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「IRONCLAD」(Yaquinto/Exacalibre)を対戦する(2/2)

南北戦争時代の海戦を扱った精密戦術級ゲーム「IRONCLAD」(Yaquinto/Exacalibre)を対戦しました。

 

 

 

シナリオ/背景

ハンプトン・ローズ海戦

シナリオ1で扱う「ハンプトン・ローズ海戦」は1862年3月8日と9日の2回発生します。1日目の海戦は北軍の封鎖を破ろうとした南軍の<バージニア>を含む艦隊と北軍の封鎖艦隊が戦ったものです。木造船から構成された北軍艦隊は大損害を受けます。中でも<ミネソタ>はバージニア号を回避しようと浅瀬に逃げ、座礁してしまいます。

シナリオで扱っているのは2日目の海戦で、座礁した<ミネソタ>を仕留めようと出撃した<バージニア>に、北軍の装甲艦<モニター>がはじめて相まみえることになります。

先に結末を書くと、両艦は至近距離にまで近づきながら激しく砲撃を交わしますが、お互いに致命傷を与えることができず退くことになりました。

 

シナリオ設定

南軍艦隊は3隻、<バージニア>の他、2隻の砲艦<パトリック・ヘンリー><ティーザー>が登場します。
北軍には<モニター>の他、座礁して移動できない<ミネソタ>と小型の武装船<ズアーヴ(Zouave)>が登場します。

勝利条件は北軍の<ミネソタ>を完全に破壊してしまうこと。砲撃により耐久力を全て奪う必要があります。<ミネソタ>は木造船ですが相応に大きな艦であるため、破壊にはかなりの有効打を送り込む必要があるでしょう。

ターン数=30ターン(90分)

 

シナリオ特別ルールにより、<モニター>は竣工したばかりであったため、上層部の命令により主砲の炸薬の量に制限がかけられていました。シナリオでは<モニター>の主砲の貫通力に制限が設けられています。
バージニア>は交戦相手として装甲艦が登場することを想定していなかったことを受け、徹甲弾を搭載しておらず使用できるのは榴弾のみになります。

いずれも砲の威力が弱められることになります。

 

ゲーム展開

3人プレイ。当方は北軍の<モニター>を担当。

座礁して動けなくなっている<ミネソタ>が位置する河岸近くの浅瀬に対して対岸側から南軍の3隻が現れます。距離およそ3000メートル。北軍側は、防御するべき<ミネソタ>の周辺から開始しますが、両軍艦隊の間には大きな中洲/浅瀬が左右に横たわっており、進路を妨害した状態です。河の流れは北軍側からみると右手から左手に流れています。

 

南軍艦隊はまっすぐに北軍艦隊に接近を図ります。北軍も距離を詰めます。距離1600メートルのところで<モニター>が<バージニア>に初弾を送りますが、距離が遠く命中しません。命中しても貫通力が弱いため損害を与えられないのです。炸薬に制限があるのとあわせ、当時の砲で有効打を与えるには400メートル(4ヘックス)程度、せめて1000メートル程度まで接近する必要がありそうです。

 

バージニア>はまっすぐ中洲の左側の狭い水道を抜け、<ミネソタ>に接近します。速度が遅く、舵の効きが悪い<バージニア>は最短ルートをとり、南軍の残る2隻は中洲の右側を抜けようと、中洲を大きく迂回します。

北軍の<モニター>は<バージニア>に対抗するようにまっすぐに<バージニア>の進路報告に向かいますが、その間も断続的に<バージニア>を砲撃し続けます。
<モニター>は回転砲塔のため、<バージニア>との位置関係がどのようになろうとも射界に捉え砲撃を行うことができますが、<バージニア>は<モニター>を射界にいれないと砲撃を行うことができません。前記事に書いたとおり<バージニア>の砲の射界は狭く、その上、舵の効きが悪い<バージニア>は2ターン前に移動をプロットする必要があるなど、<モニター>を射界内に収めるだけでも一苦労です。

 

初期配置状態からの移動イメージ
奥の方に南軍艦体の3隻が見えている
濃い緑色の部分が中洲・浅瀬(通過することも可能だが座礁チェックが発生)

 

<モニター>のスペックカード
艦体の中央にある円が2門の砲を装備した砲塔を表している。
左上のほうの「20」という数字は、艦体の各箇所の耐久力を表しているが、全面的に装甲化されているためいずれも「20」となっている(木造船の場合はこれが10以下の数値になっている)。

 

北軍の<ズヴァーブ>は中洲の右側へ向かったところで南軍の2隻と鉢合わせになります。
両勢力の艦艇が接近したため、ひとつのターンをさらに細かく分解しての移動処理を行うのですが、ここで椿事が発生しました。
南軍側の先頭を走っていた<パトリック・ヘンリー>と北軍の<ズヴァーブ>が中洲の右岸をショートカットするため同一航路にはいりそのまま正面衝突したのです。プロット式の移動で、同じタイミングで同じヘックスに2隻の艦艇が存在すると衝突が発生します。

船首に装備したラム(衝角)判定です。
衝突方向はそれまでの移動の向きから船首同士。
<パトリック・ヘンリー>と<ズヴァーブ>のラムの能力値を比較したところ、船体が大きな<パトリック・ヘンリー>のパワーにより、<ズヴァーブ>は一瞬で浮力を失いました。浮力を失った艦はそのまま沈むのですが、この段階では<ズヴァーブ>はまだ<パトリック・ヘンリー>のラムに貫かれたままの状態ですのですぐには沈みません。

<パトリック・ヘンリー>の艦首を<ズヴァーブ>から切り離すには判定が必要です。直後の切り離し判定は失敗。<パトリック・ヘンリ>は推力を失った状態のため、河の流れに抗しきれず流されます。いきつく流れの先には中洲があり(中洲を避けようとショートカットで迂回した訳ですからすぐそばに中洲があるのです)、中洲の浅瀬にひっかかります。座礁です。

写真奥側から来た<パトリック・ヘンリー>と手前側からきた<ズヴァーブ>(青色の小さいユニットのほう)が、同じタイミングで同じヘックスにはいったことから衝突が発生。
船体が小型な<ズヴァーブ>は一撃で浮力を失うが、直後、<パトリック・ヘンリー>は<ズヴァーブ>の船体の切り離しに失敗し、衝突状態のまま左手に流され、中洲の浅瀬で座礁してしまう。

 

次のターン、<パトリック・ヘンリー>は<ズヴァーブ>の切り離しに成功し、<ズヴァーブ>の船体はそのまま沈んでいきます。さらに浅瀬からも脱出するのですが、座礁により損傷を受けた状態になっていました。

 

南軍の3隻は<ミネソタ>に接近すると射撃を開始しますが、河の流れに沿って<ミネソタ>の舷側方向に出ると、<ミネソタ>(手前の「G」というマーカーがのったユニット)から猛烈な射撃をくらいます。ことさら木造船は損害が続出します。一方の<ミネソタ>も相当の打撃を受けるのですが、巨大な船体のためなかなか耐久力が枯渇しません。命中箇所ごとに耐久力があるため、命中弾は多数あるものの命中箇所が分断され、致命的なレベルには達するのが難しいのです。
あげくは砲数の違いから南軍艦のほうが撃たれすぎることになってしまいます。

その間も<モニター>は小型の艦形を活かしてクルクルと旋回しながら執拗に南部側の軍艦を砲撃するのですが、貫通力不足から打撃は与えられても、致命的な損害には至りません。

そうこうするうちに時間切れにて終了となりました。

 

版画: 戦争の鉄船の最初の戦い、ヘンリー・ビルによるリトグラフ (1862)

手前の船が<モニター>、その奥が<バージニア