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「Decisive Victory 1918: Soissons(ソワソンの戦い)」(LEGION WARGAMES)を対戦する(1/2)

第1次世界大戦終盤の1918年7月、第二次マルヌ会戦の一部として戦われたソワソンの戦いの6日間を描いた表題ゲームを対戦しました。

連合軍は圧倒的な数の戦車部隊と支援砲撃を伴い攻勢に出ます。
突撃準備、支援砲撃にはじまり、支援阻止砲撃、突撃、・・という第1次世界大戦らしい歩兵戦を細かいシーケンスに分割し、1ヘックス=1キロ、1日を昼間ターン(午前/午後)2ターン、夜間ターン1回の計3ターンというスケールで描いています。

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ソワソンの戦い

f:id:yuishika:20211017233749j:plain ソワソンの戦いは第一次世界大戦終盤1918年7月18日から22日までフランス軍アメリカ軍、イギリス軍も参加)とドイツ軍との間で戦われました。

日本語記事はないのですがこの英文の記事、とても気合がはいった内容です。戦況概況だけではなく戦闘序列にはじまって6日の戦闘期間を1日ずつ詳細に説明しています。あまりにも細かすぎて全体感が見失ってしまうくらいの記事です。

 

ソワソンにはドイツ軍の補給を担っていた鉄道路が交差しているという重要地点であり、協商軍は補給路の分断を狙い侵攻を開始します。

この地域には塹壕は構築しにくく、腰までの高さがある小麦畑、湿地、深い峡谷からなる地形であったといいます。実際ゲームマップにも戦車部隊が進入できない峡谷が幾筋も走っており、協商軍の前進を妨げます。

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ソワッソン戦況図(Wikipedia より)
オレンジ枠がおおよそ本ゲームの範囲。シリーズは三部作ということなので、この図でいくと中央部・右翼の戦いが今後ゲーム化されるのだろうか。

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実際のゲームマップ全図。
左手側のやや薄灰色で塗られた地域が協商軍の初期配置を行うエリア。ここから右手側ソワソンの街を目指して進撃を行います。

ゲームシステム

f:id:yuishika:20211017233932j:plain 昼間2ターン、夜間1ターンと3ターンで1日を表しています。

 

ゲームシーケンス

昼間ターンでは協商軍を先攻として次の手順を行い、ドイツ軍に交代します。

ひとつのプレイヤーターンは次のような手順からなっています。

  1. 砲撃の宣言(1回目)
  2. 突撃
  3. フェージングプレイヤー自発的撤退(1回目)
  4. 移動
  5. フェージングプレイヤー自発的撤退(2回目)
  6. 砲撃の宣言(2回目)
  7. 小規模攻撃/急襲攻撃
  8. 前進

 

赤字は活動を行っているプレイヤー(アクティブプレイヤー)が攻撃を行うタイミング。青字は非アクティブプレイヤーが活動を行うタイミングになります。

アクティブプレイヤーは「突撃」と「小規模攻撃/急襲攻撃」の2回攻撃のチャンスがあります。前者のほうが威力が大きく、後者はどちらかというと追撃などを行う際に用いる攻撃方法です。

「突撃」にしろ「小規模攻撃/急襲攻撃」にしろ攻撃を実施するには移動フェイズで必要な移動力を消費して「突撃準備」または「小規模攻撃/急襲攻撃 準備」の状態になる必要があります。

午後のターンに「突撃」を行うにはその前の移動フェイズである、午前のターンの移動フェイズで目標となる敵ユニットに隣接した状態でさらに”準備”状態になる必要があります。午前のターンに「突撃」を行うには、その前にあたる夜間ターンの移動フェイズで”準備”状態になることが求められます。

悩ましいのは移動フェイズで突撃先になる敵に隣接して突撃”準備”状態になったとしても直後の自発的退却フェイズにおいて、目標の対象ユニットが整然と退却されてしまうことがあります。隣接ヘックスに敵がいなければ「突撃」は発動しないため攻撃が空振ったことになります。

 

「突撃」実施前には、攻撃側の支援砲撃、防御側の支援阻止砲撃があります。「突撃」時に戦車マーカーが設定されていると戦力比シフトが有利になります。

「突撃」による戦闘結果を反映し相手が後退すると戦闘後前進などを行うことができます。この後、防御側は「自発的後退」を行うことができ友軍の後退などででこぼこになった戦線の整理をすることができます。

再び「移動」になりますが、敵に隣接して定められた移動力を消費することにより次ターンのための突撃準備を行おうとした際、敵の戦線が大きく後退していた場合は、戦線の移動に追随するには移動力を使わざるを得ず、突撃準備にはいるための移動力が商品できないということになります。

その後、「突撃」に比べて威力が小さい「小規模攻撃/急襲攻撃」を行います。

 

つまり、攻撃を主導する側は、

 

  突撃準備 ー 突撃 ー 突撃準備 ー 突撃 ー

 

と畳み掛けたいのですが、合間に防御側の「自主的退却」があるため、うまく相手を捕捉できずに逃げられることがあります。また準備と突撃の実行とはターンをまたぐ必要があるため前のターンで準備にはいったユニットが存在しなかったため、今ターンで「突撃」を行うことができるユニットがない、といった事態がでてきたりと、一連のシーケンスのリズムに慣れるのは少々大変です。

 

また攻撃にあたっては司令部の指揮範囲にはいっておく必要があるのですが、前線部隊の移動力に比べ司令部ユニットの移動力が小さく、さらに前線部隊は戦闘後前進を行うため、前線部隊が勢い込んで前進していると司令部の指揮範囲をあっという間にはずれてしまうのです。指揮範囲を外れると、いくら敵を追い込んでも、それ以上の攻撃ができくなります。

 

戦闘結果はひとつのターンの時間設定が半日以下と短いということからいきなりユニット除去になるような内容ではなく、後退と混乱レベルの上昇という結果で表されています。

ユニットの混乱レベルには正常状態である「統制状態」から「分散状態」「未統制状態」「衝撃状態」とあり、最後の「衝撃状態」からさらに混乱が重なると「衝撃状態」のマーカーが二重三重に置かれていきます。混乱レベルに上限はありません。

混乱レベルがあがったユニットは夜間ターンにある「再編成フェイズ」で自動回復とダイスを振った回復を組みあわせて解消させることが可能なのですが、当然、混乱レベルが高ければ高いほど戦闘に復帰できる状態になるまでに時間を要することになります。
混乱レベルがあがった状態ではそのレベルに応じて、戦闘力が落ちますので、その状態で攻撃を受けた場合は、追加的な損害を受けやすい状態にあることになります。

「自発的撤退」を行う際、すでに混乱状態にあるユニットが実施すると混乱に拍車がかかるということで自動的に混乱レベルが1レベルあがります。
一方で混乱状態に問題がないユニットの場合は、後退にあたっての整然と実施できるということか、混乱レベルへの悪影響は発生しません。

 

戦車の扱い

f:id:yuishika:20211017234725j:plain 第一次世界大戦時点での戦車の機械的信頼性は非常に低かったことを表すため、戦車マーカーは1日利用すると1ステップロス状態になり、もう1日活動すると自動的に除去されてしまいます。

戦車が参加した戦闘は戦闘力比が1シフト有利にできるという利点があります。一方でこの地方の特徴的な地形として登場し、マップのあちこちに干割れのようにはいっている峡谷には進入や攻撃ができないなど制約を抱えています。

 

AAR(1回目)

f:id:yuishika:20211017234947j:plain 当方がドイツ軍、Tさんが協商軍を担当します。

初期配置では両軍ともあまり自由度はありません。特にドイツ軍は初期配置時においてスタックも認められていませんので初期配置ラインに沿って並べることになります。

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手前の黒っぽいユニットがドイツ軍。
奥側が協商軍です。協商軍ユニットは、師団単位なので連隊単位のユニットであるドイツ軍ユニットの数倍の戦闘力を持っています。
協商軍ユニットには第1ターンの特別ルールで、ゲーム開始時点で「突撃準備」状態にあるということで全てのユニットには突撃準備を表す、双眼鏡を覗く将校のイラストが描かれたマーカーが載せられています。

 

第1ターンの協商軍各ユニットは特別ルールでゲーム開始時に「突撃準備」状態にあります。この時点で数ユニットの戦車部隊が前線に配置されています。
攻撃はまず支援砲撃よりはじまります。ダイスによって運悪く直撃を受けたドイツ軍ユニットが早くも混乱レベルをあげます。
次に通常であれば、ドイツ軍砲兵部隊による支援阻止砲撃が行われるのですが、第1ターンについては奇襲効果によりこれはありません。
その後、いよいよ協商軍各ユニットによる突撃戦闘が行われるのです。
協商軍の前線部隊は師団単位、いっぽうのドイツ軍部隊はいずれも連隊単位でしかも初期配置時にはスタックが認められていないため、次々と損害を受けます

第1ターンにおいてはドイツ軍は防御ヘックスの地形効果を受けられず、さらに戦闘結果表の結果よりもさらに1レベル余計に混乱レベルが上昇するというペナルティが負っているのです。

次々と潰走するドイツ軍部隊。いずれも2段階・3段階と混乱レベルをあげての後退となり、またそのヘックス数も5ヘックス程度は下がります。部隊の兵たちは我先にと逃げ出しているところなのでしょう。

ただわずか2、3個連隊だけはその場に踏みとどまる部隊もあったのですが、隣の部隊ユニットが軒並み後退している状態の中で、前線にとどまることは包囲を受ける結果となるため、「自発的撤退」により撤退します。

この時、ルールの解釈ミスで自発的撤退ユニット全てについて混乱レベルをあげていたのですが、間違いでした。もともと「統制状態」のユニットが自発的撤退をした場合は、混乱レベルの悪化は生じません。逆に混乱レベルが上昇しているユニットが「自発的撤退」により追加的に撤退を行うと、混乱レベルはあがります。混乱した兵が、さらに混乱していく様が目に浮かぶようです。

話を少し戻すと、協商軍の「移動」フェイズ。さきほどドイツ軍との戦闘に勝利し、戦闘後前進を行った前線部隊が前進するのですが、このターンの「小規模攻撃/急襲攻撃」、または次のターンの「突撃攻撃」で攻撃を行うには、この「移動」で目標となる敵と接敵し、さらに所定の移動力を消費する(その分、前進ができなくなる)必要があるのですが、この次のターンに向けての準備は十分にできないままに協商軍プレイヤーターンは終了します。

ドイツ軍は反撃する余力はないため、戦線の整理にとどまります。

 

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第2ターン(7月18日午後)の冒頭の状況
第1ターンの特別ルールで奇襲効果によりドイツ軍は不利なルールがいくつか適用され、開戦時の戦線から大きく後退し、またそれに伴い様々な混乱レベルに陥っているユニットが目立ちます。

 

この頃には、「突撃」による攻撃に比べ、第2攻撃ともいうべき「小規模攻撃/急襲攻撃」ではほとんど相手に損害を与えられない(あるとすると、混乱レベルがあがった敵ユニットに追い打ちをかけ、混乱レベルをさらにあげるという効果)ことが判明し、さらに「突撃」のためには前のターンに準備状態にはいる必要がある・・という一連の”呼吸”がやっと実感できたのです。こうしたこともあり、第2ターンで協商軍は十分な攻撃を行えずに終わります。

最初の夜間ターンである第3ターン(7月18日夜間)では、特に撤退に撤退を続けたドイツ軍を中心に混乱レベルの回復を図ります。また両軍とも移動を行う戦線の整理を行うのです。

その後、はじまった第4ターン(7月19日午前)では、このターンに突撃を行うには前の夜間ターン中に、突撃位置まで進出し、「突撃準備」状態になっておく必要があったのですが、十分に準備ができてないなど、ルールへの習熟不足からくる不手際が目立ったため、いったんここでゲームを中止、仕切り直した上で再プレイすることになりました。

 

(つづく)

 

 

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パリは燃えているか」(加古隆)は傑作。: