
南軍は高地の稜線沿いに塹壕を設置しています(ユニットに隠れている分もありますが、濃い目の茶色のラインが塹壕を表します)。
メアリーズ高地の左上側に並んだ薄赤色でマーキングしたヘックス(南軍の塹壕になっている)を占拠することで北軍は勝利します。北側の塹壕ヘックスが対象で、南側の塹壕は勝敗には関係しないことになります。
ラパハノック川の東岸から位置する北軍ユニットは、川に設置されたいくつかの舟橋(ポントゥーン)を経由して渡河することになります。
第1ターン移動フェイズ
移動フェイズでは1ユニットずつ交互にユニットを移動させます。
ユニットが司令部ユニットの指揮範囲内にいる限りは敵ZOCにはいって移動できなくなるか、パスを宣言するまで、何度でもユニットを活性化できます。
南軍としては塹壕線の防衛に穴が空かないようにすること、また塹壕線が切れている南軍右翼の翼端から回り込まれないように移動を塞ぐことを目指します。
一方の北軍は東岸にいる部隊を全て渡河させ、戦闘位置につけることを目指しています。総攻撃は次のターンを想定しているようです。
移動途中もスタック制限の制約が課せられるため、移動順には注意を払う必要があります。特にルートが限定される浮舟橋を渡す必要がある北軍は特にそうです。
第2ターン 移動フェイズ
第2ターンの移動フェイズ終了時の状況です。
北軍は、勝利条件ヘックスにあたる西翼(写真左側)から中央部にかけて南軍が守る塹壕戦に戦闘を挑むため前進しますが、東翼は後退します。東翼では逆に、南軍が塹壕を出て、北軍に向かって前進しました。
第2ターン 戦闘フェイズ
戦闘フェイズ終了時の状況。
敵ユニットが配置された塹壕ヘックスに隣接したユニットはマストアタックになります。それ以外の地形に位置する敵ユニットに対する攻撃は任意です。
戦闘も移動と同様に1ユニットずつ解決されます。ユニークなのは、同じユニットが何度でも攻撃を行うことができ、防御側も何度も攻撃を受けることがありえることです。
北軍は塹壕線に隣接させたユニットにより攻撃を実施しますが、塹壕の地形効果が厳しくほとんど損害を与えられません。いくつかのヘックスでは防御側ユニットの後退に成功しますが、両隣のヘックスにいる南軍師団の攻撃によりすぐに奪還されることが続きます。
後でわかったのですが、ここで何点かルールを間違えていました。
塹壕の中にいる防御ユニットは、地形効果で損害を受けにくい反面、損害が出た場合は、後退ではなく除去などに変わる1. 防御側ユニットが塹壕内にいる場合、「Attack Result Table」の結果の適用に
あたって、特別対応となります。
- 「攻撃側後退」の場合、追加で赤ダイスを振りその結果により、「攻撃側潰走(Blown)」または「攻撃側後退」となる
- 「防御側後退」の場合、防御側ユニットは除去
- 「防御側潰走(Blown)」の場合、防御側ユニットは除去
2. 塹壕ヘックスにいるユニットは、隣接する塹壕ヘックスの塹壕内に
敵ユニットが存在する場合は、塹壕の中にはいることはできません
(塹壕の地形効果を得ることができない)。
第3ターン 移動フェイズ
北軍は南軍陣地に対する再度の攻撃位置につきます。
上記のとおり防御側に”後退”を示す損害が出た場合の対応については誤りがあったのですが、そもそものところで陣地にこもった南軍に対していずれかの損害を与えるのがなかなか難しいのです。
勝利条件ヘックスを全て占拠するという、北軍の勝利条件はそもそも達成できないのではないか?という話が起きました。
第3ターン 戦闘フェイズ
戦闘フェイズ終了時の状況。
感想戦
塹壕内ユニットに対する損害反映を正確にしたとすると防御側ユニットはもう少し除去されることになったのではないかと考えられます。
ただそれらが反映されたとしても、シナリオとしては北軍が勝利条件を満たすことは難しいのではないかという印象です。史実通りだとするとそのとおりですが、その場合は勝利条件をどうにかしたほうがよかったかもしれません。
ゲーム全体としては冒頭に書いた通りです。
ユニークなシステムのため、最初のとっつきにくさは否めませんが、プレイアビリティも高く、取り組みがいがある作品です。
今回は戦闘領域が限定された戦いだったため、次回はより作戦範囲が広いシナリオで試してみたいとものです。「移動回数制限無し」というシステムが作戦範囲が広い戦いの場合にどのようになるのか検証したいと考えます。
無駄な移動の実施回数の制限について
本シナリオでのユニット数は両軍で大きな差はありません。
一方で南軍は初期配置状態ですでに塹壕ヘックスに配置されていたユニットも少なくなかったことから、必要な移動は北軍より先に終わります。ここで単純にパスを宣言するとそれ以降の移動はできなくなることから、北軍がその後どのような移動を行った場合も対応できなくなります。
そうすると、自軍が必要な移動は終了していたとしても、相手もパスを実施するまで、自軍もパスを宣言せずに、例えば予備で後方に待機させている騎兵旅団ユニットなどを使って本来は必要がない移動を何度も繰り返すことになりかねません。
前記事でも紹介したとおり、そのような”無駄”な移動は連続して実施する回数制限が設けられています。
この点は本作のゲームシステム(冒頭に書いたとおり、全体としてはユニークで素晴らしいシステムなのですが)の一番の疑問点、スマートではないと感じられたポイントですね。みなさんのご意見も聞きたいところです。
備忘:南北戦争時代の砲兵運用について
ナポレオン時代の大砲は射程距離が短く、また通信手段がなかったことから後世の砲兵部隊のように戦線の後方から長距離で射撃を行うのではなく、大砲自体を最前線に並べて敵に対して直接射撃を行っていたことは、ナポレオン時代の戦術級ゲーム(例: Welington's Victory、Ney VS Welington など)をプレイしてみれば理解できます。
本ゲームの砲兵戦力の反映は2種類あり、ひとつはマップ上のどこで発生した戦闘でも適用できる「砲撃支援」と、決められた範囲でのみ適用できる「重砲支援」とがあります。いずれも「Battle Rating(戦闘評価値)」への修正を行うという内容です。
調べてみると、南北戦争時代も大砲の射撃は直接射撃がメインで、ごく一部気球などによる観測により間接射撃が実験的に行われたということです。
ゲーム内の前者は師団に所属した師団砲兵による射撃で、後者は軍・軍団単位で保有していた重砲による射撃で、いずれも直接射撃を表しているのだと推測します。
(おわり)