Their Finest Hour -歴史・ミリタリー・ウォーゲーム/歴史ゲーム -

歴史、ミリタリー、ウォーゲーム/歴史ゲーム/ボードゲーム

「1989 Dawn of Freedom」(GMT)を対戦する(1/2)

「TWILIGHT STRUGGLE」(GMT)のシステムを用い、1989年に起こった東欧革命を扱った本作を対戦した。
ボックスアートになっている右下の男性はソ連邦ゴルバチョフだが、左の男性はポーランド労働組合「連帯」のワレサ議長だ。もちろんゲーム内にはゴルバチョフは当然として、ワレサ議長も、彼が設立メンバーであった「連帯」も登場する。

 

 

 

ゲームの紹介

舞台となるのは東ドイツポーランドハンガリーチェコスロバキアルーマニアブルガリアの6カ国。「トワイライト・ストラグル」のシステムを用い、カードによって発生させるイベントやポイントによってマップ内に配置されたエリアを支配していく、エリアマジョリティシステムのゲームである。

プレイヤーは民主化をめざす改革派か、現在の政体を維持する保守派を担当する。

舞台が限定されている分、ひとつの国がさらに複数のエリアに細分化されている。「トワイライト・ストラグル」では、ひとつの国がひとつのエリアになっていたのに対し、本作ではひとつの国の中で細分化され、社会階層毎にエリアが用意されている。具体的にはエリート支配層(共産党幹部)、知識人階層、労働者、農民、キリスト教関係者、学生に分かれていて、各階層での支持をとりつけていく形にアレンジされている。*1
どの階層にアプローチしていくのかが、後述する「権力闘争」の解決においても影響していく。

 

各国は複数のエリアに分かれているのだがこれは地理的な場所を表しているものもあれば、階層を表しているものもある。例えば学生の階層には大学名が記載してあるし、工業地帯や農業地帯であれば、労働者や農民、首都は官僚階層といった形だ。

 

全10ターン。4ターン目からは中期、8ターン目からは後期ということでカードが追加されていく。史実にあわせ前期ではハンガリーポーランドが主舞台となり(この2カ国関係のカードが多くはいる)、中期でチェコスロバキア東ドイツブルガリア、後期がルーマニアということになる。したがってゲームの展開もこの順番にプレイヤー間の主要係争地が変わっていくことになる。

ターンの時間軸は不定で、マニュアルによれば1ターンの時間は初期ターンは数ヶ月、終盤は1ターン=数週間に相当するとある。

各ターン、プレイヤーは8枚のカードを受領し、そのターンのうちに7枚を使用しなければならない。

カードにはイベントとOPSと呼ばれるポイント(1~3ポイント)が記載してある。
イベントには自陣営が有利になるものと、相手陣営が有利になるイベントがある。各ターンにおいてプレイヤーは、8枚のカードのうちから1枚ずつ交互に処理をしていき、これを7回繰り返す。カードはランダムに配られるので、手元にきたカードに記載してあるカードには相手側が有利になるカードも混在するのだが、パスしたり捨札にはできないため、どこかのタイミングで相手側が有利になるカードを使う必要がある。

カードを使うことで次の3種類のことができる。

  1. 自陣営側のカードを使い、記載してあるイベントを発生させる
  2. 自陣営側のカードを使い、記載してあるOPS分のポイントを使う
  3. 相手陣営側のカードを使い、記載してあるイベントを発生させ(相手陣営が有利になるイベント)、記載してあるOPS分のポイントを使う

 

青い星印は改革派イベント、赤い星印は保守派イベントを表す

 

どうしても発生させたくない相手側カードについては、毎ターン1回だけだが、「天安門広場工作」に使用することができる。「天安門広場工作」は「トワイライトストラグル」でいうところの宇宙開発に相当する。
天安門広場工作」はその名称から想像できるように、中国における改革派と保守派の状況を進めていくことができるというものだ。双方の派閥のポイントを増やしていくことで中国での状況が変化し、欧州の状況に影響を与えていくことになる。

 

話をもどすと、OPSによるポイントにより次のことができる。

  1. 支援ポイントの配置:指定したエリアの自陣営の支持ポイントを増やす
  2. 支援チェック:指定したエリアの相手側支援ポイントの除去を試みる

結果としてそれぞれのエリアの支配に必要なポイント数分、相手が配置したポイントよりも上回ることができればそのエリアを支配したことになる。
ここまでは「トワイライトストラグル」経験者であればすぐに理解できるだろう。

 

本ゲームにおいては「権力闘争」と呼ばれるルールが追加されている。
カードの中に、「得点カード」と呼ばれる一種の決算カードが各国分混じっている。「得点カード」はカードが配布されるとそのターンのうちに使用する必要がある。
「得点カード」を使用するとそのカードが指定する国において「権力闘争」が発生する。

「権力闘争」では、カードが指定した国において政権交代が成功するかどうかを判定することになり、その判定用に別途用意されたカード(権力闘争デッキ)を用いた小ゲームを行い、その勝敗によって両勢力の増減が決まり、結果として革命の成否が判定される。

「権力闘争デッキ」を使った小ゲームは次のようなものだ。

対象国について、その時点で自陣営が支配しているエリア数に応じたカードを受領する。

カードには「ストライキ」「デモ行進」「歎願」「集会」とそれ以外に指導者カードとワイルドカード的なカードがある。先攻になったプレイヤーが出したカードに対応して、後攻プレイヤーは同じスーツのカードを出すか、指導者カードまたはワイルドカードをだす必要がある。先攻側の「ストライキ」カードに対して同じスーツである「ストライキ」カードを出せたとすると、後攻側はダイスを振り、先攻側が出したカードに記載された数以上の数を出すと今度は攻守が交代する。出せない場合は攻守そのままに先攻プレイヤーが次のカードを出す。
相手側が同じスーツのカードをもっていない、指導者カードやワイルドカードのような回避手段をもっていない状態になると、先攻側の勝利となる。
ストライキ」や「デモ行進」は比較的強いカードが多いため相手側の反撃にも耐えやすい(判定ダイスにおいて大きな目を出す必要がある)。「歎願」や「集会」は攻守交代されやすい、といった特長がある。

この小ゲームの結果、勝利した側はその国における支持状況の変化とあわせ、政権交代が起こったかを判定する・・というものだ。

 

「得点カード」は各国分用意されている。
「得点カード」は各ターン冒頭で配布されるカードの中にはいってくばられる。「得点カード」を受領すると、そのターンのうちに必ず使用する必要がある。
ここで考慮点としては、「得点カード」はそのターンのうちに使用しなければならない訳だが、ターンの中では7枚カードを使用することになるため、どのタイミングで「得点カード」を使い、「権力闘争」を発生させる点がある。

相手が準備ができてない一方で、こちら側の準備ができているタイミングで発動するのが理想的だ。つまり「権力闘争」の発生タイミングを調整していく必要があるということになる。

「権力闘争」で用いる専用カード

 

 

イベントをみてみよう

ワレサ」はポーランド国内の改革派勢力を増大させる効果がある。ただし「ワレサ」カードの前に、「『連帯』の合法化」カードが有効になっている必要がある。

ゴルバチョフが主導した「ペレストロイカ」のカードがでるとそのターン中、保守派のダイス修正が+1となる。あくまでゴルバチョフは保守派として体制を守るために改善をはかったという位置づけだ。

チャウシェスク」は有名なルーマニアの独裁者。もちろん保守派が増大するイベントになる。チャウシェスク関係では、「個人崇拝」、「ティミショアラの虐殺」といった強権的なものから、妻の「エレナ」も独立したカードで登場。

バルトの道」は、バルト三国で行なわれた人間の鎖の運動を指す。

シナトラ・ドクトリン」という改革派イベントのイベントを調べると、ソ連邦ワルシャワ条約機構諸国に国内問題を自ら解決できるようにした政策を、ゴルバチョフフランク・シナトラの「マイウェイ」掛けて言ったことに由来するらしい。

他にも多数のイベントが用意されている。言葉だけ拾っていくと、「国境の開放」、「ゼネスト」、「シュタージ」、「海外の放送」とそれに対する「国営放送」、「ソ連軍の撤退」「通貨インフレ」「膨大な対外債務」「マルタ会談」・・・。まさに東欧の共産主義諸国の崩壊を一望できる。

 

(つづく)

 


 

 

 

 

 

 

*1:ここで教会関係者がひとつの社会階層として登場するのが欧州らしいなと思う。初期配置時点で各国の教会関係者のエリアは民主化側に傾いている。宗教が民主化にあたって重要なステークホルダーのひとつであったことがうかがえる。