Their Finest Hour -歴史・ミリタリー・ウォーゲーム/歴史ゲーム -

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「TOLLING OF THE BELL」(3CG)を対戦する(3CG)

1945年3月東部戦線、終末を迎えようとしていた第三帝国の最後の抵抗、ハンガリーにおける「春の目覚め作戦」を扱った表題ゲームを対戦した。

作品名を直訳すると「鐘撞き/鐘の音」。戦争という究極の叙事的な出来事を扱うウォーゲーム作品において、「鐘の音」という叙情的なタイトルがつけられているのは一見そぐわないように見えるが、そこに込めらrている意味合いは考えてみたい。

西洋文化圏において「鐘の音」は当然教会の鐘を指すのだが、祝祭の鐘として、また弔いの合図でもあるという。チャイコフスキーの大序曲「1812年」の終盤、ナポレオンひきいるフランス軍に対して、ロシアの勝利を告げるように盛大に鐘の音が曲の中に取り込まれているのは有名だ。

逆の意味でも例えばベルリオーズの「幻想交響曲」第5楽章での弔いの鐘、マーラー交響曲の中ではしばしば登場する死を表す鐘などまた異なる意味あいをこめられうことも少なくない。今回のゲームでの「鐘の音」はイメージとしてはドイツ軍栄光の装甲部隊への弔鐘なのかな・・。

 

3CG - Tolling of the Bell Front Cover

 

 

ゲームの背景(ウィキペディアより抜粋)

ゲームは1945年3月ハンガリー戦線における「春の目覚め」作戦を扱う。同作戦は、1945年3月6日から3月15日にかけてハンガリー西部のバラトン湖周辺で展開された、第二次世界大戦におけるドイツ軍の攻勢作戦と言われる。
作戦目的はヒトラーハンガリーの油田奪取を目指した。

作戦は、ハンガリー南部を担当するソ連第3ウクライナ方面軍をバラトン湖を挟んだ南北から挟撃、分断することでハンガリー西部における赤軍の軍事的脅威を完全に排除することを目指した。南方軍集団のディートリヒの第6SS装甲軍ヘルマン・バルク大将率いる第6軍の第3装甲軍団が主攻[1]として、共同でバラトン湖北側から出撃して第3ウクライナ方面軍を攻撃、ブダペストを奪還するとともにドナウ川に進出する。また、助攻[2]としてバラトン湖南岸に配置した同集団の第2装甲軍はバラトン湖南側に展開する同方面軍の攻撃にあたり、油田地帯を確保してドナウ川に進出する。南にあるパラド川のハンガリーユーゴスラヴィアの国境からはE軍集団の2個軍団が北進して、同じく同方面軍の攻撃にあたる。最終的には、ドイツ側の3つの軍は合流しドナウ川西岸から赤軍を掃討する構想だった。

赤軍の堅固な対戦車陣地や砲撃による激しい抵抗に遭いながらも、SS第6装甲軍は侵攻を続けたが、戦闘地域がザルビッツ運河とシオ運河がドナウ川に向かって流れる湿地帯だったため、雪解けと降雨により泥濘化し、自動車道路以外の戦車による進撃は難しく、赤軍の激しい抵抗などの悪条件なども重なり、進撃はなかなか進まず、15日には第2SS装甲軍団が作戦前の戦線から20kmの地点のザルビッツ運河とシオ運河が合流するシモントルニャ付近に達したが、ここが最大進出点となった。また、第2装甲軍とE軍集団の2個軍団の侵攻は赤軍の抵抗によりほとんど前進できず、作戦開始から9日後の15日で完全に停止した。

ドイツ軍の攻勢に耐えていた赤軍は、翌16日、ブダペスト西部からウィーン攻勢を始めると、主力を温存していた第3ウクライナ方面軍は反攻に出た。すでに天候は回復して、ドイツ軍を悩ませていた泥濘は無くなっており、最初に同方面軍の第4・第9親衛軍がヴェレンツェ湖の北にあるブダペスト方面から進撃を開始、その後、他の赤軍部隊も進撃を開始したため、ドイツ軍の戦線に大穴が開いてしまい、背後を衝かれて逆に包囲される危機に直面した。しかしヒトラーは包囲される危機に直面してもドナウ川に進撃せよとの命令を下し、21日にはSS第6装甲軍の攻勢地点の近くにあるセーケシュフェヘールヴァールの死守を命令した。しかしSS第6装甲軍はその命令を無視し、逆に赤軍の包囲を避けるため、西に向けて退却を始め、10日で100km以上押し戻されてしまい、バラトン湖から撤退どころかオーストリアに向けて敗走して、作戦は完全に失敗に終わった。結果的には、戦略的に重要でない戦線で、貴重な戦力をいたずらに消耗してしまい、ドイツの敗戦を早める形になってしまった。

 

ゲームの紹介

ゲームは「春の目覚め作戦」のスタートと同じ3月6日にはじまり、1ターン=2日として全10ターン、3月25日までを扱っている。ドイツ軍による作戦発起から、ソ連軍による反攻の実施までをカバーした内容になっている。

1ヘックス=3~4キロ

1ユニット=大隊~師団

 

ゲームシステムは前作「STARGARD SOLSTICE」のルールを踏襲しており、チットドリブン、メイアタック、弱ZOCといったところ。装甲・機甲部隊による第二次移動といったことはルール化されていないため、シーケンスもシンプルでとっつきやすい。細部ではこれまので作戦級ゲームのルールの改善が図られているが、全体としては初級から中級弱といったレベルの難易度であるため、はじめての人にもとっつきやすく感じた。

 

 

 

プレイ

開戦

初期配置時のマップ全景。ドイツ(西側)からソ連軍戦線を臨む。マップ左手が北側となる。中央に細長くあるのがバラトン湖。マップの最奥左右に流れている河がドナウ河。ブダペストはこのマップの左手奥に位置することになる。
マップ最右側に手前から奥に流れているのがドラバ河になる。

開戦時、ドイツ軍はバラトン湖北側(ユニットが密集しているところ)に5個軍団(チット5枚分)、マップ手前でバラトン湖の南側に2個軍団(同2枚分)、マップ右手の最奥、ドラバ河の南側に1個軍団(同1枚分)の兵力を擁する。
マップ左手手前に後方守備のハンガリー軍1個軍団がいるが、現在地よりほぼ動く機会はないので割愛。

勝利条件は勝利ポイント対象都市(写真内では黄色のマーカーがある地点が該当)の確保状態によるが、お互いの側の盤端にある都市の占拠によるサドンデスもある。

 

バラトン湖北側に展開するドイツ軍主力。いずれも装甲部隊を中心にかなりの兵力を擁するのだが、作戦開始直後は泥濘のため道路外移動がほぼ封じられる装甲部隊により大渋滞を起こしてしまう。
また軍団単位に活性化が行なわれるのだが、スタート時の配置が5つの軍団で分かれている訳ではなく、混在していたり、中には同じスタックを復数の軍団のユニットで占めていたりするなど、混乱状態にある。

 

バラトン湖南方戦線。歩兵師団を基幹とする2個軍団。戦力として相対するソ連軍と拮抗(または枢軸側がやや上回る程度)しているため前進するにはこころもとない。

 

ドラブ河沿いの戦線(他の写真と方位の向きが異なるため注意)。
腹背をソ連軍にさらしているように見えるがドラブ河は渡河ができる地点が限られるため、渡河が可能な地点を中心に注意しておけば良い。ただし他の方面に比べ、補給線が長いため注意が必要。またこれでどこまで押すの?というくらいに戦力が小さい。

 

ターントラック。第1ターンから第4ターンまでほぼ泥濘。第4ターンで1/6、第5ターンで半分の確率で晴れる。第6ターン以降、ようやく泥濘から解放されるだが、それはソ連軍にとっても同じで、ソ連軍の大増援部隊が到着し、ランダムイベントによっては中央軍集団正面で開始されたソ連軍の攻勢により、ゲーム内から精鋭部隊が引き抜かれる、というイベントが登場する。

各ターンの鉄十字と赤い星マークの右側に書いてある数値が活性化できるチット枚数上限。前半はドイツ軍が主導し、後半ソ連軍が逆転するのがわかる。

 

第1~2ターン(1945年3月6日~同9日)

バラトン湖北側

散々苦労して前進できたのは、数ヘックスというまさに泥濘との戦いになる。
単なる平地ではなく川越え、点在する丘陵や小村落など防御効果がある地点にソ連軍に居座られるととたんに障害となっていく。もちろん戦闘力に優れる装甲部隊を集めて攻撃するのだが、通常時1ヘックス=1移動力で移動できる平地ヘックスでも天候が泥濘の間は5移動力が必要となる。装甲部隊の移動力は7~8なので、道路外の場合、1ヘックス移動しただけで終わってしまう、という状況に陥る。

さらにチットドリブンのため、復数の軍団で同時に攻撃を行うことはできない。いくら隣接ヘックスに味方の有力なユニットがいたとしても、活性化タイミングが異なるため、軍団をまたがって共同で同じヘックスを攻撃することはできない。

 

画像

 

バラトン湖南側

戦力的に拮抗しているため無理攻めはせずにいたが、ソ連軍側が後退した。もちろん防御に適した戦線を貼ろうとしている訳なので手放しに喜ぶことができる状態ではない。

 

ドラヴ河沿い

ドイツ軍側からみるとマップ右最奥部。
枢軸側の兵力は歩兵師団基幹だが、渡河点からドラヴ河を超えた。
ソ連軍は戦線を縮小するように勝利ポイント対象の都市に向けて後退した。

 

第3~4ターン(1945年3月10日~同13日)

バラトン湖北側

第4ターン、ここまで泥濘しかなかった天候がはじめて1/6の確率だが晴天になる可能性が出てくる。が、結果は泥濘。

四苦八苦の結果、ようやくドイツ軍の前面が開削できた状態。
判断ミスだったのは、写真の左上にひろがる赤いユニットたち。ソ連軍のある軍団なのだが、こちらから攻撃しなければ、第5ターンまでは活性化しないということだったので、甘えすぎていた。活性化できるようになる直前のところで、仕掛けておくべきだった。

 

バラトン湖南側

両軍とも決め手に欠く中、戦意が乏しいソ連軍がゆるゆると後退するものの、枢軸側にも相手を圧倒するだけの兵力もないため、後を追いかけて前進している状態が続いている。

 

第5ターン(1945年3月14日~15日)

天候チェックは半分の確率で晴天、残りは泥濘。またもや泥濘に終わる・・。
史実では翌16日よりソ連軍の反攻が始まったため、ドイツ軍の攻勢の最後となったタイミングにあたる。

バラトン湖北側

ソ連軍前線の北東方面に狭いが穴が開いた。この穴の先に流れるドナウ河河畔にサドンデス対象都市がある!

 

バラトン湖南方、ドラヴ河沿い

戦力が少ないことを言い訳に漫然とした攻め方をしてしまった。反省。
助攻であればそれなりに緊張感がある攻め方ができなかったのか?

 

第6ターン(1945年3月16日~17日)

天候は無条件に晴天。ようやくにして泥濘から逃れることができるのだ。装甲部隊の平地での移動力が泥濘時の5移動力から、1移動力に激減する!

が、味方が泥濘から解放されたということは、敵もまた晴天の恩恵に預かることになるのだ。このターン、ランダムイベントチェック(毎ターンはじめに実施し、なんらかのイベントが発生する)により枢軸軍は最悪のイベントを引いてしまう。

・・中央軍集団で大規模な戦闘が発生したため、戦線の穴を塞ぐたの兵力を供出しろ、というものだ。

 

ドイツ軍の正面戦力からら装甲師団1、歩兵師団1といったように15ユニットについて転進しろという命令が下った。今日・明日までに該当部隊は盤端から退出する必要があるというのだ。鉄道輸送を使えば移動力面はカバーできるのだが、所定のユニット数を脱出させることができなければ、ドイツ軍にはペナルティで相手方に勝利ポイントが加算される。

 

バラトン湖北方

初の晴天、泥濘の軛から逃れたドイツ軍が大きく戦線を広げるが、泥濘の制約を逃れたのはソ連軍も同じだったというわけで、後方から大部隊の援軍が登場してくる・・というところで時間切れ終了。

 

バラトン湖南方・ドラヴ河沿い

大きな動きはないまま終了。本当は中央軍集団に抜かれる部隊はこちらから取りたいところだが、鉄道がつながっていないため、次のターンまでに送り込めない・・という罠があった。まぁそんなに都合がよいことはないよね。

 

感想戦

コンポーネントが素晴らしい。美しいカラーリングのマップとユニット。ユニットのサイズは若干大きめなのは最近のゲームによくある傾向。
装甲部隊には主に装備している車両の線画が描いてあり、見るだけでワクワクする。
ユニットの紙が厚い点も良い。ペラペラの紙とは真逆。ユーロゲームによくある厚い紙だ。
こうした厚いユニットは利点も大きい。バラトン湖北側戦線のようにユニットが密集している場面でも、ユニットがつかみやすいので扱い安い。ピンセットを使うとしても、紙が厚いためこれもまたハンドリングしやすかった。

ルールはシリーズ前作と同様。難易度は高くない。OCSだとこのバラトン湖北方の戦闘のために補給ポイントを運んで・・という処理をこなさないといけないと思うと、本作のルールは取り組みやすくてよかった。

1作目に比べると参加した部隊規模が大きい分、本作のほうが面白かったように思う。

ゲームは前半、泥濘との戦いでもあるのだが、それでもじっくりと取り組むことができる雰囲気は良い。この分だとソロにも良いだろう。

難易度が高くない作戦級として取り組みやすい。オススメ。

(了)

 

 

春の目覚め作戦

春の目覚め作戦

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