第二次世界大戦の東部戦線の戦いを共通ルールで扱う「BATTLE IN THE EAST 2」(DECISION GAMES)を対戦しました。シリーズは現時点2作発売されており、2編ずつ独立したゲームが収録されています。今作は2作目にあたり、1941年の戦いを扱っています。このうち「Guderian's Last Blitzkrieg」をプレイしました。
歴史的背景
このシナリオは、1941年11月17日から12月7日までの期間を扱い、ドイツ軍によるモスクワへの最後の攻勢作戦(秋季作戦)において、南側の戦線を担当したグデーリアン率いる第2装甲軍による戦いに焦点を当てています。
作戦開始前の時点でグデーリアン上級大将はモスクワ攻略の好機は過ぎたと判断していました。しかし中央軍集団司令官ボック元帥はモスクワへの攻勢を主張し、参謀総長ハルダーは攻勢を認可します。
11月15日から18日までに、第2・第3・第4装甲軍が攻勢を開始し、第4装甲軍はモスクワまで8キロに位置まで前進に成功します。第2装甲軍は工業都市トゥーラを包囲しますが、迂回し前進を継続します。最終的にはモスクワ南方を流れるオカ川の線まで前進しました。
11月末には各所でドイツ軍の攻勢は頓挫し、例年よりも早く到来した冬により完全に停止しました。気温が零下20度以下まで下がり、冬季戦用の防寒服や凍結防止剤を持たなかったドイツ軍は戦闘車両や火器は寒冷のため使用不能に陥り、兵士たちも戦闘を継続できなくなったのです。
12月6日、ソ連軍の反撃が始まりました。
ゲームシステム
1ヘックスは5-8キロ、1ターンは2日、ドイツ軍のユニットは連隊/旅団、ソ連の機械化部隊は旅団、歩兵は師団規模です。
“I Go You Go" 方式で、1つのプレイヤーターンは、
- 第1移動
- 戦闘
- 機械化移動
というシンプルなシーケンスになっています。
機械化移動は補給下の機甲・自動車化・機械化ユニットが追加的に実施できる移動です*1。ただし通常の移動よりも移動力は抑えられ、攻撃補給下でユニット記載の数値の1/2、一般補給化で1/4となっています。
ZOCは弱ZOCにあたります。移動フェイズの最初に敵ZOCにいるユニットは+2移動力にてZOCからの離脱が可能です。
特徴的なのは補給ルールです。補給下にあるユニットは「一般補給」と「攻撃補給」のいずれかの状態になります。「攻撃補給」では攻撃力フル(防御力フル)、また攻撃力1/2でオーバーランが可能であり、機械化移動フェイズで対象ユニットの移動力は1/2で移動可能となります。
「一般補給」では、攻撃力1/2(防御力フル)、オーバーラン不可、機械化移動フェイズでの移動力は1/4になります。
一般補給と攻撃補給は、両軍それぞれについてターン毎に指定されています。例えば今回プレイしたシナリオの場合、ドイツ軍の1-4ターンは「攻撃補給」、5-6ターンにて「一般補給」となります。残る7-8ターンはいくつかの司令部に限定して「攻撃補給」に指定することができます。
戦闘は通常の戦闘力比率に基づきます。同一師団/同一軍団効果、航空支援、司令部(師団砲兵/軍団砲兵を表す)、リーダー*2、包囲攻撃によって戦闘結果表の比率にシフトが行われます。また、装甲ユニットの一部は機甲シフトが与えられるものがあります。相手側に対戦車能力を持ったユニットが存在した場合は機甲シフトは打ち消されますが、対戦車能力をもたない部隊ユニットに対しては有利にシフトさせることができます。
戦闘解決は1D6にて判定され、数値で表される損害はステップロスか後退で吸収することになります。損害を与えても後退することでするりとかわされてしまうため、作戦級ゲームのオーソドックスな種々のテクニックを使うことになるでしょう。
移動フェイズにはオーバーランによる攻撃も可能です。
シナリオ特別ルールとして、天候表により「凍結」と「ブリザード」が発生します。どちらもドイツ軍には厳しい条件となりますが、特に「ブリザード」になると、ドイツ軍の装甲・自動車化ユニットの移動力がわずか2に制限されます。
また、ソ連軍にはカチューシャやNKVDユニット、スキーユニットといった特殊なユニットが登場します。
全体に特殊なルール、変わったルールはないため、作戦級プレイヤーであればすぐにプレイに入ることができるでしょう。
1点、プレイ途中に適用を間違えたルールがあります。地形が「大河(Major River)」の場合、大河ヘックスサイドを超えて敵ZOCに進入できないというルールがあるのですが、マップ上、大河とばかり思っていたヘックスサイドが実は「小川(Minor River)」に過ぎませんでした。実は今回使ったマップ上には「大河」にあたるものはなかったため、「小川」を「大河」と誤認したという訳です。マップ上に凡例をつけておけよ、という話なのですが。
プレイ
ドイツ軍を担当しました。
スタート時点ですでに前線が大きく張り出した状態です*3。グデーリアンの第2装甲軍主力の装甲部隊は中央の突出部に散開しています。この主力の装甲部隊をどこに振り向けるかが問題となります。
左翼ではソ連軍の防衛線が河川沿いに張られ、歩兵軍団がにらみ合っています。右翼はドイツ軍の部隊密度もまばらな状態です。
マップは写真下側が西です。すでに前線はトゥーラの南側を大きく東方に張り出した形に突出しています。モスクワは写真で言うと左奥の方向のマップ外に位置することになります。シナリオの勝敗に直結する勝利ポイントが指定された都市は、マップの右上あたりから上辺あたりに点在していますので、ドイツ軍はそこまで前進していく必要があります。
写真では左翼からトゥーラあたりまで、河川(これが前述の「大河」と誤認した河川です)に沿い、ソ連軍の防衛線が構築されています。トゥーラより右側はソ連軍の防衛線が薄いのですが、ドイツ軍の装甲部隊もまだ十分に前線に揃っているわけではありません。
ここで史実と同じようにトゥーラを迂回することをまず考えました。その場合、ドイツ軍は東方向に突出することになりますが、トゥーラ付近に密度高く存在するソ連軍部隊に側面をさらすことになります。
我が心の中のグデーリアンはしきりに、「装甲部隊は機動せよ、東に進め、難敵は迂回せよ」と繰り返しささやいていました。グデーリアンのささやきに従えば装甲軍の主力はまっすぐに東進します。マップ端に連なっている勝利得点が割り振られた都市に向けて突進することになります。
しかし、もしかすると戦力を集中すればトゥーラを落とせるかもしれないという誘惑も受けていました。トゥーラを落とせば、ドイツ軍は側背を気にせず前進できるのではないか・・・と。
トゥーラ周辺の部隊を集結させ、軍団砲兵や航空支援を組み合わせ、グデーリアンユニットの直卒によるシフトも活用し、満を持したトゥーラ攻撃はダイスの目としては成功しました。しかし、トゥーラが要塞都市という地形に分類され、要塞都市のユニットは後退の結果が打ち消され、さらにステップロスも1ステップ分無効にできるということで、損害を与えることに失敗しました。ステップロスさえ与えられれば次のターンには戦闘力比率を向上させ、より有利な結果を得ることができるのではないかという期待が霧散したのです。
ゲームとして、きちんと守られらたトゥーラを落とすことはほぼ無理ではないかというのが結論です。
その後、ドイツ軍はトゥーラを包囲にとどめ、主力は東進します。しかし、トゥーラ攻撃で1ターン、その後の戦線の整理で1~2ターンを時間を浪費していたことから、補給状態が「攻撃補給」から「一般補給」になった段階でドイツ軍の攻撃は頓挫します。さらに遅れを取り戻すため、無理な前進を続けていたことから、一部の突出したスタックが包囲され、ソ連軍の反撃によってぼろぼろになってしまいました。
終了時点の状況
ドイツ軍は東進するものの、早々と「ブリザード」が発生し、足を止められた後、その後、「一般補給」下では積極的な攻勢をとることができないまま、ソ連軍に増援が到着し戦線を固められてしまいます。
感想戦
最近はルールが変わった作品をプレイすることが多かったため、本作のルールはよく知った世界に戻ってきたような観さえありました。ルールがシンプルな分、作戦に没頭できるゲームと言えそうです。
ゲームとしては小ぶりな印象です。プレイ時間は長くはないです。ボックスとしては、独立した小ぶりなシナリオ2本セットということになるのでしょう。
「戦闘補給」と「一般補給」とで攻勢の様相ががらりと変わってしまいます。「一般補給」のターンでは、戦闘力が全て1/2になることを考えると、積極的な攻勢は取りにくくなります。
OCSのように攻勢にあたって補給ポイントを貯めるといった行為は不要なのですが*4、本作品の場合、補給状況はシナリオによって最初から両軍のターン毎に決定されている点はやや恣意的に感じられました。
ゲーム紹介を見ていると「赤軍には多数の未経戦(アントライド)ユニットが登場します。」とありましたが、実際のプレイでは数は多くなかった印象です。
プレイの中では戦力が確定していて値が大きめのユニットとスタックされていることが多く、先を急ぎたいドイツ軍としては数値が確定していない以上、無理に攻撃できないスタックになっていて、手を出せないという状況。この点はソ連軍プレイヤーの巧妙な運用も影響しているのでしょう。
(終わり)