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「OPERATION TYPHOON」(SPI/IED(国際通信社))を対戦する【3/3】対戦2日目

IED(国際通信社)より再販されたビッグゲーム「OPERATION TYPHOON」を2日間・4人で対戦しました。

 

 

 

 

2日目

くじびきを行ったのですが、担当はほとんど変わらないことになり、特に異議もなかったため次のように分担することになりました。

■ ドイツ軍: 北側(第3・第4装甲軍) yagi会長、 
        南側(第2装甲軍・第4軍) 大久保氏

ソ連軍: 北側(当方)、南側(提督氏)

ドイツ軍は南北の担当が交替、ソ連軍は前日と同じ割振りです。

 

初期配置

初期配置は、史実配置を用いました。

初期配置(史実配置)
以降、マップ左手が南、右手が北になります。

 

前記事では紹介していませんでしたが、ゲームスタート時にドイツ軍プレイヤーはソ連軍プレイヤーには秘密裏に戦略目標を決める必要があります。
ゲーム終了時に選んだ戦略目標を開陳し、勝利判定を行います。
戦略目標ごとに勝利条件が異なり、それぞれについて戦術レベル・作戦レベル・戦略レベルと異なった複数の勝利レベルが用意されています。戦略目標は次の3種類です。

  • モスクワの占領
  • モスクワを包囲するものの突破
  • モスクワ完全無視で東方への突破

ドイツ軍ファンが夢想する、ヒトラーがあそこまでモスクワにこだわらなければ・・というIFの世界も含め、広大なマップ上で試すことができるのです。

ソ連軍にとってもドイツ軍の戦略目標は気にする必要があり、モスクワ防衛に注力し、ドイツ軍によるマップ東端からの突破に備えた防衛線はあきらめるのか、部隊の展開にも大きく影響します。

 

第1ターン(1941年11月16日)

ドイツ軍プレイヤーターン終了時/北方戦区

黄色線はスタート時の両軍の戦線です。青灰色のユニットがドイツ軍。
第4軍左翼(北翼)から第4装甲軍の隷下部隊が前進しています。
写真はドイツ軍プレイヤーターン終了時ですので、黄色線と比較することで、ドイツ軍の攻撃が成功した箇所や前進の状況がわかります。

特別ルールにより第1~3ターンの間は第2装甲軍は補給を受けることができませんので、ドイツ軍としては余裕が出た補給ポイントを第4軍に回した形になっています。

 

ターン終了時/北方戦区

ソ連軍が後退し、戦線を整理した後の状態です。
前日の対戦では、戦線の引き直しが十分ではないところをドイツ軍につけこまれ、ユニット除去が増加したという失敗をしていますので、今回は早めに、十分な距離をとるように、後退をしています。
ドイツ軍の進攻は補給線の関係で道路沿いに行われることから、道路周辺以外から部隊を引き抜き、代わりに道路沿いの防御を一線から二線に手厚くする、後方道路の結節点や町には予備部隊として足が速い戦車旅団や騎兵旅団を配置するといった対応をとります。

 

第2ターン(1941年11月17日)

ターン終了時:北方戦区

傾向は変化はありません。
ソ連軍は、ドイツ軍に絡み取られないように後退しました。

 

ターン終了時/南方戦区

第2装甲軍は補給切れ状態ですが、主力がトゥーラを迂回し、東(写真下方向)に突進しています。結果、トゥーラ周辺ががら空き状態。第4軍との間隙も大きくなっています。

 

第3ターン(1941年11月18日)

ターン終了時/北方戦区

戦線に色がでてきたターンでしょうか。
第4装甲軍の正面でソ連軍の1スタックがドイツ軍に包囲され、退却できずに残ってしまいました。やむなく包囲下の部隊は残したまま、ソ連軍は前線を下げます。

ドイツ第3装甲軍はほとんど前進していないのですが、ソ連軍は第3装甲軍前面の戦線を下げます。第4装甲軍前面の戦線を下げたため、歩調をあわせた形です。
もっとも第3装甲軍のあたりはモスクワからも遠く離れているため、早めに撤収して部隊運用に余裕をつくりたいところです。ただ急ぎすぎると、ソ連軍の最右翼の翼端からドイツ軍に回り込まれる懸念があることと、ドイツ軍第3装甲軍をフリーにさせてしまうと、それはそれで面倒です。

ドイツ軍も、道路沿いに部隊を集めたため、森林ヘックスが多いエリアが手薄になってきています。また第4軍が、南戦区の第2装甲軍近くで戦線を張っている師団群と、北戦区の第4装甲軍と協同している師団群との間に大きく間隙が空いてきています。

 

第4ターン(1941年11月19日)

ターン終了時/北方戦区

ターン終了時/南方戦区



第5ターン(1941年11月20日

天候チェックは毎ターンの開始時にあるのですが、毎回「雪降れ、雪降れ」と祈っていました。寒くなればいいというものでもなく、天候が「晴天」か「曇天」で、地表が「凍結」してしまうと、装甲/戦車部隊は機動がしやすくなるので、これはこれで問題です。
ソ連軍にとっては、雪が降って、さらに地表が凍結する、という組み合わせがベストですが、確立は1/12です。

ターン終了時/北方戦線

写真で見ると一本調子で後退しているように見えるのですが、実はどこそこでユニットは除去され続けています。モスクワ市街やモスクワの東方(写真下側)にいる予備部隊から、少しは補充はされるのですが、除去された部隊を完全に穴埋めできるだけの数が来援するわけではないです。
写真右端、ドイツ軍の第3装甲軍の前面には2個歩兵師団のみを残し、モスクワ方向に後退させています。第3装甲軍が万が一、北の端を突破することへの備えですね。

モスクワに近いところは後退方向としてモスクワを意識しています。もう2~3ターンでモスクワをぐるりと取り囲む陣地ヘックスにたどりつくことになるでしょう。

問題は勝利ポイントの対象となっている都市クリンの扱いです。北方からモスクワ方向に後退途中の師団も加わって、そこそこの数の師団が付近に残っています。戦わずして放棄するのもなぁ・・と思いながら中途半端な状態でした。この思い切りの悪さがあとあと禍根を残すことになります・・。

もうひとつの問題は、モスクワの南西方向、写真左側、モスクワの南西方向(モスクワ市街から左上あたり)の森林ヘックス地帯にて、大きく間隙が空いてしまっています。ちょうど南方を担当する提督氏との境い目になっているエリアです。もともと森林ヘックスが多く機動がやりにくいこと、ドイツ軍もソ連側と同様2人のプレイヤーの分担が分かれていた境い目だったこともあり、両軍とも間隙を作ってしまっていたという訳です。

ひとつの軍を複数人で分担してプレイした際に起こりがちな事象ですね。

ターン終了時:南方戦区

こちらの写真のほうが、モスクワ南西方向の間隙がはっきりわかります。

南方はさらに劇的な状況になっていました。
勝利ポイント都市であるトゥーラとセルプトコフがドイツ軍によって緩く包囲されつつあります。トゥーラの東方でソ連軍スタックが包囲され、ここを突破されると、ソ連軍最左翼は翼端から戦線の裏側へ回り込まれそうです(ドイツ軍第2装甲軍担当大久保氏いわく「大包囲」)。
またセルプトコフからモスクワへ通じる道路沿いにもドイツ軍が進出しており、これがそのまま北進した場合、モスクワ南西部の防御は不十分です。

 

第6ターン(1941年11月21日)

ターン終了時/北方戦区

最北翼の第3装甲軍は東方(マップ下方向)ではなく、クリン方面に移動しはじめます。第4装甲軍前面では、ソ連軍の防衛線がモスクワを中心とした円弧状になってきます。
南方戦区ですが、セルプトコフが包囲されています。ただし、前ターンで懸念した第4軍のモスクワへの進撃はまだ先になりそうです。

ターン終了時/南方戦区

セルプトコフは完全包囲、トゥーラもほぼ包囲状態に陥っています。
トゥーラを迂回した第2装甲軍主力はモスクワを目指して北上しはじめました。

第7ターン(1941年11月22日)

ソ連軍プレイヤーターン移動フェイズ終了時/北方戦区

ドイツ軍プレイヤーターンが終了し、さらにソ連軍移動フェイズが終了した時点です。
クリンが第3装甲軍と第4装甲軍によって圧迫されています。

ドイツ軍プレイヤーターン終了時点で、クリン周辺のソ連軍部隊は第3装甲軍と第4装甲軍によって分断されつつありました。これまでの方針であれば、一部の部隊を犠牲にしつつ後退するところですが、えぐるように突出してきたドイツ軍装甲部隊を攻撃することで捨て石することなく抵抗できるかと考えたのでした。
写真はソ連軍移動フェイズ終了時なので移動後の状態です。
突出していたドイツ軍装甲師団(黒色ユニットは武装親衛隊!)に対して攻撃をかけます。

若干の楽観的見通しと、北方戦区のソ連軍としては初めての逆襲というシチュエーション、さらにはプレイ時間の制約等々を考慮し、攻撃に踏み切ったのです。
結果は無事にドイツ軍2個師団の除去に成功し、クリンと後方との補給線も確保できたのでした。

第8ターン(1941年11月23日)

ドイツ軍プレイヤーターン終了時/北方戦区

クリンの陥落はやむなしとして、クリンの東方向で10個程度のソ連軍師団が包囲されつつあります。前ターンでのドイツ軍装甲師団スタックへの攻撃のため、戦力を一箇所に集中してしまったために弱いクリン戦線の両翼から後方に回り込まれた形です。

ドイツ軍プレイヤーターン終了時/南方戦区

トゥーラとセルプトコフは包囲されていますが、ドイツ軍は強攻はしないようです(?)。ソ連軍の最左翼を第2装甲軍の主力が迂回しつつある点はソ連軍として今後の対処が必要です。

 

というところで、ソ連軍が危うい状況を迎えつつある中、時間も押してきたため協議終了です。ポイントは正確にはカウントしていませんが、このままクリン周辺で包囲されたソ連軍約10個師団が殲滅され、クリン、トゥーラ、セルプトコフが陥落されたとすると最低でもドイツ軍の戦術的勝利は固いだろうという判断です。

ソ連軍の増援はここから本格化しますし、またモスクワ周囲には陣地線があるためここからソ連軍の底力が発揮されるというところかもしれませんが、除去されたユニット数も多く、戦線の維持だけでもしばらくは綱渡りが続くでしょう。

 

感想戦

■ ビッグゲームをプレイするということ

ビッグゲームを堪能しました。

広大なマップと詳細な戦闘序列、膨大な数のユニット群を扱うビッグゲームのプレイは、ウォーゲーマーにとって常に憧れのプレイです。実際には時間的、空間的制約からなかなか実現できないものですが、今回は時宜を得て、またとない機会に恵まれました。

本作はビッグゲームの範疇に入る作品として、ユニット数もそれほど多くはありません。ユニット数が多いビッグゲームでは、多数のユニットの移動や戦闘解決に手間がかかり「作業」に陥りがちですが、本作ではそのようなことなくプレイできました。ユニット数が多すぎると、個々の移動や戦闘解決に手間がかかり、大局観を失いがちですが、本作では大局観を持ってプレイできたと言えるでしょう。

 

■ 今回のプレイについて

ソ連軍を担当したため、記事はソ連軍視点での記述となっています。書き込めていない部分もありますが、ゲームとしてはドイツ軍の方が制約が多いです。4つの軍の間での補給ポイントの割り振り、活性化する軍団の選定、同一師団効果や諸兵科連合効果などを駆使し、高比率を維持した攻撃を継続することは、それはそれで苦労が多そうです。

担当した北方戦区については、クリンの撤収タイミングの判断を誤りました。ドイツ軍に占拠されるのは避けられないと考えていましたが、一勝負もせずにあっさりと勝利ポイント都市を明け渡してしまうのは、撤収を躊躇してしまったためです。もっとあっさりと明け渡すことによって、ドイツ軍に何もせずに勝利ポイント(5VP)を与えることになるのも癪ですね。

戦術的には、クリン攻防戦において、ドイツ軍に対して攻撃を行うために、それまで丹念に維持してきた戦線を崩してしまいました(第7ターン)。これが続くクリン周辺の包囲(第8ターン)につながった点も反省点です。

ドイツ軍プレイヤーからは、もっとドイツ軍戦線の後方に騎兵師団などを派遣して、いやがらせをするといった手があったのではないかという指摘がありました。戦線を維持するための部隊確保に汲々としていたため、余裕がなかったのが正直なところですが、ドイツ軍の立場からすると、補給線を脅かされるなどいやらしい手になるであろうことは想像できます。

今回のプレイでは「天候」が安定していたため、ドイツ軍の足止めにはなりませんでした。地表の状態が「泥濘」になった時は、口には出さずに喜んだものの、本ゲームの「泥濘」はドイツ軍の足止めにはなりませんでした。

 

■ 「OPERATION TYPHOON」について

システムとしてはやや古い点は否めませんが、その分、ゲーム特有のルールを中心にチェックすれば、ゲームシステムの運用そのもので悩むことはありません。古いシステム故に、バグ出しが完了しているITシステムのようです。全ユニットがアントライド(初めて戦闘に参加する際に戦力値が決まる)になっているにもかかわらず、ゲーム自体が崩れないのはさすがと言えるでしょう。

プレイ可能なビッグゲームという本作の評価も当然ですね。

 

 

(おわり)

 

1940年のドイツの西方への電撃戦を扱った作品です。
OCSはそのスケールからビッグゲームが多く、OCSの中ではこの作品は決して”大きな”ゲームではないのですが、それでも扱うユニット数はかなり多いです。
本作ではマジノ線の守備部隊など、若干「作業」に陥ってしまいました。

 

タイフーン作戦における第2装甲軍の戦区だけをフィーチャーした作品です。ゲームの対象期間なども本作と同様です。この時はドイツ軍を担当しましたが、天候と地表の状態にかなり苦労した印象があります。このゲームでの天候のイメージがあったため、今回のプレイでもドイツ軍の足を止めてくれるように天に期待したのですけどね・・。
またトゥーラを迂回するのかしないのか、という点もポイントですね。
「OPERATION TYPHOON」をプレイしたあとでは、トゥーラは迂回策一択ですね。

 

 

 

 

タイフーン作戦【完全版】