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「SPACECORP:2025-2300AD」(GMT)を対戦する(2/2)

宇宙開発・宇宙探索を行う企業の活動を扱った「SPACECORP:2025-2300AD」を対戦しました。

 

ゲームシステムなどの紹介は前の記事を参照ください。

 

マーケット・ガーデン作戦を扱った作戦戦術級の傑作ゲームとして「Hell's Highway」(VICTORY GAMES)があるのですが、同作のデザイナーであるバターフィールド氏が手掛けた一作が本作になります。

 

 

マーケット・ガーデン作戦のデザイナーがSF作品!、と思って調べてみると、SFものばかりか様々なジャンルのゲームをデザインしています。

 

Clear Cover of Freedom in the Galaxy

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後者の作品は、月刊タクテクスに収録されていましたね。

前置きはほどほどにしてプレイを紹介します。

 

 

 

内惑星探索時代(2025AD~2149AD)

「移動」「探索」「建設」が基本アクションです。それぞれのカードをバランスよく持っているとスムーズに進行します。移動距離も短く、障害もあまりありません。

マップ上が一通り埋まった頃、紫カラーのプレイヤーの探索チームが次のステージにつながるマップの外縁にあたる小惑星帯に突入しました。
各ステージには次のステージにつながる外縁が用意されているのですが、外縁に1番手と2番手に到着した探索チームは次のステージにおいてより優位なポジションからスタートできるという、ポールポジション的ルールが用意されています。
マップ外縁に到達したチームはゲームから外れるため、あまり早いタイミングで離脱するのは得策ではありません。マップ上でこれ以上の得点が稼げそうにないと判断したときに、動くことになります。
今回も、外縁に探索チームが到達した前後で、6つの契約条項が達成され、次のステージに移行することになりました。

 

最初にプレイされるアステロイドベルト内の内惑星マップ。月、火星とその衛星、小惑星、彗星、ラグランジュポイントが探索の対象となる。
各社の探索チームは良くある木製のキューブで表されているが、宇宙船のミニチュアユニットなんか使うといいかなと思う。

 

外惑星探索時代(2150AD~2299AD)

ステロイドベルトを超えた外惑星にはいって最初の難関は、放射能対策になります。

小惑星帯を超えた外惑星に至ると、移動や建設のアクションにあたって耐放射能シールドを施す必要があります。移動カード、建設カードについて、シールド能力がついたものとシールド無しのカードが登場するのですが、外惑星で活動を行う際には、使用するカードの中に少なくとも1枚はシールド付きのものを入れておく必要があります。
理想を言えば、HQシートのスロット上に、シールド付き移動やシールド付き建設のカードがセットされていると言うこと無しです。

外惑星マップ。各惑星の衛星をまで美しく描かれたマップデザインは印象的。木製・土星天王星海王星については惑星本体側ではなく、その衛星が探索の対象となっている。

 

外惑星に至ると建設コストが大幅に増加します。建設資材を遠い遠い、太陽の光も十分届かないような惑星・衛星に運搬するコストを考慮すれば当然ですね。
マップ上では、狭い範囲にあらゆる惑星・衛星が描かれているのですが、実際は外惑星は非常に大きな軌道を回転していることから、そこに至る移動距離は長大です。
このため外惑星から外惑星に直接移動する際の必要移動力は、地球などの内惑星から同じ目的地に行くときの必要移動力より大きくなります。
あちこちに仕掛けられた細かいギミックに唸らされます。

 

外惑星探索の終盤。左下の小惑星帯から右上の冥王星付近まで一通り探索され何らかの基地が建設されています。
外惑星を超えて太陽系外の宇宙に進出した頃、6つの契約条項が充足され、いよいよ恒星間探索の時代にはいっていきます。


内惑星探索時代には遅々として進まなかった技術開発もこのステージでは果実を得るようになります。意識的に技術開発カードを優先して使っていくことでかなり成果を得ました。

  • 「COOPERATIVE EMPATHY: 協力・共感」他のプレイヤーの基地やスロットのカードの能力を借りることができる。その際、報酬は不要
  • 「RADIATION RESISTANT: 放射能防御」 移動や建設において常にシールド効果があるとみなす

カード能力の内容は、作品世界の中での技術革新によって能力値が増えるような内容ではなく、ゲーム進行を助けるような内容によってきている、チートっぽくなってくる印象です。

 

恒星系探索(2300AD~)

美しかった外惑星探索ステージのマップと異なり、惑星の姿は影を潜め、マップ上には各構成系の恒星が描かれています。

太陽系から各恒星系への距離は今まで見たこともないような数字が並んでいます。最も太陽系から近いアルファ・ケンタウリまででも必要移動力は20になります。

移動カードは従来のカードではほとんど太刀打ちできなくなり、早急に恒星間移動に対応できる、これまでの、移動力を加算させるのではなく、乗算させる倍率付き移動カードを入手する必要がでてきます(例えば、移動力5のカードと、移動力×2のカードがあれば、10移動力(5×2)で扱うことができるようになるのです。

またこのターンから従来の基地に加えて、コロニーを建設することができるようになります。コロニー建設には専用のポイント計算が用意され、充足されれば建設ができます。
厄介なのは、ゲーム終了時点で保有していたコロニーの数によって得られる勝利ポイントの配点が大きいのです。
クイズ番組の終盤に出てくるボーナス問題に対するアンバランスな配点のようなもので、それまでの問題での得点は何だったの?という印象に近いものがあります。

 

外惑星ステージのマップの美しさは何だったの、と思えるほど殺風景な恒星間探索ステージのマップ。楕円形で表されたそれぞれの恒星系に対し、接合点に当たるひし形の部分に記入された数字が相互の距離になる。
オレンジとか赤色の光点は恒星。連星や三重連星などもあって、それぞれボーナスがあったりする。

 

移動ひとつをとっても今までのステージでの数値とは規模が異なるため、最初は四苦八苦します。いち早く良いカードを手に入れ、技術カードでチート能力を身につけるのです。「探索」の結果、宇宙人との遭遇もあります。

 

恒星間探索ステージの最終盤。マップ上の主たるところが埋まっているが、一度どこかの恒星系の探索に入ると、相互に距離がありすぎて他の恒星系に転進するのが難しくなってくる。

 

マップ上の探索可能余地が少なくなる頃、このステージにおける契約条項が達成され、ゲームは終了します。

 

感想戦

半日程度で宇宙探索の黎明期からはるか彼方の恒星探索までをたどることができる

プレイ時間は3~4時間といったところでしょう。
展開はかなり早いです。この時間内で3種類のマップをクリアしていくのです。
ルールは容易で、ゲーム前のインストによりすぐにプレイできます。ゲーム全体の見通しも良いため、初めてでもとまどうところは少ないように思います。

ゲーム中、競争は生じますが探索ものの特徴と言うのか、プレイヤー同士でバチバチに戦闘やつぶしあい、足の引っ張り合いが起こる訳ではないです。2人対戦よりももう少し人数が多いほうが良いでしょう。

後半、特に第3ステージになると必要となる能力値がインフレ化します。対抗するには、もちろん強力なカードをドローするというのはありますが、技術を発展させて技術革新のカードを多く手に入れる方が近道のようです。
この技術革新カードが曲者で、もちろんSFらしい「ハイパードライブエンジン」などと命名されたカードもカードあるのですが、SFや宇宙探索フレーバーは能力名称だけで、実際に得られる能力は、ゲームの進行をゲームとして劇的にスピードアップするような類のカード、チートっぽい能力が少なくない印象を受けました。

インフレ化した必要能力を、カードによるチートな能力によりクリアするのです。
ゲームの展開はスピードアップしていくのですが、この頃になると宇宙探索というフレーバーは急速に薄まっていき、より強いカードを用いて、得点源となるアクションを実施していく・・。ステージを重ねる毎に、宇宙探索というテーマの印象は薄まっていき、障害克服の作業を行なっているような気分になりました。ゲーム時間を短くするためにチートっぽい能力のカードを多く与えたこともまたその原因になっているように思います

とはいえ半日程度で宇宙探索の時代を追うことができるゲーム性が高い製品というコンセプトの作品ということでしょう。

 

まっすぐ前を向き明るく楽観的なある種「古き良きSF作品」のような宇宙探検を扱う

本作をプレイし驚いたのが、プレイスタイルや登場するカードなどに、他プレイヤーを蹴落としたり、積極的に邪魔をするようなものが用意されていないこと。むしろ基地や能力値の貸し借りができるため、危ない時はお互い様的な雰囲気も生まれがちだったりします。

宇宙探索ということで、探索チームの遭難や諸トラブルなどをルール化しがちなところを、そうしたアクシデント、障害系のイベントがほぼないことも、少々驚きました。
もちろん本作は会社を扱っているのであって、宇宙の彼方で探索活動を行っている探索チームの事故や遭難といったことは、現地で対処ができるレベルの問題であるため、ゲーム内に取り込んでいないというだけなのかもしれません。ただこういした悪いイベントや状況を出すためのカードがあまり登場しないことにより、本作全体を、まっすぐ前を向き明るく楽観的な古き良きSF作品のような雰囲気に包まれているようでした。

 

プレイやルールに対する見通しの良し悪し

同じ探検ものの作品に「HEART OF DARKNESS(闇の奥)」がありますが、本ゲームとはいくつかの点で対極的なデザインになっていると感じました。
両作品ともプレイヤー同士がバチバチに戦闘を行なったりするシーンはほぼ無いか、少ないです。「闇の奥」のほうがソロプレイ感は強いですが、相手を蹴落としたりする場面は両作品とも限定的です。

大きな違いはゲーム展開やルールの見通しの良し悪し。

もちろん本作は見通しが良い、しかもとても良い部類の作品。はじめてでもわかりやすい。さらに複数のステージを用意し、かなり早い展開で、スキル・能力のインフレ化を急速にすすみ、プレイヤーも高揚感を感じるかもしれません。
ゲームっぽい処理やボーナスカードの存在というゲーム性を優先したため、終盤は宇宙探索フレーバーはかなり薄まる印象。

一方の「闇の奥」は、見通しの悪いルールとゲーム展開に、最後まで未知の暗黒大陸アフリカ探検を最後まで淡々とこなしていく印象です。さらには探検を続けていくうちに少しずつ健康を失いつつ、狂気をはらんでいく・・という裏ストーリーも進行します。

こうして比べてみると同じ探検ものとはいいつつも、かなり性格が異なる作品になっています。決してどちらが優れているという話ではなく、むしろ今回本作をプレイして、「闇の奥」のプレイ時に感じた、ゲーム展開やルールの見通しの悪さは雰囲気の持続のために効果が有るものだと、むしろそのために分かりづらさを残したのか、と思ってしまったほどでした。

 

 

(終わり)