Their Finest Hour -歴史・ミリタリー・ウォーゲーム/歴史ゲーム -

歴史、ミリタリー、ウォーゲーム/歴史ゲーム/ボードゲーム

「Colonial: Europe's Empires Overseas」(Stratagem Game Design)を対戦する

大航海時代植民地主義時代を舞台にした表題ゲームを5人対戦しました。

 

 

ゲームの紹介

概要・目的

プレイヤーは大航海時代の欧州諸国の統治者として、諸大陸を探検し、支配し、植民地開拓し、経営を行うマルチプレイヤーゲームです。
特産物を収集し(強制的な接収、収奪を含む)、市場に流すことで収入を得ます。特定の商品を独占することにより利益を増やすことができます。現地から無理めに収奪し奪いすぎると政情不安な状態、不穏状態となるかもしれません。他国の支配地に対して戦争を起こすこともできます。

カードドリブンシステムで、アクションが記載されたアクションカードをプレイヤーは秘密裏に選択し、アクションの実施順に並べ、同時に開示した後、プレイ順に実施していきます。

プレイヤーが用意したアクションを全て実施するか(アクションを実施できるカードは5枚。ひとつのターンの間にプレイヤーの手番が5回回ってくるため、アクションを5回実施することになります)、その後ターンは終了し、点数計算や商船隊・艦隊の整備などを含む精算を行います。
新しい大陸を発見、特定の産品の独占といったことにより、「威信(Prestage)」を獲得することができ、「威信」ポイントを10ポイント貯めたプレイヤーが勝者となります。

なお基本ルールでは各プレイヤーは特定の国家を担当するのではなく、同じ条件にある仮想的な国家を扱います。選択ルールではフランス、イギリス、オランダ、ポルトガル、スペインの実際の国家が用意されており、それぞれヒストリカルな状況を反映した条件になります。
今回は基本ルールでプレイしました。

 

プレイヤーボードとアクションカード

上の写真内で上に置かれているプレイヤーボードは左から「国庫(Treasury)」「威信(Prestage)」「商船隊(Merchant Fleet)」「艦隊(Naval Fleet)」を示しています。「商船隊」と「艦隊」は「国庫」を消費することで、増強することができます。「商船隊」は特に取引できる商品量に関わってくるので重要です。

アクションカードは合計6枚あり、各カードには2つずつ異なるアクションが記載されていますので、合計12種類のアクションが用意されていることになります。プレイヤーはターンのはじめに秘密裏に6枚の中から5枚のアクションカードを選び、実施順に並べます。プレイ順に1個ずつアクションを実施してくことになります。
上の写真では左から「科学者」「宣教師」「探検家」「外交官」「商人」「政府役人」「統治者」「征服者」「貿易家」「銀行家」「総督」「扇動者」となっています。1枚のカードで実施できるアクションは上か下かのいずれかですので、同じターンの中で同一カードのもう一方のアクションは実施できないことになります。また同じターン内で同一カードを複数回使用することもできません。

 

マップ

征服の対象となる欧州以外の大陸と国々(エリア)です。右端に日本も登場しています。各エリアには探索の難易度、特産品、征服のしやすさ(人口の多さと反比例)などが表記されています。探索の難易度は対象の広さや欧州からの距離によって定められており「探検家」によるアクションを実施する際のダイスチェックに用いられます。特産品はマーカーで表現されていますが、産地を独占することで独占ボーナスを得ることができるようになります。エリア人口の多寡は征服のしやすさと、征服後は産地または市場の大きさにかかわってきます。

マップの四隅には「科学者」によるアクションでレベル上げを行う「経済レベル」「物流レベル」「航海術レベル」「海軍レベル」のトラックが設けられています。
アフリカ大陸の下に設けられているのは「外交レベル」の欄です。エリアでの無理な収奪といった悪政やモラルが低い行為を行うとレベルが下がっていきます。自国より外交レベルが同じか低い相手にしか戦争を起こすこと(「統治者」のアクション)ができないため、「外交レベル」を下げると戦争に巻き込まれやすくなるということになります*1


ゲームの基本構造

収入をもたらすのは基本的には次のアクションの連携になります。
貿易家アクションは自国エリアから出た商品だけではなく、他国が商人アクションで市場に出した商品も取引対象となる点はユニークです*2

  1. 新しいエリアを探索(成否チェックあり)、発見すると資金を投じ、
    商船隊を派遣する:探検家アクション
  2. エリアの特産品を市場に送る:商人アクション
  3. 市場に出た各地の特産品を取引する。ここではじめて特産品が資金化できる:貿易家アクション

 

自国が発見したエリアへ他国が介入してきたり、邪魔をしてくる懸念があるため、各エリアの支配を強めるアクションを実施します。

  1. 資金を投じエリアの支配を強める:総督アクション
  2. 植民地化する:征服者アクション

 

次のアクションも重要です。

  • 航海術、物流などの各種科学技術レベルを上げる(各種制約・制限を解除する、ダイス修正を良くする等の効果)
    科学者アクション
  • Booming City(世界経済の中心地)を構築する(→ 他国の経済活動からも恩恵を得ることができるようになる):政府役人アクション
  • 資金を融資してもらう:銀行家アクション

 

カードアクションではないですが、毎ターンの最後に資金を投じることで次のことを実施できます(毎ターン、どのプレイヤーも実施可能)

  • 商船隊を増強する
  • 艦隊を増強する

 

内政や外交、他国への妨害活動なども用意されています。

  • 現地住民の不穏を抑える:宣教師アクション
  • 外交レベルを上げる、不穏を除去する:外交官アクション
  • 外交レベルが低い国に対して戦争を仕掛ける:統治者アクション
  • 不穏状態や反乱を起こさせる:煽動家アクション

 

感想戦

ルールを読んだ時の印象よりも面白い

ルールを読んだ際にはいくつか気になる点があり、ムムムとなったのは正直なところです。カードドリブンであるのは良いとしても、1枚のカードで2つのアクションから選択する、実施順番をプロットする点という、システムありきのゲーム的な仕様。さらにはマップがカードシステム以上にフレーバー的なまとめ方をされている点などです。

実際にプレイをしてみるとたしかにゲーム的なまとめ方はあったものの、ゲームとしては面白いものになっていました。

 

その上で、いくつか気になった点を

 

初手あたりの運要素が若干高い?

征服対象となる各エリアには探索の難易度が記載されており、探索(探検家アクション)により成否チェックを行うのですが、欧州に近い「北アフリカ」「エジプト」「近東」の3つのエリアについては探索難易度は設定されてなく、「探索」すれば自動的に成功になります。

最初のターンのプレイ順はランダムに決まった第一プレイヤーから着席の時計回りになるのですが、この自動成功する3エリアを獲得できるプレイヤーと、成否チェックが求められる4番目以降のプレイヤーとで扱いに微妙な差があります。
もちろん4番目以降のプレイヤーも「探索」に成功すれば問題はないのですが、失敗したときには収入を得る手段がなく、次のターンまで「探検家アクション」の実施を待たなければならなくなります。運悪く失敗したプレイヤーは、初手の段階で自動成功したプレイヤー他と資金が必要な最初期において1ターン分差がつくことになります。

2ターン目からは全てのプレイヤーが「探検家アクション」時に成否チェックが求められることになります。「探検家アクション」での成功率を高めるためには、「科学者アクション」で「航海術レベル」をあげておく必要があるため、第1ターン・第2ターンあたりはこうしたアクションが実施されていくでしょう。

 

とにかく「金」の産地を優先して確保しろ

エリア毎にひとつまたは複数設定されている「特産物」にはひとつのエリアしか産しないものから複数のエリアで産するものまであります。「特産品」の産地を全て支配下に収めるとその「特産品」を独占したことになり、メリットが増えるため、プレイヤーはより楽に独占することができる「特産品」を産するエリアを優先して探索することになります(例えば、スパイスを産する東南アジアなど)*3

「金」は複数のエリアで産するのですが、実は「金」だけは複数の産地のうちひとつだけでも支配下におくことで独占状態とすることができ、産地独占のアドバンテージを得ることができます*4

デザイナーは「金」を産するエリアをめぐり、プレイヤー間で戦争などが起きることを期待して特別な仕掛けを施したのかもしれませんが、「戦争」すると喜ぶのは第三者ということもあり、なかなか踏み切ることは難しいかもしれません。

 

プレイヤー間の差は埋め難い

プレイヤー間で経済力に差がつきはじめると差を埋め、追いつくのはなかなか難しくなるようです。植民地からの商品の仕入れ、市場での捌きが循環しはじめると、商船隊の増強ができ、これにより取り扱うことができる商品量が段違いに大きくなっていきます。この循環に乗ることができれば、プレイヤーは雪だるま式に資産や規模を大きくすることができます。

ゲームとして、強制イベントのようなアクシデント的な要素がないこともあり、いったん差がつきはじめるとその差を埋めて追いつくのは難しくなるように感じました。

 

探索の成功率が高すぎてプレイヤー同士の植民地争奪が起こりにくい

「探検家」アクションによるエリア探索の成功値が高く簡単に植民地を広げることができます。多少遠方のオーストラリアなども「科学者」アクションで「航海術」の成功値をあげておけば想像よりもかなり容易に探検できてしまいます。ゲームとしての難易度を上げないための措置だと思われますが探索の成功率が高いため、他のプレイヤーと植民地を争うよりも、未探索エリア・未支配エリアが残っているうちは早いもの勝ちでエリアを探検していったほうが良いということになります。
未探索エリア・未支配エリアがなくなる頃にはいずれかのプレイヤーが「プレステージ」ポイントを貯めており、一挙に終盤戦になってしまいます。

終盤時点で一位プレイヤーに対して他プレイヤーと協力して追い落とそう、という動きもあり得るのですが、これを行うと二位プレイヤーが得することになってしまうだけなので、こういう動きも起こり得ないようです。

結果としてゲームとして一本調子で終わってしまい、プレイヤー間の直接的なコンフリクトが起きにくい構造になっているように感じました。貿易のことを考えれば、「商人」アクションと「貿易家」アクションのコンボをプレイヤー間で協力して実施したほうがよいですからね・・。
全体にピリリとした要素がない印象です。

 

2回目以降のプレイからが本番?

ルールの難易度は高くはないのですが、上記のようなルールからだけではわからないコツや要素があるためプレイヤーがゲームシステムを理解した上でプレイする2回目以降のプレイのほうが盛り上がるのではないでしょうか。
本作を2回プレイするくらいなら、面白いマルチプレイヤーゲームは他にも多数あるよ・・と言われそうですが

 

今回のプレイの最終盤。未踏破の空きエリアはなくなった頃、獲得した「威信」ポイントから判断するとゲームとしては終盤です。ここからお互いの植民地を奪い合うような新しい展開にはいる前にゲームとしては収束します。戦争がメインのゲームではないということですね。

 

(終わり)

 

今回の作品にシステムやテーマが似ている作品をいくつか・・

 

メキシコ独立戦争という珍しいテーマのマルチプレイヤーのユーロゲーム
本作と同様にひとつのアクションカードに複数のアクションが記載され、いずれかのアクションを選択して実施すると同じカードのもうひとつのアクションは実施できないというゲーム的なジレンマが設定されています。シミュレーション的には?な処理なため、本作のルールを読んだ際の危惧につながった一因となった作品です。
史実ではかなりブラッディな内戦なのですが、あっけらかんとゲーム的なまとめ方をしてある点も気になりました。

 

舞台は南北アメリカ大陸にフォーカスされていますが、今回の作品と同一時代・同一テーマを扱ったマルチプレイヤーの作品。原住民との戦闘や、風土病、後半は他国勢力との戦闘で兵士や植民者が面白いようにごっそりと除去されるなど、かなりブラッディな展開になるため、本国から船に乗せてどんどん補充していく必要があります。
本国からの行きの船は植民者とか兵士を満載して載せていって、帰りの船で金とか資源とかを満載して持って行くのです。他プレイヤーの帰りの船を襲って金や資源をごっそりと奪うという海賊プレイも常道です。
実際の新大陸探索はこういうものだったのだろうな、という妙な説得力があります。ゲームとして収束にはあまり考慮が払われてなく、終盤殺伐としてくるのは古いゲームらしいところです。

 

マルチプレイではなくイギリスとフランスの二国の争いですが、同時代・同テーマを扱った作品としては外せない、プレイに値する名作の名に違わない作品です。

 

*1:「戦争」は当事国同士がお互いにリソースのつぶしあい、足の引っ張り合いにしかならず、参加していない第三国を喜ばせるだけです。このためゲーム内では積極的に「戦争」を行う必然性は高くないことになり、結果、「戦争」の実行をコントロールしている「外交レベル」というパラメーターがあまり機能しないことになります。
結果、「外交レベル」が低くなることをおかまいなしに、エリアからの収奪が横行するようになったのでした。

*2:このため、他プレイヤーと連携、協力したアクションの実施が可能であったり、思わぬ恩恵を受けることがあります

*3:ちなみに日本エリアの産品は「銀」でした。「銀」は日本エリア以外に、南米エリアからも産するため、独占のアドバンテージを得るには、「日本」とともに「南米」エリアを征服刷る必要があります。

*4:「金」の産地は3エリアあるのですが、3エリアそれぞれが独占状態のアドバンテージを得ることになります