第二次世界大戦における海軍作戦をグローバル規模で扱った「SEAS OF THUDER」(GMT Games)を対戦した。
ゲームの概要
登場するのは枢軸国・連合国だけではなく中立国も含めて当時地球上に存在した戦闘艦艇のかなりの部分をカバーしているのではないかという勢いで、巡洋艦以上は1隻、駆逐艦・潜水艦は4~10隻で1ユニットという規模でカバーしている。一部の補助艦艇も収録されているためユニット数は5シート1400枚に達する*1。
登場国は、ドイツ・日本・イタリア・イギリス・アメリカ・ソ連・フランスの主要国の他、ルーマニア、トルコ、アルゼンチン、ブラジル、スペイン、キューバ、ノルウェー、フィンランド、オランダ、ギリシャ、ペルー、スウェーデン、ユーゴスラビア、チリ・・・とどのような艦艇が存在するのか想像がつかないような国も含まれている*2。スウェーデンの巡洋艦として<ゴトランド>もしっかり登場する。
空母<翔鶴>のユニット。もちろん別ユニットとして<瑞鶴>も登場する。
ユニット下部の数値は左から、砲戦能力-(特殊能力)-耐久力-航続距離となっている。特殊能力というのは、ユニットの右中央にある赤字のもので、<翔鶴>の場合、これが「Air」となっているので航空戦能力となる。特殊能力として他には、「SUB」(潜水艦攻撃能力)、「ASW」(対潜水艦攻撃能力)、「MINE」(機雷攻撃能力)が登場する*3。
航空戦能力の最大はアメリカ海軍のエセックス級の「10」、日本海軍での最大は<加賀>が「9」となっている。航空戦能力が搭載機数に比例するとすると
搭載機数=航空戦能力×9
くらいの数値になっているのではないかと推測。
とはいえ史実での搭載機数が3機だった<伊四百>級の航空戦能力が「1」だったりするのでスペックのレーティングは他の要素も考慮されているのだろう
全世界の海を細かくエリア毎に分割されている。ユーラシア大陸の中にある巨大な湖は黒海だ。各エリアにはそのエリアを支配している際に毎ターン得ることができるVPが記載されている。マップは日本・アメリカの参戦前と参戦後の2パターンがハードマップの裏表に用意されている。
歴戦のウォーゲーマーであれば一見して「WAR AT SEA」や「VICTORY IN THE PACIFIC」(ともにアバロンヒル社製、以降、WAS&VIP)を想起すると思うが、デザイナーズノートでもこの2つの過去作への言及があり、影響を受けた作品として名前が挙げられている。
1ターンは約3ヶ月を表す。
第二次世界大戦の開始(1939年9月)から終戦(1945年8月)までを全25ターンで扱う。全期間を3~4ターン毎に分けた7つのシナリオも用意されている*4
イベントカードやイベント表を用いるようなランダムに発生するイベントはなく、参戦や降伏といった重大イベントは予め決められたターンに発生する。イタリアの参戦(1940年4月)は第4ターン、フランスの降伏は第4ターン終了時、日本とアメリカの参戦は第11ターンとスケジューリングされている。
大戦期間中に登場する新造艦についても決められたターンに登場する。
シナリオの期間毎に母港として艦艇を配置できる港が定められており、例えば日本軍が登場する最初のシナリオではシンガポールは港として使用できないが、次のシナリオ期間にはいると使用できるようになる、というように陸上の戦闘や戦線の変動が反映される。国の参戦(または脱落)、新造艦の登場なども含め、可変ではなく所与のスケジュールに沿って発生するという仕立てになっている。
勝利条件
キャンペーンゲーム、シナリオとも終了時にVPを比較することにより勝敗を決める。
VPの獲得手段としては大きく3種類が用意されている。
① エリアの支配
マップ上のエリアのうち重要性が高いエリアにはそのエリアを支配した際に得ることができる勝利ポイント(1~4ポイント)が設定されている。
各エリアの勝利ポイントは枢軸国が支配した場合と連合国が支配した場合とで異なることが多い。VPが高いエリアについては両陣営での争奪が発生することになる。
エリアの支配のためには戦闘フェイズの終了後にある判定のタイミングでどちらかの陣営の艦艇のみが存在することが必要である。
各ターン毎に艦隊・艦艇は母港に帰港するため、エリアの支配は毎ターン新たに判定を行い、VPポイントもターン毎に加算されることになる。
② 敵陣営の船団(CONVOY)の除去
本ゲームのユニークな仕掛けとして船団(CONVOY)がある。
両陣営それぞれ約20個程度の「船団マーカー」があり、北大西洋、インド洋などと配置できる海域の指定はあるものの、各ターンの最初にマップ全体に「船団マーカー」を配置する。
敵陣営の「船団マーカー」が配置されたエリアに艦隊・艦艇を移動させ、判定の上、除去に成功すると1マーカーあたり1ポイントが得られる。
敵陣営の「船団マーカー」の除去のために出撃するのと同様に、自陣営の「船団マーカー」を防護するために出撃することもありえる。移動フェイズの終了時に同じエリアに敵陣営の艦隊・艦艇が存在した場合、海戦が発生することになる。
③ 敵陣営の艦船の撃沈
敵陣営の艦船を除去(撃沈)した場合には艦種を問わず1隻=1ポイントを獲得する。
艦船を撃沈するためには1度の戦闘においてその艦船の<耐久力>を上回るだけの損害を与えることが必要となる。
与えた損害が<耐久力>の一部だけにとどまった場合は、損傷艦となりドッグにはいり、ダイスによって決められた修復期間(1~3ターン)、出動できなくなる。
勝利ポイントを確保するため、艦隊・艦艇をVPポイントが設定された特定の固定的なエリアへ進出させるか、毎ターン場所が変動する「船団マーカー」が存在するエリアに進出するかが必要なことになる。艦艇の撃沈によるポイントは進出した先で敵陣営と海戦が生じた場合に発生する副次的なものといえる。
ゲームの手順
ゲーム手順はシンプルだ。ひとつのターンは次の手順からなる。
- 国の参戦・新造艦の登場
- 船団マーカーの配置
- 艦隊の移動
- 基地航空隊(LBA:Land Based Air)の出撃
- 戦闘の解決
- VP計算
- 艦隊の帰港
(このあたりは本ゲーム独特の部分になるが)「船団マーカー」の配置は自陣営分の半分、敵陣営分の半分の個数を配置する。残りは相手プレイヤーが配置することになる。
自陣営のマーカーの配置は相手から攻撃しにくい場所を選ぶ、敵陣営のマーカーの配置にあたっては攻撃しやすいエリアに配置するなど工夫が必要だろう。
とはいえマーカーの枚数が多く、1エリアに連合国・枢軸国それぞれ1枚ずつしか配置できないのでそれほど配置に趣向をこらすことができる訳ではない。
例えばバルト海はソ連が参戦するまで実質、ドイツ艦隊だけが活動できる領域になる*5。この場合、枢軸国プレイヤーは北大西洋を配置位置として指定されている「船団マーカー」をバルト海のエリア(2エリアしかないが)に配置することで、枢軸国側の「船団マーカー」であれば連合国側の迎撃を受ける心配をする必要がなくなるし、連合国側の「船団マーカー」を配置すれば連合国の艦隊・艦艇に邪魔をされることなく、容易に狩ることができるだろう。
枢軸・連合国の両プレイヤーが船団マーカー配置が終わったところ
世界中の海に、青いマーカー(連合国側の船団マーカー)と緑色のマーカー(枢軸国側の船団マーカー)が配置されている。
登場する各艦艇はターンのはじめに自陣営または中立港のいずれかの港に配置されており、出撃後、ターンの終わりにふたたび自陣営または中立港に帰港する必要がある。港によっては収容できる艦艇の数に限りがあること、特に中立港は1隻ずつしか配置できないため、帰港先がない、といったことがないように出撃させていく必要がある。
出撃ではユニットにある「航続距離」のエリア数まで移動できる。途中のエリアに敵艦隊が存在しても通過可能だ。
<翔鶴>の「航続距離」のスペックは太平洋を行動範囲としている戦闘艦艇としては標準的なのだが、欧州側の艦艇の中には「航続距離」が1とか2といった艦艇も存在するいっぽうで、ドイツ海軍の仮装巡洋艦のようにキールを母港としながらも世界中のどこへでも出撃できるほどの長大な「航続距離」をもった艦艇も登場する。
この移動にあたってユニットは移動先のエリアでユニットを裏返しにされる。本ゲームにはダミーユニットは存在しないため、数だけは伝わるがどのような艦種の艦艇がそのエリアに出動してきたのかは相手にはわからなくなる*6。
移動順はシナリオ毎に決まっており、第1シナリオの期間では、連合国が先手、枢軸国が後手となっている。枢軸国は連合国艦隊がどこに艦艇を移動させたのかを見た上で出撃エリアを選定できることになる。史実のドイツ艦隊がそうだったように、イギリス海軍の裏をかきつつ、世界の各所で通商破壊に勤しむという立ち振舞いが可能となる。
シナリオ毎に使用できる港湾が表示されたシート
写真はシナリオ1(1939年9月~)の枢軸国のもの。左上のユニットが多く配置された港はドイツ海軍の最大の基地キール港(収容数:無制限)
1940年7月頃(第5ターン)の欧州周辺海域
フランスの降伏によりヴィシー・フランスの艦隊が枢軸側のコントロール下にはいった頃。地中海でイタリア艦隊のスタックがリビア沖のエリアに出撃、ヴィシー・フランス艦隊もコルシカ島あたりに出撃している。
その他のエリアでも「船団マーカー」の除去または護衛、エリアの支配などのため各所に両陣営の艦隊・艦艇が出撃している。
(つづく)
*1:本ゲームはマーカーの類が少なく100枚もないので艦艇ユニットだけで1300枚超となる
*2:このうち中立国の参戦等は選択ルールで提供されている
*3:特殊能力を持たない艦艇もある
*4:グローバルで海軍作戦を扱うというコンセプトのためか太平洋戦域のみ、欧州戦域のみといった一部のエリアのみを扱うようなシナリオはない。
*5:イギリス艦などの連合国側の艦隊・艦艇が侵入することは可能なのだが、大戦期間によってはスカゲラク海峡の機雷原を突破(機雷による損傷チェック)を受けなければならず、またドイツの基地航空隊の攻撃圏内にわざわざはいるだけのリスクを侵すこともないだろう
*6:ターンを重ねていくと、それまでの出動実績や付近の港からの距離である程度推測はできるようになるだろうが