Their Finest Hour -歴史・ミリタリー・ウォーゲーム/歴史ゲーム -

歴史、ミリタリー、ウォーゲーム/歴史ゲーム/ボードゲーム

「フランス革命 1789」(ゲームジャーナル)をプレイする

 

本作は、周囲でも評判が高い、フランス革命を扱ったマルチプレイヤーのゲームです。2人からプレイ可能で、今回は最大人数である5人で対戦しました。

1789年に始まったフランス革命を、革命が発生した絶対王政の状態からナポレオンが登場する帝政時代までを、全5ターンで扱っています。プレイヤーはこれらの一連の過程の裏で複数の派閥を操る黒幕のような存在(!)となります。

 

 

 

 

ゲームシステム

基本システム

各ターンの最初に、プレイヤーはそのターンに登場するキャラクターやイベントが記載されたカードを① 競りにて落札し、手札とします次に② 手札となったカードを用いてアクションを実施していきます

アクションは手札の枚数分実施できますので、競りの段階で多くのカードを落札していたほうが手数が増えることになります。一度競り落としたカードは、そのキャラクターが死亡するなどして除去されない限り、手札に残りますので、ターンを追う毎に手札=手数が増えることになります。

各ターンの「競り」に登場するキャラクター&イベントカードは決まっており、例えば第1ターンは「絶対王政」の時代ということで、キャラクターとしては、ルイ16世マリー・アントワネットなどの王政関係者の他、革命初期に活躍したラファイエット、バルナーヴなどがカードとして登場します。

各ターンに発動できるアクションには、次の2つがあります(2つをあわせて、手札のカード枚数分実施できます)。

  • 共通アクション
    誰にでも、共通的に実施できるアクション
    発動に資金が必要なため、直前の「競り」で手元資金を使い切ると発動したくでもできなくなります。発動できるアクション種類は、「政体」によって異なります(マップ上に記載)。

  • カード固有のアクション
    手札にあるカード固有のアクション
    固有アクションはカードによって異なり、強力で独特な内容のものも少なくありません。強力な能力があるカードの入札金額は高騰します。カード固有アクションの発動には資金は必要ありません

 

発動したアクションによってはプレイヤーはVPを得ることができるものもあります。
カードの機能にはアクション関係の他にもいくつかの効果があります。

  • 関連性が高いカードの「競り」において、落札金額を割り引くことができる
  • 各政体に指定されたキャラクターカードを保有している場合、その「政体」のターン終了時にVPを得ることができる

例えば、「ルイ16世」や「マリー・アントワネット」は「絶対王政」を代表するキャラクターカードですが、王政を支援する「フェルセン」のカードを落札する場合、金額が割り引かれます。

またターン終了時にそのターンの「政体」が「絶対王政」だった場合は、「ルイ16世」や「マリー・アントワネット」のカードを保有しているプレイヤーはVPを得ることができます。

 

政体と共通アクション

政体として、「絶対王政」「立憲君主主義」「共和制」「寡頭制」「帝政」「共産主義」の6種類が用意されています。
それぞれの「政体」により、実施できる「共通アクション」が異なります(マップ上に記載)。

共通アクションのひとつである「投票アクション」によって次のターンの「政体」を選択、投票することができます。得票が多かった「政体」が次のターンの政体として選ばれます。

ターンの終了時に、そのターンの「政体」によって、VPを得ることができるキャラクターが指定されています(マップ参照)。

 

政体が「共和制」になると、いかにもフランス革命らしく「逮捕」や「処刑」といったアクションも登場します。「逮捕アクション」では、キャラクターを逮捕し投獄できます。投獄中のキャラクターはほとんどのアクションを実施できなくなります。さらに「処刑アクション」により、投獄中のキャラクターをゲームから除去することができます。
「逮捕」や「処刑」を逃れるためには、「亡命アクション」があります。亡命したキャラクターは実施できるアクションが限定されます(海外から反革命派の軍勢を引き入れる「派兵工作アクション」のみ)。

「共和制」はどのプレイヤーもこうしたアクションの実施が可能となるため、粛清の嵐が吹き荒れることになるかもしれません。

 

マップ自体はコンパクト。
「政体」ごとに選択できる共通アクションや、ターン終了時にその「政体」が選定されていた場合にVPを得ることができるキャラクターが記されていて、わかりやすい。
プレイアビリティは非常に高いです。

 

フランス国内のエリアの確保

フランス国内はパリを中心に8つのエリアに分かれており、支持をとりつけることにより副収入やVPを得ることができるようになります。
エリアの中には、反革命の諸外国の軍、ナポレオン時代に発生する対仏大同盟軍の侵入や、王党派の反乱が勃発する場所もあります。一度、侵入・勃発した軍勢はフランス軍の「派兵」により鎮圧されない限り、隣接するエリアへも広がるなどすることもあります。

 

プレイ

写真などを撮っていないため、文章のみで簡単に...。
細かい点は正しくないかもしれませんのご容赦ください。

 

第1ターン

5人プレイ。プレイヤーは毎ターン10ポイントの定常的な収入を得、カードの競りやアクション実施を行います。

第1ターンは「絶対王政」からはじまります。

第1ターンの競りにかけられるカード枚数はゲーム中、最も多い8枚です。登場するカードは決まっているのですが、「競り」の順番はランダムです。

ポイントを張り気味の他プレイヤーに押されて、第1ターンの落札カードは「マリー・アントワネット」1枚になってしまいました。ただ彼女、固有能力はないのに加え、一部の共通アクションも実施できないという政治には全く向かないキャラ(マリー・アントワネットが王政を主張して地方遊説を行うなど考えにくいですよね。道理で落札金額が低かった・・)。

政体が「絶対王政」のため、ターンの終了時に「マリー・アントワネット」により、VPを獲得。余った資金は次のターンに残します。

 

第2ターン

第1ターンの投票の結果、第2ターンは「立憲君主制」からはじまります。王をいだいたまま民主化をすすめようとした中道的な政策です。史実では革命勢力が先鋭化していき、こうした中道的な意見は影を潜めることとなります。

第2ターンに登場するのは、ロベスピエール、ダントン、マラー、ミラボーなど革命を主導した錚々たるキャラクター。それぞれ個性ある、ケレン味たっぷりの固有能力が付されています。


第1ターンに1枚しか落札できなかったこともあり、張り込んで「ロベスピエール」を落札。ロベスピエールの固有能力は「投票アクション」にて「共和制」への投票が1票ではなく、3票になるというもの。粛清の時代「共和制」に強力に導こうとする能力です。

ただこのターン、すでに「立憲君主制」への投票が3票を越えていたため、「ロベスピエール」の固有アクションの発動は見送り、通常のアクションを実施します。

 

第3ターン

政体は立憲君主制

落札したキャラクターは、「サン・ジュスト」と「フェルセン」でした。

サン・ジュスト」はルイ16世を処刑にすることを決するきっかけとなった演説を行うなど、多数の処刑を実施し、恐怖政治を先導したことで知られます。最期はロベスピエールとともに自身も処刑されるのですが、その時点でわずか26歳だったという人物です。
カード固有の能力は「処刑」。政体が「共和制」ではないときでも「処刑アクション」を発動できます。さらにもうスキルを持っており、フランス国内に侵入した外国軍や叛乱軍に対して鎮圧のための「派兵」を起こすことができるというものです。

フェルセンはスウェーデン貴族、マリー・アントワネットと親しかったことから愛人説もある人物ですが、ChatGPT先生によれば真偽は議論が分かれているとのことです。囚われの身となっていたルイ16世一家を秘密裏に国外に脱出させようとして失敗したヴァレンヌ事件の首謀者として知られています。
カード固有アクションは「亡命」。共通アクションとして登場する「亡命アクション」と異なり、発動に資金が不要な点が優れています。ただこの人も貴族出身ということからか、マリー・アントワネットと同様に遊説や投票などの通常の政治的な共通アクションを発動することはできなくなっています。

 

このターンに登場し、他のプレイヤーが落札していた「フーシェ」がカード固有アクションを使い、他プレイヤー所属の「ダントン」を「逮捕」しました。
「ダントン」はマップ上の未支配のエリアを強制的に支配下にできるという「弁舌」スキルを持っています。革命の敵とばかりに、すかさず「サン・ジュスト」はカード固有アクションにより「ダントン」を「処刑」します。

「フェルセン」は固有アクションにより「マリー・アントワネット」を「亡命」させます。「マリー・アントワネット」は国内での政治能力はないのですが、諸外国へフランスの革命勢力に対抗する軍勢を送るように工作する、「派兵工作」を実施します。

続く政体は「寡頭制」に決まります。

 

第4ターン

「ナポレオン」を落札。これで続く第5ターンの「政体」が「帝政」になれば一挙に10VP獲得できます。

ロベスピエール」は亡命を選びます。

他プレイヤーが出した「ヴァンデの反乱」カードにより、支配下においていたナントやボルドーに王党派の叛乱軍が出現します。手札の中に王族や王政支持者がいても、王党派の反乱は起こってしまうようです。王党派の叛乱軍が「マリー・アントワネット」を奉じてパリに攻め上るといった展開を夢想していたのですが、手札のキャラクターとイベントとの関連はなさそうです。

マリー・アントワネット」は共通アクションにより「帰国」し、1VPを獲得。

ナポレオンは固有アクション「クーデター」を発動。次のターンの政体として「帝政」は3票を獲得します。
別の「政体」へ投票することで、ナポレオンによる「帝政」を阻止するプレイヤーがいなかったため、続く政体は「帝政」に確定しました。

 

第5ターン

政体は「帝政」。

このままで終われば、ターン終了時に得られるナポレオンの10VPにより勝利は確実という流れでした。ところが他プレイヤーの「シャルロット・コルデー*1が固有アクション「暗殺」を発動。ナポレオンは暗殺され、除去されます。ターン終了時の10VPの獲得はなくなります。

ロベスピエール」は「帰国」アクションにより帰国し、1VPを獲得。「マリー・アントワネット」は、「フェルセン」の「亡命」アクションにより亡命しますが、自身が共通アクションで「帰国」を実施し、1VP獲得。「フェルセン」との連携プレーです。

反革命の諸外国軍の侵入、対仏大同盟軍の侵入、王党派の叛乱などが相次ぐ中、「サン・ジュスト」は「派兵」により鎮圧に出動します。

結果、ナポレオンは失ったものの僅差で勝利。

 

感想戦

プレイ時間は2時間といったところでしょうか。キャラクターカードの個性が強く、ケレン味たっぷりのアクションやイベントに場は盛り上がります。ゲーム内で使われるカードは32枚しかなく、ひとつのターンで競り落とされるカードは4-8枚と多くはありません。特徴があるキャラクターが登場するターンは固定ですので、各ターンでの注文カードは自然と絞られます。各ターンにどのようなキャラクターが登場するのかを各プレイヤーが理解した2回目以降のプレイのほうが盛り上がるでしょう。絶対的に強力なカードというものはないため(逆に強力なカードは、「逮捕」「処刑」などで潰される)、どのようなデッキを構築するのかを考えながら楽しめます。

評判とおりの好ゲームでした。

 

 

 

佐藤賢一の比較的新しい作品は展開がスローでかつ人物視点でみっちり書き込まれるので、初期の作品にあった面白さがないんですよね・・。本シリーズも例外ではなく、大きな流れを忘れそうになることたびたび・・。

 

*1:暗殺の天使の異名を持つ女性。ジロンド派を擁護し、山岳派のリーダーであったマラーを暗殺したことで知られる。