エリアインパルスシステムによりフィリピン戦末期におけるコレヒドール島の戦いを扱った「コレヒドール 1945」(国際通信社)を対戦した。
コレヒドール島について
矢印の先のあたりに小さく存在する島がゲームの舞台、コレヒドール。
1941年12月日本軍のフィリピン侵攻時にはマッカーサーはコレヒドールに司令部を置いていた。翌3月にオーストラリアに逃れる。4月バターン半島のアメリカ軍が降伏、コレヒドール守備隊は5月に降伏した。
コレヒドール島はマニラ湾の入り口に位置する、おたまじゃくしか、柄杓のような形の島。確かにマニラ湾の入り口にあるとすると邪魔な存在だろう。ただフィリピン情勢の大勢が決しつつある中、この小島をなんとしてでも取り戻す理由はアメリカ軍にはあまりないようにも見える。かつてほうほうの体でここから逃れたマッカーサー*1からすると意地でも取り返さなければならなかった模様で、アメリカ陸海空軍三軍を動員した圧倒的な攻撃で1週間弱で島を占領する。
日本軍は海軍が守備隊をおいていたことから守備兵は海軍部隊であり、しかも陸戦の訓練を受けた陸戦隊だけではなく、レイテ湾海戦やマニラ湾空襲、多号作戦など、フィリピン近海で沈んだ多数の海軍艦艇の乗組員の生き残りが多く配置されたという。*21週間の戦闘により守備側の日本兵はほぼ全滅した*3。
ゲームは1ターン=1日とし、計7ターンで描いている。
現在、このコレヒドール島にはマニラからクルーズで訪ねる事ができるようだ。マニラから2時間弱とのこと。なかなか行けるところではないが、戦跡として訪ねてみたい。*4
ゲームシステム
エリアインパルスシステムを採用している。同システムのゲームを経験した事があるプレイヤーであれば特に支障なくプレイできるだろう。
エリアインパルスシステムの基本
1.インパルスを何回実施できるかはダイスで決まる
ひとつのターンの中には行動を起こすことができるタイミングとして昼間フェイズと夜間フェイズがある。さらにそれぞれのフェイズは複数回のインパルスと呼ばれる手順があることになるが、何回のインパルスを実施できるかはダイスで決まる。
ひとつのエリアを指定しエリア内のユニット(この際、同一エリア内であれば複数のユニットを対象とすることも可能)を活性化させる。これをインパルスと言う。インパルスは手番のプレイヤーが望めば2回以上連続して実施できるが3回目以降も連続して実施できるかはチェックを行うダイスの目によって決まる。回数がかさむ毎に可能性は下がるが、本ゲームで言えばこのチェック1D6で毎回6を出し続ければ何回でも連続させることができることになる。インパルスが終了すると手番は相手側に移る。
インパルスを連続させることができれば、例えば攻撃正面に兵力を集中するように複数箇所にいる兵力を移動し、集中的に攻撃を仕掛けるということを相手に邪魔されずに実施できるわけだが、集結途中にインパルスが終了することになった場合、手番は相手に移ることで目論見が頓挫するということが起こる。逆にうまく行けば相手が想定していないような箇所に攻撃を行うことも可能になるかもしれない。連続して行動する途中で相手は対処を行うことができなくなる。
なお個々のユニットが活性化できるのは1ターンのうち1回のみ(例外:アドバンテージでインパルス回数がリセットされた場合)なので、インパルス数が増えたとしても全体の活動が可能な分量は変化はない。
2.ゲームっぽい要素を加える「アドバンテージ」の存在
エリアインパルスシステムを特徴づけるもう一つの要素として「アドバンテージ」の存在がある。一種の切り札のような存在で発動させることにより、特殊な効果を得る。
エリアインパルスシステムのゲームには決まって採用されているルールだが、面白いのは「アドバンテージ」を発動させる権利は、使用すると相手側に移ることだ。なおこのゲームでは、毎ターンの昼間フェイズの開始時に強制的に「アドバンテージ」はアメリカ軍に移る。
アドバンテージを発動させた際の効果として次のものがある。
- ダイスの振り直し
いかにもゲームっぽい”切り札”だが、ここぞというダイス振りをやり直すことができる。”お守り”として心強いことこの上なし。 - インパルス回数のリセット
インパルスの終了チェックのダイスは連続して実施しているインパルス回数と反比例するように終了しやすくなることは説明したが、このインパルス回数をリセットできるというもの。つまりインパルス回数が1回目にリセットされる。論理的にはもう数回、連続するインパルスが増える可能性がでてくる。さらに両軍プレイヤーはそれまで活性化済のユニットを非活性化状態に戻すことができる
実はこれをアメリカ軍にやられると日本軍プレイヤーは精神に来る。特に昼間フェイズのアメリカ軍による容赦のない攻撃をしのいだという、そろそろ終わりそうだ、というタイミングでこのアドバンテージを宣言されると、アメリカ軍の活性化済の兵力が非活性化状態に戻ることにより、もうひと回り攻撃を行ってくることになるのだ。
もちろんこの際、活性化済の日本軍ユニットの状態も非活性化状態に戻すことになるのだが、日本軍の場合、夜間フェイズに備えて多くのユニットは非活性化状態であることが多いため、あまりメリット感はない。 - 回復
アメリカ軍と日本軍
ユニットはおおよそ中隊単位。
基本は歩兵だが、両軍とも保有する機関銃中隊には移動妨害、(対空挺)対空射撃といった能力(ダイスの目修正)が与えられている。
回復ルールもやや特殊だが説明は割愛。
強力なアメリカ軍
砲撃(砲兵部隊が実施)、航空支援による空爆、艦砲射撃はアメリカ軍のみが、昼間フィズの間のみ実施可能。
空爆と艦砲射撃は島内のどこへでも実施可能。
特に日本軍ユニットが集中している地上エリアは必ず狙われることが想定されることから、日本軍は昼間フェイズ期間内での兵力の集中はよほどの事がない限り避けたほうがよい。
隠匿配置・夜間浸透・バンザイ突撃の日本軍
日本軍は地下壕内に隠匿配置することができる。地下壕にある間、日本軍は攻撃を受けない。地下壕内のユニットは、アメリカ軍支配エリア以外であれば、島内のどこへでも登場できる。
通常敵ユニットが存在するエリアに移動した際には強制的に戦闘になるのだが、日本軍や夜間フェイズ中、浸透移動を宣言すると特殊な対応を引き起こす。
1/6の確率では浸透は失敗し強制戦闘になるが、2/3確率ではバンザイ突撃を宣言することができ日本軍の戦闘力を2倍にして攻撃を行うことができる。
ユニット単体で見た場合、日本軍の一線級ユニット(4−4−4)でもアメリカ軍歩兵(4−5−4)にそのままで攻撃を行うのは不利なため、この万歳突撃による戦闘力2倍は非常にありがたく、日本軍の攻撃はこれが基本になるのではないかと思われるくらい。
昼間フェイズ中は可能な限り地下壕でアメリカ軍の攻撃をやり過ごし、夜間フェイズでアメリカ軍の裏を書くような移動の末、バンザイ突撃により削っていく・・。というのが日本軍の基本的な過ごし方になるのではないだろうか。
マップ
島全体(若干、おたまじゃくしのしっぽの先は切れているが)が複数のエリアに分割されている。それぞれのエリアは地形により防御修正値が記載されている。
写真の地図は南北逆。上側が南になる。
(つづく)