Their Finest Hour -歴史・ミリタリー・ウォーゲーム/歴史ゲーム -

歴史、ミリタリー、ウォーゲーム/歴史ゲーム/ボードゲーム

「CREMIA(クリミア)」(MMP)を対戦する

OCS(Operational Combat Series)の新作「CREMIA」(MMP)を対戦しました。

1941年から42年にかけてのドイツ軍によるクリミア半島への侵攻とセバストポリ要塞攻撃、さらに1943年にはじまるソ連による半島奪還の両方を扱っている作品です。

今回、マンシュタイン率いる第11軍がセバストポリの占領を目指して、クリミア半島への侵攻を開始するシナリオ1「通過儀礼(Rite Passage)」を対戦しました。

 

画像

 

 

 

 

地形・マップ

フルマップ1枚にクリミア半島全体が扱われています。
北はクリミア半島に接するウクライナ側にノガイ平原が広がり、ウクライナ戦争で有名になったヘルソンやメリトポリといった都市も見えます。
ノガイ平原に接したクリミア半島の付け根はペロコプ地峡と呼ばれ、わずか7キロの幅しかありません。
半島は西の端に有名なセバストポリ港があり、西側は細長くケルチ半島が東へ伸び、黒海の西岸にあたるコーカサス地方から伸びたタマン半島と、ケルチ海峡を経て接しています。
ケルチ海峡から上側の内海がアゾフ海、下側が黒海になります。

ユニット数は多くはないためプレイアビリティは高いのですが、他のOCS作品よりも地形や気候、登場する部隊など特別ルールが多いようにも見えます。

 

))

 

シナリオ1スタート時点の状況
ドイツ・ソビエト両軍はペレコプ地峡の北側で対峙している。
地峡は幅が2ヘックスしかないため迂回はできず、ドイツ軍は地峡を正面から攻撃せざるをえない。地峡にはソ連軍が北側と南側の二重に陣地線を設置している。

クリミア半島黒海沿岸にカラーチップを置いている場所が、占拠することで勝利得点となる港湾ヘックスになる。勝利得点は他に、セバストポリ周辺にある陣地ヘックスもまた占拠することで得点を得られる。

マップを見てわかるようにペレコプ地峡を抜けると、半島は何の防御地形もない平野部に至る。もとよりソ連軍は平野部に戦線を張れるほどの兵力を持っている訳ではないため、次に防衛線を引くことができるのはヤイラ山脈にはいってからとなるであろう。

 

両軍の兵力

ドイツ軍の第11軍は歩兵師団を中心とした編成になっており、兵力は多くはありません。史実では翌年1942年のセバストポリ要塞攻略時には大量の砲兵部隊が集められたのですが、1941年のこの時点ではそこまでの砲兵戦力を抱えている訳ではないです*1
一方のソ連軍も歩兵師団中心の編成で、装甲戦力もほとんど存在しません。わずかに騎兵師団が比較的練度が高い点が評価できるくらいです。
ペレコプ地峡の陣地に薄く展開している以外に、セバストポリはもちろん半島にはほとんど兵力はありません。このため、シナリオ開始後、半島中にわずかながら点在する部隊ユニットをかき集めることになります。

本作のマップ外の西側に位置するのですがオデッサはこの時点で枢軸軍により包囲されており、ドイツ軍がクリミア半島のあるラインを越えると(時間的経過を表す?)包囲状態にあったオデッサの地上兵力が海路で撤退してくるというイベントが発生します。オデッサ撤退軍は損害は受けているものの、部隊の練度もクリミア半島に配置した部隊よりも高く、兵力(ユニット数)もそこそこあるなどソ連軍としてはかなり期待してしまいます。

航空兵力の兵力差は顕著で、最新鋭機種が揃っているドイツ軍に対し、ソ連軍は性能も低く機数も少ないため、対抗は難しいでしょう。
なおドイツ軍の爆撃機はマップ外のオデッサルーマニアを発進基地とすることで補給ポイントを消費することなく、出撃できます。

ソ連軍には戦艦1隻<セバストポリ>と軽巡1隻がセヴァストポリ港を本拠地として登場します。史実ではマンシュタインの侵攻が開始された後にセヴァストポリから撤収し、その後は陸上への艦砲射撃を行ったり、ソ連軍による逆上陸の支援を行ったりしていたようですが、なかなか使いづらいところはありますね。

 

補給

OCSでは、補給源から前線まで補給ポイントを運搬する必要があります。
補給について言えば、本シナリオでのソ連軍は比較的余裕があるように感じます。

ドイツ軍の補給源はマップ左上にあるヘルソン付近であり、鉄道と馬車で前線まで運搬することになります。東部戦線の常で鉄道の利用にあたっては軌道幅の変更が発生します(各ターン決まったヘックス数、鉄道の補給線を延長させることができる)。

一方ソ連軍は補給源のコーカサス地方側から運搬することになりますが、鉄道とあわせ、強力な海上輸送も使うことができます。
海上輸送を組み合わせることで、半島の各所にはセバストポリを筆頭に複数の港湾ヘックスがあるため、港湾ヘックスを起点に補給線を引くことができるのです。

 

ゲーム開始時のペレコプ地峡の状況。
数字を囲ったイガグリのような図が描かれたマーカーが陣地を表す。ドイツ軍の地上ユニットは薄茶色のユニット、ソ連軍は茶褐色のユニットである。
腐海側の右端の細長い地峡にもソ連軍の陣地が配置されているが、こちら側は対岸のドイツ軍が特別ルールでしばらく移動禁止になっているため*2、無視しておいてよいだろう。

攻撃開始に備えてドイツ軍は地峡の北に爆撃機群と砲兵ユニットを集結させている。

 

ドイツ軍の入念な航空支援により第一線陣地のソ連軍部隊は、DG(混乱)状態にさせられた後、地上ユニットの攻撃により突破された。ただドイツ軍第11軍は十分な装甲部隊を有していないため、突破戦闘は発生しない。
地峡入り口にあたる2ヘックスのうちひとつを突破された事から、ソ連軍は残余の部隊を第二線まで後退させた。
戦線を整えたところで第二線の陣地線に対するドイツ軍の攻撃が開始したところ。

 

セヴァストポリ港とその周辺に配置された陣地マーカー。陣地マーカーのレベル「4」はOCSの中では最強レベルなので、これがセバストポリ要塞ということになるのだろう。
シナリオ開始時点では部隊が少なく、セバストポリ周辺の”要塞”ヘックスはガラガラの状況。

この後、オデッサから海路で撤収してくる部隊(当時、オデッサは枢軸軍に包囲されていた)や、ペレコプ地峡などからの撤収してきた部隊で埋めていくことになる。

 

今回のプレイは、時間切れ終了となったが、終了時点の状況。

ペレコプ地峡の二重の陣地線を突破された後、ソ連軍は前線を下げ、ひとつはセバストポリにつながるルート途中、ヤイラ山脈にさしかかるライン、またセバストポリ港周辺の陣地ヘックスに部隊を展開させた。もうひとつはケルチ半島の付け根にも弱いながらも防衛線を設定した(下の写真参照)。

包囲下のオデッサから海路で撤退してきた部隊をセバストポリ周辺に配置している。

 

季節は10月にはいり、天候は不順となっていく。
時折降る雨により土地は泥濘(Mud)状態になり、自動車化部隊を中心に、移動力が大きく阻害される。影響を受けるのはソ連軍も同様だが、ソ連軍はもともと徒歩部隊が多いため、移動という観点では影響は小さい。

 

 

感想戦

OCSとしてはユニット数も少なく、プレイしやすい作品になるのではないでしょうか。地形としても面白く、これは各シナリオを挑戦してみたいと思わせてくれます。よい作品です。

 

 

 

*1:OCSのゲームシステムでは砲兵部隊の砲撃は膨大な補給ポイントを消費するため、ドイツ軍による第二次セバストポリでのドイツ軍の補給がどのように描かれているか、興味深いです

*2:ノガイ平原側でソ連軍の反抗作戦が実施されていた関係?