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「Ney vs. Wellington: The Battle of Qatre Bras 」(SPI)をVASSAL対戦する(2/5)ルールの整理

 

ワーテルローの戦いの2日前に争われた前哨戦のひとつであるカトル・ブラの戦いを描いた「Ney vs. Wellington: The Battle of Qatre Bras 」をVASSAL対戦することになった。

 

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本作のルールはワーテルローの戦いを扱ったビッグゲーム、「Wellington's Victory」(TSR/SPI)(以降、WV)のゲームシステムを用いている。だがWVのルールとをあわせ読みしていくと、根幹となるシステムは同じだが、あちこちでルールの変更(改善?)が施されていたため、プレイにあたって混乱が生じた。

 

システム概要

各ユニットは戦闘力と効力レート(Effectiveness Rating)という2つの数値を持ち、前者が兵員数や砲門数(砲兵の場合)といった定量面の評価、後者が各部隊の士気や練度といった定性面を相対化した数値となっている。

戦闘力(=戦闘ポイント)は次のように定められている。

  • 歩兵/騎兵ユニットは、大隊単位でかつ1戦闘力ポイント=100人
  • 砲兵ユニットはバッテリー単位で1戦闘力ポイント=1門

ナポレオン時代のフランス軍の歩兵1個中隊の定数は140人、1個大隊は6個中隊、大隊の定数は840人だった。実数は500~600人程度であったということだが、本ゲームではユニットの戦闘力の数字を見ればその部隊の人数規模がわかるということになる。

 

1ヘックスは100ヤード、約90メートルになる。ゲームマップの縦横の実距離は4キロ弱四方になる。砲兵射撃の他、歩兵射撃でも射程があり、地形や部隊の状況によって相手が見える、見えないといった判定を行う視線(Line of Sight)がルール化されている。

 

1ターンは15分。全20ターン=実時間5時間の戦闘として描かれている。

ゲームの手順は互いに手順を交替しながらすすむIgoUgoスタイルのシステムだが、きれいに彼我のプレイヤーターンが分かれているのではなく、フェイズ毎に自分の手番・相手の手番・共通の手番が入り組んで構成されている。

攻撃手段として、歩兵射撃・砲撃・騎兵突撃・白兵戦がある。相手の移動に対抗した臨機射撃、相手の騎兵突撃に対するカウンターとして実施することができる臨機突撃といった要素もルール化されている。
部隊ユニットには向きがあり、兵種によって複数の隊列種類が設定されている(歩兵部隊の場合は、縦隊・横隊・拡張横隊・方陣・散兵と変換することができる)。ユニットは隊列や向きを意識しながら移動や隊列変換を行うことになる。

他に軍士気、司令部指揮、弾薬量などがシステム化されている。

 

ゲームの手順

交代で手順を実施していくことで進行するスタイルだが、ひとつのターンがきれいにふたつのプレイヤーターンに分かれている訳ではなく、相互に相手方に主導権があるタイミングに自分が主導権を持つフェイズが細かく織り込まれている。

実際のゲームターンの手順を書くと次の通り(一部簡略化している)

  1. フランス軍:指揮
  2. フランス軍:回復
  3. 連合軍:隊列変更・行軍
  4. フランス軍:白兵戦
  5. 両軍:砲撃
  6. 両軍:歩兵射撃
  7. 連合軍:指揮
  8. 連合軍:回復
  9. フランス軍:隊列変更・行軍
  10. 連合軍:白兵戦

 

両軍の手続きは同じものが並んでいるのだが、登場する順番が異なる。特に、5.と6.にある砲撃・歩兵射撃と、それぞれの軍の行軍(=移動)を行うタイミングに注目してほしい。

連合軍は行軍を行った後に砲撃・歩兵射撃を行うことになるが、フランス軍は行軍を行った後、(次のターンに)連合軍が移動を行ってようやく砲撃・射撃を行うことになる。
連合軍は、フランス軍の行軍の状況を見て、次のターンの自分の移動フェイズに移動することができる。その後に、射撃・砲撃のフェイズがあることから、連合軍はフランス軍の行軍の状況を見て、フランス軍の射界・射程内から脱することもできれば、逆にフランス軍に対して射撃・砲撃を行うことができるような優位な位置に移動することもできる。
この点、フランス軍は、連合軍の行軍に対応した移動を行うタイミングはなく、連合軍が射撃に優位な場所に移動したとしても対抗した移動は行えず、そのまま射撃・砲撃を受けかねない、という状況が生じる。

もちろん歩兵部隊・砲兵部隊の場合は機動力がある訳ではないので、言うほど相手の射界・射程に応じて機敏に移動ができる訳ではないことは追記しておく。

 

隊列

隊列の特性を知り使いこなすことは、ナポレオン時代の戦術級ゲームの醍醐味だろう。隊列は隊列変換のフェイズで変換することができる。兵種によってとりえる隊列種類は異なるがバリエーションが多い歩兵を例に説明すると、隊列は次のように分類されている。

  • 縦隊
  • 横隊
  • 拡張横隊 (横隊の一種。ゲーム内の概念)
  • 方陣
  • 散兵

隊列変換自体にはチェックなどはなく自由に実施できるが、「混乱」状態になっている部隊は隊列変換を行うことはできない。後に述べるがこのゲームでは部隊はいとも簡単に「混乱」状態に陥る。第二次世界大戦を扱ったゲームにおける「混乱」は戦闘の結果、部隊が士気阻喪を起こしたりして潰走するような状態を表しているように思うが、本ゲームでの「混乱」はもっと軽い状態。おそらくは、部隊の隊列が乱れた、とった程度の状態を「混乱」と表しているように思える。

 

縦隊

「縦隊」はいわゆる行軍形態。進路に沿って縦複数列などに並んで行軍していたものだ。移動力は高いが、密集しているため射撃や砲撃には弱い。撃てば誰かに命中する状態だったり、隊列の中に砲弾が命中すると目も当てられない惨状になる懸念が高いということだろう。「縦隊」のまま、射撃を行うことはできるが、射撃のため散開した状態ではないため正面に展開している兵士の数が限定され、火力は弱い。突撃に対しては密集しているためそこそこ抵抗できる。

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横隊・拡張横隊

「横隊」は射撃を効率よく実施するため横に散開した状態。横に薄く並んだ状態のため、相手からの射撃・砲弾の被害を最小限に止めることができるが、騎兵突撃にはからきし弱い。横隊のままで移動はできるが、移動力は小さい。隊列をまっすぐに保って凹凸や障害物がある原野を行くことは難しいということだ。ゲーム内でも、横隊状態のまま障害物(建物や林など)にはいろうとするとその部隊は「混乱」状態に陥る。

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「拡張横隊」はゲーム中、横隊がさらに長く横に展開した状態を指す。横隊の兵士が横に2列に並ぶのか3列に並ぶのかなど各国のドクトリンによって異なっていたのと、練度が高い国の軍隊のみが実施できる(イギリスなど)。通常は、「縦隊」から「横隊」に隊列変更しても、ユニットを裏返し横隊状態を表すだけでよいが、「拡張横隊」ができる国の部隊が横隊に変換すると、横に2ヘックス分の長さを持つ部隊となる。
射撃結果表で「拡張横隊」の射撃効果は通常の「横隊」や他の隊列よりも優れるが、移動や部隊の方向転換などの際、さらに不自由になることは言うまでもない。

 

方陣

方陣はこの時代の特徴的な陣形といえる。当時の戦闘において最大の衝力をもった攻撃手段であった騎兵突撃に対抗するため、歩兵を密集隊形、かつ四方からの攻撃に対抗するために四方へ攻撃できるように配置した陣形である。兵士たちは小銃に着剣し、四方に射撃できるように隊列を組んだ。移動はできなくなる。騎兵は銃と刀で槍衾を組んだ隊列にわざわざ攻撃を仕掛けなくなり、騎兵突撃への対抗となる一方で兵が密集している分、射撃や砲撃に対しては弱い。

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散兵

散兵は隊列を表す言葉ではない。軽歩兵や猟兵(ドイツ語でいうとイェーガーとなる)と呼ばれる部隊を指す。隊列を組んで展開する通常の部隊の前で独立して動き回り、隠れながら自由に射撃し、敵を混乱させる役割の兵を言う。
フランス軍歩兵大隊が6個中隊から編成されていたことは記載したが、うち1個中隊は「散兵」中隊となっていた。また「散兵」だけから編成された軽歩兵部隊も存在した。
フランス軍歩兵の強さは「散兵」を有効に活用できたからだという話もある。集団行動を取る通常の部隊とは異なり、個々に判断し自由に行動することが求められるため、練度が高い優秀な兵士だけがなることができた、という。

ゲーム内では、条件を満たす部隊が部隊の戦闘力の一部を分割するということで、新たに配置することができる(初期配置の一部として最初から登場しているものもある)。部隊の分割として表されており、歩兵ユニットから中隊規模の部隊を分割することができる。分割された「散兵」部隊は中隊規模なので兵士100人規模。戦闘力は「1」となる。相手の足止めや撹乱には役立つ。
1ユニットの人数が少なく隊列なども組まずに活動するため、射撃・砲撃に対しては命中がしにくく、防御効果は通常の隊列を組んだユニットよりも高いとされている。

人数が少なく対抗する術がないということだろう、「騎兵突撃」を掛けられれると自動的に「混乱」状態に陥る。

 

戦闘

射撃・砲撃

最も多用される攻撃手法は歩兵部隊による射撃と、砲兵による砲撃になる。歩兵は2ヘックス、砲兵は8ヘックスの射程を持つ。
注意する必要があるのは砲兵。射程最大8ヘックス(720メートル)を持つが、視線(LOS)のルールにより、目標ヘックス(目標としようとしていたヘックス)と自分が位置するヘックスの間のいずれかにユニットが存在するとLOSがとれなくなる。このため、砲兵部隊の前は空けておく必要がある。
通信機器などがない時代で、かつ大砲の射程も十分ではなかった時代なので自ら視認して射撃を行う直接射撃の手法しかなかったということだろう。

射撃戦闘にあたって使われるパラメータとして、「目標のターゲットクラス(隊形や地形)」、「射程」、射撃側の「効力値(Effectiveness Rating)」、「隊形」がある。

 

騎兵突撃

騎兵突撃は花形だ。最高の衝力を持っているが、一方で脆い側面もあり、攻撃終了後、突撃を行った騎兵部隊は必ず「混乱」状態に陥る。騎兵突撃の経路の途中に小川や石垣などの障害物があった場合も突撃途中で「混乱」状態に陥る。

「騎兵突撃」を受けた側は、攻撃を受けた部隊が戦闘結果として後退するとその周囲の部隊も士気チェックが求められる。

騎兵突撃を行うためには、「指揮」フェイズで宣言を行い、「白兵戦」フェイズで突撃を実行する。

突撃の宣言を行うと、騎兵部隊の前方両翼6ヘックスに「突撃エリア」が設定されマーカーで示される。
「突撃エリア」の中にいる敵軍部隊は「隊列変更・行軍」フェイズ(例えば、フランス軍が「1.フランス軍:指揮」フェイズで騎兵突撃を宣言すると、続く「3.連合軍:隊形変更・行軍」フェイズ)に「突撃エリア」内にいる部隊ユニットは士気チェックを行う必要がある。失敗するとその「混乱」状態に陥る。「混乱」状態のユニットは隊形変換はできなくなる(「行軍」は可能)ため、その時点であわてて隊形を騎兵突撃に対抗して「方陣」に隊形変更しようとしてもできなくなる。

この突撃の宣言によって設定される「突撃エリア」の相手に与える効力は絶大で、強制士気チェックの他、エリア内で移動するために必要な移動力が2倍になるという効果もある。あわててエリアから脱しようとしてもなかなか逃れられなくなる。騎兵部隊が突撃準備をはじめると、相手側の部隊が動揺してしまうということだろう。

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ゲームの手順のところで連合軍はフランス軍の行軍を見てから行軍を行うことができ、射撃・砲撃を実施できることを書いた。いわばリアクションをとることができる分、連合軍が優位な状態と言えるが、一方でフランス軍はこの騎兵突撃の宣言を行い、突撃エリア内の連合軍部隊に士気チェックを強制させるという行為により、連合軍の部隊移動を制することができるかもしれない。このあたりの駆け引きはゲーム内で検証したい。

 

 

臨機射撃と臨機突撃

相手の移動途中、自軍ユニット近くを移動した場合、臨機射撃を実施することができる。歩兵部隊は隣接ヘックスに対してのみ臨機射撃を行うことが可能。

臨機突撃も考え方は同じで騎兵突撃が行われている際、付近に味方騎兵が存在した場合、「臨機突撃」を宣言し実施できる。

 

補足

まだルールとして整理しなければならないパートはあるのだが、いったんここまで。

冒頭に書いたように、本作「Ney vs. Wellington」と「Wellington's Victory」だが微妙にルールが異なる部分がある。気づいたところを記載すると次の点。こちらも適宜補完したい。

 

  • 戦術移動の際に求められる敵ユニットからの距離
  • 高度が異なるヘックスにはいるときの追加移動力
  • 小川(Stream)の通過可否
  • 騎兵突撃エリアの設定範囲(小川の影響)
  • 突撃エリア内での士気チェック時の修正値

 

次回はAARに入りたいと考えている。