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「SEAS OF THUNDER」(GMT Games)を対戦する(2) 戦闘ルール概要

第二次世界大戦における海軍作戦をグローバル規模で扱った「SEAS OF THUDER」(GMT Games)を対戦しました。

 

 

 

 

ルールブックの表紙です。
少々、砲塔が大きく見えますがこれって大和級ですよね?

 

 

 

 

前記事の振り返り

支配ポイントが設定されたエリアの支配か、敵陣営の船団(CONVOY)マーカーの除去の2つが勝利ポイントの主な獲得手段となります。前者の場合、場所は固定ですので、ポイントが高いエリアを中心に争奪が起きるでしょう(シーレーンやチョークポイントなどが該当)。後者はターン毎に多数の船団マーカーがあちこちに配置されますので、どのエリアが目標エリアになるかは毎回異なってきます。
敵陣営の艦船を撃沈した場合も得点することはできますが、艦種を問わず一律1隻=1ポイントと割り切った設定になっています。

勝利ポイントの獲得方法から推察するに、海軍作戦の目標は突き詰めれば、制海権の確立と海運・通商航路の破壊ということなのでしょう(敵艦隊の撃滅は目標ではない)。

 

エリアを支配するためには、エリアに自陣営側のユニットだけが残っている状態にする必要があります。ターン毎にポイントを獲得できますので長期間確保できれば何度もポイントを獲得できることになります。

敵陣営の「船団(CONVOY)マーカ」を除去するにはそのエリアに艦艇や航空隊を送り込みチェックに成功する必要があります。

 

ゲームの手順(1ターン=約3ヶ月、ターン毎に実施する手順)

  1. 国の参戦や新造艦の登場
  2. 船団マーカーの配置
  3. 艦隊の移動
  4. 基地航空隊(LBA:Land Based Air)の出撃
  5. 戦闘の解決
  6. VP計算
  7. 艦隊の帰港

 

手順表の3、4を実施することで艦艇や航空隊は目標となるエリアに移動します。
移動にあたって、艦艇ユニットは裏返され艦種が相手にはわからない状態で実施されます。このゲームにはダミーユニットは存在しませんので、出動した艦艇・航空隊の数は確認できますが、内訳内容は不明ということです*1

3、4の手順後、両陣営の艦艇または航空隊のユニットが同じエリアに存在した場合、戦闘が発生します。一部の仮装巡洋艦のように航続距離(移動可能なエリア数)が長大な艦艇もありますので、戦闘は世界中の海で発生するでしょう。さらに日米の参戦後はまさに地球上のあらゆる海で戦闘がが起きることになります。

戦闘はエリア毎に解決されます。
マップ上には百数十のエリアがありますので、ひとつのターンを完了させるには戦闘が発生したエリアの数分、戦闘解決を行うことになります。デザイナーノートによれば、1ターンの所要時間は2時間程度としています。

 

 

登場する艦艇・航空隊

登場する艦艇の種類は多岐にわたります。
上のサンプルでは、左側真ん中の赤字の略号が艦艇種類を表します(<翔鶴>はCV:航空母艦)。また一部のユニットには特殊戦能力という能力が付与され右側真ん中に赤字で記されています。<翔鶴>は航空母艦水上機母艦潜水空母が持つ航空戦を行うことができる能力として「Air:航空戦能力」が記されています。特殊戦能力によっては、同じ艦種であっても持っていたり持っていなかったり違いがあるものもあります。

この後に説明する戦闘解決手順の中では、艦種や特殊戦能力によって参加できる戦闘種類が区別されます。

 

特殊戦能力の種類

  • Air 航空戦能力
  • ASW 対潜水艦戦能力
  • Mine 機雷作戦能力
  • Sub 潜水攻撃能力

 

 

登場する艦種

なかには一見して何!?という特殊戦能力や艦種もありますが、後で説明します。

 

航空機が関係する攻撃は航空母艦などの航空戦能力をもった艦艇が行うことができるのですが、艦艇以外に「基地航空隊(LBA:Land Base Air)」のユニットが登場します。基地航空隊は自陣営の港(基地)に隣接したエリアに出動することができます*19。ひとつの基地から発進できる基地航空隊ユニットは1ユニットに限られ、またひとつの基地航空隊ユニットの航空攻撃能力値は最大でも5程度ですので、日本海軍やアメリカ海軍の正規空母クラス1隻分の航空戦能力(9~10)に比べると大きくはありません。ドイツ海軍のように航空母艦保有していない国にとっては唯一の航空戦力となります。

 

戦闘ルール

戦闘は「戦闘手順シート:Combat Sequence Mat」(以降、CSM)を用いて解決されます。CSM上に戦闘に参加するユニットの種類や攻撃目標によって分類される9つのボックスがあります。戦闘が発生したエリア毎に、両プレイヤーはそのエリアに存在した艦艇または航空隊の全てのユニットを、相手に見えないように、自陣営のCSM上に配置します。同時に公開し、ボックス毎に順番に解決を行っていきます。

 

Combat Sequence Mat上のボックス種類と実施順番

  1. 制空戦闘
  2. 航空攻撃
  3. 対潜水艦攻撃
  4. Raider(船団攻撃の準備)
  5. 潜水艦攻撃
  6. 機雷作戦
  7. 水上戦闘
  8. 水上戦闘リザーブ
  9. 船団攻撃

 

Combat Sequence Mat 

エリア毎に解決される戦闘にあたって、戦闘に参加する自陣営のユニットはマット上のいずれかのボックスに配置される。このボックスへの配置は相手にはわからないように行った後、一斉に開示され、左上の「AIR SUPERIORITY(制空戦闘)」から順番に戦闘を解決していく。

 

「1.制空戦闘」「2.航空攻撃」は航空戦能力をもったユニット(航空母艦、基地航空隊など)を配置できます。
「1.制空戦闘」では航空機(=航空戦能力)による艦艇に対する攻撃に先立って、航空機同士の制空戦闘が処理されます。「1.制空戦闘」を生き残った航空機は、「2.航空攻撃」「3.潜水艦攻撃」に配置された航空機を迎撃できます。

「2.航空攻撃」では、航空機から水上艦に対する攻撃を処理します。
攻撃に先立って目標となった艦艇からは対空射撃が実施されます。対空射撃に生き残った航空機が対艦攻撃を実施します。ここで撃沈されたり、損傷を受けるとその艦艇はその後の戦闘には参加できません。

「3.対潜水艦攻撃」では、「ASW:対潜水艦攻撃能力」か「Mine:機雷作戦能力」を持った艦艇(主に駆逐艦、一部の巡洋艦)と、このボックスに配置された「航空戦能力」(=航空機)が、潜水艦に対する攻撃を実施します。おそらく潜水艦に対する攻撃はこのボックスだけになりますので重要です*20

「4. Raider(船団攻撃の準備)」はやや性格を異にする処理です。巡洋艦か、仮装巡洋艦だけがこのボックスに配置することができます。
通常、艦艇ユニットはそのエリアの支配するために必要なのですが、このボックスに配置され、一定の条件をクリアした艦艇ユニットは、エリアの支配には絡まない代わりに、敵陣営の艦隊の迎撃を受けないという特典を得ることができるのです。

単艦で行動し通商破壊を行うドイツ海軍の仮装巡洋艦などの艦艇とそれを追うイギリス海軍の艦隊を再現する処理とも言えるでしょう。

「5.潜水艦攻撃」では特殊戦能力で「Sub:潜水攻撃能力」を持った艦艇(=ほとんどの潜水艦)*21が実施できる攻撃です。Uボート大活躍の処理であり、日本海軍にとっては鬼門となる処理かもしれません。

「6.機雷作戦」は説明を要する処理でしょう。
ここでは特殊戦能力として「Mine」を持った艦艇が活動します。「Mine」を持った艦種としては「掃海艦」(MS:Mine Sweeper)、「敷設艦」(ML:Mine Loader)があります。艦種が「ML」「MS」ではない艦艇でも「Mine」能力を持った艦艇は「敷設艦」(ML)と同等の扱いになります。
敷設艦」(か、同等の能力を持った他艦種)は、敵陣営の艦艇に対して機雷攻撃を行うことができます。
「掃海艦」が存在した場合は、相手の「敷設艦」のうち1隻分を無効にできます。

なぜにこんな処理がはいっている?と思うかもしれませんが、ここで本作で1ターンが約3ヶ月であることを思い出す必要があるでしょう。
CSM上での処理されている戦闘処理は一点・一回で発生した艦隊作戦を処理しているのではなく、3ヶ月の間にそのエリアで発生した複数の海軍作戦をまとめて一連の処理の中で判定しようとしていると解釈するのでしょう。機雷作戦はそうした中で実施された作戦のひとつなのです。「敷設艦」や「掃海艦」が艦隊と行動を共にしていたというよりも、こうした艦種の艦艇が、日常的に実施していた地味な作戦もあったということではないでしょうか。

「7.水上戦闘」はここでまで登場していなかった戦艦をはじめとする艦艇による戦闘、砲戦をともなう海戦を扱うものです。

ただしこれより前の段階になる「航空攻撃」「潜水艦攻撃」「機雷作戦」などで損傷を受けた艦艇は、その段階で脱落していますので、いざ「水上戦闘」を実施する段階には少なくない艦艇が脱落しているということも考えられます*22

両陣営は戦闘に参加する艦艇を戦闘に参加する順番を決め一列に並べ並び順に射撃を行い、また並び順に目標を定め判定します。

 

本ゲームの戦闘解決方法の基本的な手順は、攻撃を行う種類に関わらず「命中判定」を行い、その後、命中数分の「損害判定」を行うという流れになります。

「命中判定」では、攻撃の種類によって異なるのですが、「水上戦闘」の場合は、攻撃を行う艦艇の砲戦能力値と同じ数のダイスを振り、「1」単体か「2」のゾロ目が出た回数が命中となります。「潜水艦攻撃」の場合、ダイスを振る個数が「Sub:潜水攻撃能力値」になります。戦闘の種類により、命中と判定されるダイスの目が異なる、または「損害判定」は固定値といった違いはありますが、基本は同じです)。

「水上戦闘」の場合、「損害判定」として、命中回数分の個数の6面ダイスを振り出目の合計値が目標艦艇に与えた損害になります。目標艦艇の耐久力と比べて、損害が耐久力以上になった場合は撃沈、未満の場合は損傷として、損傷チェックを行います。

 

9つのボックス毎の処理が終わると該当エリアの戦闘が終了し、次のエリアでの判定にはいります。

 

 

その他・補足

損傷を受けた艦艇ユニットは、修復に要するターン数をダイスによって決め(「修復チェック」)そのターン数の間、ドックの中にいることになります。

艦艇には燃料の概念はありません。燃料を気にせずに毎回、フル出動が可能です。

「航空戦能力」は航空機の機数に比例しているのですが、前のターンに損害を受けていたとしても、次のターンにはフル戦力での出撃が可能です。国別・時期別・装備している機種別、パイロット技量などの差はありません。

大戦後半、日本軍が苦しみ抜いた、燃料不足・パイロット不足・搭載機不足といった問題から開放されているのです。史実ではろくに出撃できなかった、<天城><葛城>もフル出撃ができます。

水上戦闘において砲撃戦と雷撃戦の区別はありません。どうも本ゲームのユニットの砲撃戦能力は主砲の口径や数だけで数値化されているようで、雷撃への考慮はあまり見られません。結果、<北上><大井>のような雷撃特化のような艦艇への考慮はありません。この2隻の砲撃戦能力は、他の5500トン級軽巡洋艦と同等と評価されています。

真珠湾攻撃ミッドウェイ海戦を再現するようなイベントカードやイベントなどのルールはありません。

 

「6.機雷作戦」の説明でも書きましたが、このゲームの1ターンは約3ヶ月です。
あるエリアへの艦艇の出撃は1回だけの艦隊の出撃を描いているのではなく、3ヶ月間の中での幾多の海軍作戦を扱っているという解釈なのだと思います。
「機雷作戦」が登場するのも、また水上機母艦のように本来は艦隊行動の中ではなかなか同行していなかったような艦種の艦艇が複数登場し、出撃するのも同じ理由ですね。

 

水上戦闘のルールが敵味方の艦艇を一列縦隊並べて順番に解決、ということから「日露戦争」(国際通信社/エポック)の上級海戦ルールとか、GDWのヨーロッパシリーズの海戦ルールに似てたんじゃない?と思って、GDWのほうを見てみたら、GDWのほうが複雑でした(縦隊にするところまでは同じですが、相互の距離の概念も取り入れられている)。

 

 

 

 

 

 

 

*1:港からの距離などから推察することはできるかも知れません

*2:日本陸軍が運用した<あきつ丸><にぎつ丸>も航空母艦として登場します。

*3:大戦後期になるとアメリカ海軍には続々と艦艇が就役したのですが、ゲームでも実にいやになるくらいの数の艦艇が登場します。しかもそろって性能が高い!エセックス級航空母艦は14隻、その他に護衛空母が80隻程度ユニット化されています

*4:大戦中に就役した艦艇がユニット化対象というルールのようで、<天城><葛城>は登場しますが、<阿蘇><生駒>はユニット化されていません。他国も含め未成艦は登場しません。

*5:日本海軍が運用していた特設水上機母艦(<聖川丸>とか<神川丸>とかの◯◯丸という船名の艦艇です)も複数隻登場します。<秋津洲>も登場します。

*6:<伊勢><日向>はユニットのシルエットは明らかに航空戦艦時代のそれなのですが、残念ながら航空戦能力は与えられていません。

*7:砲戦能力値だけを見ると<扶桑級><伊勢級><大和級>は同値を与えられていますが、耐久力を見ると、<大和級>は他の艦の2倍近い値を与えられています。なお砲戦能力値はこれら3艦よりも<長門級>は一ランク下、<金剛級>はさらにもう一ランク下になっています。

*8:大和級>のライバルといえる<アイオワ級>のスペックは<大和級>に比べるとすこしずつ劣った数値になっています。登場国の戦艦群を眺めると、<アイオワ級>一頭地抜けていて、<大和級>はさらにその上、という整理ですね

*9:戦艦、巡洋戦艦装甲巡洋艦と何が違うのかというと個艦の性能以外の相違はありません。

*10:巡洋艦重巡/軽巡の区別はありません。この艦種の中に、他国であれば巡洋戦艦と言って良い<アラスカ級>のような艦艇も含まれています。

*11:日本海軍の巡洋艦として、<八十島><五百島>が登場します。日本軍の爆撃で大破着底していた中華民国軽巡洋艦<平海><寧海>を引き上げて就役させた艦です。アズールレーンには登場しているようですが、艦これには未収録ですね。基準排水量が2,500トンくらいなので<夕張>クラスと思ったら、実は日本で建造されて輸出された艦艇で<夕張>を基に設計されたとのこと。戦利艦ともいえますが、こうした艦艇も収録されていて驚いています。<五百島>は英語で<Ioshima>となっていて、”硫黄島”かと思いました(余談)。

*12:<大淀>は耐久力などは重巡クラスなのですが、主砲塔の数が減っているため砲戦能力は軽巡洋艦クラスになっています。せっかくだから航空戦能力くらい欲しいなとは思いますが、実際はカタパルトもとっぱらって旗艦仕様になっていたため、特殊戦能力もなく、少々かわいそうなことになっています。

*13:砲戦能力値は主砲の口径と門数で決めているようで、雷撃力はあまり考慮されていtないように見えます。このため、<北上><大井>の重雷装装備は全く考慮されてなく(そもそも認識されていないかも)、両艦の戦力は、他の5500トンクラス軽巡洋艦と同じになっています。デザイナーズノートには、日本軍にはユニークな艦艇が多いといった記述はありますが、ユニークさを表すレーティングになっているともっと良かったなと思います。

*14:1ターンが約3ヶ月という扱いのため、”偵察”の概念はレーティング等へは現れていないようです。個人的なひいき筋ではありますが、<利根級>や<最上>あたりは平凡な巡洋艦の扱いです。

*15:航空攻撃に対する対空力は艦艇毎の性能ではなく艦種毎に同一の値が与えられているため、<秋月級>や<アトランタ>のように対空戦闘力に優れた艦艇の特徴はでていません。<秋月級>について言えば大戦後期に登場したということからか、それまでの日本海軍の駆逐艦に比べると、ASW(対潜水艦攻撃能力)が高い艦艇になっています。<松級>は3ユニット登場しているのですが、<秋月級>は1ユニットだけというのも残念

*16:島風>は完全にオミットされています。単艦しかなかったからしかたないといえばそれまで・・

*17:イタリア海軍に”フロッグメン”のようなユニットは登場しません。

*18:偵察用の水上機ではなく爆装できる水上機を搭載する潜水艦ということで、我が伊四百級から<伊400><伊401><伊402>が個艦として登場します。SSAVではないですが20センチ連装砲をもったフランスの潜水艦スルクフは登場しません

*19:日本海軍航空隊はもう少し航続距離を伸ばしてくれよとは思いますが、本ゲームの航空戦力は、国別・時期別・装備機種毎での差はないというデザインになっています

*20:攻撃されるタイミングが限定されるため、潜水艦は他の艦種に比べ相対的に強いと言えます

*21:一部特殊戦能力として、「Sub」ではなく、「Air」や「Mine」を持っているものがあり、それらは対象外です。「Air」を持った潜水艦は、<伊四百級>が該当します。

*22:レイテ湾海戦時の栗田艦隊の艦艇のように