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「1989 Dawn of Freedom」(GMT)を対戦する(2/2)

「1989 Dawn of Freedom」(GMT)を対戦した。

 

 

 

感想戦

1.「得点カード」を使用するタイミング=「權力闘争」を発生させるタイミングがポイント

各ターンのはじめにドローした8枚のカードの中に「得点カード」がはいっていた場合、そのターンの中で「得点カード」を使用、つまりカードが対象としている国の「権力闘争」を発生させることになる。

「得点カード」の存在は使用するまで相手プレイヤーに知らせる必要はないため、使用するタイミングまでに、「権力闘争」の際に有利になる条件を実現させておくように動くことになるだろう。そのターン内では通常7枚のカードを処理する必要があるため、「得点カード」を使用するタイミングと、それまでにどのような段取りで進めるのか、を考える必要がある。

具体的には対象国で自勢力が支配するエリアを増やすことだ。これにより、「権力闘争」時に最初に配られるカードの枚数が増えるし、うまくいけばそのエリアが代表する社会階層のリーダー層の支持をとりつけることができる(「権力闘争」時に、リーダーカードをワイルドカードのような機能を持つカードとして用いることができるようになる)。

相手に、「得点カード」の存在を気取られることなく、相手が十分な準備ができていないタイミングで「権力闘争」を起こす・・ことで絶対的優位な状況で「権力闘争」に突入することができるだろう。

逆に相手方もまた「得点カード」を使用してくる可能性は高く、相手が先にどこかの国についての「得点カード」を使用した場合、その対処を行っているうちに自分の手札にある「得点カード」を使うタイミングを逸したり、または十分な準備を行えないうちに使わなければならなくなることも少なくない(「得点カード」をそのターンの中で使えなければ、そのプレイヤーは敗北する)。

「得点カード」の存在とそれをどう使っていくかが波乱要素となるということだ。

 

2.イベントが強力

カードを使用するとイベントを起こすか、カードに表記されたポイントでのアクションを行うと説明した。カードによって発生するイベントもその効果は、ポイントを使うことによるアクションに近いものがある。ところが概してカードのポイントを使うことによる影響よりも、カードイベントによる影響値や影響範囲の方が大きいことが多く、ポイントによってこつこつと積み上げた状況が、カードイベントによっていとも簡単にひっくり返されることも少なくないように感じた。

1に書いた「得点カード」も含め、カードのドロー(相手勢力のイベントを多く引いてしまう場合も含め)状況により左右する面が強いように感じた。つまりカードの”引き”が大きくゲームとしての勝敗に影響しがちである印象だ

 

3.「権力闘争」は若干微妙

運動・活動が嵩じて政権交代が発生したかを判定する「権力闘争」だが、全く異なる「権力闘争デッキ」と呼ばれる特別なカード1セットを用いて一種の小ゲームのような装いで判定を行う。この小ゲームは前の記事で紹介したように、トランプのスーツ合わせのようなルールになっている。初期のカード枚数や小ゲーム後に行われる影響判定時のダイス修正などにおいて、本ゲームとのつながりが取り込まれているが、小ゲームそのものは、全く異なるデッキを用い、異なるルールで行われることから若干、本ゲームから遊離した印象が否めなかった。

さらには「権力闘争」の勝敗がそのまま政権交代になるのではなく、「権力闘争」が勝利した際に政権交代が発生したかのダイスを振ることができる権利を得るだけにすぎない。結果として実プレイで4〜5回「権力闘争」に勝利したが、政権交代に至ったのは結果1回だけであった(判定表の確率としては政権交代の成功確率は50%以下)。

つまり小ゲームは結果においても、本ゲームと直接つながっていないように感じたのだ。政権交代の判定が結果的にダイス勝負になるのであれば、小ゲームの存在が弱いように感じた。

 

4.歴史的イベントの数々

2.でイベントが強力な割にランダム要素が強いという主旨の事を書いたが、一方で中で発生するイベントはまさに東欧革命の中で起こっていた事象が再現されており、歴史をたどる意味では非常に興味深かった。ソ連や中国の天安門事件も含め諸国内で発生していた個々の事象・事件が複雑に作用しあい、その後、大きな動きになっていくさまをゲームとして体験できるのは十分に楽しめるだろう。

このゲームの主眼は、ゲームとしての勝敗そのものではなく、こうした歴史的な事象・事件とそれに伴う状況を体験していくことにあるのではないかとも思う。

 

個々のイベントの中で興味深かかったのは、ゴルバチョフに関するイベントで、ゲーム中では、ゴルバチョフが係わるイベントの多くは保守派に利する効果を伴うものが多い。一方で当時の西側からの見方として、ゴルバチョフは西側寄りの考え方を行う開明派であるとの評価だったと思うが、ゲーム内ではゴルバチョフがとった諸施策というのは、あくまでソ連邦を立て直すために行ったことで、東欧諸国の民主派からすると、決して民主派の利に直結している分けではなかったという見方が興味深かった。

 

5.状況を発生させるよりも状況に巻き込まれるゲーム展開

ゲーム内で発生する事象や事件はイベントカードによって起こされるが、結果としてプレイヤーは自らが状況を発生するのではなく、あくまでカードイベントによって引き起こされる状況にいかに対処していくのかという場面が強い。

つまり自ら巻き込んでいく、起こしていくのではなく、発生した事象や状況に巻き込まれていく様子を楽しむ作品と見た。

 

さてここまで色々書いたが4に書いたように歴史的なイベントの数々を体感できていくことは非常に面白い。今後とも機会があれば対戦をしていきたい作品だ。

(了)