Their Finest Hour -歴史・ミリタリー・ウォーゲーム/歴史ゲーム -

歴史、ミリタリー、ウォーゲーム/歴史ゲーム/ボードゲーム

「Triomphe a Marengo」(マレンゴの勝利)(Histogames)を対戦する

細長い積木駒と、戦場地図を模したデザインのマップという印象的なコンポーネント「Triomphe a Marengo」(マレンゴの勝利)(Histogames)を対戦しました。

題材となったのは1800年6月14日にオーストリアとフランスとの間で戦われた「マレンゴの戦い」です。1798年に結成された第二次対仏大同盟の一角をなすオーストリアを打ち破ろうとフランス軍が対抗。両軍が進出した先の北イタリアで発生した遭遇戦になります。

 

 

 

 

「Triomphe a Marengo」の一場面。
細長い木の棒/積木/ブロックが部隊を表します(歩兵の場合は1個=2000人なので1個連隊くらいの規模かな?)。青はフランス軍、赤はオーストリア軍です。

駒は、適当に置いているように見えますが、場所や向きなど意味があります。

 

特異なゲームシステムのためなかなか勘所がわからなかったというのが正直なところです。どこがわかりづらかったのか、本作の魅力にもつながる部分ですので整理していきましょう。

 

ゲームシステム

当方の理解のために書いています。詳細内容は省略している部分があります。
また理解に間違いがあればご指摘いただければありがたいです。

 

指揮ポイントとアクション

1ターンのスケールは1時間です。
プレイヤーは交替でアクションを実施するIGoYouGo方式です。
プレイヤーはひとつのターンに3指揮ポイントを使用することができ、指揮ポイントを使うことでアクションを発動できます。各アクションでは通常、3つの部隊駒を操作することができます。

指揮ポイントの消費が不要なアクションがある、付随的に発生・実施できるアクションがある、さらに次に書いている「リザーブ」と「アプローチ」という考え方によりアクションの実施条件や内容が変わってくるなど、マニュアルのページ数に比べるとややこしいものになっています。

 

通常実施できるアクション

  • 通常行軍
  • 道路行軍(条件下で指揮ポイント不要)
  • 急襲(Manuvure Attack)
  • 砲撃(指揮ポイント不要)
  • 突撃(Assault)
  • 再編成

 

リザーブとアプローチ(部隊が配置される場所)

エリアマップですが各エリアの中で部隊を配置する場所として、「リザーブ」と「アプローチ」の2種類があります。

「アプローチ」はエリア同士が隣接した部分が該当します。例えば、四方を4つのエリアに隣接したエリアの場合は、「アプローチ」として4箇所、それ以外に「リザーブ」が1箇所存在することになります。部隊を表す駒はエリアの中で、これら合計5箇所のいずれかに存在することになります。
マップの中では、エリアはきれいに正接しているだけではなく、隣のエリアにはずれながら隣接したり、エリアの形状が三角形のものから最大7箇所のアプローチを持つエリアまでありますので、エリアによって「アプローチ」の数は変わってきます。

 

「Triomphe a Marengo」Rules of Play より抜粋
「アプローチ」と「リザーブ」の例
Blockingと示された駒が「アプローチ」の位置になります。

 

エリアの中で部隊駒が、「リザーブ」にいるのか、「アプローチ」にいるのかによってその後の移動や戦闘方法が異なってきます。ひいては、本ゲームの戦術(テクニック)や作戦を考える上で避けては通れない要素となっています。

 

 「通常行軍」は、「リザーブ」と「アプローチ」間、または隣接するエリアの「リザーブ」に移動するものです。

「道路行軍」も通常行軍と同様に敵がいないエリアを通って、道路を使うことによって最大3エリア移動可能になります(交通量・移動方向による制約あり)。
「舗装道路」*1を使う分には、指揮ポイントが不要という点も注目です。指揮ポイントが不要のため、進撃の主軸は「舗装道路」に沿ったものになります。

「急襲(Manuvure Attack)」は英語のほうが感覚的には理解しやすいかなと思います。「急襲」で相手に詰め寄って、相手が自分のエリア側の「アプローチ」に部隊を移動できなければ、そのままそのエリアを奪う。相手が「アプローチ」に部隊を移動できれば、「急襲」は終わりですが、次のターンに「突撃(Assault)」により、「アプローチ」から相手の「アプローチ」に対する攻撃を行うということになります。

「急襲」が相手の弱いエリアやその「アプローチ」に対して突っかかっていく(まさに機動的な攻撃)のに対し、「突撃」は相手と向き合った「アプローチ」同士でガチに戦闘を行うアクションになります。

 

「急襲」や「突撃」による戦闘の結果、防御側が敗北するとエリアから「退却」することになりますが、「歩兵」「砲兵」部隊の場合は「退却」時に損害をこうむるのですが、「騎兵」の場合は損害を受けることなく「退却」できます。

このゲームにおいて士気も重要な要素であり、戦闘の勝敗によって士気があがったり下がったりします。「退却」を重ねすぎると士気ポイントを失い、士気崩壊に至る懸念もあります。

勝利条件はどちらかの軍隊の士気が崩壊すると決定的勝利、それ以外はマップ途中に設けられた勝敗決定のラインを一定部隊数を突破させるとオーストリア、阻止するとフランス軍の勝利となります。

なお、ナポレオンなどのキャラクター駒はありません。

 

プレイ


マップ全景。
左端の大きな河川の左側からオーストリア軍が登場します。
フランス軍はいくつかの部隊がマップ左側に点在、残りはマップ右端から増援として逐次投入されてきます。

 

一戦目

フランス軍を担当します。

初期配置の状況(上の全体マップと左右逆なことに注意)
集結したオーストリア軍はマップ右端に固まっています。
フランス軍は初期状態では写真に見えている部隊しかありません。残りは逐次投入により複数回にわたり援軍としてマップの左端(写真には写っていない)から登場します。

赤色のオーストリア軍はマップ右端の大きな河を渡ってくるため、進軍路は黄色の矢印で示した箇所からになります。
青色のフランス軍について、配置場所は決まっているものの、どの部隊が配置されるかはランダムになっています(10個ユニットのうち3個が騎兵、残りは歩兵)。またゲームスタート時にはオーストリア軍による奇襲だったことをうけて、すべての部隊は混乱状態から始まるため、まず「再編成」アクションを実施しなければ他のアクションを実施できません。

つまりオーストリア軍は初期状態では渡河のため少しずつ(1ターンに最大4部隊)の登場となること。一方のフランス軍は「再編成」アクションにより活性化(1ターンに2~3部隊程度)しなければならないことと、スタート当初は両軍とも制約を受けています。

地形を見ると、オレンジのラインが「舗装道路」にあたります。箇所ごとに通過できる部隊数の制約はあるものの、「道路行軍」によって「指揮ポイント」の消費なしに活動できるため、部隊展開は「舗装道路」または「小道」(破線で表現)を中心にしたものになります。
特に写真下側に走る「舗装道路」にはフランス軍部隊が配置されていませんので、フランス軍はなんらかの対処を行わなければ、オーストリア軍に”突破”される懸念があるでしょう。

写真に記入した水色の太線は河川と湿地によって地形効果が高い防衛線になります。薄赤色の丸印は村落/集落を表し、ここも地形効果が高くなっています。

 

河川の地形効果に気づいたのは後からでして、一戦目では易易と中央部を渡してしまっています。その後も「退却」を重ねたことから、士気を失い、投了です。

二戦目

再びフランス軍を担当します。

一戦目の教訓として「騎兵」の重要性です。

「騎兵」は「歩兵」に比べ、次の特色があります。
特に退却を重ねる必要があるフランス軍にとって3番目の特色は重要です。

  • 「継続移動」により「歩兵」より一手番少なく「アプローチ」に移動できる
  • 「道路行軍」の途中に「急襲」ができる(これは今回のフランス軍で試す機会はありませんでしたが)
  • 「退却」時に損害を負うことがない

「歩兵」を配置して「退却」させるのではなく、殿は「騎兵」に任せるのです。

 

第二戦の第1ターンです。
騎兵をうまくつかって後退戦を戦うというのはわかったのですが、フランス軍はランダム配置+混乱状態のため、騎兵ユニットの位置を確かめ、さらにどこから活性化していくかを考える必要があります(写真のフランス軍ユニット脇に置いたカラーマーカーは「混乱」状態であることを表しています)

 

第6ターン(ぐらい)
オーストリア軍がすべて姿を表し、フランス軍の援軍がマップの左のほうに姿を表している状態です(史実ではこのタイミングで現れる援軍の中にナポレオンはいました)。

フランス軍としては河川や村落といった防御拠点を利用した戦線を張っていますが、各正面戦力ではオーストリア軍に部隊数で劣っています。この後、オーストリア軍による騎兵を活用した「道路行軍」+「急襲」により部隊を置いているエリアに対して複数の「アプローチ」が襲われ、フランス軍はその対応に追われることになります。

 

第10ターン(ぐらい)
今回の終盤。
フランス軍の右翼は援軍が到着したことにより厚くなっていますが、左翼はオーストリア軍の延翼運動についていけなくなり、薄くなった左翼中央部を「突撃」で攻撃されています。今回の攻撃には耐えられても、オーストリア軍の「リザーブ」に残っている部隊を考慮すると、戦闘に負けて「退却」されるのは必至でしょう、というところで投了です。

 

感想戦

マニュアルは決して厚くはないのですが、ゲームシステムと兵種毎の機能のメリハリの付け方が独特で理解までに時間がかかったことは投稿した通りです。ついには本記事に付したような表をつくって理解に努めた次第です。

システムで描こうとする内容は理解できますし、方向性は面白いものがあります。

フランス軍が実施すべきは、オーストリア軍の攻撃を真正面から受けたり、延翼運動につきあうのではなく、戦力の希薄化を避けるため戦線を広げないように注意深く後退戦を行うというところでしょうか。増援の到着まで士気も戦力も維持していくことが必要です。
「騎兵」の機能(特に「退却」時のノーペナルティ)を有効利用するというのはわかるのですが、ゲーム上、どのように扱っていくのかは研究が必要です。

オーストリア軍は第2戦目であったように、優勢な部隊数と「騎兵」の能力を活かしつつ、フランス軍が抵抗するエリアではひとつの「アプローチ」からだけではなく、複数の「アプローチ」から接触し、フランス軍の戦力を分散、さらに拘束を行いつつ、局所的な戦力の優越を利用して戦闘に勝利していくことで、フランス軍の士気崩壊を目指すというところでしょうか。

初期状態で、フランス軍は騎兵の配置位置が未確定のため、プレイの度に対処が変わることになるでしょう。それに応じてオーストリア軍側も侵攻路が変わっていくのかもしれません。

兵力や兵種が隠匿配置になるため、ソロプレイには適していないのは残念ですが、戦術(テクニック)や作戦を研究したくなる好作です。

(終わり)

 

コマンドマガジンで収録された「マレンゴの戦い」は、SPIの「NAPOLEON AT WAR」(略称:NAW)の中の1作。NAWのリリースは1975年なので実に半世紀前にデザインされたゲームです。こうして日本語化され収録されるなど、いまだに人気作であることがわかります。まだ在庫があるようなので、欲しい人は急げ!
「Triomphe a Marengo」とは、ユニットはともかくマップの印象がかなり違うので、同じ戦場とはわかりにくいです。

 

細長い積み木駒で美しいマップという組み合わせは本作を思い起こさせます。コンポーネントが美しいゲームはプレイしていて気持ち良いですよね。

 

 

 

 

 

 

*1:他に「小道」がある