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「ASSAULT」(GDW/Hobby Japan)を対戦する(2/2)

「ASSAULT - Tactical Combat in Europe 1989」(GDW)を対戦しました。
シナリオ1「威力偵察」。
ソ連軍の部隊の侵攻に対し、アメリカ軍は相手の規模や内容がわからないまま迎え撃つというシナリオです。

Copyright © Rodger B. MacGowan, Hobby Japan Ed.

 

yuishika.hatenablog.com

 

 

 

中盤(第7~9ターン)

f:id:yuishika:20210923235650p:plain 第3ターン、第5ターンとソ連軍の本隊が続々と盤上に姿を表します。まだ視認下にありませんので全てのユニットは正体を隠すように裏返され、方向を示す矢印マークが表示された状態になっています。

最も早くに突出してきたのはマップ南端(写真手前)の地点「1」付近。
地点「A」の市街地に進出していたM3偵察小隊は、偵察部隊ならではの能力によりソ連軍を視認します。T80、ソ連軍主力の最新鋭戦車です。

M3は躊躇せずここまで温存していたTOWミサイルを放ちます。が、林ヘックスにいたT80 には命中しません。

ミサイルの命中値は10面ダイスで8。つまり8以下の目により命中だが、目標が林ヘックスにいる場合その値は半減される(端数切捨て)。

1発しか装備していない(弾数制限ルールをミサイルのみに適用中)TOWミサイルを放った後はM3の装備は主兵装の25ミリ機関砲しかなく、T80 に抗する術がありません。いさぎよく、当初の予定通り地点「A」の市街地から後退します。

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地点「A」にいるアメリカ軍ユニット(M3偵察小隊)が、地点「1」付近に進出してきたソ連軍ユニットに対してミサイル攻撃を行いますが失敗、その後、地点「A」から後方の市街地に向けて後退します。

 

赤いユニットの奔流が迫ります。

ソ連軍は大きく3つの梯団に分かれてきました。

地点「2」「1」を通り、M3装備の偵察小隊を退け、地点「A」へ進出する北翼集団。

中央の集団は丘陵を横切るように地点「4」に現れます。丘陵地内に点在する林ヘックスによりアメリカ軍から視認されない位置まで進出すると、進撃機会を伺っているようです。
中央集団が進出した丘陵地の麓をいくのが南翼集団。一級国道沿いに市街地「5」付近まで進出します。
さらにマップ南端近い地点「7」付近にも進出してきたユニットがあります。

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明確にアメリカ軍の視認下にはいったのは地点「5」に進出した部隊。

M1エイブラムスの最初の射撃は、地点「E」の稜線に遮蔽下(Cover下)にあった小隊から、地点「5」の市街地付近に姿を表したT80装備の部隊に対して行われました。
ソ連軍第1移動フェイズで移動してきたT80は続く射撃フェイズでは移動直後のため射撃ができません。

距離2,000メートル(8ヘックス)。
互いに相手を視認。1個小隊 4両のM1エイブラムスが一斉に射撃を開始。
命中1回! M1エイブラムスの徹甲弾の貫通力とT80の前面装甲値から貫通判定と損害判定がされ、T80の2戦力段階(2ステップ分=1個ユニット)が吹っ飛びます!

距離2,000でのM1エイブラムスの徹甲弾の命中値は”4”。
10面ダイスで4以下で命中なので命中率40%。
1個小隊(=1ユニット、実際は4両相当)の射撃回数は2回。現在フル戦力(2ステップ)状態のため、2回☓2ステップ=4回のダイスを振ることができる。

M1エイブラムスの徹甲弾の貫通力は距離2,000では”18”。
T80の前面装甲値は”15”。貫通力が装甲値を上回っているためその差が自動的に損害値になる。結果、T80が被った損害値”3”となるが、損害値はそのまま失われる戦力段階となるため、1個ユニット(=2戦力段階)が除去されることになる。

M1エイブラムス(徹甲弾)VS T80では、1回命中値が出ると自動的にT80 1個ユニットが除去されることになる!

続くアメリカ軍プレイヤーターン内の射撃フェイズにおいて、ソ連軍は満を持してT80部隊から反撃を行いますが、・・

T80 からM1エイブラムスに対する命中値はなんと”1”!!
このフェイズでもさらにT80 1個ユニットが失われ、色を失うソ連軍。

距離2,000でのT80 の劣化ウラン弾の命中値は”3”だが、地点「E」のM1エイブラムスが遮蔽下(Cover)にあるため半減(切り捨て)され命中値は”1”となった。命中率10%となり、M1エイブラムス側からの射撃の命中率が40%なのと比べ明らかに分が悪い。

その後も応酬が続き、ソ連軍がかろうじてM1エイブラムス小隊を1ステップロス(2両相当)させた時にはすでに1個中隊規模(4個ユニット 14両相当)のT80が失われていたのです。

北翼のT80 も前進します。
地点「A」市街地まで進出していたT80部隊(この時点ではまだ視認下にないためユニット表示は矢印状態)は地点「B」に向けて稜線をあがったところで、アメリカ軍の地点「D」または「H」にいたM1エイブラムス小隊と相互に視認状態になります。

視界内で一定距離の移動を行ったことで(距離によって異なるが一定のヘックス数を移動した場合)、アメリカ軍による「臨機射撃」の対象となります。

地点「D」のM1エイブラムスからの射撃によりT80 2個ユニットが除去され、ここに南翼のソ連軍の進出は頓挫します。

第8ターンになるとようやくアメリカ軍の増援が到着しはじめました。最初に登場したのは、大隊司令部(M1エイブラムス装備)、またM2ブラッドレーに乗車した機械化歩兵1個中隊だったが、前線までは遠く急ぎ移動中となります。

 

終盤(第10~12ターン )

f:id:yuishika:20210923235620p:plain 地点「F」のM3部隊が地点「7」付近の林に進出したソ連BMPと小競り合いをはじめますが、お互いに装備が乏しく損害を与えることができません。BMPは搭乗させていた歩兵分隊をばらばらとばらまきはじめます。さすがにこの延長で、歩兵により地点「E」などに接近されるとやっかいだなと思いながら地点「E」のM1エイブラムス部隊の引き時を考え始めます。

ここにきてソ連軍の砲兵隊は地点「E」や「F」の前面あたりに煙幕弾をばらまきはじめました。ようやく観測班が活動を開始した様子です。ただ地点「E」そのものに撃ってこないのは、観測班自体がM1エイブラムスの視認下にはいりたくないためのようでした。

アメリカ軍にもマップ外に榴弾砲装備の砲兵部隊の支援が配備されていたのですが、視認下のソ連軍の配置が移動し続けたため、今回のゲーム中、効力射に至った射撃はありませんでした。

ASLやSquad Leaderの盤外射撃といえば砲撃を要請した地点からずれまくるのが定番だったりするが、このゲームにおいてはスケールを考慮してか砲撃要請があった地点に確実に射撃を行ってくれる。

地点「5」付近では何度かT80部隊の突出がありましたが、ことごとく地点「E」のM1エイブラムスによって撃破されていきます。
地点「4」や地点「A」付近に集結しているソ連軍がいつ突出してくるのか、飽和攻撃のような作戦をとられるとユニット数が少ないアメリカ軍は防ぐことができないのではないかなどと考えながら、第1防衛線の撤退タイミングを測っていました。

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地点「4」や「A」周辺に集結したソ連軍がいつ侵攻してくるのか、特に地点「A」から「G」に来られると困るなぁ・・などと考えていた時期。
戦闘は地点「5」と「E」間、または地点「7」と「F」間で発生していた。
地点「E」の前面、「7」と「F」の中間点付近に煙幕弾が展開されている。
なお地点「3」、「C」にいるアメリカ軍部隊はダミーだが、うまく牽制できていると自画自賛

 

せっかく地点「E」付近に煙幕弾を展開したものの、「E」そのものには展開されていなかったため、地点「5」のT-80 部隊群と地点「E」のM1エイブラムスとの射撃が続きますが、命中率の差からT-80の残骸が積み重なっていくのでした。

やがてソ連軍より主力であった戦車1個大隊がほぼ壊滅したと告げられ、投了となりました。

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終了時の状況。
アメリカ軍に増援が多数登場し、逆にソ連軍側に侵攻を開始している。
地点「5」付近のソ連軍1個戦車大隊相当がほぼ除去され、ここにソ連軍の主力が壊滅したこととなった。
地点「4」「A」周辺のユニット群は侵攻開始タイミングを待つソ連軍部隊ではなく、ダミーユニットの山にすぎないことは終了後判明した。

 

感想戦

f:id:yuishika:20210923235713p:plain 今回初プレイだったのですが、敵の意図・勝利条件はわかっていても、規模や編成が全くわからない状態で戦うというシチュエーションはとても新鮮でした。

本文中に書いたとおり、地点「A」や地点「4」周辺に集結していたソ連軍ユニットがいつ進撃を開始するだろうか、と考えていたのですが結果的にほぼすべてダミーでした。てっきり歩兵戦闘車中心だったので、突破を躊躇しているのかと思っていたのです。まんまと釣られました。

これらのユニット群が移動開始した時には、適当なところでアメリカ軍の第一線に置いた部隊を引かないといけないくらいに思っていたのです。

 

結果的には中央部、地点「E」に配置されたM1 1個小隊+中隊司令部だけでソ連軍戦車大隊のほとんど撃破してしまう結果となりました。

ちょうど隣の卓で「Panzer Command」(SPI)をプレイしていたKさんがぽつりと・・

「『AMUBUSH』のエイブラムスは無双だからねぇ・・」

距離2,000キロ相当下で遮蔽下にあったM1エイブラムスと露天のT80とでは相互の命中値が異なりました。
ただソ連軍に勝機がなかったわけではないと思います。
M1エイブラムス小隊が位置した稜線に対して断続的に煙幕弾を撃ち込まれていたら、M1エイブラムスは損害には至らないにしても、その地点からの射撃は難しくなったでしょう。煙幕下から脱して移動したM1エイブラムスはすでに遮蔽下とはみなされませんので、T80 との相互の命中値は1しか異ならなくなります。数が多いソ連軍がそこを狙えば一種の飽和攻撃となりさしものM1エイブラムスも比較的あっさりと戦闘能力を失われたかもしれないのです。増援が前線に到着しはじめる10ターン目あたりまでの間にそこまで詰められていると、もともと薄っぺらい防衛線(7ユニットしかない)しか張れていないアメリカ軍はあっさりと防衛線を破られるか、全体を大幅に後退するしかなくなったかもしれないのです。

 

ゲームの全体の印象としては、とても教科書的だというもの。

大隊クラスの戦術論の本に出てきそうな部隊と地形で、いわば戦術セオリーに沿った作戦を実施できるという印象です。
偵察部隊の役割か重層的な部隊配置など。非常におもしろいものがありました。

例えば、ASLだとダイスの目によって狂暴兵やヒーローが登場したり、突然の走行不能や射撃不能が起こったり一種のイベントが発生するのですが、本ゲームにはそうしたランダム要素はダイスを用いた戦闘結果などを除けば排除されています。

 

ただ残念なのはゲームの性質上、ソロには向かないことかな。

(おわり)

 

 

図解でわかる!戦車のすべて

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  • 作者:白石 光
  • ワン・パブリッシング
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