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「SEAS OF THUNDER」(GMT Games)を対戦する(3/完) 対戦記録

二次世界大戦における海軍作戦をグローバル規模で扱った「SEAS OF THUDER」(GMT Games)を対戦しました。

 

 

 

 

シナリオ1をプレイ(そのままシナリオ2に突入)。枢軸国を担当しました。

本ゲームのシナリオは第二次世界大戦の全期間を期間毎に7つに分割したもので、太平洋戦域シナリオや欧州戦域シナリオのように戦域毎のシナリオはありません。

シナリオ1は1939年9月の開戦から1940年3月までが対象で全3ターン。

いずれのシナリオもシナリオ終了時での勝利ポイントで勝敗を決めるのですが、勝利ポイントの獲得方法はいずれも同一、シナリオ期間中の両勢力の戦力は史実に沿った内容になっているため、シナリオのゲームバランスはよくありません。少なくともシナリオ1についていえば、全世界の植民地の港湾に艦艇を持っているイギリス・フランスに対して、枢軸国は、ドイツ本国にしか港がなく(中立の各港に1隻限定で配置することは可能)、艦艇数も英仏両軍の数分の一しかないため、得点チャンスは多くはありません。
確かに仮装巡洋艦や南米の中立港を根拠地とした巡洋艦などにより通商破壊戦を仕掛けることは可能ですが、連合国側はそれ以上に全世界規模で枢軸国側の「船団マーカー」を攻撃することになります。

これが第4ターン(1940年4月)になると、イタリアが枢軸国側、ノルウェー・オランダが連合国側に登場、同ターンの終了時にフランスが連合国から脱落、第5ターンにヴィシー・フランスへと旗幟を替えて枢軸国側へ参加と、戦力バランスががらりと変わります。

 

初期配置

イギリス/フランスは特別ルールで自勢力下の全ての港湾に最低3隻(フランスの場合は2隻)の艦艇を配置するという制約が課せられています。

ドイツは自勢力下の港は3か所キールハンブルクケーニヒスベルクしかありません。地中海・南米・中米・極東に点在する中立港へは1か所あたり1隻のみ配置することは認められています。

 

ここで場外から重要なアドバイスが・・・

  • ドイツの航続距離が1,2しかない艦艇は、キールなどの本国の港に配置すると北海や英仏海峡あたりに出動するだろうイギリス艦隊に阻まれて外海へは出ることができなくなる
  • 1か所あたり1隻という制約はあるが中立港へも積極的に配置しないと、イギリス艦隊の妨害があるため活動の場が著しく減ってしまう

 

ドイツの旧式な駆逐艦などに航続距離が1という艦艇ユニットが少なからず存在します。そのような艦艇は根拠地にしている港に隣接したエリアまでしか出動できないのですが、キール/ハンブルクが面したエリアやそのさらに先のエリアは北海・ノルウェー沖・英仏海峡北大西洋と、いずれも支配ポイントが得られるため、イギリスの本国からそれなりの数の艦艇が出動することが見込まれ、さらにはイギリスの港(基地)にも隣接することから、イギリスの基地航空隊の出撃範囲、いわゆるエアカバーの範囲でもあるのです。
そんなエリアにのこのこ出かけると戦闘になることは必至です。

枢軸国はターンの手順において後手になるため、連合国(イギリス艦隊)がどこに出動したかを見てから移動することができるのですが、連合国側からすると、枢軸国の艦隊が出動することが想定されるエリアには積極的に艦艇を派遣するでしょう。ドイツ艦隊は旧式戦艦をかき集めても1セットしかないのに対し、イギリス艦隊は複数セットを運用できるのですから。

またこの時期、枢軸国側にUボートは少ないため、さほどの脅威にはならないでしょう(後にUボートは大幅に増強され、ドイツ海軍はまさにUボート艦隊のような体になります)。

 

 

プレイ

ゲームの性格上、細かく展開を追っても意味はないでしょうから、流れを紹介します。

 

船団マーカーは初期段階で、連合国マーカーが40枚、枢軸国マーカーが30枚あります。これをそれぞれ2分割し、連合国プレイヤーが、連合国マーカーの20枚、枢軸国マーカーの15 枚、枢軸国プレイヤーも同数のマーカーを全世界の任意のエリアに配置します(同じ側のマーカーは1エリアあたり1枚のみ配置可能)。

 

連合国・枢軸国両勢力が、それぞれの船団マーカーの配置を終わったところ

 

配置終了後、艦艇の出動を行います。先手は連合国になります。枢軸国は連合国がどこに艦艇ユニットを出動させたかを確認した上で、出撃ができることになります。相手が出動させた艦艇の艦種はわかりませんので、推測をしながら出撃することになります。

 

その港を母港とする枢軸国の艦艇ユニットの航続距離内で、連合軍側の船団マーカーが配置されていて、艦艇ユニットが出撃していないエリア、または支配ポイントが設定されているが同様に連合国の艦艇ユニットが出撃していないエリアが第一の出撃先となるでしょう。
枢軸国の船団ユニットが配置されている、または支配ポイントが設定されている先で、連合国の艦艇ユニットの数が少ない先も対抗できると考えられるなら、艦艇を出撃させてもよいかもしれません。
ただいずれのパターンの場合も、連合国の港(基地)に隣接するエリアは、基地から発進する「基地航空隊」のエアカバーの範囲内になりますので、航空攻撃を受けることは必至になります。注意が必要です。

 

ドイツ海軍の一部の仮装巡洋艦は航続距離が20前後のものがあり、こうした艦はキールを母港としながらも世界中に出動できます。極東や太平洋までくるとさすがにイギリス艦隊の密度は低くなります。

 

ドイツ艦隊目線で使い勝手がよい艦種は次の2種です。

仮装巡洋艦巡洋艦: 

  • 戦闘が発生した場合も、「Raider」のボックスに配置することにより、航空攻撃を受けた場合も、被命中率が低い
    相手の艦艇ユニットよりも航続距離が長い場合は水上戦闘を避けることができる

潜水艦: 

  • 「対潜水艦攻撃」でしか攻撃を受けない
    (相手ユニットが、「Air」「ASW」「MINE」の場合のみ「対潜水艦攻撃」のボックスに配置可能)

 

通常の水上艦艇は、水上戦闘に巻き込まれるため、優勢を確保できない限り、戦闘には及ばないほうがよいかもしれません。

史実で開戦直後、巡洋艦<アドミラル・グラフ・シュぺー>が南米で通商破壊を行ったように、イギリスの支配下にある港(基地)が少なく、イギリスの基地航空隊のカバー範囲にはいりにくい、南米・中米の中立港にも巡洋艦や潜水艦を配備し、出撃させます。

 

第5ターン(1940年6月ごろ)
イタリア艦隊、ヴィシー・フランス艦隊が参加したところ。
イギリス本土周辺、地中海のあちこちに艦艇ユニットのスタックができている

 

感想戦

ゲーム上のテクニックはあっても海軍作戦そのものや戦略を語るようなゲームシステムではありません。エリアに設定された勝利ポイント(または船団マーカー)に誘導されるまま出撃し、遭遇した敵艦隊との戦闘を解決していく、という作品です。

出撃時に相手ユニットを確認できない隠蔽状態で処理されることから、ソリティアには若干向いていません。ただしゲームボックスに表示があるSolitaire Suitabilityは「6/10」なので、全く向いていないという評価でもないです。

 

海軍作戦そのものもかなりデフォルメが施されています。
1ターン=約3ヶ月という長さから想像すると、第1次ソロモン海戦と第二次ソロモン海戦と第3次ソロモン海戦と鼠輸送とヘンダーソン飛行場への艦砲射撃のための出撃やラバウル飛行隊による空爆が本ゲーム内では1回か2回の戦闘解決で、両勢力が航空母艦や戦艦から、水上機母艦や潜水艦その他ごっそりと艦艇や基地航空隊ユニットを同じエリアに出撃させて、戦闘解決シートを用い、まとめて戦闘解決を行っているような、そんな大雑把さがある内容です。

 

実際、毎ターン、戦闘が発生したエリア毎に戦闘解決を行うため、かなりの回数の戦闘解決を行っていく必要があります。艦隊が出撃したようなエリアであればダイス振りは盛り上がりますが、それ以外のエリアは,疲れてくると若干作業気味になります。

 

船団マーカーの配置などもゲーム的な処理になっていてシミュレーション性があまり感じられません。かろうじてギリギリのところで(想像力で補完することで)運用できるといった印象です。史実のシーレーンからはずれて、ドイツやイギリスの艦艇がベーリング海南氷洋に配置された相手陣営の船団マーカーを狩りに行くというのも非現実的な展開のように感じられます。

 

戦闘解決ルールでは、「機雷作戦」がやはり違和感があります。日露戦争での<初瀬><八島>の遭難以降、機雷で沈んだ大型艦は寡聞にして知りません。大西洋戦域ではあったのでしょうか。
確かに各国海軍とも膨大な数の機雷を港湾や近海航路に敷設していったのは事実としてあり、それらを掃海するという地道な作戦も日常的に実施されていたのだとは思いますが、機雷による攻撃が航空機や潜水艦、または水上戦闘と同列に扱われるのは不思議な印象です。

 

戦闘解決の流れの中では、雷撃戦の考慮があればよかったかなとも思います(潜水艦攻撃も雷撃ですが・・)。確かに第二次世界大戦における海戦はすでに航空機や潜水艦の時代になっており、水上戦闘だけを詳細化するのはデザイン意図にそぐわないということなのかもしれません。

艦艇ユニットの性能値の評価についてはいろいろと意見があるようですが、デザイナーの意思ということでよいかと思っています。

 

いろいろと書きましたが、本ゲームの最大の魅力は1300隻超の艦艇ユニットであることは疑いようがありません。かつてウォーターラインシリーズを並べた記憶や、例えば、わざわざ同じ戦隊の艦艇を集めて出撃させる*1といったプレイが好き、はたまた「艦これ」ファンなら、本ゲームは大変魅力的な作品ではないでしょうか。

当然、わたしは最大限、本ゲームを推します。艦艇好きにオススメです。

 

(終わり)

 

 

 

 

 

 

*1:ゲーム中、同型艦による戦隊運用といった凝った運用を実施すると時間がいくらあっても足りないことになるので注意です。膨大な艦艇ユニットにそこまで気が回らなくなるのも事実ですが