「ちはら会」創設20周年記念行事として「レッドサンブラッククロス」(アドテクノス)の対戦シリーズが開始されました。初回はルール確認とシナリオ1です。
シナリオ1「RAISE THE CURTAIN」について
1945年に発生したドイツ軍によるアフガニスタンへの限定的な侵攻作戦を扱います。
ドイツ軍が4個軍団計13個師団(後に増援1個軍団4個師団)航空機360機にてアフガニスタンへ侵攻を開始、対抗して日本軍も4個軍12個(後に増援として1個軍3個師団)航空機150機を派兵。アフガニスタンで両軍が激突したというもの*1。事変は6ヶ月に及びました(全6ターン)。
やがてドイツ軍は撤退し、戦火は収まるものの1948年4月に再びドイツ軍はアフガニスタンに侵攻し、それは第三次世界大戦に拡大しました。
勝利条件はアフガニスタン国内にある4つの拠点のうち多くを確保した側が勝利。
戦力的には主導権を握っているドイツ軍側が若干優勢なのですが、特別ルールにて、ドイツ軍は日本軍のインド領内にある補給拠点(ユニット)を攻撃できないのに対し、日本軍はカザフスタン、イラン国内にあるドイツ軍の補給拠点(ユニット)を空爆することができるます。ドイツ軍補給拠点に対する日本軍の空爆はドイツ軍にとってボディブローのように効いてくる攻撃となります。
なお両軍とも陸上部隊はアフガニスタンからさらに相手の勢力圏内への侵攻は禁じられています。
プレイ
ドイツ軍を担当しました。
構成はシンプルです。ドイツ軍は北側から侵攻し、日本軍はすぐに南側と東側からアフガニスタン国内に進出します。
ドイツ空軍は史実での第二次世界大戦時のドイツ空軍と同様、使用機体について航続距離が短いという問題を抱えています。もともと都市間が近接した欧州向けに設計されたドイツ軍機体は航続距離が短く(=攻撃目的地上空の滞在可能時間が短い)、史実の欧州大戦でも問題になっていたのに対し、より広い本ゲームの戦線で問題にならないはずがありません。
3ユニット登場するTa152の活動半径は400キロ(4ヘックス)、ジェット戦闘機であるMe262(1ユニット登場)は活動半径は300キロです。いっぽうの日本軍は五式戦 500キロとあまり変わらないのですが、2ユニット登場する六式戦爆(架空)の航続距離は900キロ(9ヘックス)に及びます。
航続距離性能の差は、インドが戦場になるゲームを通してドイツ軍を悩ませ続けることになります。
このシナリオでは、ドイツ軍は自軍の爆撃機による爆撃出撃に対してかろうじてカブールまでは護衛を行うことができるのですが、カンダハルまで到達することはできません。また前述のとおり、日本軍はカザフスタン、イラン国内に配置されているドイツ軍の補給集積地ユニットに対して爆撃を行うことができるのですが、ドイツ軍としては、これらの後方の補給集積地ユニットの防空任務に戦闘機を振り向けるべきなのか前線に出撃する爆撃機の護衛や直協支援を重視するべきか。さらに戦線の前進に従って前線の航空基地を前進するようになると、他の方面の任務には届かなくなるといった問題も生じるようになります。
両軍の初期配置
明灰色、青灰色のユニットがドイツ軍、日本軍は白地に赤線のユニットです。
初期配置状態では両軍ともまだアフガニスタンには進出していません。数ヘックスの融通はありますが配置できるエリアは両軍とも指定されています。
陸上部隊の移動力が限られるため、ドイツ軍の侵攻ルートはヘラート‐カンダハルルートと、カブールルートの2本に分離します。航空部隊ばかりではなく陸上部隊も両方の侵攻ルートについて相互に支援するといったことはできません。
第1ターン ‐ 航空部隊による爆撃、地上部隊によるオーバーランによって侵攻開始
第1ターン、ヘラートとカブールへ爆撃のため出撃、ヘラートは爆撃に成功し、続く陸戦ラウンドでアフガニスタン軍歩兵師団をオーバーランにて除去します。
カブールへの爆撃にあたってはドイツ軍は護衛の戦闘機部隊が航法ミスにより到着に失敗したことから、出撃したJu290Hは、日本軍戦闘機の全力出撃による迎撃を受けました。
迎撃をかいくぐった1ユニットがアフガニスタン軍に爆撃を行うものの損害は与えられず・・。
第2ターン 開始時これまでの地図や写真と南北逆になっていることに注意してください。
第2ターン - 航空部隊は続けて全力出動するが、陸上部隊は回復に努める
ドイツ軍は毎ターンに受け取る補給ポイントは25ポイント。このシナリオでは補給集積地ユニットへの補給ポイント消費は不要のため、陸上部隊のステップロス分の回復と、航空部隊の維持、または損耗ユニットの回復に使用することになります。
補給フェイズ
ヘラートを奪取した装甲師団・歩兵師団は2ステップずつ失っている状態ですので、これを完全戦力にするには1ユニットあたり2x2で4補給ポイント必要です。歩兵師団は完全戦力まで戻さないとすると、それでも1ユニットあたり2ポイントが必要です。*2
航空戦力のユニットは、そのターンに出撃させるには、可動状態のユニットは2ポイント、損耗状態のユニットは4ポイントが必要です。損耗状態のユニットは損耗状態のままでよいのであれば、損耗状態のままで放置することも可能ですが、日本軍の航続距離が長い六式戦爆や、五式重爆(架空・航続距離20!)による、ドイツ軍戦線後方に配置されている補給物資集積地ユニットと同様に、格好の空爆目標となるでしょう。
こうして航空戦力ユニットの維持・回復を優先したことにより、陸上部隊の回復は一部にとどまります。いずれにせよ、1ターンで回復することは難しいことから、段階的に進めるしかありません。
航空移動・戦闘
航空戦力ユニットの移動は先攻側が先に行います。
ドイツ軍は航続距離が短い戦闘機を爆撃機の護衛に振り向けるのか、または後方の補給集積点ユニットの防空に振り向けるのか決める必要があります。
戦闘機ユニットの数では、日本軍とドイツ軍は同一(4ユニットずつ)ですので、後から出撃先を決めることができる日本軍のほうが有利と言えます。
ドイツ軍爆撃機の迎撃を行うのか、または航続距離が長い、六式戦爆・五式重爆を使ってドイツ軍後方の補給集積地や、航空基地を爆撃するのか決めることができます。
陸上移動
増援としてドイツ軍にはグロス・ドイッチュラント軍団(以後、GD軍団)*3、日本軍は第15軍(歩兵3個師団)が増援として登場します。ところがGD軍団を前線まで移動させるにも、それだけで移動によるステップロスを被ってしまう(さらには1ターンでは前線まで到着しない・・)。ただでさえ、航空ユニットの維持+第1ターンのステップロス分の回復で補給ポイントを全部消費しているところをさらにGD軍団の移動に伴う回復にも費やす必要が出てきたことになります。
航空移動・戦闘
日本軍の五式重爆はカザフスタンにあるドイツ軍補給集積地に出撃するものの攻撃失敗、損耗してしまいます。一方でファイザバード上空に全力出撃したドイツ軍は戦闘機ユニットを3ユニットを失うという大損害を受けてしまいます(日本軍が三連続で「6」をだした)。前ターンに1ユニット失っていたことからこれでドイツ軍の戦闘機部隊は全滅です。
これ以上、ドイツ軍が都市の占領を行うことはできないと判断され投了しました。
感想戦
かつてプレイしたときの感覚を思い出しました。
ドイツ軍は強力な装甲部隊を中心とした陸上兵力により攻勢の初動では日本軍を圧倒します。ただし攻勢は続かず、次の攻勢に向けてドイツ軍は失ったステップの回復に数ターンを要します。
その間、日本軍は長大な航続距離をもった航空機により、ドイツ軍戦線後方の補給集積地を爆撃することで、ドイツ軍の回復の邪魔をし続ける・・、という関係です。
今回、練習シナリオということで甘く見ていましたが、戦力的に拮抗していることもあり、ドイツ軍が勝利するにはそれなりに計画性をもって攻勢を主導し続ける必要があります。ヘラートは陥落するとして、ファイザバードの攻略、さらには勝利に必要となる3番目の都市としてカブールとカンダハルのいずれを選ぶのか(カンダハルかな?)。さらにはその攻略です。
ターン数、補給ポイントは限られるため自ずと使用できる戦力はカウントできます。
もっともダイス運も必要です。特に航空機の到着確認チェックの結果はかなり戦局を左右することになりそうです。
ゲームとしては前記事に書いた「補給原理主義」という点もそうですが、この時代の作品では珍しくはないのですが、ルールのところどころに漏れや粗削りかなといった点があるため、プレイ前にプレイヤー間での取り決めが必要な点があります。今回のプレイを通してそうした点の洗い出しができればよいかなとも考えています。
ゲーム全体を通してディベロップ不足かな、と思わざるを得ません。ただ作品としての魅力を損なっている訳ではない点は書いたとおりです。
次回は海戦を扱ったシナリオ2ではなく、大戦末期、インド大陸の南側に追い詰められた日本軍とドイツ軍最後の攻勢を扱ったシナリオ3あたりをプレイする予定です。
補足:ゲームを円滑に進めるために(プレイする人のための指針)
RSBCのルールブック、シナリオブックとも漏れがあり、後に当時のTACTICS誌にエラッタが掲載されました。結構重要なルールの訂正や、シナリオにおける初期配置位置の記載もれなども含まれるため、確認は必須でしょう。
また今回、航空移動についてルールの変更を行っています。オリジナルルールを使うべきなのか、本作のプレイ経験がある方にはぜひご意見をいただきたいところです。
オリジナルルールでは、航空移動フェイズにおいて、航空機1ユニットずつ次のアクションを実施します。
- 任務の決定
- 航空移動
- 到着確認チェック(ダイスを振る)
これだと直前の航空機ユニットの到着確認結果を受けて、その後の航空機ユニットのアクションを決めることができることになります。
今回のプレイでは次のような手順をとりました。
【先手プレイヤーのすべてのユニットについて】
‐ 任務の決定
‐ 航空移動【後手プレイヤーのすべてのユニットについて】
‐ 任務の決定
‐ 航空移動【両軍のすべてユニットについて】
‐ 到着確認チェック
後者の変更案の場合、ゲームの進行がスムーズにいきますが、一方で任務や目的地を先に決めた上に到着チェックでさらにはぐらかされることになる先攻プレイヤーが不利になるように感じられるため、オリジナルルールのほうが航空機のアクションとしては公平になる印象があります。*4
次回にむけての宿題とします。
*2:完全戦力状態以外の歩兵部隊は移動を実施したことによるステップロスは、それ以上受けないため、そのターンに移動を行うのであれば、完全戦力に戻さず、1ステップロスした状態のままにしておくほうが補給ポイントの消費を節約できることになります。
*3:史実では師団規模だったが本ゲームでは同名を持った軍団(4個師団)が登場する
*4:オリジナルルールの場合、到着チェックをユニット毎に実施でき、さらに結果を見て後続のユニットの任務や目的地を適宜修正できるのですが、後者(変更案)の場合、後攻プレイヤーより先に任務・目的地を決め、さらに最後に到着チェックをまとめて実施することから二重に期待値をはずされることになり、不利な度合いが増えるのではないかと・・